JP7353616B2 - 糖鎖結合性新規タンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチド - Google Patents

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本発明は、新規タンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチドに関し、特に糖鎖結合性のタンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチドに関する。
細胞表面や体液中に存在する糖タンパク質や糖脂質等の複合糖質の糖鎖は、一種の情報素子として機能し、発生、免疫、がん、感染等の重要な生命現象に深く関わっている。一方、糖鎖結合性タンパク質であるレクチンは糖鎖認識分子として機能し、糖鎖と同様に生物学的に重要な役割を担っている。
これまでに、海藻類又は藻類(淡水産藍藻)から多くの種類のレクチンが単離され、その生化学的性質が明らかにされている。レクチンの一部は、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス等のウイルスに特異的に結合することが知られている(非特許文献1~11)。また、糖鎖はウイルスに限らず、上述のようにがんにも関連しており、近年、硫酸化グリコサミノグリカンががん組織における主要ながん免疫抗原であることや(非特許文献12)、がん細胞の発生や転移に深く関与していること(非特許文献13及び14)が報告されている。
Boyd,M. R. et al., Antimicrob. Agents Chemother.41, 1521-1530, 1997. O’Keefe, B. R. et al., Antimicrob. AgentsChemother. 47, 2518-2525, 2003. Helle,F., .et al., J. Biol. Chem. 281, 25177-25183, 2006. Barrientos,L. G., et al., Antiviral. Res. 58, 47-56, 2003. Dey,B., et al., J. Virol. 74, 4562-4569, 2000. O’Keefe, B. R. et al.,J. Virol. 84, 2511-2521,2010. Hori,K.et al., Glycobiology, 17, 479-491, 2007. Sato,Y.,Okuyama, S., and Hori, K., J. Biol. Chem. 282, 11021-11029, 2007. Sato,Y.,Morimoto,K., Hirayama, M., and Hori, K. Biochem. Biophys. Res. commun. 405,291-296, 2011. 佐藤雄一郎、平山 真、藤原佳史、森本金治郎、堀 貫治 (2010) 第13回マリンバイオテクノロジー学会大会講演要旨 (2010. 5.29発表) Sato,Y.,Hirayama, M., Morimoto,K., Yamamoto, N., Okuyama, S., and Hori, K. J. Biol.Chem. 286, No.22, 19446-19458, 2011. Hiroto Kato et al., Cell Reports. 20,1073-1087, 2017. Adam Pudelko et al., The FEBS Journal(First published: 13 January2019, online: https://doi.org/10.1111/febs.14748) Shuji Mizumoto et al., J. Biol. Chem.287, 18985-18994, 2012.
しかしながら、現在のところそのような硫酸化グリコサミノグリカン糖鎖を特異的に認識する物質はまだ十分に知られているとは言いがたく、その数は限られているため、上記物質が十分に供給できる状況にはなっていない。そのような物質は、がんの治療や診断に利用できる可能性があるため、新規物質がさらに多く見出され、その特性が明らかにされることが必要である。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記のようながんの診断及び治療への利用可能性がある硫酸化糖鎖を認識する新規タンパク質を探索し、提供できるようにすることにある。
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、ハネモ属(Bryopsis属)の藻類から得られたRNAからcDNAを合成し、当該cDNAから新規のタンパク質(レクチン)を発現させることに成功した。
具体的に、本発明に係る新規ポリヌクレオチドは、糖鎖結合性タンパク質をコードし、 配列番号1若しくは2のヌクレオチド配列を含む、又は該配列番号1若しくは2のヌクレオチド配列若しくはそれらと相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とする。
