JP7392939B2 - 脳組織の修復用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物に関する。本発明の活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物は、パーキンソン病等の神経変性疾患に好適に使用できる。
神経変性疾患は、ある特定の神経細胞群が何らかの障害を受け、運動障害、認知障害などが起こる疾患の総称である。その中でもパーキンソン病は、中脳黒質にあるドーパミン作動性神経細胞の変性・脱落によって脳内ドーパミン産生量が低下する神経変性疾患である。パーキンソン病は10万人あたり100~150人の割合で発症し、その発症頻度は、神経変性疾患の中でもアルツハイマー病に次いで多い。高齢になるほど発症率が増加することから、高齢社会を迎えたわが国において、今後さらなる患者数の増加が懸念される。
パーキンソン病の症状は患者毎に異なる。最も一般的な症状は、動作の欠如および硬直であり、随意性骨格筋の硬直の増大を特徴とする。さらなる症状としては、安静時振戦、動作緩慢、固縮、姿勢反射障害および歩行障害が挙げられる。一般的な二次的症状としては、抑うつ、睡眠障害、平衡障害、前屈姿勢、認知症、発話障害、呼吸障害、および嚥下障害が挙げられる。症状は時間と共に徐々に悪化し、最終的に死に至る。パーキンソン病の運動障害の発現は中脳の黒質の障害から始まり、病状が進行すると病変が中脳から大脳皮質にまで広がるといわれている。正常な人の脳では、中脳黒質に存在するドーパミン性神経細胞によってドーパミンが産生され、大脳基底核の線条体へと伸びたドーパミン性神経細胞は、線条体にてドーパミンを放出し、運動に関わる細胞へドーパミンを受け渡すことで情報を伝えている。上記の運動障害の直接的な原因は、脳内で産生される神経伝達物質ドーパミンの不足によることがわかっている。
近年、活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)による生体内の細胞や組織で見られる様々な傷害が注目されている。活性酸素種は酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称であり、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素などがあり、生体内で酸化剤として作用する。
活性酸素種が増加すると、酸化されたタンパク質が、いわゆる異常タンパク質として生体内に蓄積して様々な疾患を引き起こすとされる。
異常タンパク質の生体内での蓄積は、活性酸素種の酸化作用や年齢とともに増加し、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患に共通した発病機構に関与することが明らかとなってきた。生体内における異常タンパク質の蓄積に起因する疾病の予防および改善が大きな課題となっているが、異常タンパク質の蓄積防止に関しては、酸化ストレスにより生体内に発生した活性酸素種を抗酸化物質の摂取により消去してタンパク質の酸化を抑制するという試みがなされている。例えば、特許文献1には、ゴマのリグナン類を生体内酸化還元状態改善剤(レドックスモジュレーター)として利用することが開示されている。具体的には、プロテアソームの阻害により誘導される細胞内酸化が、ゴマのリグナン類により防止されることが開示されている。
特開2015-96494号公報
上記の文献では、インビトロにおいて、セサミンなどがプロテアソーム活性低下条件下の細胞内酸化を抑制する効果を示すことが記載されているが、インビボにおいて、神経組織の変性を防止又は修復したことは実証されていない。
パーキンソン病のような神経変性疾患において、対症療法的でない、根本的な治療法や予防法の確立は重要である。特に、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復に有用な成分を見出すことは重要な課題である。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ゴマのリグナン類の一種であるセサミノールが、インビトロにおいて活性酸素種から神経細胞を保護する作用を有し、インビボにおいて脳組織の変性を防止し、脳組織を修復する作用を有することを見出して本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物が提供される。
本発明によれば、上記組成物を含む食品、医薬部外品又は医薬品が提供される。
本発明によれば、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の食品組成物が提供される。
本発明によれば、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物の製造のためのセサミノールの使用が提供される。
本発明によれば、セサミノールを有効成分として含む組成物が、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復をもたらすことが期待される。
