JP7381985B2 - 溶接部材 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接部材に関する。
電気Niめっき後に焼鈍し、Niめっき層と鋼板との間にFe-Ni拡散合金層を形成したNiめっき鋼板は、従来、かかるNiめっき鋼板をプレス成型することで、電池缶として用いられてきた(例えば、以下の特許文献1を参照。)。
国際公開第2012/153728号
例えば水素製造装置等のような、高温かつアルカリ環境下で用いられる装置では、素材として用いられる金属板の耐食性を担保することが求められることから、金属板として純Ni板が用いられることが一般的である。このような装置では、素材として用いられる金属板を溶接して、所望の形状を実現するのが一般的である。
一方、純Ni板は比較的高価であり、低コスト化のため、純Ni板に替わる耐食性の高い鋼板による溶接部材が求められている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、純Ni板よりも安価な鋼板を素材とする、耐食性に優れた溶接部材を提供することにある。
ここで、本発明者らは、上記のような装置の低コスト化を実現するにあたって、純Ni板よりも安価な、Niめっき鋼板を用いることに着想した。しかしながら、Niめっき鋼板は、上記のように、従来、プレス加工が施されることが一般的であり、溶接という、大きな熱が発生する加工に供されることを想定していなかった。本発明者らは、Niめっき鋼板を溶接して溶接部材を製造したところ、止端近傍のNiめっき層にピンホールが形成されてしまい、耐食性劣化の原因となる場合があることを知見した。
更に、Niめっき鋼板を溶接した場合、鋼板由来のFeが溶接時に熱拡散してNiめっき層の表層まで到達してしまい、Niめっき層のNi濃度が低下することで、耐食性劣化の原因となる場合があることも知見した。
上記のような、本発明者らにより見出された新たな知見から、Niめっき鋼板を溶接して溶接部材を製造する場合に、耐食性の担保に改良の余地があることに想到した。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、Niめっき層を特定の状態とした、Fe-Ni拡散合金層を有するNiめっき鋼板を、純Ni系の溶接ワイヤーを用いて溶接することで、Niめっき鋼板を素材とした場合であっても耐食性に優れた溶接部材を製造可能であることを知見した。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)Niめっき鋼板と他の鋼板とが溶接部を介して接続された溶接部材であって、前記Niめっき鋼板は、基材である鋼板と、当該鋼板上に位置するNiめっき層と、前記鋼板と前記Niめっき層との間に位置するFe-Ni拡散合金層と、を有し、JIS Z3001(2018)で規定される止端、前記Niめっき鋼板のうち、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が10μm以上1mm以下の領域である止端近傍領域、及び、前記溶接部のそれぞれの表層において、Ni濃度は70質量%以上であり、かつ、Fe濃度は30質量%以下であり、前記Niめっき鋼板において、溶接が施されていない部位を非溶接部としたときに、前記非溶接部において、前記Fe-Ni拡散合金層の厚みは、0.5~1.5μmであり、かつ、前記Niめっき層と前記Fe-Ni拡散合金層との合計厚みは、2.7~14.0μmであり、前記非溶接部における前記Niめっき層では、S、Cの合計濃度は、20ppm未満である、溶接部材。
(2)前記止端、前記止端近傍領域及び前記溶接部のそれぞれの表層における前記Ni濃度及び前記Fe濃度は、前記止端、前記Niめっき鋼板及び前記溶接部の表面をArイオンエッチングにより酸素濃度が25%質量以下になるまで除去することで得られた面を、オージェ分光法により元素濃度測定した際の濃度である、(1)に記載の溶接部材。
(3)前記止端、前記止端近傍領域及び前記溶接部のそれぞれの表層における前記Ni濃度は、90質量%以上であり、かつ、前記Fe濃度は、10質量%以下である、(1)又は(2)に記載の溶接部材。
(4)前記Niめっき鋼板のNi付着量は、金属換算で、20~100g/mである、(1)~(3)の何れか1つに記載の溶接部材。
(5)前記Niめっき層の表面において、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が1mmまでの領域のうち、前記止端の延伸方向に沿った長さ10cmの領域である矩形領域に存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、3個以下である、(1)~(4)の何れか1つに記載の溶接部材。
以上説明したように本発明によれば、純Ni板よりも安価な鋼板を素材とした、耐食性に優れる溶接部材を得ることが可能となる。
本発明の実施形態に係る溶接部材の一例について、その一部を拡大して模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る溶接部材の一例について、その一部を拡大して模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る溶接部材の一例について説明するための模式図である。 試験例で作製した溶接部材について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(溶接部材について)
