JP7381880B2 - Hipeフォーム - Google Patents

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Description

本発明は、切削加工品の形成に用いられるHIPEフォームに関する。
従来、水等の水性液体からなる水相を、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等を含む有機相中に高比率で内包させた油中水型の高内相エマルション(つまり、HIPE)を形成し、該エマルション中で有機相を重合することにより、HIPEフォーム(HIPE foam)等と呼ばれる多孔質重合体を得る方法が知られている。この多孔質重合体は、重合時における、高内相エマルションでの有機相と水相との分散形態や水相の分散形状が反映された重合体となり、重合体中に多数の気泡が均質に存在する気泡構造を有すると共に、気泡間を連通する多数の細孔が形成された連続気泡構造を有するものとなる。そのため、HIPEフォームは、吸収材、分離材等の用途への応用が期待されている。
特許文献1には、密度、ガラス転移温度、靱性指数が調整されたHIPEフォームが提案されている。特許文献1によれば、このようなHIPEフォームは、靱性に優れ、例えばふきとり用品等の物品に好適であるとされる。また、特許文献2には、所謂HIPE法により得られ、所定の気泡構造を有する有機多孔体(つまり、HIPEフォーム)が提案されている。特許文献2によれば、このようなHIPEフォームは、物理的強度が高く、吸着量や吸着速度に優れた吸着剤、膨潤や収縮に対する耐久性に優れたイオン交換体、分離能に優れたクロマトグラフィー用充填剤として用いられるとされる。
特表2003-514052号公報 特開2003-246809号公報
しかしながら、切削加工により切削加工品を形成するための切削加工材料として使用する場合において、特許文献2の技術では、HIPEフォームの靭性が不足し、切削加工時に割れや欠けが発生するおそれがあり、特許文献1の技術では、HIPEフォームの剛性が不足し、切削面が平滑とならないおそれがあった。そのため、従来の技術では、靭性と剛性とを両立したHIPEフォームを得ることはできず、切削加工により切削加工品を形成するための切削加工材料として好適なHIPEフォームを得ることはできなかった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、切削面の平滑性に優れると共に、切削加工時に割れや欠けが発生しにくい、切削加工性に優れたHIPEフォームを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分を含むビニル系架橋重合体から構成されており、切削加工により切削加工品を形成するために用いられるHIPEフォームであって、
見掛け密度ρが50~500kg/m3であり、
上記見掛け密度ρに対するシャルピー衝撃強度Sの値S/ρが4.5J・m/kg以上であり、
上記HIPEフォームに対して、周波数:1Hz、荷重:98mN、変形モード:圧縮という条件の動的粘弾性測定を行うことにより測定される、23℃での貯蔵弾性率E’と、上記見掛け密度ρとが下記式(I)の関係を満足し、
上記動的粘弾性測定を行うことにより測定される架橋点間分子量Mcが2×104以下であり、
上記HIPEフォームのガラス転移温度が50℃以上である、HIPEフォームにある。
E’/ρ≧50kN・m/kg ・・・(I)
上記HIPEフォームでは、見掛け密度ρ、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、架橋点間分子量Mcが上記範囲にあり、E’/ρが式(I)の関係を満足する。そのため、HIPEフォームは、切削面の平滑性に優れると共に、切削加工時に割れや欠けが発生しにくく、切削加工性に優れる。
図1は、実施例のHIPEフォームの低真空走査電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。 図2は、実施例のHIPEフォームの動的粘弾性測定(つまりDMA)により得られるDMAカーブである。
次に、HIPEフォームの好ましい実施形態について説明する。本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、下限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以上であることを意味し、上限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以下であることを意味する。
[HIPEフォーム]
HIPEフォーム(HIPE foam)は、一般に、ポリHIPEフォーム(PolyHIPE foam)、ポリHIPE材料、高内相エマルション多孔体、高内相エマルション発泡体等とも呼ばれる多孔質重合体であり、例えば、水相を有機相中に高比率で内包させた、油中水型の高内相エマルション中で単量体を重合することにより得られるものである。高内相エマルション(High Internal Phase Emulsion)は通称ハイプ(HIPE)と呼ばれる。HIPEフォームは、より具体的には、多孔質ビニル系架橋重合体であり、例えば、水相を有機相中に高比率で内包させた、油中水型の高内相エマルション中で、架橋剤の存在下でビニル系単量体を重合することにより得られる多孔質ビニル系架橋重合体である。また、HIPEフォームは、高内相エマルションを硬化してなる多孔質の硬化物であり、その気泡壁がビニル系架橋重合体から構成されているともいえる。気泡は気孔ということもできる。
HIPEフォームは、重合時における、高内相エマルションでの有機相と水相との分散形態や水相(つまり、分散相)の分散形状が反映された重合体(具体的には、多孔質の架橋重合体)となる。図1に例示されるように、HIPEフォーム1は、これを構成する多孔質の架橋重合体11中に多数の気泡13が均質に存在する気泡構造を有すると共に、気泡間を連通する多数の細孔14が形成された連続気泡構造を有する。なお、図1において、気泡13は、気泡壁12により囲まれた部分である。細孔14のことを、ミクロポア、貫通窓、貫通穴、連結孔ということもできる。
HIPEフォームは、架橋重合体により構成された構造体となるため、荷重や、ずりせん断(具体的には、せん断応力、ずり応力)に対する耐性が低くなりやすく、比較的脆い重合体となる。また、HIPEフォームは、製造過程において重合体が延伸されにくいものであるため、一般的に、分子配向を生じにくいと共に、異方性の少ない重合体となる。HIPEフォームは、押出機を用いた押出発泡法により得られる発泡体や、発泡性樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子を型内成形することにより得られる発泡粒子成形体等のように、製造時に延伸されて製造される発泡体とは区別されるものである。
HIPEフォームの気泡および細孔のサイズは特に限定されないが、例えば、気泡径は概ね5~100μm、細孔径は概ね1~30μmである。なお、細孔は気泡壁に生じる、気泡間を連通する貫通穴であることから、通常、細孔径は気泡径より小さくなる。
HIPEフォームは、剛性が高いと共に、靭性にも優れ、剛性と靭性とのバランスが良好であり、切削加工性に優れる。そのため、切削加工品は、後述の鋳造用の木型に特に好適である。