ヒト神経芽細胞腫由来の細胞株(SH-SY5Y)へのセサミノール添加による細胞生存率の違いである。 SH-SY5Yへの6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)添加による細胞生存率の違いである。 SH-SY5Yへセサミノールを添加後に6-OHDAを添加した際の細胞生存率の違いである。 SH-SY5Yへの6-OHDAを添加した細胞、又は6-OHDAとセサミノールを添加した細胞との細胞内ROS産生量の違いを細胞蛍光画像で表した図である。 図4の蛍光画像の蛍光強度をImageJで数値化したグラフである。 パーキンソン病モデル動物の確立のためのマウスへのローターロッド試験の流れを表す図である。 ローターロッド試験中のマウスのロッド上の滞在時間におよぼすロテノンの影響である。 ロテノン投与後のマウスに対するローターロッド試験の流れを表す図である。 ローターロッド試験中のマウスのロッド上の滞在時間におよぼすセサミノールの影響である。 ロテノン、セサミノール添加実験中のマウスの体重変化である。 ロテノン、セサミノール添加実験中のマウスの摂食量変化である。 ロテノン、セサミノール添加実験後のマウスを解剖し、採取した脳組織中の黒質周辺のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色組織像(x4.2)である。 ロテノン、セサミノール添加実験後のマウスを解剖し、採取した脳組織中の黒質周辺のHE染色組織像(x20.0)である。 SH-SY5Yへ6-OHDAを添加した細胞、又は6-OHDAとセサミノールを添加した細胞との間の核の形態の違いを表す染色画像である。 ロテノン、セサミノール添加実験後のマウスの結腸の長さの変化である。
本実施形態の活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、有効成分としてセサミノールを含む。セサミノールは、ゴマ種子中に含まれるリグナン類として知られており、以下の構造式で表される化合物である。本明細書において「セサミノール」との用語には、セサミノールのエピマーも含まれる。セサミノールのエピマーとしては、例えば2-エピセサミノールが挙げられる。
Figure 0007392939000001
本実施形態において、活性酸素種からの神経細胞の保護とは、活性酸素種を消去することで、神経細胞が活性酸素種により損傷されることを防止する作用のことを指す。
本実施形態において、脳組織とは、例えば、大脳皮質、基底核、扁桃体、海馬、視床、視床下部、中脳、橋、延髄、または小脳などの脳内の組織、中枢神経等を包含する脳内に存在するあらゆる組織を意味する。
本実施形態において、活性酸素種からの脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復とは、脳組織における海綿状変性を防止する作用、並びに脳組織における神経束の乱れを防止又は緩和する作用のことを指す。海綿状変性とは、神経組織中の、シナプス終末が膨化して形成された空胞ならびに異常タンパクにより形成される封入体をいう。
本実施形態における脳組織は好ましくは中脳であり、より好ましくは中脳の黒質である。
本実施形態の組成物は、これらの作用を有するので、神経変性疾患、特にパーキンソン病を治療、予防及び/又は緩和する効果が期待される。
本発明に用いられるセサミノールの由来は特に限定されず、ゴマ種子などの植物由来のセサミノールであってもよいし、合成又は半合成によって得られたセサミノールであってもよい。なお、ゴマ種子などからセサミノールを得る方法自体は公知であり、例えば、ゴマ種子や該種子の脱脂粕を原料として、所定の微生物が有する酵素の作用によってセサミノールを製造する方法が挙げられる(特開2006-61115号公報及び特開2008-167712号公報参照)。
本実施形態においては、特開2008-167712号公報に記載の方法に準じて、ゴマ種子の脱脂粕に含まれるセサミノール配糖体から得られたセサミノールを用いることが好ましい。この方法によりゴマ種子の脱脂粕から得られたセサミノールの精製液を、後述の調製例に示す分析条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定すると、セサミノール及び2-エピセサミノールが多量に含まれる一方で、セサミン、セサモリン及びセサミノール配糖体は検出されず、実質的に含まれていないことがわかる。上記方法で得られたセサミノールを含む組成物では、有効成分が実質的にセサミノールのみであると言える。すなわち、本実施形態では、有効成分が、実質的にセサミノールのみであってもよい。なお、上記方法で得られたセサミノールはそのままでも本実施形態の組成物に用いることができるが、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、脱臭、脱色、乾固などの処理に付してもよい。
本実施形態において、組成物は、実質的にセサミノールのみからなるものであってもよいが、セサミノールが有する作用を損なわない範囲で、医薬部外品、医薬品、食品などの技術分野において通常用いられる添加物を適宜配合してもよい。