また、本発明に係るポリヌクレオチドは、ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)、ハネモ(Bryopsis plumose)、オオハネモ(Bryopsis maxima)等のハネモ(Bryopsis)属由来であってもよい。
本発明に係る新規タンパク質は、糖鎖結合性を有し、配列番号3若しくは4に記載のアミノ酸配列、又は該配列番号3若しくは4に記載のアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る新規タンパク質は、硫酸基を含む糖鎖を特異的に認識することを特徴とし、ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)、ハネモ(Bryopsis plumose)、オオハネモ(Bryopsis maxima)等のハネモ(Bryopsis)属由来であってもよい。
本発明に係るがんの治療用又は診断用医薬組成物は、上記本発明に係る新規タンパク質を含むことを特徴とする。本発明に係る医薬組成物は、がん細胞に発現し、がん抗原となることが知られている硫酸化グリコサミノグリカン等の硫酸基を含む糖鎖を認識できる上記新規タンパク質を含むため、がん治療やがん診断への利用が可能である。
本発明に係るポリヌクレオチドは糖鎖結合性の新規タンパク質をコードし、当該新規タンパク質は、がん抗原となる硫酸化糖鎖を認識できるため、がんの治療や診断に利用できる可能性があり、極めて有用である。
実施例1で得られたBcBry1-1の全長cDNAのヌクレオチド配列及び演繹アミノ酸配列を示す図である。 実施例1で得られたBcBry1-2の全長cDNAのヌクレオチド配列及び演繹アミノ酸配列を示す図である。 実施例2におけるHis-rBcBry1-1の発現を確認するためのSDS-PAGEの結果を示す写真である。 実施例2におけるHis-rBcBry1-1に対するFactor Xaによる酵素消化条件を検討するためのSDS-PAGEの結果を示す写真である。 実施例2におけるHis-rBcBry1-1の抗Hisタグ抗体による検出可能性を検討するためのSDS-PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真である。 実施例4における糖鎖固定化アレイで用いた糖鎖を示す図である。 実施例4におけるAnti-His-tag-Alexa Fluor 647によるHis-rBcBry1-1N及びCの検出可能性を検討するためのSDS-PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真である。 実施例4におけるHis-rBcBry1-1Cの糖鎖固定化アレイの結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の一実施形態は、ハネモ属藻類であるネザシハネモ(Bryopsis corticulans)由来の新規タンパク質(BcBry1)である。本発明に係る新規タンパク質は、糖鎖結合性を有し、例えば配列番号1又は2のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる。配列番号1又は2のヌクレオチド配列により発現されるタンパク質のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号3又は4に示される。
本明細書中で用いられる用語「タンパク質」は、「ペプチド」又は「ポリペプチド」と交換可能に使用される。また、本発明に係るタンパク質は、天然供給源より単離されても、化学合成されてもよい。
用語「単離された」ポリペプチド又はタンパク質とは、その天然の環境から取り出されたポリペプチド又はタンパク質が意図される。一方、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質の場合においても、任意の適切な技術によって実質的に精製され、宿主細胞から単離されたものが用いられる。
本発明に係るタンパク質は、天然の精製産物、化学合成手順の産物、及び原核生物宿主又は真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るタンパク質は、グリコシル化され得るか又は非グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るタンパク質は、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
一実施形態において、本発明に係るタンパク質は、配列番号3若しくは4に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号3若しくは4に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの変異体である。本発明に係るタンパク質は、従来公知のレクチンのアミノ酸配列との相同性が非常に低い新規タンパク質であるという特徴を有する。
