JP7356773B1 - 異常検知システム、および異常検知方法 - Google Patents

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剛史 早川
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Abstract

【課題】マルチレベルフローモデルのモデリング手法を採用し、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、その制御系の異常を迅速に検知するとともにその異常箇所を特定および可視化することができる異常検知装置および異常検知方法を提供する。【解決手段】異常検知システム1は、電気回路系(回路系の一例)も含んで構成されて現実に稼働する所定のモータ制御系(制御系の一例)に対しハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知システム1である。異常検知システム1は、マルチレベルフローモデルの手法に従って制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素Fを設けるモデル設定部16Aを含んで構成される。【選択図】図5

Description

本発明は、回路系も含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系にハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知システム、および異常検知方法に関する。
現実に稼働する所定の制御系に対する異常検知の従来技術として、制御系の状態量を計測する状態量計測装置と、計測量判定装置と、診断装置と、表示装置と、を備えるシステムが知られる(たとえば特許文献1参照)。
なお、特許文献1記載の装置が対象とする制御系は、プラントとされる。
特許文献1記載の計測量判定装置は、状態量計測装置からの計測信号に基づいて異常診断の対象とするプラントモデルに対応する状態量を決定し、プラント制御装置からのプラントの稼働スケジュールを参照して基準値およびしきい値により正常・異常を判定する。特許文献1記載の診断装置は、計測量判定装置の判定結果を入力し、プラントモデル上の異常要素をあらかじめ決められた診断手法に従って同定する。特許文献1記載の表示装置は、診断装置の異常診断結果および推論過程を示す情報を表示する。
また、他の従来技術として、特許文献1と同様に対象とする制御系がプラントであり、制御系の状態量を計測する状態量計測装置と、計測量判定装置と、診断装置と、表示装置と、を備えるシステムも知られる(たとえば特許文献2参照)。
特許文献2記載の計測量判定装置は、状態量計測装置からの計測信号に基づいて異常診断の対象とするプラント機能階層モデルにかかる計測状態量の正常/異常を判定する。また、特許文献2記載の計測量判定装置は、プラント制御装置からのプラントの稼働スケジュールに応じて計測状態量の正常/異常判定用のしきい値の変更およびプラント機能階層モデルにおける各ゴールの優先度を決定する。特許文献2記載の診断装置は、計測量判定装置の判定結果に基づいてプラント機能階層モデル上の異常伝播ネットワークを求め、異常診断を行う。特許文献2記載の表示装置は、診断装置の異常診断結果および推論過程を表示する。
特開平9-190219号公報 特開平10-20932号公報
ところで、制御系をモデリングして適応的に制御するモデリング手法として、マルチレベルフローモデル(Multi-Level Flow Models: MLFM、以下「MLFM」ともいう。)が知られる。
MLFMは、プロセス制御または制御システムの設計などに使用され、現実の物理的な要素がモデル内の要素として表現され、モデルが現実世界とより直接的に対応することが可能となる。さらに、MLFMは、システムダイナミクスの表現が可能である。すなわち、MLFMは、制御系(システム)内のフィードバックループおよび時系列的な変化を適切に表現して、制御系の安定性または振動、成長または衰退などの制御系のダイナミクスを精度よく分析することが可能となる。さらに、MLFMでは、制御系の複雑さを適切に分割および統合することが可能であり、大規模で複雑な制御系を扱う場合でもそのオペレータなどにとってその理解や分析が容易となる。
そのように、MLFMは、種々の利点を有するモデリング手法ではあるが、前述の特許文献1および特許文献2のような従来のシステムは、そのモデリング手法としてMLFMまで対応するものではなく、たとえば特許文献1の装置ではマス・エネルギーの流れを表現するニューラル・ネットワークに基づくものである。MLFMへの適用という点で、改善の余地があったといえる。また、前述のように、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、異常検知システムにMLFMのモデル手法を採用することで適応的にかつ迅速に対応することが可能となる。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチレベルフローモデルのモデリング手法を採用し、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、その制御系の異常を迅速に検知するとともにその異常箇所を特定および可視化することができる異常検知装置および異常検知方法を提供することにある。
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
[1]
回路系も含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系に対しハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知システムであって、
マルチレベルフローモデルの手法に従って前記制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素を設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現される1つのメイングループと、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現されるとともにそのそれぞれの最末端の前記機能要素で前記メイングループの前記複数の機能要素のうちいずれか1つに接続する1または複数のサブグループと、を設定するモデル設定部と、
前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおける前記複数の機能要素のそれぞれの現実の状態量を取得し当該状態量を行列形式で表現する現実状態取得部と、
前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおいて、当該メイングループまたは当該サブグループに属する前記機能要素の個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量を行列形式で算出する仮想状態算出部と、
前記仮想状態算出部の算出した前記複数の仮想状態量のそれぞれに対し、前記現実状態取得部の取得結果と比較する状態比較部と、
前記状態比較部の比較結果に基づいて、異常が発生した前記機能要素を特定する異常特定部と、を含む、
異常検知システム。
[2]
前記複数のサブグループが第L番目まで設定されており、前記サブグループのうち第j(jは自然数;j=1,・・・,L)番目において前記複数の機能要素がその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第M(Mは自然数)番目まで設定される場合において、
前記現実状態取得部は、前記第j番目の前記サブグループにおける第k(kは自然数;k=1,・・・,M)番目の前記機能要素の現実の前記状態量Sjk(前記第j番目のサブグループにおける前記第k番目の前記機能要素の前記状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式で表現するとともに、前記第j番目の前記サブグループの全体での現実の前記状態量を示すサブ全体状態量Pjを後記の数式1に従って行列形式で表現し、
前記仮想状態算出部は、当該第j番目の前記サブグループにおける前記複数の仮想状態量Qjkを後記の数式2に従って算出し、
前記状態比較部は、その対象とする前記サブグループごとに、当該サブグループの前記複数の仮想状態量Qjkのそれぞれに対し当該サブグループの前記サブ全体状態量Pjを比較して一致するか否かを判定する、
[1]に記載の異常検知システム。

[数式1]
j=(Sj1j2 ・・・ Sj(M-1)jM
ただし、jは自然数;j=1,・・・,L

[数式2]
jk=(Sj1 ・・・ Sj(k-1)jk1 1・Sjk ・・・ T1 M-k・Sjk
ただし、j,kはいずれも自然数;j=1,・・・,L;k=1,・・・,M
jは、当該第j番目の前記サブグループにおいて隣接して配置される前記機能要素の間に設定される仮想異常伝達関数である。

[3]
前記異常特定部の特定結果に基づいて、前記制御系の機能における異常箇所を検知する異常検知部と、をさらに含み、
前記仮想状態量Qjkは、前記第j番目の前記サブグループにおける前記第k番目の前記機能要素に対応するものとして設定され、
前記異常特定部は、前記状態比較部での比較の結果、当該第j番目のサブグループにおいて1つのみ一致する場合にはその一致した前記仮想状態量Qjkに基づいて当該仮想状態量Qjkに対応する前記第k番目の前記機能要素を特定し、あるいは当該第j番目のサブグループにおいて複数一致する場合、その一致した複数の前記仮想状態量Qjkに基づいて、当該仮想状態量Qjkの対応する前記機能要素のうち最も上側に配置される前記機能要素を特定し、
前記異常検知部は、前記異常特定部によって特定した前記機能要素に対応する前記制御系の機能に異常が発生していることを検知する、
[2]に記載の異常検知システム。
[4]
前記メイングループにおいて、前記複数の機能要素がその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第N(Nは自然数)番目まで設定される場合において、
前記現実状態取得部は、前記メイングループにおける第i(iは自然数;i=1,・・・,N)番目の前記機能要素の前記状態量Ui(前記メイングループにおける前記第i番目の前記機能要素の前記状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式で表現するとともに、前記メイングループの全体の前記状態量を示すメイン全体状態量Vを後記の数式3に従って行列形式で表現し、
前記仮想状態算出部は、当該メイングループにおける前記複数の仮想状態量Wiを後記の数式4に従って算出し、
さらに前記仮想状態算出部は、前記メイングループの第x(1<=x<=N)番目の前記機能要素に対して第y(1<=y<=L(Lは自然数))番目の前記サブグループの最末端に配置される前記機能要素が接続する場合、当該複数の仮想状態量Wiのそれぞれに対し後記の数式4においてその横方向に並列される行列要素のうち前記第x番目よりも次以降の前記行列要素でありかつ後記の仮想異常伝達関数Tが行列乗算されて算出された前記行列要素と判定される1または複数の前記行列要素にのみ、前記第y番目の前記サブグループの最末端に配置される前記機能要素の実際の前記状態量Syをさらにそれぞれ行列乗算して、複数の仮想状態量Wi’(i=1,・・・,N)を算出し、
前記状態比較部は、前記メイングループの前記複数の仮想状態量Wi’のそれぞれに対して前記メイン全体状態量Vを比較して一致するか否かを判定する、
[1]に記載の異常検知システム。

[数式3]
V = (U12 ・・・ UN-1N

[数式4]
i = (U1 ・・・ Ui-1i1・Ui ・・・ TN-i・Ui
ただし、iは自然数;i=1,・・・,N
Tは、前記メイングループにおいて隣接して配置される前記機能要素の間に設定される仮想異常伝達関数である。