以下では、図1~図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る溶接部材について、詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る溶接部材の一例について、その一部を拡大して模式的に示した説明図である。図3は、本実施形態に係る溶接部材の一例について説明するための模式図である。
本実施形態に係る溶接部材は、Niめっき鋼板と他の鋼板とが溶接部を介して接続された溶接部材である。より詳細には、以下で詳述するようなNiめっき鋼板を、Niを90質量%以上含有し、かつ、S、Cの含有量が合計で0.1質量%以下であるNi溶接ワイヤーで溶接することで製造される溶接部材である。
図1に模式的に示したように、本実施形態に係る溶接部材1は、Niめっき鋼板10A、10Bと、溶接部20と、を有している。以下、Niめっき鋼板10A、10Bを区別せずに説明する場合、Niめっき鋼板10ともいう。ここでは、Niめっき鋼板同士を溶接した態様について説明するが、かかる態様に限らず、溶接部材を構成する少なくとも一方の鋼板が、以下で説明するNiめっき鋼板10であればよい。
図2を参照して、本実施形態に係る溶接部材1の構成の詳細を説明する。溶接部材1は、Niめっき鋼板10、溶接部20、及び合金部30を備える。
Niめっき鋼板10は、図2に模式的に示したように、基材となる鋼板101の表面に、Niめっき層103及びFe-Ni拡散合金層105が形成されているめっき鋼板である。かかるNiめっき鋼板10については、以下で改めて詳細に説明する。
また、溶接部20は、溶接ビード部とも呼ばれ、Niめっき鋼板10を、Ni合金又は純Niの溶接ワイヤーで溶接することで形成される部位である。かかる溶接により、Niめっき鋼板10が有しているNiめっき層103及びFe-Ni拡散合金層105と、Ni合金又は純Niの溶接ワイヤーとの間で、構成元素の相互拡散が生じて、溶接部20が形成される。また、かかる溶接部20の形成に伴い、Niめっき鋼板10のうち溶接ワイヤーと反応した部位については、Niめっき層103、Fe-Ni拡散合金層105及び母材の鋼板101の一部が変化して、合金部30となる。なお、溶接部20と合金部30とは、断面観察により区別可能である。
以下では、本実施形態に係る溶接部材1において、溶接が施されていない部位(例えば、後述する止端から5mm以上離れたNiめっき鋼板10における部位)を、「非溶接部」と称することとする。
<Niめっき鋼板10について>
本実施形態に係るNiめっき鋼板10(より詳細には、非溶接部に該当するNiめっき鋼板10)は、図2に模式的に示したように、基材である鋼板101と、かかる鋼板101上に位置するNiめっき層103と、鋼板101とNiめっき層103との間に位置するFe-Ni拡散合金層105と、を有している。
ここで、本実施形態に係るNiめっき鋼板10の基材として用いられる鋼板101は、特に限定されるものではなく、Niめっき鋼板10に求められる機械的強度等に応じて、各種の鋼板を用いることが可能である。このような鋼板101として、例えば、各種のAlキルド鋼、Ti、Nb等を含有させた極低炭素鋼、極低炭素鋼にP、Si、Mn等の強化元素を更に含有させた高強度鋼等のような種々の鋼板を挙げることができる。
鋼板101の厚みについては、特に限定されるものではなく、Niめっき鋼板10に求められる機械的強度等に応じて、適宜設定すればよい。
また、本実施形態に係るNiめっき鋼板10において、Fe-Ni拡散合金層105は、以下に示すような条件で、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)(以下、SEM-EDSと略記する。)による断面分析を行った際に、金属元素のみで分析し、得られたNi濃度が30質量%以上70質量%未満の範囲内である部位を意味する。また、本実施形態に係るNiめっき層103は、以下に示すような条件でSEM-EDSによる断面分析を行った際に、金属元素のみで分析し、得られたNi濃度が70質量%以上である部位を意味する。
ここで、上記分析におけるSEM-EDSの測定条件は、例えば、加速電圧15.0kV、照射電流0.00564nA、エネルギー範囲0~20keVとすればよい。
Niめっき鋼板10におけるNi付着量(より詳細には、Niめっき層103及びFe-Ni拡散合金層105の合計のNi付着量)は、金属換算で、片面当たり20~100g/mであることが好ましい。Ni付着量が20g/m未満である場合には、溶接部材1に求められる耐食性を十分に発現させることができない場合がある。Ni付着量を20g/m以上とすることで、溶接部材1に求められる耐食性を十分に発現させることができる。Niめっき鋼板10におけるNi付着量は、より好ましくは30g/m以上であり、更に好ましくは40g/m以上である。一方、Niめっき鋼板10におけるNi付着量が100g/mを超える場合には、Niめっき鋼板10の耐食性は飽和する一方で、Niめっきを施す際のコストが増加する傾向にある。Ni付着量を100g/m以下とすることで、コストの増加を抑制しながら、十分な耐食性を発現させることが可能となる。Niめっき鋼板10におけるNi付着量は、より好ましくは90g/m以下であり、更に好ましくは60g/m以下である。