HIPEフォームの気泡径は、後述の製造方法において、高内相エマルションの水相(つまり分散相)の水滴径を調整することにより制御でき、気泡径を微細にすることができる。HIPEフォームでは、平均気泡径を容易に100μm以下に調整できる。なお、HIPEフォームの平均気泡径は、気泡の直径の平均値であり、その測定方法は、実施例にて説明する。
[用途]
HIPEフォームは、切削加工により、切削加工品を製造するために用いられる。HIPEフォームは、ビニル系架橋重合体から構成されており、多孔質であるため、切削加工により軽量な切削加工品を得ることができる。以降の説明では、ビニル系架橋重合体のことを、適宜「架橋重合体」という。
切削加工品は、例えば模型である。模型としては、建築物等の建築模型、機械装置等の機械模型、車や列車等の車両模型、鋳造木型と呼ばれる鋳造用の砂型を作製するための鋳造用模型、美術品や展示品等の美術模型、プレ製品模型等、各種模型が挙げられる。なお、このような模型材料は、被切削体(つまり、切削加工材料)に切削加工を施すことにより製造される。そのため、切削加工材料には、速い切削加工速度で切削加工できること、切削面の平滑性に優れること、切削加工時に割れや欠けが発生しないこと、寸法が経時によって変化しにくいこと等が要求される。切削加工としては、NC切削機等による加工、バンドソーによる加工、カッターによる加工等が挙げられる。
鋳造用模型は、例えば、砂型の形成に用いられる模型である。このような模型のことを、適宜「木型」という。この場合、砂型の形成にあたっては、まず、切削加工により、架橋重合体から切削加工品として鋳造用模型を製造する。この鋳造用模型を砂型形成用材料である珪砂、フラン樹脂、バインダー等の混合物に埋没させ、炭酸ガス放射または空気接触によりフラン樹脂混合物を硬化させる。硬化後、硬化したフラン樹脂混合物から木型を離型することにより、鋳型として用いられる砂型が得られる。砂型内に溶融金属等の溶湯を注湯し冷却することにより、鋳物を得ることができる。珪砂の主粒分の粒径は、一般に、75μm~850μmである。木型表面の転写性を高めるためには、木型に接触する箇所の珪砂の粒分は、小さいことが好ましい。珪砂の粒度区分(号数)は、JIS G 5901:2016に準拠して測定され、この時の粒度分布において、最も重量比が高い篩の目開きが主粒分である。
HIPEフォームは、鋳造用模型に用いられることが好ましく、切削加工品が鋳造用模型であることが好ましい。この場合には、鋳物の鋳肌表面を滑らかにすることができる。これは、HIPEフォームを構成する架橋重合体が、切削面の平滑性に優れるためである。
[見掛け密度ρ]
HIPEフォームの見掛け密度ρが低すぎる場合には、HIPEフォームが脆くなりすぎる。そのため、切削加工時に欠けや割れが発生するおそれがある。切削加工での欠けや割れを防止するという観点から、HIPEフォームの見掛け密度ρは、50kg/m3以上であり、70kg/m3以上であることが好ましく、90kg/m3以上であることがより好ましい。一方、HIPEフォームの見掛け密度が高すぎる場合には、HIPEフォームが硬くなりすぎて、切削加工時の加工速度が低下し、切削加工品の生産性が低下する。加工速度を向上させるという観点から、HIPEフォームの見掛け密度ρは、500kg/m3以下であり、400kg/m3以下であることが好ましく、300kg/m3以下であることがより好ましい。なお、水相を有機相中に高比率で内包させた高内相エマルションを硬化することにより得られるHIPEフォームは、通常、その見掛け密度が500kg/m3以下となる。
HIPEフォームの見掛け密度ρは、重量を体積にて除することにより算出される。
HIPEフォームの見掛け密度ρは、後述のHIPEフォームの製造方法において、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、及び重合開始剤の総量と、水相(具体的には、水性液体)の量との比率等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[シャルピー衝撃強度]
シャルピー衝撃強度Sは、HIPEフォームの靭性の指標となる。見掛け密度ρに対するシャルピー衝撃強度Sの値S/ρが低すぎる場合には、HIPEフォームが脆くなり、切削加工時に欠けや割れが発生するおそれがある。切削加工での欠けや割れを防止するという観点から、S/ρは、4.5J・m/kg以上であり、5.0J・m/kg以上であることが好ましく、5.5J・m/kg以上であることがより好ましい。また、HIPEフォームの剛性を高め、HIPEフォームの加工精度をより向上させることができることや、切削加工により得られる切削加工品の形状を維持しやすくなることから、S/ρは、20J・m/kg以下であることが好ましい。なお、HIPEフォームのシャルピー衝撃強度の大きさは、見掛け密度に対する依存度が高い。一方で、HIPEフォームの見掛け密度は、その用途や目的により、所定の範囲内で調整されるものであるため、見掛け密度ρに対するシャルピー衝撃強度Sの値S/ρを上記範囲とすることにより、HIPEフォームは、所定の見掛け密度の範囲内において、切削性に優れたものとなる。
シャルピー衝撃強度は、JIS K7111:2006に記載の方法に基づいて、測定温度23℃、ノッチなしの条件で測定される。
HIPEフォームの見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρは、後述のHIPEフォームの製造方法において、所定の架橋剤を所定量配合すること等により高めることができ、後述の単量体の種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[23℃での貯蔵弾性率E’]
23℃での貯蔵弾性率E’は、HIPEフォームの硬さの指標となり、HIPEフォームの23℃での貯蔵弾性率E’と見掛け密度ρとが式Iの関係を満足する。つまり、見掛け密度ρに対する、HIPEフォームの23℃での貯蔵弾性率E’の値E’/ρが50kN・m/kg以上である。
E’/ρ≧50kN・m/kg ・・・(I)
E’/ρが低すぎる場合には、HIPEフォームが柔らかくなりすぎて切削加工性が低下し、切削面の平滑性が低下する。また、HIPEフォームが変形し易くなり、切削加工品を鋳造用模型として使用する場合に、鋳物の寸法精度が低下するおそれがある。これは、例えば砂型形成時に、鋳造用模型が変形するためである。平滑性に優れた切削面を形成するという観点、鋳物の寸法精度を高めるという観点から、見掛け密度ρに対する23℃での貯蔵弾性率E’は、50kN・m/kg以上であり、100kN・m/kg以上であることが好ましく、150kN・m/kg以上であることがより好ましい。また、HIPEフォームの加工速度を高めることや、加工時の欠けや割れの発生をより抑制できることから、E’/ρは、250kN・m/kg以下であることが好ましい。
HIPEフォームの貯蔵弾性率E’は、HIPEフォームに対して、周波数:1Hz、荷重:98mN、変形モード:圧縮という条件の動的粘弾性測定を行うことにより測定される。なお、測定条件について、周波数は測定試料を変形させる周期を調節するためのパラメータであり、また、荷重は測定試料に印加する力である。上記測定条件とすることにより、HIPEフォームに対して与えようとする変形とその応答とにズレが発生することを抑制できると共に、HIPEフォームに塑性変形が生じることなく、初期状態まで復元することができるので、HIPEフォームの貯蔵弾性率E’を適切に評価することができる。
なお、HIPEフォームの貯蔵弾性率E’の大きさは、見掛け密度ρに対する依存度が高い。一方で、HIPEフォームの見掛け密度ρは、その用途や目的により、所定の範囲内で調整されるものであるため、見掛け密度ρに対する貯蔵弾性率E’の値E’/ρを上記範囲とすることにより、HIPEフォームは、所定の見掛け密度の範囲内において、切削性に優れたものとなる。
