以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による無線通信システム1の構成図である。無線通信システム1は、移動中継局2と、端末局3と、基地局4とを有する。無線通信システム1が有する移動中継局2、端末局3及び基地局4のそれぞれの数は任意であるが、端末局3の数は多数であることが想定される。無線通信システム1は、即時性が要求されない情報の伝送を行う通信システムである。複数の端末局3からそれぞれ送信された情報は、移動中継局2を介して伝送され、基地局4によって収集される。
移動中継局2は、移動体に搭載され、通信可能なエリアが時間の経過により移動する中継装置の一例である。移動中継局2は、例えば、LEO(Low Earth Orbit)衛星に備えられる。LEO衛星の高度は2000km以下であり、地球の上空を1周約1.5時間程度で周回する。端末局3及び基地局4は、地上や海上など地球上に設置される。複数の端末局3は、互いに異なる場所に存在する。端末局3は、例えば、IoT端末である。端末局3は、センサが検出した環境データ等のデータを収集し、移動中継局2へ無線により送信する。同図では、2台の端末局3のみを示している。移動中継局2は、地球の上空を移動しながら、複数の端末局3それぞれから送信されたデータを無線信号により受信する。移動中継局2は、受信したこれらのデータを蓄積し、蓄積しておいたデータを、基地局4との通信が可能なタイミングで一括して基地局4へ無線送信する。基地局4は、移動中継局2から端末局3が収集したデータを受信する。
移動中継局2として、静止衛星や、ドローン、HAPS(High Altitude Platform Station)などの無人航空機に搭載された中継局を用いることが考えられる。しかし、静止衛星に搭載された中継局の場合、地上のカバーエリア(フットプリント)は広いものの、高度が高いために、地上に設置されたIoT端末に対するリンクバジェットは非常に小さい。一方、ドローンやHAPSに搭載された中継局の場合、リンクバジェットは高いものの、カバーエリアが狭い。さらには、ドローンにはバッテリーが、HAPSには太陽光パネルが必要である。本実施形態では、LEO衛星に移動中継局2を搭載する。よって、リンクバジェットは限界内に収まることに加え、LEO衛星は、大気圏外を周回するために空気抵抗がなく、燃料消費も少ない。また、ドローンやHAPSに中継局を搭載する場合と比較して、フットプリントも大きい。
LEO衛星に搭載された移動中継局2は、高速で移動しながら通信を行うため、個々の端末局3や基地局4が移動中継局2と通信可能な時間が限られている。具体的には、地上で見ると、移動中継局2は、10分程度で上空を通り過ぎる。また、端末局3には、様々な仕様の無線通信方式が使用される。そこで、移動中継局2は、移動中の現在位置におけるカバレッジ内の端末局3から端末アップリンク信号を受信し、受信した端末アップリンク信号の波形データを保存しておく。移動中継局2は、カバレッジに基地局4が存在するタイミングにおいて、端末アップリンク信号の波形データを設定した基地局ダウンリンク信号を、基地局4に無線送信する。基地局4は、移動中継局2から受信した基地局ダウンリンク信号を復調して端末アップリンク信号の波形データを得る。基地局4は、波形データが表す端末アップリンク信号に対して復調及び復号を行うことにより、端末局3が送信したデータである端末送信データを得る。
なお、本実施形態による無線通信システム1では、移動中継局2と端末局3とがLPWA(Low Power Wide Area)を用いて無線通信を行う構成であるものとする。各々の端末局3は、通信の信頼性を確保するため、同一の端末アップリンク信号を複数回、移動中継局2へ向けて送信する構成であってもよい。さらに、前述のとおり、端末局3の数は多数であることが想定される。このような構成により、端末局3から移動中継局2へ送信されるデータの通信量が増大し、通信帯域が逼迫する場合がある。本実施形態による無線通信システム1は、通信帯域の逼迫を防ぐため、端末局3から移動中継局2へのデータの送信における、送信タイミングを制御する。送信タイミングの制御は、各々の端末局3が存在する位置と、通信の混雑度とに基づいて行われる。
具体的には、各々の端末局3は、環境データ等のデータを移動中継局2へ送信する際に、当該データに加えて自局の位置を示す位置情報を含めた端末アップリンク信号を送信する。なお、端末局3は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機等の測位装置を備えており、自局の位置を示す位置情報を生成することができる。
移動中継局2は、複数の端末局3から送信された端末アップリンク信号をそれぞれ受信するとともに、通信の混雑度を測定する。通信の混雑度とは、例えば、移動中継局2における、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯のRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)によって表される度合いである。また、移動中継局2は、それぞれの端末アップリンク信号に含まれる、端末局3の位置を示す位置情報を取得する。移動中継局2は、通信の混雑度と複数の端末局3のそれぞれの位置を示す位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを行う。
このとき、例えば、移動中継局2は、分割された小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。なお、ここでいう均一化とは、多用の誤差が含まれていてもよく、複数の小エリアの間で通信の混雑度が完全に等しくなることを意味しているわけではない。以下、通信対象エリアがエリア分けされることによって生成される複数の小エリアの各々を識別する情報を「エリア情報」という。
移動中継局2は、端末局3に対し、環境データ等のデータを自己の移動中継局2へ送信することを許可することを示す制御信号(以下、「送信許可信号」という。)を事前に送信する。また、送信許可信号には、エリア情報が含まれる。移動中継局2は、送信許可信号に含めるエリア情報を順に切り替えながら、当該送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ向けて送信する。これにより、移動中継局2は、自局への端末アップリンク信号の送信を許可する小エリアを時間とともに切り替えながら、地球上を周回することができる。
端末局3は、送信許可信号を受信し、当該送信許可信号に含まれるエリア情報を確認する。端末局3は、自局の位置が、当該エリア情報に基づく小エリアに含まれている場合、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始する。すなわち、端末局3は、自局の位置が、当該エリア情報に基づく小エリアに含まれていない場合には、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を行わず、待機する。端末局3は、移動中継局2へ送信する端末アップリンク信号に、環境データ等のデータに加えて、自局の位置を示す位置情報も含めて設定する。この位置情報は、例えば、移動中継局2の次の周回時におけるエリア分けに用いられる。
なお、端末局3が、経度及び緯度等によって示される位置と小エリアの範囲とが対応付けられた情報を予め記憶している構成であってもよい。すなわち、端末局3が、自局の位置が含まれる小エリアを認識することができる構成であってもよい。この場合、端末局3は、送信許可信号に含まれるエリア情報に基づく小エリアと、自局の位置が含まれる小エリアとが一致している場合に、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始する。
なお、端末局3が、自局の位置が含まれる小エリアを認識することができる構成である場合、端末局3は、移動中継局2へ送信する端末アップリンク信号に、自局の位置を示す位置情報を設定する代わりに、自局の位置が含まれる小エリアを示すエリア情報を設定する構成であってもよい。
移動中継局2は、送信許可信号に含めるエリア情報を、異なる小エリアを示すエリア情報に順に切り替えながら周回することにより、通信の混雑度を均一化させつつ、複数の端末局3との通信を行うことができる。
なお、端末局3から移動中継局2への端末アップリンク信号の送信において、エリア情報に基づき送信タイミングを制御するための処理(以下、「送信制御処理」という。)における各装置の構成及び動作の詳細については後述される。以下、各々の端末局3から送信された環境データ等のデータを、移動中継局2を介して基地局4が収集するための処理(以下、「データ収集処理」という。)における各装置の構成及び動作の詳細についてまず説明する。
(データ収集処理)
データ収集処理における各装置の構成を説明する。
移動中継局2は、アンテナ21と、端末通信部22と、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25とを備える。
端末通信部22は、受信部221と、受信波形記録部222とを有する。受信部221は、アンテナ21により端末アップリンク信号を受信する。受信波形記録部222は、受信部221が受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222は、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222により書き込まれた受信波形情報を記憶する。
基地局通信部24は、任意の無線通信方式の基地局ダウンリンク信号により受信波形情報を基地局4へ送信する。基地局通信部24は、記憶部241と、制御部242と、送信データ変調部243と、送信部244とを備える。記憶部241は、移動中継局2を搭載しているLEO衛星の軌道情報と、基地局4の位置とに基づいて、予め計算された送信開始タイミングを記憶する。LEOの軌道情報は、任意の時刻におけるLEO衛星の位置、速度、移動方向などを得ることが可能な情報である。送信時刻は、例えば、送信開始タイミングからの経過時間で表してもよい。
制御部242は、記憶部241に記憶された送信開始タイミングにおいて、受信波形情報を基地局4に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、データ記憶部23から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、基地局ダウンリンク信号を電気信号から無線信号に変換し、アンテナ25から送信する。
端末局3は、データ記憶部31と、送信部32と、1本または複数本のアンテナ33とを備える。データ記憶部31は、センサデータなどを記憶する。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出し、読み出した端末送信データを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。
送信部32は、LPWA(Low Power Wide Area)により信号を送信する。LPWAには、LoRaWAN(登録商標)、Sigfox(登録商標)、LTE-M(Long Term Evolution for Machines)、NB(Narrow Band)-IoT等があるが、任意の無線通信方式を用いることができる。また、送信部32は、他の端末局3と時分割多重、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)などにより送信を行ってもよい。
送信部32は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末アップリンク信号の送信に使用するチャネル及び送信タイミングを決定する。また、送信部32は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、複数本のアンテナ33から送信する信号のビーム形成を行ってもよい。
