以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
(実施例1)
以下、実施例1の眼科装置1の構成を、図1~図6に基づいて説明する。
実施例1の眼科装置1は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、両眼同時に眼特性を測定可能な両眼開放タイプの眼科装置である。なお、実施例1の眼科装置1では、片眼を遮蔽したり、固視標を消灯したりすることで、片眼ずつ眼特性を測定することも可能となっている。すなわち、本発明の眼科装置は、両眼開放タイプに限定されるものではなく、眼特性を片眼ずつ測定する眼科装置にも適用することができる。
実施例1の眼科装置1は、図1に示すように、支持基台10と、測定ユニット20(検眼機本体)と、操作コントローラ30(操作部)と、を備えている。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、検眼中の被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ユニット20の奥行き方向)をZ方向とする。
支持基台10は、床面から起立した支柱11と、支柱11によって支持された検眼用テーブル12と、を有している。検眼用テーブル12は、操作コントローラ30等の検眼に用いる装置や用具を置いたり、被検者の姿勢を支えたりするための台である。検眼用テーブル12は、Y方向の位置(高さ位置)を調節可能に支柱11に支持されていてもよい。
測定ユニット20は、アーム21と、測定ヘッド22と、額当部23(顔支持部)と、測定側制御部24と、を有している。アーム21は、一端が支柱11の先端部に支持され、他端がZ方向に沿って支柱11から手前側(被検者側)へと延び、先端部に測定ヘッド22が取り付けられている。これにより、測定ヘッド22は、検眼用テーブル12の上方でアーム21を介して支柱11に吊下げられる。また、アーム21は、支柱11に対してY方向に移動可能である。なお、アーム21は、支柱11に対してX方向やZ方向にも移動可能にされていてもよい。
測定ヘッド22は、駆動部22aと、駆動部22aの下側に設けられた左右一対の右測定部22R及び左測定部22Lと、を有し、被検眼の眼特性を測定する。右測定部22R及び左測定部22Lは、被検者の左右の被検眼に個別に対応すべく対を為している。ここで、右測定部22Rには、被検者の右側の被検眼の眼特性を測定する右測定光学系25Rが内蔵されている。左測定部22Lには、被検者の左側の被検眼の眼特性を測定する左測定光学系25Lが内蔵されている。測定ヘッド22による測定結果は、測定側制御部24に入力される。
駆動部22aは、右測定部22R及び左測定部22Lを、それぞれ個別に水平(X方向)移動駆動、鉛直(Y方向)移動駆動、X方向回旋駆動、Y方向回旋駆動する機構である。
右測定光学系25R及び左測定光学系25Lは、被検眼の前眼部を観察する観察系や、被検眼に固視標を提示する固視標投影系、被検眼の眼底に測定光を照射し且つ被検眼の眼底によって反射された測定光の反射光を受光する他覚式測定系、被検眼に自覚式の視標を提示する自覚式測定系等を有している。
ここで、他覚式測定系では、反射光の受光結果に基づいて被検眼の眼特性を他覚的に測定することに加え、被検眼の画像を取得するための撮影を行う。つまり、他覚式測定系は、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography。以下、「OCT」という)を用いた断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等を行う。なお、他覚測定は、他覚測定時だけでなく、自覚測定中も実行される。
また、自覚式測定系では、提示した視標に対する被検者の応答に基づいて、被検眼の眼特性を自覚的に測定する。つまり、自覚式測定系は、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査等を行う。
額当部23は、右測定部22R及び左測定部22Lの間に配置され、測定ユニット20に設けられている。額当部23は、眼特性の測定中に被検者の顔の一部(額)を接触させることで被検者の顔を支持する。すなわち、検眼用テーブル12に正対する被検者は、額当部23に自身の額を押し当て、顔の向きや位置が動かないように安定させる。この額当部23の位置調整は、アーム21を支柱11に対してY方向に移動することで行われる。そして、被検者の額に接触する額当部23の表面には、圧力センサ26(検知部)が設けられている。