ここで、上記のNi付着量については、以下のようにして測定することが可能である。
着目する溶接部材1において、高速精密切断機により、図2に示した止端から非溶接部側に(すなわち、溶接部20から離れる方向に)5mmの位置を始点とし、非溶接部側に10mm四方の領域を厚さ方向に切断し、Ni付着量の測定用の試料とする。このようにして切り出した試料の片面をテフロンテープでシールした後、シールした側のNiめっき層及びFe-Ni拡散合金層が残るように裏側から研磨する。研磨後の試料を、基材が除去できるまで35%塩酸に浸漬し、サンプルを得る。得られたサンプルを、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ)発光分光測定法(例えば、島津製作所製ICPS-8100)により測定することで、Ni量を定量し、g/mでの付着量に換算し、Ni付着量を得る。
また、本実施形態に係るNiめっき鋼板10において、Niめっき層103(非溶接部に該当するNiめっき層103)は、Ni濃度が70質量%以上となるNiめっきであれば、特に限定されるものではなく、各種の電気Niめっきや非電解Niめっきをはじめ、様々なNiめっきを適用することが可能である。Niめっき層103におけるNi濃度は、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
ただし、本実施形態において、Niめっき層103におけるS(硫黄)及びC(炭素)の合計濃度は、20ppm未満とする。
本発明者らは、本発明に係る溶接部材を着想するにあたって鋭意検討した結果、めっきままのNiめっき鋼板を溶接した場合には、止端付近において、めっき共析物であるHが気化して、ピンホールが形成されてしまい、耐食性を劣化させる原因となることを見出した。更に、Niめっきとして特にS、Cを含む光沢Niめっきを適用した場合には、溶接によって共析したS、Cも気化してしまい、更にピンホールが形成されやすくなることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らが更なる検討を行った結果、Niめっき層におけるS、Cの合計濃度が20ppmを超える場合には、上記のような共析したS、Cに起因するピンホールの形成が生じてしまうことを見出した。
ここで、上記の「止端」とは、JIS Z3001(2018)で規定される位置であり、母材(すなわち基材である鋼板)の表面と溶接ビード(すなわち溶接部20)の表面とが交わる部位に対応する。本実施形態では、Niめっき鋼板10におけるNiめっき層103の表面と、溶接部20の表面とが交わる部位に対応する。図1及び図2に、かかる「止端」の位置を、模式的に示している。図1及び図2に示した溶接部材1において、かかる止端は、Y軸方向に延伸した線分として捉えることができる。
以上のような観点から、本実施形態に係るNiめっき層103(より詳細には、非溶接部におけるNiめっき層103)では、S、Cの合計濃度は、20ppm未満とする。Niめっき層103におけるS、Cの合計濃度は、低ければ低いほどよく、0ppmであることが、より好ましい。
Niめっき鋼板のS、Cの濃度分析は、非溶接部であるNiめっき鋼板10について、HORIBA社製の炭素・硫黄分析装置であるEMIA-920V2を用いて実施する。より詳細には、Niめっき鋼板の片面をテフロンテープでシールした後、シールした側のNiめっき層が残るように裏側から研磨する。研磨後の試料を、基材及びFe-Ni拡散合金層が除去できるまで35%塩酸に浸漬し、Ni箔を得る。シールをはがし、得られたNi箔を直径2~3mmにし、セラミックスるつぼに入れて酸素気流中で焼成させる。発生したCO、CO、SOガスを赤外線検出器により検出し、この検出結果に基づいて炭素と硫黄に換算した結果を、Niめっき鋼板におけるS、Cの濃度とする。
なお、上記のような状態を実現するためには、鋼板101に対してNiめっきを施す際に、Niめっきに用いるめっき浴中のS、Cの合計濃度を適切に制限することが重要であり、特に、光沢Niめっきを施さない(S、Cを含む光沢添加剤を使用しない)ことが重要である。
また、本発明者らは、めっきままのNiめっき層におけるめっき共析物であるHについては、溶接に先立つ焼鈍処理により、実質的に存在させなくすることが可能であることも見出した。かかる焼鈍処理については、以下で改めて説明する。
以上説明したようなNiめっきとして、例えば、純Niめっきを挙げることができる。