HIPEフォームの見掛け密度ρに対する貯蔵弾性率E’は、後述のHIPEフォームの製造方法において、得られる重合体の貯蔵弾性率を高める単量体を配合すること等により高めることができ、後述の単量体の種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[架橋点間分子量Mc]
架橋点間分子量Mcは、HIPEフォームの架橋度の指標となる。HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcが大きすぎる(つまり、架橋密度が低すぎる)場合には、切削加工時のHIPEフォームにおけるミクロ領域における樹脂の流動性が高いために、樹脂がミル等の加工刃にむしり取られやすくなり、切削面の平滑性が低下する。平滑性に優れた切削面を形成するという観点から、架橋点間分子量Mcは、2×104以下であり、1×104以下であることが好ましく、5×103以下であることがより好ましい。また、靭性の低下を抑制して切削加工時の欠けや割れをより抑制することができる観点から、架橋点間分子量Mcは、2×103以上であることが好ましい。
HIPEフォームの架橋点間分子量Mcは、次のようにして測定される。HIPEフォームに対して、周波数:1Hz、荷重:98mN、変形モード:圧縮という条件の動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)を行う。この時、温度上昇とともに、HIPEフォームを構成する架橋重合体がガラス状態からゴム状態へと転移するため、横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率E’をプロットして得られるDMAカーブにおいて、貯蔵弾性率E’はガラス転移温度Tgを境にして急低下する(図2参照)。その後、DMAカーブはプラトー領域(ゴム状平坦部)を示す。このプラトー領域においてE’は温度に比例するため、以下の式(II)から架橋点間分子量Mcを計算することができる。
Mc=2(1+μ)ρRT/E’ ・・・(II)
式(II)において、μはポアソン比であり、μ=0.5である。ρはHIPEフォームの見かけ密度kg/m3、Rは気体定数:8.314J/K/molである。TとE’は、それぞれ、ゴム状平坦部における任意の点における温度(単位:K)と貯蔵弾性率である。なお、TとE’はゴム状平坦部で測定される数値である。架橋点間分子量Mcを適切に算出できる観点から、上記E’は、Tg+50℃~Tg+80℃の温度域(但し、Tgは、HIPEフォームのガラス転移温度である)で測定することが好ましい。なお、ポアソン比とは材料固有の値であり、物体に応力を印加した際の、垂直方向に生じるひずみを平行方向に生じるひずみで除し、これに-1を乗じた値である。理論上、ポアソン比は-1から0.5の範囲の値をとり、これが負の値である場合、縦方向に潰すと、横方向にも潰れることを意味する。逆に、正の値である場合は、縦方向に潰すと横方向に伸びることを意味する。上記動的粘弾性分析の測定条件では、HIPEフォームを構成する架橋重合体に生じる歪は極微小であり、体積変化が起こらないと見なすことができるため、体積一定の条件、すなわちポアソン比を0.5として、貯蔵弾性率E’、架橋点間分子量Mcを算出する。
HIPEフォームの架橋点間分子量Mcは、後述のHIPEフォームの製造方法において、架橋剤を配合することにより小さくすることができ、後述の架橋剤の種類およびその配合割合、単量体の種類およびその配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[平均気泡径]
HIPEフォームの平均気泡径は、100μm以下であることが好ましい。この場合には、HIPEフォームの切削加工品が、砂型を使用する鋳造のための模型(つまり、鋳造用模型)としてより好適になる。これは、切削加工品を構成するHIPEフォームの気泡に珪砂などの鋳物砂が入り込むことを抑制できるからである。つまり、鋳造用模型が鋳物砂を噛み込むことを防ぐことができるからである。また、鋳造用模型の表面にコーティング処理を施さなくとも、鋳物砂の噛み込みを抑制することができるため、製造コストの抑制や製造工程の簡略化が可能になる。
なお、従来用いられている切削加工材料の代表例として、硬質ポリウレタンフォームが挙げられる。切削加工速度を高める観点から、通常、比較的見掛け密度の低い硬質ポリウレタンフォームが用いられるが、このような硬質ポリウレタンフォームの平均気泡径は、150~300μm程度であるため、珪砂などの砂が硬質ポリウレタンフォームの気泡内に入り込みやすい。これにより、硬質ポリウレタンフォームから構成された鋳造用模型を砂型に埋設すると、硬質ポリウレタンフォームの気泡に砂が入り込むことで砂噛みが生じ、鋳造用模型の離型が困難になる場合がある。そのため、一般的に、硬質ポリウレタンフォームの鋳造用模型の表面には、砂噛みを防止するためのコーティング層が形成される。
また、硬質ポリウレタンフォームにおいては、平均気泡径を小さくしようとすると、発泡倍率を低く(すなわち密度を高く)する必要がある。この場合には、硬質ポリウレタンフォームの硬度が高くなることで、切削加工速度が低下し、生産性が悪化するおそれがあった。そのため、硬質ポリウレタンフォームにおいては、砂噛みを抑制しつつ、切削加工速度を高めることが困難である。
鋳造用模型の離型がより容易になるという観点、コーティング層の形成が不要になるという観点から、HIPEフォームの平均気泡径は、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。また、製造工程における脱水・乾燥工程の所要時間を短縮しやすくなり、生産性を向上させることができることから、HIPEフォームの平均気泡径は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。
HIPEフォームの平均気泡径は、画像解析により測定される。その測定方法は、実施例において説明する。
HIPEフォームの平均気泡径は、後述の製造方法において、乳化工程での撹拌速度、撹拌時間、乳化剤の種類、その添加量、乳化液の粘度等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[ガラス転移温度]
HIPEフォームのガラス転移温度は、40~120℃であることが好ましい。この場合には、切削加工性に優れるHIPEフォームを安定して得ることができる。切削加工時の環境温度において十分な硬度を確保するため、また高温環境における切削加工品の寸法変化を防止するため、HIPEフォームのガラス転移温度は、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、HIPEフォームの靭性の低下をより抑制し、切削加工時の欠けや割れの発生をより抑制できることから、HIPEフォームのガラス転移温度は、100℃以下であることが好ましい。
HIPEフォームのガラス転移温度は、JIS K7121:1987に基づいた示差走査熱量(DSC)分析にて測定される。ガラス転移温度はDSC曲線の中間点ガラス転移温度のことである。試験片の状態調節として「(3)一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用する。
