次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の発進装置1を示す概略構成図であり、図2は、発進装置1を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)EGを含む車両V(例えば、前輪駆動車両)に搭載されるものである。発進装置1は、エンジンEGのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、変速機TMに連結される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8、ダンパハブ7に連結されるダンパ装置10等を含む。
本実施形態において、変速機TMは、駆動側回転軸としてのプライマリシャフトPSと、当該プライマリシャフトPSと平行に延在する従動側回転軸としてのセカンダリシャフトSSと、プライマリシャフトPSに設けられたプライマリプーリ(図示省略)と、セカンダリシャフトSSに設けられたセカンダリプーリ(図示省略)と、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられる伝動ベルト(図示省略)とを含む機械式の無段変速機(CVT)である。変速機TMのプライマリシャフトPSは、前後進切換機構BFを介してダンパハブ7に固定された入力軸ISに連結される。変速機TMのセカンダリシャフトSSは、図示しないギヤ機構およびデファレンシャルDFを介して左右のドライブシャフトDSおよび駆動輪DWに連結される。
前後進切換機構BFは、入力軸ISに連結される回転要素とプライマリシャフトPSに連結される回転要素とを含む図示しない遊星歯車機構、何れも油圧式の多板摩擦係合要素であるクラッチC1およびブレーキB1を含む。前後進切換機構BFのブレーキB1が解放されると共にクラッチC1が係合させられた際には、入力軸ISに伝達された動力が変速機TMのプライマリシャフトPSにそのまま伝達される。また、ブレーキB1が係合させられると共にクラッチC1が解放された際には、プライマリシャフトPSが入力軸IS(エンジンEG)の回転方向とは逆方向に回転する。更に、クラッチC1およびブレーキB1の双方が解放された際には、入力軸ISとプライマリシャフトPSとの連結が解除される。
発進装置1のポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを含む。タービンランナ5は、図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを含み、フロントカバー3およびポンプインペラ4により画成される流体室9内に配置される。タービンシェル50の内周部は、ダンパハブ7により回転自在に支持されるタービンハブ52に複数のリベットを介して固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6(図1参照)が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレードを含み、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。ポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、ポンプインペラ4とタービンランナ5との回転速度差が大きいときにはステータ6の作用によりトルクコンバータとして機能し、両者の回転速度差が小さくなると流体継手として機能する。ただし、発進装置1において、ポンプインペラ4およびタービンランナ5が流体継手のみとして機能するように、ステータ6やワンウェイクラッチ60が省略されてもよい。
ロックアップクラッチ8は、ポンプインペラ4とタービンランナ5、すなわちフロントカバー3とダンパハブ7(入力軸IS)とをダンパ装置10を介して(機械的に)連結するロックアップおよび当該ロックアップの解除を選択的に実行するものである。本実施形態において、ロックアップクラッチ8は、油圧式の単板摩擦クラッチであり、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジンEG側の内壁面近傍に入力軸ISに対して軸方向に移動自在に配置されるロックアップピストン80と、ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面に貼着された摩擦材81とを含む。
ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、当該ロックアップピストン80を介して流体室9と対向する図示しないロックアップ室(解放側油室)が画成される。ロックアップ室は、入力軸IS等に形成された油路等を介して図示しない油圧制御装置に接続される。油圧制御装置によりロックアップ室内の油圧を流体室9内の油圧よりも低くすることで、ロックアップクラッチ8を係合させてダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結することができる。また、油圧制御装置により流体室9内の作動油をドレンしつつロックアップ室内に作動油(油圧)を供給することで、ロックアップクラッチ8を解放してフロントカバー3とダンパハブ7との連結を解除することができる。ただし、ロックアップクラッチ8は、油圧式の多板摩擦クラッチであってもよい。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、第1中間部材(第1中間要素)12と、第2中間部材(第2中間要素)15と、ドリブン部材(出力要素)16とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ダンパ装置10の外周に近接して配置される第1弾性体としての複数(本実施形態では、例えば2個)の外側スプリング(入力側弾性体)SP1と、外側スプリングSP1よりも径方向内側に配置されるそれぞれ複数かつ同数(本実施形態では、例えば3個ずつ)の第2弾性体としての第1内側スプリング(中間弾性体)SP21および第2内側スプリング(出力側弾性体)SP22とを含む。
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
本実施形態において、外側スプリングSP1は、アークコイルスプリングであり、第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、互いに同一の諸元を有する直線型コイルスプリングである。複数の外側スプリングSP1は、ドライブ部材11と第1中間部材12との間で並列に作用してダンパ装置10の第1ダンパD1(図1参照)を構成する。また、複数の第1内側スプリングSP21は、第1中間部材12と第2中間部材15との間で並列に作用し、複数の第2内側スプリングSP22は、第2中間部材15とドリブン部材16との間で並列に作用する。更に、複数の第1内側スプリングSP21と、複数の第2内側スプリングSP22とは、第2中間部材15を介して直列に作用してダンパ装置10の第2ダンパD2を構成する。また、本実施形態において、外側スプリングSP1、第1および第2内側スプリングSP21,SP22のばね定数は、第1ダンパD1の剛性すなわち複数の外側スプリングSP1の合成ばね定数が、第2ダンパD2の剛性すなわち複数の第1および第2内側スプリングSP21,SP22の合成ばね定数よりも大きくなるように定められる。図2に示すように、各外側スプリングSP1の両端部には、スプリングシート90が装着(嵌合)される。