そのような添加物としては、薬学的及び/又は食品衛生学的に許容される添加物から適宜選択できる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、ポリビニルピロリドンなど)、充填剤(乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシンなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールなど)、崩壊剤(デンプン類、結晶セルロースなど)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水添加食用脂など)、乳化剤(レシチン、ソルビタンモノオレエートなど)、非水性賦形剤(アーモンド油、分画ココヤシ油又はグリセリン、プロピレングリコール、エチルアルコールのような油性エステルなど)、保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、ソルビン酸など)、香料(合成香料、天然香料など)、キレート剤(エデト酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなど)、甘味料(ショ糖、ステビアなど)、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど)、粉体(顔料、色素、樹脂など)、増粘剤(アラビアゴム、メチルセルロースなど)、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)などが挙げられる。
本実施形態の組成物の投与方法は、特に限定されず、経口投与、注射投与(皮下、皮内、筋肉内、経静脈、経動脈)、皮膚上への投与(軟膏剤の塗布など。有効成分が局所患部へ送達される)又は経皮投与(有効成分が皮膚を通して全身循環血流へ送達される)などから適宜選択できるが、好ましくは、経口投与又は注射投与である。
本実施形態の組成物の投与量は、特に限定されず、投与対象の体重や健康状態などに応じて適宜決定できる。一例を挙げれば、経口投与の場合、組成物の投与量は、成人1日あたりのセサミノール量として2~400 mg、好ましくは4~80 mg、より好ましくは2~40 mgの範囲内である。また、注射投与の場合は、成人1日あたりのセサミノール量として0.2~40 mg、好ましくは0.4~8 mg、より好ましくは0.2~4 mgの範囲内である。なお、本実施形態の組成物の投与回数も特に限定されず、1日に1回又は複数回投与することができる。
本実施形態の組成物は、パーキンソン病を予防、治療又は改善するための組成物として提供することができる。本実施形態の組成物は、パーキンソン病を原因として発症及び進行する症状に好適である。そのような症状としては、例えば、動作の欠如および硬直、随意性骨格筋の硬直の増大、安静時振戦、動作緩慢、固縮、姿勢反射障害、歩行障害、抑うつ、睡眠障害、平衡障害、前屈姿勢、認知症、発話障害、呼吸障害、および嚥下障害が挙げられる。パーキンソン病の症状は患者毎に異なるため、患者によって上記症状が1つ又は複数が組み合わされていてもよい。
本実施形態の組成物は、神経細胞のアポトーシスを予防することができる。例えば、セサミノールの投与により、活性酸素種による核の縮小などの形態異常を防ぐことができる。神経細胞のアポトーシスを予防することにより、例えば、上記のようなパーキンソン病を原因として発症及び進行する症状を予防することができる。
本実施形態の組成物は、ヒトを含む哺乳動物を投与対象とすることができるが、特に、健常人及びパーキンソン病の患者に好適である。本実施形態の組成物は、健常人にはパーキンソン病の予防のために、パーキンソン病の患者には該疾患の治療又は病状の改善のために投与することができる。
本実施形態の組成物は、ヒトを含む哺乳動物へセサミノールの投与又は該哺乳動物による摂取が可能であれば、食品、医薬部外品、医薬品、研究用試薬などのいずれの形態にあってもよいが、好ましくは、食品、医薬部外品又は医薬品の形態である。すなわち、本発明の範囲には、セサミノールを有効成分として含む、パーキンソン病を予防、治療及び/又は改善するための組成物を含む食品、医薬部外品又は医薬品も含まれる。また、本発明の範囲には、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護用、脳組織の変性の防止用及び/又は脳組織の修復用の組成物を含む食品、医薬部外品又は医薬品も含まれる。
より具体的には、医薬部外品又は医薬品の形態としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤、点滴などが挙げられる。また、食品の形態としては、例えば、飲料(ドリンク剤など)、栄養機能食品、特定保健用食品、サプリメント(錠剤、カプセル剤、顆粒など)、病者用食品(病院食、介護食など)などが挙げられる。あるいは、本実施形態の組成物を、食品添加剤(液状、粉末状、ペースト状など)の形態にしてもよい。また、本実施形態の組成物を食品添加物として、既存の調味料などに添加してもよい。なお、これらの形態の組成物の製造自体は、当該技術において公知の方法により行うことができる。
