JP7419060B2 - ボールエンドミル - Google Patents
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Description
しかしながら、この場合でも、切削速度が低いためチゼル104にかかる負荷が過大で切削抵抗が大きく、発熱や異常摩耗を引き起こすという問題を改善できていなかった。
本発明によるボールエンドミルは、中心軸線付近におけるチゼルまたは凹部を含む略円弧状の底刃で切削加工すると、切刃部がcBN製またはPCD製であるため高硬度である上に円弧状の底刃を半径Rの0%より大きく6%以下の芯下がりに形成したため、底刃の切削性が高い上に底刃及びチゼルまたは凹部の摩耗と欠損を低減することができる。
複数の底刃の回転方向前方に形成した複数のギャッシュ溝が半径Rの1%~3%の範囲で互いに交差しており、これに重なる底刃間の中央に凹部を形成したため、切削時に底刃間の凹部で摩耗と欠損を生じにくく、切削性が高い。
底刃の間にチゼルを設けているが、底刃が高硬度で芯下がりに形成したため、底刃の切削性が高い上に底刃の間のチゼルの摩耗と欠損を低減することができる。
切刃部で切削加工する際、チゼルを有する部分が高硬度で厚みが小さいため被削材に押圧されてもチゼルの摩耗と欠損を低減することができる。
底刃のアキシャルレーキ角を-10°~+15°の範囲で正角側に形成したため、芯下がりと相まって切削性が高い。
図1乃至図3は本発明の第一実施形態によるボールエンドミル1を示すものである。図1及び図2において、本実施形態によるボールエンドミル1は、略円柱状に形成されていて中心軸線Oを中心に回転される工具本体2と、その先端部に形成された切刃部3と、を備えている。ボールエンドミル1の少なくとも切刃部3は高硬度材料からなるcBN焼結体によって形成されている。或いは、ボールエンドミル1の切刃部3の材質としてcBNに代えてPCDを用いてもよい。
このボールエンドミル1は機械部品や金型等の高硬度材を切削加工するのに用いられる。本明細書では工具本体2の中心軸線Oに沿った切刃部3側を先端側、先端といい、主軸に連結する反対側を基端側、基端というものとする。
切刃部3において、各R刃5の回転方向前方側にはギャッシュ溝7が形成されている。ギャッシュ溝7に形成されたギャッシュ面はR刃5のすくい面8とされ、すくい面8は平面、凹曲面、凸曲面のいずれに形成されていてもよい。本実施形態ではすくい面8は例えば凸曲面とされている。
R刃5の回転方向後方側には逃げ面として正の逃げ角を有する二番逃げ面9と三番逃げ面10が順次形成されている。二番逃げ面9の逃げ角は+10°~+25°の正角に設定されている。この逃げ角は一定の角度でもよいし、R刃5側から回転方向後方に向かうに従って次第に大きくなるように、または小さくなるように変化してもよい。三番逃げ面10の逃げ角は二番逃げ面9の逃げ角より大きい逃げ角を有している。
工具本体2の側面視で、R刃5と外周刃13は先端側から基端側に向けて回転方向後方側に捩じれている。外周刃13はR刃5と同一角度またはそれ以上の角度で後方に捩じれたねじれ角を有している。R刃5のギャッシュ溝7と外周刃13のフルート溝14もR刃5及び外周刃13と同様に先端側から基端側に向かうに従って回転方向後方側に捩じれている。
チゼル18はデッドスポットに相当する。チゼル18は延長逃げ面18aが中心軸線Oに重なっており、すくい面と延長逃げ面18aの間の稜線を切刃として工具本体2の回転時に切削可能ではあるが、中心軸線Oの近傍であるため切削速度が低い部分であり切削性が悪い。
ボールエンドミル1を中心軸線O回りに回転させつつ切刃部3の中心軸線O方向の縦送りによる切り込みでは、中央のチゼル18では切削できないため切削抵抗が上昇し、切刃部3の先端面4に位置する延長逃げ面18aが摩耗する。しかし、チゼル18の延長逃げ面18aの内接円の直径tは半径Rの0.5%~2.0%の範囲と小さいため延長逃げ面18aの摩耗量が小さい。その後、ボールエンドミル1を横送りすることでR刃5によって加工面の立壁を切削加工する。ボールエンドミル1の横送りによって、切り込み時に切削できなかったチゼル18の部分の被削材をR刃5で切削加工する。
以下に本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した実施形態の部分や部品と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を行うものとする。
切刃部3において、各R刃5の回転方向前方側にはギャッシュ溝7が形成されている。ギャッシュ溝7のギャッシュ面はR刃5のすくい面8とされている。すくい面8は例えば凸曲面とされている。
