JP7403718B1 - スパッタリングターゲット - Google Patents

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Abstract

本発明のスパッタリングターゲットは、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成され、添加元素(X)はタンタル(Ta)、及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの元素からなり、各元素の原子比が所定の関係式を満たす複数のスパッタリングターゲット材を、基材に接合材により接合して形成されるスパッタリングターゲットであって、前記複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に配置される基材保護部材を有する。

Description

本発明はスパッタリングターゲットに関する。
フラットパネルディスプレイ(以下「FPD」ともいう。)に使用される薄膜トランジスタ(以下「TFT」ともいう。)の技術分野においては、FPDの高機能化に伴い、従来のアモルファスシリコンに代わってIn-Ga-Zn複合酸化物(以下「IGZO」ともいう。)に代表される酸化物半導体が注目されており、実用化が進んでいる。IGZOは、高い電界効果移動度と低いリーク電流を示すという利点を有する。近年ではFPDの更なる高機能化が進むに従い、IGZOが示す電界効果移動度よりも更に高い電界効果移動度を示す材料が望まれている。
例えば特許文献1及び2には、インジウム(In)元素及び亜鉛(Zn)元素と任意の元素XからなるIn-Zn-X複合酸化物によるTFT用の酸化物半導体が提案されている。同文献によればこの酸化物半導体は、In-Zn-X複合酸化物からなるターゲット材を用いたスパッタリングによって形成される。
また、スパッタリングに用いる酸化物半導体のスパッタリングターゲットでは、その素材がセラミックスであることから、大面積のターゲットを一枚のターゲット材で構成することが難しい。そのため、ある程度の大きさを有するターゲット材を複数準備し、所望の面積を有する基材に接合することで、大面積の酸化物半導体スパッタリングターゲットが製造されている(例えば、特許文献3参照)。
スパッタリングターゲットの基材には、通常、CuやTi、SUS等が用いられ、これら基材とターゲット材との接合には、熱伝導が良好な接合材、例えばIn等の金属が使用されている。例えば、大型の酸化物半導体スパッタリングターゲットを製造する際、大型のCu製平板型基材やTi製円筒形基材を準備し、その基材に接合するターゲット材を複数準備する。そして、基材に複数のターゲット材を配置し、In系やSn系金属の接合材により、ターゲット材を基材に接合する。この接合の際、基材とターゲット材との熱膨張の差を考慮し、隣接するターゲット材は、室温時に0.1mm~1.0mmの間隙ができるように配置されている。
US2013/270109号公報 US2014/102892号公報 WO2012/063524号公報
このような複数のターゲット材を接合して形成したスパッタリングターゲットを使用し、スパッタリングにより薄膜の半導体素子を形成する場合、スパッタリング中にターゲット材の間隙から基材の構成材料であるCuやTiもスパッタリングされて、薄膜中に混入するという問題が懸念されている。薄膜中のCuやTiの混入は数ppmレベルであるが、その影響は酸化物半導体には極めて大きく、例えば、ターゲット材の間隙付近で形成された、Cu、Tiが混入した半導体素子と、それ以外の部分の半導体素子を比較すると、TFT素子の電界効果移動度が低くなる傾向があり、ON/OFF比も低下する傾向がある。このような不具合は、スパッタリングターゲットの大面積化を促進するためにも、解消すべき課題である。
本発明は、複数のターゲット材を接合して得られた大面積のスパッタリングターゲットであっても、基材の構成材料が、成膜する薄膜中に混入することを効果的に防止することができる、スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に基材保護部材を配置することにより、基材の構成材料がスパッタリングされず、当該構成材料が成膜する薄膜中に混入することを効果的に防止することができることを見出した。
すなわち、本発明は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成され、
添加元素(X)はタンタル(Ta)、及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの元素からなり、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たす(式中のXは、前記添加元素の含有比の総和とする。)複数のスパッタリングターゲット材を、基材に接合材により接合して形成されるスパッタリングターゲットであって、
0.4≦(In+X)/(In+Zn+X)<0.75(1)
0.25<Zn/(In+Zn+X)≦0.6 (2)
0.001≦X/(In+Zn+X)≦0.015 (3)
前記複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に配置される基材保護部材を有するスパッタリングターゲットを提供するものである。
図1は、本発明のスパッタリングターゲットの一実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図2は、本発明のスパッタリングターゲットの他の実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図3は、本発明のスパッタリングターゲットのその他の実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図4は、本発明のスパッタリングターゲットのさらにその他の実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図5は、本発明のスパッタリングターゲットのその他の実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図6は、本発明のスパッタリングターゲットのその他の実施形態の断面概略図を示す模式図である。 図7は、本発明のスパッタリングターゲットを用いて作製したTFT素子の実施形態の構造を示す模式図である。 図8は、実施例1で得たターゲット材のXRD測定結果を示すグラフである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。なお、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下において「~」は、同様の意味をもって使用される。
本発明はスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ともいう。)に関するものである。本発明のターゲットに用いられるスパッタリングターゲット材(以下「ターゲット材」ともいう。)は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成されるものである。添加元素(X)はタンタル(Ta)及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの元素からなる。本発明のターゲット材は、これを構成する金属元素としてIn、Zn及び添加元素(X)を含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、これらの元素の他に、意図的に又は不可避的に、微量元素を含んでいてもよい。微量元素としては、例えば後述する有機添加物に含まれる元素やターゲット材製造時に混入するボールミル等のメディア原料が挙げられる。本発明のターゲット材における微量元素としては、例えばFe、Cr、Ni、Al、Si、W、Zr、Na、Mg、K、Ca、Ti、Y、Ga、Sn、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr及びPb等が挙げられる。それらの含有量は本発明のターゲット材が含むIn、Zn及びXを含む酸化物の合計質量に対して、各々通常100質量ppm(以下「ppm」ともいう。)以下であることが好ましく、より好ましくは80ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。これらの微量元素の合計量は500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。本発明のターゲット材に微量元素が含まれる場合は、前記合計質量には微量元素の質量も含まれる。