基地局4は、アンテナ41と、受信部42と、基地局信号受信処理部43と、端末信号受信処理部44とを備える。受信部42は、アンテナ41により受信した基地局ダウンリンク信号を、電気信号に変換する。基地局信号受信処理部43は、受信部42が電気信号に変換した受信信号の復調及び復号を行い、受信波形情報を得る。基地局信号受信処理部43は、受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
端末信号受信処理部44は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。このとき、端末信号受信処理部44は、端末局3が送信に使用した無線通信方式により受信処理を行って端末送信データを取得する。端末信号受信処理部44は、端末信号復調部441と、端末信号復号部442とを備える。
端末信号復調部441は、波形データを復調し、復調により得られたシンボルを端末信号復号部442に出力する。端末信号復調部441は、波形データが示す信号に対して、移動中継局2のアンテナ21が受信した端末アップリンク信号のドップラーシフトを補償する処理を行ってから、復調を行ってもよい。アンテナ21が受信した端末アップリンク信号が受けるドップラーシフトは、端末局3の位置と、移動中継局2が搭載されているLEOの軌道情報に基づき予め計算される。端末信号復号部442は、端末信号復調部441が復調したシンボルを復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。
データ収集処理における無線通信システム1の動作を説明する。
図2は、端末局3から移動中継局2へ端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1の処理を示すフロー図である。
端末局3は、外部又は内部に備えられた図示しないセンサが検出したセンサデータ(例えば環境データ等)を随時取得し、取得したセンサデータをデータ記憶部31に書き込む(ステップS111)。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出す。送信部32は、移動中継局2を搭載したLEO衛星の軌道情報に基づいて予め得られた送信開始タイミングにおいて、端末送信データを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線送信する(ステップS112)。端末局3は、ステップS111からの処理を繰り返す。
移動中継局2の受信部221は、端末局3から送信された端末アップリンク信号を受信する(ステップS121)。送信元の端末局3の無線通信方式によって、同一の周波数については時分割で1台の端末局3からのみ端末アップリンク信号を受信する場合と、同一の周波数で同時に複数台の端末局3から端末アップリンク信号を受信する場合がある。受信波形記録部222は、受信部221が受信した端末アップリンク信号の波形を表す波形データと、受信時刻とを対応付けた受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む(ステップS122)。移動中継局2は、ステップS121からの処理を繰り返す。
図3は、移動中継局2から基地局4へ基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1の処理を示すフロー図である。
移動中継局2の基地局通信部24が有する制御部242は、記憶部241に記憶された送信開始タイミングであることを検出すると、受信波形情報の送信を送信データ変調部243及び送信部244に指示する(ステップS211)。送信データ変調部243は、データ記憶部23に蓄積していた受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調し、基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、送信データ変調部243が生成した基地局ダウンリンク信号を無線によりアンテナ25から送信する(ステップS212)。移動中継局2は、ステップS211からの処理を繰り返す。
基地局4のアンテナ41は、移動中継局2から基地局ダウンリンク信号を受信する(ステップS221)。受信部42は、アンテナ41が受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号の受信信号に変換して、基地局信号受信処理部43に出力する。基地局信号受信処理部43は、受信信号を復調し、復調した受信信号を復号する(ステップS222)。基地局信号受信処理部43は、復号により得られた受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
端末信号受信処理部44は、受信波形情報に含まれる波形データが表す端末アップリンク信号の受信処理を行う(ステップS223)。具体的には、端末信号復調部441は、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。端末信号復調部441は、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを、端末信号復号部442に出力する。端末信号復号部442は、端末信号復調部441から入力したシンボルを特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。なお、端末信号復号部442は、SIC(Successive Interference Cancellation)のように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。基地局4は、ステップS221からの処理を繰り返す。
(送信制御処理)
送信制御処理における各装置の構成を説明する。
移動中継局2の構成について説明する。図1に示されるように、移動中継局2は、通信状況測定部223と、タイミング制御部224と、記憶部225と、送信部226と、位置情報取得部227とをさらに備える。
通信状況測定部223は、受信部221における、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定する。通信状況測定部223は、測定結果に基づいて、通信の混雑度を示す情報(以下、「混雑度情報」という。)を生成する。例えば、通信状況測定部223は、受信部221における、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を測定し、混雑度情報を生成する。
なお、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報そのものであってもよいし、そうでなくてもよい。例えば、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報が所定の閾値の範囲内であるか否かに基づいて決定されるレベルを示す情報であってもよい。すなわち、例えば、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数がある範囲内である場合にはレベル1、より多い範囲内である場合にはレベル2、更により多い範囲内である場合にはレベル3といったように一意にレベルが決定される。この場合、アクセス数や受信信号強度の値の範囲とレベルとが対応付けられた情報が、例えば記憶部225などに予め記憶されている。
位置情報取得部227は、各々の端末局3の位置情報を取得する。当該位置情報は、各々の端末局3から送信され、受信部221によって受信された端末アップリンク信号に含まれる。
タイミング制御部224は、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を端末局3へ送信するタイミングを制御する。前述のとおり、送信許可信号は、端末局3に対し、環境データ等のデータを自己の移動中継局2へ送信することを許可することを示す制御信号である。タイミング制御部224は、通信状況測定部223によって生成された混雑度情報を取得する。また、タイミング制御部224は、位置情報取得部227によって取得された、各々の端末局3の位置を示す位置情報を取得する。
タイミング制御部224は、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを行う。前述の通り、例えば、タイミング制御部224は、分割された小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。タイミング制御部224は、エリア分けによって生成された複数のエリア情報を記憶部225に記憶させる。
タイミング制御部224は、記憶部225に記録されたエリア情報を参照し、特定の小エリアを示す少なくとも1つのエリア情報を含む送信許可信号を生成する。タイミング制御部224は、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を端末局3へ送信するタイミングを制御するとともに、送信許可信号に含めるエリア情報の切り替えを制御する。
送信部226は、タイミング制御部224によって生成された送信許可信号を取得し、取得された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する。送信部226は、LPWAにより信号を送信する。LPWAには、LoRaWAN(登録商標)、Sigfox(登録商標)、LTE-M、NB-IoT等の任意の無線通信方式を用いることができる。送信部226は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末ダウンリンク信号の送信に使用するチャネルを決定する。送信部226が端末ダウンリンク信号を送信するタイミングは、タイミング制御部224によって制御される。
記憶部225は、移動中継局2を搭載しているLEO衛星の軌道情報と通信対象エリアの位置とに基づいて予め計算された通信対象エリアごとの送信開始タイミングを記憶する。LEOの軌道情報は、任意の時刻におけるLEO衛星の位置、速度、移動方向などを得ることが可能な情報である。送信時刻は、例えば、送信開始タイミングからの経過時間で表してもよい。タイミング制御部224は、記憶部225に記憶された、通信対象エリアごとの送信開始タイミングにおいて、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ送信するように送信部226を制御する。
前述の通り、移動中継局2は、例えば、地球の上空を所定の周期で周回するLEO衛星などに備えられる。タイミング制御部224は、例えば、以前(例えば、一周回前の時点)において通信対象エリア内の複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報を、送信許可信号に含める。または、タイミング制御部224は、例えば、過去の同一の時間帯において通信対象エリア内の複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報を送信許可信号に含めるようにしてもよい。
端末局3の構成について説明する。図1に示されるように、端末局3は、受信部34と、送信制御部35と、位置情報生成部36とをさらに備える。
受信部34は、アンテナ33により端末ダウンリンク信号を受信する。
送信制御部35は、受信部34によって受信された端末ダウンリンク信号から送信許可信号を取得する。送信制御部35は、取得された送信許可信号に含まれるエリア情報を取得する。
位置情報生成部36は、例えばGPS受信機等の測位装置を備えており、自局の位置を特定する。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。