R刃5の基端側には外周刃13が形成され、外周刃13の回転方向前方側にはフルート溝14が形成されている。フルート溝14には外周刃13のすくい面15が形成されている。R刃5の回転方向後方側には逃げ面として正の逃げ角を有する二番逃げ面9と三番逃げ面10が順次形成されている。二番逃げ面9の逃げ角は+10°~+25°の正角に設定されている。二番逃げ面9の逃げ角は一定角度または可変の逃げ角に設定されている。
また、切刃部3の先端面4において、R刃5の回転方向前方側に形成されたギャッシュ溝7は、それぞれ中心軸線Oを超えて径方向の反対側の領域にまで延びている。二つのギャッシュ溝7は中心軸線Oの領域において凹部21で重複して互いに交差している。図4に示す対向するR刃5の中心側端部間の内接円(凹部21)の直径dはR刃5の半径Rの1%~3%の範囲に設定されている。中心軸線O側のR刃5間の内接円の直径dは1%より小さいと切り屑が凝着して異常摩耗を生じるという欠点がある。また、3%より大きいと切刃部3による立壁加工時の凹部21の径が大きくなりすぎて非切削で残る凸部の径が増大し、横送りした際のR刃5による凸部の切削負荷が増大し、加工面粗さが劣化するという欠点がある。
例えば、ボールエンドミル1の切刃部3を中心軸線O回りに回転させつつ縦方向に切り込んで横送りする等高線荒取り加工を行うと、縦送り時に2枚のR刃5の中央に形成された凹部21で切削できない。すると、被削材に凹部21による切削残りの凸部が生じる。
その後、ボールエンドミル1を横送りすることで、切刃部3の中心軸線O部分の凹部21に刃がなくても、切り込み時に切削できなかった切削残りの凸部をR刃5によって切削加工する。しかも、切刃部3のR刃5はcBN製で高硬度である上に凹部21の径が小さいため、切削性を向上できて摩耗と欠けを抑制することができる。
そのため、R刃5による切削性が高くR刃5及び凹部21の部分での摩耗と欠損を抑制できる。しかも、R刃5の間の凹部21にチゼル18がないため、切削抵抗をより一層低減できる。
実施例1、実施例2はそれぞれ一対のR刃5が芯下がりであり、従来例は芯上がりとされている。実施例1は切刃部3の中心軸線O付近に内接円の直径tのチゼル18があり、実施例2は切刃部3の中心軸線O付近に凹部21が形成されている。従来例は中心軸線O付近にチゼル18より大きな厚みのチゼル104が形成されている。
そして、比較試験結果として、被削材を10時間切削加工した切削前と切削後の各ボールエンドミル1、20、100の回転中心付近の逃げ面の摩耗状態、R刃5、102の摩耗量を示す輪郭投影写真を示した。
これに対し、図8(a)、(b)に示す実施例1では、切削加工前のチゼル18の延長逃げ面18aとR刃5に対し、同図(c)、(d)に示す切削加工後にチゼル18の延長逃げ面18aが僅かに摩耗し、R刃5の刃先は僅かに摩耗したにすぎない。
これらの試験結果から、従来例の結果に対して、実施例1及び実施例2では、一対のR刃5の中心部分の摩耗が小さく、R刃5の刃先の摩耗も小さかった。そのため、実施例1及び実施例2は切削性を向上できて摩耗と欠けを抑制することができることを確認できた。
なお、上述した各実施形態によるボールエンドミル1、20において、切刃部3に形成するR刃5(底刃)は2枚に限定されることなく、3枚または4枚以上でもよい。R刃5が3枚以上配設された場合、これら複数のR刃5は等ピッチに配設されているが、不等ピッチに配設されていてもよい。
2 工具本体
3 切刃部
5 R刃
7 ギャッシュ溝
8 すくい面
9 二番逃げ面
13 外周刃
14 フルート溝
15 すくい面
18 チゼル
21 凹部
O 中心軸線
Claims (2)
- 中心軸線回りに回転可能な工具本体の先端側にcBN製またはPCD製の切刃部を備えたボールエンドミルにおいて、
前記切刃部の先端面に略円弧状に形成されていて芯下がりに設定された複数の底刃と、
前記底刃の回転方向前方側に形成されていて前記底刃のすくい面を形成する複数のギャッシュ溝と、
前記複数の底刃の間に設けられていて前記中心軸線を含む凹部と、
を備えており、前記底刃間の芯下がり量は前記底刃の半径Rの0%より大きく6%以下に設定されており、
前記工具本体の先端面において、前記複数のギャッシュ溝は互いに交差して前記凹部に連通して配設され、前記底刃間の内接円の直径は前記底刃の半径Rの1%~3%の範囲に設定されていることを特徴とするボールエンドミル。 - 前記底刃のアキシャルレーキ角は-10°~+15°の範囲に設定されている請求項1に記載されたボールエンドミル。
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