更に、本実施形態において、第1ダンパD1すなわち複数の外側スプリングSP1のヒステリシスは、第2ダンパD2すなわち複数の第1および第2内側スプリングSP21,SP22のヒステリシスよりも大きくなっている。第1ダンパD1のヒステリシスは、ドライブ部材11(入力要素)とドリブン部材16(出力要素)との相対変位が増加していく際に外側スプリングSP1から第1中間部材12に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対変位が減少していく際に外側スプリングSP1から第1中間部材12に伝達されるトルクとの差として定量化される。また、第2ダンパD2のヒステリシスは、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対変位が増加していく際に第2内側スプリングSP22からドリブン部材16に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対変位が減少していく際に第2内側スプリングSP22からドリブン部材16に伝達されるトルクとの差として定量化される。なお、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の諸元は、互いに異なっていてもよい。また、外側スプリングSP1は、直線型コイルスプリングであってもよく、第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、アークコイルスプリングであってもよい。
ダンパ装置10のドライブ部材11は、環状に形成されており、流体室9内の外周側領域に位置するようにロックアップピストン80に固定される。図2に示すように、ドライブ部材11は、環状の固定部111と、複数(本実施形態では、例えば2個)の円弧状に延びるスプリング支持部112と、複数(本実施形態では、例えば4個)のトルク伝達部(弾性体当接部)113とを含む。固定部111は、複数のリベットを介してロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に固定される。複数のスプリング支持部112は、対応する外側スプリングSP1の内周部を支持(ガイド)するように、固定部111の外周部からポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延出されている。
ドライブ部材11の複数のトルク伝達部113は、2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように固定部111の外周部から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出されている。互いに対をなす2個のトルク伝達部113は、外側スプリングSP1の自然長と、当該外側スプリングSP1の両端部に装着されたスプリングシート90の厚みとの和に応じた間隔をおいて対向する。更に、各トルク伝達部113は、スプリング支持部112よりも径方向外側でポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて軸方向に延びる爪部113aを含む。また、本実施形態において、ロックアップピストン80の外周部には、ドライブ部材11のスプリング支持部112と共に複数の外側スプリングSP1を支持する環状のスプリング支持部80aが形成されている。
第1中間部材12は、環状の第1プレート部材13と、環状の第2プレート部材14とを含む。第1プレート部材13は、タービンランナ5に近接するように配置されると共にダンパハブ7により回転自在に支持される。図2および図3に示すように、第1プレート部材13は、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部131と、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部132と、複数(本実施形態では、例えば4個)の第1外側トルク伝達部(外側弾性体当接部)133oと、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側トルク伝達部(内側弾性体当接部)133iとを含む。
複数のスプリング支持部131は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶように第1プレート部材13に形成される。複数のスプリング支持部132は、複数のスプリング支持部131の径方向内側で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶように第1プレート部材13に形成され、それぞれ窓部を介して対応するスプリング支持部131と第1プレート部材13の径方向において対向する。複数の第1外側トルク伝達部133oは、第1プレート部材13の外周部に2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように形成される。また、互いに対をなす2個の第1外側トルク伝達部133oは、外側スプリングSP1の自然長と、当該外側スプリングSP1の両端部に装着されたスプリングシート90の厚みとの和よりも長い間隔をおいて対向する。更に、各第1外側トルク伝達部133oは、図2に示すように、ロックアップピストン80に向けて軸方向に延出された爪部133aを含む。内側トルク伝達部133iは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部131,132(隣り合う窓部同士)の間に1個ずつ設けられる。
第1中間部材12の第2プレート部材14は、第1プレート部材13よりも大きい内径を有し、ロックアップピストン80(フロントカバー3)に近接するように配置されると共に複数のリベットを介して第1プレート部材13に連結(固定)される。図2に示すように、第2プレート部材14は、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部141と、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部142と、複数(本実施形態では、例えば3個)のトルク伝達部(弾性体当接部)143と、短尺の筒状部144とを含む。複数のスプリング支持部141は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶように第2プレート部材14に形成される。複数のスプリング支持部142は、複数のスプリング支持部141の径方向内側で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶように第2プレート部材14に形成され、それぞれ窓部を介して対応するスプリング支持部141と第2プレート部材14の径方向において対向する。複数のトルク伝達部143は、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部141,142(隣り合う窓部同士)の間に1個ずつ設けられる。