圧力センサ26は、図2に示すように、被検者の額によって額当部23に作用する圧力Pを検出し、検出した圧力Pの値に基づいて被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知するセンサである。圧力センサ26による検知結果は、測定側制御部24に入力される。
そして、この圧力センサ26は、被検眼の眼特性を測定している間、額当部23に作用する圧力Pを継続して検知する。つまり、圧力センサ26は、被検者の額が額当部23に接触しているか否か、つまり、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知し続ける。ここで、「被検眼の眼特性を測定している間」には、例えば他覚屈折測定や自覚屈折測定を実行する間だけでなく、被検眼の画像を撮影する間や、アライメントを行っている間も含まれる。
圧力センサ26では、予め設定した閾値P*よりも、圧力センサ26によって検出した圧力Pが高い場合に、被検者の顔が額当部23によって支持されていると検知する。すなわち、図2に示す例では、時刻t0~t1までの間と、時刻t2以降は「被検者の顔が額当部23によって支持されている」と検知する。また、時刻t1~時刻t2までの間は「被検者の顔が額当部23によって支持されていない」と検知する。
また、この圧力センサ26は、図3(a)に示すように、額当部23の表面のほぼ全面を覆うシート形状を呈しており、額当部23上の異なる複数の位置(位置A、位置B等)で額当部23に作用する圧力Pを検出することができる。この場合、圧力センサ26は、額当部23上の異なる複数の位置(位置A、位置B等)で検出した圧力Pに基づいて、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知することが可能である。
さらに、圧力センサ26では、図3(b)に示すように、任意の位置Cから額当部23に対して異なる複数の方向(矢印α、矢印β等)に作用する圧力Pを検出することができる。この場合には、圧力センサ26は、額当部23に対して異なる複数の方向(矢印α、矢印β等)に作用した圧力Pに基づいて、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知することが可能である。
測定側制御部24は、検眼用テーブル12の下方に設けられた情報処理装置であり、操作コントローラ30から送信された制御信号に基づいて、測定ユニット20の各部を統括的に制御する。また、この測定側制御部24は、測定ヘッド22で測定した被検眼の眼特性の測定結果や、圧力センサ26で検知した額当部23による被検者の顔の支持状態についての検知結果を操作コントローラ30に送信する。
「被検者の顔の支持状態についての検知結果」とは、圧力センサ26による被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かの検知結果である。なお、圧力センサ26が額当部23上の異なる複数の位置(位置A、位置B等)で検出した圧力Pに基づいて被検者の顔が支持されているか否かを検知した場合には、測定側制御部24は、検知位置の違いと圧力Pの差を解析して被検者の顔の傾きを推定する。そして、推定した顔の傾きに基づいて生成した情報を「被検者の顔の支持状態についての検知結果」として操作コントローラ30に送信する。また、圧力センサ26が額当部23に対して異なる複数の方向(矢印α、矢印β等)に作用した圧力Pに基づいて被検者の顔が支持されているか否かを検知した場合には、測定側制御部24は、検知方向の違いと圧力Pの差を解析して被検者の顔の傾きを推定する。そして、推定した顔の傾きに基づいて生成した情報を「被検者の顔の支持状態についての検知結果」として操作コントローラ30に送信する。
さらに、測定側制御部24は、測定ヘッド22による測定結果と、圧力センサ26による検知結果と、を時系列で関連づけて記憶する記憶部24aを備えている。ここで、「測定結果」には、他覚測定又は自覚測定の測定種類と、他覚測定値(球面度数、円柱度数、円柱軸)と、自覚測定時の提示視標の種類と、自覚測定時の測定条件(球面度数、円柱度数、円柱軸)とを含んでいる。測定側制御部24は、操作コントローラ30からの制御信号に基づいて、記憶部24aに記憶された所定期間の測定結果及び検知結果を読み出し、操作コントローラ30に送信する。
操作コントローラ30は、検者による操作を受け付け、測定ユニット20の測定側制御部24に対して制御信号を出力する情報処理装置である。この操作コントローラ30は、例えばタブレット端末やスマートフォン等であり、測定ユニット20から分離し、検者によって携帯可能になっている。なお、操作コントローラ30は、ノート型パーソナルコンピュータやデスクトップ型パーソナルコンピュータ等であってもよいし、眼科装置1専用のコントローラであってもよい。操作コントローラ30は、無線通信やネットワーク通信を介して測定側制御部24と情報をやりとりする。すなわち、操作コントローラ30は、測定側制御部24を介して測定ユニット20及び圧力センサ26と通信可能である。