[5]
前記異常特定部の特定結果に基づいて、前記制御系の機能における異常箇所を検知する異常検知部と、をさらに含み、
前記仮想状態量Wi’は、前記メイングループにおける前記第i番目の前記機能要素に対応するものとして設定され、
前記異常特定部は、前記状態比較部での比較の結果、1つのみ一致する場合にはその一致した前記仮想状態量Wi’に基づいて当該仮想状態量Wi’に対応する前記第i番目の前記機能要素を特定し、あるいは複数一致する場合、その一致した複数の前記仮想状態量Wi’に基づいて、当該仮想状態量Wi’の対応する前記機能要素のうち最も上側に配置される前記機能要素を特定し、
前記異常検知部は、前記異常特定部によって特定した前記機能要素に対応する前記制御系の機能に異常が発生していることを検知する、
[4]に記載の異常検知システム。
[6]
前記仮想異常伝達関数は、単位行列である、
[2]または[4]に記載の異常検知システム。
[7]
所定の装置および/またはプログラムを使用して、回路系も含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系にハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知方法であって、
マルチレベルフローモデルの手法に従って前記制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素を設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現される1つのメイングループと、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現されるとともにそのそれぞれの最末端の前記機能要素で前記メイングループの前記複数の機能要素のうちいずれか1つに接続する1または複数のサブグループと、を設定するモデル設定ステップと、
前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおける前記複数の機能要素のそれぞれの現実の状態量を取得し当該状態量を行列形式で表現する現実状態取得ステップと、
前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおいて、当該メイングループまたは当該サブグループに属する前記機能要素の個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量を行列形式で算出する仮想状態算出ステップと、
前記仮想状態算出ステップで算出した前記複数の仮想状態量のそれぞれに対し、前記現実状態取得ステップでの取得結果と比較する状態比較ステップと、
前記状態比較ステップでの比較結果に基づいて、異常が発生した前記機能要素を特定する異常特定ステップと、を含む、
異常検知方法。
本発明によれば、マルチレベルフローモデルのモデリング手法を採用し、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、その制御系の異常を迅速に検知するとともにその異常箇所を特定および可視化することができる。
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
本発明に係る第1実施形態の異常検知システムに関するネットワーク構成の一例を説明する概略構成図 図1に示す異常検知システムが制御対象とする車両操舵装置の構成の一例を説明する概略構成図 図2に示す車両操舵装置の電気回路の概略構成の一例を説明する回路図 図1に示すサーバー装置のハードウェア構成の一例を説明する模式図 図1に示すサーバー装置および情報端末装置で実現される機能の一例を説明するブロック図 モデル設定部によって図2の制御対象を表現する制御モデルの一例を説明する機能ブロック図 図5に示すサーバー装置が実行する動作フローの一例を説明するフロー図
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る、異常検知システムおよび異常検知方法を具体的に開示する1つまたは複数の実施形態を詳細に説明する。
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえばすでによく知られた事項の詳細説明または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、添付図面のそれぞれは符号の向きに従って視るものとする。
また、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
<用語の説明>
「を有する」「を備える」「を含む」および「を含有する」と同義である用語「を含む」または「により特徴づけられる」「を特徴とする」は、包括的または開放型な意味で解釈されるものであり、追加の、挙げられていない要素または方法のステップを排除しない。「を含む」は、請求項の言語で使用される技術用語であり、それは名を挙げられた請求項要素は必須であるが、他の請求項要素が追加されて請求項の範囲内で構成物をさらに形成してもよいことを意味する。
また、本明細書において「からなる」という語句を使用する場合には、当該「からなる」という語句は、請求項で特定されていない、いかなる要素、ステップまたは成分も排除する。語句「からなる(またはその変形)」が、プリアンブルの直後ではなくむしろ、請求項の本体の節に現れる場合、それは、その節において示された要素のみを限定し、他の要素が当該請求項全体から排除されるのではない。本明細書において使用する語句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定された要素または方法ステップに加えて、請求された対象事物の主成分および新規な特徴(単数または複数)に実質的に影響しないものに限定する。
用語「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」に関して、これら3つの用語の1つが本明細書において使用される場合、本発明で開示されたおよび請求された対象事物は、他の2つの用語のいずれかの使用も含むこともある。従って、そうではないと明示的に挙げなかったいくつかの実施形態において、「を含む」の任意の場合が、「からなる」または「から本質的になる」によって置き換えられ得る。
用語「工程」もしくは「ステップ」は、プロセスまたは方法の特徴に関連して、明示的に用いられ、または暗示的に用いられ得る。しかしながら、順番または手順について明記されない限り、このような明示的な工程もしくはステップの間、または暗示的な工程もしくはステップの間における、順番または手順は、限定されない。
また、本明細書でいう用語「部」または「装置」とは単にハードウェアによって機械的に実現される物理的構成に限らず、その構成が有する機能をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、または2つ以上の構成の機能がたとえば1つの物理的構成(たとえば1つの独立した装置)によって実現されていてもかまわない。
また、以下の実施形態の説明で用いる用語「ユーザ」は、情報端末装置(たとえば専用端末のほかスマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどのコンピュータ)を所有して制御対象(たとえば、車両、車両操舵装置など)を適宜検査する検査員というだけではなく、後述する車両の運転手またはその所有者なども含めて広く解釈される。
<マルチレベルフローモデル>
マルチレベルフローモデル(Multi-Level Flow Models、MLFM)は、プロセス制御や制御システムの設計に使用されるシステムの形式的なモデリング手法である。以下に、その特徴とその説明を箇条書で説明する。
[・階層的な構造]
MLFMは、階層的な構造を有する。この構造は、システムを最上位から最下位まで分割することで、より簡潔で理解しやすいモデルを作成することが可能である。各レベルは、より詳細なレベルに分割することができ、システムの複雑性を効果的に管理することが可能である。たとえば、MLFMの最上位レベルは、システム全体を表し、中間レベルは、システムの部分的なコンポーネントを表現することが可能である。最下位レベルは、コンポーネントの細かい詳細を表現することも可能である。
[・物理的な意味のある表現]
MLFMは、物理的な意味を持つ表現を使用する。このモデルの主な目的は、プロセスや制御システム内の実際の物理的な要素が、モデル内の要素として表現されることで、モデルが現実世界とより直接的に対応することが可能である。この特徴は、MLFMが他の形式手法と異なる点の1つである。
[・複数のレベルでの制御]
MLFMは、複数のレベルでの制御を可能にする。モデルは、各レベルでの状態を表現し、それぞれのレベルで制御を行うことが可能である。たとえば、MLFMは、部分的な制御を行うことができ、部分的な制御が成功した場合には、その部分システムの全体的な制御に向けて、次の段階に進むことが可能である。
[・多目的性]
MLFMは、多目的なモデルであるため、異なる目的に使用することが可能である。設計および制御、トラブルシューティング、そしてシステムの機能解析などに利用することが可能である。MLFMは、非常に柔軟なモデルであるため、多くの目的に対して使用することが可能である。
[・直感的な表現]
MLFMは、直感的な表現方法を使用するため、モデルの理解や解釈が容易になる。また、MLFMは、シンプルで明確な表現を使用することが可能であるため、複雑なモデルでも直感的に理解可能である。さらに、MLFMは、物理的な意味を持つ表現を使用するため、その意味においても、直感的な理解が容易である。MLFMは、コンポーネント間の関係を明確に表現するため、モデルの中での要素の役割をより明確に説明することが可能である。
[・可読性(可視性)が高い]
MLFMは、可読性が高いという特徴を有する。MLFMは、階層的で、物理的な意味を持つ表現を使用するため、モデルを理解するのが容易となる。また、多くの場合、図表によって視覚的に表現することが可能であり、直感的に理解可能である。そのため、MLFMは、設計やトラブルシューティングなど、システム解析の様々な目的に対して、高い可読性を提供することが可能である。
<第1実施形態>
図1~図7に基づいて、本発明に係る異常検知システム1および異常検知方法の第1実施形態について説明する。
[・異常検知システムのネットワークの構成について]
図1を参照しながら、本実施形態の異常検知システム1のネットワーク構成について説明する。
図1は、本実施形態の異常検知システム1に関するネットワーク構成の一例を説明する概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の異常検知システム1は、通信ネットワークNと、複数のサーバー装置10と、車両Cに搭載される複数の情報端末装置20と、を含んで構成される。
なお、本実施形態では車両Cに車両操舵装置30(後述参照)が搭載されており、当該車両操舵装置30が本実施形態の異常検知システム1における制御対象(異常検知対象)とされる。
複数のサーバー装置10は、たとえば所定の施設内に配置される。情報端末装置20は、ユーザHのそれぞれによって操作可能にたとえば車両Cに搭載されてハードウェア的に接続する。
そのような構成によって、サーバー装置10は、情報端末装置20のそれぞれによる車両C(本実施形態では車両操舵装置30)の状況を全体的に検知して、ユーザHのそれぞれは情報端末装置20を通じて当該車両Cの異常発生の有無を把握することが可能である。
なお、情報端末装置がスマートフォンなどの小型端末である場合には、情報端末装置は必要なときに車両Cにハードウェア的に接続され、それ以外のときには携帯可能または移動(移設)可能に構成されてもよい。
通信ネットワークNは、複数のサーバー装置10と、複数の情報端末装置20のそれぞれと、に接続されており、種々の情報または信号が相互にやり取り可能に設けられる。また、通信ネットワークNは、少なくとも有線または無線の回線を含み、インターネット回線をその一部またはすべて含んで構成される。それにより、通信ネットワークNは、サーバー装置10と情報端末装置20との間、および情報端末装置20の間で相互に通信可能に構成される。つまり、複数のサーバー装置10は、通信ネットワークNを通じて複数のユーザHの情報端末装置20からアクセス可能に構成される。
なお、通信ネットワークNは、サーバー装置10および情報端末装置20の間の通信を促進するために、相互に接続して使用される、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、携帯電話ネットワーク(MTN)および他の種類のネットワークを適宜含むことも可能である。
情報端末装置20は、後述するように、画像出力部24(たとえばモニター装置またはディスプレイ装置など)と、操作入力部23(たとえばタッチパネル、キーボードまたはマウスなど)と、音声出力部(たとえばスピーカーなど:不図示)と、を少なくとも有して構成される。また、情報端末装置20は、前述したように通信ネットワークNによってサーバー装置10と相互に情報通信可能に構成される。そのため、情報端末装置20は、サーバー装置10によって検知される異常に関する情報をその画像出力部24および音声出力部に出力してその検知状況をユーザHに提示(報知)することが可能である。