本実施形態の組成物を含む食品は、例えば、セサミノールを実質的に含まない食品又は食品原料に、セサミノールが十分な量で含まれるように本実施形態の組成物を添加することにより得ることができる。ただし、セサミノールを含有する植物そのもの(例えばゴマ種子など)は、食品の形態にある本実施形態の組成物には含まれない。本実施形態において、食品組成物とは、飲食に適した組成物又は飲食品に添加可能な組成物をいう。
本実施形態の組成物におけるセサミノール含有量は、特に制限されず、組成物の形態に応じて適宜設定することができる。一例を挙げれば、セサミノール含有量は、組成物の全重量に対して0.0001~50重量%、好ましくは0.0005~40重量%、より好ましくは0.001~35重量%である。
本発明の範囲には、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の組成物の製造のためのセサミノールの使用も含まれる。なお、セサミノール及びこれを有効成分として含む組成物については、これまでに述べたことと同様である。また、この組成物の投与方法及び投与量についても、これまでに述べたことと同様である。
さらに、本発明の範囲には、セサミノールを有効成分として含む組成物を投与することを含む、活性酸素種から神経細胞を保護する方法も含まれる。なお、セサミノール及びこれを有効成分として含む組成物については、これまでに述べたことと同様である。また、この組成物の投与方法及び投与量についても、これまでに述べたことと同様である。
1つの実施形態では、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の医薬部外組成物を提供する。さらに1つの実施形態では、セサミノールを有効成分として含む、活性酸素種からの神経細胞の保護、脳組織の変性の防止及び/又は脳組織の修復用の医薬組成物を提供する。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例:セサミノールの調製
本実施例では、特開2008-167712号公報に記載の方法に準じて、Paenibacillus sp. KB0549株(寄託番号:FERM P-21057。以下KB0549株)を、ゴマ脱脂粕を含む培地中で培養することにより、ゴマ脱脂粕中に含まれるセサミノール配糖体から得られたセサミノールを用いた。具体的には、以下のようにして、セサミノールを調製した。
ゴマ脱脂粕(竹本油脂株式会社製)の温水抽出液に、1.0%トリプトン、0.5%酵母エキス及び0.89% NaClを加えて得た培地にてKB0549株を増殖させ、KB0549株培養液を得た。得られた培養液を、ゴマ脱脂粕(10.0 kg;加熱殺菌し水分70%、pH 6.0に調整)に加え、固体発酵機を用いて、37℃にて間歇撹拌とエアレーションを6日間継続して発酵処理を行った。
発酵させたゴマ脱脂粕を水分8.5%となるまで乾燥させた。得られた乾燥物に、該乾燥物重10.0 kgに対して100 Lの95%エタノールを加えて、50℃に加熱しながら撹拌して、セサミノールの抽出を行った。得られた抽出液をフィルタープレスにより珪藻土ろ過を行い、固形分を除去して濾液(82 L)を得た。得られた濾液を真空濃縮機で4.1 Lとなるまで濃縮した。得られた濃縮液に99.5%エタノールを4倍量以上加えて、濾紙濾過で不溶物を除去した。そして、得られた液をエバポレーターで濃縮して、セサミノールの高濃縮液(4.05L)を得た。
得られた高濃縮液中のセサミノール及びセサミノール関連化合物をHPLCに供して同定した結果、高濃縮液(4.05 L)中にセサミノールが18.4 g含まれていた。なお、HPLCでの分析条件は次のとおりである:
HPLC : HITACHI LaChrom
カラム:Wakosil-II 5C18HG(φ4.6*250 mm、和光純薬工業株式会社)
展開溶媒:A;10%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸、B;80%アセトニトリル+0.1%
トリフルオロ酢酸、Bを10~100%の直線勾配(40分間)で展開。
流速:0.8 ml/min
分析波長:280 nm
得られた高濃縮液は、セサミノール含有割合を高めるために、シリカゲルやゲル濾過精製などのカラム精製の手法を用いて精製液を得た。このセサミノールの精製液には、セサミン、セサモリン、セサミノール配糖体はほぼ含まれていない。本調製法で用いられるゴマ脱脂粕には、親油性のセサミン、セサモリンはごま油の方へ移行するためほぼ含まれず、セサミノール配糖体は発酵処理によりセサミノールへと変換されるためでもある。
上記のセサミノールの精製液をDMSOに溶解して、本実施例で用いられるセサミノール溶液(8.56 mg/ml)を調製した。なお、得られたセサミノール溶液は、本実施例で用いられる各種の細胞株に対して毒性がなく、生存に影響を及ぼさないことが本発明者らにより確認されている。