本発明のターゲット材は好適には、上述した酸化物を含む焼結体から構成されている。かかる焼結体及びスパッタリングターゲット材の形状に特に制限はなく、従来公知の形状、例えば平板型及び円筒形などを採用することができる。
本発明のターゲット材は、これを構成する金属元素、すなわちIn、Zn及びXの原子比が特定の範囲であることが、該ターゲット材から形成される酸化物半導体素子の性能が向上する点から好ましい。
具体的には、In及びXに関しては以下の式(1)で表される原子比を満たすことが好ましい(式中のXは、前記添加元素の含有比の総和とする。以下、式(2)及び(3)についても同じである。)。
0.4≦(In+X)/(In+Zn+X)<0.75 (1)
Znに関しては以下の式(2)で表される原子比を満たすことが好ましい。
0.25<Zn/(In+Zn+X)≦0.6 (2)
Xに関しては以下の式(3)で表される原子比を満たすことが好ましい。
0.001≦X/(In+Zn+X)≦0.015 (3)
In、Zn及びXの原子比が前記の式(1)ないし(3)の全てを満たすことで、本発明のターゲット材を用い、スパッタリングによって形成された酸化物薄膜を有する半導体素子は、高い電界効果移動度、低いリーク電流及び0Vに近いしきい電圧を示すものとなる。これらの利点を一層顕著なものとする観点から、In及びXに関しては下記の式(1-2)ないし(1-5)を満たすことが更に好ましい。
0.43≦(In+X)/(In+Zn+X)≦0.74 (1-2)
0.48≦(In+X)/(In+Zn+X)≦0.73 (1-3)
0.53≦(In+X)/(In+Zn+X)≦0.72 (1-4)
0.58≦(In+X)/(In+Zn+X)≦0.70 (1-5)
前記と同様の観点から、Znに関しては下記の式(2-2)ないし(2-5)を満たすことが更に好ましく、Xに関しては下記の式(3-2)ないし(3-5)を満たすことが更に好ましい。
0.26≦Zn/(In+Zn+X)≦0.57 (2-2)
0.27≦Zn/(In+Zn+X)≦0.52 (2-3)
0.28≦Zn/(In+Zn+X)≦0.47 (2-4)
0.30≦Zn/(In+Zn+X)≦0.42 (2-5)
0.0015≦X/(In+Zn+X)≦0.013 (3-2)
0.002<X/(In+Zn+X)≦0.012 (3-3)
0.0025≦X/(In+Zn+X)≦0.010 (3-4)
0.003≦X/(In+Zn+X)≦0.009 (3-5)
添加元素(X)は、上述のとおりTa及びNbから選択される1種以上が用いられる。これらの元素は、それぞれ単独で用いることができ、或いは2種を組み合わせて用いることもできる。特に添加元素(X)としてTaを用いることが、本発明のターゲット材から製造される酸化物半導体素子の総合的な性能の観点、及びターゲット材を製造する上での経済性の点から好ましい。
本発明のターゲット材は、上述の(1)ないし(3)の関係に加えて、InとXとの原子比に関して以下の式(4)を満たすことが、本発明のターゲット材から形成される酸化物半導体素子の電界効果移動度を一層高める点、及び0Vに近いしきい電圧を示す点から好ましい。
0.970≦In/(In+X)≦0.999 (4)
式(4)から明らかなとおり、本発明のターゲット材においては、Inの量に対して極めて少量のXを用いることで、ターゲット材から形成される酸化物半導体素子の電界効果移動度が高くなる。このことは本発明者が初めて見いだしたものである。これまで知られている従来技術(例えば特許文献1及び2に記載の従来技術)では、Inの量に対するXの使用量は本発明よりも多い。
ターゲット材から形成される酸化物半導体の電界効果移動度が一層高くなる観点、及び0Vに近いしきい電圧を示す観点から、InとXとの原子比は以下の式(4-2)ないし(4-4)を満たすことが更に好ましい。
0.980≦In/(In+X)≦0.997 (4-2)
0.990≦In/(In+X)≦0.995 (4-3)
0.990<In/(In+X)≦0.993 (4-4)
ターゲット材から形成される酸化物半導体素子の電界効果移動度の値が大きいことは、酸化物半導体素子であるTFT素子の伝達特性が良好となることに起因するFPDの高機能化の点から好ましい。詳細にはターゲット材から形成される酸化物半導体素子を備えたTFTは、その電界効果移動度(cm/Vs)が、45cm/Vs以上であることが好ましく、50cm/Vs以上であることが更に好ましく、60cm/Vs以上であることがより好ましく、70cm/Vs以上であることが一層好ましく、80cm/Vs以上であることが更に一層好ましく、90cm/Vs以上であることがより一層好ましく、100cm/Vs以上であることが特に好ましい。電界効果移動度の値は大きければ大きいほど、FPDの高機能化の点から好ましいが、電界効果移動度が200cm/Vs程度に高ければ、十分に満足すべき程度の性能が得られる。
本発明のターゲット材に含まれる各金属の割合は、例えばICP発光分光測定によって測定される。
本発明の、「複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に配置される基材保護部材」とは、基材に接合された複数のターゲット材の間隙から露出する基材の表面を覆うものであって、成膜する薄膜に悪影響を与えるような物質を、スパッタリング時に間隙から発生させない作用を有するものをいう。このような基材保護部材としては、基材表面に、テープ状の基材保護部材を配置したり、基材保護部材となる物質を塗布、めっき、スパッタリング、溶射などにより膜状或いはシート状、リボン状に設けたりすることができる。尚、基材保護部材は、前記間隙内を充填するように配設することもできる。また、平面部材の一部が突出し、かかる凸部が上記間隙内を埋設するようにしてもよい。本発明において、基材保護部材はテープ状の物を配置することが特に好ましい。
このような基材保護部材の材質としては、成膜する薄膜に混入しても悪影響を与えない物質、例えば、ターゲット材の組成を構成する元素の全部或いはその一部、これらの元素を含む合金や酸化物などを用いることができる。
尚、上記した基材保護部材の材質に関しては、その材質の化学組成が、基材に接合するために用いる接合材の化学組成とは実質的に異なるものである。例えば、金属インジウムを接合材として用いる場合、その際の基材保護部材は金属インジウムではないことを意味する。また、ターゲット材間の間隙に、接合材の金属インジウムが残存する場合があるが、この間隙に残存するインジウムが固化した際には、その表面が酸化することがある。このように接合材に用いる金属インジウムが間隙において固化する場合、そのインジウム表面には均一な酸化膜を形成することが困難であるため、上記した本発明の基材保護部材としての効果を奏することはできない。
本発明におけるスパッタリングターゲットは、例えば、板状、円筒形のものが対象となる。板状のスパッタリングターゲットは、板状基材に、板状のターゲット材を複数平面配置して接合したものが対象となる。また、円筒形のスパッタリングターゲットは、円筒形基材に、円筒形ターゲット材を複数嵌通或いは挿通させて、円筒形基材の円筒軸方向に多段状に配置して接合したもの、或いは、中空円筒を円筒軸方向に縦割りした湾曲状ターゲット材を、円筒形基材の外側面へ、円周方向に複数並べて接合したものが対象となる。この板状又は円筒形のスパッタリングターゲットは、大面積のスパッタリング装置に多用されている。尚、本発明は、他の形状のスパッタリングターゲットへの適用を妨げるものではなく、ターゲット材についてもその形状に制限はない。