なお、本実施形態では、情報端末装置20は、1つまたは複数の半導体により構成されるミニコンピュータが例示されるが、これに限定されない。たとえば、情報端末装置20は、その他に、ノートパソコン、スマートフォン、汎用のパソコン装置、携帯電話、タブレット、ラップトップコンピュータ、ネットブック、携帯情報端末(PDA)、ゲームデバイス、メディアプレーヤーまたは電子ブックなど種々に採用することが可能である。情報端末装置20は、通信ネットワークNに接続(アクセス)可能であれば情報端末装置の形態は限定されない。
そして、本実施形態では、サーバー装置10に本発明に係る異常検知システム1の主な機能が実装される。サーバー装置10は、通信ネットワークNを通じて複数の情報端末装置20と相互に通信して車両Cのそれぞれで異常発生を検知し、その検知結果を、情報端末装置20を通じてたとえば車両Cの運転者または現場オペレータなどに異常検知を報知する。
なお、本実施形態では、異常検知システム1の大部分の機能がサーバー装置10に実装されるが、これに限定されない。たとえば、サーバー装置10の機能の一部またはそのすべてを情報端末装置20に実装し、情報端末装置20のそれぞれが自律的にシステムの大部分の機能を実現可能に構成してもよい。
[・車両操舵装置の概略構成について]
図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る車両操舵装置30の構成について説明する。
図2は、図1に示す異常検知システム1が制御対象とする車両操舵装置30の構成の一例を説明する概略構成図である。
図3は、図2に示す車両操舵装置30の電気回路の概略構成の一例を説明する回路図である。
車両操舵装置30は、運転者(前述のユーザHでもよい)が操舵操作を行う操舵ホイル(不図示)を含んで構成される。
図2に示すように、操舵ホイルの操舵軸31は、減速機構を構成し後述するモータ38に内蔵される減速ギア32(ウォームギア)、ユニバーサルジョイント33、ピニオンラック機構34、タイロッド35を経て、さらにハブユニット36を通じて操向車輪37に連結する。
操舵軸31は、トーションバー(不図示)を介して、操舵ホイル側の入力軸と、ピニオンラック機構34側の出力軸と、が連結して構成される。
ピニオンラック機構34は、ピニオン34Aと、ピニオン34Aに噛合するラック34Bと、を有する。ピニオン34Aは、ユニバーサルジョイント33から操舵力が伝達されるピニオンシャフト(不図示)に連結する。ピニオン34Aに伝達される回転運動が、ラック34Bで車幅方向の直進運動に変換される。
また、車両操舵装置30は、モータ38(回路系の一例)と、回転センサ39(回路系の一例)と、ECU40(Electronic Control Unit、回路系の一例)と、電源であるバッテリ41と、をさらに含んで構成される。
モータ38は、減速ギア32を介して操舵軸31に連結する。モータ38は、操舵ホイルに対する車両Cの操舵力を伝達する。モータ38は、たとえば3相交流モータであり、永久磁石界磁または巻線界磁を有する。モータ38は、u相、v相、w相の各相コイル(不図示)に120°ずつ位相が異なる3相の交流電流が供給されることにより回転駆動される。
モータ38の回転子(不図示)の軸には、レゾルバ(不図示、回路系の一例)およびロータリエンコーダ(不図示、回路系の一例)などから構成される回転センサ39が配設される。回転センサ39は、そのような電気回路系として複数の回路を含んで構成され、モータ38の回転角または回転速度を検出する。
ECU40は、車両操舵装置30を制御するコントローラ(制御器)であり、ECU40にはバッテリ41(回路系の一例)から電力が供給される。その電力は、ECU40を介してモータ38にも供給される。回転センサ39によって検出されるモータ38の回転角は、ECU40に出力される。
つまり、ECU40は、回転センサ39の検出情報に基づいてモータ38に供給する電力を制御することで、結果的にモータ38を駆動指示することが可能である。そして、モータ38は、ECU40の駆動指示に基づいて、減速ギア32を動作させ操舵ホイルに対するたとえばアシスト制御を実現する。そのようにして、ECU40は、車両操舵装置30においてモータ制御系の駆動制御を行う。
つまり、本実施形態では、本発明に係る請求項に記載の「回路系を含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系」としてモータ制御系が例示される。
ただし、前述のように、本実施形態では、モータ制御系をその本発明の一例として示されるが、これに限定されない。石油プラントなどのプラント系、すべてが電気回路または電子回路で構成されるスマートフォンの制御系など、制御対象としてのその適用は広範囲に亘る。
ECU40は、CAN(Controller Area Network)を通じて、車両Cの内部の他の電気・電子回路および/または装置を横断的に接続しており、たとえば車両Cの中央管理部などから操舵の目標値情報などを受信し、その目標値情報に従ってモータ38を駆動制御する。
また、ECU40は、たとえば、プロセッサと、記憶装置12などの周辺部品(電気電子回路)を含むコンピュータを有して構成されてもよい。
ECU40のプロセッサは、たとえばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。ECU40の記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置および光学記憶装置のいずれかを有してもよい。
ECU40の記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリを含んでよい。ECU40の機能は、たとえばECU40のプロセッサが記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、ECU40は、各情報処理を実行するための専用の電気電子のハードウェアにより構成されてもよい。たとえば、ECU40は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を有してもよい。たとえば、ECU40は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)などを含んで構成されてもよい。
そして、本実施形態では、ECU40が前述の情報端末装置20に接続されており、ECU40での制御情報(駆動情報および検知情報などを含む情報の全部または一部)が情報端末装置20に対し送受信される。前述のとおり、情報端末装置20は、サーバー装置10に対し通信ネットワークNを通じてその制御情報のやり取りを行う。
そのようにして、異常検知システム1は、本実施形態で制御系として例示されるモータ制御系にハードウェア的に接続する。そして、異常検知システム1は、後述のようにマルチレベルフローモデルの手法に従って、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する。
[・サーバー装置のハードウェア構成について]
図4を参照しながら、本実施形態のサーバー装置10のハードウェア構成について説明する。
図4は、図1に示すサーバー装置10のハードウェア構成の一例を説明する模式図である。
図4に示すように、サーバー装置10のそれぞれは、いわゆる汎用のサーバーコンピュータにより構成される。サーバー装置10は、CPU11(Central Processing Unit、処理装置の一例)と、記憶装置12と、通信装置15と、含んで構成される。
サーバー装置10のCPU11は、その中央演算装置として後述する各種の機能を実現するプログラムを実行する。それにより、サーバー装置10のCPU11は、機能的にコンピュータ全体の制御部16として動作する(後述参照)。
サーバー装置10の記憶装置12は、プログラムが記憶保持されるだけではなく、CPU11のワーキングメモリーとしても使用され、たとえばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの種々の記憶装置12を含んで構成される。ROMは、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROMにはコンピュータの起動時に実行されるBIOS、OS設定、およびネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。RAMはプログラムおよびデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
また、サーバー装置10の記憶装置12は、二次記憶装置{たとえばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)}または三次記憶装置(例えば光ディスク、SDカード)を含んで構成されてもよく、その他の記憶装置を含んで構成されてもよい。HDDはプログラムおよびデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。格納されるプログラムおよびデータにはコンピュータ全体を制御するための基本ソフトウェアであるOS、およびOS上において各種機能を提供するアプリケーションなどがある。
そのようなサーバー装置10でのプログラムの実行により、サーバー装置10は、情報端末装置20を通じて前述のECU40の制御情報を受信することで情報端末装置20を通じてそれぞれの車両操舵装置30の異常を検知することが可能である。
サーバー装置10の通信装置15は、通信ネットワークNを介して複数の情報端末装置20のそれぞれに接続する。サーバー装置10は、複数の情報端末装置20のそれぞれとの間で車両操舵装置30の異常を検知するのに必要な各種の処理または通信を、通信ネットワークNおよびサーバー装置10の通信装置15を通じてやり取りする。その具体例として、サーバー装置10の通信装置15は、複数の情報端末装置20のそれぞれで送信される車両操舵装置30の制御に関する情報(前述の制御情報)を送受信する。
サーバー装置10の通信装置15による通信方式は、前述のように、たとえば通信ネットワークNに対応してWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)または電力線通信などの有線での通信方式、あるいはWi-Fi(Wireless Fidelity)または携帯電話用のモバイル通信などの無線での通信方式などが例示される。
なお、通信方式は、前述のような通信方式の他、Bluetooth(登録商標)なども適宜含んで構成することも可能である。
また、サーバー装置10は、操作入力装置13と、画像出力装置14と、をさらに有して構成される。サーバー装置10の操作入力装置13は、たとえば管理者などが各種信号を入力するのに用いるタッチパネル、操作キー、ボタン、キーボードまたはマウスなどである。サーバー装置10の画像出力装置14は、画面を表示する液晶または有機ELなどのディスプレイ装置である。
なお、サーバー装置10においてそれぞれの装置がバスBSで相互に接続される。また、操作入力装置13および画像出力装置14は必要なときに適宜接続されて利用される形態でもよい。また、サーバー装置10は前述した汎用のサーバーコンピュータに限定されず、情報端末装置20と同様にタブレット装置、スマートフォンまたはラップトップコンピュータなどの一般のコンピュータによって構成されてもよい。
[・サーバー装置および情報端末装置の機能的構成について]
図5および図6を参照しながら、サーバー装置10およびユーザHの情報端末装置20の機能的構成について説明する。
図5は、図1に示すサーバー装置10および情報端末装置20で実現される機能の一例を説明するブロック図である。
図6は、モデル設定部16Aによって図2の制御対象を表現する制御モデルの一例を説明する機能ブロック図である。
[・・サーバー装置]
前述のように、サーバー装置10はハードウェア構成としてCPU11を有しており、CPU11は種々のプログラムを記憶装置12から読み込んで実行することで各種機能が実現される。その結果、異常検知システム1における車両操舵装置30の異常検知に関する各種の処理プログラムが実行される。情報端末装置20も同様に、中央演算装置を有しその記憶装置から種々のプログラムを読み込んで実行することで各種機能が実現される。
図5に示すように、本実施形態では、サーバー装置10は、そのCPU11などのハードウェアの動作によって実現される機能として、記憶部17と、通信部18と、制御部16と、を含んで構成される。
サーバー装置10の記憶部17は、前述のようにサーバー装置10の記憶装置12を含めて動作して実現される機能であり、異常検知に関する情報を記憶保持する。サーバー装置10の通信部18は、前述のようにサーバー装置10の通信装置15を含めて動作して実現される機能であり、情報端末装置20のそれぞれとの通信を行う。サーバー装置10の制御部16は、前述のように記憶装置12のプログラムなどをCPU11が読み込んで実現される機能であり、異常検知システム1として異常検知に関する処理を行う。
そして、サーバー装置10の制御部16は、情報端末装置20がユーザHから受け付けた操作、および/または情報端末装置20から送受信される異常検知に関する情報(モータ制御に係る制御情報を含む)に基づいて異常検知を実行する。
情報端末装置20は、前述の車両操舵装置30のECU40にハードウェア的に接続されており、すなわち、サーバー装置10は、情報端末装置20を通じてECU40が制御するモータ制御系(現実に稼働する所定の制御系の一例)に対してハードウェア的に接続する。それにより、サーバー装置10は、後述のように当該(制御対象の)モータ制御系(制御系の一例)をソフトウェア上でモデル化した上で当該モータ制御系の異常を検知することが可能となる。
