JP7398803B2 - 窒化物材料およびそれからなる圧電体並びにその圧電体を用いたmemsデバイス - Google Patents

窒化物材料およびそれからなる圧電体並びにその圧電体を用いたmemsデバイス Download PDF

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Description

本発明は、イッテルビウムを添加した窒化アルミニウム材料、それからなる圧電体およびその圧電体を用いたMEMSデバイスに関するものである。
圧電現象を利用するデバイスは、幅広い分野において用いられており、小型化および省電力化が強く求められている携帯電話機などの携帯用機器において、その使用が拡大している。その一例として、薄膜バルク音響波共振子(Film Bulk Acoustic Resonator;FBAR)を用いたFBARフィルタがある。
FBARフィルタは、圧電応答性を示す薄膜の厚み縦振動モードを用いた共振子によるフィルタであり、ギガヘルツ帯域における共振が可能であるという特性を有する。このような特性を有するFBARフィルタは、低損失であり、かつ広帯域で動作可能であることから、携帯用機器のさらなる高周波対応化、小型化および省電力化に寄与することが期待されている。
そして、このようなFBARに用いられる圧電体薄膜の圧電体材料としては、例えばスカンジウムを添加した窒化アルミニウム(特許文献1参照)やイッテルビウムを添加した窒化アルミニウム(特許文献2および3参照)等が挙げられる。特にスカンジウムを添加した窒化アルミニウムは、高い圧電定数を有し、次世代の高周波フィルタへの利用に期待されている。また、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどの物理センサ、アクチュエータ、マイクロフォン、指紋認証センサ、振動発電機等の様々なMEMS(micro electro mechanical system)デバイスへの利用に期待されている。
特開2009-10926号公報 特開2017-201050号公報 米国特許出願公開第2017/0263847号明細書 田中秀治著、「次世代センサに関連して振動アクチュエータの基礎を復習する」、次世代センサ、一般社団法人次世代センサ協議会、2012年、22巻、2号、pp.14―17 K.R. Talley, S.L. Millican, J. Mangum, S. Siol, c.B. Musgrave, B. Gorman, A.M. Holder, A. Zakutayev, and G.L. Brennecka1, Phys. Rev. Materials. 2, 063802 (2018).
しかしながら、スカンジウム(Sc)は高価な希土類元素であり、スカンジウムを添加した窒化アルミニウム(Al1-XScN,0<X<1)で構成された圧電体は他の物質で構成された圧電体と比較して、製造コストが高額になってしまうという問題点があった。
また、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同等またはそれ以上の性能指数を有する圧電体が存在すれば、設備を大幅に変更することなく高性能の圧電体を作製できるが、そのような圧電体が存在しないという問題点があった。
さらに、MEMSデバイスに用いられる圧電体は、そのMEMSデバイスの目的に応じた性能指数で評価する必要がある。特に、圧電体をアクチュエータやセンサとして利用する際には、電圧を印加した時に生ずる歪の大きさを示す圧電定数d33や圧力を加えた時に生ずる電圧を示す圧電出力定数g33の圧電定数を評価する必要がある。さらには、電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換効率を表す電気機械結合定数kも重要な性能指数となる。しかし、これらの性能指数に関し、非特許文献1に記載の窒化アルミニウムを含めて、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムの値と同程度またはそれを超えるものがないという問題点があった。
そして、圧電定数d33の算出にあたっては、歪まないように拘束された圧電体に電界を印加した時に発生する圧電応力定数e33と、圧電体に応力を作用させた際に生じる歪の比例定数C33が必要となる。また、圧電出力定数g33や電気機械結合定数kの算出では上記の物性値に加え、圧電体の誘電率ε33も必要である。一般に、ウルツ鉱型結晶構造を有する圧電体薄膜はc軸方向に配向しているため、c軸成分の圧電性能指数が重要となる。
本発明は上述した事情に鑑み、何もドープさせていない窒化アルミニウム(ノンドープAlN)よりも高い性能指数(圧電定数(d33)、圧電応力定数(e33)、弾性定数(C33)、圧電出力定数(g33)および電気機械結合定数(k)の少なくとも何れか1つ)の値を有する窒化物圧電体、それからなる圧電体並びにその圧電体を用いたMEMSデバイスを提供することを目的とする。
