本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る避難連絡坑ドアは、避難連絡坑と車道トンネルとを連通する開口部1に設置される。図中、Aは車道トンネル側、Bは避難連絡坑側を表しており、避難連絡坑の壁面をWで表している。本実施形態では、引き戸を備えた開き扉に係るが、本発明に係る技術思想は、引き戸を備えた折り扉に適用可能である。
開口部1は躯体に設けられた四周状の枠体2に囲まれた領域に形成されており、枠体2は、左右の縦枠20、21と、上枠22と、下枠23と、からなり、開口部1は、枠体2に取り付けられた開き扉によって開閉されるようになっている。本実施形態では、開き扉は、第1扉体3と第2扉体4を備えた両開き扉であって、第1扉体3は幅広の親扉であって、第2扉体4は幅狭の子扉である。すなわち、第1扉体3は第1の幅寸法を備え、第2扉体4は第2の幅寸法を備え、第1の幅寸法は第2の幅寸法よりも大きい。
第1扉体3の戸尻側部位は、枠体2の縦枠20の上下に位置して設けた回動支持部3aに回動可能に装着されており、第2扉体4の戸尻側部位は、枠体2の縦枠21の上下に位置して設けた回動支持部4aに回動可能に装着されている。
第1扉体3の第1の幅寸法、第2扉体4の第2の幅寸法は、これらの合計が、開口部1の開口幅と略同じとなるような寸法を有しており、閉鎖姿勢にある第1扉体3及び第2扉体4によって、開口部1が閉鎖される。第1扉体3及び第2扉体4は、閉鎖姿勢から避難連絡坑側Bに回動することで、開口部1を開放するようになっている。開口部1は、車両の通行が可能な車両用開口部であり、図6に示すように、第1扉体3及び第2扉体4が閉鎖姿勢から略90度回動して開放姿勢となることで車道有効開口幅が得られる。
幅広の親扉である第1扉体3には人道用開口部としての開口部5が形成されており、開口部5は、第1扉体3に設けた引戸装置のスライド扉によって開閉されるようになっており、本実施形態では、2枚の引き違い状の第1スライド扉6、第2スライド扉7によって開口部5を開閉するようになっている。
図5、図4に示すように、第1扉体3は、開口部5の戸先側に位置する戸先側縦枠30と、第1扉体3の閉鎖姿勢時において避難連絡坑側Bに位置する第1見付面31と、第1扉体3の閉鎖姿勢時において車道トンネル側Aに位置する第2見付面32と、戸先側端面(戸先側縦枠30の外側見込面303)と、戸尻側端面33と、第1扉体3の全幅に亘って延びる上面34と、開口部5に対して戸尻側の下端に位置する下面35と、を有し、第1扉体3に形成された開口部5の三方の周面は、上面36、戸先側の側面(戸先側縦枠30の内側見込面302)、戸尻側の側面37からなる。
図5に示すように、第2扉体4は、正面視縦長方形状を有し、第2扉体4の閉鎖姿勢時において避難連絡坑側Bに位置する第1見付面41と、第2扉体4の閉鎖姿勢時において車道トンネル側Aに位置する第2見付面42と、戸先側端面43と、戸尻側端面44と、を有しており、第2見付面42には、戸先側端面43から突出するように目板部40が設けてある。第1扉体3、第2扉体4の閉鎖姿勢時には、第1扉体3の第1見付面31と第2扉体4の第1見付面41は面一であり(同一垂直面内に位置しており)、第1扉体3の第2見付面32と第2扉体4の第2見付面42は面一である(同一垂直面内に位置している)。
第1扉体3の戸先側縦枠30は、第1扉体3の全高に亘って延びており、図5に示すように、第1扉体3の閉鎖姿勢時において避難連絡坑側Bに位置する内側見付面300と、第1扉体3の閉鎖姿勢時において車道トンネル側Aに位置する外側見付面301と、開口部5に面する内側見込面302と、第1扉体3の戸先側端面を形成する外側見込面303と、を有している。
図5に示すように、第1扉体3の戸先側縦枠30は、第1扉体3の板厚を越えて、第1見付面31に対して、避難連絡坑側Bに延出する延出部分を有している。後述するように、第1扉体3の戸先側縦枠30の延出部分は、引戸装置の戸先側縦枠を兼用している。戸先側縦枠30の内側見込面302、外側見込面303は、第1扉体3の第1見付面31から離間して避難連絡坑側Bに突出するように延びている。図5に示すように、戸先側縦枠30の外側見付面301は、第1扉体3の第2見付面32と面一である(同じ垂直面内に位置している)一方、戸先側縦枠30の内側見付面300は、第1扉体3の第1見付面31に対して避難連絡坑側Bに位置している。
戸先側縦枠30の避難連絡坑側Bの端部(避難連絡坑側Bに突出する部分の端部)には、外側見込面303(第1扉体3の戸先側端面)を越えて内側見込面302から離間するように開口幅方向に突出する突出部30Aが形成されており、内側見付面300は、外側見込面303(第1扉体3の戸先側端面)を越えて内側見込面302から離間する方向に延出しており、内側見付面303の見付幅は、外側見付面301の見付幅よりも大きい。
第1扉体3、第2扉体4の閉鎖姿勢は、ラッチ機構によって固定されている。本実施形態では、グレモン錠からラッチ機構が構成されている。グレモン錠は、グレモンハンドルと、グレモンハンドルの回動操作によって上下動する上側ロッド11、下側ロッド12と、上側ロッド11の上端に設けた係止部材110、下側ロッド12の下端に設けた係止部材120と、を備え、上枠22、下面FLには、それぞれ、受孔13、14が形成されており、グレモンハンドルを施錠方向に回動して施錠姿勢とすることで、上側ロッド11、下側ロッド12を介して、係止部材110、120が受孔13、14に係止してロック状態となり、第1扉体3、第2扉体4の開放が規制される。すなわち、第1扉体3、第2扉体4は、それぞれ、係止部材110と受孔13とからなる上側の係止部L1、係止部L3、係止部材120と受孔14とからなる下側の係止部L2、係止部L4を備えている(図1参照)。また、開き扉の閉鎖姿勢時において、第1扉体3の第2見付面32の戸尻側端部は縦枠20に設けた気密部材Sに圧接されており、第2見付面32の上端部は上枠22に設けた気密部材Sに圧接されており、第2扉体4の第2見付面42の戸尻側端部は縦枠21に設けた気密部材Sに圧接されており、第2見付面42の上端部は上枠22に設けた気密部材Sに圧接されている。