変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、及びタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造又は機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造又は機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体又は付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が、糖鎖結合性を有する所望の変異体であるか否かを容易に決定し得る。
上記「1個若しくはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、若しくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により置換、欠失、挿入、若しくは付加できる程度の数(好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されていることを意味する。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係るポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間又は引き続く操作及び保存の間の安定性及び持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端に付加され得る。
組換え生成は、当該分野において周知の方法を使用して行なうことができ、例えば、以下に詳述されるようなベクター及び細胞等を用いて行なうことができる。
本発明者らは、上記本発明に係るタンパク質が、硫酸基を含む糖鎖を認識することを見出した。ここで、「糖鎖」とは、直鎖又は分岐したオリゴ糖又は多糖を意味する。また上記糖鎖は、タンパク質との結合様式によって、アスパラギンと結合するN-グリコシド結合糖鎖(以下、「N型糖鎖」、「N-グリカン」という)及びセリン、スレオニンなどと結合するO-グリコシド結合糖鎖(以下、「O型糖鎖」、「O-グリカン」という)に大別され、他にLewis型、ABO型、グリコサミノグリカン(GAG)やLacシリーズ等が知られている。
なお、オリゴ糖とは、単糖又は単糖の置換誘導体が2~10個脱水結合して生じたものをいう。さらに多数の単糖が結合している糖質を多糖という。多糖は、構成糖の種類によって異なるが、ウロン酸やエステル硫酸を多く含む糖質を酸性多糖、中性糖のみのものを中性多糖という。多糖のうち、ムコ多糖とよばれる一群の多糖は、ほとんどがタンパク質と結合しており、プロテオグリカンという。単糖とは、糖鎖の構成単位となるもので、加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない基本的物質である。
さらに、単糖は、カルボキシル基などの酸性側鎖を有する酸性糖、ヒドロキシル基がアミノ基で置換されたアミノ糖、それ以外の中性糖の3つに大別される。生体内に存在する単糖としては、酸性糖はN-アセチルノイラミン酸やN-グリコリルノイラミン酸(以下、「Neu5Gc」という)等のシアル酸や、ウロン酸等があり、アミノ糖としてはN-アセチルグルコサミン(以下、「GlcNAc」という)やN-アセチルガラクトサミン等があり、中性糖としてはグルコース、マンノース、ガラクトース、フコース等が挙げられる。
ポリペプチドが糖鎖と結合するか否かは、下記実施例に示す方法を用いることができるが、他に例えば標的となる糖鎖、又は糖鎖が結合した糖タンパク質等を固定化したカラムに、試験対象であるポリペプチドを通し、当該カラムにポリペプチドが結合したか否かをその通過液に含まれるポリペプチドの量、又は特異的溶出剤でカラムから溶出したポリペプチドの量により評価することができる。また標的となる糖鎖が結合した糖タンパク質をメンブレン等に固定化し、ビオチン、フルオレセインイソチオシアネート、ペルオキシダーゼ等で標識したポリペプチドを用いて検出するウエスタンブロット法(法医学の実際と研究、37, 155, 1994 参照)、ドットブロット法(AnalyticalBiochemistry, 204(1), 198, 1992 参照)等を用いて評価することができる。
本発明は、上述したように、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」又は「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、C及びTと省略される)の配列として示される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、又はDNAの形態(例えば、cDNA又はゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得る。一本鎖DNA又はRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得、又は、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マー又は100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
