JP7421577B2 - タイヤの滑り状態判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤの滑り状態判定方法に関する。
タイヤがグリップした状態ではドライブシャフト捩れ振動が発生し、タイヤがスリップした状態ではタイヤ滑りによりドライブシャフトの捩れが解放され、ドライブシャフト捩れ振動が消滅する。特許文献1には、差動装置、ドライブシャフトを介して差動装置に接続されたホイールの回転変動を検出し、差動装置の回転変動振幅に対するホイールの回転変動振幅の振幅比、及び位相遅れに基づいて滑り識別量を設定し、滑り識別量がタイヤの路面に対する弾性滑り限界に対応した滑り識別量閾値を超えないようにタイヤの駆動力を制御する走行制御方法が記載されている。
特開2019-31112号公報
特許文献1では、差動装置の回転変動振幅に対するホイールの回転変動振幅の振幅比及び位相遅れを算出するために、タイヤの動半径を使用している。タイヤの動半径は、タイヤに荷重が加わった状態における接地面と車輪軸との距離を表す動的負荷半径と考えられる。動的負荷半径は垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け易い。そのため、タイヤの動半径に基づいて算出される、接地面に生じる摩擦トルク、タイヤと接地面との粘性抵抗力、及びタイヤ剛性が、垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受けて変動し易くなる。
本発明は、以上の背景を鑑み、タイヤの滑り状態判定方法において、垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け難くすることを課題とする。
上記課題を解決するために本発明のある態様は、駆動源に動力伝達部材を介して接続される車輪のタイヤの路面に対する滑り状態を判定するタイヤの滑り状態判定方法であって、前記動力伝達部材の回転変動及び前記車輪のホイールの回転変動を検出し、前記動力伝達部材の回転変動振幅に対する前記ホイールの回転変動振幅の振幅比と、前記動力伝達部材の回転変動に対する前記ホイールの回転変動の位相遅れとに基づいて、前記ホイール及び前記タイヤの振動モードが、弾性滑り状態の周波数応答を表す弾性滑りモードか移動滑り状態の周波数応答を表す移動滑りモードかを判定し、前記ホイール及び前記タイヤの振動モードが前記移動滑りモードである場合に、前記タイヤが移動滑り状態であると判定し、前記振幅比と前記位相遅れとは、タイヤ駆動半径に動的負荷半径と有効転がり半径との関係が線形になる領域の有効転がり半径を適用して算出し、前記動的負荷半径は、前記車輪の中心軸と路面との距離であり、前記有効転がり半径は、前記タイヤが1回転するときに進む距離を2πで除した値である。
この態様によれば、タイヤの滑り状態判定方法において、垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け難くすることができる。有効転がり半径は、動的負荷半径よりも垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け難い。
上記の態様において、前記動的負荷半径と前記有効転がり半径との関係が線形になる領域では、前記動的負荷半径と前記有効転がり半径との相関係数が0.99以上であってもよい。
上記の態様において、タイヤ駆動半径は、前記タイヤに加わる垂直荷重が1Gであるときの前記有効転がり半径であってもよい。
上記の態様において、前記タイヤ駆動半径は、前記車輪に加わる垂直荷重が2000N以上6500N以下の範囲であるときの有効転がり半径であってもよい。
上記の態様において、前記有効転がり半径は、GNSS信号に基づいて検出された所定期間の車両の走行距離を、前記所定期間における前記タイヤの回転数で除することによって算出されてもよい。
以上の構成によればタイヤの滑り状態判定方法において、垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け難くすることができる。
車両制御システムが搭載される車両の構成図 スリップ率と駆動トルクとの関係を示すグラフ タイヤ駆動半径を示す説明図 駆動輪の力学モデルを示す説明図 (A)差動装置及び駆動輪間の回転変動伝達特性を示すグラフ、(B)周波数と振動モードとの関係を示す説明図 弾性滑りモード及び移動滑りモードの根軌跡を示す図 X軸を垂直荷重Fz、Y軸を動的負荷半径DLRとしたグラフ X軸を垂直荷重Fz、Y軸を有効転がり半径ERRとしたグラフ タイヤ空気圧を200kPaとして、X軸を車速、Y軸をタイヤ半径としたグラフ タイヤ空気圧を240kPaとして、X軸を車速、Y軸をタイヤ半径としたグラフ タイヤ空気圧を280kPaとして、X軸を車速、Y軸をタイヤ半径としたグラフ X軸をタイヤ空気圧、Y軸をタイヤ半径変化率としたグラフ タイヤ空気圧を200kPaとして、X軸を車速、Y軸をDLR/ERRとしたグラフ タイヤ空気圧を240kPaとして、X軸を車速、Y軸をDLR/ERRとしたグラフ タイヤ空気圧を280kPaとして、X軸を車速、Y軸をDLR/ERRとしたグラフ 垂直荷重の変化に対応したタイヤの形状変化を示す説明図 有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの関係を示すグラフ 動的負荷半径DLRと接地面長さGPLの関係を示すグラフ 動的負荷半径DLRと接地面長さGPLの関係を示すグラフ 有効転がり半径ERRと接地面長さGPLとの関係を示すグラフ 接地面長さGPLと接地角GPAとの関係を示すグラフ 接地角GPAと有効転がり半径ERRとの関係を示すグラフ X軸が垂直荷重、第1Y軸が動的負荷半径DLR、第2Y軸が比を表すグラフ X軸を垂直荷重、第1Y軸を有効転がり半径ERR、第2Y軸が比を表すグラフ 車両の走行中においてタイヤ駆動半径を取得するためのフロー図