操作コントローラ30は、図4に示すように、表示部31と、操作側制御部32と、を備えている。表示部31は、操作コントローラ30の表面に設けられたタッチパネルディスプレイからなる。表示部31は、画像等が表示される表示面31aと、この表示面31a上に重畳して配置されたタッチパネル式の複数の入力ボタン31bと、を備えている。操作側制御部32は、操作コントローラ30に内蔵されたマイクロコンピュータからなる。操作側制御部32は、測定側制御部24から送信された測定結果や検知結果に基づいて表示面31aに表示する画像を制御する画像制御部32aと、入力ボタン31bに対する操作に応じた制御信号を測定側制御部24に出力する信号制御部32bと、を備えている。
操作コントローラ30において、検者が所定の入力ボタン31bをタップすると、予め決められた制御信号が信号制御部32bから測定側制御部24に送信される。測定側制御部24は、受信した制御信号に基づいて測定ユニット20及び圧力センサ26を制御し、任意の他覚測定や自覚測定等のよる眼特性の測定や、アライメント、被検者の支持状態の検知等が実行される。また、測定ヘッド22によって眼特性の測定が実行されたら、測定側制御部24は、測定結果や圧力センサ26による検知結果を操作コントローラ30の操作側制御部32に送信する。画像制御部32aは、受信した測定結果に基づいて、例えば図5に示すような所定の画面を表示面31aに表示させる。なお、図5に示す表示面31aには、被検眼に提示した固視標の模式図40R、40Lと、被検眼の水平方向の断面図と、視軸と測定光学系の光軸とを示す模式図41R、41Lと、前眼部画像ER、ELと、導光中心と角膜反射の位置とを示す模式図42R、42Lと、他覚的屈折度数43と、等が表示される。
さらに、画像制御部32aでは、眼測定の測定中に検知された圧力センサ26の検知結果に基づいて、表示面31aに表示したアイコン44(報知部)の発光色を制御する。つまり、アイコン44は、圧力センサ26の検知結果に基づいて、額当部23によって被検者の額を支持しているか否かの情報を報知する。画像制御部32aは、圧力センサ26が「被検者の顔が額当部23によって支持されている」と検知したときには、アイコン44を緑色で発光させる。また、画像制御部32aは、圧力センサ26によって「被検者の顔が額当部23によって支持されていない」と検知したときには、アイコン44を赤色で発光させる。
さらに、画像制御部32aは、測定ユニット20によって被検眼の眼特性を測定している間はアイコン44を発光させ続け、眼特性を測定中、圧力センサ26の検知結果を継続して報知する。なお、眼特性の測定途中で被検者の姿勢が変化するなどによって検知結果が変化した場合には、画像制御部32aは、検知結果が変化したタイミングでアイコン44の発光色を変化させる。また、画像制御部32aは、圧力センサ26の検知結果に基づいてアイコン44の発光制御を行うだけであり、測定ユニット20の測定動作には何ら影響を与えない。
さらに、例えば検者が、操作コントローラ30の表示面31a上に配置された入力ボタン31bの一つであるログボタン31cをタップすると、予め決められた制御信号が操作コントローラ30から測定側制御部24に送信される。測定側制御部24は、記憶部24aに記憶された所定期間の測定結果及び検知結果を読み出し、操作コントローラ30に送信する。画像制御部32aは、測定側制御部24から送信された所定期間の測定結果及び検知結果に基づいて、図6に示すログ表示画面100を表示面31aに表示する。
ログ表示画面100は、所定期間の時系列に沿って、記憶部24aから読み出した測定結果及び検知結果を並列に表示する画面である。図6に示す例では、横軸を所定期間の時間軸とし、測定結果及び検知結果を縦軸に沿って並べて表示する。このログ表示画面100は、支持状態表示部101と、測定種類表示部102と、視標表示部103と、測定条件表示部104と、球面度数表示部105と、円柱度数表示部106と、円柱軸表示部107と、を有している。
支持状態表示部101では、被検者の顔が額当部23によって支持されている時間帯と、被検者の顔が額当部23によって支持されていない時間帯とを表示する。つまり、ログ表示画面100を表示したときには、支持状態表示部101が、圧力センサ26の検知結果に基づいて、額当部23によって被検者の額を支持しているか否かの情報を報知する報知部となる。図6では、被検者の顔が額当部23によって支持されている時間帯を白帯で示し、被検者の顔が額当部23によって支持されていない時間帯を斜線帯で示す。