また、本実施形態に係る非溶接部において、Fe-Ni拡散合金層105の平均厚み(以下、単に厚みという。)は、0.5~1.5μmであり、かつ、Niめっき層103とFe-Ni拡散合金層105との平均合計厚み(以下、単に厚みという。)は、2.7~14.0μmである。Fe-Ni拡散合金層105の平均厚みは、0.7μm以上又は1.0μm以上が好ましく、1.3μm以下が好ましい。Niめっき層103とFe-Ni拡散合金層105との平均合計厚みは、3.0μm以上又は4.0μm以上が好ましく、12.5μm以下又は10.0μm以下が好ましい。非溶接部において、Fe-Ni拡散合金層105の厚みと、Niめっき層103とFe-Ni拡散合金層105との合計厚みとが、上記の範囲内となることで、本実施形態に係るNiめっき鋼板10は、高温、アルカリ条件下においても十分な耐食性を保持できる程度の耐食性を、実現することが可能である。また、Niめっき層103の平均厚みが1.7μm以上となることで、溶接時における溶接部及びその周辺でのFeの表層への過剰拡散を防止できる。Fe-Ni拡散合金層105の厚みが上記の範囲内となることで、溶接時におけるC、Sの共析を防止できる。一方、Fe-Ni拡散合金層105の厚みが1.5μm以上の場合、めっき密着性が低下し、耐食性が劣化する。
なお、Niめっき層103の厚み、及び、Fe-Ni拡散合金層105の厚みは、表面視において、止端から非溶接部側5mmの位置で、厚さ方向に切断した断面視にて測定する。詳細には、表面視において、止端から非溶接部側5mmの位置を始点とし、非溶接部側に10mm四方の領域を厚さ方向に切断し、断面観察用の試料とする。当該試料を樹脂に埋め込んで研磨することで、観察対象とする断面を得た上で、かかる断面をSEM-EDSにより観察することで測定する。すなわち、当該断面において、金属元素のみに着目して元素分析を実施し、得られたNi濃度が30質量%以上70質量%未満の範囲内となる領域(すなわち、Fe-Ni拡散合金層105)の厚みと、得られたNi濃度が70質量%以上となる領域(すなわち、Niめっき層103)の厚みと、を測定する。このような測定を、断面内の任意の10箇所において実施する。得られた測定値のうち最大値及び最小値を除いた残りの8つの測定値の平均値を、それぞれ、Fe-Ni拡散合金層105及びNiめっき層103の厚みとする。
<溶接部20について>
本実施形態に係る溶接部20は、Ni濃度(より詳細には、Niの平均濃度)が70質量%以上であるNi合金であることが好ましい。かかる溶接部20は、Ni合金又は純Niの溶接ワイヤーを利用して、以下で詳述するような溶接方法による溶接を行うことで形成される。溶接部20が、Ni濃度が70質量%以上であるNi合金であることで、Niめっき層103が消失した溶接箇所の耐食性を担保する可能性が高まる。溶接部20のNi濃度は、以下のようにして実施する。まず、例えば図1に示したX-Z面で溶接部20を切断することで得られた断面を埋め込み研磨し、断面観察する。断面内の任意の10箇所において、濃度測定を実施する。得られた測定値のうち、最大値及び最小値を除いた残りの8つ測定値の平均値を、Niの平均濃度とした。
溶接部20のNi濃度は、好ましくは90質量%以上である。溶接部20がかかるNi濃度を有することで、溶接箇所の耐食性をより確実に担保することが可能となる。
<止端、Niめっき鋼板(止端部付近)及び溶接部それぞれの表層におけるNi、Fe濃度について>
本実施形態に係る溶接部材1は、JIS Z3001(2018)で規定される止端、Niめっき鋼板10及び溶接部20のそれぞれの表層において、Ni濃度は70質量%以上であり、かつ、Fe濃度は30質量%以下である。ここでNi濃度が測定されるNiめっき鋼板の位置は、Niめっき鋼板10のうち、非溶接部側に(すなわち、溶接部20から離れる方向に)止端からの距離が10μm以上1mm以下までの領域である(以下、この領域を止端近傍領域とも称する)。一般的に、溶接によりNiめっき鋼板由来の元素Feの熱拡散が生じる。本実施形態に係る溶接部材1では、止端、止端近傍領域及び溶接部20の表層まで拡散したFeの割合が抑制されて、30質量%以下となっている。止端、止端近傍領域及び溶接部20のそれぞれの表層が、上記のようなNi濃度及びFe濃度を有していることで、高温、アルカリ環境下においても十分な耐食性を保持できる程度の耐食性を、実現することが可能である。このような構成は、特に、溶接部や止端部、あるいは止端付近のNiめっき鋼板での耐食性保持に有効である。
止端、止端近傍領域及び溶接部20のそれぞれの表層におけるNi濃度は、好ましくは90質量%以上である。また、止端、止端近傍領域及び溶接部20のそれぞれの表層におけるFe濃度は、好ましくは10質量%以下である。
ここで、止端、止端近傍領域及び溶接部20の表面には、雰囲気中の酸素と反応することで生成される酸化被膜や、油脂等の汚れが付着している可能性がある。そのため、上記のようなNi濃度及びFe濃度は、このような酸化被膜や汚れ等が存在しない状態で測定することが望まれる。かかる観点から、上記のNi濃度及びFe濃度は、止端、止端近傍領域及び溶接部20の表面が観察できる視野において、表面から厚さ方向にArイオンエッチングにより酸素濃度が25質量%以下になるまで除去することで得られた面を、オージェ分光法により元素濃度測定した際の濃度とする。なお、Arイオンエッチングによる除去は、止端、止端近傍領域、溶接部20のそれぞれの表層が観測できるようになるまで実施すればよく、Arイオンエッチングで除去される範囲は、止端、止端近傍領域、溶接部20のそれぞれの表面から深さが1μm以内であることが好ましい。
また、オージェ分光法による元素濃度測定の測定条件は、例えば、加速電圧15kV、照射電流10nAとすればよい。より詳細には、オージェ分光法による元素濃度測定(金属元素のみでの測定)を、かかる測定条件にて、止端近傍領域や溶接部20の場合は観測面内の任意の5点、止端の場合は、観測面内における溶接部20とNiめっき鋼板10の交線上の任意の5点で実施する。得られる各5個のNi濃度及びFe濃度の測定値のうち、最大値及び最小値を除いた各3個の測定値の平均を、それぞれNi濃度及びFe濃度とする。