実施例1:セサミノールによる神経細胞の保護効果 ―in vitro実験系での検討―
実験試料・試薬・機器
セサミノール溶液(8.56 mg/ml)は上記のようにして得た。
6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)は、R&D System社より購入した。6-OHDAをDMSOに懸濁して用いた。
ヒト神経芽細胞腫由来の細胞株 SH-SY5Yは、Public Health England社より購入した。SH-SY5Yはドーパミン性神経細胞に特徴的なチロシンヒドロキシラーゼ、ドーパミンβヒドロキシラーゼが存在し、パーキンソン病に関するin vitro 研究において広く用いられる。
牛胎児血清(FBS)はSigma社より購入した。FBSを56℃の水中に30分間静置し、血清内の補体成分を非働化させた。
滅菌重曹水は、8% NaHCO3液(40 g/500 ml H2O)を、加熱処理(200℃、30分)したアンプル管に5 mlずつ分注し、バーナーを用いてアンプル管を密封した後、オートクレーブ処理して作製した。
ペニシリンはMeiji Seikaファルマ株式会社から購入した。
ストレプトマイシンはMeiji Seikaファルマ株式会社から購入した。
ダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM)を日水製薬株式会社より購入した。
オートクレーブによって滅菌されたDMEM培地に0.1%ペニシリン、0.1%ストレプトマイシン、及びろ過滅菌処理した2% L-グルタミン(584 mg/l)を添加した後、滅菌重曹水を用いてpH 7.5に調整した。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))は、0.8% NaCl, 0.02% KCl, 0.02% KH2PO4, 0.29% Na2HPO4・12H2Oを含む溶液をpHが7.2~7.4となるよう調整して作製した。
トリプシン/EDTA溶液は、100 mlのPBSに0.025 gのトリプシンと0.010 gのEDTA・2Naを加えて混合後、フィルター滅菌して作製した。作成後の溶液は冷凍保存した。
MTT(3-(4, 5-ジメチル-2-チアゾリル)-2, 5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)は株式会社同仁化学研究所から購入した。MTTは5 mg/mlとなるようにPBS(-)に溶解させた。
DMSO(ジメチルスルホキシド)は和光純薬工業株式会社より購入した。
膜透過性プローブ2’, 7’-ジクロロフルオレシン-ジアセテート(DCFH-DA)はSigma社より購入した。
96ウェル培養プレートはGreiner-Bio-Oneから購入した。
プレートミキサーはバイオテック製を、マイクロプレートリーダーはWallac-1420-ARVO-sxを、蛍光顕微鏡はOLYMPUS-LSC101を使用した。
細胞の培養方法
SH-SY5Yを、10%FBS含有DMEM培地を入れたφ100 mm細胞培養ディッシュに播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で培養した。2~3日ごとに培養用培地を交換した。細胞濃度が目視で7~8割コンフルエントになった時、PBS(-)で洗浄後、トリプシン/EDTA溶液によって細胞を培養ディッシュから剥離させ、培養用培地を等量加えて1500 rpm 20℃ 5分の条件で遠心分離した。そして上清を除去した後、培養用培地を加え、一定の細胞濃度の細胞を培養用細胞および実験用細胞として各種培養容器に播種した。
in vitroパーキンソン病モデル作製にあたり、6-OHDAを用いた。6-OHDAは、ドーパミン類似体でカテコールアミン作動性の神経終末を破壊する神経毒であり、ドーパミントランスポーターを介して細胞内に取り込まれるとすみやかに酸化されると同時に、活性酸素種(ROS)の一種であるH2O2が産生されることが知られていることから、パーキンソン病モデルの作製に広く用いられている。
生細胞数の測定
生細胞数の測定にはMTT法を用いた。MTT法によって生細胞数を測定することで、SH-SY5Yにおよぼすセサミノールまたは6-OHDAの細胞毒性および6-OHDA誘導性神経細胞傷害におよぼすセサミノールの影響を評価した。
細胞内活性酸素種(ROS)産生量の測定(DCFH-DA法)
DCFH-DAは細胞内エステラーゼにより脱アセチル化し、非蛍光型の2’, 7’-ジクロロジヒドロ-フルオレシン(DCFH)となる。さらにROSによって速やかに酸化され、強い蛍光を示す2’, 7’-ジクロロジヒドロ-フルオレシン(DCF)に変化する。この原理を利用し、各群の蛍光強度を測定することで細胞内ROS産生量を評価した。
(1-1)SH-SY5Yの細胞生存率に及ぼすセサミノールの影響
SH-SY5Yの細胞生存率に及ぼすセサミノールの影響を以下の方法で求めた。