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究を続けた結果、所定の濃度の範囲内のイッテルビウム(Yb)を添加させた(ドープさせた)窒化アルミニウム(Al1-XYbN)であって、所定の範囲内の格子定数比c/aを有するものは、ノンドープAlNよりも高く、かつ同濃度のスカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同等の性能指数(圧電定数(d33)、圧電応力定数(e33)、弾性定数(C33)、圧電出力定数(g33)および電気機械結合定数(k)の少なくとも何れか1つ)の値を有することを見出し、以下のような画期的な窒化物材料を発明した。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、化学式Al1-XYbNで表され、Xの値が0.60以上で1.00以下の範囲にあることを特徴とする圧電体にある。
かかる第1の態様では、ノンドープAlNよりも高く、かつ同濃度のスカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同等の性能指数の値を有する窒化物材料を提供することができる。また、高価なスカンジウムを使用することなく、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同様の性能指数を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明に係る第2の態様は、Xの値が0.60以上で0.76以下の範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第2の態様では、より安定な窒化物材料を提供することができる。
本発明に係る第3の態様は、Xの値が0.65以上で1.00以下の範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第3の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも高い圧電定数d33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明に係る第4の態様は、Xの値が0.87以上で1.00以下の範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第4の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも高い圧電応力定数e33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第5の態様は、Xの値が0.66以上で1.00以下の範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第5の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも低い弾性定数C33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第6の態様は、格子定数比c/aが1.21以上で1.43より小さい範囲にあることを特徴とする第1の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第6の態様では、ノンドープAlNよりも高く、かつ同濃度のスカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同様の性能指数の値を有する窒化物材料を提供することができる。また、高価なスカンジウムを使用することなく、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムと同様の性能指数を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第7の態様は、格子定数比c/aが1.32以上で1.43より小さい範囲にあることを特徴とする第2の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第7の態様では、より安定な窒化物材料を提供することができる。
本発明の第8の態様は、格子定数比c/aが1.21以上で1.40以下の範囲にあることを特徴とする第3の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第8の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも高い圧電定数d33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第9の態様は、格子定数比c/aが1.21以上で1.26以下の範囲にあることを特徴とする第4の態様に記載の窒化物材料にある。
かかる第9の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも高い圧電応力定数e33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第10の態様は、格子定数比c/aが1.21以上で1.38以下の範囲にあることを特徴とする第5に記載の窒化物材料にある。