以下、図面を参照して、本発明に係るタイヤの滑り状態判定方法、及びタイヤの滑り状態判定方法を実行する走行制御システムについて説明する。図1に示すように、車両1は、4輪自動車であり、車体2と、車体2に設けられた4つの車輪3とを有する。車輪3は、駆動輪である2つの前輪3Fと、従動輪である2つの後輪3Rとを有する。各車輪3は、ホイールWと、ホイールWに取り付けられたタイヤTとを有する。
車両1は、前輪3Fを駆動するための駆動源5を有する。駆動源5は、内燃機関又は電動モータであってよい。駆動源5は、減速装置及び差動装置を含んでよい。本実施形態では、駆動源5は、内燃機関5A、減速装置5B、及び差動装置5C(DN)によって構成されている。駆動源5の差動装置5Cは、動力伝達部材6を介して各前輪3Fに接続されている。動力伝達部材6は、ドライブシャフトであってよい。
車両1は、各車輪を制動するための制動装置8を有する。制動装置8は、油圧供給装置8Aと、各車輪のホイールWに設けられ、油圧供給装置8Aからの油圧によって作動するディスクブレーキ8Bとを有する。
車両1は、駆動源5及び制動装置8を制御する走行制御システム10を有する。走行制御システム10は、運転操作子11及び車両センサ12からの信号に基づいて、駆動源5及び制動装置8を制御する制御装置14を有する。運転操作子11は、運転者の操舵操作を受け付けるステアリングホイール11A、運転者の加速操作を受け付けるアクセルペダル11B、運転者の減速操作を受け付けるブレーキペダル11Cを含む。
車両センサ12は、左右の前輪の回転速度を検出する左右の前輪車輪速センサ12A、左右の後輪の回転速度を検出する左右の後輪車輪速センサ12B、駆動源5の出力端の回転速度を検出する駆動源回転速センサ12C、車体2の前後加速度及び横加速度を検出する加速度センサ12Dを有する。前輪車輪速センサ12A及び後輪車輪速センサ12Bは、ホイールWの回転速度を検出する。左右の後輪車輪速センサ12B及び加速度センサ12Dは、車体速に関連する情報を取得する車体速取得手段として機能する。
駆動源回転速センサ12Cは、駆動源5の差動装置のファイナルギヤの回転速度を検出する。また、車両センサ12は、ステアリングホイール11Aの操舵角を検出する操舵角センサ12E、アクセルペダル11Bの操作量を検出するアクセルペダルセンサ12F、ブレーキペダル11Cの操作量を検出するブレーキペダルセンサ12G、内燃機関5Aの回転数を検出するエンジン回転数センサ12Hを有する。また、車両センサ12は、車体2の上下加速度を検出する上下加速度センサ12Kを有する。上下加速度センサ12Kは、各車輪3に対応して設けられているとよい。また、上下加速度センサ12Kは、各車輪3を支持するサスペンションアーム(不図示)に設けられてもよい。加速度センサ12D及び上下加速度センサ12Kは、共通の3軸又は6軸加速度センサとして構成されてもよい。内燃機関5Aの出力トルクは、後述する制御装置14によって推定される。
また、車両センサ12は、車両と周囲の物体までの距離を測定する距離センサ12Lと、車両の傾斜角を測定する傾斜角センサ12Mとを有する。距離センサ12Lは、ミリ波レーダや、超音波センサ、ライダー等であるとよい。傾斜角センサ12Mは、MEMS慣性センサ等であるとよい。
制御装置14は、CPU、ROM、及びRAM等から構成される電子制御装置(ECU)である。制御装置14はCPUでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置14は、推定部14A、制御部14B、及びトルク取得部14C(トルク取得手段)を有する。推定部14Aは、少なくとも駆動源5及びホイールWの回転速度、車体速、及びホイールWのトルクに基づいて、タイヤの滑り状態を判定する。制御部14Bは、タイヤの滑り状態に基づいて駆動源5及び制動装置8の少なくとも一方を制御する。
トルク取得部14Cは、内燃機関5Aの出力トルクを取得する。トルク取得部14Cは、例えば吸入空気量や、インテークマニホールドの負圧に基づいて推定されるとよい。また、駆動源5が電動モータである場合には、電動モータに供給される相電流に基づいて電動モータの出力トルクが推定されるとよい。なお、他の実施形態では、内燃機関5A又は電動モータに、出力トルクを検出するためのトルクセンサが設けられてもよい。また、トルク取得部14Cは、制御部14Bによる制動装置8の制御量に基づいてホイールWに加わる制動トルクを推定する。
制御装置14は、ナビゲーション装置15に接続されている。ナビゲーション装置15は、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号に基づいて車両1の位置を特定する。ナビゲーション装置15は、地図情報を有する。地図情報は、道路の形状や傾斜角(バンク角)、曲率等の路面の特性に関する情報を含むとよい。
以下に、推定部14Aによる、タイヤの滑り状態の判定方法について説明する。推定部14Aは、以下に示す理論に基づいて作成されたプログラムを実行することによってタイヤの滑り状態を判定する。