サーバー装置10の制御部16は、モデル設定部16Aと、現実状態取得部16Bと、仮想状態算出部16Cと、状態比較部16Dと、異常特定部16Eと、異常検知部16Fと、を含んで構成される。
なお、以下の説明では、後述する、メインループMLの第1の機能要素MF1、第2の機能要素MF2、第3の機能要素MF3、第4の機能要素MF4および第5の機能要素MF5、さらには第1のサブループSL1の第1の機能要素S1F1、第2の機能要素S1F2、および第3の機能要素S1F3、さらには第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1、第2の機能要素S2F2および第3の機能要素S2F3、さらには第3のサブループSL3の第1の機能要素S3F1、第2の機能要素S3F2および第3の機能要素S3F3のそれぞれの機能要素については、説明の便宜上、まとめて単に符号「F」で示す場合もある。
[・・・モデル設定部]
図5に示されるサーバー装置10のモデル設定部16Aは、マルチレベルフローモデルに従ってモータ制御系(制御系の一例)の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素F(情報工学においては「ノード」とも呼ばれ、その概念は本発明にも取り込まれる。)を設け、1つのメインループML(メイングループの一例、後述参照)と、複数(第1~第3)のサブループSL1,SL2,SL3(本実施形態では3つ、サブグループの一例、後述参照)と、を設定する。
なお、このモデル設定部16AでのメインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3の設定は、たとえば技術者などのシステムオペレータまたはシステムアドミニストレーターなどがサーバー装置10の操作入力装置13などを使用して所定のソフトウェア上でモデリング操作する(モデルデザインする)ことで実現されるように構成される。
図6に示すように、本実施形態では、前述のモータ制御系は、1つのメインループMLと、第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3と、を有してモデル設定部16Aで設定される。
なお、本実施形態では、3つのサブループSL1,SL2,SL3(複数のサブグループの一例)で設定されるが、これに限定されない。対象とする制御系によってその個数は適宜変更・設定される。
メインループMLは、MLFMの手法に従って、その全体でモータ制御系においてモータ38を駆動制御する機能ブロックを表現するものであり、前述のモータ制御系での主機能の役割を有する。メインループMLは、第1の機能要素MF1と、第2の機能要素MF2と、第3の機能要素MF3と、第4の機能要素MF4と、第5の機能要素MF5と、を含んで表現される。
メインループMLにおいて第1の機能要素MF1と、第2の機能要素MF2と、第3の機能要素MF3と、第4の機能要素MF4と、第5の機能要素MF5と、は互いに直列に接続する。メインループMLの第1の機能要素MF1が最上端に位置し、メインループMLの第5の機能要素MF5は最下端に位置する。メインループMLでは、メインループMLの第1の機能要素MF1からメインループMLの第5の機能要素MF5に向かってシリアルに情報が流れる。
MLFM(マルチレベルフローモデル)に従って、メインループMLの第1の機能要素MF1はモータ制御系での電源の機能に対応して設けられる。メインループMLの第2の機能要素MF2は、モータ制御系での情報伝達(信号伝達)の機能に対応して設けられる。メインループMLの第3の機能要素MF3は、モータ制御系でのECU40の機能に対応して設けられる。メインループMLの第4の機能要素MF4は、モータ制御系での伝達の機能に対応して設けられる。メインループMLの第5の要素は、モータ制御系でのモータ38の機能に対応して設けられる。
第1のサブループSL1は、MLFMの手法に従って、その全体で車両CのCANの機能ブロックを表現するものであり、前述のメインループMLの支援機能として前述のモータ制御系での副機能の役割を有する。第1のサブループSL1は、第1の機能要素S1F1と、第2の機能要素S1F2と、第3の機能要素S1F3と、を含んで表現される。
メインループMLと同様に第1のサブループSL1においても、第1の機能要素S1F1と、第2の機能要素S1F2と、第3の機能要素S1F3と、は互いに直列に接続する。第1のサブループSL1の第1の機能要素S1F1が最上端に位置し、第1のサブループSL1の第3の機能要素S1F3は最下端に位置する。第1のサブループSL1でも同様に、第1の機能要素S1F1から第3の機能要素S1F3に向かってシリアルに情報が流れる。そして、末端(最下端)に位置する、第1のサブループSL1の第3の機能要素S1F3は、メインループMLの第3の機能要素MF3に接続する。換言すれば、第1のサブループSL1は、その第3の機能要素S1F3で(を介して)メインループMLに接続する。
同様にMLFMに従って、第1のサブループSL1の第1の機能要素S1F1は、モータ制御系でのCANの情報入力(信号入力)の機能に対応して設けられる。第1のサブループSL1の第2の機能要素S1F2は、モータ制御系での情報伝達の機能に対応して設けられる。第1のサブループSL1の第3の機能要素S1F3は、モータ制御系でのメインループMLに対する情報出力(信号出力)の機能に対応して設けられる。
第2のサブループSL2は、MLFMの手法に従って、その全体で車両操舵装置30のバッテリ41の機能ブロックを表現するものであり、前述のメインループMLの支援機能として前述のモータ制御系での副機能の役割を有する。第2のサブループSL2は、第1の機能要素S2F1と、第2の機能要素S2F2と、第3の機能要素S2F3と、を含んで表現される。
メインループMLと同様に第2のサブループSL2においても、第1の機能要素S2F1と、第2の機能要素S2F2と、第3の機能要素S2F3と、は互いに直列に接続する。第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1が最上端に位置し、第2のサブループSL2の第3の機能要素S2F3は最下端に位置する。第2のサブループSL2でも同様に、第1の機能要素S2F1から第3の機能要素S2F3に向かってシリアルに情報が流れる。そして、末端(最下端)に位置する、第2のサブループSL2の第3の機能要素S2F3は、メインループMLの第1の機能要素MF1に接続する。換言すれば、第2のサブループSL2は、その第3の機能要素S2F3でメインループMLに接続する。
同様にMLFMに従って、第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1は、モータ制御系でのバッテリ41の機能に対応して設けられる。第2のサブループSL2の第2の機能要素S2F2は、モータ制御系での情報伝達機能に対応して設けられる(電力伝達・伝送機能も含む)。第2のサブループSL2の第3の機能要素S2F3は、モータ制御系での情報出力(信号出力)の機能に対応して設けられる(電力出力機能も含む)。
第3のサブループSL3は、MLFMの手法に従って、その全体で車両操舵装置30の回転センサ39の機能ブロックを表現するものであり、前述のメインループMLの支援機能として前述のモータ制御系での副機能の役割を有する。第3のサブループSL3は、第1の機能要素S3F1と、第2の機能要素S3F2と、第3の機能要素S3F3と、を含んで表現される。
メインループMLと同様に第3のサブループSL3においても、第1の機能要素S3F1と、第2の機能要素S3F2と、第3の機能要素S3F3と、は互いに直列に接続する。第3のサブループSL3の第1の機能要素S3F1が最上端に位置し、第3のサブループSL3の第3の機能要素S3F3は最下端に位置する。第3のサブループSL3でも同様に、第1の機能要素S3F1から第3の機能要素S3F3に向かってシリアルに情報が流れる。そして、末端(最下端)に位置する、第3のサブループSL3の第3の機能要素S3F3は、メインループMLの第3の機能要素MF3に接続する。換言すれば、第3のサブループSL3は、その第3の機能要素S3F3でメインループMLに接続する。
同様にMLFMに従って、第3のサブループSL3の第1の機能要素S3F1は、モータ制御系での回転センサ39の機能に対応して設けられる。第3のサブループSL3の第2の機能要素MF2、S1F2、S2F2、S3F2は、モータ制御系での情報伝達機能に対応して設けられる。第3のサブループSL3の第3の機能要素S3F3は、モータ制御系でのメインループMLに対する情報出力(信号出力)の機能に対応して設けられる(電力出力機能も含む)。
以上説明するように本実施形態では、本発明の具体的開示の一例として、1つのメインループMLに対し3つのサブループSL1,SL2,SL3が接続して設定される。
つまり、本実施形態では、メインループMLについては、そのメインループMLは、複数の機能要素Fがその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第5(Nの一例)番目まで設定される。また、サブループSL1,SL2,SL3については、その複数のサブループSL1,SL2,SL3は第3(Lの一例)番目まで設定される。その複数のサブループSL1,SL2,SL3のうち第1番目(すなわち、第1のサブループSL1)において複数の機能要素Fがその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第3(Mの一例)番目まで設定される。そのサブループSL1,SL2,SL3のうち第2番目(すなわち、第2のサブループSL2)においても同様に複数の機能要素Fがその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第3(Mの一例)番目まで設定される。そのサブループSL1,SL2,SL3のうち第3番目(すなわち、第3のサブループSL3)においても同様に複数の機能要素Fがその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第3(Mの一例)番目まで設定される。
なお、前述のように本実施形態では、サブループSL1,SL2,SL3を3つ設ける形態であるが、これに限定されず、2つ、または4つ以上設けてもよい。
[・・・現実状態取得部]
図5に示される現実状態取得部16Bは、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおける複数の機能要素Fのそれぞれの現実の状態量を取得する。そして、その取得する当該状態量について、現実状態取得部16Bはその一般式としてメインループMLでの状態量Uを後記の(1)式、およびサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれでの状態量Sを後記の(2)式に示すようなベクトル形式(行列形式)で表現(取得)する(つまり、本発明では「状態量」の用語は機能要素Fのそれぞれの状態を示す状態行列とも解釈することが可能である)。
メインループMLでの状態量Uおよび第1~第3でのサブループSL1,SL2,SL3の状態量Sはその機能要素Fのそれぞれの実測値を示しており、所定の基準値に対し標準状態(標準値)、低い状態(低値)および高い状態(高値)のそれぞれの状態でベクトル形式(行列形式)で一般化して表現される。具体的には、標準値(Normal Level値)は[1 0 0]Tの列ベクトルで表現される。低値(Low Level値)は[0 1 0]Tの列ベクトルで表現される。高値(High Level値)は[0 0 1]Tの列ベクトルで表現される。
すなわち、メインループMLについて前述のように現実状態取得部16Bは、メインループMLにおける第i(iは自然数;i=1,・・・,N(本実施形態の場合、N=5))番目の機能要素Fの状態量Ui(Uの添え字も含めてメインループMLにおける第i番目の機能要素Fの状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式(行列形式)で表現する。それとともに、現実状態取得部16Bは、メインループMLの全体の状態量を示すメイン全体状態量Vを後記の(3)式(数式3の一例)に従って行列形式で表現(取得)する。
なお、前記の(3)式はメインループMLに関する一般式とされるが、これを本実施形態のメインループMLに具体的に展開するとメインループMLのメイン全体状態量Vは後記の(3)’式で表現される。
さらに第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3についても同様に、前述のように現実状態取得部16Bは、第j番目(jは自然数;j=1,・・・,L(本実施形態の場合、L=3))のサブループSL1,SL2,SL3における第k(kは自然数;k=1,・・・,M(本実施形態の場合、いずれのサブループSL1,SL2,SL3でもM=3))番目の機能要素Fの現実の状態量Sjk(Sの添え字も含めて第j番目のサブループSL1,SL2,SL3におけるk番目の機能要素Fの状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式(行列形式)で表現する。それとともに、現実状態取得部16Bは、第j番目のサブループSL1,SL2,SL3の全体での現実の状態量を示すサブ全体状態量Pjを後記の(4)式(数式1の一例)に従って行列形式で表現する。