第1扉体3の戸先側縦枠30の内側見付面300の所定高さ位置には、第1扉体3の操作部であるグレモンハンドルH1が設けてある。第1扉体3において、上側の係止部L1は上側ロッド11の上端に設けてあり、下側の係止部L2は下側ロッド12の下端に設けてあり、第1扉体3の上側ロッド11の上端部、下側ロッド12の下端部は、戸先側縦枠30の内側見付面300に支持されている。グレモンハンドルH1の回動操作に連動して上側ロッド11、下側ロッド12が軸方向に移動するようになっており、グレモンハンドルH1の回動操作によって、係止部L1、係止部L2が解錠姿勢と施錠姿勢(係止姿勢)を取るようになっている。すなわち、グレモンハンドルH1を施錠方向に回動して(第1操作)施錠姿勢とすることで、グレモン錠がロック状態となって第1扉体3の閉鎖姿勢が維持され、施錠姿勢にあるグレモンハンドルH1を解錠方向に回動する(第2操作)ことで、グレモン錠のロックが解除され、第1扉体3の開放が可能となる。第2扉体4の第1見付面41の戸先側部位の所定高さ位置には、第2扉体4の操作部であるグレモンハンドルH2が設けてある。第2扉体4において、上側の係止部L3は上側ロッド11の上端に設けてあり、下側の係止部L4は下側ロッド12の下端に設けてあり、第2扉体4の上側ロッド11の上端部、下側ロッド12の下端部は、第2扉体4の第1見付面41に支持されている。グレモンハンドルH2の回動操作に連動して上側ロッド11、下側ロッド12が軸方向に移動するようになっており、グレモンハンドルH2の回動操作によって、係止部L3、係止部L4が解錠姿勢と施錠姿勢(係止姿勢)を取るようになっている。すなわち、グレモンハンドルH2を施錠方向に回動して(第1操作)施錠姿勢とすることで、グレモン錠がロック状態となって第2扉体4の閉鎖姿勢が維持され、施錠姿勢にあるグレモンハンドルH2を解錠方向に回動する(第2操作)ことで、グレモン錠のロックが解除され、第2扉体4の開放が可能となる。本実施形態において、グレモンハンドルH1、H2は、第1扉体3、第2扉体4の開放操作のための取手とロック機構の要素を兼用しているが、ロック機構と独立して取手を設けてもよい。
第1扉体3の戸先側部位の下端には補助ローラGRが設けてあり、補助ローラGRは、第1扉体3の開閉移動時に、戸先側部位の下端を支持可能となっている。補助ローラGRは、常時床面FLに接触していても、あるいは、常時は床面FLから少し浮いており、戸先側部位が下がった時に着床して当該戸先側部位の下端を支持するものでもよい。本実施形態では、補助ローラGRは、第1扉体3の外側見込面303の第2部分303Bの下方部位に設けてあり、補助ローラGRは、避難連絡坑側Bから見た時に、戸先側縦枠30の突出部30Aの背面に隠れている。1つの態様では、床面FLには平面視円弧状で上面が平面状のガイドプレート(図示せず)が形成されており、補助ローラGRはガイドプレート上を走行可能となっている。補助ローラGRは、第1扉体3(引戸枠、第1スライド扉6、第2スライド扉7を含む)の前後方向における重心位置に設けることが望ましい。
第1扉体3の戸先側部位の下方部位には第1扉体3の開放姿勢固定に用いる係止ロッドR1が上下動可能に設けてあり、係止ロッドR1は上動位置では係止ロッドR1の下端は第1扉体3の戸先側部位(戸先側縦枠30)の下端(より詳しくは、本実施形態では、戸先側縦枠30の下端と略同面に位置する下枠10の戸先側部位の下面102)と同面あるいは上側に位置しており、下動位置では、係止ロッドR1の下端は第1扉体3の戸先側部位(戸先側縦枠30)の下端(下枠10の戸先側部位の下面102)から下方に突出する。第1扉体3を開放姿勢まで回動した時に係止ロッドR1を下動させて床面の所定位置C1に設けた係止孔に係止させることで、第1扉体3の開放姿勢が固定される。
第2扉体4の戸先側部位の下方部位には第2扉体4の開放姿勢固定に用いる係止ロッドR2が上下動可能に設けてあり、係止ロッドR2は上動位置では係止ロッドR2の下端は第2扉体4の下面45の戸先側部位と同面あるいは上側に位置しており、下動位置では、係止ロッドR2の下端は第2扉体4の下面45の戸先側部位から下方に突出する。第2扉体4を開放姿勢まで回動した時に係止ロッドR2を下動させて床面の所定位置C2に設けた係止孔に係止させることで、第2扉体4の開放姿勢が固定される。本実施形態では、係止ロッドR2は、第2扉体4の第1見付面41の戸先側部位の下方部位に設けてある。
開き扉の閉鎖姿勢時において、第2扉体4の第2見付面42の戸先側部位に設けた目板部40の気密部材が、第1扉体3の戸先側縦枠30の外側見付面301に当接しており、目板部40によって、第1扉体3の戸先側端面(戸先側縦枠30の外側見込面303)と第2扉体4の戸先側端面43との間の隙間を塞いでいる。
第1扉体3、第2扉体4は、それぞれドアクローザDC1、DC2を備えている。係止ロッドR1を上動させて第1扉体3の開放姿勢固定を解除することで、第1扉体3はドアクローザDC1によって閉鎖姿勢まで回動する。係止ロッドR2を上動させて第2扉体4の開放姿勢固定を解除することで、第2扉体4はドアクローザDC2によって閉鎖姿勢まで回動する。