ホイールWはアルミや鋼などの金属から形成されているため、ゴム製のタイヤTに比べて剛性が十分に高い。ホイールWに駆動トルクが与えられた場合には、タイヤTのサイドウォール部及びトレッド部に弾性変形が生じる。そのため、ホイールWとタイヤTのトレッド表面とが剛体質量で表され、ホイールWとタイヤTのトレッド表面との間にねじれを抑制する方向のばね力が作用している状態であると考えられる。タイヤTと路面との接地部では、車両1の質量のためタイヤTが変形し、ある一定幅(接地幅)にてタイヤTと路面とが接触(接地面)した状態となる。接地面にはタイヤと路面との間に摩擦力Fが作用する。この摩擦力Fは次式で表される。
Figure 0007421577000001
μはタイヤTと路面との間の摩擦係数である路面摩擦係数であり、NはタイヤTの接地荷重である輪荷重である。路面摩擦係数μは、タイヤTの空気圧や経年変化、路面、天候、気候などにより変化する。摩擦力Fは走行抵抗に対抗して車両1を走行(加速、減速、等速走行)させるために必要な力、すなわち駆動力とその合力の大きさが釣り合う必要がある。
ホイールWに駆動トルクが与えられた瞬間にはタイヤTにトルクは伝達されておらず、タイヤTはまだ転動しない。このときタイヤTは弾性変形しホイールWとタイヤTとの間にはねじれ角が生じる。この状態においてタイヤTは、ホイールWの駆動トルクに比例してねじれ角が生じる静ねじり状態にある。ねじれ角が生じるとその反力としてタイヤTにトルクが伝達され、タイヤTは転動を始める。タイヤTが転動するに伴い弾性変形を生じていたタイヤTの1要素は接地面を離れると共に弾性ひずみが解放される。このとき解放された弾性ひずみに対応する反力がホイールWの駆動トルクを伝達するために必要な大きさに対して不足するため、タイヤTの転動は一時的に止まろうとする。しかしながら、接地面を離れたタイヤTの1要素と交代に新たな要素が路面と接地し弾性ひずみを生じることで失われた反力を回復しタイヤTは再び転動する。このように個々の要素に係る境界条件が各要素に固有ではなく、要素の運動に伴い移動する場合を特に移動境界と呼ぶ。実際のタイヤTが継続して転動するとき上記のような現象が連続して起こるため、ホイールWの回転角に対して一定の割合でタイヤTの転動角は減少する。単位時間あたりでのホイールWの回転角は回転数(回転角速度)に比例するため、タイヤTの転動角もホイールWの回転数に比例して減少し一定の回転伝達ロスが生じる。この現象を弾性変形に起因してホイールWと路面との間に見かけ上の滑りが生じることから弾性滑りと呼ぶ。弾性滑り量はホイールWの回転数に対して一定の割合で生じるため、滑りによる回転数ロスΔωとホイールWの回転数ωwheelとの比Srを滑り速度比とする。
Figure 0007421577000002
タイヤTの弾性滑りの特性を図示すると図2のようになる。タイヤTと路面との間の摩擦力には限界があるので、ホイールWの駆動トルクが増加していくと、タイヤTの接地面と路面とが滑り始める。これを弾性滑りと区別して移動滑りとする。このように、ホイールWの駆動トルクを増加していくと、最初は弾性滑り状態から移動滑り状態に変化する。弾性滑り状態と移動滑り状態の境界を弾性滑り限界又は粘着限界といい、粘着限界に対応した駆動力(トルク)を粘着限界駆動力(トルク)という。
弾性滑り状態において、弾性変形によりホイールWとタイヤTとの間にねじれ角φEが生じ、接地面が接地面長さだけ移動した状態では、転動前の接地面には弾性変形によるひずみエネルギー(kT×φE 2/2)が蓄えられ、転動によってこのひずみエネルギーが解放される。このひずみエネルギーは車両1の走行に関して仕事をしないので、ホイールWから与えられた駆動エネルギーをひずみの生成と解放というサイクルで散逸している状態と考えることができる。このようなエネルギー散逸が見かけ上の滑り(弾性滑り)によって生じるものと捉えれば、接地面に作用する摩擦力をFとして、次式のように書ける。
Figure 0007421577000003
すなわち、エネルギー散逸を式3のように摩擦力と見かけ上の滑りによる仮想仕事に置き換えることができる。kTはタイヤTのねじり剛性[Nm/rad]、RはタイヤTの動半径[m]、Tfは接地面に生じる摩擦トルク[Nm]に相当する。ねじれ角φEに対応してタイヤTが転動したとき、ねじれ角φEを含めてホイールWの回転角がφwheelであったとすると滑り速度比Srは幾何学的関係より、次の式4で表される。
Figure 0007421577000004
式2及び式4より、φEは以下の式5で表される。
Figure 0007421577000005
これを式3に代入すると、以下の式が導かれる。
Figure 0007421577000006
式6で表されるように、摩擦トルクTfはホイールWと路面との間に生じる滑り(回転数ロス)Δωに比例した粘性抵抗力で表される。ここで、cTはタイヤと路面との間の摩擦減衰係数[Nm/(rad/s)]であり、粘性係数に相当し、タイヤねじり剛性kTに比例する。
ここで、式3で使用されるタイヤTの動半径Rには、動的負荷半径DLRと有効転がり半径ERRとの関係が線形になる領域の有効転がり半径ERRが使用される。動的負荷半径DLRと有効転がり半径ERRとの関係が線形になる領域では、動的負荷半径DLRと有効転がり半径ERRとの相関係数が0.99以上である。また、式3で使用されるタイヤTの動半径Rには、タイヤTに加わる垂直荷重が1Gであるときの有効転がり半径ERRが使用されてもよい。