HIPEフォームのガラス転移温度は、後述のHIPEフォームの製造方法において、ビニル系単量体の種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[構成成分]
HIPEフォームを構成する架橋重合体は、具体的には、単官能のビニル系単量体と架橋剤との重合体であり、単官能のビニル系単量体に由来する成分を有する。本明細書において、ビニル系単量体は、スチレン系単量体、アクリル系単量体等である。ビニル系単量体としては、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を用いることができる。
架橋重合体は、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を含むビニル系単量体と、架橋剤との重合体から構成されていることが好ましい。つまり、架橋重合体は、スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分を有することが好ましい。この場合には、HIPEフォームの靱性及び剛性のバランスがより良好になる。スチレン系単量体成分は、架橋重合体におけるスチレン系単量体に由来する構成単位を意味し、アクリル系単量体成分は、架橋重合体におけるアクリル系単量体に由来する構成単位を意味する。架橋重合体における、スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分の含有割合は50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのスチレン化合物が挙げられる。アクリル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。また、アクリル系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル等も挙げられる。
架橋重合体は、スチレン及び/又はメタクリル酸メチルと、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むビニル系単量体と、架橋剤との共重合体から構成されていることが好ましい。この場合には、所望の物性を有する架橋重合体から構成されたHIPEフォームが得られやすい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルであることが好ましい。
ビニル系単量体が、スチレン及び/又はメタクリル酸メチルを含む場合、ビニル系単量体における、スチレン及び/又はメタクリル酸メチルの含有割合は、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。また、スチレン及び/又はメタクリル酸メチルと、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの重量比は、40:60~90:10であることが好ましく、50:50~80:20であることがより好ましい。この場合には、製造コストの削減や、所望の物性に調整しやすくなるという効果が得られる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
また、物性に優れると共に、所望のガラス転移温度を有するHIPEフォームを安定して得ることができるという観点から、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~18であることがより好ましく、3~16であることがさらに好ましく、4~12であることがさらにより好ましい。これらの中でも、アクリル酸ブチルを用いることが特に好ましい。
架橋重合体は、架橋構造を有しており、架橋剤成分を含有する。架橋剤成分は、架橋重合体における架橋剤に由来する構成単位のことである。架橋剤としては、例えば、ビニル基及びイソプロペニル基から選択される官能基を分子内に少なくとも2つ有するビニル系化合物が用いられる。架橋重合体が架橋剤成分を所定量含有することにより、架橋重合体のシャルピー衝撃強度の値を高めることや、架橋重合体の架橋点間分子量の値を小さくすることができる。なお、上記ビニル系化合物には、アクリロイル基やメタクリロイル基のように、官能基の構造中にビニル基及び/又はイソプロペニル基を含む化合物も含まれる。架橋剤を安定して重合させる観点から、ビニル系化合物における、官能基の数は、6個以下であることが好ましく、5個以下であることが好ましく、4個以下であることがさらに好ましい。また、架橋重合体の切削加工性をより高めやすくする観点から、架橋剤は、分子の少なくとも両末端に官能基を有することが好ましく、分子の両末端のみに官能基を有することがより好ましい。
架橋重合体は、例えば1種類の架橋剤を用いて作製された、1種類の架橋剤成分を含有するものであってもよいが、架橋重合体の靭性を高めつつ、架橋重合体の剛性を高めやすいことから、比較的分子鎖が短いハード系架橋剤に由来するハード系架橋剤成分と、比較的分子鎖が長いソフト系架橋剤に由来するソフト系架橋剤成分とを含有することが好ましい。この場合には、HIPEフォームの架橋点間分子量Mc、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、見掛け密度に対する23℃での貯蔵弾性率の値E’/ρを上記範囲に調整し易くなる。なお、ハード系架橋剤のことを第1架橋剤といい、ソフト系架橋剤のことを第2架橋剤ということもできる。
ハード系架橋剤(つまり、第1架橋剤)は、官能基当量が130g/mol以下であるビニル系化合物であることが好ましい。このようなハード系架橋剤は、比較的分子鎖が短いものであるため、ビニル系単量体と共重合されることにより、ポリマー分子鎖の可動性を低下させるものと考えられる。ハード系架橋剤を用いることで、HIPEフォームの剛性を高めやすくなる。なお、HIPEフォームを製造しやすくする観点から、ハード系架橋剤の官能基当量の下限は、概ね30g/molであることが好ましく、40g/molであることがより好ましく、50g/molであることがさらに好ましく、60g/molであることがさらにより好ましい。また、ハード系架橋剤の官能基当量の上限は120g/molであることが好ましい。なお、ハード系架橋剤の官能基当量は、官能基1個当たりのハード系架橋剤のモル質量を意味する。
ソフト系架橋剤(つまり、第2架橋剤)は、官能基当量が130g/molを超え、5000g/mol以下であるビニル系化合物であることが好ましい。このようなソフト系架橋剤は、比較的分子鎖が長いものであるため、ビニル系単量体と共重合されることにより、ポリマー分子鎖の可動性を大きく低下させることなく、ポリマー分子鎖間を架橋できるものと考えられる。ソフト系架橋剤を用いることで、HIPEフォームの靭性を高めやすい。なお、取り扱い性の観点から、ソフト系架橋剤の官能基当量の上限は、3000g/molであることが好ましく、2000g/molであることがより好ましく、1000g/molであることがさらに好ましい。また、ソフト系架橋剤の官能基当量の下限は150g/molであることが好ましく、180g/molであることがより好ましく、200g/molであることがさらに好ましい。なお、ソフト系架橋剤の官能基当量は、官能基1個当たりのソフト系架橋剤のモル質量を意味する。