SH-SY5Yを2.0×105 cells/mlとなるように96ウェル培養プレートに播種し、一晩置いてディッシュに接着させた。本培養として、培地交換を行い、終濃度が0.25, 0.5, 1.0, 5.0, 7.5若しくは10.0 μg/mlとなるようにセサミノールを培養培地に添加して、24時間インキュベーター内で培養した。本培養終了後、培地を除去し、10%の5 mg/ml MTT溶液を含んだ培養用培地を各ウェルに100 μlずつ加え、2~4時間インキュベーター内に静置した。培地を除去した後、各ウェルにDMSOを200 μlずつ加えた。培養プレートを5分間プレートミキサーで撹拌し、生成したホルマザン色素を溶解させた。535 nmの波長における吸光度をマイクロプレートリーダーによって測定した。
(1-2)SH-SY5Yの細胞生存率に及ぼす6-OHDAの影響
SH-SY5Yの細胞生存率に及ぼす6-OHDAの影響を、(1-1)に記載している実験方法のセサミノールの添加にかえて、終濃度が5, 10, 20, 30, 40 μMになるように6-OHDAを培地に添加して調べた。
(1-3)6-OHDAによって誘導された神経細胞障害に及ぼすセサミノールの影響
6-OHDAによって誘導された神経細胞障害に及ぼすセサミノールの影響を、(1-1)に記載している実験方法を基本として調べた。終濃度が0.25, 0.5, 1.0, 5.0, 若しくは10.0 μg/mlとなるようにセサミノールを培地に添加して、2時間インキュベートした。その後、終濃度が20 μMになるように6-OHDAを加え、24時間インキュベートした。そしてMTT法を行った。
(1-4)6-OHDAによって誘導された細胞内ROS生産量に及ぼすセサミノールの影響
6-OHDAによって誘導された細胞内ROS生産量に及ぼすセサミノールの影響を以下の方法で求めた。
SH-SY5Y細胞を1.0×105 cells/mlとなるようにφ35 mmディッシュに播種し、一晩置いてディッシュに接着させた。本培養として、終濃度1 μg/mlセサミノールを培養培地に添加し、さらに2時間後に終濃度20 μMの6-OHDAを添加して7.5時間培養した。培養終了30分前に、培地(2 ml)中に2.4 mM DCFH-DA溶液を5 μl添加した。培養終了後、氷上で培地を除去し、PBS(-)で2回洗浄した。次に、カバーガラス(24×24 mm)をディッシュに貼り付け、余分な水分を濾紙で吸い取った後、蛍光顕微鏡で観察した。また、対照として、セサミノール溶液を含まない培地、セサミノールと6-OHDAを添加しない試料もそれぞれ作製して、ともに観察した。
(1-5)6-OHDAを添加したSH-SY5Yの核の形態におけるセサミノールの影響
細胞生存率の低下がアポトーシス細胞死によるものかどうかを確認するために、Propidium Iodide (PI) を用いるPI染色法で核染色を行った。
SH-SY5Yを、1.0×105 cells/mlとなるようにφ35 mmディッシュに播種し、一晩置いてディッシュに接着させた。本培養として、終濃度1 μg/mlセサミノールを培養培地に添加し、さらに2時間後に終濃度20 μMの6-OHDAを添加して7.5時間培養した。
培養後の細胞に、PI溶液(Propidium Iodide 5 μg/mlを500 μl添加し、15 分間インキュベートした。インキュベート後、PBS(-)で3回洗浄を行った。次に、カバーガラス(24×24 mm)をディッシュに貼り付け、余分な水分を濾紙で吸い取った後、蛍光顕微鏡で観察した。また、対照として、セサミノール溶液を含まない培地と、セサミノール及び6-OHDAを添加していない細胞も同様に観察した。
結果
SH-SY5Yへのセサミノールの添加による細胞生存率の変化を図1に示す。セサミノールは10 μg/ml以下の濃度においてSH-SY5Yの細胞成長率に全く影響を及ぼさなかったことから、10 μg/ml以下の濃度では、細胞毒性は認められないことが明らかとなった。
SH-SY5Yへの6-OHDAの添加による細胞生存率の変化を図2に示す。図中の「**」は、コントロールに対してp値が0.01未満であることを示す。6-OHDAは20 μM以上になると添加濃度に依存して有意に細胞生存率を低下させた。この結果から、20 μMの6-OHDAを神経障害モデルとして以降の実験に使用した。
6-OHDA添加SH-SY5Yへのセサミノールの添加による細胞生存率の変化を図3に示す。図中の「a」及び「b」は、異なる文字間でp値が0.01未満であることを示す。SH-SY5Yの添加によって有意に低下した細胞生存率は1 μg/mlまたは5 μg/mlのセサミノールを添加することによってコントロールレベルまで回復した。このことから、本試験で用いたセサミノールは神経細胞保護効果を有することが明らかとなった。以降の実験では、セサミノール濃度1 μg/mlを有効濃度とした。