第2中間部材15は、環状の板体であり、複数(本実施形態では、例えば3個)のトルク伝達部(弾性体当接部)153(図3参照)を含む。複数のトルク伝達部153は、第2中間部材15の内周部から径方向内側に延出されて周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ。図2に示すように、第2中間部材15は、第1プレート部材13と第2プレート部材14との軸方向における間に配置され、第2プレート部材14の筒状部144の内周面によって回転自在に支持(調心)される。
ドリブン部材16は、環状の板体であり、周方向に間隔をおいて形成されて径方向外側に延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のトルク伝達部(弾性体当接部)163を含む。図2に示すように、ドリブン部材16は、第1中間部材12の第1プレート部材13と第2プレート部材14との軸方向における間に配置されると共に複数のリベットを介してダンパハブ7に固定(連結)される。
複数の外側スプリングSP1は、ロックアップピストン80のスプリング支持部80aにより径方向外側およびタービンランナ5側(変速機TM側)から支持(ガイド)されると共に、ドライブ部材11の複数のスプリング支持部112により径方向内側から支持(ガイド)される。これにより、複数の外側スプリングSP1は、流体室9内の外周側領域に配置される。また、ダンパ装置10の取付状態すなわちドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていない状態において、ドライブ部材11の各トルク伝達部113は、対応する外側スプリングSP1の端部に装着されたスプリングシート90に当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1は、ドライブ部材11の互いに対をなす2個のトルク伝達部113により保持される。なお、スプリングシート90は、ダンパ装置10から省略されてもよい。
また、第1および第2プレート部材13,14が互いに連結された際、第1プレート部材13の各スプリング支持部131は、第2プレート部材14の対応するスプリング支持部141と対向し、第1プレート部材13の各スプリング支持部132は、第2プレート部材14の対応するスプリング支持部142と対向する。更に、互いに対向するスプリング支持部131,141および当該スプリング支持部131,141の径方向内側に位置するスプリング支持部132,142は、それぞれ対応する第1および第2内側スプリングSP21,SP22を1個ずつ支持(ガイド)する。これにより、それぞれ複数の第1および第2内側スプリングSP21,SP22は、複数の外側スプリングSP1と径方向からみて重なるように当該複数の外側スプリングSP1の径方向内側に周方向に間隔をおいて交互に配設される。
更に、ダンパ装置10の取付状態において、第1中間部材12の第1プレート部材13の各内側トルク伝達部133iと、第2プレート部材14の各トルク伝達部143とは、互いに異なるスプリング支持部131,132,141,142によって支持された第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部に当接する。更に、第2中間部材15の各トルク伝達部153は、互いに同一のスプリング支持部131,132,141,142により支持されて互いに対をなす第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部に当接する。これにより、第2中間部材15のトルク伝達部153を介して1組の第1および第2内側スプリングSP21,SP22が直列に連結されることから、外側スプリングSP1すなわち第1ダンパD1の径方向内側に配置される第2ダンパD2をより低剛性化することが可能となる。なお、各第1内側スプリングSP21および各第2内側スプリングSP22の端部には、図示しないスプリングシートが装着されてもよい。
また、第1中間部材12の第1プレート部材13は、ダンパ装置10の取付状態すなわちドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていない状態において、各第1外側トルク伝達部133oが、図3に示すように、対応する外側スプリングSP1の端部に装着されたスプリングシート90と僅かな隙間Gを介して対向するように配置される。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、第1プレート部材13の互いに対をなす2個の第1外側トルク伝達部133oの少なくとも何れか一方は、対応する外側スプリングSP1のスプリングシート90に当接しない。本実施形態において、第1プレート部材13の第1外側トルク伝達部133oの爪部133aは、図2に示すように、ドライブ部材11のトルク伝達部113の爪部113aの径方向内側に配置される。
更に、ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材16の各トルク伝達部163は、互いに異なるスプリング支持部131,132,141,142によって支持された第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部に当接する。これにより、ドリブン部材16を、複数の外側スプリングSP1、第1中間部材12、複数の第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、および複数の第2内側スプリングSP22を介してドライブ部材11に連結することが可能となる。
そして、ダンパ装置10の取付状態すなわちドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていない状態において、各外側スプリングSP1は、ドライブ部材11の互いに対をなす2個のトルク伝達部113の間に予め圧縮されることなく配置される。これに対して、各第1内側スプリングSP21は、第1中間部材12の対応する内側トルク伝達部133iおよびトルク伝達部143並びにドリブン部材16の対応するトルク伝達部163と、第2中間部材15の対応するトルク伝達部153との間に予め圧縮された状態で配置される。同様に、各第2内側スプリングSP22は、ダンパ装置10の取付状態において、第2中間部材15の対応するトルク伝達部153と、ドリブン部材16の対応するトルク伝達部163並びに第1中間部材12の対応する内側トルク伝達部133iおよびトルク伝達部143との間に予め圧縮された状態で配置される。
また、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転を規制するストッパとして、ドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転を規制する入力側ストッパ17と、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転を規制する出力側ストッパ18とを含む。