上記効果がより向上するという観点、具体的には、HIPEフォームの靱性及び剛性をより高め易くなるという観点から、ソフト系架橋剤の官能基当量は、ハード系架橋剤の官能基当量よりも、60g/mol以上大きいことが好ましく、80g/mol以上大きいことがより好ましく、100g/mol以上大きいことがさらに好ましく、120g/mol以上大きいことがさらにより好ましい。換言すれば、ソフト系架橋剤の官能基当量とハード系架橋剤の官能基当量との差が60g/mol以上である、80g/mol以上であることがより好ましく、100g/mol以上であることがさらに好ましく、120g/mol以上であることがさらにより好ましい。なお、2種類以上のハード系架橋剤を用いる場合、すべてのハード系架橋剤の官能基当量の重量平均値を算出し、この値をハード系架橋剤の官能基当量とする。同様に、2種類以上のソフト系架橋剤を用いる場合、すべてのソフト系架橋剤の官能基当量の重量平均値を算出し、この値をソフト系架橋剤の官能基当量とする。
ハード系架橋剤として用いられるビニル系化合物としては、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、ハード系架橋剤における官能基の数は2つ以上である。官能基は、ビニル基及び/又はイソプロペニル基であることが好ましい。ハード系架橋剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。つまり、架橋重合体を構成するハード系架橋剤成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。なお、HIPEフォームの剛性を調整し易くなるという観点から、ハード系架橋剤としては、ジビニルベンゼン及び/又はブタンジオールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
ソフト系架橋剤として用いられるビニル系化合物としては、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、両末端(メタ)アクリル変性シリコーン等が挙げられる。ただし、ソフト系架橋剤における官能基の数は2つ以上である。官能基は、ビニル基及び/又はイソプロペニル基であることが好ましい。ソフト系架橋剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。つまり、架橋重合体を構成するソフト系架橋剤成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。なお、HIPEフォームの靭性を調整し易くなるという観点から、ソフト系架橋剤としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。この場合、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおけるエチレングリコール由来の繰り返し構造単位の数は、3~23であることが好ましい。
代表的な架橋剤の分子量、官能基1つ当たりの分子量(つまり、官能基当量)を表1に示す。
Figure 0007381880000001
架橋重合体が、少なくとも、スチレン系単量体と、メタクリル酸メチル以外のアクリル酸アルキルエステルと、架橋剤との共重合体から構成される場合、HIPEフォームの架橋点間分子量Mc、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、見掛け密度に対する23℃での貯蔵弾性率の値E’/ρを上記範囲に調整し易くなる観点、HIPEフォームの靱性と剛性とのバランスがより良好になるという観点から、架橋重合体におけるスチレン系単量体成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、30重量部以上、90重量部以下であることが好ましく、40重量部以上、80重量部以下であることがより好ましく、50重量部以上、70重量部以下であることがさらに好ましい。同様の観点から、架橋重合体におけるメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、5重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、10重量部以上、40重量部以下であることがより好ましく、15重量部以上、30重量部以下であることがさらに好ましい。また、スチレン系単量体として、スチレンを用いることが好ましく、スチレン系単量体中のスチレンの含有割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
また、架橋重合体が、少なくとも、メタクリル酸メチルと、スチレンと、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤との共重合体から構成される場合、架橋重合体におけるメタクリル酸メチル成分とスチレン成分との合計の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、30重量部以上、80重量部以下であることが好ましく、40重量部以上、70重量部以下であることがより好ましい。また、この場合、架橋重合体におけるメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、5重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、10重量部以上、40重量部以下であることがより好ましく、15重量部以上、30重量部以下であることがさらに好ましい。さらに、この場合、メタクリル酸メチル成分の含有割合は、メタクリル酸メチル成分とスチレン成分との合計を100重量%として、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。
HIPEフォームの架橋点間分子量Mc、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、見掛け密度に対する23℃での貯蔵弾性率の値E’/ρを上記範囲に調整し易くなる観点から、架橋重合体中の架橋剤成分の含有量(具体的には、ソフト系架橋剤成分とハード系架橋剤成分との合計含有量)は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、7重量部以上、27重量部以下であることが好ましく、8重量部以上、26重量部以下であることがより好ましい。
HIPEフォームの架橋点間分子量Mc、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、見掛け密度に対する23℃での貯蔵弾性率の値E’/ρを上記範囲に調整し易くなる観点から、架橋重合体におけるハード系架橋剤成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、3重量部以上、17重量部以下であることが好ましく、4重量部以上、16重量部以下であることが好ましい。同様の観点から、架橋重合体におけるソフト系架橋剤成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、2重量部以上、18重量部以下であることが好ましく、3重量部以上、16重量部以下であることが好ましい。同様の観点から、ソフト系架橋剤成分に対するハード系架橋剤成分の重量比が0.3~5であることが好ましく、0.4~4であることがより好ましい。
[製造方法]
HIPEフォームは、高内相エマルションを重合してなり、具体的には、油中水型高内相エマルションを重合させることにより製造される。油中水型高内相エマルションの有機相は、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等を含む連続相であり、水相は、脱イオン水等の水を含む分散相である。具体的には、以下のように、乳化工程、重合工程、乾燥工程を行うことにより、高内相エマルション多孔体を製造することができる。