6-OHDAによって細胞内ROSが誘導されたSH-SY5Yに対するセサミノール添加の効果を図4、図5に示す。図4のAは細胞の蛍光画像を、Bは同細胞の明視野を表す。図5中の「a」及び「b」は異なる文字間でp値が0.01未満であることを示す。蛍光強度は、ROS産生量に依存する。図4より、コントロールに比べ、6-OHDAを添加した細胞でROSが顕著に増加したことが観察され、図5からも実数値でも強い蛍光強度が現れていることがわかる。また、6-OHDAとセサミノールを添加した細胞では、ROSに由来する蛍光強度はコントロールレベルまで低下することがわかる。細胞内ROS産生量は、6-OHDAによって顕著に増加したが、セサミノールを添加することによって抑制された。よって、セサミノールは、細胞内ROS産生量を低下させることによって6-OHDAによる神経細胞傷害を抑制することが示唆された。
6-OHDAを添加したSH-SY5Yの核の形態におけるセサミノールの影響を図14に示す。図14のように、6-OHDAを添加すると、核の縮小などの形態異常(中央の画像の白矢印)が観察され、アポトーシスによる細胞死が認められた。一方、セサミノールを添加すると、6-OHDAを加えても核の形態異常はほとんど観察されなかった。よって、セサミノールは、6-OHDAによる核の形態異常を抑制することがわかり、神経細胞のアポトーシスを予防する効果を有することが示唆された。
実施例2:セサミノールのパーキンソン病モデル動物への効果―in vivo実験系での検討
(2-1)パーキンソン病モデル動物の確立
パーキンソン病モデル動物の作製に、以下の構造式で示されるロテノンを用いた。ロテノンは溶液が農薬や殺虫剤として用いられる化合物であり、ミトコンドリア複合体Iを阻害することによってROSを増加させ、その酸化ストレスによって神経細胞死を導くことが知られている。ラット中脳黒質のドーパミン性神経細胞に対しては、ROS産生によりアポトーシスを誘導する。
Figure 0007392939000002
(i)動物の飼育
10週齢の雄性C57BL6/Jマウス(13匹)を(1)コントロール群(n=6)、(2)ロテノン群(n=7)の2群に分けた。
パーキンソン病モデルの作製のため、ロテノン群にはロテノンを3%カルボキシメチルセルロース(CMC)+1.25%クロロホルム溶液に溶解した溶液を28日間、1日1回胃チューブを用いて経口投与した。投与するロテノン量はマウスの体重に対して10 mg/kg体重になるように投与した。飼料(固形食) および水は自由摂取させた。
(ii)運動能力試験(ローターロッド試験)
回転棒(ロッド)の上にマウスをのせ、マウスが落下するまでの時間(滞在時間)を測定した。パーキンソン病の症状である運動機能障害を発症したマウスは、加速するロッドから落下しやすくなる。マウスをロッドに慣れさせるために予備試験を行った後、ロテノン最終経口投与後の翌日に本試験を実施した。ロッドの回転速度は、開始30秒間で6 rpmから33 rpmまで加速させ、その後一定の速度(33 rpm)で回転させた。計測時間は最大5分間とした。この試験を3回行った(図6)。
パーキンソン病モデル動物の確立のためのローターロッド試験の結果を図7に示す。図中の「**」は、コントロールに対してp値が0.01未満であることを、「*」は、コントロールに対してp値が0.05未満であることを示す。ロテノン群におけるロッド上の滞在時間は、コントロール群と比較して有意に減少した。よって、本実験条件により、パーキンソン病モデル動物を確立できたことが示された。以下の実験では、同条件で作成したモデル動物を用いて、セサミノールの効果を検討した。
(2-2)セサミノール摂食によるパーキンソン病モデル動物への効果
(i)動物の飼育
7週齢の雄性C57BL6/Jマウス25匹を固形飼料で4日間、コントロール食で4日間予備飼育した。コントロール食と後述するセサミノール食の組成を表1に示す。飼料組成はAIN-93Mに準じて作成した。なお、飼料と水は自由摂取とした。
Figure 0007392939000003
4日間のコントロール食の後、25匹のマウスをコントロール群、ロテノン群、セサミノール(L)群、セサミノール(H)群の4群に分けた。この4群のうちセサミノール(L)群には0.0008%セサミノール食、セサミノール(H)群には0.008% セサミノール食をコントロール食の代わりに7日間与えた。同様の期間、残りのコントロール群、ロテノン群にはコントロール食を与えた。その後、コントロール以外の群にはロテノンを28日間経口投与した。投与するロテノン量はマウスの体重に対して10 mg/kg体重になるように3% CMC+1.25%クロロホルム溶液に溶解して投与した。コントロール群にはロテノンを含まない溶媒(3% CMC+1.25%クロロホルム)を28日間経口投与した。実験中の試験食や経口投与物の組み合わせは表2の通りである。
Figure 0007392939000004
(ii)運動能力試験
上記4群のマウスに対するロテノン又は溶媒投与開始直後、並びに投与開始後1週間毎にローターロッド試験を行った。図8は本実験の流れの概要図である。試験を行っていくうちにマウスがロッドの速さに慣れてくることが予備実験の結果より明らかになったことから、本試験では徐々にロッドの回転速度を上げた。図8中の各番号で、予備試験として6-10 rpm、max 3分の試験を1回、6-20 rpm、max 3分の試験を一回行った後、本試験を行った。本試験は、投与開始直後は6-25 rpm、max 5分の試験を3回、7日目は6-30 rpm、max5分の試験を3回、14~28日目では6-33 rpm、max 5分の試験を3回行い、滞在時間を測定した。