なお、前記の(4)式は本発明に係る第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれに関する一般式とされるが、これを第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれに具体的に展開(適用)すると第1のサブループSL1は後記の(4)’-1式、第2のサブループSL2は(4)’-2式、第3のサブループSL3は後記の(4)’-3式のそれぞれで表現される。
[・・・仮想状態算出部]
図5に示される仮想状態算出部16Cは、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおいて、当該メインループMLまたは当該第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3に属する機能要素Fの個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量(仮想状態行列とも解される)を行列形式で算出する。
メインループMLについて仮想状態算出部16Cは、そのメインループMLにおける複数の仮想状態量Wiを後記の(5)式(数式4の一例)に従って算出する。

ここで、前記の(5)式中に示されるTは、メインループMLにおいて隣接して配置される機能要素Fの間に設定される仮想異常伝達関数である。当該仮想異常伝達関数T(「異常順伝搬行列」とも呼ばれる)は、前述のように隣接する機能要素F(ノード)の間の伝達関数と定義され、本実施形態では後記の(6)式によって表現される。
すなわち、本実施形態では、メインループMLでの仮想異常伝達関数Tおよび後述する第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での仮想異常伝達関数Tは、前記の(6)式のような単位行列、対角行列で定義(設定)される。つまり、それら伝達関数は、上流側で情報または信号に変化がなく、そのまま下流側に伝達する場合には単位行列によって設定される。ただし、上流側で情報または信号が変換されて下流側に伝達する場合などがある。そのような場合には、機能要素F(ノード)の特定・性状に従って(基づいて)仮想異常伝達関数Tは適宜適応的に設定される。
なお、前記の(6)式は本発明に係るメインループMLに関する一般式とされるが、これをメインループMLに具体的に展開(適用)するとメインループMLは後記の(5)’-1式~(5)’-5式で表現される。
さらに、仮想状態算出部16Cは、メインループMLについてメインループML(メイングループの一例)の第x(1<=x<=N(本実施形態ではN=5))番目の機能要素Fに対し第y(1<=y<=L(本実施形態ではL=3))番目のサブループSL1,SL2,SL3(サブグループの一例)の最末端に配置される機能要素Fが接続する場合、前述の複数の仮想状態量Wiのそれぞれに対し後記の(7)式(数式4の一例)においてその横方向に並列される行列要素のうちx番目よりも次以降の行列要素でありかつ仮想異常伝達関数Tが行列乗算されて算出された行列要素と判定される行列要素にのみ、第y番目のサブループSL1,SL2,SL3の最末端に配置される機能要素Fの実際の状態量Syをさらにそれぞれ行列乗算して、複数の仮想状態量Wi’(i=1,・・・,N(本実施形態ではN=5))を算出する。
本実施形態の場合、前述のように、第1のサブループSL1はその第3の機能要素S1F3でメインループMLの第3の機能要素MF3に接続する。第2のサブループSL2はその第3の機能要素S2F3でメインループMLの第1の機能要素MF1に接続する。第3のサブループSL3はその第3の機能要素S3F3でメインループMLの第3の機能要素MF3に接続する。そのため、本実施形態では、前述の後記の(5)’-1式~(5)’-5式に基づいて前述の複数の仮想状態量Wi’のそれぞれは、後記の(6)-1式~(6)-5式のように具体的に表現(展開)される。
さらにその第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれについて仮想状態算出部16Cは、その第j(jは自然数;j=1,・・・,L(本実施形態の場合、L=3))番目のサブループSL1,SL2,SL3における複数の仮想状態量Qjkを後記の(数式2の一例)に従って算出する。