第1スライド扉6は正面視長方形状のパネルであり、戸先側端面60、戸尻側端面61、上端面62、避難連絡坑側Bに位置する第1見付面65、車道トンネル側Aに位置する第2見付面66、を備えており、第1見付面65、第2見付面66の戸先側部位には取手H3が設けてある。第1スライド扉6の上端面62には、ハンガーローラアセンブリHR1(第1ハンガーローラ64、第2ハンガーローラ65)が設けてある。第2スライド扉7は正面視長方形状のパネルであり、戸先側端面70、戸尻側端面71、上端面72、避難連絡坑側Bに位置する第1見付面75、車道トンネル側Aに位置する第2見付面76、を備えており、上端面72にはハンガーローラアセンブリHR2が設けてある。第1スライド扉6に設けた取手H3を用いて、第1スライド扉6を開放させることで、第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放させるようになっている。より詳しくは、第1スライド扉6の第2見付面66の戸尻側部位には第1係止片660、第2係止片661が形成されており、第2スライド扉7の第1見付面75の戸先側部位には第1係止片750が形成されており、戸尻側部位には第2係止片751が形成されており、第2見付面76の戸尻側部位には第3係止片760が形成されている。引き戸の閉鎖姿勢時には、第1スライド扉6の第2見付面66の戸尻側部位と第2スライド扉7の第1見付面75の戸先側部位が離間対向しており、第1スライド扉6の第1係止片660と第2スライド扉7の第1係止片750が係合している(図5参照)。第2スライド扉7の第3係止片760は、第1扉体3の第1見付面31において、開口部5の側面37に隣接して形成した係止片370に係合している。第1スライド扉6が開放方向にスライド移動すると、戸尻側に移動する第1スライド扉6の第2係止片661が第2スライド扉7の第2係止片751に係合して、第1スライド扉6と第2スライド扉7が一体で開放方向にスライド移動して開放姿勢となる。引戸装置は、手動で開放した第1スライド扉6を自動で閉鎖させる自動閉鎖機構(詳細は甲後述する)を備えている。開放姿勢から自動閉鎖機構によって第1スライド扉6が閉鎖方向にスライド移動すると、戸先側に移動する第1スライド扉6の第1係止片660が第2スライド扉7の第1係止片750に係合して、第1スライド扉6と第2スライド扉7が一体で閉鎖方向にスライド移動して閉鎖姿勢となる。
引戸装置の第1スライド扉6、第2スライド扉7は、第1扉体3の開口部5の避難連絡坑側Bに位置して開口部5を開閉するようになっており、第1扉体3には、避難連絡坑側Bに位置して引戸枠が設けてある。引戸枠は、第1扉体3の戸先側縦枠30の延出部分からなる戸先側縦枠と、第1見付面31に突設した戸尻側縦枠8と、第1見付面31に突設した上枠9と、第1見付面31の下端から持ち出し状に突設した下枠10と、からなる(図1、図4、図5参照)。
引戸枠の戸先側縦枠は、戸先側縦枠30の延出部分によって形成されており、戸先側縦枠30の内側見込面302の第2部分302Bに形成した凹面302´が、閉鎖姿勢にある第1スライド扉6の戸先側端面60の戸当たりとなっている(図5参照)。
引戸枠の戸尻側縦枠8は、上枠9と下枠10間に亘って、第1見付面30に対して持ち出し状に固定されており、避難連絡坑側Bに位置する内側見付面80と、戸先側縦枠30の内側見込面302に離間対向する内側見込面81を備えており、内側見込面81が、開放姿勢にある第1スライド扉6の戸尻側端面61、第2スライド扉7の戸尻側端面71の戸当たりとなっている。
引戸枠の上枠9の内部には、段違い状の2本のハンガーレール90、91と、自閉装置DC3が設けてあり、上枠9の下方部位には、引戸の第1扉体6、第2扉体7の上端部が受け入れられている。引戸枠の下枠10は、戸先側縦枠(戸先側縦枠30の延出部分)と戸尻側縦枠8の下端間を架け渡し、かつ、第1見付面31の下端に位置して避難連絡坑側Bに持ち出し状に支持されている。下枠10には、ハンガーレール90、91の直下に位置して凸状のガイドレール100、101が設けてある。
第1スライド扉6は、上端のハンガーローラアセンブリHR1がハンガーレール90上を転動し、下端のガイドローラGR1がガイドレール100上を転動することで、左右方向にスライド移動可能となっている。第2スライド扉7は、上端のハンガーローラR2がハンガーレール91上を転動し、下端のガイドローラGR2がガイドレール101上を転動することで、左右方向にスライド可能となっている。
図7に示すように、第1スライド扉6に設けたハンガーローラアセンブリHR1は、第1スライド扉6の上端面62の戸尻側に寄った位置に設けた第1ハンガーローラ63と戸先側に寄った位置に設けた第2ハンガーローラ64を備えている。
第1ハンガーローラ63は、第1スライド扉6の上端面62に立ち上がり状に設けたブラケット630に回転自在に支持されており、ブラケット630には、第1ハンガーローラ63よりも下方に位置して避難連絡坑B側に突出する突出部631が形成されており、突出部631の戸先側部位にはバネ632Aによって支持された当接部632が設けてある。バネ632Aは、当接部632と当接体633が当たった時の衝撃を和らげる緩衝部材として機能する。
第1ハンガーローラ63の突出部631には、第2ワイヤW2が挿通しており、第1ハンガーローラ63の当接部632には、第2ワイヤW2に固定された当接体633が戸尻側へ向かって当接しており、引戸開放装置17によって第2ワイヤW2が戸尻側(開放方向)へ移動することによって、第1ハンガーローラ63(第1スライド扉6)が戸尻側(開放方向)へ移動して開口部5を開放する。