また、本発明に係るポリヌクレオチドは、その5’側又は3’側で上述のタグ標識(タグ配列又はマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
本発明はさらに、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異体に関する。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
このような変異体としては、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、又は付加した変異体が挙げられる。変異体は、コード若しくは非コード領域、又はその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的若しくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、又は付加を生成し得る。
本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は当該ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、単離したポリヌクレオチドを提供する。
なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%以上の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring HarborLaboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行なうことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。
ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ***DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE;0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA。5×デンハルト液;0.1%牛血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン)が挙げられる。
本発明に係るポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNAを包含する。またDNAには例えばクローニングや化学合成技術又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。さらに、本発明に係るポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公知の技術により、本発明に係るポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、本発明に係るポリヌクレオチドの塩基配列又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列及び/又は長さのものを用いてもよい。
あるいは、本発明に係るポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側及び3’側の配列(又はその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(又はcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明に係るポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
以下に、本発明に係る新規タンパク質及びそれをコードするポリヌクレオチドについて詳細に説明するための実施例を示す。
[実施例1:ネザシハネモ由来BcBry-1のcDNAクローニング]
<方法>
(RNA採取用試料)
RNA採取用試料として、広島県広島市宇品で採集したネザシハネモ(Bryopsis corticulans)藻体をRNAlater(Ambion)中で細断後、使用時まで-30℃で保存していたものを用いた。
(全RNAの抽出、mRNAの精製及びcDNAの合成)
上記サンプルに対してPureLink Plant RNA Reagent(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出し、得られた全RNAを試料として、NucleoTrap mRNA(Macherey-Nagel)を用いてmRNAを精製した。さらに、同mRNAを対象に、GeneRacer Kit(Invitrogen)を用いて完全長cDNAを合成した。いずれの操作においても、キット付属のマニュアルに従って行った。
(BcBry-1のcDNAクローニング)
ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)由来Bry-1(BcBry-1)を対象としたRapidAmplification of cDNA Ends(RACE)法はGeneRacer KitTM(Invitrogen)及びBlend Taq(登録商標)(TOYOBO)を用いてマニュアルに従って行った。まず、既知Bryopsis sp.由来Bry-1のN末端部分アミノ酸配列を参考に縮重プライマーBry1-F1、Bry1-F2を設計し、3’RACEを行った。まず、Bry1-F1(5’- GGIGGITAYGTIATHAA-3’;配列番号5)及びGeneRacer 3’ primerのプライマーペアを用いて増幅されたPCR産物(アニーリング温度52℃)をアガロースゲル電気泳動後に切り出して精製した。ここで、Iはイノシン、YはC又はT、HはA又はC又はTをそれぞれ示すIUBコードである。これを鋳型とし、nestedプライマーとしてBry1-F2(5’- ACITTYGAYGAYGCIACITAYGA-3’;配列番号6)及びGeneRacer 3’ nested primerのプライマーペアを用いて、さらにPCR増幅(アニーリング温度64℃)した。得られたPCR産物につき、pGEM-T Easyベクターに挿入後、BigDye Terminator v3.1Cycle Sequencing kitを用いて常法により塩基配列決定に供した。その結果、明らかに配列が異なる2種類のBcBry-1の3’末端配列及びpolyAテイルを含む配列が得られたことから、一方をBcBry1-1、他方をBcBry1-2とした。これら2遺伝子につき、さらに全長塩基配列の決定を試みるために、BcBry1-1及びBcBry1-2の3’末端配列からそれぞれプライマーBcBry1-1-3’endR(5’- GCCGCACAATGGAGAAAGCGATTAC-3’;配列番号7)及びBcBry1-2-3’endR(5’- CGCACGATGGAGAAACCAGTTAC-3’;配列番号8)、並びに両BcBry1に共通する配列からBcBry1-common-R1(5’-ACTTTGTAAGCCGTGCACTTCTC-3’;配列番号9)を設計した。BcBry1-1-3’endR又はBcBry-1-2-3’endRを1stPCRに、BcBry1-common-R1をnested PCRに用いる5’RACEを行い、得られたPCR産物につき、上述と同様に塩基配列決定に供した。その結果、BcBry1-1及びBcBry1-2それぞれの5’末端配列を決定できた。BcBry1-1及びBcBry1-2の5’末端配列からそれぞれプライマーBcBry1-1-5’endF(5’- ACACACTTTGCGAGCTCGTGTG-3’;配列番号10)及びBcBry1-2-5’endF(5’- ACAGTGTCAACATGAAGCTGACAGCC-3’;配列番号11)を設計し、BcBry1-1-5’endF及びBcBr1-1-3’endRのプライマーペア、並びにBcBry1-1-5’endF及びBcBr1-1-3’endRのプライマーペアを用いて、高正確性DNA polymerase、KOD plus Neo(TOYOBO)によってBryopsis corticulans由来のcDNAを鋳型にPCRを行った。これにより、BcBry1-1及びBcBry1-2のcDNAの全長をコードするDNA断片を得て、常法を用いてそれらの塩基配列を確認した。
<結果>
(BcBry-1のcDNA配列及びアミノ酸配列)
得られた全長BcBry1-1及びBcBry1-2のcDNAの配列情報をそれぞれ図1及び2に示す。また、Bryopsis sp.由来Bry-1の既知N末端アミノ酸との比較及びSignalPprogramを用いたシグナルペプチド配列予測結果から、成熟タンパク質領域を推定した。上記BcBry1-1及びBcBry1-2のcDNAから得られるアミノ酸配列もそれぞれ図1及び図2に示す。図1に示すように、BcBry1-1の全長cDNAは、それぞれ575ヌクレオチドの長さを有し(当該全長cDNA配列を配列番号12とする。)、81~83番目のヌクレオチドが開始コドンとなり、438~440番目のヌクレオチドが終始コドンとなる。当該cDNAの81~440番目のヌクレオチド配列を配列番号1とし、このヌクレオチド配列から得られるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号3とする。一方、図2に示すように、BcBry1-2の全長cDNAは、それぞれ495ヌクレオチドの長さを有し(当該全長cDNA配列を配列番号13とする。)、12~15番目のヌクレオチドが開始コドンとなり、369~371番目のヌクレオチドが終始コドンとなる。当該cDNAの12~371番目のヌクレオチド配列を配列番号2とし、このヌクレオチド配列から得られるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4とする。
図1及び図2に示すように、BcBry1-1及びBcBry1-2の成熟タンパク質領域はともに100アミノ酸残基からなり、これらのアミノ酸同一率は83%であった。BLAST検索の結果、両BcBry1は既知レクチンのみならず、既知タンパク質と相同性を示さなかった。すなわち、極めて新規性の高いタンパク質一次構造を有することが明らかとなった。
[実施例2:BcBry1-1の大腸菌発現系の構築]
<方法>