ここで、前記の(7)式中に示されるTは、当該第j番目のサブループSL1,SL2,SL3において隣接して配置される機能要素Fの間に設定される仮想異常伝達関数である。
当該仮想異常伝達関数Tについて、本実施形態の場合、T1=T2=T3とされ第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3の間で仮想異常伝達関数は同一に設定される。かつ、メインループMLおよびサブループSL1,SL2,SL3の間においても同様にT1=T2=T3=Tと設定されており、前述のメインループMLの仮想異常伝達関数Tと同一に設定される。ただし、それに限定されず、前述のように、機能要素Fの特定・性状および/またはその上流側で情報または信号が変換されて下流側に伝達される場合などの具体的ケースに従って適宜適応的に設定することが可能である。
ここで、前記の(7)式は本発明に係るサブループSL1,SL2,SL3に関する一般式とされるが、これを本実施形態の第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3に具体的に展開(適用)すると第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれの複数の仮想状態量Q11~Q13,Q21~Q23,Q31~Q33のそれぞれは、後記の(7)’-1-1式~(7)’-1-3式,(7)’-2-1式~(7)’-2-3式,(7)’-3-1式~(7)’-3-3式でそれぞれ表現(展開)される。
[・・・状態比較部]
図5に示す状態比較部16Dは、仮想状態算出部16Cの算出した、前述の複数の仮想状態量Wi’,Qjkのそれぞれに対し、現実状態取得部16Bの取得結果と比較する。
具体的にはメインループMLについて、状態比較部16Dは、メインループMLの複数の仮想状態量Wi’(前記参照)のそれぞれに対してメイン全体状態量Vを比較して一致するか否かを判定する。そのとき、異常検知システム1では、仮想状態量Wi’はメインループMLにおける第i(i=1,・・・,N(本実施形態の場合、N=5))番目の機能要素Fに対応するものとして設定される。
そして第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3について、サーバー装置10の状態比較部16Dは、サブループSL1,SL2,SL3の複数の仮想状態量Qjk(前記参照)のそれぞれに対してサブ全体状態量Pjを比較して一致するか否かを判定する。そのとき同様に、異常検知システム1では、仮想状態量Qjkは、第j(j=1,・・・,L(本実施形態の場合、L=3))番目のサブループSL1,SL2,SL3における第k(k=1,・・・,M(本実施形態の場合、M=3))番目の機能要素Fに対応するものとして設定される。
[・・・異常特定部]
図5に示すサーバー装置10の異常特定部16Eは、前述の状態比較部16Dの比較結果に基づいて、異常が発生した機能要素Fを特定する。
具体的にはメインループMLについて、サーバー装置10の異常特定部16Eは、前述の状態比較部16Dでの比較の結果、1つのみ一致する場合にはその一致した仮想状態量Wi’に基づいて当該仮想状態量Wi’に対応する第i番目の機能要素Fを特定する。あるいは、サーバー装置10の異常特定部16Eは、複数一致する場合、その一致した複数の仮想状態量Wi’に基づいて、当該仮想状態量Wi’の対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する。
なお、サーバー装置10の異常特定部16Eは、メインループMLにおいて1つも一致しない場合には、異常特定部16EはメインループMLには異常が発生していないと判定する。
そして第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれについて、サーバー装置10の異常特定部16Eは、前述の状態比較部16Dでの比較の結果、その第j番目のサブループSL1,SL2,SL3において1つのみ一致する場合にはその一致した仮想状態量Qjkに基づいて当該仮想状態量Qjkに対応する第k番目の機能要素Fを特定する。あるいは、サーバー装置10の異常特定部16Eは、その第j番目のサブループSL1,SL2,SL3において複数一致する場合、その一致した複数の仮想状態量Qjkに基づいて、当該仮想状態量Qjkの対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する。
なお、サーバー装置10の異常特定部16Eは、第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3において1つも一致しない場合には、異常特定部16Eは第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3には異常が発生していないと判定する。
[・・・異常検知部]
図5に示すサーバー装置10の異常検知部16Fは、前述の異常特定部16Eの特定結果に基づいて、モータ制御系の機能における異常箇所を検知する。すなわち、本実施形態では、サーバー装置10の異常検知部16Fは、サーバー装置10の異常特定部16Eによって特定した機能要素Fに対応するモータ制御系の機能(現実世界での電気回路、部品または装置などのハードウェア)に異常が発生していることを検知する。そして、サーバー装置10の異常検知部16Fは、その検知結果を、サーバー装置10の通信部18を通じて情報端末装置20に送信する。
なお、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のいずれにおいても異常が発生していないと判定される場合、サーバー装置10の異常特定部16Eはその旨の情報(正常状態の情報)をサーバー装置10の制御部16の本体に送信する。サーバー装置10の制御部16は異常が検知されない限り、つまりいずれにおいても一致しない限り、前述のような一連のプログラム(フロー)をループして実行する(後述参照)。
[・・情報端末装置]
図5に示すように、ユーザHの情報端末装置20は、通信部28と、記憶部27と、操作入力部23と、画像出力部24と、制御部26と、を含んで構成される。
なお、情報端末装置20の通信部28もサーバー装置10と同様にサーバー装置10との通信を行う。
情報端末装置20の記憶部27は情報端末装置20において必要となる情報を記憶保持しており、情報端末装置20の記憶部27には前述のように車両操舵装置30の内部でやり取りされる制御信号情報が少なくとも一時的に記憶保持される。情報端末装置20の操作入力部23は情報端末装置20を操作するユーザHからの操作を受け付ける。情報端末装置20の画像出力部24は、サーバー装置10からの制御に従って情報端末装置20おいて少なくとも異常検知の情報を表示させる。
情報端末装置20の制御部26は、要求送信部26Aと、応答受信部26Bと、異常検知制御部26Cと、を有して、情報端末装置20における異常検知に関する処理を実行する。
情報端末装置20の要求送信部26Aは、情報端末装置20の操作入力部23がユーザHから受け付けた操作情報に基づき、情報端末装置20の通信部28を通じてサーバー装置10に要求を送信する。情報端末装置20の応答受信部26Bは、要求送信部26Aがサーバー装置10に対して送信した要求に対する異常検知に関する処理結果などの応答を受信する。
情報端末装置20の異常検知制御部26Cは、要求送信部26Aの送信および応答受信部26Bの受信を通じて、情報端末装置20の記憶部27、操作入力部23および画像出力部24などを適応的に制御して異常検知のための情報の取得および報知する。また、情報端末装置20の異常検知制御部26Cは、サーバー装置10との間でのそれら情報の送受信を統括して制御実行する。
なお、図5に示される、サーバー装置10および情報端末装置20以外の他の装置が、サーバー装置10および情報端末装置20の機能の一部を実現するように構成してもよい。また、図5に示される、サーバー装置10および情報端末装置20の各種機能との集合体は大局的に視て1つの情報処理装置または情報処理システムとして解釈することも可能である。1つまたは複数のハードウェアおよび/またはソフトウェアに対して本発明を実現するために必要な複数の機能がどのように配分されるかは、各ハードウェアの処理能力、プログラムの構造・構成、または異常検知システム1に要求される仕様などに基づいて適宜決定される。
[・サーバー装置で実行される動作フローについて]
図7を参照しながら、サーバー装置10で実行される異常検知に関する動作フローについて説明する。
図7は、図5に示すサーバー装置10が実行する異常検知に関する動作フローの一例を説明するフロー図である。
図7に示すように、サーバー装置10のモデル設定部16Aは、MLFM(マルチレベルフローモデル)の手法に従ってモータ制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素Fを設け、1つのメインループMLと、複数(本実施形態の場合、第1~第3)のサブループSL1,SL2,SL3と、を設定する(図6参照、S1)。
サーバー装置10の現実状態取得部16Bは、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおける複数の機能要素Fのそれぞれの現実の状態量を取得する(S2)。そのとき、前述のように、サーバー装置10の現実状態取得部16BはメインループMLでの状態量Uおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での状態量Sをベクトル形式(行列形式)で表現する。それとともに、サーバー装置10の現実状態取得部16Bは、それらそれぞれの全体の状態量を前述のメイン全体状態量Vおよびサブ全体状態量Pj(j=1,・・・,L(本実施形態の場合、L=3))の行列形式で表現(定義)する。
サーバー装置10の仮想状態算出部16Cは、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおいて、当該メインループMLまたは当該第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3に属する機能要素Fの個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量を行列形式で算出する(S3)。
メインループMLについてサーバー装置10の仮想状態算出部16Cは、前述のようにそのメインループMLにおける複数の仮想状態量Wi’(i=1,・・・,N(本実施形態ではN=5))を算出する。第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれについてサーバー装置10の仮想状態算出部16Cは、前述のようにその第j(jは自然数;j=1,・・・,L(本実施形態の場合、L=3))番目のサブループSL1,SL2,SL3における複数の仮想状態量Qjk(j=1,・・・,L(本実施形態ではL=3);k=1,・・・,M(本実施形態ではM=3))を算出する。
サーバー装置10の状態比較部16Dは、その仮想状態算出部16Cの算出した複数の仮想状態量Wi’,Qjkのそれぞれに対し、その現実状態取得部16Bの取得結果と比較する(S4)。そのとき、サーバー装置10の状態比較部16Dは、メインループMLに関する処理(状態比較)をまず実行する。
メインループMLについて、サーバー装置10の状態比較部16Dは前述のようにメインループMLの複数の仮想状態量Wi’(前記参照)のそれぞれに対してメイン全体状態量Vを比較して一致するか否かを判定する(S5)。その一致の判定の結果、メインループMLでの一致があると判定される場合(S5のYES)、サーバー装置10の異常特定部16EはメインループMLでの一致の回数が1つか否かを判定する(S6)。メインループMLでの一致がないと判定される場合(S5のNO)、動作フローはステップS9に進行する。
メインループMLでの一致回数が1つか否かの判定の結果(S6)、1つであると判定される場合(S6のYES)、サーバー装置10の異常特定部16Eは、その一致した仮想状態量Wi’に基づいて当該仮想状態量Wi’に対応する第i番目の機能要素Fを特定する(S7)。その一方、1つのみ一致しない場合(S6のNO)、すなわち複数一致する場合、サーバー装置10の異常特定部16Eはその一致した複数の仮想状態量Wi’に基づいて、当該仮想状態量Wi’の対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する(S8)。
そして、サーバー装置10の状態比較部16Dは、メインループMLに関する処理が完了した後、次に第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3に関する処理を実行する(S9)。
第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3について、サーバー装置10の状態比較部16Dは、前述のように第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3の複数の仮想状態量Qjkのそれぞれに対してサブ全体状態量Pjを比較して一致するか否かを判定する(S10)。その一致の判定の結果、第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での一致があると判定される場合(S10のYES)、サーバー装置10の異常特定部16Eは第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での一致の回数が1つか否かを判定する(S11)。第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での一致がないと判定される場合(S11のNO)、動作フローはステップS14に進行する。
第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3での一致回数が1つか否かの判定の結果(S11)、1つであると判定される場合(S11のYES)、サーバー装置10の異常特定部16Eはその一致した仮想状態量Qjkに基づいて当該仮想状態量Qjkに対応する第k番目の機能要素Fを特定する(S12)。その一方、1つのみ一致しない場合(S11のNO)、すなわち複数一致する場合、サーバー装置10の異常特定部16Eはその一致した複数の仮想状態量Qjkに基づいて、当該仮想状態量Qjkの対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する(S13)。
サーバー装置10の異常検知部16Fは、サーバー装置10の異常特定部16Eによって特定した機能要素Fに対応するモータ制御系の機能に異常が発生しているか否かを検知する(S14)。それとともに、サーバー装置10の異常検知部16Fは、メインループMLおよび第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3のいずれにおいても異常が発生していないか否かを判定する(S15)。
その異常検知の有無の判定の結果(S15)、異常が検知されない場合(S15のNO)、動作フローは、ステップS2に戻る。その一方、異常が検知されたと判定される場合(S15のYES)、サーバー装置10の異常検知部16Fは、その検知結果を、サーバー装置10の通信部18を通じて情報端末装置20に送信する(S16)。より具体的には、サーバー装置10は、その通信部18を通じて情報端末装置20に異常発生およびその箇所を異常情報としてその画像出力部24に表示させる。それにより、サーバー装置10は、情報端末装置20を通じて車両CのユーザHに異常情報を報知することが可能となる。
[・本実施形態の利点および特徴について]
以上説明したように、本実施形態の異常検知システム1によれば、電気回路系(回路系の一例)も含んで構成されて現実に稼働する所定のモータ制御系(制御系の一例)に対しハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知システム1である。マルチレベルフローモデルの手法に従って制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素Fを設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる複数の機能要素Fで表現される1つのメインループML(メイングループの一例)と、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる複数の機能要素Fで表現されるとともにそのそれぞれの最末端の機能要素FでメインループMLの複数の機能要素Fのうちいずれか1つに接続する1または複数のサブループSL1,SL2,SL3(サブグループの一例)と、を設定するモデル設定部16Aと、メインループMLおよび複数のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおける複数の機能要素Fのそれぞれの現実の状態量V,P,U,Sを取得し当該状態量V,P,U,Sを行列形式で表現する現実状態取得部16Bと、メインループMLおよび複数のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおいて、当該メインループMLまたは当該サブループSL1,SL2,SL3に属する機能要素Fの個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量Wi’,Qjkを行列形式で算出する仮想状態算出部16Cと、仮想状態算出部16Cの算出した複数の仮想状態量Wi’,Qjkのそれぞれに対し、現実状態取得部16Bの取得結果と比較する状態比較部16Dと、状態比較部16Dの比較結果に基づいて、異常が発生した機能要素Fを特定する異常特定部16Eと、を含む。
また、本実施形態の異常検知方法によれば、所定の装置および/またはプログラムを使用して、電気回路系(回路系の一例)も含んで構成されて現実に稼働する所定のモータ制御系(制御系の一例)にハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知方法である。マルチレベルフローモデルの手法に従ってモータ制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素Fを設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる複数の機能要素Fで表現される1つのメインループML(メイングループの一例)と、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる複数の機能要素Fで表現されるとともにそのそれぞれの最末端の機能要素FでメインループMLの複数の機能要素Fのうちいずれか1つに接続する1または複数のサブループSL1,SL2,SL3(サブグループの一例)と、を設定するモデル設定ステップと、メインループMLおよび複数のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおける複数の機能要素Fのそれぞれの現実の状態量V,P,U,Sを取得し当該状態量V,P,U,Sを行列形式で表現する現実状態取得ステップと、メインループMLおよび複数のサブループSL1,SL2,SL3のそれぞれにおいて、当該メインループMLまたは当該サブループSL1,SL2,SL3に属する機能要素Fの個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量Wi’,Qjkを行列形式で算出する仮想状態算出ステップと、仮想状態算出ステップで算出した複数の仮想状態量Wi’,Qjkのそれぞれに対し、現実状態取得ステップでの取得結果と比較する状態比較ステップと、状態比較ステップでの比較結果に基づいて、異常が発生した機能要素Fを特定する異常特定ステップと、を含む。
このため、マルチレベルフローモデルのモデリング手法を採用し、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、その制御系の異常を迅速に検知するとともにその異常箇所を特定および可視化することができる。
次に1つまたは複数の実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこれら実施例の説明によって特許請求の範囲に記載の主題が限定されることは意図されない。
本実施例では、本発明に係る具体例として複数の事例を挙げ本発明についてより詳細に説明する。
<第1実施例>
本発明に係る第1実施例について説明する。本実施例では、1つの事例として第1実施形態において第2のサブループSL2で異常が発生したと仮定して説明する。具体的には、第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1が故障してhigh level値を出力する事例が想定される。
サーバー装置10の現実状態取得部16Bは、第2のサブループSL2に関し、後記の(14)’-2式のように第2のサブループSL2の全体の現実の状態量を示すサブ全体状態量P2を取得(表現)する。