第2ハンガーローラ64は、第1スライド扉6の上端面62に立ち上がり状に設けたブラケット640に回転自在に支持されており、ブラケット640には、第2ハンガーローラ64よりも下方に位置して避難連絡坑B側に突出する突出部641が形成されており、突出部641の戸尻側端部にはバネ642Aによって支持された当接部642が設けてある。バネ642Aは、当接部642と当接体643が当たった時の衝撃を和らげる緩衝部材として機能する。
第2ハンガーローラ64の突出部641には、第1ワイヤW1が挿通しており、第2ハンガーローラ64の当接部642には、第1ワイヤW1に固定された当接体643が戸先側へ向かって当接しており、自閉装置DC3によって第1ワイヤW1が戸先側(閉鎖方向)へ移動することによって、第2ハンガーローラ64(第1スライド扉6)が戸先側(閉鎖方向)へ移動して開口部5を閉鎖する。
第1ワイヤW1と第2ワイヤW2は異なる高さで第1スライド扉6の移動方向に水平に延びており、本実施形態では、第1ワイヤW1が上側に位置し、第2ワイヤW2が下側に位置する。第1ハンガーローラ63の下方に形成した突出部631と第2ハンガーローラ64の下方に形成した突出部641は異なる高さで突出しており、本実施形態では、突出部641が上側に位置し、突出部631が下側に位置する。
図7~図9に示すように、手動で開放した第1スライド扉6を自動で閉鎖させる自動閉鎖機構は、第1スライド扉6の移動方向に水平に延びる第1ワイヤW1と、上枠9の戸先側部位に設けてあり、第1ワイヤW1の一端側(戸先側)を巻き取る自閉装置(第1巻取装置)DC3と、上枠9の戸尻側部位に設けてあり、第1ワイヤW1の他端側(戸尻側)を巻き取る巻取装置(第2巻取装置)15と、を備え、第1ワイヤW1の戸先側はガイドプーリ16に巻回されて斜め上方に案内され、さらに自閉装置DC3のガイドプーリ161に案内されて、巻取ドラム160に巻き取られる。自閉装置DC3の巻取方向の付勢力は、巻取装置15の巻取ドラム150の巻取方向の付勢力よりも大きく、第1ワイヤW1は戸先側(閉鎖方向)に付勢されている。
第1ワイヤW1には当接体643が設けてあり、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にある時に、当接体643が第2ハンガーローラ64の当接部642の戸尻側に位置して、当接部642に当接している。閉鎖姿勢にある第1スライド扉6を自閉装置DC3の付勢力に抗して手動で戸尻側(開放方向)にスライド移動させると、当接部642が当接体643に当接して第1ワイヤW1を戸尻側へ移動させることで、第1ワイヤW1が自閉装置DC3の巻取ドラム160から引き出されながら戸尻側へ移動し、戸尻側へ移動した分は巻取装置15の巻取ドラム150に巻き取られる。手動開放した第1スライド扉6から手を離すと、第1スライド扉6は、例えばタイマーによって、開放姿勢を所定時間維持した後に、自閉装置DC3の閉鎖力によって、第1スライド扉6が戸先側へスライド移動して、開口部5を閉鎖する。
図7、図8、図10に示すように、第1扉体3の開放操作に連動して第1スライド扉6を自動で開放させる引戸開放機構は、第1スライド扉6の幅方向に水平に延びる第2ワイヤW2と、上枠9の戸尻側部位に設けてあり、第2ワイヤW2の一端側(戸尻側)を巻き取る引戸開放装置(第1巻取装置)17と、上枠9の戸先側部位に設けてあり(本実施形態では、第1扉体3の戸先側縦枠30の内側見込面302の避難連絡坑側Bに固定されている)、第2ワイヤW2の他端側を巻き取るロック付き巻取装置(第2巻取装置)18と、を備え、第2ワイヤW2の戸尻側はガイドプーリ19に巻回されて斜め上方に案内され、引戸開放装置17の巻取ドラム170に巻き取られる。引戸開放装置17の巻取ドラム170の巻取方向の付勢力は、巻取装置18の巻取方向の付勢力よりも大きく、かつ、自閉装置DC3の巻取ドラム160の巻取方向の付勢力よりも大きい。
第2ワイヤW2には当接体633が設けてあり、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にある時に、当接体633が第1ハンガーローラ63の当接部632の戸先側に位置して、当接部632に当接している。巻取装置18は、巻取ドラム(図示せず)を備えており、巻取装置18の巻取ドラムが第1の方向に回転すると第2ワイヤW2が繰り出されて戸尻側(開放方向)に移動し、巻取ドラムが第2の方向に回転すると第2ワイヤW2が巻き取られて戸先側(閉鎖方向)に移動する。
巻取装置18は、ロック装置付き巻取装置であって、ロック装置がロック状態にある時には、巻取装置18の巻取ドラムの第1の方向の回転が規制されており、第2の方向の回転は許容されている。このようなロック装置付き巻取装置は、ラチェット機構を備えた巻取ドラムを用いて構成することができ、例えば、巻取ドラムの周縁にラチェット歯車を形成し、ラチェット歯車に爪部が係止した時には、巻取ドラムの第1の方向の回転を規制し、第2の方向の回転を許容する。
巻取装置18のロック装置は、レバー180の回動によって、ロック状態とロック解除状態が切り替わるようになっている。例えば、レバー180とラチェット機構の爪部が伝動連結されており、レバー180の回動によって爪部がラチェット歯車に係脱するようになっている。図示の例では、レバー180が下方に回動している状態では巻取装置18のロック装置はロック状態にあり、レバー180が上方に回動するとロック装置はロック状態からロック解除状態となる。