まず、撹拌しながら、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等の有機物を含む油性液体(有機相)に、水を含む水性液体(水相)を滴下することにより、油中水型高内相エマルションを作製する(乳化工程)。乳化工程では、体積比で水相が有機相の例えば3倍以上となるように油性液体に水性液体を添加することにより、高内相エマルションを作製することができる。なお、有機相に内包させる水相の比率は、有機相と水相との重量比で調整することができる。高内相エマルションにおける前記水相の含有量は、前記有機相100重量部に対して、300~1600重量部であることが好ましく、350~1400重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは400~1200重量部である。次いで、高内相エマルションを加熱して有機相のビニル系単量体、架橋剤等を重合させることにより、重合生成物(具体的には、水分を含んだ架橋重合体)を得る(重合工程)。その後、重合生成物を乾燥させることにより、架橋重合体から構成されたHIPEフォームを得る(乾燥工程)。
乳化工程での撹拌速度は、特に限定されないが、例えば、撹拌動力密度が0.1kW/m~5kW/mの範囲にて調整することができる。また、乳化工程での油性液体への水性液体の添加方法は、特に限定されないが、予め撹拌容器内に油性液体と水性液体を投入した状態から撹拌を開始してもよく、予め撹拌容器内に油性液体のみを投入、撹拌し、これにポンプ等を用いて水性液体を投入してもよい。この場合の水性液体の添加速度は、特に限定されないが、例えば、油性液体に対して10wt%/min~1000wt%/minの範囲にて調整することができる。また、乳化の方法としては、撹拌装置を備えた撹拌容器や遠心振とう機を用いて乳化するバッチ式の乳化工程、スタティックミキサーやメッシュ等を備えたライン中に、油性液体と水性液体を連続的に供給して混合させる連続式の乳化工程など、乳化の方法は特に限定されない。
水相は、脱イオン水等の水、重合開始剤、電解質などを含むことができる。乳化工程では、例えば、油性液体、水性液体をそれぞれ作製し、撹拌下で油性液体に水性液体を添加して、高内相エマルションを作製する。また、乳化工程において、難燃剤、耐光剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。
重合開始剤は、ビニル系単量体の重合を開始させるために用いられる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を用いることができる。具体的には、ジラウロイルパーオキサイド(LPO)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレエート、t-ヘキシルパーオキシピバレエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’アゾビス(4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等が用いられる。重合開始剤としては、1種類以上の物質を用いることができる。重合開始剤は、有機相及び/又は水相に添加することができる。また、水相に重合開始剤を添加する場合は、2,2’アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’アゾビス(2-メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤の添加量は、例えば、ビニル系単量体と架橋剤との合計100重量部に対して、0.1~5重量部の範囲とすることができる。
乳化剤は、高内相エマルションの形成及び安定化のために用いられる。乳化剤としては、例えば、界面活性剤を用いることができる。具体的には、ポリグリセリン縮合リシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンオレエート、ポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンミリステート等のグリセロールエステル類;ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート等のソルビトールエステル類;エチレングリコールソルビタンエステル類;エチレングリコールエステル類;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等が用いられる。乳化剤の添加量は、例えば、ビニル系単量体と架橋剤と乳化剤との合計100重量部に対して、1~30重量部の範囲とすることができる。
電解質は、水相にイオン強度を付与し、乳化物の安定性を高めるために用いられる。電解質としては、水溶性の電解質を用いることができる。具体的には、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。電解質の添加量は、例えば、水性液体100重量部に対して、0.1~10重量部の範囲とすることができる。
重合工程での重合温度は、例えば、ビニル系重合体の種類、重合開始剤の種類、架橋剤の種類等によって調整される。重合温度は、例えば50℃~90℃である。
乾燥工程では、オーブン、真空乾燥機、高周波・マイクロ波乾燥機等を用いて、水分を含んだ架橋重合体を乾燥する。乾燥が完了することで、重合前の乳化物において水滴があった箇所が、乾燥後の重合体においては気泡となり、多孔体を得ることができる。乾燥前に、例えばプレス機等を用いて圧搾により架橋重合体を脱水させることができる。圧搾は、室温(例えば23℃)で行ってもよいが、例えば、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度以上の温度で行うこともできる。この場合には、圧搾による脱水が容易になり、乾燥時間を短くすることができる。また、遠心分離により、架橋重合体の脱水を行うこともできる。この場合にも乾燥時間が短くなる。
以下に、HIPEフォームの実施例及び比較例について説明する。本例では、以下の方法により、表2の実施例及び表3の比較例に示すHIPEフォームを製造した。なお、本発明に係るHIPEフォームの具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において適宜構成を変更することができる。なお、実施例における「%」は、重量%を意味する。実施例5は、本願における参考例である。
[実施例1]
まず、撹拌装置の付いた内容積が3Lのガラス容器に、ビニル系単量体としてのスチレン:54g及びブチルアクリレート:24g、ハード系架橋剤(以下、第1架橋剤という)としての純度57%のジビニルベンゼン:12g(ジビニルベンゼンとしては、6.84g)、ソフト系架橋剤(以下、第2架橋剤という)としてのポリエチレングリコールジアクリレート(具体的には、新中村化学工業製NKエステルA-400/純度95%):5g(ポリエチレングリコールジアクリレートとしては、4.75g)、乳化剤としてのポリグリセリン縮合リシノレート(具体的には、阪本薬品工業製のCRS-75):5g、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド:0.5gを投入した。これらをガラス容器内で混合することにより、有機相を形成した。