入力側ストッパ17は、本実施形態において、ドライブ部材11に形成されるストッパ部114と、外側スプリングSP1を介して対向するように第2プレート部材14の外周部に形成された一対のストッパ部とにより構成される。ストッパ部114は、図2および図3に示すように、ドライブ部材11の各スプリング支持部112の一部をポンプインペラ4やタービンランナ5に向けて更に軸方向に延出することにより形成される。これにより、入力側ストッパ17は、ダンパ装置10に対して周方向の2ヶ所に設けられる。
ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11の各ストッパ部114は、第2プレート部材14の対応する一対のストッパ部の間に、各ストッパ部の側面に当接しないように配置される。ドライブ部材11の各ストッパ部114は、ドライブ部材11と第1中間部材12とが相対回転するのに伴って両側に位置する第2プレート部材14の一対のストッパ部の一方の側面に当接する。これにより、ドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転並びに各外側スプリングSP1の捩れが規制される。
出力側ストッパ18は、第1プレート部材13の内周部から軸方向に延出されたストッパ部134と、ドリブン部材16に形成された円弧状の開口部164とにより構成される(図3参照)。本実施形態では、ストッパ部134が第1プレート部材13に複数(本実施形態では、例えば3個)設けられると共に開口部164がドリブン部材16にストッパ部134と同数設けられ、出力側ストッパ18は、ダンパ装置10に対して周方向の複数ヶ所(本実施形態では、例えば3ヶ所)に設けられる。ダンパ装置10の取付状態において、第1プレート部材13の各ストッパ部134は、ドリブン部材16の対応する開口部164内に当該開口部164を画成する両側の内壁面に当接しないように差し込まれる。第1プレート部材13(第1中間部材12)のストッパ部134は、第1中間部材12とドリブン部材16とが相対回転するのに伴って両側に位置する開口部164の内壁面の一方に当接する。これにより、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1内側スプリングSP21および各第2内側スプリングSP22の捩れが規制される。
本実施形態において、入力側ストッパ17(ドライブ部材11、第1中間部材12および外側スプリングSP1等の諸元)および出力側ストッパ18(第1中間部材12、第2中間部材15、ドリブン部材16、並びに第1および第2内側スプリングSP21,SP22等の諸元)は、フロントカバー3に伝達されるトルク、すなわちドライブ部材11への入力トルクが高まっていく際に、出力側ストッパ18、入力側ストッパ17という順番で作動するように構成(設定)される。すなわち、ダンパ装置10では、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の値)よりも小さいトルク(第1の値:所定値)T1に達すると、出力側ストッパ18により第1中間部材12およびドリブン部材16の相対回転(第1内側スプリングSP21の捩れ)が規制される。更に、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT2に達すると、入力側ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転(外側スプリングSP1の捩れ)が規制される。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。
更に、ダンパ装置10の回転要素(第1回転要素)である第1中間部材12には、図1および図2に示すように、ダイナミックダンパ20が連結される。ダイナミックダンパ20は、タービンランナ5を含む質量体21と、当該質量体21と第1中間部材12との間に配置される複数(本実施形態では、例えば2個)の吸振スプリング(吸振弾性体)SPdとを含むものである。ここで、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付加して振動を減衰する機構であり、振動体(本実施形態では、第1中間部材12)に対してトルク(平均トルク)の伝達経路に含まれないようにスプリング(弾性体)と質量体とを連結することにより構成される。すなわち、吸振スプリングSPdの剛性と質量体21の重さを調整することで、ダイナミックダンパ20により所望の周波数の振動を減衰することが可能となる。
ダイナミックダンパ20の質量体21は、タービンランナ5に加えて、当該タービンランナ5に連結される環状部材22を含む。環状部材22は、図2に示すように、環状の連結プレート220と、複数(本実施形態では、3枚)の環状プレート221,222,223とを含む。連結プレート220の内周部は、当該連結プレート220がタービンランナ5の背面と間隔をおいて対向するように、タービンシェル50の内周部と共に複数のリベットを介してタービンハブ52に固定される。また、連結プレート220は、外周部から周方向に間隔をおいて軸方向に延出された複数(本実施形態では、例えば4個)のトルク伝達部(弾性体当接部)225を含む。複数のトルク伝達部225は、2個(一対)ずつ近接するように環状部材22の軸心に関して対称に形成される。互いに対をなす2個のトルク伝達部225は、吸振スプリングSPdの自然長と、当該吸振スプリングSPdの両端部に装着(嵌合)されるスプリングシート91の厚みとの和に応じた間隔をおいて対向する。
環状プレート221,222,223は、互いに同一の外径を有し、それぞれの外周面が単一の円周面を形成するように重ね合わされ、複数のリベットを介して連結プレート220に固定される。また、図2に示すように、環状プレート222の内径は、環状プレート221の内径よりも大きく、環状プレート223の内径は、環状プレート222の内径よりも大きい。これにより、デッドスペースとなりがちなタービンランナ5の外周部近傍の領域に連結プレート220および複数の環状プレート221,222,223を配置することが可能となる。
一方、ダイナミックダンパ20の連結対象である第1中間部材12の第1プレート部材13は、図2および図3に示すように、周方向に間隔をおいてスプリング支持部131から径方向外側に離間するように突出する複数(本実施形態では、例えば4個)の第2外側トルク伝達部135を含む。複数の第2外側トルク伝達部135は、外側スプリングSP1を介すことなく互いに隣り合う第1外側トルク伝達部133oの間で、2個(一対)ずつ近接するように第1プレート部材13の軸心に関して対称に形成され、それぞれロックアップピストン80に向けて軸方向に延びる爪部135aを含む。互いに対をなす2個の第2外側トルク伝達部135(爪部135a)は、吸振スプリングSPdの自然長と、当該吸振スプリングSPdの両端部に装着されるスプリングシート91の厚みとの和に応じた間隔をおいて対向する。