本実施形態では、第1扉体3のグレモンハンドルH1の回動操作に伴う上側ロッド11の昇降に連動して、レバー180が回動するようになっている。具体的には、第1扉体3の開放時に、グレモンハンドルH1を上側に回動して上側ロッド11を上動させる時に、上側ロッド11の上動に連動してレバー180の先端側が上方に移動して、レバー180が上方に回動してロック解除状態となる。第1扉体3の閉鎖姿勢を固定する時に、グレモンハンドルH1を下側に回動して上側ロッド11を下動させる時に、上側ロッド11の下動に連動してレバー180の先端側が下方に移動して、レバー180が下方に回動してロック状態となる。
閉鎖姿勢にある第1扉体3のグレモンハンドルH1を解錠方向に回動すると、レバー180がロック解除方向に回動して、巻取装置18のロック装置のロックが解除され、巻取装置18の巻取ドラムの第1方向への回転規制が解除され、引戸開放装置17によって第2ワイヤW2が巻き取られて第2ワイヤW2が戸尻側(開放方向)へ移動し、当接体633が当接部632に当接して戸尻側へ移動させることで、第1ハンガーローラ63(第1スライド扉6)が戸尻側(開放方向)へ移動して、開口部5を開放する。第1スライド扉6の開放姿勢は、引戸開放装置17によって維持される。
引戸開放装置17によって開放姿勢となった第1スライド扉6を閉鎖する場合には、グレモンハンドルH1を下側に回動して上側ロッド11を下動させてレバー180を下方に回動させてロック状態とし、手動で第1スライド扉6を戸先側へスライド移動させることで閉鎖姿勢とする。第1スライド扉6が戸先側へスライド移動する時には、第2の方向に回転する巻取ドラムによって第2ワイヤW2の戸先側が巻き取られる。
車両用開口部を形成する場合には、第1扉体3、第2扉体4を開放させるが、本実施形態では、第1扉体3の開放操作に連動して、第1スライド扉6が自動開放する(第1スライド扉6が開放姿勢となる過程で第2スライド扉7も開放姿勢となる)。
図11~図13を参照しつつ、第1扉体3の開放操作に伴う、引戸開放機構を用いた第1スライド扉6の自動開放、自動開放した第1スライド扉6の手動閉鎖について説明する。
図11(A)は、第1扉体3、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にあり、グレモンハンドルH1は施錠姿勢にあり、巻取装置18のレバー180はロック姿勢にあり、巻取装置18のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されている。
図11(B)では、第1扉体3を開放するためにグレモンハンドルH1が施錠姿勢から解錠姿勢に回動されており、巻取装置18のレバー180がロック解除姿勢にあり、巻取装置18のロック装置はロック解除状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動規制が解除されて、引戸開放装置17によって第1スライド扉6が戸尻側へ少しスライド移動した状態を示している。
図12(C)は、引戸開放装置17によって、第1スライド扉6が開放姿勢までスライド移動した状態を示す。引戸開放装置により第2ワイヤW2を引っ張る力は、自閉装置DC3により第1ワイヤW1を引っ張る力よりも大きいため、第1スライド扉6の戸尻側(開放方向)への移動時には第1ワイヤW1が自閉装置DC3の巻取ドラム160から引き出されていき、また、引戸開放装置によって第1スライド扉6の開放姿勢が維持される。
図11(B)、図12(C)に示す第1スライド扉6の開放と並行して、第1扉体3が開放可能となる。第1スライド扉6の開放によって第1扉体3に開口部5が形成されることで、第1扉体3の面部に作用する風圧力が軽減され、第1扉体3を回動させる際の操作性が良い。
図12(D)は、第1扉体3を閉鎖姿勢に戻した後に、第1扉体3の閉鎖姿勢を固定するためにグレモンハンドルH1が解錠姿勢から施錠姿勢に回動されており、巻取装置18のレバー180はロック姿勢にあり、巻取装置18のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制される。
図12(D)の状態から手動で第1スライド扉6を戸先側(閉鎖方向)へ移動させることで第1スライド扉6を閉鎖姿勢とする(図13(E)、(F))。この時、戸先側(閉鎖方向)へ移動する第1ハンガーローラ63の当接部632が当接体633を押すことで、第2ワイヤW2が巻取装置18に巻き取られていく。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されているので、第1スライド扉6の閉鎖姿勢が維持される。
人道用開口部を形成する場合には、第1スライド扉6に設けた取手H3を用いて、第1スライド扉6を開放させることで、第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放させるようになっている。第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放させた状態で取手H3から手を離すと、自閉装置DC3によって、第1スライド扉6、第2スライド扉7が閉鎖方向に移動して閉鎖姿勢となる。
図14~図16を参照しつつ、第1スライド扉6の手動開放、手動開放した第1スライド扉6の自動閉鎖について説明する。
図14(A)は、第1扉体3、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にあり、グレモンハンドルH1は施錠姿勢にあり、巻取装置18のレバー180はロック姿勢にあり、巻取装置18のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されている。