かかる第10の態様では、スカンジウムと同じ濃度で、スカンジウムを添加した窒化アルミニウムよりも低い弾性定数C33の値を有する窒化物材料を提供することができる。
本発明の第11の態様は、第1~第10の態様の何れか1つに記載の窒化物材料からなる圧電体にある。
かかる第11の態様では、上述した窒化物材料が有する性能指数を有する圧電体を提供することができる。
本発明の第12の態様は、第11の態様に記載の圧電体を用いたMEMSデバイスにある。
ここで、「MEMSデバイス」とは、微小電気機械システムであれば特に限定されず、例えば、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどの物理センサやアクチュエータ、マイクロフォン、指紋認証センサ、振動発電機等が挙げられる。
かかる第12の態様では、これらの高い圧電定数d33の値を有する圧電体は、低損失であり、かつ広帯域で動作可能である。したがって、これらの圧電体を用いることにより、携帯用機器のさらなる高周波対応化、小型化および省電力化に寄与することができるMEMSデバイスを提供することができる。
本発明に係る第13の態様は、第1~第10の何れか1つに記載の窒化物材料からなるトランジスタ、インバーターまたは強誘電体メモリにある。
かかる第13の態様では、従来のトランジスタと比較して高速で動作させることができ、かつ低損失、高出力なトランジスタを提供することができる。また、従来のインバーターに比べて絶縁耐圧が高く、低損失なトランジスタを提供することができる。さらに、従来の強誘電体メモリに比べて自発分極が高く、記憶性能が高い強誘電体メモリを提供することができる。
図1は実施形態1に係るシミュレーションに用いたAl1-XYbNの計算モデルの一例を示す図である。 図2はYbの濃度Xと、得られた各圧電体の格子定数比c/aとの関係を示すグラフである。 図3はYbおよびScの濃度Xと、得られた各圧電体の圧電応力定数e33との関係を示すグラフである。 図4はYbおよびScの濃度Xと、得られた各圧電体の弾性定数C33との関係を示すグラフである。 図5はYbおよびScの濃度Xと、得られた各圧電体の圧電定数d33との関係を示すグラフである。 図6はYbの濃度Xと、得られた各圧電体の圧電出力定数g33との関係を示すグラフである。 図7はYbの濃度Xと、得られた各圧電体の電気機械結合定数kとの関係を示すグラフである。 図8はYbの濃度Xと、Al1-XYbNの結晶構造がウルツ鉱型の場合の混合エンタルピーおよび岩塩型の場合の混合エンタルピーとの関係を示すグラフである。 図9はYbの濃度Xと、得られた各圧電体の自発分極Pspとの関係を示すグラフである。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る窒化物材料の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
本実施形態では、本発明に係る窒化物材料からなる圧電体を一例として説明する。
まず、本発明の発明者が、アルミニウム(Al)と窒素(N)のみからなる窒化アルミニウム(ノンドープAlN)に対して行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションには、第1原理計算(first-principle calculation)と呼ばれる計算方法を採用しているVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)というソフトウェアを用いた。ここで、第1原理計算とは、フィッティングパラメータ等を使用しない電子状態計算方法の総称であり、単位格子あるいは分子等を構成する各原子の原子番号と座標だけで、電子状態を計算することができる手法である。
本実施形態のシミュレーションでは、2個のアルミニウム原子と2個の窒素原子とからなる単位格子を、a軸、b軸方向に3倍、及びc軸方向に2倍した36個のアルミニウム原子と36個の窒素原子とからなるスーパーセルのウルツ鉱型結晶構造のノンドープAlNをシミュレーションに用いた。そして、このウルツ鉱型結晶構造のAlNに対して、原子座標、セル体積およびセル形状の全てを同時に動かして第1原理計算を行い、安定構造のノンドープAlNの電子状態を計算した。
表1は、第1原理計算で求めた安定構造のAlNの電子状態から算出したa軸方向の格子定数、c軸方向の格子定数およびa軸方向の格子定数とc軸方向の格子定数との比(c/a)(計算値)である。また、実際にスパッタ法を用いてノンドープAlN膜を成膜して、このAlN膜に対してX線回折法を用いて測定した実験値についても表1に示す。
この表に示すように、各計算値は、実験値とほぼ同じ数値となり、これらの相対誤差は1%以内に収まっている。この結果より、本実施形態におけるシミュレーションは、十分に信頼できることが分かった。
次に、窒化アルミニウム(AlN)に、イッテルビウム(Yb)をドープ(添加)させたAl1-XYbN(0.60≦X≦1.00)に対して行ったシミュレーションについて説明する。図1は、本実施形態に係るシミュレーションに用いたAl1-XYbNの計算モデルの一例を示す図である。なお、Xの値は、0.60より大きく1.00以下の範囲が好ましく、0.60より大きく1.00より小さい範囲がより好ましい。