本発明における基材保護部材はZn、Ta、及びNbいずれかの金属、或いはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上からなる合金、若しくはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含むセラミックスであることが好ましい。このような金属やセラミックスを基材保護部材として使用すれば、成膜された酸化物半導体薄膜中へ微量に混入しても、CuやTi等に比べ、TFT素子特性への影響を少なくすることができる。なお、セラミックスの材料としては、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含む酸化物、窒化物、酸窒化物などをあげることができるが、ターゲット材が酸化物であることから、セラミックス材料も酸化物であることが好ましい。セラミックス材料として具体的には、In、ZnO、Ta、Nb、In-Zn酸化物、In-Ta酸化物、In-Nb酸化物、Zn-Ta酸化物、Zn-Nb酸化物、Zn-Ta-Nb酸化物、In-Zn-Ta酸化物、In-Zn-Nb酸化物、In-Zn-Ta-Nb酸化物などや、InN、Zn、TaN、NbN、In-Zn窒化物、In-Ta窒化物、In-Nb窒化物、Zn-Ta窒化物、Zn-Nb窒化物、Zn-Ta-Nb窒化物、In-Zn-Ta窒化物、In-Zn-Nb窒化物、In-Zn-Ta-Nb窒化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、基材保護部材が上記のような金属、合金又はセラミックスから構成される場合、それらを主材料として好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上、最も好ましくは99.95質量%以上の割合で含有する。
基材保護部材を構成する金属又はセラミックスを、上述のような膜状、シート状或いはリボン状の形状とした際の、基材保護部材の厚みは0.0001mm~1.0mmが好ましい。基材保護部材の幅はターゲット部材間に形成される間隙と同じ、又はそれ以上に広いことが好ましく、5.0mm~30mm幅にすることが好ましい。また、上記のような形状の基材保護部材を基材上に配置する場合、ターゲット材の接合材や導電性両面テープなどを用いて貼付することができる。
本発明における基材保護部材は、第1基材保護部材と第2基材保護部材とを積層した構造であってもよい。このような基材保護部材を積層した構造であると、本発明に係るスパッタリングターゲットを製造することが容易に行え、ターゲット材や基材の材質にあわせて第1基材保護部材と第2基材保護部材との材質を適宜選択して適用することができる。この第1基材保護部材と第2基材保護部材との幅は同等であっても、相違していてもよい。尚、この積層構造の基材保護部材は、第1基材保護部材がターゲット材側になり、第2基材保護部材が基材側になる状態で、ターゲット材間に形成される間隙に沿って配置されることになる。
本発明における基材保護部材を積層構造により設ける場合、狭幅の第1基材保護部材と広幅の第2基材保護部材を積層し、第1基材保護部材の両端側に第2基材保護部材が露出した構造とすることができる。この構造では、広幅の第2基材保護部材の上に、狭幅の第1基材保護部材が積層した構造となる。
本発明における基材保護部材を積層構造とし、膜状、シート状或いはリボン状の形状に構成する場合、第1基材保護部材の厚みは0.0001mm~0.3mmが好ましく、第2基材保護部材の厚みは0.1mm~0.7mmが好ましい。第1基材保護部材と第2基材保護部材との合計厚みは、0.3mm~1.0mmとすることが好ましい。また、同幅の第1基材保護部材と第2基材保護部材とを積層する場合、これら基材保護部材の幅は5mm~30mmにすることが好ましい。そして、狭幅の第1基材保護部材と広幅の第2基材保護部材とを積層する場合、第1基材保護部材の幅はターゲット部材間に形成される間隙と同じ、又はそれ以上に広いことが好ましく、作業性などを考慮すると、5mm~20mmが好ましい。広幅の第2基材保護部材の幅は第1基材保護部材の幅よりも3mm~10mm広くすることが好ましい。
本発明における基材保護部材を上記した積層構造とする場合、第2基材保護部材を、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属又はこれらのいずれか二種以上を含む合金とすることが好ましい。また、第1基材保護部材を、Zn、Ta、Nbいずれかの金属、或いはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上を含む合金、若しくはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含むセラミックスで形成することが好ましい。
本発明における基材保護部材を上記した積層構造とする場合、第1基材保護部材を、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含むセラミックスで形成することが好ましい。これらセラミックスであれば、ターゲット部材と同組成か、或いは一部の組成がターゲット材と同じとなるので、成膜した際に膜中に混入したとしても、TFT素子特性への影響が小さくなるからである。なお、セラミックスとしてはIn、Zn、Ta及びNbのいずれか一種以上を含む酸化物、窒化物、酸窒化物などをあげることができるが、ターゲット材が酸化物であることから、セラミックスも酸化物であることが好ましい。セラミックスとして具体的には、In、ZnO、Ta、Nb、In-Zn酸化物、In-Ta酸化物、In-Nb酸化物、Zn-Ta酸化物、Zn-Nb酸化物、Zn-Ta-Nb酸化物、In-Zn-Ta酸化物、In-Zn-Nb酸化物、In-Zn-Ta-Nb酸化物などや、InN、Zn、TaN、NbN、In-Zn窒化物、In-Ta窒化物、In-Nb窒化物、Zn-Ta窒化物、Zn-Nb窒化物、Zn-Ta-Nb窒化物、In-Zn-Ta窒化物、In-Zn-Nb窒化物、In-Zn-Ta-Nb窒化物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、第2基材保護部材が上記のような金属又は合金から構成される場合、それらを主材料として好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上、最も好ましくは99.95質量%以上の割合で含有する。また、第1基材保護部材が上記のような金属、合金又はセラミックスから構成される場合、それらを主材料として好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上、最も好ましくは99.95質量%以上の割合で含有する。
尚、第1基材保護部材にセラミックスを使用する場合、これらセラミックスを、蒸着法、スパッタリング法、プラズマ溶射法、コールドスプレー法、エアゾルデポジション法、塗布法などを利用し、第1基材保護部材として形成することで本発明に適用してもよい。
本発明のターゲット材は、In、Zn及びXの原子比に加えて、相対密度が高いことによっても特徴付けられる。詳細には、本発明のターゲット材はその相対密度が好ましくは95%以上という高い値を示すものである。このような高い相対密度を示すことで、本発明のターゲット材を用いてスパッタリングを行う場合、パーティクルの発生を抑制することが可能となるので好ましい。この観点から、本発明のターゲット材はその相対密度が97%以上であることが更に好ましく、98%以上であることが一層好ましく、99%以上であることが更に一層好ましく、100%以上であることが特に好ましく、100%超であることがとりわけ好ましい。このような相対密度を有する本発明のターゲット材は、後述する方法によって好適に製造される。相対密度は、アルキメデス法に従い測定される。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
本発明のターゲット材は、上述したとおりIn、Zn及びXを含む酸化物から構成されている。この酸化物は、Inの酸化物、Znの酸化物又はXの酸化物であり得る。或いはこの酸化物は、In、Zn及びXからなる群から選択される任意の二種以上の元素の複合酸化物であり得る。複合酸化物の具体的な例としては、In-Zn複合酸化物、Zn-Ta複合酸化物、In-Ta複合酸化物、In-Nb複合酸化物、Zn-Nb複合酸化物、In-Nb複合酸化物、In-Zn-Ta複合酸化物、In-Zn-Nb複合酸化物、等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