(発現用コンストラクトpCold-rBcBry1-1の作製)
大腸菌コドンに最適化したBcBry1-1をコードするDNAを設計・合成し、これを鋳型にHisタグ及びFactor Xa認識配列を付加するように設計したプライマー BcBry1-1_pCold_F(5’-ATCATCATCATCATATCGAAGGTAGGTCCCGCACAATTACTGTGTTC-3’;配列番号14)、及びBcBry1-1_pCold_R(5’-AGATTACCTATCTAGCTAGCATGTGTAGGCCCATG-3’;配列番号15)、並びにDNAポリメラーゼとしてPlatinum Pfx DNA polymerase(Invitrogen)を用いてPCRを行った。得られた増幅産物につき、In-FusionAdvantage PCR Cloning Kit(Clontech)を用い、制限酵素XbaI及びNdeI切断により直鎖化したpCold II DNA(タカラバイオ)に挿入し、塩基配列を確認することで、発現用コンストラクトpCold-rBcBry1-1を構築した。
(His-rBcBry1-1の調製)
上記発現用コンストラクトpCold-rBcBry1-1を用いて大腸菌株SHuffle Expressを形質転換して組換えBcBry1-1発現株(SHuffle Express/pCold-BcBry1-1)とした。同発現株につき3mlのLB/Amp液体培地に1/20容を加え、37℃で対数増殖期中期まで振とう培養した。OD600が0.5に達したところで培養液を15℃で30分静置後、終濃度が0.1mMになるようにIPTGを加え、15℃で24時間振とう培養し、発現誘導した。発現誘導後、培養液を遠心(20400×g、5分、4℃)し、菌体を回収して、培養液に対して1/20容の超音波破砕用緩衝液(50mMトリス塩酸(pH 8.0)、150mM NaCl)に懸濁し、超音波処理した。これを再び遠心(20400×g、20分、4℃)し、上清を可溶性画分、残渣を不溶性画分とした。可溶性画分についてはニッケルキレートビーズ MagExtractor(登録商標)His-tag(Toyobo)を用いてHis-rBcBry1-1を精製し、これをHisタグ精製標品とした。
(Factor Xaによる酵素消化条件の検討)
Hisタグ融合タンパク質His-rBcBry1-1からrBcBry1-1を調製するために、Factor Xaによる酵素消化を行った。まず、精製標品His-rBcBry1-1を透析用緩衝液(50mMトリス塩酸(pH 8.0)、100mM NaCl)に対して十分に透析した。この透析内液を遠心(20400×g、20分、4 ℃)し、得られた上清His-rBcBry1-1を回収した。この上清から酵素反応の至適条件を決定するため、酵素添加量及び反応時間を検討した。酵素反応液50μl(10μgのHis-rBcBry1-1、5μlの10×Factor Xa処理用緩衝液、1μlのFactor Xa(0.1、0.2、0.5U)、24μl滅菌水)を調製し、20℃及び37℃で酵素処理し、37℃条件下では 酵素添加量をFactor Xa(0.1U、0.2U)で行った。また、両温度条件下でFactor Xa未添加のものを調製して同様の処理を行いネガティブコントロールとした。この反応液から経時的(2、4、8、16時間)に10μlずつ回収し、SDS-PAGEに供した。
(抗Hisタグ抗体を用いたウェスタンブロッティングによるHis-rBcBry1-1の検出)
調製したHis-rBcBry1-1を糖鎖固定化アレイに供し糖鎖との結合を包括的に調べるため、同組換え体の検出に用いる標識抗体として抗Hisタグ抗体Anti-His-tag-Alexa Fluor(登録商標)647(医学生物学研究所)を用いることが出来るかウェスタンブロッティングにより試験した。すなわち、精製His-rBcBry1-1及びポジティブコントロールとして当研究室で保存されていたN末端側にHisタグを有する組換えKappaphycus alvarezii agglutinin 1(His-rKAA1)、ネガティブコントロールとしてHis-rKAA1からHisタグを除いたrKAAを用い、各試料を5μg相当となるように調製し非還元下でSDS-PAGEに供した。CBB染色したものとは異なる泳動ゲルを、ウェット式トランスファー装置Mini Trans-Brot Cell Module(Bio-Rad)を用いPVDF膜にタンパク質を転写した。転写後メンブレンに対し5%ブロッキング緩衝液(5%スキムミルク、TBS-T(20mM Tris-HCl(pH8.0)、0.15M NaCl、0.05% Tween20))に浸し室温にて1時間緩やかに振とうした。次いでTBS-Tで2回リンスし、またTBS-Tにて15分間振とうする操作を1回、5分間振とうする操作を2回繰り返し洗浄した。洗浄後、2.5%ブロッキング緩衝液(2.5%スキムミルク、TBS-T)で1μg/mlに希釈したAnti-His-tag-Alexa Fluor 647を3ml加え、室温にて1時間振とうし、抗体を反応させた。反応完了後、TBS-Tにて10分間振とうする操作を3回繰り返し洗浄した。メンブレンを風乾後、検出器Typhoon FLA 7000(GEヘルスケア)を用い633nmの励起波長で抗Hisタグ抗体による検出の有無を調べた。