この図に示すように、このドープAlNの計算モデルは、36個のAl原子と36個のN原子とからなる単位格子のうち、22個のAl原子をYb原子に置き換えたウルツ鉱型結晶構造となっている。ここで、Al原子数およびYb原子数の総数を1としたときの、Yb原子の個数(濃度)をXとする。すると、このシミュレーションに用いたYb原子の濃度Xは、0.611(61.1at.%)となる。なお、Al1-XYbNの圧電体は、上述した特許文献1に記載された製造方法で実際に作製することができる。
このAl1-XYbNについても、ノンドープAlNの場合と同様に、第1原理計算により安定構造の電子状態を計算することができる。そして、この電子状態からa軸方向の格子定数、c軸方向の格子定数および格子定数比c/aを算出することができる。
なお、このシミュレーションにおいて、添加するYb原子の結晶構造中の位置は、Yb原子をAl原子の位置にランダムに配置するSQSモデル(Special quasi-random structure model)を用いた。
図2に、Ybの濃度Xと、得られた圧電体の格子定数比c/aとの関係を示す。
次に、Al1-XYbNの結晶格子に微小な歪みを強制的に加える。すると、その際の全エネルギーの微小変化から、Al1-XYbNの圧電応力定数e33および弾性定数C33をそれぞれ計算することができる。すなわち、第1原理計算を用いて、Al1-XYbNの圧電応力定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33をそれぞれ計算することができる。
それらの結果を図3および図4に示す。なお比較対象として、同様の計算手法で求められたScをドープさせたAlNの文献値(非特許文献2参照)も併せて図3および図4に示す。
ここで、図3から分かるように、Xの値が0.87以上で1.00以下の範囲における圧電応力定数e33は、同じ濃度のScをドープさせたAlNよりも高い値を有することが分かった。ここで、圧電応力定数e33は、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。なお、このXの範囲における格子定数比c/aの範囲は、1.21以上、1.26以下である。また、Xの値は、0.87以上で1.00より小さい範囲が好ましい。
同様に、図4から分かるように、Xの値が0.66以上で1.00以下の範囲における弾性定数C33は、同じ濃度のScをドープさせたAlNよりも低い値を有することが分かった。ここで、弾性定数C33は、小さい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。なお、このXの範囲における格子定数比c/aの範囲は、1.21以上、1.38以下である。また、Xの値は、0.66以上で1.00より小さい範囲が好ましい。
さらに、c軸方向の圧電応力定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33と、電気機械結合定数kとの間には、次の数1の関係式が成り立つ。また、圧電定数d33と、圧電応力定数e33、弾性定数C33および圧電出力定数g33との間には、次の数2の関係式がそれぞれ成立する。
そこで、これらの関係式に、上記で算出されたScをドープさせたAlNおよびYbをドープさせたAlNの圧電応力定数e33、弾性定数C33および誘電率ε33等をそれぞれ代入することによって、ScをドープしたAlNおよびYbをドープさせたAlNの電気機械結合定数k、圧電定数d33および圧電出力定数g33をそれぞれ算出することができる。なお、弾性定数C11、C12、C13や圧電応力定数e31は、圧電応力定数e33、弾性定数C33と同様にして算出することができる。
このようにして得られたScをドープしたAlN(同様の計算手法による文献値:非特許文献2)およびYbをドープさせたAlNの圧電定数d33を図5に示す。ここで、圧電定数d33は、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
この図から分かるように、YbをドープさせたAlNの圧電定数d33は、ノンドープAlNよりも高く、ScをドープさせたAlNと同程度の値となることが分かった。特に、Xの値が0.65以上で1.00以下の範囲では、同じ濃度のScをドープさせたAlNよりも高い値を有することが分かった。なお、このXの範囲における格子定数比c/aの範囲は、1.21以上で1.40以下である。また、Xの値は、0.65以上で1.00より小さい範囲が好ましい。
次に、YbをドープさせたAlNの圧電出力定数g33を図6に示す。ここで、圧電出力定数g33は、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
また、YbをドープさせたAlNの電気機械結合定数kを図7に示す。ここで、電気機械結合定数kは、大きい数値であればあるほど、高い性能指数であることを示す。
さらに、図8に、Ybの濃度Xと、Al1-XYbNの結晶構造が、ウルツ鉱型の場合の混合エンタルピー(Mixing Enthalpy)および岩塩型の場合の混合エンタルピーとの関係を示す。ここで、ひし形マークはウルツ鉱型の場合の混合エンタルピーを示し、四角マークは岩塩型の混合エンタルピーを示す。