本発明のターゲット材は、特にInの酸化物であるIn相及びInとZnとの複合酸化物であるZnIn相を含むことが、該ターゲット材の密度及び強度を高め且つ抵抗を低減させる観点から好ましい。本発明のターゲット材がIn相及びZnIn相を含むことは、本発明のターゲット材を対象としたX線回折(以下「XRD」ともいう。)測定によってIn相及びZnIn相が観察されるか否かによって判断できる。なお、本発明におけるIn相は微量にZn元素を含み得る。
詳細には、X線源としてCuKα線を用いたXRD測定においてIn相は2θ=30.38°以上30.78°以下の範囲にメインピークが観察される。ZnIn相は2θ=34.00°以上34.40°以下の範囲にメインピークが観察される。
XRD測定によって本発明のターゲット材にIn相が観察される場合、In相はその結晶粒のサイズが特定の範囲を満たすことが、本発明のターゲット材の密度及び強度を高め且つ抵抗を低減させる点から好ましい。詳細には、In相の結晶粒のサイズは、3.0μm以下であることが好ましく、2.7μm以下であることが更に好ましく、2.5μm以下であることが一層好ましい。結晶粒のサイズは小さいほど好ましく下限値は特に定めるものではないが、通常0.1μm以上である。
XRD測定によって本発明のターゲット材にZnIn相が観察される場合、ZnIn相に関しても、その結晶粒のサイズが特定の範囲を満たすことが、本発明のターゲット材の密度及び強度を高め且つ抵抗を低減させる点から好ましい。詳細には、ZnIn相の結晶粒のサイズは、3.9μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることが更に好ましく、2.5μm以下であることが一層好ましく、2.3μm以下であることが更に一層好ましく、2.0μm以下であることが特に好ましく、1.9μm以下であることがとりわけ好ましい。結晶粒のサイズは小さいほど好ましく下限値は特に定めるものではないが、通常0.1μm以上である。
In相の結晶粒のサイズ及びZnIn相の結晶粒のサイズを上述した範囲に設定するには、例えば後述する方法によってターゲット材を製造すればよい。
In相の結晶粒のサイズ及びZnIn相の結晶粒のサイズは、本発明のターゲット材を走査型電子顕微鏡(以下「SEM」ともいう。)によって観察することで測定される。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
次に、本発明のターゲット材の好適な製造方法について説明する。本製造方法においては、ターゲット材の原料となる酸化物粉を所定の形状に成形して成形体を得て、この成形体を焼成することで、焼結体からなるターゲット材を得る。成形体を得るには、当該技術分野においてこれまで知られている方法を採用することができる。特に鋳込み成形法又はCIP成形法を採用することが、緻密なターゲット材を製造し得る点から好ましい。
鋳込み成形法はスリップキャスト法とも呼ばれる。鋳込み成形法を行うには先ず、原料粉末と有機添加物とを含有するスラリーを、分散媒を用いて調製する。
前記の原料粉末としては酸化物粉末又は水酸化物粉末を用いることが好適である。酸化物粉末としては、In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末、及びX酸化物の粉末を用いる。In酸化物としては例えばInを用いることができる。Zn酸化物としては例えばZnOを用いることができる。X酸化物の粉末としては例えばTa、及びNbを用いることができる。
本製造方法においては、これら原料粉末をすべて混合した後に焼成を行う。このこととは対照的に、従来技術、例えば特許文献2に記載の技術では、In粉とTa粉とを混合した後に焼成を行い、次いで得られた焼成粉とZnO粉とを混合して再び焼成を行っている。この方法では事前に焼成を実施することによって粉末を構成する粒子が粗粒となってしまい、相対密度の高いターゲット材を得ることが容易でない。これに対して本製造方法では、好ましくは、In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末及びX酸化物の粉末をすべて常温で混合、成形した後、焼成を行っているので、相対密度の高い緻密なターゲット材が容易に得られる。
In酸化物の粉末、Zn酸化物の粉末及びX酸化物の粉末の使用量は、目的とするターゲット材におけるIn、Zn及びXの原子比が、上述した範囲を満たすように調整することが好ましい。
原料粉末の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表して、0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましい。この範囲の粒径を有する原料粉末を用いることで、相対密度の高いターゲット材を容易に得ることができる。
前記の有機添加物は、スラリーや成形体の性状を好適に調整するために用いられる物質である。有機添加物としては、例えばバインダ、分散剤及び可塑剤等を挙げることができる。バインダは、成形体の強度を高めるために添加される。バインダとしては、公知の粉末焼結法において成形体を得るときに通常使用されるバインダを使用することができる。バインダとしては、例えばポリビニルアルコールを挙げることができる。分散剤は、スラリー中の原料粉末の分散性を高めるために添加される。分散剤としては、例えばポリカルボン酸系分散剤、ポリアクリル酸系分散剤を挙げることができる。可塑剤は、成形体の可塑性を高めるために添加される。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)及びエチレングリコール(EG)等を挙げることができる。
原料粉末及び有機添加物を含有するスラリーを作製する際に使用する分散媒には特に制限はなく、目的に応じて、水、及びアルコール等の水溶性有機溶媒から適宜選択して使用することができる。原料粉末及び有機添加物を含有するスラリーを作製する方法には特に制限はなく、例えば、原料粉末、有機添加物、分散媒及びジルコニアボールをポットに入れ、ボールミル混合する方法が使用できる。
このようにしてスラリーが得られたら、このスラリーを型に流し込み、次いで分散媒を除去して成形体を作製する。用いることができる型としては、例えば金属型や石膏型、加圧して分散媒除去を行う樹脂型などが挙げられる。
一方、CIP成形法においては、鋳込み成形法において用いたスラリーと同様のスラリーを噴霧乾燥して乾燥粉末を得る。得られた乾燥粉末を型に充填してCIP成形を行う。
このようにして成形体が得られたら、次にこれを焼成する。成形体の焼成は一般に酸素含有雰囲気中で行うことができる。特に大気雰囲気中で焼成することが簡便である。焼成温度は1200℃以上1600℃以下であることが好ましく、1300℃以上1500℃以下であることが更に好ましく、1350℃以上1450℃以下であることが一層好ましい。焼成時間は、1時間以上100時間以下であることが好ましく、2時間以上50時間以下であることが更に好ましく、3時間以上30時間以下であることが一層好ましい。昇温速度は5℃/時間以上500℃/時間以下であることが好ましく、10℃/時間以上200℃/時間以下であることが更に好ましく、20℃/時間以上100℃/時間以下であることが一層好ましい。
成形体の焼成においては、焼成過程においてInとZnとの複合酸化物、例えばZnInの相が生成する温度を一定時間維持することが、焼結の促進及び緻密なターゲット材の生成の観点から好ましい。詳細には、原料粉末にIn粉及びZnO粉が含まれている場合、昇温に従いこれらが反応してZnInの相が生成し、その後ZnInの相へ変化し、ZnInの相へと変化する。特にZnInの相が生成する際に体積拡散が進み緻密化が促進されることから、ZnInの相を確実に生成させることが好ましい。このような観点から、焼成の昇温過程において、温度を1000℃以上1250℃以下の範囲で一定時間維持することが好ましく、1050℃以上1200℃以下の範囲で一定時間維持することが更に好ましい。維持する温度は、必ずしもある特定の一点の温度に限られるものではなく、ある程度の幅を有する温度範囲であってもよい。具体的には、1000℃以上1250℃以下の範囲から選ばれるある特定の温度をT(℃)とするとき、1000℃以上1250℃以下の範囲に含まれる限り、例えばT±10℃であってもよく、好ましくはT±5℃であり、より好ましくはT±3℃であり、更に好ましくはT±1℃である。この温度範囲を維持する時間は、好ましくは1時間以上40時間以下であり、更に好ましくは2時間以上20時間以下である。