送信制御部35は、位置情報生成部36によって生成された、自局の位置を示す位置情報を取得する。送信制御部35は、取得された位置情報が示す自局の位置が、送信許可信号に含まれるエリア情報が示す小エリアに含まれているか否かを判定する。送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに含まれていない場合、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始させずに待機する。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに含まれている場合、送信部32に、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始させる。このとき、送信制御部35は、環境データ等のデータに加えて、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報を含めて設定した端末アップリンク信号を、送信部32に送信させる。
送信部32は、端末アップリンク信号を送信する。送信部32は、データ記憶部31から例えば環境データ等のセンサデータを端末送信データとして読み出す。送信部32は、読み出された端末送信データと、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報とが設定された端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。送信部32は、LPWAにより信号を送信する。
移動中継局2の受信部221は、アンテナ21により端末アップリンク信号を受信する。受信波形記録部222は、受信部221が受信した端末アップリンク信号に含まれる端末送信データの受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222は、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、選定された波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222により書き込まれた受信波形情報を記憶する。
送信制御処理における無線通信システム1の動作を説明する。
図4は、無線通信システム1による送信制御処理を示すフロー図である。移動中継局2のタイミング制御部224は、記憶部225に記録された、複数のエリア情報のうち、少なくとも1つのエリア情報を選択する(ステップS311)。
なお、記憶部225に記録された複数のエリア情報は、例えば、以前(例えば、移動中継局2の地球上の周回における一周回前の時点)において複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報である。なお、タイミング制御部224は、例えば自局の位置及び通信状況に基づいて、送信許可信号に含めるエリア情報を選択する。
移動中継局2のタイミング制御部224は、選択されたエリア情報を含む送信許可信号を生成する(ステップS312)。送信部226は、タイミング制御部224によって生成された送信許可信号を取得し、取得された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する(ステップS313)。移動中継局2は、ステップS311からの処理を繰り返す。
端末局3の受信部34は、アンテナ33により端末ダウンリンク信号を受信する(ステップS321)。端末局3の送信制御部35は、受信部34によって受信された端末ダウンリンク信号から送信許可信号を取得する。送信制御部35は、取得された送信許可信号に含まれるエリア情報を取得する(ステップS322)。
端末局3の位置情報生成部36は、自局の位置を特定する(ステップS323)。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。送信制御部35は、位置情報生成部36によって生成された、自局の位置を示す位置情報を取得する。送信制御部35は、取得された位置情報が示す自局の位置が、送信許可信号に含まれるエリア情報が示す小エリアに該当するか否か(含まれているか否か)を判定する(ステップS324)。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに該当しない(含まれていない)場合(ステップS324・No)、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始させずに待機する。すなわち、端末局3は、ステップS321からの処理を繰り返す。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに該当する(含まれている)場合(ステップS324・Yes)、送信部32に端末アップリンク信号の送信を開始させる。このとき、送信制御部35は、環境データ等のデータに加えて、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報が設定された端末アップリンク信号を、送信部32に送信させる。送信部32は、端末アップリンク信号を送信する(ステップS325)。端末局3は、ステップS321からの処理を繰り返す。
移動中継局2の受信部221は、アンテナ21により端末アップリンク信号を受信する(ステップS331)。移動中継局2の受信波形記録部222は、受信部221が受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222は、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、選定された波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222により書き込まれた受信波形情報を記憶する(ステップS332)。
移動中継局2の通信状況測定部223は、受信部221における、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定し(ステップS333)、通信の混雑度を示す情報(以下、「混雑度情報」という。)を生成する。移動中継局2の位置情報取得部227は、各々の端末局3の位置情報を取得する(ステップS334)。当該位置情報は、各々の端末局3から送信され、受信部221によって受信された端末アップリンク信号に含まれる。
タイミング制御部224は、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを実行する(ステップS335)。前述の通り、例えば、移動中継局2は、分割される小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。タイミング制御部224は、エリア分けによって生成された複数のエリア情報を記憶部225に記憶させる(ステップS336)。移動中継局2は、ステップS331からの処理を繰り返す。
以上説明したように、第1の実施形態による無線通信システム1によれば、移動中継局2は、複数の端末局3からそれぞれ送信される端末アップリンク信号を受信し、通信状況を測定する。移動中継局2は、通信状況に基づく混雑度情報を生成する。また、移動中継局2は、複数の端末局3からそれぞれ送信される端末アップリンク信号に含まれる位置情報を取得する。当該位置情報は、各々の端末局3の位置を示す情報である。移動中継局2は、混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを行う。
移動中継局2は、以降の周回時において、上記エリア分けによって分割された小エリアに存在する端末局3ごとに、端末アップリンク信号の送信を許可する。すなわち、移動中継局2は、端末局3に対して端末アップリンク信号の送信を許可する小エリアを示すエリア情報を含めた送信許可信号を端末ダウンリンク信号に設定する。移動中継局2は、エリア情報を含む送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ向けて送信する。
端末局3は、受信した端末ダウンリンク信号が示す送信許可信号を取得し、送信許可信号に含まれるエリア情報を取得する。端末局3は、例えば測位装置等により、自局の位置を特定する。端末局3は、取得されたエリア情報が示す小エリアの中に自局の位置が含まれる場合、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始する。このとき、端末局3は、環境データ等のデータと、自局の位置を示す位置情報とが設定された端末アップリンク信号を移動中継局2へ送信する。
このような構成により、無線通信システム1は、端末局3から移動中継局2への端末アップリンク信号の送信タイミングを、小エリアごとに制御することができる。無線通信システム1は、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けをする場合において、例えば通信の混雑度を均一化させるようにエリア分けをする。これにより、無線通信システム1は、通信の混雑度が変動する場合であっても、通信の混雑度を均一化させるように調整することができるため、通信の信頼性低下を抑制しつつ、より多くの端末局3から送信されるセンサデータを、移動中継局2を介して基地局4へ伝送することができる。
なお、小エリアを示すエリア情報は、例えば緯度及び経度によって示される範囲を示す情報であってもよい。または、小エリアを示すエリア情報は、例えば、緯度及び経度等によって予め所定の区画に分割された小エリアを識別するインデックス情報であってもよい。この場合、各々のインデックス情報に対応する緯度及び経度等の範囲を示す情報は、予め移動中継局2と端末局3との間で共有されている必要がある。
なお、前述の通り、端末局3の送信制御部35は、取得されたエリア情報に基づく小エリアが自局の位置を含んでいる場合、送信部32に端末アップリンク信号の送信を開始させる。このとき、送信制御部35は、直ちに端末アップリンク信号の送信を開始させるのではなく、エリア情報を取得してからランダム時間が経過したタイミングで端末アップリンク信号の送信を開始させるようにしてもよい。これにより、同一の小エリア内に位置する複数の端末局3が同時に移動中継局2へ端末アップリンク信号の送信を開始することを回避することができる。よって、移動中継局2における通信の混雑度が軽減される。
(第1の実施形態の変形例1)
本変形例では、移動中継局は、複数本のアンテナにより基地局ダウンリンク信号を送信する。以下では、基地局ダウンリンク信号の送信に、MIMO(Multiple Input Multiple Output)を用いる場合を例にして、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
図5は、第1の実施形態の変形例1による無線通信システム1aの構成図である。同図において、図1に示す第1の実施形態における無線通信システム1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。無線通信システム1aは、移動中継局2aと、端末局3と、基地局4aとを有する。
移動中継局2aは、アンテナ21と、端末通信部22と、データ記憶部23と、基地局通信部26と、複数のアンテナ25とを備える。基地局通信部26は、MIMOにより基地局4aへ受信波形情報を送信する。基地局通信部26は、記憶部261と、制御部262と、送信データ変調部263と、MIMO送信部264とを備える。記憶部261は、移動中継局2aを搭載しているLEO衛星の軌道情報と、基地局4aの位置とに基づいて、予め計算された送信開始タイミングを記憶する。さらに、記憶部261は、各アンテナ25から送信する基地局ダウンリンク信号の送信時刻毎のウェイトを予め記憶している。送信時刻毎のウェイトは、LEO衛星の軌道情報と、基地局4aが備える各アンテナ局410の位置とに基づいて計算される。なお、送信時刻によらず、一定のウェイトを使用してもよい。