この図に示すように、Xが0.76以下の場合には、結晶構造がウルツ鉱型のAl1-XYbNが安定であり、Xが0.76よりも大きい場合には岩塩型のAl1-XYbNが安定であることが分かる。ここで、ウルツ鉱型の結晶は圧電性を示すが、岩塩型の結晶は圧電性を示さないと考えられている。したがって、Xは0.60より大きく0.76以下の範囲が好ましい。この濃度範囲のAl1-XYbNは結晶構造がより安定した圧電体となる。なお、このXの範囲において、格子定数比c/aは1.32以上で1.43より小さい範囲にあることが好ましい。
次に、ウルツ鉱構造におけるc軸方向の自発分極Pspは、次式により計算することができる。
この式中における、eは電気素量、Vはウルツ鉱構造の平衡体積、cはウルツ鉱構造の平衡体積の平衡c軸の長さを示す。
また、Δu は、第1原理計算により算出することができる数値であり、k番目の原子に関して、c軸方向のウルツ鉱構造と六方晶窒化ホウ素構造の内部パラメータu の差である。ここで、u は、k番目のc軸方向の金属原子と窒素の結合距離を、c軸の長さで除した数値を示す。
そして、Z33 は、k番目の金属原子が有するc軸方向のボルン有効電荷である。なお、ボルン有効電荷は次式により算出することができる。
この式中、ΔPは特定のイオンをy方向にuだけ微小変位させた際に系に誘起されるx方向の分極を、Vは結晶格子の体積を、eは電気素量をそれぞれ示す。本実施形態では、ΔPおよびuは、VASPを用いた第1原理計算により自動的に算出される。
また、本実施形態では、次のようにしてZ33 を算出した。まずウルツ鉱構造におけるk番目の金属原子が有するc軸方向のボルン有効電荷を算出し、次に同体積の六方晶窒化ホウ素構造におけるk番目の金属原子が有するc軸方向のボルン有効電荷を算出する。そして、それらを算術平均することでZ33 を算出した。
これらの式を用いて、Al1-XYbNの自発分極Pspを算出した。図9に、Ybの濃度Xと、Al1-XYbNの自発分極Pspとの関係を示す。
この図から分かるように、Al1-XYbN(0.60≦X≦1.00)は、高い自発分極を有することが分かった。
(他の実施形態)
実施形態1では、本発明に係る窒化物材料を用いた圧電体を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、本発明に係る窒化物材料は、トランジスタやインバーター、強誘電体メモリにも適用することができる。本発明に係る窒化物材料を用いたトランジスタは、従来のトランジスタと比較して高速で動作させることができ、かつ低損失、高出力なものとなる。また、本発明に係る窒化物材料を用いたインバーターは、従来のインバーターに比べて絶縁耐圧が高く、低損失なものとなる。さらに、本発明に係る窒化物材料を用いた強誘電体メモリは、従来の強誘電体メモリに比べて自発分極が高く、記憶性能が高いものとなる。なお、トランジスタ、インバーターおよび強誘電体メモリの構成は、公知のものを採用することができる。

Claims (11)

  1. 化学式Al1-XYbNで表され、Xの値が0.60より大きく1.00より小さい範囲にあり、
    格子定数比c/aが1.21以上で1.43より小さい範囲にある、
    ことを特徴とする窒化物材料。
  2. 化学式Al1-XYbNで表され、Xの値が0.60以上で0.76以下の範囲にあり、
    格子定数比c/aが1.32以上で1.43より小さい範囲にある、
    ことを特徴とする窒化物材料。
  3. Xの値が0.65以上で1.00より小さい範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の窒化物材料。
  4. Xの値が0.87以上で1.00より小さい範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の窒化物材料。
  5. Xの値が0.66以上で1.00より小さい範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の窒化物材料。
  6. 格子定数比c/aが1.21以上で1.40以下の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の窒化物材料。
  7. 格子定数比c/aが1.21以上で1.26以下の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の窒化物材料。
  8. 格子定数比c/aが1.21以上で1.38以下の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の窒化物材料。
  9. 請求項1~の何れか1項に記載の窒化物材料からなる圧電体。
  10. 請求項に記載の圧電体を用いたMEMSデバイス。
  11. 請求項1~の何れか1項に記載の窒化物材料からなるトランジスタ、インバーターまたは強誘電体メモリ。
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