このようにして得られたターゲット材は、研削加工などにより、所定の寸法に加工することができる。これを基材に接合することでスパッタリングターゲットが得られる。このようにして得られたスパッタリングターゲットは、酸化物半導体の製造に好適に用いられる。例えばTFTの製造に、本発明のターゲット材を用いることができる。
本発明のスパッタリングターゲットは、例えば、図1に示すようにCu製基材10に、複数のターゲット材20を配置し、接合することにより形成することができる。これらのターゲット材の間には、0.1mm~1.0mmの間隙30が形成される。
図2に示すように、基材10の表面には、ターゲット材間に形成される間隙に相当する位置に、基材保護部材50が貼付される。基材保護部材は、接合材や導電性両面テープなどを用いて、基材10表面に貼付することができる。
複数のターゲット部材は、例えば図1に示すように配置して、InやSnの接合材を用いて接合される。この接合は、基材表面に、溶融した接合材を塗布し、ターゲット材をその接合材上に配置し、室温まで冷却することにより行われる。
図3に、単層の基材保護部材を用いた場合の断面概略図を示す。単層の基材保護部材50は、厚み0.0001mm~1.0mmであり、基材保護部材はZn、Ta、Nbいずれかの金属、或いはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上からなる合金、若しくはIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含むセラミックスで形成される。この単層の基材保護部材50の両端側には、Inの接合材60が存在した状態となる。
図4に、同じ幅の基材保護部材を積層した二層構造の基材保護部材の断面概略図を示す。二層構造の基材保護部材50は、第1基材保護部材51と第2基材保護部材52とから構成される。そして、この第1基材保護部材51と第2基材保護部材の幅は、作業性などを考慮すると5mm~20mmが好ましい。また、第1基材保護部材51及び、第2基材保護部材52の両端側には、Inの接合材60が存在した状態となる。なお、図4には二層構造を示したが基材保護部材は三層以上の構造をとってもよい。例えば、第1基材保護部材の材質と第2基材保護部材の材質の線膨張率差を考慮し、第1基材保護部材の材質と第2基材保護部材の材質の、中間の線膨張率を有する材料を使用し中間層を設けてもよい。
図5に、異なる幅の基材保護部材を積層した二層構造の基材保護部材の断面概略図を示す。二層構造の基材保護部材50は、第1基材保護部材51と第2基材保護部材52とから構成される。そして、この第1基材保護部材51の幅は、作業性などを考慮して5mm~20mmであり、第2基材保護部材52の幅は8mm~30mmであり、第1基材保護部材よりも第2基材保護部材の方が幅は広い。そして、第2基材保護部材のほぼ中央に第1基材保護部材51が配置されることにより、第1基材保護部材の両端側に第2基材保護部材52が露出した状態となっている。この露出した部分の幅は、両端側のそれぞれの片側で1.5mm~5mmである。また、第1基材保護部材51及び、第2基材保護部材52の両端側には、Inの接合材60が存在した状態となっている。なお、図5には二層構造を示したが基材保護部材は三層以上の構造をとってもよい。例えば、第1基材保護部材の材質と第2基材保護部材の材質の線膨張率差を考慮し、第1基材保護部材の材質と第2基材保護部材の材質の、中間の線膨張率を有する材料を使用し中間層を設けてもよい。
図4及び図5で示す第2基材保護部材52は、厚み0.1mm~0.7mmであり、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属、又はこれらのいずれかを含む合金で構成される。図4及び図5で示す第1基材保護部材51は、厚み0.0001mm~0.3mmであり、Zn、Ta、Nbいずれかの金属、或いはIn、Zn、Ta、Nbのいずれか二種以上からなる合金、若しくはIn、Zn、Ta、Nbのいずれか一種以上を含むセラミックスで形成されている。
図4及び図5で示す二層構造の基材保護部材は、例えば、0.3mm厚みのCu金属シートに、プラズマ溶射によってTaやNbの粉末を吹き付けることにより作製することができる。
図6に、単層の基材保護部材を用いた変形例の断面概略図を示す。図6では、単層の基材保護部材50は、ターゲット材20間の間隙30内に充填されている。この場合、基材保護部材50の厚みは、0.0001mm~1.0mmとし、ターゲット材20と基材保護部材50とが面同一とならないようにする。これによって、基材保護部材50のスパッタを抑制することができる。なお、本変形例では、ターゲット材20及び基材保護部材50と基材10との間にInの接合材60が存在した状態となる。
図7には、TFT素子100の一例が模式的に示されている。同図に示すTFT素子100は、ガラス基材110の一面に形成されている。ガラス基材110の一面にはゲート電極120が配置されており、これを覆うようにゲート絶縁膜130が形成されている。ゲート絶縁膜130上には、ソース電極160、ドレイン電極161及びチャネル層140が配置されている。チャネル層140上にはエッチングストッパー層150が配置されている。そして最も上部に保護層170が配置されている。この構造を有するTFT素子100において、例えばチャネル層140の形成を、本発明のターゲット材を用いて行うことができる。その場合、チャネル層140は、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成されたものとなり、インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)の原子比は、上述した式(1)を満たすものとなる。また、上述した式(2)及び(3)を満たすものとなる。
本発明のターゲット材から形成された酸化物半導体素子はアモルファス構造を有することが、該素子の性能向上の点から好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に鑑み、以下の発明をも包含する。
〔1〕インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成され、
添加元素(X)はタンタル(Ta)、及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの元素からなり、
各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たす(式中のXは、前記添加元素の含有比の総和とする。)複数のスパッタリングターゲット材を、基材に接合材により接合して形成されるスパッタリングターゲットであって、
0.4≦(In+X)/(In+Zn+X)<0.75(1)
0.25<Zn/(In+Zn+X)≦0.6 (2)
0.001≦X/(In+Zn+X)≦0.015 (3)
前記複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に配置される基材保護部材を有するスパッタリングターゲット。
〔2〕前記基材保護部材が、Zn、Ta、及びNbいずれかの金属、又はIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上を含有する合金を含む、〔1〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔3〕前記基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有するセラミックスを含む、〔1〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔4〕前記セラミックスがIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、〔3〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔5〕前記セラミックスがIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物を含む、〔3〕又は〔4〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔6〕前記基材保護部材が、スパッタリングターゲット材側の第1基材保護部材と基材側の第2基材保護部材とを積層した構造を有する、〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