各吸振スプリングSPdは、本実施形態において同一諸元のストレートコイルスプリングである。ただし、吸振スプリングSPdは、アークコイルスプリングであってもよい。ダンパ装置10の取付状態において、各吸振スプリングSPdは、連結プレート220(環状部材22)の一対のトルク伝達部225の間、および第1プレート部材13(第1中間部材12)の一対の第2外側トルク伝達部135の間に配置される。すなわち、各吸振スプリングSPdの両端部に装着されたスプリングシート91は、それぞれ対応するトルク伝達部225および第2外側トルク伝達部135に当接する。
これにより、各吸振スプリングSPd、すなわちダイナミックダンパ20がダンパ装置10の第1中間部材12に連結されることになる。また、本実施形態において、複数の吸振スプリングSPdは、外側スプリングSP1と同一円周上で周方向に並ぶように互いに隣り合う2個の外側スプリングSP1の間に1個ずつ配置される。更に、各吸振スプリングSPdは、発進装置1やダンパ装置10の軸方向および周方向の双方において外側スプリングSP1と重なり合う。また、第1プレート部材13の各第2外側トルク伝達部135の爪部135aと、連結プレート220のトルク伝達部225とは、図2に示すように、ダンパ装置10の径方向に並ぶ。より詳細には、第2外側トルク伝達部135の爪部135aは、連結プレート220のトルク伝達部225よりも径方向内側で対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接する。なお、スプリングシート91は、ダイナミックダンパ20から省略されてもよい。
更に、ダイナミックダンパ20(ダンパ装置10)は、環状部材22(質量体21)と第1プレート部材13(第1中間部材12)との相対回転を規制するストッパ23を含む。本実施形態において、ストッパ23(第1中間部材12、環状部材22および吸振スプリングSPd等の諸元)は、各吸振スプリングSPdが完全に収縮する前に環状部材22と第1中間部材12との相対回転を規制するように構成(設定)される。ただし、ダイナミックダンパ20からストッパ23が省略されてもよい。
加えて、上記ダイナミックダンパ20を含むダンパ装置10では、ダイナミックダンパ20が連結されない回転要素(第2回転要素)であるドライブ部材11に、入力側および出力側ストッパ17,18によりドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制される前に吸振スプリングSPdの端部に装着されたスプリングシート91に当接するように付加当接部113xが設けられている。本実施形態において、付加当接部113xは、ダンパ装置10の取付状態においてドライブ部材11がエンジンEGからの動力により回転する際(駆動時)の回転方向(図3における矢印方向、以下、「正転方向」という)における下流側(進行方向側)の外側スプリングSP1の端部に装着されたスプリングシート90に当接する複数(本実施形態では、2個)のトルク伝達部113に含まれる。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において外側スプリングSP1の上記正転方向における下流側の端部に装着されたスプリングシート90に当接する複数のトルク伝達部113(爪部113aを含む)は、強度面等から要求される周長よりも長い周長を有するように、正転方向下流側(進行方向側)に周方向に延長されている。本実施形態では、このように周方向に延長されたトルク伝達部113の正転方向下流側の端部が付加当接部113xとして利用される。
ダンパ装置10の取付状態において、各付加当接部113xは、ダイナミックダンパ20の対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接することはなく、ドライブ部材11が第1中間部材12に対して上記正転方向に回転することで、対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接可能となる。本実施形態では、各付加当接部113xが、入力側ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転が規制される前、かつドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達して出力側ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転が規制されるのとほぼ同時に、対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接するように、上記2個のトルク伝達部113の周長(当該周長を規定するダンパ装置10の軸心周りの角度)が定められる。すなわち、各付加当接部113xが対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接してドライブ部材11(第2回転要素)が吸振スプリングSPdに連結されるまでのドライブ部材11の第1中間部材12に対する回転角度は、入力側および出力側ストッパ17,18のすべてが作動するまでのドライブ部材11のドリブン部材16に対する回転角度よりも小さくなる。
また、ダンパ装置10の取付状態において、付加当接部113xに含まれる爪部113aは、環状部材22のトルク伝達部225の径方向外側で部分的に当該トルク伝達部225と径方向に並ぶ(重なる)。これにより、ダンパ装置10の取付状態では、第1プレート部材13の第2外側トルク伝達部135の爪部135a、環状部材22のトルク伝達部225、および付加当接部113xに含まれる爪部113a(その端部)が、この順番で内側から外側に向けて並ぶことになる。加えて、ダンパ装置10では、上述のように、第1プレート部材13の第1外側トルク伝達部133oの爪部133aは、ドライブ部材11のトルク伝達部113の爪部113aよりも径方向内側で対応する外側スプリングSP1のスプリングシート90に当接する。これにより、付加当接部113xの爪部113a、環状部材22のトルク伝達部225、および第1プレート部材13の第2外側トルク伝達部135の爪部135a同士の干渉をなくすと共に、ドライブ部材11のトルク伝達部113の爪部113aと第1プレート部材13の第1外側トルク伝達部133oの爪部133aとの干渉をなくすことができる。この結果、周方向に並ぶ外側スプリングSP1および吸振スプリングSPdのストロークを良好に確保することが可能となる。
次に、発進装置1およびダンパ装置10の動作について説明する。
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行され、かつ入力側および出力側ストッパ17,18が作動していない間、図1からわかるように、エンジンEGからのトルクは、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、第1ダンパD1すなわち複数の外側スプリングSP1、第1中間部材12、第2ダンパD2すなわち第1内側スプリングSP21、第2中間部材15および複数の第2内側スプリングSP22、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して入力軸ISへと伝達される。この際、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されるトルクの変動は、主に直列に作用するダンパ装置10の第1ダンパD1および第2ダンパD2、すなわち直列に作用する外側スプリングSP1、第1および第2内側スプリングSP21,SP22により減衰(吸収)される。