制御部262は、記憶部261に記憶された送信開始タイミングにおいて、受信波形情報を基地局4aに送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。さらに、制御部262は、記憶部261から読み出した送信時刻毎のウェイトをMIMO送信部264に指示する。送信データ変調部263は、データ記憶部23から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル信号に変換した後、変調する。MIMO送信部264は、変調されたパラレル信号に、制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行い、各アンテナ25から送信する基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する。
基地局4aは、複数のアンテナ局410と、MIMO受信部420と、基地局信号受信処理部430と、端末信号受信処理部44とを備える。アンテナ局410は、移動中継局2aの複数のアンテナ25それぞれからの信号の到来角差が大きくなるように他のアンテナ局410と離れた位置に配置される。各アンテナ局410は、移動中継局2aから受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号に変換してMIMO受信部420に出力する。
MIMO受信部420は、複数のアンテナ局410から受信した基地局ダウンリンク信号を集約する。MIMO受信部420は、LEO衛星の軌道情報と、各アンテナ局410の位置とに基づいて、各アンテナ局410それぞれが受信した基地局ダウンリンク信号に対する受信時刻毎のウェイトを記憶している。MIMO受信部420は、各アンテナ局410から入力した基地局ダウンリンク信号に対して、その基地局ダウンリンク信号の受信時刻に対応したウェイトを乗算し、ウェイトが乗算された受信信号を合成する。なお、受信時刻によらず同じウェイトを用いてもよい。基地局信号受信処理部430は、合成された受信信号の復調及び復号を行い、受信波形情報を得る。基地局信号受信処理部430は、受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
無線通信システム1aの動作を説明する。
端末局3から端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1aの処理は、図2に示す第1の実施形態の無線通信システム1の処理と同様である。
図6は、移動中継局2aから基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1aの処理を示すフロー図である。移動中継局2aの基地局通信部26が有する制御部262は、記憶部261に記憶された送信開始タイミングであることを検出すると、受信波形情報の送信を送信データ変調部263及びMIMO送信部264に指示する(ステップS411)。送信データ変調部263は、データ記憶部23に蓄積していた受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル変換した後、変調する。MIMO送信部264は、送信データ変調部263が変調した送信データに制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行って、各アンテナ25から送信する送信信号である基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した各基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する(ステップS412)。移動中継局2aは、ステップS411からの処理を繰り返す。
基地局4aの各アンテナ局410は、移動中継局2aから基地局ダウンリンク信号を受信する(ステップS421)。各アンテナ局410は、受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号に変換した受信信号をMIMO受信部420に出力する。MIMO受信部420は、各アンテナ局410から受信した受信信号のタイミングを同期させる。MIMO受信部420は、各アンテナ局410が受信した受信信号にウェイトを乗算して加算する。基地局信号受信処理部430は、加算された受信信号を復調し、復調した受信信号を復号する(ステップS422)。基地局信号受信処理部430は、復号により得られた受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
端末信号受信処理部44は、図3に示す第1の実施形態の処理フローにおけるステップS223と同様の処理により、受信波形情報に含まれる波形データが表す端末アップリンク信号の受信処理を行う(ステップS423)。すなわち、端末信号復調部441は、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。端末信号復調部441は、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを端末信号復号部442に出力する。端末信号復号部442は、端末信号復調部441から入力したシンボルを、特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。なお、端末信号復号部442は、SICのように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。基地局4aは、ステップS421からの処理を繰り返す。
本変形例による無線通信システム1aによれば、移動中継局2aは、複数の端末局3から受信し、蓄積しておいたデータを、基地局4aと通信可能なタイミングで、短い時間で一括して品質良く送信することができる。
(第1の実施形態の変形例2)
本変形例では、移動中継局は、複数のアンテナにより端末アップリンク信号を受信し、複数のアンテナにより端末ダウンリンク信号を送信する。以下では、第1の実施形態の変形例1との差分を中心に説明する。
図7は、第1の実施形態の変形例2による無線通信システム1bの構成図である。同図において、図5に示す第1の実施形態の変形例1における無線通信システム1aと同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。無線通信システム1bは、移動中継局2bと、端末局3と、基地局4bとを有する。
移動中継局2bは、N本のアンテナ21(Nは2以上の整数)と、端末通信部22bと、データ記憶部23と、基地局通信部26と、複数本のアンテナ25とを備える。N本のアンテナ21をそれぞれ、アンテナ21-1~21-Nと記載する。
端末通信部22bは、N個の受信部221bと、N個の受信波形記録部222bとを有する。N個の受信部221bを、受信部221b-1~221b-Nと記載し、N個の受信波形記録部222bを、受信波形記録部222b-1~222b-Nと記載する。受信部221b-n(nは1以上N以下の整数)は、アンテナ21-nにより端末アップリンク信号を受信する。受信波形記録部222b-nは、受信部221b-nが受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222b-nは、アンテナ21-nのアンテナ識別子と、アンテナ21-nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。アンテナ識別子は、アンテナ21-nを特定する情報である。データ記憶部23は、アンテナ21-1~21-Nそれぞれが受信した端末アップリンク信号の波形データを含む受信波形情報を記憶する。
基地局4bは、複数のアンテナ局410と、MIMO受信部420と、基地局信号受信処理部430と、端末信号受信処理部450とを備える。
端末信号受信処理部450は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。このとき、端末信号受信処理部450は、端末局3が送信に使用した無線通信方式により受信処理を行って端末送信データを取得する。端末信号受信処理部450は、分配部451と、N個の端末信号復調部452と、合成部453と、端末信号復号部454とを備える。N個の端末信号復調部452をそれぞれ、端末信号復調部452-1~452-Nと記載する。
分配部451は、受信波形情報から同じ受信時刻の波形データを読み出し、読み出した波形データを、その波形データに対応付けられたアンテナ識別子に応じて端末信号復調部452-1~452-Nに出力する。つまり、分配部451は、アンテナ21-nのアンテナ識別子に対応付けられた波形データを、端末信号復調部452-nに出力する。端末信号復調部452-1~452-Nはそれぞれ、波形データが表す信号を復調し、復調により得られたシンボルを合成部453に出力する。端末信号復調部452-nは、波形データが表す信号に対して、移動中継局2のアンテナ21-nが受信した端末アップリンク信号のドップラーシフトを補償する処理を行ってから、復調を行ってもよい。各アンテナ21-nが受信した端末アップリンク信号が受けるドップラーシフトは、端末局3の位置と、移動中継局2bが搭載されているLEOの軌道情報に基づき予め計算される。合成部453は、端末信号復調部452-1~452-Nのそれぞれから入力したシンボルを加算合成し、端末信号復号部454に出力する。端末信号復号部454は、加算合成されたシンボルを復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。
また、図7に示されるように、移動中継局2bは、通信状況測定部223bと、タイミング制御部224bと、記憶部225と、送信部226bと、位置情報取得部227bをさらに備える。
通信状況測定部223bは、受信部221b-1~221b-Nにおける、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定する。通信状況測定部223bは、測定結果に基づいて、通信の混雑度を示す情報(混雑度情報)を生成する。例えば、通信状況測定部223bは、受信部221b-1~221b-Nにおける、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を測定し、混雑度情報を生成する。
なお、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報そのものであってもよいし、そうでなくてもよい。例えば、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報が所定の閾値の範囲内であるか否かに基づいて決定されるレベルを示す情報であってもよい。この場合、アクセス数や受信信号強度の値の範囲とレベルとが対応付けられた情報が、例えば記憶部225などに予め記憶されている。
位置情報取得部227bは、各々の端末局3の位置情報を取得する。当該位置情報は、各々の端末局3から送信され、受信部221b-1~221b-Nによって受信された端末アップリンク信号に含まれる。
タイミング制御部224bは、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を端末局3へ送信するタイミングを制御する。タイミング制御部224bは、通信状況測定部223bによって生成された混雑度情報を取得する。また、タイミング制御部224bは、位置情報取得部227bによって取得された、各々の端末局3の位置を示す位置情報を取得する。
タイミング制御部224bは、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを行う。例えば、移動中継局2bは、分割された小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。タイミング制御部224bは、エリア分けによって生成された複数のエリア情報を記憶部225に記憶させる。
タイミング制御部224bは、記憶部225に記録されたエリア情報を参照し、特定の小エリアを示す少なくとも1つのエリア情報を含む送信許可信号を生成する。タイミング制御部224bは、エリア情報を含む送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を端末局3へ送信するタイミングを制御するとともに、送信許可信号に含めるエリア情報の切り替えを制御する。