なお、上記のような表層濃度は、以下で詳述するような溶接方法により溶接を行うことで、はじめて実現される。詳細な溶接方法については、以下で改めて説明する。
<円相当径が10μm以上のピンホールの平均個数について>
先だって言及したように、めっきままのNiめっき鋼板を溶接した場合には、止端付近において、めっき共析物であるHが気化して、ピンホールが形成されてしまい、耐食性を劣化させる原因となることを見出した。更に、Niめっきとしてめっき層にS、Cを含むNiめっきを適用した場合には、溶接によって共析したS、Cも気化してしまい、更にピンホールが形成されやすくなることを見出した。特に、円相当径が10μm以上のピンホールは、赤錆発生の起点となるため、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、少ない方が好ましい。
上記のようなピンホールの発生を抑制するために、本発明者らは、Niめっき層103におけるS、Cの合計濃度を20ppm以下に制限するとともに、溶接に供されるに先立ってNiめっき鋼板10に対して焼鈍処理を施すことに想到した。これにより、気化しうるS、Cの存在を無くすことが可能となり、また、めっき共析物であるHについても、焼鈍処理の際に気化させることが可能となる。また、焼鈍処理の際にHが気化して形成されたピンホールは、焼鈍処理のための加熱環境下で修復される。このような処理により、本実施形態に係る溶接部材1では、溶接の結果生成しうる円相当径が10μm以上のピンホールの平均個数が、極めて少ない状態となっている。かかる観点からも、本実施形態に係る溶接部材1は、優れた耐食性を有している。
具体的には、図3に模式的に示したように、Niめっき層103の表面において、非溶接部側に止端からの距離が1mmまでの領域のうち、延伸方向に沿った長さ10cmの領域を、矩形領域Rとする。このような矩形領域Rは、本実施形態に係る溶接部材1において、複数想定することができる。本実施形態に係る溶接部材1では、任意の隣接する5箇所の矩形領域Rに存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの平均個数が、3個以下となっている。これにより、本実施形態に係る溶接部材1は、溶接部20の近傍であっても、優れた耐食性を有していることがわかる。
なお、上記のような円相当径が10μm以上のピンホールの平均個数は、SEMによる観察を行うことで、計測することができる。上記の5箇所で観察を行い、各矩形領域Rにおいて、円相当径が10μm以上のピンホールの個数を計測する。得られる各5個の計測値のうち、最大値及び最小値を除いた各3個の計測値の平均を、ピンホールの平均個数とする。
以上、図1~図3を参照しながら、本実施形態に係る溶接部材1について、詳細に説明した。
(溶接部材の製造方法の一例について)
続いて、本実施形態に係る溶接部材の製造方法について、一例を挙げながら説明する。
本実施形態に係る溶接部材は、Fe-Ni拡散合金層を有するNiめっき鋼板を製造した後に、かかるNiめっき鋼板を、Ni溶接ワイヤーを利用して溶接することで製造される。Fe-Ni拡散合金層を有するNiめっき鋼板を、Ni溶接ワイヤーを利用して溶融接合することは、従来行われていなかった。また、単にFe-Ni拡散合金層を有するNiめっき鋼板をNi溶接ワイヤーにより溶接しただけでは、本実施形態に係る溶接部材を得ることはできず、Fe-Ni拡散合金層の厚みを所望の状態とした上で、溶接時の入熱量を制御することが重要となる。
<Niめっき鋼板の製造方法の一例>
Niめっき鋼板は、所定のNiめっき浴を用い、基材となる鋼板の表面に所定の付着量となるようにNiめっきを施し、その後、焼鈍処理を行うことで製造される。
ここで、Niめっき浴としては、S、Cの合計濃度が20ppm未満となるように調整された各種のNiめっき浴を用いることができる。このようなNiめっき浴として、例えば、Watts浴、硫酸ニッケル浴、塩化ニッケル浴等を挙げることができる。めっき付着量が、金属換算量で15~100g/mとなるように、電気Niめっきを施す。ここで、めっき付着量は、電気めっきの際の電流密度や通電時間等を制御することで、調整することが可能である。
その後、得られたNiめっき鋼板に対して、焼鈍処理を施す。これにより、鋼板由来のFeと、Niめっき層由来のNiとが、相互に熱拡散して、Fe-Ni拡散合金層が形成されるとともに、めっき共析物であるHが気化する。その結果、Fe-Ni拡散合金層とNiめっき層とを有し、溶接に際しても円相当径が10μm以上のピンホールの発生が抑制されたNiめっき鋼板を得ることができる。
ここで、焼鈍処理では、例えば、600~850℃の保持温度を、5~60秒間保持することが好ましい。これにより、所望のFe-Ni拡散合金層がより確実に形成されるとともに、めっき共析物であるHをより確実に気化させることが可能となる。保持温度は、より好ましくは700~850℃であり、保持時間は、より好ましくは20~60秒である。