そのとき、サーバー装置10の仮想状態算出部16Cは、仮想異常伝達関数Tを単位行列として設定した上で、第2のサブループSL2に係る仮想状態量のそれぞれを後記の(17)’-2-1式~(17)’-2-3式に示すように算出する。
サーバー装置10の状態比較部16Dは、第2のサブループSL2に係る、当該複数の仮想状態量Q21,Q22,Q23それぞれに対して当該サブ全体状態量P2を比較して一致するか否かを判定する。
そのとき、前述のように、異常検知システム1では、仮想状態量Q21は第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1、仮想状態量Q22は第2のサブループSL2の第2の機能要素S2F2、そして仮想状態量Q23は第2のサブループSL2の第3の機能要素S2F3に対応するものとして設定される。
本実施例の場合、仮想状態量Q21,Q22,Q23それぞれはサブ全体状態量P2と同一であり、サーバー装置10の状態比較部16Dはいずれとも一致していると判定する。
サーバー装置10の異常特定部16Eは、その状態比較部16Dの比較結果に基づいて、異常が発生した機能要素Fを特定する。本実施形態の場合、3つとも一致するため、その一致した複数の仮想状態量Q21,Q22,Q23に基づいて、当該仮想状態量Q21,Q22,Q23のそれぞれに対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する。すなわち、サーバー装置10の異常特定部16Eは、第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1を特定する(図6参照)。
この異常特定部16Eの特定結果に基づいて、サーバー装置10の異常検知部16Fはモータ制御系の機能における異常箇所として第2のサブループSL2の第1の機能要素S2F1に対応する箇所(すなわち、バッテリ41)での故障を検知する。異常検知システム1は、その検知結果をサーバー装置10の通信部18を通じて情報端末装置20の画像出力部24に表示させることで、ユーザHにその異常状態(異常情報)を報知する。
<第2実施例>
本発明に係る第2実施例について説明する。本実施例では、1つの事例として第1実施形態において第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3は正常であるがメインループMLで異常が発生したと仮定して説明する。具体的には、メインループMLの第3の機能要素MF3が故障してLow Level値を出力する事例が想定される。
サーバー装置10の現実状態取得部16Bは、メインループMLに関し、後記の(13)’式のようにメインループMLの全体の現実の状態量を示すメイン全体状態量Vを取得する。
つまり、本実施例では、メインループMLの第1および第2の機能要素MF1,MF2はhigh level値を出力し、第3~第5の機能要素MF3,MF4,MF5はLow Level値を出力する状態とされる。
そのとき本実施例では、第1~第3のサブループSL1,SL2,SL3は正常状態と仮定されるため、第1のサブループSL1の最末端に配置される、第3の機能要素S1F3の実際の状態量S13、第2のサブループSL2の最末端に配置される、第3の機能要素S2F3の実際の状態量S23、および第3のサブループSL3の最末端に配置される、第3の機能要素S3F3の実際の状態量S33のそれぞれは後記の(22)-1式~(22)-3式で表現される(示される)。
そのため、サーバー装置10の仮想状態算出部16Cは、仮想異常伝達関数Tを単位行列として設定した上で、メインループMLに係る仮想状態量W1’,W2’,W3’,W4’,W5’のそれぞれを後記の(26)-1式~(26)-5式に示すように算出する。
サーバー装置10の状態比較部16Dは、メインループMLに係る、当該複数の仮想状態量W1’,W2’,W3’,W4’,W5’のそれぞれに対して当該メイン全体状態量Vを比較して一致するか否かを判定する。
そのとき前述のように、異常検知システム1では、仮想状態量W1’はメインループMLの第1の機能要素MF1、仮想状態量W2’はメインループMLの第2の機能要素MF2、そして仮想状態量W3’はメインループMLの第3の機能要素MF3、仮想状態量W4’はメインループMLの第4の機能要素MF4、そして仮想状態量W5’はメインループMLの第5の機能要素MF5に対応するものとして設定される。
本実施例の場合、仮想状態量W3’,W4’,W5’のそれぞれはメイン全体状態量Vと同一であり、サーバー装置10の状態比較部16Dは仮想状態量W3’,W4’,W5’の3つで一致していると判定する。
サーバー装置10の異常特定部16Eは、その状態比較部16Dの比較結果に基づいて、異常が発生した機能要素Fを特定する。本実施形態の場合、3つで一致するため、その一致した複数の仮想状態量W3’,W4’,W5’に基づいて、当該仮想状態量W3’,W4’,W5’のそれぞれに対応する機能要素Fのうち最も上側に配置される機能要素Fを特定する。すなわち、サーバー装置10の異常特定部16Eは、メインループMLの第3の機能要素MF3を特定する(図6参照)。
この異常特定部16Eの特定結果に基づいて、サーバー装置10の異常検知部16Fはモータ制御系の機能における異常箇所としてメインループMLの第3の機能要素MFに対応する箇所(すなわち、ECU40)での故障を検知する。異常検知システム1は、その検知結果をサーバー装置10の通信部18、28を通じて情報端末装置20の画像出力部24に表示させることで、ユーザHにその異常状態(異常情報)を報知する。
<さいごに>
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
本発明は、マルチレベルフローモデルのモデリング手法を採用し、制御系が複雑でありかつその時系列での変化がたとえばプラントと比較して大きい場合でも、その制御系の異常を迅速に検知するとともにその異常箇所を特定および可視化することができる異常検知装置および異常検知方法として有用である。
1 :異常検知システム
10 :サーバー装置
11 :CPU
12 :記憶装置
13 :操作入力装置
14 :画像出力装置
15 :通信装置
16 :制御部
16A :モデル設定部
16B :現実状態取得部
16C :仮想状態算出部
16D :状態比較部
16E :異常特定部
16F :異常検知部
17 :記憶部
18 :通信部
20 :情報端末装置
23 :操作入力部
24 :画像出力部
26 :制御部
26A :要求送信部
26B :応答受信部
26C :異常検知制御部
27 :記憶部
28 :通信部
30 :車両操舵装置
31 :操舵軸
32 :減速ギア
33 :ユニバーサルジョイント
34 :ピニオンラック機構
34A :ピニオン
34B :ラック
35 :タイロッド
36 :ハブユニット
37 :操向車輪
38 :モータ
39 :回転センサ
40 :ECU
41 :バッテリ
BS :バス
C :車両
H :ユーザ
ML :メインループ
MF1 :第1の機能要素
MF2 :第2の機能要素
MF3 :第3の機能要素
MF4 :第4の機能要素
MF5 :第5の機能要素
N :通信ネットワーク
S1F1 :第1の機能要素
S1F2 :第2の機能要素
S1F3 :第3の機能要素
S2F1 :第1の機能要素
S2F2 :第2の機能要素
S2F3 :第3の機能要素
S3F1 :第1の機能要素
S3F2 :第2の機能要素
S3F3 :第3の機能要素
SL1 :第1のサブループ
SL2 :第2のサブループ
SL3 :第3のサブループ