図3に示されるように、タイヤTの半径は、一般に、無負荷半径OD、静的負荷半径SLR、動的負荷半径DLR、有効転がり半径ERRを含む。図3の(A)に示されるように、無負荷半径ODは、車輪が路面に接触しておらず、車輪が回転しておらず、かつ車輪の中心軸に荷重が加わっていない状態における、車輪の中心軸からタイヤの外周面までの距離である。図3の(B)に示されるように、静的負荷半径SLRは、車輪が路面に接触し、車輪が回転しておらず、かつ車輪の中心軸に荷重が加わった状態における、車輪の中心軸から路面までの距離である。図3の(C)に示されるように、動的負荷半径DLRは、車輪が路面に接触し、車輪が回転し、かつ車輪の中心軸に荷重が加わった状態における、車輪の中心軸から路面までの距離である。図3の(D)に示されるように、有効転がり半径ERRは、車輪が路面に接触し、車輪が回転し、かつ車輪の中心軸に荷重が加わった状態における、タイヤが1回転するときに進む距離を2πで除した値である。
駆動源5から接触面までの力学的モデルは、図4のように表すことができる。このモデルに基づいて、状態方程式は、以下の式7のように表される。以下の式は、内燃機関を車両1の前部に搭載し、トランスミッションを介して前輪を駆動するFF車両の左右いずれかの車輪を抜き出したものである。
Figure 0007421577000007
ここで、θDNは差動装置DNのファイナルギヤ(駆動源5の出力軸)の回転角摂動[rad]、θWはホイールの回転角摂動[rad]、θTはタイヤの回転角摂動[rad]、Iwはホイールの慣性モーメント[kgm2]、ITはタイヤの慣性モーメント[kgm2]、kDは動力伝達部材6(ドライブシャフト)のねじり剛性[Nm/rad]である。
式7を以下の式8によって無次元化すると、式9によって表される状態変数(ベクトル量)は、式10で表される。
Figure 0007421577000008
Figure 0007421577000009
Figure 0007421577000010
差動装置DNの回転変動に対するホイールWの回転変動の周波数応答を式10により求めると図4(A)のようになる。図4(A)は、周波数に対する差動装置DNの回転変動振幅に対するホイールWの回転変動振幅の増幅比(振幅比m)と、差動装置DNの回転変動に対するホイールWの回転変動の位相遅れ(位相遅れΨ1)とを示す。
式6より、滑り状態は摩擦減衰係数cTの値が小さくなるほど移動滑り状態に近づく。図5(A)中の(a)は弾性滑り状態の応答を表し、(c)は移動滑り状態の応答を表している。また、(b)は両滑り状態の境界(粘着限界)にあたる。図5(A)中の振幅比を示すグラフ(a)と(c)とを比較すると移動滑り状態になると低周波数側に新たなピークが出現すると共に、高周波数側のピークが高周波側に移動することが判る。高周波数側のピークに対応した振動モードを弾性滑りモード、低周波数側のピークに対応した振動モードを移動滑りモードと呼ぶことにする。
周波数と摩擦減衰係数cTに対する弾性滑りモード及び移動滑りモードの存在範囲を図示すると図5(B)のようになる。図5(B)は、弾性滑りモード及び移動滑りモードの存在範囲を実線で示している。
弾性滑りモードでは、タイヤTの弾性変形により駆動力を路面に伝達するので、タイヤねじり剛性kTによって生じた弾性力はホイールWにも反力として作用する。そのため、ホイールWがドライブシャフト剛性kD及びタイヤねじり剛性kTによって生じる弾性力の合力を受け振動する。弾性滑りモードは、図5(A)及び(B)において高周波数側に見られる。弾性滑りモードは、図5(B)に示すように、摩擦減衰係数cTが減少するにつれて、すなわち、弾性滑り状態から移動滑り状態に近づくにつれて、より高周波側へと遷移する。このことは、図5(A)中の振幅比を示すグラフにおいて、移動滑り状態になると高周波数側のピークがより高周波側に移動することに対応している。
移動滑りモードでは、タイヤTと路面とが動的に滑ることからタイヤねじり剛性kTによって生じる弾性力は滑りによって解放され、ホイールWに作用する反力も消失する。そのため、ホイールWとタイヤTが一体となってドライブシャフト剛性kDによって生じる弾性力のみを受け同相で振動する。移動滑りモードは、図5(A)及び(B)において低周波数側に見られる。移動滑りモードは、図5(B)に示すように、摩擦減衰係数cTが一定値より小さくなった場合に、すなわち、移動滑り状態となった場合に出現し、弾性滑り状態では現れない。このことは、図5(A)中の振幅比を示すグラフにおいて、移動滑り状態になると低周波数側に新たなピークが出現することに対応している。
以上より、弾性滑り状態から移動滑り状態へと移行するに伴い、移動滑りモードが発現する。したがって、移動滑りモードの発現を監視することによって、粘着限界の判定ができる。しかし、図5(A)中の振幅比をみると、粘着限界では未だに低周波数側のピークを確認することはできない。すなわち、単純に振動波形を観測するだけでは移動滑りモードの発現を厳密に判定することはできない。そこで、系の減衰状態を表す無次元量ζ2に着目する。式8に示すように、無次元量ζ2は、摩擦減衰係数cTとタイヤねじり剛性kTとによって無次元化されており、諸元の変化に関係なく系の減衰状態を一義的に表現する量である。現在の無次元量ζ2を推定できれば、粘着限界に対応するしきい値と比較することにより,移動滑りの発生を厳密に判定することができる。また、無次元量ζ2と前記しきい値との偏差は移動滑りが発生するまでの余裕度の判断材料にもなることから、無次元量ζ2を知ることは有用である。以下では、無次元量ζ2の取得方法について説明する。
車両1の駆動源5となる内燃機関には一般にトルク変動が生じ、このトルク変動は差動装置DNからタイヤにも伝達される。トルク変動の要因として、内燃機関であれば筒内圧の変動、電動モータであればポール数に起因したコギングトルクがある。差動装置DNには入力されたトルク変動に起因した回転変動が同時に生じる。このとき、差動装置DNの回転変動は以下の式11で表される。