図14(A)の状態から、第1スライド扉6の閉鎖姿勢を維持したままで、手動で第1スライド扉6を戸尻側(開放方向)へ移動させる。この時、第1スライド扉6(第2ハンガーローラ64)の移動に伴って、第1ワイヤW1が自閉装置DC3の巻取ドラム160から引き出されていき、開放姿勢まで移動する(図15(C))。この時、第1ハンガーローラ63は、引き出しが規制された第2ワイヤW2に沿って戸尻側(開放方向)へ移動する。
第1スライド扉6が開放姿勢まで移動すると、自閉装置DC3のタイマーによって開放姿勢(図3参照)を所定時間(例えば1分間)保持するようになっている。
その後、自閉装置DC3の作動によって、戸先側(閉鎖方向)に移動する第1ワイヤW1上の当接体643が第2ハンガーローラ64の当接部642を押すことで、第1スライド扉6は自動で戸先側(閉鎖方向)に移動して閉鎖姿勢となる(図16(D)、(E))。
図14(B)、図15(C)、図16(D)における当接部633の位置から明らかなように、当接体633は移動していない。
このように構成された避難連絡坑ドアにおいて、通常時には、閉鎖姿勢にある開き扉によって開口部1が閉鎖され、閉鎖姿勢にある引き戸によって開口部5が閉鎖されている。災害時等に車両用開口部を形成したい場合には、グレモンハンドルH1を回動して第1扉体3の閉鎖姿勢のロックを解除すると、グレモンハンドルH1の回動操作に連動して巻取装置18のロック装置がロック解除状態となって、引戸開放装置17によって、第1スライド扉6が開放する。
第1スライド扉6が開放することで、第1扉体3の面部に作用する圧力が軽減された状態で第1扉体3を避難連絡坑側Bに開放することが可能となり、第1扉体3を開放姿勢まで回動し、係止ロッドR1を下動して第1扉体3の開放姿勢を維持する。次いで、グレモンハンドルH2を回動して第2扉体4の閉鎖姿勢のロックを解除し、第2扉体4を避難連絡坑B側に開放して、係止ロッドR2を下動して第1扉体3の開放姿勢を維持することで、車両用開口部を形成する。
災害時等に人道用開口部を形成したい場合には、取手H3を掴んで第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放することで、開き扉の閉鎖姿勢を維持したままで、人道用開口部を形成することができる。
図17~図29に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態と既述の実施形態とは主として第2巻取装置の構成について異なるものである。すなわち、第2実施形態に係る避難扉は、既述の実施形態の巻取装置18及びレバー18に代えて、巻取装置18´及び作動ワイヤW3を備えている点に特徴を有するものである。第2実施形態に係る避難扉の他の構成や動作については既述の実施形態に係る避難扉と実質的に同じであり、第2実施形態の説明には既述の実施形態の説明を援用することができる。第2実施形態を示す図17~図29において、既述の実施形態と同じ要素については同一の参照番号が付してある。以下、第2実施形態に係る避難扉について、上記特徴を中心に説明する。
第1扉体3の開放操作に連動して第1スライド扉6を自動で開放させる引戸開放機構は、第1スライド扉6の幅方向に水平に延びる第2ワイヤW2と、上枠9の戸尻側部位に設けてあり、第2ワイヤW2の一端側(戸尻側)を巻き取る引戸開放装置(第1巻取装置)17と、上枠9の戸先側部位に設けてあり、第2ワイヤW2の他端側を巻き取るロック付き巻取装置(第2巻取装置)18´と、を備えている。第2ワイヤW2の戸尻側はガイドプーリ19Aに巻回されて上方に案内され、引戸開放装置17の巻取ドラム170に巻き取られる。第2ワイヤW2の戸先側はガイドプーリ19Bに巻回されて上方に案内され、ロック付き巻取装置18´の巻取ドラム181の巻取周面1810に巻き取られる。引戸開放装置17の巻取ドラム170の巻取方向の付勢力は、巻取装置18´の巻取ドラム181の巻取方向の付勢力よりも大きく、かつ、自閉装置DC3の巻取ドラム160の巻取方向の付勢力よりも大きい。ガイドプーリ19Bの巻き掛け部の下方部位に対向して周方向に間隔を存して複数本(図示の態様では3本)のガイドピン190Bが設けてある(図19、図24)。ガイドプーリ19Bの巻き掛け部とガイドピン190Bとの間隔は、第2ワイヤW2が弛んだ時であっても、第2ワイヤW2が外れない寸法となっている。
図19、図22(A)に示すように、第2ワイヤW2には当接体633が設けてあり、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にある時に、当接体633が第1ハンガーローラ63の当接部632の戸先側に位置して、当接部632に当接している。巻取装置18´の巻取ドラム181が第1の方向に回転すると第2ワイヤW2が繰り出されて戸尻側(開放方向)に移動し、巻取ドラム181が第2の方向に回転すると第2ワイヤW2が巻き取られて戸先側(閉鎖方向)に移動する。
巻取装置18´は、ロック装置付き巻取装置であって、ロック装置がロック状態にある時には、巻取装置18´の巻取ドラム181の第1の方向の回転が規制されており、第2の方向の回転は許容されている。本実施形態では、図23に示すように、ロック装置は、巻取ドラム181に連結されており、巻取ドラム181と一体で回転可能なラチェット歯車182と、ラチェット歯車182の歯に係脱可能な回動係止体183と、を備え、回動係止体183は、ラチェット歯車182に係止してラチェット歯車182の第1の方向の回転を規制する第1姿勢(図23(B))と、ラチェット歯車182との係合が外れてラチェット歯車182の第1の方向の回転を許容する第2姿勢(図23(C))との間で回動可能となっている。