〔7〕前記第2基材保護部材が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属、又はこれら金属のいずれか二種以上を含有する合金を含み、前記第1基材保護部材が、Zn、Ta、及びNbいずれかの金属、又はIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上を含有する合金を含む、〔6〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔8〕前記第2基材保護部材が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属、又はこれら金属のいずれか二種以上を含有する合金を含み、第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有するセラミックスを含む、〔6〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔9〕前記第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、〔8〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔10〕前記第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物を含む、〔8〕又は〔9〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔11〕添加元素(X)がタンタル(Ta)である、〔1〕ないし〔10〕のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
〔12〕前記スパッタリングターゲット材がIn相及びZnIn相を含む、〔1〕ないし〔11〕のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
〔13〕In相の結晶粒のサイズが0.1μm以上3.0μm以下であり、
ZnIn相の結晶粒のサイズが0.1μm以上3.9μm以下である、〔12〕に記載のスパッタリングターゲット。
〔14〕式(4)を更に満たす、〔1〕ないし〔13〕のいずれか一つに記載のスパッタリングターゲット。
0.970≦In/(In+X)≦0.999 (4)
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1(実施例1-1~1-6)〕
平均粒径D50が0.6μmであるIn粉末と、平均粒径D50が0.8μmであるZnO粉末と、平均粒径D50が0.6μmであるTa粉末とを、ジルコニアボールによってボールミル乾式混合して、混合原料粉末を調製した。各粉末の平均粒径D50は、マイクロトラックベル株式会社製の粒度分布測定装置MT3300EXIIを用いて測定した。測定の際、溶媒には水を使用し、測定物質の屈折率2.20で測定した。各粉末の混合比率は、InとZnとTaとの原子比が、以下の表4に示す値となるようにした。
混合原料粉末が調製されたポットに、混合原料粉末に対して0.2質量%のバインダと、混合原料粉末に対して0.6質量%の分散剤と、混合原料粉末に対して20質量%の水とを加え、ジルコニアボールによってボールミル混合してスラリーを調製した。
調製されたスラリーを、フィルターを挟んだ金属製の型に流し込み、次いでスラリー中の水を排出して成形体を得た。この成形体を焼成して焼結体を作製した。焼成は酸素濃度が20体積%である雰囲気中、焼成温度1400℃、焼成時間8時間、昇温速度50℃/時間、降温速度50℃/時間で行った。焼成の途中、1100℃を6時間維持してZnInの生成を促進させた。
このようにして得られた焼結体を切削加工し、幅210mm×長さ710mm×厚さ6mmの酸化物焼結体(ターゲット材)を得た。切削加工には#170の砥石を使用した。
ターゲット材からφ8inchのターゲット材を切り出し、中央で2分割した。これら2分割したターゲット材を、ターゲット材間に形成される間隙が0.5mmとなるようにして、Cu製のバッキングプレート(基材)にInはんだで接合しスパッタリングターゲットを得た。その際、ターゲット材間に形成される間隙に沿って、Cu製のバッキングプレートとターゲット材との間に基材保護部材を配置した。
〔実施例1-1〕
上述のスパッタリングターゲットにおいて単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのTa金属シートを配置した。
〔実施例1-2〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのZn金属シートを配置した。
〔実施例1-3〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成のセラミックスシートを配置した。
〔実施例1-4〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、スパッタリングにより厚み0.0001mm、幅20mmのTa膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例1-5〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmのTa膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例1-6〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成の膜を第1基材保護部材として形成したものを配置した。
〔比較例1〕
間隙部分に基材保護部材を配置せずに接合を行った。
〔実施例2ないし7〕
実施例1において、InとZnとTaとの原子比が、以下の表4に示す値となるように各原料粉末を混合した。これ以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。なお、基材保護部材として実施例1-5と同様のものを配置した。
〔実施例8-1~8-6〕
実施例1において、Ta粉末に代えて、平均粒径D50が0.7μmであるNb粉末を用いた。InとZnとNbとの原子比が、以下の表1に示す値となるように各原料粉末を混合した。これ以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。
〔実施例8-1〕
上述のスパッタリングターゲットにおいて単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのNb金属シートを配置した。
〔実施例8-2〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのZn金属シートを配置した。
〔実施例8-3〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成のセラミックスシートを配置した。
〔実施例8-4〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、スパッタリングにより厚み0.0001mm、幅20mmのNb膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例8-5〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmのNb膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例8-6〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成の膜を第1基材保護部材として形成したものを配置した。