常温から保持温度までの昇温速度は、例えば、5~100℃/秒であることが好ましい。また、所望の保持時間が経過した後は、例えばNガス冷却で200℃までNiめっき鋼板を冷却し、その後、大気雰囲気に取り出すことが好ましい。
また、かかる焼鈍処理は、例えば2%H-N雰囲気、露点-60℃の環境下で実施することが好ましい。
<溶接方法の一例>
例えば以上のようにして製造された、Fe-Ni拡散合金層を有するNiめっき鋼板は、所望のNi濃度を有する、Niを90質量%以上含むNi合金又はNiを99質量%以上含む純Niの溶接ワイヤーを用いて、溶接される。ここで、溶接方法としては、レーザー溶接又はアーク溶接を用いることが可能である。本実施形態に係る溶接部材1では、Niめっき鋼板とNi板とが溶接された態様でも応用できるが、コスト削減の観点から、Niめっき鋼板同士が溶接された態様が好ましい。なお、溶接方法の一つに、スポット溶接があるが、少なくともNiめっき鋼板同士を溶接する方法としてスポット溶接を用いた場合、本実施形態で着目するような、Ni濃度が70質量%以上である溶接部を実現することはできない。レーザー溶接の場合は、ファイバーレーザー、ディスクレーザー、半導体レーザーが好ましい。また、アーク溶接の場合は、溶接時の入熱によるFeの拡散を所望の状態とするために、コールドメタルトランスファー(Cold Metal Transfer:CMT(登録商標))方式等の低入熱溶接処理を用いることが、より好ましい。また、シンクロフィード(登録商標)GMA溶接、及び、S-AWP(Super Active Wire Feed Process)溶接も好ましい。これらは、溶接機メーカにより名称が異なるもの、CMTと同等の溶接法である。
より詳細には、レーザー溶接の場合は、直径が0.6mm~1.6mmの溶接ワイヤーを用いて、溶接ワイヤー径の0.8~3.5倍の直径のレーザービーム径となるように、ビームを調整することが好ましい。この際、溶接速度に対して、0.6~4.0倍の速度でレーザー照射部に溶接ワイヤーを供給して、溶接を行うことが好ましい。また、レーザー溶接部の酸化を防止するために、アルゴン、ヘリウム、窒素、炭酸ガス、又は、これらガスの混合ガスを、シールドガスとして用いることが好ましく、アルゴンガスを用いることがより好ましい。また、シールドガスの流量は、10~70L/minで調整することが好ましい。レーザーの出力、速度は、溶接時の入熱によるFeの拡散を所望の状態とするために、適宜調整すればよい。例えば、レーザーの出力は0.8~12kW、溶接速度は0.5~15m/minの範囲で調整することが好ましい。
また、アーク溶接の場合は、直径が0.6~1.6mmの溶接ワイヤーを用いることが好ましい。溶接部の酸化を防止しつつアークを安定させるため、アルゴンガス、又は、アルゴンに3%以下の炭酸ガスもしくは酸素を加えたシールドガスを用いることが好ましい。ここで、シールドガスの流量は、10~50L/minで調整することが好ましい。アーク溶接の条件は、溶接時の入熱によるFeの拡散を所望の状態とするために、電流、溶接速度を調整することが好ましい。例えば、電流は60~250A、溶接速度は0.2~1.8m/minの範囲で調整することが好ましい。また、Niワイヤーを用いた、TIG溶接やプラズマ溶接でもよい。
本実施形態に係る溶接部材の製造方法では、Niめっき層及びFe-Ni合金拡散層の厚みを適切に制御しながら、Niワイヤーを用いて、入熱量を適切な値に制御して溶融溶接を行う。これにより、溶接部材における止端、止端近傍領域及び溶接部のそれぞれの表層におけるNi濃度を、適切な値(70質量%以上)とすることが可能となる。
以上のようにして、本実施形態に係る溶接部材が製造される。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る溶接部材について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る溶接部材の一例にすぎず、本発明に係る溶接部材が下記の例に限定されるものではない。
<Niめっき鋼板の製造>
本試験例では、基材となる鋼板として、B添加Al-killed鋼(板厚1mm)を準備した。Niめっきに用いるNiめっき浴としては、以下の表1に示した浴組成を有するWatts浴を準備した。また、比較用に、以下の表1に示したWatts浴に、炭素供給源としてのブチンジオール 0.2/Lと、硫黄供給源としてのサッカリンNa 2g/Lを添加した光沢めっき浴を準備した。また、電気めっきの際の電流密度は、20A/dmとし、通電時間を変更することで所望のめっき付着量を実現した。
Figure 0007381985000001
上記のようなめっき後に、2%H-N雰囲気、露点-60℃の条件下で、焼鈍処理を行った。かかる焼鈍処理では、常温から所定の保持温度まで、昇温速度25℃/秒で加熱して、保持温度を所定の時間保持した後、Nガス冷却で200℃まで冷却し、大気雰囲気に取り出した。保持温度及び保持時間は、以下の表6に示した通りである。
<溶接処理>
得られたNiめっき鋼板を150mm×50mmの大きさに切断し、溶接に用いた。溶接場の雰囲気は、10℃、20%RHとした。図4に模式的に示したような、100mm×200mm、厚さ20mmのCu製治具と、30mm×200mm、厚さ20mmで5mmの切り欠きのあるCu製治具を、ドライアイスで-20℃に冷却した上で、かかる治具にNiめっき鋼板を固定し、直径1.2mmのNiワイヤーを用いて、すみ肉溶接した。