測定種類表示部102では、他覚測定を実行した時間帯と、自覚測定を実行した時間帯とを表示する。視標表示部103では、自覚測定中に被検者に提示した視標の種別を時間帯ごとに表示する。測定条件表示部104では、自覚測定中に被検眼の眼前に配置したレンズの球面度数(S)、円柱度数(C)、円柱軸(A)の各値を時間帯ごとに表示する。球面度数表示部105では、所定期間内の他覚測定及び自覚測定中に測定した被検眼の球面度数(S)の値を表示する。円柱度数表示部106では、所定期間内の他覚測定及び自覚測定中に測定した被検眼の円柱度数(C)の値を表示する、円柱軸表示部107では、所定期間内の他覚測定及び自覚測定中に測定した被検眼の円柱軸(A)の値を表示する。
さらに、このログ表示画面100には、時間軸(横軸)に沿って任意の位置に移動させることが可能なカーソル108が表示される。カーソル108は、検者が指を押し当てて動かすことで移動させることができる。検者は、カーソル108を時間軸上の任意の位置にセットし、実行ボタン109をタップする。これにより、カーソル108がセットされたタイミングでの各種の測定条件と、測定ヘッド22の動作とを紐づけた制御信号が、操作コントローラ30から測定側制御部24に送信される。測定側制御部24は、受信した制御信号に基づいて測定ヘッド22の各部を制御する。これにより、測定ヘッド22では、カーソル108がセットされたタイミングでの測定動作を再現する。
以下、実施例1の眼科装置1の作用効果を説明する。
実施例1の眼科装置1において眼特性の測定を行うには、まず、眼特性の測定開始時、被検者は、検者の指示に従って額当部23に自身の額を押し当て、顔を安定させる。このとき、額当部23に設けられた圧力センサ26は、額当部23に作用する圧力Pを検出し、検出した圧力Pの値に基づいて被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知する。圧力センサ26によって被検者の顔の支持状態が検知されたら、測定側制御部24から操作コントローラ30へと検知結果が送信される。
操作コントローラ30は、測定側制御部24から送信された圧力センサ26の検知結果を受信する。画像制御部32aは、受信した検知結果に基づいて、操作コントローラ30の表示面31aに表示したアイコン44の発光色を制御する。これにより、額当部23によって被検者の額を支持しているか否かがアイコン44の発光色によって報知される。画像制御部32aは、眼特性の測定を開始してから継続してアイコン44の発光色制御を実行し続け、圧力センサ26の検知情報を継続して報知する。
そして、検者は、右測定部22R及び左測定部22Lの各測定光軸を、左右の被検眼の瞳孔中心や角膜頂点にそれぞれ合わせるアライメントを実施する。このとき、検者は、アイコン44を視認して、アイコン44の発光色を確認することで、被検者が額当部23に額を接触させているか否かを確認しながらアライメントを行うことができる。そのため、検者は、アライメントの途中で被検者が額当部23から額を離した場合、被検者の顔が適切に支持されていないことを速やかに把握することができる。そして、そのままアライメント継続するのか、アライメントを中断して被検者に対して額の接触を促すのか等の判断を行うことができる。なお、アライメントは、自動的に行ってもよいし、手動でアライメント量を設定してもよい。検者は、アライメントの完了後、被検眼の眼特性の測定を実施する。
眼特性の測定では、まず、他覚式測定系を用いて他覚的な眼屈折力の測定を行い、この結果に基づいて、自覚式測定系を用いて自覚的な眼屈折力の測定を行う。各々の眼屈折力の測定方法は、既知の方法が用いられる。これらすべての測定期間において、圧力センサ26は、額当部23に作用する圧力Pを検出し、検出した圧力Pの値に基づいて被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知し、検知結果が操作コントローラ30へ送信される。画像制御部32aは、操作コントローラ30の表示面31aに表示したアイコン44の発光色を、受信した検知結果に基づいて変更し、額当部23によって被検者の額を支持しているか否かをアイコン44の発光色によって報知する。