Figure 0007421577000011
式11は境界条件での強制加振と捉えることができる。A1は差動装置DNの回転変動振幅[m]、Ωは加振力(内燃機関Eのトルク変動)の角振動数[rad/s]、tは時間[s]である。このような強制加振状態において、式10に示す状態方程式は次式となる。
Figure 0007421577000012
式12より、Bは外力(加振入力)を表し、もともとの系がもつ固有の振動モード(以下、固有モードと呼ぶ)はヤコビ行列Aによって決まる。ヤコビ行列Aを決定するパラメータはρ,ω1、ω2、ζ2であるが、そのうちρ、ω1は設計諸元(既知数)である。そのため、無次元量ω2と、滑り識別量に対応する無次元量ζ2とが判ると、固有モードが判る。式7において、支配方程式は二つであり、対して未知数となる無次元量もω2、ζ2の二つであるからω2、ζ2は一義的に決定できるはずである。なお、無次元量ω2はタイヤねじり剛性kTから、無次元量ζ2は摩擦減衰係数cT及びタイヤねじり剛性kTから成るので、無次元量ω2、ζ2を決定できることは摩擦減衰係数cT及びタイヤねじり剛性kTを決定できることと同義である。
式12の周期解を次式のように仮定する。
Figure 0007421577000013
式13の周期解を式12に代入し、ガラーキン法に立脚して係数決定を行うと、次の関係式を得る。
Figure 0007421577000014
mは差動装置DNの回転変動振幅に対するホイールの回転変動振幅の増幅比(振幅比)であり、Ψ1は差動装置DNの回転変動に対するホイールの回転変動の位相遅れであるから、差動装置DNの回転変動とホイールの回転変動を計測することで式14より無次元量ω2、ζ2を求めることができる。
つぎに、式14より現在の無次元量ω2、ζ2が判明したとして、無次元量ζ2と固有モードとの関係の取得方法について説明する。無次元量ω2はタイヤねじり剛性kTの変化を反映しているが、同一条件下では大きな変化はないため、タイヤねじり剛性kTは一定であるとして無次元量ζ2と固有モードとの関係について説明する。このとき、無次元量ζ2は摩擦減衰係数cTと一義的に対応する。固有モードの振る舞いはヤコビ行列Aの固有値λを求めることによって記述できる。上述の移動滑りモードに対応する固有値λの振る舞い(根軌跡)を図6に示す。図6の(a)~(b)は図5(a)~(c)に対応する。なお、タイヤねじり剛性kTが変化すると振動モードの周波数が変化するため、図6の根軌跡の縮尺が変化するが、以下で説明する主要な性質に変化はない。また、その際には現状の無次元量ω2,ひいてはタイヤねじり剛性kTが判明していることから、制御上の問題もない。
図6の横軸は実軸、縦軸は虚軸を表し、虚数部は振動解を示す。弾性滑り状態(図6の(a)参照)において一組の根は実軸上にあり振動解が存在しないことを示す。すなわち、移動滑りモードに対応する振動は生じていない。一方で、移動滑り状態(図6の(c)参照)となると、この根は虚数部をもち振動が発生することを示す。すなわち、無次元量ζ2<ζC(図6の(c)参照)となったとき移動滑りモードが発現することが分かる。したがって、無次元量ζCの値に基づき下記のように滑り状態を判定することができる。
無次元量ζ2>ζCとき、弾性滑り状態
無次元量ζ2=ζCのとき、粘着限界
無次元量ζ2<ζCとき、移動滑り状態
ζCは、設計諸元によって異なる値である。図5には、ζCが0.86である場合について、ζ2及び摩擦減衰係数cTcの数値を例示している。無次元量ζCが判ると、式8から弾性滑り限界となるときの摩擦減衰係数cTcを取得することができる。
次に、タイヤ駆動半径Rに動的負荷半径DLRと有効転がり半径ERRとの関係が線形になる領域の有効転がり半径ERRを適用して振幅比mと位相遅れΨ1とを算出する意義について説明する。動的負荷半径DLRは垂直荷重やタイヤ空気圧の影響を受けやすい。そのため、タイヤTの駆動半径Rは接地面に生じる摩擦トルクTfに影響し、摩擦減衰係数cTとタイヤねじり剛性kTにも影響することになる。
以下に、フラットベルト式タイヤ試験機を用いて動的負荷半径DLR及び有効転がり半径ERRを測定した結果を示す。フラットベルト式タイヤ試験機は、回転可能な無端状のフラットベルトと、車輪の中心軸を支持し、車輪をフラットベルト上に支持する車輪支持部とを有する。車輪支持部は、車輪に任意の垂直荷重を与えることができる。試験では、垂直荷重、タイヤTの空気圧(タイヤ空気圧)、及び車速を変化させ、動的負荷半径DLR及び有効転がり半径ERRを測定した。垂直荷重は、500Nから6500Nまで500N間隔で変化させた。車速は、20kphから80kphまで変化させた。タイヤ空気圧は200kPa、240kPa、280kPaとした。動的負荷半径DLRは、車輪の中心軸とフラットベルトの上面との距離を測定することによって得た。有効転がり半径ERRは、車速と車輪の回転速度とに基づいて車輪の1回転当たりの移動距離を取得し、車輪の1回転当たりの移動距離を2πで除することによって得た。
図7は、X軸を垂直荷重Fz[N]、Y軸を動的負荷半径DLR[m]としたグラフである。図8は、X軸を垂直荷重Fz[N]、Y軸を有効転がり半径ERR[m]としたグラフである。図7及び図8において、車速は全て80kphであり、タイヤTの空気圧は200kPa、240kPa、280kPaである。図7から、垂直荷重Fzが増加すると、動的負荷半径DLRが減少することが判る。また、タイヤ空気圧が減少すると、動的負荷半径DLRが減少することが判る。同様に、図8から、垂直荷重Fzが増加すると、有効転がり半径ERRが減少することが判る。また、タイヤ空気圧が減少すると、有効転がり半径ERRが減少することが判る。図7及び図8から、垂直荷重Fz、車速、タイヤ空気圧が同じでも、有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとは値が異なることが判る。また、垂直荷重に対する有効転がり半径ERRの変化率は、垂直荷重に対する動的負荷半径DLRの変化率よりも小さいことが判る。これにより、有効転がり半径ERRは、動的負荷半径DLRよりも垂直荷重及びタイヤ空気圧の影響を受け難いことが判る。