溶接に用いたワイヤーの詳細は、以下の表2に示した通りである。また、溶接方法としては、レーザー溶接、2種類のアーク溶接の何れかを行った。各溶接の溶接条件は、以下の表3~表5に示した通りである。なお、以下の表5に示したアーク溶接の溶接条件は、電圧を高く設定することで、Niめっき鋼板への入熱量が過剰となるようにしたものである。
Figure 0007381985000002
Figure 0007381985000003
Figure 0007381985000004
Figure 0007381985000005
上述と同様に、止端、Niめっき鋼板における止端近傍領域(非溶接部側に、止端からからの距離が10μm以上、1mm以下の領域)、溶接部のそれぞれの表層におけるNi濃度及びFe濃度を、オージェ分光法により測定した。用いたオージェ分光装置は、JEOL社製JAMP-9500Fである。なお、かかる濃度測定では、止端、Niめっき鋼板及び溶接部の表面をArイオンエッチングにより酸素濃度が25質量%以下になるまで除去することで得られた面を、測定面とした。Arイオンエッチングによる除去量は、いずれもの試料においても、厚み方向に1μm以内であった。オージェ分光法による元素濃度測定(金属元素のみでの測定)を、加速電圧15kV、照射電流10nAの測定条件にて、観測面内の任意の5点(止端の場合は観測面内における溶接部とNiめっき鋼板との交線上の任意の5点)で実施した。得られる各5個のNi濃度及びFe濃度の測定値のうち、最大値及び最小値を除いた各3個の測定値の平均を、それぞれNi濃度及びFe濃度とした。
得られた溶接部材を、高速精密切断機を用いて、図2の止端から非溶接部側に5mmの位置を始点とし、非溶接部側に10mm四方の領域を厚さ方向に切断し、Ni付着量の測定用の試料とした。このようにして切り出した試料の片面をテフロンテープでシールした後、シールした側のNiめっき層及びFe-Ni拡散合金層が残るように裏側から研磨する。研磨後の試料を、基材が除去できるまで35%塩酸に浸漬し、サンプルを得る。得られたサンプルを、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ)発光分光測定法(例えば、島津製作所製ICPS-8100)により測定することで、Ni量を定量し、g/mでの付着量に換算し、Ni付着量を得た。
<解析>
得られた各溶接部材を、高速精密切断機を用いて、図2の止端から非溶接部側に5mmの位置で厚さ方向に切断した。詳細には、表面視において、止端から非溶接部側5mmの位置を始点とし、非溶接部側に10mm四方の領域を厚さ方向に切断した。これにより、断面観察用試料と表面観察用試料とを切り出し、解析に供した。解析には、SEM(JEOL社製JSM-7000F)を用い、反射電子を用いて断面と表面とを観察した。なお、加速電圧15.0kV、照射電流0.00564nA、エネルギー範囲0~20keVの条件でSEM-EDSによる断面分析を行った際に、金属元素のみで分析し、得られたNi濃度が70質量%以上である部位をNiめっき層、得られたNi濃度が30質量%以上70質量%未満の範囲内である部位をFe-Ni拡散合金層とした。Fe-Ni拡散合金層の厚みと、Niめっき層の厚みの測定は、当該断面内の任意の10箇所において実施した。得られた測定値のうち最大値及び最小値を除いた残りの8つの測定値の平均値を、それぞれ、Fe-Ni拡散合金層及びNiめっき層の厚みとし、その合計を合計厚みとした。
[解析1 Niめっき層のC、S濃度の確認]
Niめっき層の確認で用いたSEM-EDS分析における元素濃度の検出限界は、1500~2000ppmであることから、Niめっき鋼板のS、Cの濃度分析は、埋め込み前の試料について、HORIBA社製の炭素・硫黄分析装置であるEMIA-920V2を用いて実施した。より詳細には、Niめっき鋼板の片面をテフロンテープでシールした後、シールした側のNiめっき層が残るように裏側から研磨した。研磨後の試料を、基材及びFe-Ni拡散合金層が除去できるまで35%塩酸に浸漬し、Ni箔を得た。シールをはがし、得られたNi箔を直径2~3mmにし、セラミックスるつぼに入れて酸素気流中で焼成させた。発生したCO、CO、SOガスを赤外線検出器により検出し、炭素と硫黄に換算した。かかる測定法による、各元素の検出下限は、それぞれ、C:3ppm、S:1ppmである。検出下限以下でOKとし、20ppm以上でNGとした。
[解析2 表面観察による止端のピンホール数の確認]
表面観察用の試料としては、断面観察用試料の最短距離に位置する部分を50cmの長さで切り出したものを用いた。切り出した部位を、10cm単位で切断し、図3に模式的に示したような矩形領域Rの試料を、5個準備した。得られた各試料をアセトン中で60秒超音波洗浄し、観察に供した。止端1mm幅×10cmの範囲(図3に示したような矩形領域R)を、SEMで観察した。各試料について、円相当径10μm以上のピンホールの有無を観察して、先だって説明した方法に即して、平均個数を算出した。得られた平均個数が3個以下であった場合をOKとし、4を超える個数であった場合をNGとした。
<溶接部材の評価>
[評価1 耐食性]