また、ロックアップの実行時にエンジンEGからのトルクが第1中間部材12に伝達されると、当該第1中間部材12に伝達された変動トルクに応じて質量体21(タービンランナ5および環状部材22)が第1中間部材12に対して揺動する。これにより、揺動する質量体21から第1プレート部材13に逆位相の振動を付加して第1中間部材12の振動を減衰することができる。この結果、発進装置1では、ダイナミックダンパ20によってもエンジンEGからの振動を減衰(吸収)し、より詳しくは、振動のピークを2つに分けつつ全体の振動レベルを低下させることが可能となるので、ダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることができる。
更に、発進装置1のダンパ装置10では、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達すると、出力側ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制される。また、出力側ストッパ18の作動とほぼ同時に、ドライブ部材11の各付加当接部113xが対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接し、当該ドライブ部材11が各吸振スプリングSPdに連結される。ドライブ部材11が各吸振スプリングSPdに連結されると、ドライブ部材11と第1中間部材12との間で、第1ダンパD1すなわち複数の外側スプリングSP1と、複数の吸振スプリングSPdとが並列に作用し、両者間でトルクを伝達する弾性体として機能する。
これにより、出力側ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転が規制された後には、エンジンEGからのトルクが、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、並列に作用する外側スプリングSP1(第1ダンパD1)および吸振スプリングSPd、第1中間部材12、撓みが規制された第2ダンパD2(撓みが規制された第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、撓みが規制された第2内側スプリングSP22)、第2ダンパD2と並列に並ぶ出力側ストッパ18、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して入力軸ISへと伝達される。そして、この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、並列に作用するダンパ装置10の外側スプリングSP1および吸振スプリングSPdにより減衰(吸収)される。
この結果、発進装置1のダンパ装置10では、ドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する外側スプリングSP1が受け持つべきトルク(分担トルク)を小さくしつつ、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。更に、ドライブ部材11への入力トルクが高まった段階で吸振スプリングSPdをドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する弾性体として機能させることで、第2ダンパD2すなわち第1および第2内側スプリングSP21,SP22をより低剛性化することができる。
また、上述のように、ダンパ装置10の第1および第2ダンパD1,D2のうち、剛性およびヒステリシスが高い第1ダンパD1に含まれる複数の外側スプリングSP1(第1弾性体)は、取付状態すなわちドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていない状態で、ドライブ部材11と第1中間部材12との間に回転方向における隙間(最大で、上記隙間Gの2倍の隙間)をもって支持される。従って、ロックアップが実行されている間に、例えば降坂路で車両Vのアクセルペダルが緩く踏み込まれ、エンジンEGからドライブ部材11(フロントカバー3)に伝達されるトルク(駆動トルク)と、路面抵抗等に応じて駆動輪DWから変速機TM等を介してドリブン部材16に伝達されるトルク(減速トルク)とが概ね一致すると、第1ダンパD1の各外側スプリングSP1は、ドライブ部材11と第1中間部材12との間に回転方向における隙間をもって支持されるようになる。
すなわち、ダンパ装置10の第1ダンパD1は、図4に示すように、いわゆる空走区間(不感帯)を有し、エンジンEGからドライブ部材11に伝達されるトルクと変速機TM側からドリブン部材16に伝達されるトルクとの差が極小さくなった際には、図4に示す第1ダンパD1の特性からわかるように、第1ダンパD1すなわち複数の外側スプリングSP1によりトルクが実質的に伝達されなくなる。従って、発進装置1では、エンジンEGからのトルクと変速機TM側からのトルクとが概ね等しくなった際に、第1ダンパD1すなわち複数の外側スプリングSP1によるトルクの伝達を断って、エンジンEGからの振動(変動トルク)が入力軸IS(前後進切換機構BFおよび変速機TM)側に伝達されるのを抑制することができる。この結果、前後進切換機構BFのクラッチC1やブレーキB1でエンジンEGからの振動(変動トルク)に起因した摩擦プレートやセパレータプレートの振動およびスプライン嵌合部でのノイズの発生を良好に抑制することが可能となる。なお、外側スプリングSP1の組み付け時における隙間Gは、実験・解析を経て予め適合される。
更に、ダンパ装置10では、第1ダンパD1に比べて剛性およびヒステリシスが低い第2ダンパD2に含まれる第1および第2内側スプリングSP21,SP22が第1中間部材12とドリブン部材16との間、すなわち第1中間部材12と第2中間部材15との間または第2中間部材15とドリブン部材16との間に予め圧縮された状態で配置される。これにより、図5に示す第2ダンパD2の特性からわかるように、第2ダンパD2(第1中間部材12とドリブン部材16との間)の捩れ角(絶対値)が比較的小さいときに、第1ダンパD1に比べて剛性が低い第2ダンパD2の実質的な剛性(図5における破線の傾き)を高くすることができる。この結果、例えば車両Vのアクセルペダルの踏み込みが急峻に解除されてエンジンEGからドライブ部材11に伝達されるトルクが急減した際(例えば、ゼロトルクを跨いだ際)に、ダンパ装置10の回転要素、特に第1中間部材12が振動するのを良好に抑制し、それに起因したノイズ等の発生を良好に抑えることが可能となる。なお、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の組み付け時における圧縮荷重は、実験・解析を経て予め適合される。