図9は、タイヤ空気圧を200kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をタイヤ半径[m]としたグラフである。図10は、タイヤ空気圧を240kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をタイヤ半径[m]としたグラフである。図11は、タイヤ空気圧を280kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をタイヤ半径[m]としたグラフである。図9~図11から、車速の増加に応じて、有効転がり半径ERR及び動的負荷半径DLRが増加することが判る。また、垂直荷重、タイヤ空気圧、及び車速が同じ場合、有効転がり半径ERRの方が動的負荷半径DLRより大きいことが判る。タイヤ空気圧及び車速が一定であるときに、垂直荷重が500Nから6500Nまで変化すると、有効転がり半径ERRは、約2%減少する。一方、タイヤ空気圧及び車速が一定であるときに、垂直荷重が500Nから6500Nまで変化すると、動的負荷半径DLRは、約8~17%減少する。
図12は、X軸をタイヤ空気圧[Pa]、Y軸をタイヤ半径変化率としたグラフである。図12には、車速が20km/h又は80km/hであるときの有効転がり半径ERRの変化率及び動的負荷半径DLRの変化率が示されている。有効転がり半径ERRの変化率及び動的負荷半径DLRの変化率のそれぞれは、車速及びタイヤ空気圧がグラフ中の値である場合に垂直荷重が6500Nから500Nまで変化したときの値である。図12からタイヤ空気圧が200kPaから280kPaまで変化するときに、有効転がり半径ERRの変化率の変化量は動的負荷半径DLRの変化率の変化量よりも小さい。有効転がり半径ERRの変化率は、1%以下である。以上より、有効転がり半径ERRは動的負荷半径DLRよりタイヤ空気圧の影響を受け難いことが判る。
図13は、タイヤ空気圧を200kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をDLR/ERRとしたグラフである。図14は、タイヤ空気圧を240kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をDLR/ERRとしたグラフである。図15は、タイヤ空気圧を280kPaとして、X軸を車速[km/h]、Y軸をDLR/ERRとしたグラフである。DLR/ERRは、有効転がり半径ERRに対する動的負荷半径DLRの比である。図13~図15から、垂直荷重が大きいほど、有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの差が大きくなることが判る。
図7~図15から、有効転がり半径ERRは、動的負荷半径DLRよりも垂直荷重、タイヤ空気圧、及び車速の影響を受け難いことが判る。タイヤ空気圧及び車速が一定であるときに、垂直荷重が500Nから6500Nまで変化すると、有効転がり半径ERRは約2%減少する。一方、タイヤ空気圧及び車速が一定であるときに、垂直荷重が500Nから6500Nまで変化すると、動的負荷半径DLRは、約8~17%減少する。弾性滑り領域はスリップ率が約10%であるため、スリップ率の検出誤差が10%以上になると弾性滑り領域を検出することが困難になる。有効転がり半径ERRは、タイヤの使用条件において変化率が2%であるため、弾性滑り領域においてタイヤスリップ率の検出に使用することができる。有効転がり半径ERRは、動的負荷半径DLRよりもタイヤスリップ率の検出精度を向上させることができる。
図16は、垂直荷重の変化に対応したタイヤの形状変化を示す説明図である。図16に示すように、垂直荷重が増加すると、タイヤTは路面に押し付けられて、タイヤは垂直方向に縮み、水平方向に伸長する。これにより、タイヤTと路面との接地面の長さである接地面長さGPLが長くなる。また、接地面の前後方向(車輪の回転方向)における前端と車輪の中心軸とを通過する第1線分と接地面の後端と車輪の中心軸とを通過する第2線分とのなす角度を接地角GPAとする。第1線分及び第2線分のそれぞれの長さは有効転がり半径ERRに対応する。接地角GPAは垂直荷重の増加に応じて増加する。ここで、接地面長さGPL及び接地角GPAは、有効転がり半径ERRと、動的負荷半径DLRとを用いて以下のように表される。
GPL=2*√(ERR2-DLR2)
GPA=2*cos-1(DLR/ERR)
図17は、有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの関係を示すグラフである。図17では、車速が20km/h又は80km/h、タイヤ空気圧が200kPa、240kPa、又は280kPa、垂直荷重が500N~6500Nである。図17から、有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとは低い相関性を有することが判る。また、有効転がり半径ERRの変化量は動的負荷半径DLRの変化量よりも小さい。