Claims (7)

  1. 回路系も含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系に対しハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知システムであって、
    マルチレベルフローモデルの手法に従って前記制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素を設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現される1つのメイングループと、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現されるとともにそのそれぞれの最末端の前記機能要素で前記メイングループの前記複数の機能要素のうちいずれか1つに接続する1または複数のサブグループと、を設定するモデル設定部と、
    前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおける前記複数の機能要素のそれぞれの現実の状態量を取得し当該状態量を行列形式で表現する現実状態取得部と、
    前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおいて、当該メイングループまたは当該サブグループに属する前記機能要素の個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量を行列形式で算出する仮想状態算出部と、
    前記仮想状態算出部の算出した前記複数の仮想状態量のそれぞれに対し、前記現実状態取得部の取得結果と比較する状態比較部と、
    前記状態比較部の比較結果に基づいて、異常が発生した前記機能要素を特定する異常特定部と、を含む、
    異常検知システム。
  2. 前記複数のサブグループが第L番目まで設定されており、前記サブグループのうち第j(jは自然数;j=1,・・・,L)番目において前記複数の機能要素がその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第M(Mは自然数)番目まで設定される場合において、
    前記現実状態取得部は、前記第j番目の前記サブグループにおける第k(kは自然数;k=1,・・・,M)番目の前記機能要素の現実の前記状態量Sjk(前記第j番目のサブグループにおける前記第k番目の前記機能要素の前記状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式で表現するとともに、前記第j番目の前記サブグループの全体での現実の前記状態量を示すサブ全体状態量Pjを後記の数式1に従って行列形式で表現し、
    前記仮想状態算出部は、当該第j番目の前記サブグループにおける前記複数の仮想状態Qjkを後記の数式2に従って算出し、
    前記状態比較部は、その対象とする前記サブグループごとに、当該サブグループの前記複数の仮想状態Qjkのそれぞれに対し当該サブグループの前記サブ全体状態量Pjを比較して一致するか否かを判定する、
    請求項1に記載の異常検知システム。

    [数式1]
    j=(Sj1j2 ・・・ Sj(M-1)jM
    ただし、jは自然数;j=1,・・・,L

    [数式2]
    jk=(Sj1 ・・・ Sj(k-1)jk1 1・Sjk ・・・ T1 M-k・Sjk
    ただし、j,kはいずれも自然数;j=1,・・・,L;k=1,・・・,M
    jは、当該第j番目の前記サブグループにおいて隣接して配置される前記機能要素の間に設定される仮想異常伝達関数である。
  3. 前記異常特定部の特定結果に基づいて、前記制御系の機能における異常箇所を検知する異常検知部と、をさらに含み、
    前記仮想状態量Qjkは、前記第j番目の前記サブグループにおける前記第k番目の前記機能要素に対応するものとして設定され、
    前記異常特定部は、前記状態比較部での比較の結果、当該第j番目のサブグループにおいて1つのみ一致する場合にはその一致した前記仮想状態量Qjkに基づいて当該仮想状態量Qjkに対応する前記第k番目の前記機能要素を特定し、あるいは当該第j番目のサブグループにおいて複数一致する場合、その一致した複数の前記仮想状態量Qjkに基づいて、当該仮想状態量Qjkの対応する前記機能要素のうち最も上側に配置される前記機能要素を特定し、
    前記異常検知部は、前記異常特定部によって特定した前記機能要素に対応する前記制御系の機能に異常が発生していることを検知する、
    請求項2に記載の異常検知システム。
  4. 前記メイングループにおいて、前記複数の機能要素がその最上端からその情報の流れに沿って計数してその最末端の第N(Nは自然数)番目まで設定される場合において、
    前記現実状態取得部は、前記メイングループにおける第i(iは自然数;i=1,・・・,N)番目の前記機能要素の前記状態量Ui(前記メイングループにおける前記第i番目の前記機能要素の前記状態量を示す)のそれぞれをベクトル形式で表現するとともに、前記メイングループの全体の前記状態量を示すメイン全体状態量Vを後記の数式3に従って行列形式で表現し、
    前記仮想状態算出部は、当該メイングループにおける前記複数の仮想状態量Wiを後記の数式4に従って算出し、
    さらに前記仮想状態算出部は、前記メイングループの第x(1<=x<=N)番目の前記機能要素に対して第y(1<=y<=L(Lは自然数))番目の前記サブグループの最末端に配置される前記機能要素が接続する場合、当該複数の仮想状態量Wiのそれぞれに対し後記の数式4においてその横方向に並列される行列要素のうち前記第x番目よりも次以降の前記行列要素でありかつ後記の仮想伝達関数Tが行列乗算されて算出された前記行列要素と判定される1または複数の前記行列要素にのみ、前記第y番目の前記サブグループの最末端に配置される前記機能要素の実際の前記状態量Syをさらにそれぞれ行列乗算して、複数の仮想状態量Wi’(i=1,・・・,N)を算出し、
    前記状態比較部は、前記メイングループの前記複数の仮想状態量Wi’のそれぞれに対して前記メイン全体状態量Vを比較して一致するか否かを判定する、
    請求項1に記載の異常検知システム。

    [数式3]
    V = (U12 ・・・ UN-1N

    [数式4]
    i = (U1 ・・・ Ui-1i1・Ui ・・・ TN-i・Ui
    ただし、iは自然数;i=1,・・・,N
    Tは、前記メイングループにおいて隣接して配置される前記機能要素の間に設定される仮想異常伝達関数である。
  5. 前記異常特定部の特定結果に基づいて、前記制御系の機能における異常箇所を検知する異常検知部と、をさらに含み、
    前記仮想状態量Wi’は、前記メイングループにおける前記第i番目の前記機能要素に対応するものとして設定され、
    前記異常特定部は、前記状態比較部での比較の結果、1つのみ一致する場合にはその一致した前記仮想状態量Wi’に基づいて当該仮想状態量Wi’に対応する前記第i番目の前記機能要素を特定し、あるいは複数一致する場合、その一致した複数の前記仮想状態量Wi’に基づいて、当該仮想状態量Wi’の対応する前記機能要素のうち最も上側に配置される前記機能要素を特定し、
    前記異常検知部は、前記異常特定部によって特定した前記機能要素に対応する前記制御系の機能に異常が発生していることを検知する、
    請求項4に記載の異常検知システム。
  6. 前記仮想異常伝達関数は、単位行列である、
    請求項2または4に記載の異常検知システム。
  7. 所定の装置および/またはプログラムを使用して、回路系も含んで構成されて現実に稼働する所定の制御系にハードウェア的に接続して、当該制御系をソフトウェア上でモデル化した上で当該制御系の異常を検知する異常検知方法であって、
    マルチレベルフローモデルの手法に従って前記制御系の機能のそれぞれに個別に対応する複数の機能要素を設け、互いに直列に接続してその上端からその末端に向かってシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現される1つのメイングループと、互いに直接に接続してその上端からその末端に向けてシリアルに情報が流れる前記複数の機能要素で表現されるとともにそのそれぞれの最末端の前記機能要素で前記メイングループの前記複数の機能要素のうちいずれか1つに接続する1または複数のサブグループと、を設定するモデル設定ステップと、
    前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおける前記複数の機能要素のそれぞれの現実の状態量を取得し当該状態量を行列形式で表現する現実状態取得ステップと、
    前記メイングループおよび前記複数のサブグループのそれぞれにおいて、当該メイングループまたは当該サブグループに属する前記機能要素の個数のそれぞれと同一の数量で複数の仮想状態量を行列形式で算出する仮想状態算出ステップと、
    前記仮想状態算出ステップで算出した前記複数の仮想状態量のそれぞれに対し、前記現実状態取得ステップでの取得結果と比較する状態比較ステップと、
    前記状態比較ステップでの比較結果に基づいて、異常が発生した前記機能要素を特定する異常特定ステップと、を含む、
    異常検知方法。
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