(iii)解剖試験
ロテノン投与終了の2日後に解剖を行った。各群における脳、肝臓、脾臓、腎臓の重量、及び空腸、結腸の長さを測定した。
(2-3)セサミノール摂食によるパーキンソン病モデル動物の結腸への影響
上記の4群のマウスのうち、セサミノール群(H)を、以下の表3の組成の0.00008%セサミノール食を与えたセサミノール群(LL)に変えたこと以外は、(2-2)の実験と同様に25匹のC57BL6/Jマウスを飼育、コントロール以外はロテノンを投与し、マウスを解剖した。解剖した各マウスから結腸を取り、長さを測定した。
Figure 0007392939000005
結果
セサミノールのパーキンソン病モデル動物への摂食効果を確認する実験中の、ロテノン投与マウスのローターロッド試験時のロッド上の滞在時間におよぼすセサミノールの影響を図9に示す。図中の「**」は、コントロールに対してp値が0.01未満であることを、「##」は、ロテノン投与群に対してp値が0.01未満であることを示す。「#」は、ロテノン投与群に対してp値が0.05未満であることを示す。経口投与21日目において、ロテノン群のロッドの滞在時間は、コントロール群と比較して有意に短縮したが、セサミノール(L)群におけるロッドの滞在時間は、ロテノン群と比較して有意に延長した。経口投与28日目において、ロテノン群におけるロッドの滞在時間は、21日目と変化しなかったが、
セサミノール(L)群ではロテノン群と比較してロッドの滞在時間が有意に延長した。セサミノール(H)群においても、有意差は認められなかったもののロテノン群よりも滞在時間は延長した。同実験中の体重変化と摂食量に関する測定結果を図10と11にそれぞれ示す。各群とも飼育期間中の体重および摂食量に有意な差は認められなかった。
セサミノール摂食によるパーキンソン病モデル動物への効果を見た実験後の各群における解剖結果を表4に示す。
Figure 0007392939000006

各群における脳、肝臓、脾臓、腎臓の重量および空腸、結腸の長さに有意な差は認められなかったが、結腸はコントロール群と比較してロテノン群で短縮し、セサミノール群で回復する傾向が認められた。
解剖実験で得られた脳組織のHE染色組織像を図12(x4.2)と図13(x20.0)に示す。ロテノン群では、グリア細胞内やその周囲に空胞(海綿状変性)が数多く観察された。また、神経束にも空胞が認められ、神経束の乱れが観察された。しかしながら、セサミノールを摂食したセサミノール(L)及び(H)群では、脳内の海綿状変性や神経束の乱れは顕著に緩和された。これによりセサミノールは、ロテノン誘導性の脳内海綿状変性や神経束の乱れを防止又は修復することによって運動機能を回復させることが示唆され、セサミノールは抗パーキンソン病効果を有することが明らかとなった。
(2-3)の実験でセサミノール摂食によるパーキンソン病モデル動物の結腸への影響を見た結果を図15に示す。パーキンソン病モデルマウスでは、結腸の長さは短くなるとの報告がある。今回のロテノン群でも、結腸はコントロール群と比較してロテノン群で短縮した。対して、セサミノール群では結腸の長さが回復する傾向が認められた。
処方例
以下に、本実施形態の組成物の処方例を示す。なお、セサミノールは、上記の調製例に記載の方法により得られたものを用いる。以下の処方例において、各成分の配合割合を重量%で示す。
錠剤
錠剤を、次のようにして製造する。下記の各成分を混合及び均一化した後、これを打錠機により形成し、錠剤を得る。
セサミノール 5.00
酢酸DL-α-トコフェロール 1.33
無水ケイ酸 1.50
ステアリン酸カルシウム 1.33
乳糖 45.67
ヒドロキシプロピルセルロース 2.67
結晶セルロース 残部
(計100.00)

Claims (7)

  1. セサミノールを有効成分として含む、脳組織の修復用の組成物。
  2. 前記脳組織が、中脳である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記脳組織が、中脳の黒質である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記修復がパーキンソン病を原因として発症及び進行する症状の修復である、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
  5. 前記組成物中のセサミノール量が0.0001~0.008重量%である、請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物。
  6. セサミノールを有効成分として含む、脳組織の修復用の食品組成物。
  7. 脳組織の修復用の組成物の製造のためのセサミノールの使用。
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