図18は、動的負荷半径DLRと接地面長さGPLの関係を示すグラフである。図18では、車速が20km/h又は80km/h、タイヤ空気圧が200kPa、240kPa、又は280kPa、垂直荷重が500N~6500Nである。図18から、動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとは1次の相関関係を有することが判る。動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとの相関係数は、0.99以上である。
図19は、動的負荷半径DLRと接地面長さGPLの関係を示すグラフである。図19では、車速が20km/h又は80km/h、タイヤ空気圧が200kPa、240kPa、又は280kPa、垂直荷重が4000N~6500Nである。図19は、図18のグラフから垂直荷重が4000N~6500Nである部分を抽出したものである。図19から、動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとは1次の相関関係を有することが判る。動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとの相関係数は、0.998以上である。垂直荷重が4000N~6500Nである場合の動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとの相関係数は、垂直荷重が500N~6500Nである場合の動的負荷半径DLRと接地面長さGPLとの相関係数よりも高くなる。
図20は、有効転がり半径ERRと接地面長さGPLとの関係を示すグラフである。図20では、車速が20km/h又は80km/h、タイヤ空気圧が200kPa、240kPa、又は280kPa、垂直荷重が4000N~6500Nである。図20から、有効転がり半径ERRと接地面長さGPLとは1次の相関関係を有することが判る。図19と図20から、有効転がり半径ERRの接地面長さGPLに対する変化量は、動的負荷半径DLRの接地面長さGPLに対する変化量よりも小さい。
図21は、接地面長さGPLと接地角GPAとの関係を示すグラフである。図21から、接地面長さGPL及び接地角GPAには、1次の相関があることが判る。図22は、接地角GPAと有効転がり半径ERRとの関係を示すグラフである。図22から、接地角GPAの増加に応じて有効転がり半径ERRは減少する。接地角GPAが約30deg以上の領域では、接地角GPAと有効転がり半径ERRとは1次の相関があることが判る。
図7及び図8から、垂直荷重の変化に対する有効転がり半径ERRの変化率は、垂直荷重の変化に対する動的負荷半径DLRの変化率よりも小さい。そのため、振幅比と位相遅れとを算出するときに、動的負荷半径DLRよりも有効転がり半径ERRを使用することによって垂直荷重、タイヤ空気圧、車速の影響を受け難くなる。垂直荷重の変化に対する有効転がり半径ERRの変化率は、垂直荷重が大きくなるほど小さくなる。そのため、垂直荷重が2500N以上6500N以下の範囲、より好ましくは垂直荷重が3500N以上6500N以下の範囲、更に好ましくは垂直荷重が4000N以上6500N以下の範囲における有効転がり半径ERRを使用するとよい。普通乗用車の場合、車両の重量は約1428kgである。この場合、1G状態において、駆動輪である前輪の1つの車輪に加わる荷重は、約4000Nになる。そのため、タイヤ駆動半径は、1G状態における有効転がり半径ERRであるとよい。
図17から、垂直荷重の範囲を500N以上6500N以下とした場合の有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの1次の相関係数は約0.82である。一方、垂直荷重の範囲を2500N以上6500N以下とした場合の有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの1次の相関係数は約0.96である。また、有効転がり半径ERRと動的負荷半径DLRとの1次の相関係数が高い領域では、動的負荷半径DLRが大きく変化しても有効転がり半径ERRの変化が小さいことがわかる。
図23は、X軸が垂直荷重、第1Y軸が動的負荷半径DLR、第2Y軸が比を表すグラフである。図23中のグラフ231は、タイヤ空気圧が280kPa、車速が80km/hであるときの動的負荷半径DLRを表す。図23中のグラフ232は、タイヤ空気圧が200kPa、車速が20km/hであるときの動的負荷半径DLRを表す。図23中のグラフ233は、タイヤ空気圧が280kPa、車速が80km/hであるときの動的負荷半径DLRの変化率を表す。動的負荷半径DLRの変化率は、垂直荷重が6000Nであるときの動的負荷半径DLRを基準とした値である。図23中のグラフ234は、グラフ232に対するグラフ231の比を表す。図23中のグラフ235は、各垂直荷重においてグラフ233とグラフ234と乗算した値を表す。
図24は、X軸を垂直荷重、第1Y軸を有効転がり半径ERR、第2Y軸が比を表すグラフである。図24中のグラフ241は、タイヤ空気圧が280kPa、車速が80km/hであるときの有効転がり半径ERRを表す。図24中のグラフ242は、タイヤ空気圧が200kPa、車速が20km/hであるときの有効転がり半径ERRを表す。図24中のグラフ243は、タイヤ空気圧が280kPa、車速が80km/hであるときの有効転がり半径ERRの変化率を表す。有効転がり半径ERRの変化率は、垂直荷重が6000Nであるときの有効転がり半径ERRを基準とした値である。図24中のグラフ244は、グラフ242に対するグラフ241の比を表す。図24中のグラフ245は、各垂直荷重においてグラフ243とグラフ244と乗算した値を表す。