耐食性評価用の試料は、表面観察後の表面観察用試料を用いた。5個の試料のそれぞれについて、アセトン脱脂後、端面と裏面とを塗装シールして、溶接部を35℃、5%-塩水噴霧試験3時間で評価した。各試料について、止端を観察し、1mm幅×10cmの範囲あたりの赤錆の発生個数を計測した。得られた5個の計測値のうち、最大値及び最小値を除いた3個の計測値の平均を算出して、赤錆発生の頻度とした。赤錆発生の頻度が3個以下であった場合を可、2個以下であった場合を良、1個以下であった場合を優とし、4個を超える個数であった場合を不可とした。
[評価2 応力下でのめっき密着性評価]
腐食に起因するめっきの剥離について評価するために、応力下でのめっき密着性の評価を行った。応力下でのめっき密着性評価用の試料は、耐食性評価用試料に隣接した部分を用いた。応力を加えるために、90°で溶接した試料を95°に広げ、アセトン脱脂、端面と裏面とを塗装シールして、作製した。溶接部を35℃、5%-塩水噴霧試験3時間で評価した。止端から1mmの範囲を観察し、めっき剥離が認められないものをOKとし、めっき剥離があるものをNGとした。
得られた結果を、以下の表6にまとめて示した。
以下の表6から明らかなように、本発明の実施例に対応する溶接部材は、優れた耐食性を示していることがわかる。一方、本発明の比較例に対応する溶接部材は、耐食性に劣ることが明らかとなった。
Figure 0007381985000006
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 溶接部材
10 Niめっき鋼板
20 溶接部
101 鋼板
103 Niめっき層
105 Fe-Ni拡散合金層

Claims (9)

  1. Niめっき鋼板と他の鋼板とが溶接部を介して接続された溶接部材であって、
    前記Niめっき鋼板は、基材である鋼板と、当該鋼板上に位置するNiめっき層と、前記鋼板と前記Niめっき層との間に位置するFe-Ni拡散合金層と、を有し、
    JIS Z3001(2018)で規定される止端、前記Niめっき鋼板のうち、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が10μm以上1mm以下の領域である止端近傍領域、及び、前記溶接部のそれぞれの表層において、Ni濃度は70質量%以上であり、かつ、Fe濃度は30質量%以下であり、
    前記Niめっき鋼板において、溶接が施されていない部位を非溶接部としたときに、
    前記非溶接部において、前記Fe-Ni拡散合金層の厚みは、0.5~1.5μmであり、かつ、前記Niめっき層と前記Fe-Ni拡散合金層との合計厚みは、2.7~14.0μmであり、
    前記非溶接部における前記Niめっき層では、S、Cの合計濃度は、20ppm未満である、溶接部材。
  2. 前記止端、前記止端近傍領域及び前記溶接部のそれぞれの表層における前記Ni濃度及び前記Fe濃度は、前記止端、前記Niめっき鋼板及び前記溶接部の表面をArイオンエッチングにより酸素濃度が25%質量以下になるまで除去することで得られた面を、オージェ分光法により元素濃度測定した際の濃度である、請求項1に記載の溶接部材。
  3. 前記止端、前記止端近傍領域及び前記溶接部のそれぞれの表層における前記Ni濃度は、90質量%以上であり、かつ、前記Fe濃度は、10質量%以下である、請求項1又は2に記載の溶接部材。
  4. 前記Niめっき鋼板のNi付着量は、金属換算で、20~100g/mである、請求項1又は2に記載の溶接部材。
  5. 前記Niめっき鋼板のNi付着量は、金属換算で、20~100g/m である、請求項3に記載の溶接部材。
  6. 前記Niめっき層の表面において、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が1mmまでの領域のうち、前記止端の延伸方向に沿った長さ10cmの領域である矩形領域に存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、3個以下である、請求項1又は2に記載の溶接部材。
  7. 前記Niめっき層の表面において、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が1mmまでの領域のうち、前記止端の延伸方向に沿った長さ10cmの領域である矩形領域に存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、3個以下である、請求項3に記載の溶接部材。
  8. 前記Niめっき層の表面において、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が1mmまでの領域のうち、前記止端の延伸方向に沿った長さ10cmの領域である矩形領域に存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、3個以下である、請求項4に記載の溶接部材。
  9. 前記Niめっき層の表面において、前記溶接部から離れる方向に前記止端からの距離が1mmまでの領域のうち、前記止端の延伸方向に沿った長さ10cmの領域である矩形領域に存在する、円相当径が10μm以上のピンホールの個数は、3個以下である、請求項5に記載の溶接部材。
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