送信部226bは、タイミング制御部224bによって生成された送信許可信号を取得し、取得された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を複数のアンテナ21から無線により送信する。送信部226bは、LPWAにより信号を送信する。送信部226bは、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末ダウンリンク信号の送信に使用するチャネルを決定する。送信部226bが端末ダウンリンク信号を送信するタイミングは、タイミング制御部224bによって制御される。
記憶部225は、移動中継局2bを搭載しているLEO衛星の軌道情報と、通信対象エリアの位置とに基づいて、予め計算された、通信対象エリアごとの送信開始タイミングを記憶する。タイミング制御部224bは、記憶部225に記憶された、通信対象エリアごとの送信開始タイミングにおいて、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ送信するように送信部226bを制御する。
タイミング制御部224bは、例えば、以前(例えば、一周回前の時点)において通信対象エリア内の複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報を、送信許可信号に含める。または、タイミング制御部224bは、例えば、過去の同一の時間帯において通信対象エリア内の複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報を、送信許可信号に含めるようにしてもよい。
また、図7に示されるように、端末局3は、受信部34と、送信制御部35と、位置情報生成部36とをさらに備える。受信部34は、アンテナ33により端末ダウンリンク信号を受信する。送信制御部35は、受信部34によって受信された端末ダウンリンク信号から送信許可信号を取得する。送信制御部35は、取得された送信許可信号に含まれるエリア情報を取得する。
位置情報生成部36は、例えばGPS受信機等の測位装置を備えており、自局の位置を特定する。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。
送信制御部35は、位置情報生成部36によって生成された、自局の位置を示す位置情報を取得する。送信制御部35は、取得された位置情報が示す自局の位置が、送信許可信号に含まれるエリア情報が示す小エリアに含まれているか否かを判定する。送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに含まれていない場合、端末局3は移動中継局2bへの端末アップリンク信号の送信を開始せずに待機する。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに含まれている場合、送信部32に端末アップリンク信号の送信を開始させる。このとき、送信制御部35は、環境データ等のデータに加えて、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報が設定された端末アップリンク信号を、送信部32に送信させる。
送信部32は、端末アップリンク信号を送信する。送信部32は、データ記憶部31から例えば環境データ等のセンサデータを端末送信データとして読み出す。送信部32は、読み出された端末送信データと、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報とが設定された端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。送信部32は、LPWAにより信号を送信する。
移動中継局2bの受信部221b-1~221b-Nは、アンテナ21-1~21-Nにより端末アップリンク信号を受信する。受信波形記録部222b-1~222b-Nは、受信部221b-1~221b-Nが受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222b-1~222b-Nは、アンテナ21-1~21-Nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、選定された波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222b-1~222b-Nにより書き込まれた受信波形情報を記憶する。
無線通信システム1bの動作を説明する。
図8は、端末局3から移動中継局2bへ端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1bの処理を示すフロー図である。同図において、図2に示す第1の実施形態の処理フローと同じ処理には、同一の符号を付している。端末局3は、図2に示す第1の実施形態の処理フローにおけるステップS111~ステップS112の処理と同様の処理を行う。なお、端末局3は、他の端末局3と時分割多重、OFDM、MIMOなどにより送信を行ってもよい。
移動中継局2bの受信部221b-1~221b-Nは、端末局3から送信された端末アップリンク信号を受信する(ステップS521)。送信元の端末局3の無線通信方式によって、同一の周波数については時分割で1台の端末局3からのみ端末アップリンク信号を受信する場合と、同一の周波数で同時に複数台の端末局3から端末アップリンク信号を受信する場合がある。受信波形記録部222b-nは、受信部221b-nが受信した端末アップリンク信号の波形を表す波形データと、受信時刻と、アンテナ21-nのアンテナ識別子とを対応付けた受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む(ステップS522)。移動中継局2bは、ステップS521からの処理を繰り返す。
移動中継局2bから基地局4へ基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1bの処理は、以下の処理を除いて、図6に示す第1の実施形態の変形例1の処理フローと同様である。すなわち、ステップS423において、端末信号受信処理部450は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。具体的には、分配部451は、受信波形情報から受信時刻が同じ波形データを読み出し、読み出した波形データを、その波形データに対応付けられたアンテナ識別子に応じて端末信号復調部452-1~452-Nに出力する。端末信号復調部452-1~452-Nはそれぞれ、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。端末信号復調部452-1~452-Nは、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを合成部453に出力する。
合成部453は、端末信号復調部452-1~452-Nのそれぞれから入力したシンボルを加算合成する。加算合成により、端末局3が送信した信号は相関があるために強調されるが、ランダムに付加される雑音の影響は低減される。そのため、移動中継局2bが同時に1台の端末局3からのみ受信した端末アップリンク信号についてはダイバーシティー効果が得られる。また、移動中継局2bが同時に複数台の端末局3から受信した端末アップリンク信号についてはMIMO通信を行うことに相当する。合成部453は、加算合成したシンボルを端末信号復号部454に出力する。端末信号復号部454は、合成部453により加算合成されたシンボルを特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。なお、端末信号復号部454は、SICのように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。
図9は、無線通信システム1bによる送信制御処理を示すフロー図である。移動中継局2bのタイミング制御部224bは、記憶部225に記録された複数のエリア情報のうち、少なくとも1つのエリア情報を選択する(ステップS611)。
なお、記憶部225に記録された複数のエリア情報は、例えば、以前(例えば、移動中継局2bの地球上の周回における一周回前の時点)において複数の端末局3から端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されたエリア情報である。なお、タイミング制御部224bは、例えば自局の位置及び通信状況に基づいて、送信許可信号に含めるエリア情報を選択する。
移動中継局2bのタイミング制御部224bは、選択されたエリア情報を含む送信許可信号を生成する(ステップS612)。なお、送信部226bは、タイミング制御部224bによって生成された送信許可信号を取得し、取得された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21-1~21-Nから無線により送信する(ステップS613)。移動中継局2bは、ステップS611からの処理を繰り返す。
端末局3の受信部34は、アンテナ33により端末ダウンリンク信号を受信する(ステップS621)。端末局3の送信制御部35は、受信部34によって受信された端末ダウンリンク信号から送信許可信号を取得する。送信制御部35は、取得された送信許可信号に含まれるエリア情報を取得する(ステップS622)。
端末局3の位置情報生成部36は、自局の位置を特定する(ステップS623)。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。送信制御部35は、位置情報生成部36によって生成された、自局の位置を示す位置情報を取得する。送信制御部35は、取得された位置情報が示す自局の位置が、送信許可信号に含まれるエリア情報が示す小エリアに該当するか否か(含まれているか否か)を判定する(ステップS624)。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに該当しない(含まれていない)場合(ステップS624・No)、移動中継局2bへの端末アップリンク信号の送信を開始させずに待機する。すなわち、端末局3は、ステップS621からの処理を繰り返す。
送信制御部35は、自局の位置が当該小エリアに該当する(含まれている)場合(ステップS624・Yes)、送信部32に端末アップリンク信号の送信を開始させる。このとき、送信制御部35は、環境データ等のデータに加えて、位置情報生成部36によって生成された自局の位置を示す位置情報が設定された端末アップリンク信号を、送信部32に送信させる。送信部32は、端末アップリンク信号を送信する(ステップS625)。端末局3は、ステップS621からの処理を繰り返す。
移動中継局2bの受信部221b-1~221b-Nは、アンテナ21-1~21-Nにより端末アップリンク信号を受信する(ステップS631)。移動中継局2bの受信波形記録部222b-1~222b-Nは、受信部221b-1~221b-Nが受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222b-1~222b-Nは、アンテナ21-1~21-Nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、選定された波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222b-1~222b-Nにより書き込まれた受信波形情報を記憶する(ステップS632)。
移動中継局2bの通信状況測定部223bは、受信部221b-1~221b-Nにおける、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定し(ステップS633)、通信の混雑度を示す情報(混雑度情報)を生成する。移動中継局2bの位置情報取得部227bは、各々の端末局3の位置情報を取得する(ステップS334)。当該位置情報は、各々の端末局3から送信され、受信部221b-1~221b-Nによって受信された端末アップリンク信号に含まれる。