〔比較例2〕
間隙部分に基材保護部材を配置せずに接合を行った。
〔実施例9(実施例9-1~9-9)〕
実施例1において、Ta粉末に代えて、Ta粉末と、Nb粉末とを、InとZnとTaとNbとの原子比が、以下の表2に示す値となるように混合した。Ta、Nbのモル比は、Ta:Nb=3:2とした。これ以外は実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。
〔実施例9-1〕
上述のスパッタリングターゲットにおいて単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのTa金属シートを配置した。
〔実施例9-2〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのNb金属シートを配置した。
〔実施例9-3〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのZn金属シートを配置した。
〔実施例9-4〕
単層の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成のセラミックスシートを配置した。
〔実施例9-5〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、スパッタリングにより厚み0.0001mm、幅20mmのTa膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例9-6〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、スパッタリングにより厚み0.0001mm、幅20mmのNb膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例9-7〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmのTa膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例9-8〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmのNb膜を第1基材保護部材として成膜したものを配置した。
〔実施例9-9〕
積層構造の基材保護部材として、厚み0.3mm、幅20mmのCu金属シートの第2基材保護部材上に、プラズマ溶射により厚み0.1mm、幅20mmの、ターゲット材と同組成の膜を第1基材保護部材として形成したものを配置した。
〔比較例3〕
間隙部分に基材保護部材を配置せずに接合を行った。
実施例及び比較例で得られたターゲット材に含まれる各金属の割合を、ICP発光分光測定によって測定した。InとZnとTaとNbとの原子比が、表4に示す原料比と同一であることを確認した。
〔評価1〕
実施例で得られたターゲット材の相対密度を以下の方法で測定した。実施例1~9で得られたターゲット材について以下の条件でXRD測定を行い、In相及びZnIn相の有無を確認した。また、実施例1~9で得られたターゲット材についてSEM観察を行い、In相の結晶粒のサイズ、ZnIn相の結晶粒のサイズを以下の方法で測定した。それらの結果を以下の表4に示す。
〔相対密度〕
ターゲット材の空中質量を体積(ターゲット材の水中質量/計測温度における水比重)で除し、下記式(i)に基づく理論密度ρ(g/cm)に対する百分率の値を相対密度(単位:%)とした。
・・・(i)
(式中Ciはターゲット材の構成物質の含有量(質量%)を示し、ρiはCiに対応する各構成物質の密度(g/cm)を示す。)
本発明の場合、ターゲット材の構成物質は、In、ZnO、Ta、Nbと考え、例えば
C1:ターゲット材のInの質量%
ρ1:Inの密度(7.18g/cm
C2:ターゲット材のZnOの質量%
ρ2:ZnOの密度(5.60g/cm
C3:ターゲット材のTaの質量%
ρ3:Taの密度(8.73g/cm
C4:ターゲット材のNbの質量%
ρ4:Nbの密度(4.60g/cm
を式(i)に適用することで理論密度ρを算出できる。
Inの質量%、ZnOの質量%、Taの質量%、Nbの質量%は、ICP発光分光測定によるターゲット材の各元素の分析結果から求めることができる。
〔XRD測定条件〕
株式会社リガクのSmartLab(登録商標)を用いた。測定条件は以下のとおりである。実施例1で得られたターゲット材についてのXRD測定の結果を図8に示す。
・線源:CuKα線
・管電圧:40kV
・管電流:30mA
・スキャン速度:5deg/min
・ステップ:0.02deg
・スキャン範囲:2θ=5度~80度
〔In相の結晶粒のサイズ、ZnIn相の結晶粒のサイズ〕
日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡SU3500を用いて、ターゲット材の表面をSEM観察するとともに、結晶の構成相や結晶形状の評価を行った。
具体的には、ターゲット材を切断して得られた切断面を、エメリー紙#180、#400、#800、#1000、#2000を用いて段階的に研磨し、最後にバフ研磨して鏡面に仕上げた。鏡面仕上げ面をSEM観察した。結晶形状の評価では、倍率1000倍、87.5μm×125μmの範囲のBSE-COMP像を無作為に10視野撮影しSEM像を得た。
得られたSEM像を、画像処理ソフトウェア:ImageJ 1.51k(http://imageJ.nih.gov/ij/、提供元:アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health))によって解析した。具体的な手順は以下のとおりである。
SEM像撮影時に用いたサンプルを、1100℃で1時間サーマルエッチングを施し、SEM観察を行うことで粒界が現れた画像を得た。得られた画像に対し、先ずIn相の粒界に沿って描画を行った。すべての描画が完了した後、粒子解析を実施(Analyze→Analyze Particles)して、各粒子における面積を得た。その後、得られた各粒子における面積から、面積円相当径を算出した。10視野において算出された全粒子の面積円相当径の算術平均値を、In相の結晶粒のサイズとした。続いてZnIn相の粒界に沿って描画を行い、同様に解析を施すことによって得られた各粒子における面積から、面積円相当径を算出した。10視野において算出された全粒子の面積円相当径の算術平均値を、ZnIn相の結晶粒のサイズとした。
〔評価2〕
実施例1-1~1-6、実施例8-1~8-6、実施例9-1~9-6および比較例1~3のスパッタリングターゲットにおける、スパッタ膜のCu製バッキングプレート(基材)によるCuの混入量を評価した。具体的には、スパッタリング装置(トッキ株式会社製 SML-464)を用い、ガラス基材(日本電気硝子株式会社製OA-10)に厚み14μmの薄膜を成膜した。そして、この成膜した基材について、ターゲット材間に形成される間隙の直上部分に相当する箇所を切り出した。切り出した基材について、Agilent Technologies社製ICP発光分光分析装置 720 ICP-OES を使用して、ICP-OES法により各薄膜中のCuの含有量を測定して評価を行った。
その結果を表1から3に示す。
表1~3に示すように、基材保護部材を配置した場合は、スパッタ膜のCuの含有量は2ppm未満であった。これに対して、基材保護部材を配置していない場合、スパッタ膜のCuの含有量は21~23ppmであった。この結果から、基材保護部材を配置することにより、スパッタ膜へのCuの混入を防止できていることがわかる。
〔評価3〕
実施例1-5、実施例2~7、実施例8-5、実施例9-6及び比較例1~3のスパッタリングターゲットを用いて、図6に示すTFT素子1をフォトリソグラフィー法により作製した。
TFT素子1の作製においては、最初に、ガラス基材(日本電気硝子株式会社製OA-10)10上にゲート電極20としてMо薄膜を、DCスパッタリング装置を用いて成膜した。次に、ゲート絶縁膜30としてSiOx薄膜を下記の条件で成膜した。
成膜装置:プラズマCVD装置 サムコ株式会社製 PD-2202L
成膜ガス:SiH/NO/N混合ガス
成膜圧力:110Pa
基材温度:250~400℃