また、ダンパ装置10では、第1ダンパD1(外側スプリングSP1)の径方向内側に位置する第2ダンパD2の第1および第2内側スプリングSP21,SP22が第1中間部材12とドリブン部材16との間に予め圧縮された状態で配置される。これにより、第2ダンパD2のヒステリシスを低下させつつ、第2ダンパD2の捩れ角が比較的小さいときの実質的な剛性を高くすることが可能となる。また、第2ダンパD2は、第2中間部材15と、第1中間部材12と第2中間部材15との間に予め圧縮された状態で配置される第1内側スプリングSP21(中間弾性体)と、第2中間部材15とドリブン部材16との間に予め圧縮された状態で配置される第2内側スプリングSP22(出力側弾性体)とを含む。これにより、第2ダンパD2の捩れ角が比較的小さいときに当該第2ダンパD2の実質的な剛性を高くしつつ、捩れ角が増加したときの第2ダンパD2の剛性をより小さくしてダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。ただし、ダンパ装置10すなわち第2ダンパD2から第2中間部材15並びに第1および第2内側スプリングSP21,SP22の一方が省略されてもよい。
一方、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、図1からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、環状部材22(連結プレート220)、吸振スプリングSPd、第1中間部材12、第2ダンパD2すなわち第1内側スプリングSP21、第2中間部材15および第2内側スプリングSP22、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して入力軸ISへと伝達される。このようにポンプインペラ4およびタービンランナ5を介してエンジンEGから入力軸ISへとトルクが伝達される際には、上述のストッパ23が作動するまでの間、ドリブン部材16はタービンランナ5と同一方向に回転する(しようとする)のに対し、タービンランナ5に固定された環状部材22とドリブン部材16とが相対回転することで各吸振スプリングSPdが伸縮する。
従って、発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが解除され、かつストッパ23が作動していない間、吸振スプリングSPdおよび第2ダンパD2を含むタービンランナ5からダンパハブ7までのトルク伝達系の共振が発生するおそれがある。これに対して、発進装置1では、ダイナミックダンパ20への要求に応じた吸振スプリングSPdの剛性すなわちばね定数(諸元)を変更することなく、第2ダンパD2の第1および第2内側スプリングSP21,SP22の剛性すなわちばね定数の調整により当該共振の周波数を高周波(高回転)側または低周波(低回転)側にずらすことができる。これにより、ダイナミックダンパ20の振動減衰性能を良好に確保しつつ、ロックアップが解除されている際に、吸振スプリングSPdおよび第2ダンパD2を含むトルク伝達系の共振が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。また、ロックアップが解除された状態でエンジンEGからフロントカバー3に比較的大きなトルクが伝達された際にはストッパ23が作動する。これにより、各吸振スプリングSPdが完全に収縮した状態でタービンランナ5から第1中間部材12にトルクが伝達されるのを抑制して各吸振スプリングSPdの耐久性をより向上させることができる。
なお、上記ダンパ装置10では、第2ダンパD2に比べて剛性およびヒステリシスが高い第1ダンパD1の外側スプリングSP1が、ドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていないときにドライブ部材11と第1中間部材12との間に回転方向における隙間をもって支持され、第1ダンパD1に比べて剛性およびヒステリシスが低い第2ダンパD2の第1および第2内側スプリングSP21,SP22が第1中間部材12とドリブン部材16との間に予め圧縮された状態で配置されるが、これに限られるものではない。すなわち、第1および第2ダンパD1,D2のうち、剛性が高い一方の弾性体が、ドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていないときに対応する回転要素間に回転方向における隙間をもって支持され、かつ剛性の低い他方の弾性体が対応する回転要素間に予め圧縮された状態で配置されてもよい。更に、第1および第2ダンパD1,D2のうち、ヒステリシスが高い一方の弾性体が、ドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクが伝達されていないときに対応する回転要素間に回転方向における隙間をもって支持され、かつヒステリシスの低い他方の弾性体が対応する回転要素間に予め圧縮された状態で配置されてもよい。
また、上記実施形態において、ドライブ部材11(第2回転要素)は、付加当接部113xが例えば環状部材22のトルク伝達部225に当接することで吸振スプリングSPdに連結されてもよい。更に、付加当接部113xや出力側ストッパ18は、各付加当接部113xが対応する吸振スプリングSPdのスプリングシート91に当接した後に、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転が規制されるように構成されてもよい。また、付加当接部113xは、トルク伝達部113と周方向に並ぶように当該トルク伝達部113から分離されてもよい。更に、ダイナミックダンパ20が連結される回転要素(第1回転要素)は、例えばドライブ部材11といった第1中間部材12以外の回転要素であってもよく、ダイナミックダンパ20が連結されずに吸振スプリングSPdに連結される回転要素(第2回転要素)は、例えば第1中間部材12といったドライブ部材11以外の回転要素であってもよい。また、変速機TMは、前後進切換機構BFを必要としない少なくとも1つの摩擦係合要素を含む有段変速機であってもよい。
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、エンジン(EG)に連結される入力要素(11)、中間要素(12)および変速機(TM)に連結される出力要素(16)を含む複数の回転要素と、前記入力要素(11)と前記中間要素(12)との間でトルクを伝達する第1弾性体(SP1)を含む第1ダンパ(D1)と、前記中間要素(12)と前記出力要素(16)との間でトルクを伝達する第2弾性体(SP21,SP22)を含む第2ダンパ(D2)とを含むダンパ装置(10)において、前記第1および第2ダンパ(D1,D2)のうちの剛性またはヒステリシスが高い一方の前記第1または第2弾性体(SP1,SP21,SP22)が、前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との間でトルクが伝達されていないときに、前記入力要素(11)と前記中間要素(12)との間または前記中間要素(12)と前記出力要素(16)との間に回転方向における隙間をもって支持され、前記第1および第2ダンパ(D1,D2)のうちの剛性またはヒステリシスが低い他方の前記第1または第2弾性体(SP1,SP21,SP22)が、前記中間要素(12)と前記出力要素(16)との間または前記入力要素(11)と前記中間要素(12)との間に予め圧縮された状態で配置されるものである。