タイミング制御部224bは、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを実行する(ステップS635)。前述の通り、例えば、移動中継局2bは、分割される通信対象エリアごとの通信の混雑度が均一化されるようにエリア分けを行う。タイミング制御部224bは、エリア分けによって生成された複数のエリア情報を記憶部225に記憶させる(ステップS636)。移動中継局2bは、ステップS631からの処理を繰り返す。
本変形例によれば、移動中継局2bは、端末局3から送信された端末アップリンク信号をダイバーシティ受信や、MIMO受信などにより受信する。よって、本変形例による無線通信システム1bによれば、移動中継局2bと端末局3との間の通信のリンクバジェットを向上させることができる。
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態による無線通信システム1(1a,1b)では、通信対象エリアが分割された複数の小エリアのそれぞれに対して、1つの移動中継局2が順に送信許可信号を送信していく構成であった。これに対し、本実施形態による無線通信システム1cは複数の移動中継局2cを有する。無線通信システム1cは、複数の小エリアのそれぞれを複数の移動中継局2cのいずれかに割り振る処理(以下、「振分処理」という。)を行う。各々の移動中継局2cは、自局に割り振られた小エリアを示すエリア情報を送信許可信号に含めて、端末局3へ端末ダウンリンク信号を送信する。
このような構成により、通信対象エリアに存在する複数の端末局3から送信される端末アップリンク信号を、複数の移動中継局2cが分担して(例えば均等に)受信するように制御することができる。これにより、本実施形態による無線通信システム1cは、各々の移動中継局2cにおける通信の混雑度を緩和させることができ、通信の混雑度が変動する場合でも、通信の信頼性低下を抑制することができる。
以下では、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
図10は、第2の実施形態による無線通信システム1cの構成図である。同図において、図1に示す第1の実施形態における無線通信システム1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。無線通信システム1cは、複数の移動中継局2cと、端末局3と、基地局4aとを有する。無線通信システム1cが有する複数の移動中継局2c、端末局3及び基地局4のそれぞれの数は任意であるが、端末局3の数は多数であることが想定される。無線通信システム1cは、即時性が要求されない情報の伝送を行う通信システムである。複数の端末局3からそれぞれ送信された情報は、複数の移動中継局2cのいずれかを介して伝送され、基地局4によって収集される。
移動中継局2cは、通信可能なエリアが時間の経過により移動する中継装置の一例である。複数の移動中継局2cは、それぞれ別々の移動体に搭載される。移動中継局2cは、例えば、LEO衛星に備えられる。複数のLEO衛星は、例えば低軌道上を編隊飛行する。端末局3及び基地局4は、地上や海上など地球上に設置される。端末局3は、例えば、IoT端末である。端末局3は、センサが検出した環境データ等のデータを収集し、移動中継局2cへ無線により送信する。同図では、2台の端末局3のみを示している。移動中継局2cは、地球の上空を移動しながら、複数の端末局3それぞれから送信されたデータを無線信号により受信する。移動中継局2cは、受信したこれらのデータを蓄積し、蓄積しておいたデータを、基地局4との通信が可能なタイミングで一括して基地局4へ無線送信する。基地局4は、移動中継局2cから端末局3が収集したデータを受信する。
移動中継局2cは、アンテナ21と、端末通信部22cと、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25と、中継局間通信部27と、アンテナ28とを備える。
なお、本実施形態では、一例として、複数の移動中継局2cのうち特定の1つの移動中継局2c(以下、「ホストとなる移動中継局2c」という。)が、複数の小エリアのそれぞれを複数の移動中継局2cのいずれかに割り振る処理(振分処理)を行うものとする。
ホストとなる移動中継局2cの端末通信部22cは、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定する。端末通信部22cは、測定結果に基づいて、通信の混雑度を示す情報(混雑度情報)を生成する。例えば、端末通信部22cは、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を測定する。
なお、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報そのものであってもよい。又は、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報が所定の閾値の範囲内であるか否かに基づいて決定されるレベルを示す情報であってもよい。
また、端末通信部22cは、複数の端末局3から送信された端末アップリンク通信に含まれる、端末局3の位置を示す位置情報をそれぞれ取得する。
端末通信部22cは、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを行う。例えば、端末通信部22cは、分割される小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。
さらに、端末通信部22cは、通信対象エリアが分割された複数の小エリアのそれぞれを、複数の移動中継局2cのいずれかに割り振る処理(振分処理)を行う。端末通信部22cは、例えば、通信対象エリアに存在する複数の端末局3から送信される端末アップリンク信号を、複数の移動中継局2cが分担して(例えば均等に)受信するように制御する。端末通信部22cは、振分処理の結果を示す振分情報を生成する。振分情報とは、小エリアを示すエリア情報と、当該小エリアに対して割り振られた移動中継局2cを識別する情報とが対応付けられた情報である。
各々の移動中継局2cの中継局間通信部27は、アンテナ28により互いにデータの送受信(衛星間通信)を行うことができる。なお、移動中継局2c間の通信には、例えば23GHz帯の通信帯域が用いられる。
ホストとなる移動中継局2cの中継局間通信部27は、端末通信部22cによって生成された振分情報を他の移動中継局2cへ送信する。これにより、複数の移動中継局2cは振分情報を共有することができる。共有された振分情報に基づいて、各々の移動中継局2cは、自局に割り振られた小エリアを認識することができる。
自局に割り振られた小エリアを認識した移動中継局2cの端末通信部22cは、当該小エリアに対して通信が可能となるタイミングで、送信許可信号を生成する。前述のとおり、送信許可信号は、端末局3に対し、環境データ等のデータを自己の移動中継局2cへ送信することを許可することを示す制御信号である。
端末通信部22cは、生成された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する。端末通信部22cは、例えばLPWAにより信号を送信する。端末通信部22cは、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末ダウンリンク信号の送信に使用するチャネルを決定する。
端末通信部22cは、移動中継局2cを搭載しているLEO衛星の軌道情報と、各小エリアの位置とに基づいて、予め計算された小エリアごとの送信開始タイミングを記憶する。LEOの軌道情報は、任意の時刻におけるLEO衛星の位置、速度、移動方向などを得ることが可能な情報である。送信時刻は、例えば、送信開始タイミングからの経過時間で表してもよい。端末通信部22cは、通信対象の小エリアの送信開始タイミングにおいて、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ向けて送信する。このとき、端末通信部22cは、設定される送信許可信号に、自局に対して割り振られたエリア情報を含める。
端末通信部22cは、例えば、一周回前の時点において、同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含める。または、端末通信部22cは、例えば、過去の同一の時間帯において同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含めるようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、ホストとなる移動中継局2cが他の移動中継局2cへ振分情報そのものを送信する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、ホストとなる移動中継局2cが、他の移動中継局2cのそれぞれに対応する
エリア情報のみを送信する構成であってもよい。
なお、本実施形態においては、ホストとなる特定の移動中継局2cが振分処理を行う構成としたが、これに限られるものではない。例えば、複数の移動中継局2cにおいて、ホストとなる移動中継局2cが、時間帯や位置等に基づいて切り替わるような構成であってもよい。又は、例えば、基地局4が、少なくとも1つの移動中継局2cから混雑度情報と端末局3の位置を示す位置情報(又はエリア情報)とを取得して振分処理を行う構成であってもよい。この場合、例えば基地局4は、振分処理によって生成された振分情報を、複数の移動中継局2cへ送信する。
無線通信システム1cの動作を説明する。
図11は、ホストとなる移動中継局2cによる振分処理を示すフロー図である。
移動中継局2cの端末通信部22cは、自局がホストとなる移動中継局2cである場合(ステップS711・Yes)、複数の端末局3からの端末アップリンク通信の通信状況を測定する(ステップS712)。なお、自局がホストであるか否かを判定するための情報は、例えば予め端末通信部22cに記憶されている。又は、自局がホストであるか否かを判定するための情報は、基地局4から移動中継局2cへ随時通知される構成であってもよい。
端末通信部22cは、測定結果に基づいて、通信の混雑度を示す情報(混雑度情報)を生成する。前述の通り、例えば端末通信部22cは、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を測定する。なお、前述の通り、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報そのものであってもよい。又は、混雑度情報は、複数の端末局3からの単位時間当たりの端末アップリンク通信のアクセス数、又は端末アップリンク通信の周波数帯の受信信号強度を示す情報が所定の閾値の範囲内であるか否かに基づいて決定されるレベルを示す情報であってもよい。
また、端末通信部22cは、複数の端末局3から送信された端末アップリンク通信に含まれる、端末局3の位置を示す位置情報をそれぞれ取得する(ステップS713)。
端末通信部22cは、取得された混雑度情報と位置情報とに基づいて、通信対象エリアを複数の小エリアに分割するエリア分けを実行する(ステップS714)。例えば、端末通信部22cは、分割される小エリアに含まれる端末局3との通信の混雑度が、複数の小エリアの間で均一化されるようにエリア分けを行う。
さらに、端末通信部22cは、通信対象エリアが分割された複数の小エリアのそれぞれを、複数の移動中継局2cのいずれかに割り振る処理(振分処理)を行う(ステップS715)。端末通信部22cは、例えば、通信対象エリアに存在する複数の端末局3から送信される端末アップリンク信号を、複数の移動中継局2cが分担して(例えば均等に)受信するように制御する。端末通信部22cは、振分処理の結果を示す振分情報を生成する。前述の通り、振分情報とは、小エリアを示すエリア情報と、当該小エリアに対して割り振られた移動中継局2cを識別する情報とが対応付けられた情報である。