次に、チャネル層40を、実施例1-5、実施例2~7、実施例8-5、実施例9-6及び比較例1~3で得られたスパッタリングターゲットを用いて、下記の条件でスパッタリング成膜を行い、厚さ30nmの薄膜を成膜した。なお、チャネル層40を成膜する際は、ターゲット材間に形成される間隙の直上で成膜されるようにした。
・成膜装置:DCスパッタリング装置 トッキ株式会社製 SML-464
・到達真空度:1×10-4Pa未満
・スパッタガス:Ar/O混合ガス
・スパッタガス圧:0.4Pa
・Oガス分圧:50%
・基材温度:室温
・スパッタリング電力:3W/cm
更に、エッチングストッパー層50として、SiOx薄膜を、前記プラズマCVD装置を用いて成膜した。次に、ソース電極60及びドレイン電極61としてMo薄膜を、前記DCスパッタリング装置を用いて成膜した。保護層70として、SiOx薄膜を、前記プラズマCVD装置を用いて成膜した。最後に350℃で熱処理を実施した。
このようにして得られたTFT素子1について、ドレイン電圧Vd=5Vでの伝達特性の測定を行った。測定した伝達特性は、電界効果移動度μ(cm/Vs)、SS(Subthreshold Swing)値(V/dec)及びしきい電圧Vth(V)である。伝達特性は、Agilent Technologies株式会社製Semiconductor Device Analyzer B1500Aによって測定した。測定結果を表1及び表2に示す。なお表に示していないが、各実施例で得られたTFT素子1のチャネル層40がアモルファス構造であることをXRD測定によって本発明者は確認している。
電界効果移動度とは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)動作の飽和領域において、ドレイン電圧を一定としたときのゲート電圧に対するドレイン電流の変化から求めたチャネル移動度のことであり、値が大きいほど伝達特性が良好である。
SS値とは、しきい電圧近傍でドレイン電流を1桁上昇させるのに必要なゲート電圧のことであり、値が小さいほど伝達特性が良好である。
しきい電圧とは、ドレイン電極に正電圧をかけ、ゲート電極に正負いずれかの電圧をかけたときにドレイン電流が流れ、1nAとなった場合の電圧であり、値が0Vに近いことが好ましい。詳細には、-2V以上であることが更に好ましく、-1V以上であることが一層好ましく、0V以上であることが更に一層好ましい。また、3V以下であることが更に好ましく、2V以下であることが一層好ましく、1V以下であることが更に一層好ましい。
表4に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたターゲット材を用いて製造されたTFT素子は、伝達特性が優れていることが分かる。
更に、実施例1で得られたターゲット材は、In相及びZnIn相を含むものであった。実施例2ないし9で得られたターゲット材についても同様の結果が得られた。
本発明によれば、複数のターゲット材を接合して得られた大面積のスパッタリングターゲットであっても、基材の構成材料が、成膜する薄膜中に混入することを効果的に防止することができる、スパッタリングターゲットを提供することができる。
本発明のスパッタリングターゲットは、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用される薄膜トランジスタ(TFT)の技術分野において好適に用いることができる。また、複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に基材保護部材を配置することにより、従来スパッタリングターゲットに比べ基材の構成材料がスパッタリングされず、当該構成材料が成膜する薄膜中に混入することを効果的に防止することができる。そのため、不純物を多く含む目的外のスパッタリング膜の製造が抑制可能であるため、天然資源の持続可能な管理、効率的な利用、及び脱炭素(カーボンニュートラル)を達成することにつながる。

Claims (13)

  1. インジウム(In)元素、亜鉛(Zn)元素及び添加元素(X)を含む酸化物から構成され、
    添加元素(X)はタンタル(Ta)、及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つの元素からなり、
    各元素の原子比が式(1)ないし(3)の全てを満たす(式中のXは、前記添加元素の含有比の総和とする。)複数のスパッタリングターゲット材を、基材に接合材により接合して形成されるスパッタリングターゲットであって、
    0.4≦(In+X)/(In+Zn+X)<0.75(1)
    0.25<Zn/(In+Zn+X)≦0.6 (2)
    0.001≦X/(In+Zn+X)≦0.015 (3)
    前記スパッタリングターゲット材がIn 相及びZn In 相を含み、
    前記複数のスパッタリングターゲット材間に形成される間隙に配置される基材保護部材を有するスパッタリングターゲット。
  2. 前記基材保護部材が、Zn、Ta、及びNbいずれかの金属、又はIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上を含有する合金を含む、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. 前記基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有するセラミックスを含む、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  4. 前記セラミックスがIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、請求項3に記載のスパッタリングターゲット。
  5. 前記セラミックスがIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物を含む、請求項3又は4に記載のスパッタリングターゲット。
  6. 前記基材保護部材が、スパッタリングターゲット材側の第1基材保護部材と基材側の第2基材保護部材とを積層した構造を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  7. 前記第2基材保護部材が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属、又はこれら金属のいずれか二種以上を含有する合金を含み、前記第1基材保護部材が、Zn、Ta、及びNbいずれかの金属、又はIn、Zn、Ta、及びNbのいずれか二種以上を含有する合金を含む、請求項6に記載のスパッタリングターゲット。
  8. 前記第2基材保護部材が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ag、及びTaのいずれかの金属、又はこれら金属のいずれか二種以上を含有する合金を含み、第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有するセラミックスを含む、請求項6に記載のスパッタリングターゲット。
  9. 前記第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、請求項8に記載のスパッタリングターゲット。
  10. 前記第1基材保護部材が、In、Zn、Ta、及びNbのいずれか一種以上を含有する酸化物を含む、請求項8又は9に記載のスパッタリングターゲット。
  11. 添加元素(X)がタンタル(Ta)である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  12. In相の結晶粒のサイズが0.1μm以上3.0μm以下であり、
    ZnIn相の結晶粒のサイズが0.1μm以上3.9μm以下である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  13. 式(4)を更に満たす、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
    0.970≦In/(In+X)≦0.999 (4)
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