撹拌動力密度1.6kW/m3で有機相を撹拌しながら、純水:614gを約450g/minの速度で添加し、水の添加が終了してからも10min間撹拌を継続し、油中水型(つまりW/O型)の高内相エマルションを調製した。乳化完了後の撹拌動力密度は1.4kW/mであった。
次いで、撹拌動力密度を0.1kW/m3に下げ、ガラス容器にアスピレーターを接続して容器内を減圧し、エマルション中に含まれる微小気泡を除去した。減圧開始から10分後、撹拌を停止して容器内を大気圧に戻した。
内容物を縦約140mm、横約110mm、深さ約60mmのステンレス容器に充填し、70℃のオーブンにて約18時間かけて重合し、水を含有するHIPEフォームを得た。HIPEフォームをオーブンから取出し、室温まで冷却した。
冷却後、ステンレス容器からHIPEフォームを取出し、水で洗浄した後脱水し、85℃のオーブンで恒量になるまで乾燥した。このようにして、ビニル系架橋重合体から構成された、直方体形状のHIPEフォームを得た。このHIPEフォームの見掛け密度は147g/Lであった。
本例の仕込み組成等を表2に示す。なお、表中においては、化合物名を以下のように省略した。
St:スチレン
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
DVB:ジビニルベンゼン
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
BDODA:ブタンジオールジアクリレート
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート
UDA:ウレタンジアクリレート
LPO:ラウロイルパーオキサイド
[実施例2~13、比較例1~6]
ビニル系単量体、第1架橋剤、第2架橋剤の種類、配合割合、乳化剤の配合割合、水の添加量を表2、表3に示すように変更した点を除き、実施例1と同様にしてHIPEフォームを製造した。なお、実施例10においては、撹拌動力密度3.1kW/m3で有機相を撹拌しながら乳化を開始し、W/O型の高内相エマルションを調整した。乳化完了後の撹拌動力密度は2.0kW/m3であった。また、実施例11においては、撹拌動力密度1.0kW/m3で有機相を撹拌しながら乳化を開始し、W/O型の高内相エマルションを調整した。乳化完了後の撹拌動力密度は0.9kW/m3であった。また、実施例12においては、撹拌動力密度0.5kW/m3で有機相を撹拌しながら乳化を開始し、W/O型の高内相エマルションを調整した。乳化完了後の撹拌動力密度は0.4kW/m3であった。
[評価]
実施例1~13、比較例1~6について、下記の測定、評価を行った。実施例1~13についての結果を表2に示し、比較例1~6についての結果を表3に示す。
(見掛け密度:ρ)
上記のようにして製造されたHIPEフォームの中心を含むように、HIPEフォームから、規定サイズ(具体的には、厚み:20mm、幅:25mm、長さ:120mm)の、スキン層を有しない試験片を3つ切り出した。次いで、試験片の重量と実寸法(具体的には、体積)を測定した。試験片の重量を体積で除することにより、試験片の見掛け密度を算出し、3つの試験片の見掛け密度の算術平均値をHIPEフォームの見掛け密度ρとした。
(ガラス転移温度:Tg)
JIS K7121:1987に基づき、示差走査熱量(つまり、DSC)分析によりTgを算出した。測定装置としては、ティ・エイ・インスツルメンツ社製のDSC250を用いた。具体的には、まず、HIPEフォームの中心付近から約2mgの試験片を採取した。試験片の状態調節としては、「(3)一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用した。次いで、試験片に対して、加熱速度10℃/分の条件でDSC測定を行うことによりDSC曲線を得た。このDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求め、この値をガラス転移温度Tgとした。
(23℃での貯蔵弾性率:E’)
HIPEフォームの中心付近から、5mm×5mm×5mmの立方体形状の、スキン層を有しない試験片を3つ切り出した。この3つの試験片に対して、動的粘弾性分析(DMA)を行うことにより、23℃での貯蔵弾性率E’を測定した。測定装置としては、(株)日立ハイテクサイエンス製のDMA7100を用いた。測定された値の算術平均値を23℃での貯蔵弾性率E’とした。なお、測定条件の詳細は以下の通りである。
・変形モード:圧縮
・温度:0~200℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:1Hz
・荷重:98mN
(架橋点間分子量:Mc)
上記3つの試験片に対する動的粘弾性分析より測定された、ゴム状平坦部における貯蔵弾性率E’と温度Tを用い,上記の式(II)から架橋点間分子量Mcを算出した。なお、図2に、実施例のHIPEフォームのDMAカーブの代表例を示す。DMAカーブは、横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率E’をプロットして得られる。実施例においては、HIPEフォームを構成する架橋重合体のゴム状平坦部である、Tg+50℃~Tg+80℃の温度域内から無作為に選択された3つの温度における貯蔵弾性率E’からそれぞれの架橋点間分子量を算出し、算出された9つの架橋点間分子量の算術平均値を架橋点間分子量Mcとして採用した。なお、Tgは、HIPEフォームのガラス転移温度である。
(切削面の平滑性)
まず、HIPEフォームに以下のようにして切削加工を施した。具体的には、切削機としてSHODA(株)製のNCN8200を用い、切削工具として、福田精工(株)製のスクエアエンドミル(4枚刃、直径20mm)を用いて、HIPEフォームに直線状の溝を形成した。切削条件は、以下の通りである。
・ミルの回転数:3000rpm
・ミルの送り速度:5000mm/min
・切削深さ:10mm
次に、(株)キーエンス製の3D形状測定機VR-3200を用いて、切削面(具体的には溝の底面)の表面粗さを測定した。観察倍率は12倍であり、測定領域は実寸法で約18mm×24mmの範囲とした。この範囲は、観察面の全領域に相当する。表面粗さとしては、算術平均面粗さSa及び最大面粗さSzを測定した。なお、算術平均面粗さSaは、基準面からの凹凸の平均値であり、最大面粗さは、最高点と最低点の差である。
算術平均面粗さSaが20μm以下、かつ最大面粗さSzが500μm以下の場合を平滑性が「○」であるとして評価し、算術平均面粗さSaが20μmを超える、あるいは最大面粗さSzが500μm超える場合を「×」として評価した。
(欠けにくさ)
欠けにくさを評価するために、上記の切削面の平滑性の評価と同じ切削機、および切削条件にて加工した直線状の溝について目視評価を行い、エッジ部分(つまり溝上部の、無垢表面と溝とで形成される直角部分)の欠けやひび割れがなければ、欠けにくさが「〇」であるとして評価し、欠けまたはひび割れが生じた場合は欠けにくさが「×」であるとして評価した。
(シャルピー衝撃強度:S)
HIPEフォームの中心付近から厚み:4mm、横:10mm、縦:80mmの、スキン層を有しない試験片を切り出し、JIS K7111:2006に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験片のシャルピー衝撃強度を測定した。測定は、(株)東洋精機製作所のシャルピー衝撃試験機を用い、測定温度23℃、ノッチなしの条件で行った。また、シャルピー衝撃強度を見掛け密度で除することにより、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρを算出した。