移動中継局2cの中継局間通信部27は、端末通信部22cによって生成された振分情報を他の移動中継局2cへ送信する(ステップS715)。
移動中継局2cの端末通信部22cは、振分情報に基づいて、自局に割り振られた小エリアを特定する(ステップS718)。端末通信部22cは、当該小エリアに対して通信が可能となるタイミングで、送信許可信号を生成する。端末通信部22cは、生成された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する(ステップS719)。端末通信部22cは、通信対象の小エリアの送信開始タイミングにおいて、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ向けて送信する。このとき、端末通信部22cは、設定される送信許可信号に、自局に対して割り振られた小エリアを示すエリア情報を含める。
端末通信部22cは、例えば、一周回前の時点において、同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含める。または、端末通信部22cは、例えば、過去の同一の時間帯において同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含めるようにしてもよい。
ホストとなる移動中継局2cは、ステップS711からの処理を繰り返す。
一方、移動中継局2cの端末通信部22cは、自局がホストではない移動中継局2cである場合(ステップS711・No)、ホストとなる移動中継局2cから送信される振分情報の受信を待ち受ける(ステップS717)。端末通信部22cは、振分情報を受信した場合(ステップ717・Yes)、振分情報に基づいて、自局に割り振られた小エリアを特定する(ステップS718)。端末通信部22cは、当該小エリアに対して通信が可能となるタイミングで、送信許可信号を生成する。端末通信部22cは、生成された送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する(ステップS719)。端末通信部22cは、通信対象の小エリアの送信開始タイミングにおいて、送信許可信号が設定された端末ダウンリンク信号を地上へ向けて送信する。このとき、端末通信部22cは、設定される送信許可信号に、自局に対して割り振られた小エリアを示すエリア情報を含める。
端末通信部22cは、例えば、一周回前の時点において、同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含める。または、端末通信部22cは、例えば、過去の同一の時間帯において同一の通信対象エリアで端末アップリンク信号を受信した際の通信の混雑度に基づいて生成されて割り振られたエリア情報を送信許可信号に含めるようにしてもよい。
ホストではない移動中継局2cは、ステップS711からの処理を繰り返す。
以上説明したように、第2の実施形態による無線通信システム1cは、複数の小エリアのそれぞれを複数の移動中継局2cのいずれかに割り振る処理(振分処理)を行う。各々の移動中継局2cは、自局に割り振られた小エリアに対して送信許可信号を送信する。このような構成により、通信対象エリアに存在する複数の端末局3から送信される端末アップリンク信号を、複数の移動中継局2cが分担して(例えば均等に)受信するように制御することができる。これにより、本実施形態による無線通信システム1cは、各々の移動中継局2cにおける通信の混雑度を緩和させることができ、通信の混雑度が変動する場合でも、通信の信頼性低下を抑制することができる。
また、各々の移動中継局2cは、エリア情報を含めた送信許可信号を端末ダウンリンク信号に設定して端末局3へ送信する。端末局3は、受信した端末ダウンリンク信号が示す送信許可信号を取得し、当該送信許可信号に含まれるエリア情報に基づいて、移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信を開始するか否かを決定する。このような構成により、無線通信システム1cは、端末局3から移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信タイミングを制御することができる。このような構成により、無線通信システム1cは、通信の混雑度が変動する場合であっても、通信の信頼性低下を抑制しつつ、より多くの端末局3から送信されるセンサデータを、移動中継局2cを介して基地局4へ伝送することができる。
(第3の実施形態)
前述の第1の実施形態及び第2の実施形態による無線通信システム1(1a,1b,1c)では、移動中継局2(2a,2b,2c)が、複数の端末局3から送信される端末アップリンク信号を受信し、通信状況を測定する構成であった。そして、無線通信システム1(1a,1b,1c)は、移動中継局2(2a,2b,2c)が、測定された通信状況に基づく混雑度状況と、端末アップリンク信号に含まれる各々の端末局3の位置を示す位置情報とに基づいて、通信対象エリアを小エリアに分割するエリア分けを行う構成であった。そして、移動中継局2(2a,2b,2c)が、分割された小エリアごとに、端末局3による端末アップリンク信号の送信を許可する構成であった。
すなわち、前述の第1の実施形態及び第2の実施形態による無線通信システム1(1a,1b,1c)では、移動中継局2(2a,2b,2c)が、端末局3による端末アップリンク信号の送信タイミングを制御する構成であった。これに対し、本実施形態による無線通信システム1dでは、各々の端末局3dが、端末アップリンク信号の送信タイミングを自律的に制御する構成である。
以下では、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
図12は、第3の実施形態による無線通信システム1dの構成図である。同図において、図1に示す第1の実施形態における無線通信システム1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図12に示されるように、無線通信システム1dは、移動中継局2dと、端末局3dと、基地局4とを有する。無線通信システム1dが有する移動中継局2d、端末局3d及び基地局4のそれぞれの数は任意であるが、端末局3dの数は多数であることが想定される。無線通信システム1dは、即時性が要求されない情報の伝送を行う通信システムである。複数の端末局3dからそれぞれ送信された情報は、移動中継局2dを介して伝送され、基地局4によって収集される。
移動中継局2dは、移動体に搭載され、通信可能なエリアが時間の経過により移動する中継装置の一例である。移動中継局2dは、例えば、LEO衛星に備えられる。LEO衛星の高度は、地球の上空を周回する。端末局3d及び基地局4は、地上や海上など地球上に設置される。複数の端末局3dは、互いに異なる場所に存在する。端末局3dは、例えば、IoT端末である。端末局3dは、センサが検出した環境データ等のデータを収集し、移動中継局2dへ無線により送信する。同図では、2台の端末局3dのみを示している。移動中継局2dは、地球の上空を移動しながら、複数の端末局3dそれぞれから送信されたデータを無線信号により受信する。移動中継局2dは、受信したこれらのデータを蓄積し、蓄積しておいたデータを、基地局4との通信が可能なタイミングで一括して基地局4へ無線送信する。基地局4は、端末局3dが収集したデータを移動中継局2dから受信する。
移動中継局2dとして、静止衛星や、ドローン、HAPSなどの無人航空機に搭載された中継局を用いることが考えられるが、本実施形態では、移動中継局2dは、LEO衛星に搭載されているものとする。LEO衛星に搭載された移動中継局2dは、高速で移動しながら通信を行うため、個々の端末局3dや基地局4が移動中継局2dと通信可能な時間が限られている。移動中継局2dは、移動中の現在位置におけるカバレッジ内の端末局3dから端末アップリンク信号を受信し、受信した端末アップリンク信号の波形データを保存しておく。
移動中継局2dは、カバレッジに基地局4が存在するタイミングにおいて、端末アップリンク信号の波形データを設定した基地局ダウンリンク信号を、基地局4に無線送信する。基地局4は、移動中継局2dから受信した基地局ダウンリンク信号を復調して端末アップリンク信号の波形データを得る。基地局4は、波形データが表す端末アップリンク信号に対して復調及び復号を行うことにより、端末局3dが送信したデータである端末送信データを得る。
なお、本実施形態による無線通信システム1dでは、移動中継局2dと端末局3dとがLPWAを用いて無線通信を行う構成であるものとする。各々の端末局3dは、通信の信頼性を確保するため、同一の端末アップリンク信号を複数回、移動中継局2dへ向けて送信する構成であってもよい。
さらに、前述のとおり、端末局3dの数は多数であることが想定される。このような構成により、端末局3dから移動中継局2dへ送信されるデータの通信量が増大し、通信帯域が逼迫する場合がある。本実施形態による無線通信システム1dは、通信帯域の逼迫を防ぐため、端末局3dから移動中継局2dへのデータの送信における、送信タイミングを制御する。送信タイミングの制御は、移動中継局2dの軌道と、端末局3dが存在する位置とに基づいて、各々の端末局3dにおいて自律的に行われる。
具体的には、各々の端末局3dは、移動中継局2dの軌道を示す情報(以下、「軌道情報」という。)を予め記憶している。また、端末局3dは、例えばGPS受信機等の測位装置を備えており、自局の位置を示す位置情報の生成、及び現在時刻の計時を行うことができる。
端末局3dは、軌道情報と、自局の位置を示す位置情報とに基づいて、移動中継局2dとの通信が可能になる時間帯(以下、「通信可能時間帯」という。)を特定する。端末局3dは、特定された通信可能時間帯に基づいて、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する時刻(以下、「送信開始時刻」という。)を決定する。端末局3dは、現在時刻を計時し、送信開始時刻になったタイミングで移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する。
ここで、移動中継局2dは、例えば、通信可能時間帯の中からランダムに選択した時刻を送信開始時刻として決定する。これにより、多数の端末局3dが互いに近傍の位置に存在している場合であっても、当該多数の端末局3dから移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信が同時に開始されないようにすることができる。これにより、本実施形態による無線通信システム1dは、移動中継局2dにおける通信の通信帯域の逼迫を防ぐことができる。
なお、端末局3dは、通信可能時間帯の中からランダムに選択した時刻を送信開始時刻として決定するのではなく、例えば、測位装置によって得られた自局の位置(例えば、緯度及び経度)と所定の算定ルールとに基づいて算定される時刻を送信開始時刻として決定するようにしてもよい。
各装置の構成を説明する。
図12に示されるように、移動中継局2dは、アンテナ21と、端末通信部22dと、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25とを備える。
端末通信部22dは、受信部221と、受信波形記録部222とを有する。受信部221は、アンテナ21により端末アップリンク信号を受信する。受信波形記録部222は、受信部221が受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222は、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。データ記憶部23は、受信波形記録部222により書き込まれた受信波形情報を記憶する。移動中継局2dの基地局通信部24及び基地局4の構成は、前述の第1の実施形態による無線通信システム1の移動中継局2の基地局通信部24及び基地局4の構成と同様である。