図23(B)に示すように、本実施形態に係る回動係止体183は、第1部分1830と第2部分1831とからブーメラン状の形状を備えており、第1部分1830の先端に爪部183Aが一体形成されており、第1部分1830の基端が回動支点183Bとなっている。第2部分1831は第1部分の基端から延びており、第2部分1831の端部には被当接部183Cが一体形成されている。回動係止体183は、バネ1832によって、第1姿勢を保持する方向に付勢されている。
巻取装置18´には、ロック装置に隣接して(図示の態様では、巻取ドラム181の上側に位置して)、回動体184が設けてあり、回動体184には板状のカム185が連結されており、回動体184とカム185が一体で回動可能となっている。回動体184は、図示しないバネによって、第1姿勢を維持する方向に付勢されている。回動係止体183の被当接部にはカム185の周面が接触している。回動体184の回動中心からカム185の周面までの距離は、周面の周方向に変化しており、回動体184の姿勢によって、回動体184の中心から回動係止体183の被当接部(カム185の周面との接触部)183Cの距離が変化する。
回動体184及びカム185が第1姿勢にある時に、回動係止体183は第1姿勢にあり、回動係止体183の第1姿勢が保持されている。回動体184及びカム185が第1姿勢から第2姿勢に回動する時に、回転するカム185の周面によって回動係止体183の被当接部183Cが下方に押し下げられ、第1姿勢にある回動係止体183が回動支点183Bを中心に第2姿勢に回動して、第1部分の先端の爪部183Aがラチェット歯車182から外れてロックが解除される。
巻取装置18´は、ボックス状の筐体186を備え、巻取ドラム181及び回動体184は筐体186の前面の外側に露出しており、ラチェット歯車182、回動係止体183、カム185は筐体186内部に設けてある。本実施形態において、巻取装置18´は、自閉装置DC3よりも戸尻側に位置しており、上枠9内のスペースを有効活用している。
回動体184と上側ロッド11は、作動ワイヤW3によって連結されている。より具体的には、作動ワイヤW3の第1端部(戸尻側端部)は回動体184に連結されており、作動ワイヤW3の第2端部(戸先側端部)は上側ロッド11に連結されている。巻取装置18´のロック装置は、作動ワイヤW3の移動に連動して、ロック状態とロック解除状態が切り替わるようになっている。上側ロッド11の上動に伴って、作動ワイヤW3の第2端部側が引っ張られることで、第1姿勢にある回動体184及びカム185が回動して第2姿勢となり、回動係止体183が第1姿勢から第2姿勢となってロック解除状態となる。上動した上側ロッド11の下動に伴って作動ワイヤW3の引っ張り力が解除されると、回動体184は付勢手段(バネ等)によって、第1姿勢に復帰する。
作動ワイヤW3の第1端部は、回動体184の周面に巻き掛けされて当該周面に固定されている。作動ワイヤW3の第2端部は、上側ロッド11に持ち出し状に突設した固定部111に固定されている。作動ワイヤW3はアウターワイヤ187内を挿通している。アウターワイヤ187の第1端部(戸尻側端部)は、巻取装置18´の筐体186の前面に設けた固定部1870に固定されており、アウターワイヤ187の第2端部(戸先側端部)は、第1扉体3の戸先側縦枠30の内側見付面300の所定高さ位置に設けた固定部1871に固定されている。アウターワイヤ187の第2端部側部位は、正面視において上側ロッド11と同一軸線上で垂直に延びている(図25)。第1扉体3の戸先側縦枠30の内側見付面300には、作動ワイヤW3の第2端部側部位、固定部111、アウターワイヤ187の第2端部側部位、固定部1871を覆うようにカバーボックス188が設けてある。
本実施形態では、第1扉体3のグレモンハンドルH1の回動操作に伴う上側ロッド11の上動によって、作動ワイヤW3の第2端部側が引っ張られる。具体的には、第1扉体3の開放時に、グレモンハンドルH1を上側に回動して上側ロッド11を上動させる時に、上側ロッド11の上動と共に固定部111が上昇することで、作動ワイヤW3の第2端部側が引っ張られ、回動体184及びカム185が第1姿勢から第2姿勢に回動し、回動係止体183が第1姿勢から第2姿勢に回動することで、回動係止体183とラチェット歯車182の係合が外れて、ロック解除状態となる。第1扉体3の閉鎖姿勢を固定する時に、グレモンハンドルH1を下側に回動して上側ロッド11を下動させる時に、上側ロッド11の下動と共に固定部111が下降することで、引張状態にある作動ワイヤW3が緩み、回動体184及びカム185が第2姿勢から第1姿勢に回動し、回動係止体183が第2姿勢から第1姿勢に回動することで、回動係止体183がラチェット歯車182に係合して、ロック状態となる。
閉鎖姿勢にある第1扉体3のグレモンハンドルH1を解錠方向に回動すると、作動ワイヤW3を介して、巻取装置18´のロック装置のロックが解除され、巻取装置18´の巻取ドラム181の第1方向への回転規制が解除され、引戸開放装置17によって第2ワイヤW2が巻き取られて第2ワイヤW2が戸尻側(開放方向)へ移動し、当接体633が当接部632に当接して戸尻側へ移動させることで、第1ハンガーローラ63(第1スライド扉6)が戸尻側(開放方向)へ移動して、開口部5を開放する。第1スライド扉6の開放姿勢は、引戸開放装置17によって維持される。
引戸開放装置17によって開放姿勢となった第1スライド扉6を閉鎖する場合には、グレモンハンドルH1を下側に回動して上側ロッド11を下動させて作動ワイヤW3の引張状態を解除させてロック状態とし、手動で第1スライド扉6を戸先側へスライド移動させることで閉鎖姿勢とする。第1スライド扉6が戸先側へスライド移動する時には、第2の方向に回転する巻取ドラム181によって第2ワイヤW2の戸先側が巻き取られる。