・平均気泡径(砂噛みしにくさ)
HIPEフォームの平均気泡径を測定し、砂噛みしにくさを判定した。砂噛みしにくさは、平均気泡径が100μm以下の場合を「○」とし、平均気泡径が100μmを超える場合を「×」として評価した。平均気泡径の測定方法は以下の通りである。フェザー刃を用いて、直方体形状のHIPEフォームにおける短手方向と厚み方向との中央、及び、短手方向の両端における厚み方向の中央から観察用の試料をそれぞれ切り出した。次いで、試料を、低真空走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクサイエンス製のMiniscope(登録商標) TM3030Plus)で観察し、断面写真を撮影した。実施例の断面写真(倍率:500倍)の代表例を図1に示す。なお、詳細な観察条件は以下の通りとした。
・試料の前処理:メタルコーティング装置((株)真空デバイスのMSP-1S)を用いて、試料の導電処理を行った。ターゲット電極にはAu-Pdを用いた。
・観察倍率:50倍
・加速電圧:5kV
・観察条件:表面
・観察モード:二次電子(標準)
次に、撮影した断面写真を画像処理ソフト(ナノシステム(株)のNanoHunter NS2K-Pro)で解析し、各試料の平均気泡径を求めた。得られた3つの平均気泡径を算術平均することで、HIPEフォームの平均気泡径を求めた。詳細な解析の手順および条件は以下の通りとした。
(1)モノクロ変換
(2)平滑化フィルタ(3×3、8近傍、処理回数=1)
(3)濃度ムラ補正(背景より明るい、大きさ=5)
(4)NS法2値化(背景より暗い、鮮明度=9、感度=1、ノイズ除去、濃度範囲=0~255)
(5)収縮(8近傍、処理回数=1)
(6)特徴量(面積)による画像の選択(50~∞μm2のみ選択、8近傍)
(7)隣と接続されない膨張(8近傍、処理回数=3)
(8)円相当径計測(面積から計算、8近傍)
Figure 0007381880000002
Figure 0007381880000003
表2より理解されるように、実施例のHIPEフォームは、切削加工時の加工速度を十分に高くすることができる。平滑性の評価では、実際に、ミルの送り速度5000mm/minという十分速い条件で切削加工を行っているが、実施例では、HIPEフォームに欠け、割れ等を発生することなく、平滑性に優れた切削面が形成された。これは、実施例では、見掛け密度ρ、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρ、見掛け密度に対する貯蔵弾性率の値E’/ρ、架橋点間分子量Mcが上記所定の範囲にあるためである。
実施例のHIPEフォームを構成するビニル系架橋重合体は、架橋剤による架橋構造を有することに加え、図1の代表例に示すように、連続気泡構造を有する。そのため独立気泡構造の多孔体で起こりやすい気泡内外での圧力差に起因する収縮が起こりにくいと共に、経時によって寸法が変化しにくいため、寸法安定性に優れている。そのため、例えば切削加工品を木型として用いる場合に、精度の高い鋳物を製造することができる。また、切削加工品自体としても、その形状変化、寸法変化を防ぐことができるため、実施例のHIPEフォームは、寸法変化の防止が要求される様々な用途に適している。
また、実施例のHIPEフォームは、少なくともスチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体から形成された架橋重合体である。そのため、適度な脆さを有しながら、剛性と靱性とをバランス良く備える。そのため、HIPEフォームは、切削加工に適している。
また、実施例のHIPEフォームの平均気泡径は、砂型に使用される珪砂の粒径よりも十分に小さい。したがって、HIPEフォームは、鋳造用模型に好適であり、特に、砂型の形成に用いられる木型に好適である。また、実施例のHIPEフォームの切削加工品を鋳造用模型として用いる際には、必ずしもコーティング層を設けなくてもよい。また、実施例のHIPEフォームは、平均気泡径が小さいため、切削加工により、外観がはっきりとした(つまりキメの細かい)、意匠性の高い切削加工品が得られる。
比較例1は、架橋点間分子量が大きい例であり、切削面の平滑性が不十分であった。
比較例2、比較例3、比較例5は、見掛け密度に対するシャルピー衝撃強度の値S/ρが小さい例であり、切削加工時に欠けやすいものとなる。
比較例4、比較例6は、見掛け密度に対する23℃での貯蔵弾性率の値E’/ρが小さい例であり、切削面の平滑性が不十分であった。
1 HIPEフォーム
11 架橋重合体
12 気泡壁
13 気泡
14 細孔

Claims (7)

  1. スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分を含むビニル系架橋重合体から構成されており、切削加工により切削加工品を形成するために用いられるHIPEフォームであって、
    見掛け密度ρが50~500kg/m3であり、
    上記見掛け密度ρに対するシャルピー衝撃強度Sの値S/ρが4.5J・m/kg以上であり、
    上記HIPEフォームに対して、周波数:1Hz、荷重:98mN、変形モード:圧縮という条件の動的粘弾性測定を行うことにより測定される、23℃での貯蔵弾性率E’と、上記見掛け密度ρとが下記式(I)の関係を満足し、
    上記動的粘弾性測定を行うことにより測定される架橋点間分子量Mcが2×104以下であり、
    上記HIPEフォームのガラス転移温度が50℃以上である、HIPEフォーム。
    E’/ρ≧50kN・m/kg ・・・(I)
  2. 上記HIPEフォームの平均気泡径が100μm以下である、請求項1に記載のHIPEフォーム。
  3. 上記HIPEフォームのガラス転移温度が120℃以下である、請求項1又は2に記載のHIPEフォーム。
  4. 上記ビニル系架橋重合体が、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を含むビニル系単量体と、架橋剤との重合体から構成されており、
    上記ビニル系単量体がスチレン及び/又はメタクリル酸メチルを含み、
    上記ビニル系単量体中におけるスチレン及びメタクリル酸メチルの含有割合の合計が40重量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のHIPEフォーム。
  5. 上記ビニル系架橋重合体が、スチレン及び/又はメタクリル酸メチルと、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むビニル系単量体と、架橋剤との共重合体から構成されており、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のHIPEフォーム。
  6. 上記ビニル系架橋重合体が、ビニル系単量体成分と、官能基当量が130g/mol以下である第1架橋剤成分と、官能基当量が130g/molを超え、5000g/mol以下である第2架橋剤成分とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のHIPEフォーム。
  7. 上記切削加工品が鋳造用模型である、請求項1~6のいずれか一項に記載のHIPEフォーム。
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