これにより、検者は、眼特性の測定中であっても、アイコン44の発光色を視認することで、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを把握することができ、顔の支持状態をリアルタイムで認識しながら測定を実行することができる。また、画像制御部32aは、圧力センサ26の検知結果に基づいてアイコン44の発光制御を行うだけであり、測定ユニット20の測定動作には何ら影響を与えない。そのため、被検者の顔が額当部23によって支持されていないことが検知された場合であっても、測定の継続や中断は検者の判断によって決定することができ、検者が不要と考える測定中断を避け、測定中の煩わしさを軽減することが可能である。
さらに、アイコン44は、操作コントローラ30の表示面31aに設けられている。ここで、操作コントローラ30は、測定ユニット20から分離すると共に、測定側制御部24を介して測定ユニット20及び圧力センサ26と通信可能であって、検者による操作を受け付けて測定側制御部24に制御信号を出力するものである。そのため、被検眼の眼特性の測定を実行する検者は、アイコン44を容易に認識することができ、測定の継続や中断等の判断を速やかに行うことができる。
また、操作コントローラ30は、眼特性の測定中、図5に示すように、表示面31aにアイコン44を表示すると同時に、測定ユニット20による測定結果(模式図40R、40L等)を表示する。すなわち、操作コントローラ30の表示部31は、測定ユニット20による測定結果と、圧力センサ26による検知結果とを関連付けて表示する。これにより、検者は、測定結果を確認しながらアイコン44の発光色を認識することができる。そのため、検者は、額が額当部23から離れたタイミングでの測定内容や、額が額当部23から離れている時間等を考慮して、当該測定結果の測定精度が担保されているか否かを的確に推定することができる。よって、測定の継続や中断等の判断をより適切に行うことができる。
さらに、実施例1では、測定側制御部24は、測定ユニット20による測定結果と、圧力センサ26による検知結果と、を関連づけて記憶する記憶部24aを備えている。そして、検者がログボタン31cをタップすると、互いに関連付けられた測定結果及び検知結果が記憶部24aから読み出され、図6に示すログ表示画面100が表示部31の表示面31aに表示される。これにより、検者は、眼測定の測定が終了した後や、測定中の任意のタイミングで、測定ユニット20による測定結果と、当該測定結果を取得したときの被検者の頭の支持状態とを遡って確認することができる。そして、必要に応じて測定条件を再現して再測定を行うことが可能となる。
特に、実施例1では、ログ表示画面100にカーソル108を表示している。そして、このカーソル108を時間軸(横軸)に沿って任意の位置に移動させ、時間軸上の任意の位置にセットした上で、実行ボタン109をタップする。これにより、カーソル108がセットされたタイミングでの各種の測定条件と、測定ヘッド22での動作とを紐づけた制御信号が操作コントローラ30から測定側制御部24に送信される。そして、測定ヘッド22において、カーソル108がセットされたタイミングでの測定動作を再現する。そのため、測定条件を再現して再測定することを容易に行うことができ、眼測定の効率化を図ることができる。また、測定条件の再現が自動的に行われるため、設定間違いが生じることがなく、再測定を適切に実行することができる。
そして、実施例1の眼科装置1では、測定ユニット20が、被検眼に自覚式の視標を提示し、被検者の応答に基づいて被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式測定系を有している。これに対し、眼科装置1は、自覚測定中であっても、被検者の頭の支持状態を継続して報知することができる。そのため、被検者の顔の支持状態が応答内容に影響を与えやすく、測定精度が被検者の顔の支持状態に応じて変動しやすい自覚測定であっても、測定精度を適切に推定し、的確な測定を行うことができる。
また、実施例1では、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを、額当部23上の異なる複数の位置(位置A、位置B等)で検出した圧力Pに基づいて検知した場合には、測定側制御部24は、検知位置の違いと圧力差を解析して被検者の顔の傾きを推定する。そして、推定した顔の傾きに基づいて生成した情報を「被検者の顔の支持状態についての検知結果」として操作コントローラ30に送信する。そのため、検知位置の違いと圧力差を解析して推定した顔の傾きに基づく検知結果に応じて、アイコン44の発光色を制御することができ、さらに適切な報知を行うことが可能となる。