図23及び図24から、有効転がり半径ERRは動的負荷半径DLRよりも、垂直荷重、タイヤ空気圧、及び速度の影響を受け難いことが判る。有効転がり半径ERRは、垂直荷重が大きいほど、垂直荷重、タイヤ空気圧、及び速度から受ける影響が小さくなる。動的負荷半径DLRの変化率は、重量が1428kgである一般的な車両の1G状態(駆動輪である前輪の1つの車輪に加わる垂直荷重が4000N)において、約5.3%である。一方、有効転がり半径ERRの変化率は、重量が1428kgである一般的な車両の1G状態(駆動輪である前輪の1つの車輪に加わる垂直荷重が4000N)において、約0.6%である。そのため、1G状態におけるタイヤ半径に有効転がり半径ERRを使用することによって、タイヤスリップ率の検出精度を向上させることができる。
以下に、車両の走行中にタイヤ駆動半径を取得する方法について説明する。図25は、車両の走行中においてタイヤ駆動半径を取得するためのフロー図である。図25に示す手順は、制御装置14によって実行される。制御装置14は、最初に、計測区間を設定する(S1)。計測区間は、計測区間の始点及び終点と、始点から終点までの道路に沿った距離である区間距離と、区間の特性に関する情報を含む。制御装置14は、計測区間に関する情報を、ナビゲーション装置15の地図情報から取得するとよい。また、制御装置14は、区間距離を距離センサ12Lによって取得してもよい。区間の特性は、路面の傾斜角を含む。制御装置14は、傾斜角センサ12Mやナビゲーション装置15の地図情報に基づいて区間の特性を取得するとよい。
次に、制御装置14は、始点に達したときから終点に達するときまでの各車輪3の回転数を取得する(S2)。
次に、制御装置14は、ステップS2で取得した各車輪3の回転数に基づいて、左右の車輪3の回転数差である左右回転数差を算出し、左右回転数差が第1判定値以下であるか否かを判定する(S3)。左右回転数差は、左右の前輪の回転数差でもよく、左右の後輪の回転数差でもよい。左右回転数差が第1判定値以下でない場合、ステップS1に戻る。左右回転数差が第1判定値以下である場合、ステップS4に進む。
ステップS4では、制御装置14は、ステップS2で取得した各車輪3の回転数に基づいて、駆動輪と従動輪の回転数差である前後回転数差を算出し、前後回転数差が第2判定値以下であるか否かを判定する(S4)。駆動輪は前輪であってもよく、後輪であってもよい。前輪及び後輪の回転数は、左右のいずれかの車輪の回転数であってもよく、左右の車輪の回転数の平均値であってもよい。前後回転数差が第2判定値以下でない場合、ステップS1に戻る。前後回転数差が第2判定値以下である場合、ステップS5に進む。
ステップS5では、区間距離と、各車輪の回転数とに基づいてタイヤ駆動半径を取得する。タイヤ駆動半径は、有効転がり半径ERRであり、区間距離を2π及び車輪の回転数で除することによって算出される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、4輪車両に限らず、2輪車両にも適用することができる。
1 :車両
2 :車体
3 :車輪
3F :前輪
3R :後輪
5 :駆動源
5A :内燃機関
5B :減速装置
5C :差動装置
6 :動力伝達部材
10 :走行制御システム
12 :車両センサ
12H :エンジン回転数センサ
14 :制御装置
14A :推定部
14B :制御部
14C :トルク取得部

Claims (5)

  1. 駆動源に動力伝達部材を介して接続される車輪のタイヤの路面に対する滑り状態を判定するタイヤの滑り状態判定方法であって、
    前記動力伝達部材の回転変動及び前記車輪のホイールの回転変動を検出し、
    前記動力伝達部材の回転変動振幅に対する前記ホイールの回転変動振幅の振幅比と、前記動力伝達部材の回転変動に対する前記ホイールの回転変動の位相遅れとに基づいて、前記ホイール及び前記タイヤの振動モードが、弾性滑り状態の周波数応答を表す弾性滑りモードか移動滑り状態の周波数応答を表す移動滑りモードかを判定し、
    前記ホイール及び前記タイヤの振動モードが前記移動滑りモードである場合に、前記タイヤが移動滑り状態であると判定し、
    前記振幅比と前記位相遅れとは、タイヤ駆動半径に動的負荷半径と有効転がり半径との関係が線形になる領域の有効転がり半径を適用して算出し、
    前記動的負荷半径は、前記車輪の中心軸と路面との距離であり、
    前記有効転がり半径は、前記タイヤが1回転するときに進む距離を2πで除した値であるタイヤの滑り状態判定方法。
  2. 前記動的負荷半径と前記有効転がり半径との関係が線形になる領域では、前記動的負荷半径と前記有効転がり半径との相関係数が0.99以上である請求項1に記載のタイヤの滑り状態判定方法。
  3. 前記タイヤ駆動半径は、1G状態における前記有効転がり半径である請求項1に記載のタイヤの滑り状態判定方法。
  4. 前記タイヤ駆動半径は、前記車輪に加わる垂直荷重が2000N以上6500N以下の範囲であるときの有効転がり半径である請求項1に記載のタイヤの滑り状態判定方法。
  5. 前記有効転がり半径は、GNSS信号に基づいて検出された所定期間の車両の走行距離を、前記所定期間における前記タイヤの回転数で除することによって算出される請求項1~4のいずれか1つの項に記載のタイヤの滑り状態判定方法。
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