車両用開口部を形成する場合には、第1扉体3、第2扉体4を開放させるが、本実施形態では、第1扉体3の開放操作に連動して、第1スライド扉6が自動開放する(第1スライド扉6が開放姿勢となる過程で第2スライド扉7も開放姿勢となる)。図26、図27を参照しつつ、第1扉体3の開放操作に伴う、引戸開放機構を用いた第1スライド扉6の自動開放、自動開放した第1スライド扉6の手動閉鎖について説明する。
図26(A)は、第1扉体3、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にあり、グレモンハンドルH1は施錠姿勢にあり、作動ワイヤW3は、回動体184の付勢力によって、回動体184の周面に巻回されており、回動体184、カム185、回動係止体183は第1姿勢にあり、巻取装置18´のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されている。
図26(B)では、第1扉体3を開放するためにグレモンハンドルH1が施錠姿勢から解錠姿勢に回動されており、上側ロッド11の上動に伴って作動ワイヤW3の他端側が引っ張られ、回動体184、カム185、回動係止体183は第1姿勢から第2姿勢に回動し、巻取装置18´のロック装置はロック解除状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動規制が解除されて、第2ワイヤW2上の当接体633が第1ハンガーローラ63の当接部632を押すことで、引戸開放装置17によって第1スライド扉6が戸尻側へ少しスライド移動した状態を示している。
図26(C)は、引戸開放装置17によって、第1スライド扉6が開放姿勢までスライド移動した状態を示す。引戸開放装置により第2ワイヤW2を引っ張る力は、自閉装置DC3により第1ワイヤW1を引っ張る力よりも大きいため、第1スライド扉6の戸尻側(開放方向)への移動時には第1ワイヤW1が自閉装置DC3の巻取ドラム160から引き出されていき、また、引戸開放装置によって第1スライド扉6の開放姿勢が維持される。
図26(B)、図26(C)に示す第1スライド扉6の開放と並行して、第1扉体3が開放可能となる。第1スライド扉6の開放によって第1扉体3に開口部5が形成されることで、第1扉体3の面部に作用する風圧力が軽減され、第1扉体3を回動させる際の操作性が良い。
図27(D)は、第1扉体3を閉鎖姿勢に戻した後に、第1扉体3の閉鎖姿勢を固定するためにグレモンハンドルH1が解錠姿勢から施錠姿勢に回動されており、上側ロッド11の下動に伴って作動ワイヤW3の他端側の引張力が無くなり、回動体184、カム185、回動係止体183は第2姿勢から第1姿勢に回動し、巻取装置18´のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制さる。
図27(D)の状態から手動で第1スライド扉6を戸先側(閉鎖方向)へ移動させることで第1スライド扉6を閉鎖姿勢とする(図27(E)、(F))。この時、戸先側(閉鎖方向)へ移動する第1ハンガーローラ63の当接部632が当接体633を押すことで、第2ワイヤW2が巻取装置18´の巻取ドラム181に巻き取られていく。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されているので、第1スライド扉6の閉鎖姿勢が維持される。
人道用開口部を形成する場合には、第1スライド扉6に設けた取手H3を用いて、第1スライド扉6を開放させることで、第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放させるようになっている。第1スライド扉6、第2スライド扉7を開放させた状態で取手H3から手を離すと、自閉装置DC3によって、第1スライド扉6、第2スライド扉7が閉鎖方向に移動して閉鎖姿勢となる。図28、図29を参照しつつ、第1スライド扉6の手動開放、手動開放した第1スライド扉6の自動閉鎖について説明する。
図28(A)は、第1扉体3、第1スライド扉6が閉鎖姿勢にあり、グレモンハンドルH1は施錠姿勢にあり、巻取装置18´のロック装置はロック状態にある。第2ワイヤW2の戸尻側(開放方向)への移動は規制されている。図28(A)の状態から、第1スライド扉6の閉鎖姿勢を維持したままで、手動で第1スライド扉6を戸尻側(開放方向)へ移動させる。この時、第1スライド扉6(第2ハンガーローラ64)の移動に伴って、第2ハンガーローラ64の当接部642が当接体643を押すことで、第1ワイヤW1が自閉装置DC3の巻取ドラム160から引き出されていき、開放姿勢まで移動する(図28(C))。この時、第1ハンガーローラ63は、引き出しが規制された第2ワイヤW2に沿って戸尻側(開放方向)へ移動する。
第1スライド扉6が開放姿勢まで移動すると、自閉装置DC3のタイマーによって開放姿勢(図18参照)を所定時間(例えば1分間)保持するようになっている。その後、自閉装置DC3の作動によって、戸先側(閉鎖方向)に移動する第1ワイヤW1上の当接体643が第2ハンガーローラ64の当接部642を押すことで、第1スライド扉6は自動で戸先側(閉鎖方向)に移動して閉鎖姿勢となる(図29(D)、(E))。図28(B)、(C)、図29(D)における当接部633の位置から明らかなように、当接体633は移動していない。また、本実施形態では、当接部642はバネ642Aによって支持されており、バネ642Aは、当接部642と当接体643が当たった時の衝撃を和らげる緩衝部材として機能する。