さらに、実施例1では、被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを、額当部23に対して異なる複数の方向(矢印α、矢印β等)に作用した圧力Pに基づいて検知した場合には、測定側制御部24は、検知方向の違いと圧力差を解析して被検者の顔の傾きを推定する。そして、推定した顔の傾きに基づいて生成した情報を「被検者の顔の支持状態についての検知結果」として操作コントローラ30に送信する。そのため、検知方向の違いと圧力差を解析して推定した顔の傾きに基づく検知結果に応じて、アイコン44の発光色を制御することができ、さらに適切な報知を行うことが可能となる。
そして、実施例1の眼科装置1では、操作コントローラ30の表示面31aにアイコン44を表示し、このアイコン44の発光色によって被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを報知する構成とした。これにより、検者は、アイコン44の発光色の違いを認識することで被検者の顔が支持されているか否かを容易に把握することができる。
以上、本発明の眼科装置1を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1の眼科装置1では、操作コントローラ30の表示面31aに表示したアイコン44の発光色によって被検者の顔が支持されているか否かを報知する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、操作コントローラ30にスピーカを設け、このスピーカから出力される音声によって額当部23による顔の支持状態を報知してもよい。また、操作コントローラ30にLED等の光源を設け、この光源の発光色を制御することで額当部23による顔の支持状態を報知してもよい。また、表示面31aに文字を表示して、額当部23による顔の支持状態を報知してもよい。さらに、例えば、図6に示すように、時間軸に沿ってバー領域を表示部31に表示し、額当部23によって顔が支持されていない時間帯と、支持されている時間帯とを異なる色で表記することで額当部23による顔の支持状態を報知してもよい。
さらに、音声や文字で顔の支持状態を報知する際、単に被検者の顔が支持されているか否かを継続して報知するだけではなく、検知結果に基づく指示(例えば、「強く額を当てて下さい」や「正面を向いて下さい」等)を適宜報知してもよい。
また、実施例1の眼科装置1では、検者の操作を受け付けて測定ユニット20に制御信号を出力する操作コントローラ30が、測定ユニット20から分離して携帯可能とする例を示したが、これに限らない。例えば、操作コントローラ30と測定ユニット20とを同一の筐体に設けてもよい。この場合であっても、検者の操作を受け付ける操作コントローラ30にアイコン44(報知部)を設けることで、検者は、額当部23による被検者の顔の支持状態を容易に把握することができる。
実施例1の眼科装置1では、被検者の顔を支持する顔支持部として、被検者の額に接触する額当部23を備える例を示したが、これに限らない。例えば、被検者の顎に接触し、顎を支える顎受けを顔支持部としてもよいし、額当部と顎受けが設けられたリング状のフレームを顔支持部としてもよい。つまり、顔支持部は、被検眼の眼特性を測定中に、被検者の顔が接触し、被検者の顔や被検眼の位置が動かないようにするものであれば、額当部23や顎受けに限定されない。
さらに、実施例1の眼科装置1では、被検者の顔が額当部23(顔支持部)によって支持されているか否かを圧力センサ26によって検知する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、測定ユニット20に設けた距離センサによって測定ユニット20から被検者の顔までの距離を測定し、この距離に基づいて被検者の顔が額当部23(顔支持部)によって支持されているか否かを検知してもよい。また、測定ユニット20に設けたカメラによって眼特性を測定している被検者の顔を撮影し、この撮影画像に基づいて被検者の顔が額当部23(顔支持部)によって支持されているか否かを検知してもよい。つまり、検知部は、被検眼の眼特性の測定中、被検者の顔が支持されているか否かを継続して検知するものであればよい。
さらに、実施例1では、圧力センサ26が額当部23に作用する圧力Pを検出すると共に、この検出した圧力Pの値に基づいて被検者の顔が額当部23によって支持されているか否かを検知する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、圧力センサ26では、額当部23に作用する圧力Pの検出のみを行い、圧力値に基づく顔の支持検知は、測定側制御部24や、操作コントローラ30の画像制御部32a等で行ってもよい。この場合には、圧力センサ26に加え、圧力値に基づいて被検者の顔が支持されているか否かを検知する制御部等も「検知部」に相当する。