本開示のダンパ装置において、第1および第2ダンパのうちの剛性またはヒステリシスが高い一方の第1または第2弾性体は、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときに、入力要素と中間要素との間または中間要素と出力要素との間に回転方向における隙間をもって支持される。これにより、エンジンから入力要素に伝達されるトルクと変速機側から出力要素に伝達されるトルクとの差が極小さくなると、第1および第2ダンパのうちの剛性またはヒステリシスが高い一方は、入力要素と中間要素との間または中間要素と出力要素との間に回転方向における隙間をもって支持されるようになる。従って、エンジンからのトルクと変速機側からのトルクとが概ね等しくなった際に、第1および第2ダンパのうちの剛性またはヒステリシスが高い一方によるトルクの伝達を断って、エンジンからの振動が変速機側に伝達されるのを抑制することが可能となる。また、第1および第2ダンパのうちの剛性またはヒステリシスが低い他方の第1または第2弾性体は、中間要素と出力要素との間または入力要素と中間要素との間に予め圧縮された状態で配置される。これにより、第1および第2ダンパのうちの剛性またはヒステリシスが低い他方の捩れ角(絶対値)が比較的小さいときに、当該他方の実質的な剛性を高くすることができる。従って、エンジンから入力要素に伝達されるトルクが急減した際に、回転要素、特に中間要素が振動するのを良好に抑制することが可能となる。
また、前記第1ダンパ(D1)は、複数の前記第1弾性体(SP1)を含むものであってもよく、前記第2ダンパ(D2)は、複数の前記第2弾性体(SP21,SP22)を含むものであってもよく、前記複数の前記第1弾性体(SP1)の合成ばね定数は、前記複数の前記第2弾性体(SP21,SP22)の合成ばね定数よりも大きくてもよい。すなわち、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときに、第2ダンパに比べて高い剛性を有する第1ダンパの第1弾性体が入力要素と中間要素との間に回転方向における隙間をもって支持されてもよく、第1ダンパに比べて低い剛性を有する第2ダンパの第2弾性体が中間要素と出力要素との間に予め圧縮された状態で配置されてもよい。
更に、前記第2ダンパ(D2)は、前記ダンパ装置(10)の径方向における前記第1ダンパ(D1)の内側に配置されてもよい。これにより、第2ダンパ(第2弾性体)のヒステリシスを低下させつつ、第2ダンパの捩れ角が比較的小さいときの実質的な剛性を高くすることが可能となる。
また、前記中間要素は、第1中間要素(12)と、前記第2ダンパ(D2)に含まれる第2中間要素(15)とを含むものであってもよく、前記第2弾性体は、前記第1中間要素(12)と前記第2中間要素(15)との間に予め圧縮された状態で配置される中間弾性体(SP21)と、前記第2中間要素(15)と前記出力要素(16)との間に予め圧縮された状態で配置される出力側弾性体(SP22)とを含むものであってもよい。これにより、第2ダンパの捩れ角が比較的小さいときに当該第2ダンパの実質的な剛性を高くしつつ、捩れ角が増加したときの第2ダンパの剛性をより小さくしてダンパ装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
本開示の発進装置は、上記何れかのダンパ装置(10)を含む発進装置(1)において、前記エンジン(EG)に連結される入力部材(3)と、前記出力要素(16)および前記変速機(TM)に連結される出力部材(7)と、前記入力部材(3)と一体に回転するポンプインペラ(4)と、前記ポンプインペラ(4)の回転に伴って回転可能なタービンランナ(5)と、前記ダンパ装置(10)を介して前記入力部材(3)と前記出力部材(7)とを連結するロックアップおよび前記ロックアップの解除を実行可能なロックアップクラッチ(8)とを含み、前記ダンパ装置(10)が、前記タービンランナ(5)を含む質量体(21)と、前記質量体(21)と前記入力要素(11)および前記中間要素(12)の一方との間に配置される吸振弾性体(SPd)とを含み、前記入力要素(11)および前記中間要素(12)の他方が、前記エンジン(EG)から前記入力要素(11)に伝達されるトルクが所定値(T1)以上である際に、前記吸振弾性体(SPd)に連結されるものである。
本開示の発進装置では、ロックアップクラッチによりロックアップが実行されると共にエンジンから入力要素に伝達されるトルクが所定値未満である際、タービンランナを含む質量体および吸振弾性体により、入力要素および中間要素の一方に対して逆位相の振動を付与するダイナミックダンパが構成される。これにより、ダンパ装置の振動減衰性能をより向上させることができる。また、ロックアップクラッチによりロックアップが実行されると共にエンジンから入力要素に伝達されるトルクが所定値以上である際には、入力要素および中間要素の他方が吸振弾性体に連結され、当該吸振弾性体は、入力要素と中間要素との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、少なくとも第1ダンパの第1弾性体が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化しつつ、入力要素に対するより高いトルクの入力を許容することが可能となる。一方、かかる発進装置では、ロックアップクラッチによりロックアップが解除されている際、吸振弾性体および第2ダンパを含むタービンランナから出力部材までのトルク伝達系を介して入力部材と出力部材との間でトルクが伝達されるが、この際、当該トルク伝達系の共振が発生するおそれがある。これに対して、本開示の発進装置では、ダイナミックダンパへの要求に応じた吸振弾性体の剛性等(諸元)を変更することなく、第2ダンパの第2弾性体の剛性の調整により当該共振の周波数を高周波(高回転)側にずらすことができる。これにより、ダイナミックダンパの振動減衰性能を良好に確保しつつ、ロックアップが解除されている際に、吸振弾性体および第2ダンパを含むトルク伝達系の共振が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。
更に、前記変速機(TM)は、摩擦係合要素(C1,B1)を含む前後進切換機構(BF)を介して前記出力部材(7)に連結される無段変速機であってもよい。かかる発進装置では、エンジンから入力要素に伝達されるトルクと変速機側から出力要素に伝達されるトルクとの差が比較的小さくなった際に、エンジンからの振動により前後進切換機構の摩擦係合要素で振動やノイズが発生するのを良好に抑制することが可能となる。
そして、本開示の発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。