端末局3dは、データ記憶部31と、送信部32と、1本または複数本のアンテナ33と、送信制御部35dと、位置情報生成部36と、軌道情報記憶部37とを備える。データ記憶部31は、センサデータなどを記憶する。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出し、読み出した端末送信データを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。送信部32は、例えばLPWAにより信号を送信する。送信部32は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末アップリンク信号の送信に使用するチャネル及び送信タイミングを決定する。また、送信部32は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、複数本のアンテナ33から送信する信号のビーム形成を行ってもよい。
軌道情報記憶部37は、移動中継局2dの軌道を示す情報(軌道情報)を予め記憶する。位置情報生成部36は、例えばGPS受信機等の測位装置を備えており、自局の位置を特定する。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。送信制御部35dは、軌道情報記憶部37に記憶された軌道情報と、位置情報生成部36によって特定された自局の位置を示す位置情報とに基づいて、送信部32と移動中継局2dとの通信が可能になる時間帯(通信可能時間帯)を特定する。送信制御部35dは、特定された通信可能時間帯に基づいて、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する時刻(送信開始時刻)を決定する。送信開始時刻は、通信可能時間帯の範囲内で決定される。送信制御部35dは、現在時刻を計時し、送信開始時刻になったタイミングで、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始させるように送信部32を制御する。送信部32は、送信制御部35dによる制御のもとで、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する。
前述の通り、移動中継局2dは、例えば、通信可能時間帯の範囲内でランダムに選択した時刻を送信開始時刻として決定する。これにより、本実施形態による無線通信システム1dは、移動中継局2dにおける通信の通信帯域の逼迫を防ぐことができる。なお、端末局3dは、例えば、測位装置によって得られた自局の位置(例えば、緯度及び経度)と所定の算定ルールとに基づいて算定される時刻を送信開始時刻として決定するようにしてもよい。
端末局3dの動作を説明する。
図13は、端末局3dによる端末アップリンク信号の送信タイミング制御処理を示すフロー図である。
端末局3dの送信制御部35dは、軌道情報記憶部37に記憶された軌道情報を取得する(ステップS811)。端末局3dの位置情報生成部36は、例えばGPS受信機等の測位装置により自局の位置を特定する(ステップS812)。位置情報生成部36は、特定された自局の位置を示す位置情報を生成する。送信制御部35dは、軌道情報と、位置情報生成部36によって生成された位置情報とに基づいて、送信部32と移動中継局2dとの通信が可能になる時間帯(通信可能時間帯)を特定する(ステップS813)。送信制御部35dは、特定された通信可能時間帯に基づいて、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する時刻(送信開始時刻)を決定する(ステップS814)。
送信制御部35dは、現在時刻を計時し、現在時刻が送信開始時刻になるまで待機する。現在時刻が送信開始時刻になった場合(ステップS815・Yes)、送信制御部35dは、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始させるように送信部32を制御する。送信部32は、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を開始する(ステップS816)。
端末局3dは、ステップS811以降の処理を繰り返す。
以上説明したように、第3の実施形態による無線通信システム1dは、各々の端末局3dが、端末アップリンク信号の送信タイミングを自律的に制御する。各々の端末局3dは、移動中継局2dの軌道を示す軌道情報と自局の位置を示す位置情報とに基づいて、移動中継局2dとの通信の通信可能時間帯を特定する。端末局3dは、特定された通信可能時間帯に基づいて、端末アップリンク信号の送信開始時刻を決定する。このとき、端末局3dは、例えば、通信可能時間帯の範囲内において送信開始時刻をランダムに決定する。
このような構成を備えることにより、第3の実施形態による無線通信システム1dは、移動中継局2dにおける通信の混雑度を軽減させることができる。これにより、無線通信システム1dは、通信の混雑度が変動する場合でも、通信の信頼性低下を抑制することができる。
(第3の実施形態の変形例1)
移動中継局2dが複数存在する場合には、以下のような構成にすることも考えられる。
端末局3dは、予めエリア(例えば、前述の小エリア)ごとに特定の移動中継局2dが対応付けられた対応情報を予め記憶している。端末局3dは、自局の位置を特定することにより、特定された自局の位置が含まれるエリアを認識する。端末局3dは、上記の対応情報を参照することにより、自局の位置が含まれるエリアに対応する移動中継局2dを特定する。端末局3dは、特定された移動中継局2dへ端末アップリンク信号の送信を行う。
このとき、端末局3dは、特定された移動中継局2dの軌道情報と、自局の位置を示す位置情報とに基づいて、移動中継局2dとの通信の通信可能時間帯を特定する。端末局3dは、特定された通信可能時間帯の範囲内で、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信開始時刻を決定する。このとき、端末局3dは、例えば、通信可能時間帯の範囲内において送信開始時刻をランダムに決定する。
このような構成を備えることにより、本変形例による無線通信システムは、移動中継局2dにおける通信の混雑度を軽減させることができる。これにより、無線通信システム1dは、通信の混雑度が変動する場合でも、通信の信頼性低下を抑制することができる。
(第3の実施形態の変形例2)
移動中継局2dから端末局3dへ、例えばビーコン等の、位置情報を推定可能な信号(以下、「ビーコン等」という。)を送信することができる場合には、以下のような構成にすることも考えられる。
移動中継局2dは、例えば所定の間隔でビーコン等を地上へ向けて送信する。各々の端末局3dは、移動中継局2dから送信されたビーコン等を受信した場合、当該ビーコン等に基づいて移動中継局2dの位置を推定する。端末局3dは、推定された移動中継局2dの位置と現在時刻とに基づいて、軌道情報記憶部37に記憶された移動中継局2dの軌道情報を補正する。
端末局3dは、補正された軌道情報と自局の位置を示す位置情報とに基づいて、移動中継局2dとの通信の通信可能時間帯を特定する。端末局3dは、特定された通信可能時間帯に基づいて、端末アップリンク信号の送信開始時刻を決定する。このとき、端末局3dは、例えば、通信可能時間帯の範囲内において送信開始時刻をランダムに決定する。
このような構成を備えることにより、本変形例による無線通信システムは、移動中継局2dと各々の端末局3dとの間の通信の通信可能時間帯の算出における精度をより向上させることができる。
上述した各実施形態及びその変形例によれば、無線通信システムは、移動体に備えられた中継装置と、互いに異なる場所に存在する複数の通信装置とが無線通信する。例えば、中継装置は、実施形態における移動中継局2、2a、2b、2cであり、通信装置は端末局3である。
中継装置は、中継装置受信部と、測定部と、中継装置制御部と、中継装置送信部とを備える。例えば、中継装置受信部は、実施形態におけるアンテナ21及び受信部221、221bであり、測定部は、実施形態における通信状況測定部223、223bであり、中継装置制御部は、実施形態におけるタイミング制御部224、224bであり、中継装置送信部は、アンテナ21及び送信部226、226bである。
中継装置受信部は、複数の通信装置から送信され、通信装置の位置を示す位置情報を含む信号をそれぞれ受信する。例えば、信号は、実施形態における端末アップリンク信号である。測定部は、中継装置受信部における通信の混雑度を測定する。中継装置制御部は、複数の通信装置の位置と通信の混雑度とに基づいて通信対象エリアを複数の小エリアに分割し、小エリアの位置を示すエリア情報を生成する。中継装置送信部は、自装置が通信装置と通信可能な範囲に位置しているときに、複数のエリア情報を順に送信する。
通信装置は、記憶部と、通信装置受信部と、通信装置制御部と、通信装置送信部とを備える。例えば、記憶部は、実施形態におけるデータ記憶部31であり、通信装置受信部は、実施形態におけるアンテナ33及び受信部34であり、通信装置制御部は、実施形態における送信制御部35であり、通信装置送信部は、実施形態におけるアンテナ33及び送信部32である。
記憶部は、中継装置へ送信する送信データを記憶する。例えば、送信データは、実施形態における環境データ等のデータである。通信装置受信部は、エリア情報を受信する。通信装置制御部は、エリア情報に基づく小エリアに自己位置が含まれるか否かを判定する。通信装置送信部は、小エリアに自己位置が含まれる場合に、送信データと、自己位置を示す位置情報とを含む信号を前記中継装置へ送信する。例えば、信号は、実施形態における端末アップリンク信号である。
なお、中継装置制御部は、通信対象エリアを、通信の混雑度が均一化された複数の小エリアに分割するようにしてもよい。
なお、通信の混雑度は、中継装置受信部における単位時間あたりの信号のアクセス数を示す情報、信号の受信信号強度を示す情報であってもよい。例えば、信号は、実施形態における端末アップリンク信号である。
なお、中継装置は、地球を周回する移動体に備えられ、中継装置送信部は、以前の周回において生成されたエリア情報を通信装置へ送信してもよい。
なお、移動体は低軌道衛星であり、通信装置はセンサを含む端末装置に備えられ、信号は端末装置によって測定されたセンサデータを示す信号であってもよい。
なお、無線通信システムは、中継装置と無線通信する基地局装置をさらに有してもよい。例えば、基地局装置は、実施形態における基地局4である。中継装置は、自装置が基地局装置と通信可能な範囲に位置しているときに、複数の通信装置からそれぞれ送信された信号に基づく信号を基地局装置へ送信してもよい。例えば、複数の通信装置からそれぞれ送信された信号に基づく信号は、実施形態における基地局ダウンリンク信号である。
また、上述した実施形態及びその変形例によれば、移動体に備えられた中継装置と無線通信する通信装置は、記憶部と、制御部と、送信部とを備える。例えば、記憶部は、実施形態におけるデータ記憶部31及び軌道情報記憶部37であり、制御部は、実施形態における送信制御部35dであり、送信部は、実施形態におけるアンテナ33及び送信部32である。
記憶部は、中継装置へ送信する送信データと、移動体の軌道を示す軌道情報を記憶する。例えば、送信データは、実施形態における環境データ等のデータである。制御部は、軌道情報と自己位置とに基づいて、中継装置との通信が可能な時間帯である通信可能時間帯を特定する。送信部は、通信可能時間帯に送信データを中継装置へ送信する。
なお、送信部は、通信可能時間帯の範囲内においてランダムに決定された時刻に送信データを送信してもよい。
なお、上記の第1の実施形態~第3の実施形態、及びその変形例において、移動中継局が搭載される移動体は、LEO衛星である場合を説明したが、静止衛星、ドローンやHAPSなど上空を飛行する他の飛行体であってもよい。
上述した各実施形態における移動中継局2,2a,2b,2c,2d、端末局3,3d、及び基地局4,4a,4bの一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。