<結果>
(His-rBcBry1-1の発現及び調製)
大腸菌株の可溶性画分につき約450μl、精製標品につき約200μlの液量が得られ、可溶性画分及びHisタグ精製標品につき明瞭な赤血球凝集活性を検出した。なお、赤血球凝集活性の評価は、96ウェルプレートの各ウェルに対して25μLずつ生理食塩水による系列2倍希釈でそれぞれの画分を分注し、それらに等量の2%赤血球懸濁液を加えた後、混合液を緩やかに振とうし、室温で60分間インキュベートし、赤血球凝集活性を肉眼で観察することで行った。また、Hisタグ精製標品は非還元及び還元下SDS-PAGEにおいて予想した分子量の位置に単一のバンドを与え、His-rBcBry1-1の発現を確認した(図3)。なお、図3において、レーンMは分子量マーカー、レーン1は発現誘導前菌体破砕液、レーン2は発現誘導後菌体破砕液、レーン3は可溶性画分、レーン4は不溶性画分、レーン5は非吸着画分、レーン6及びレーン7は洗浄液、レーン8はHisタグ精製標品(還元)、レーン9はHisタグ精製標品(非還元)である。また、His-rBcBry1-1の収量は培地9ml当たり40μgで、最小凝集濃度は1.55μg/mlであった。また、別途、スケールアップして発現誘導を行ったところ、培養液200mlあたりHis-rBcBry1-1は240μg得られた。
(Factor Xaによる酵素消化条件の検討)
His-rBcBry1-1のHisタグ部分を除去するため、Factor Xa処理を試みたところ、20℃ではどの条件でも全く切断されなかった(図4の(a)~(d))。なお、図4において、(a)は20℃でFactor Xaを未処理、(b)は20℃で0.1U/50μlのFactor Xaを処理、(c)は20℃で0.2U/50μlのFactor Xaを処理、(d)は20℃で0.5U/50μlのFactor Xaを処理、(e)は37℃で0.2U/50μlのFactor Xaを処理、(f)は37℃で0.5U/50μlのFactor Xaを処理した条件の結果である。さらに、反応温度条件を37℃で酵素処理を行ったが、20℃と同様に融合タンパク質部分は切断されないことがわかった(図4の(e)、(f))。融合タンパク質部分が切断されなかった原因として、His-rBcBry1-1に存在するFactor Xa認識配列が立体干渉により認識・接触できない状態にある可能性が考えられた。
(抗Hisタグ抗体を用いたウェスタンブロッティングによるHis-rBcBry1-1の検出)
His-rBcBry1-1はレクチンコード領域のN末端にFactor Xa認識配列、さらに上流にHisタグが融合されていることから、蛍光標識抗Hisタグ抗体を用いて同組換え体を検出可能と予想された。そこでウェスタンブロッティングによりHis-rBry1-1と抗Hisタグ抗体との反応性を調べたが、ポジティブコントロールとして用いたHis-rKAA1で明瞭なシグナルが得られたものの、ネガティブコントロールとして用いたrKAA1と同様、His-rBcBry1-1においてはシグナルが得られなかった(図5)。なお、図5において、レーンMは分子量マーカー、レーン1はHis-rBcBry1-1、レーン2はrKAA1、レーン3はHis-rKAA1である。前述のFactor Xaによるタグ切断が不可であった結果と合わせて、酵素・抗体がそれぞれの認識部位との接触に難がある可能性が考えられた。
[実施例3:Hisタグ融合位置の異なるBcBry1-1の大腸菌発現系構築]
<方法>
(発現用コンストラクトpET28a-rBcBry1-1N及びpET28a-rBcBry1-1Cの作製)
上述の結果を踏まえ、タグ切断酵素及びタグ認識抗体がそれぞれの認識部位と接触可能となるよう、N末端のHisタグとレクチン領域間にリンカーを挿入したHis-rBcBry1-1N、及びHisタグ融合位置をC末端側にしたHis-rBcBry1-1Cの調製を試みた。まず、前述の大腸菌用コドンに最適化したBcBry1-1のコード合成DNAを鋳型に、下記プライマーペアを用いてrBcBry1-1のコード領域を増幅した。すなわち、His-rBcBry1-1N発現用にはpET_rBcBry1-1_F(5’- CGCGCGGCAGCCATATGAGCCGTACCATTACCGTGTT -3’;配列番号16)及びpET_rBcBry1-1_R(5’-GGTGGTGGTGCTCGATTAGCAGGTATATGCCCACG-3’;配列番号17)を、His-rBcBry1-1C発現用には、pET_rBcBry1-1_CF(5’-AGGAGATATACCATGAGCCGTACCATTACCGTGTT-3’;配列番号18)及びpET_rBcBry1-1_CR(5’-GGTGGTGGTGCTCCAGGCTGCCGCGCGGCACCAGACCACCACCACCGCTGCAGGTATATGCCCACGGAT -3’;配列番号19)を用いPCRにより増幅を行った。次に、発現ベクターpET28a(Novagen)を対象に、His-rBcBry1-1N発現コンストラクト用に制限酵素NdeI及びXhoIで処理、またHis-rBcBry1-1C発現コンストラクト用に制限酵素NcoI及びXhoIで処理し、これら直鎖化pET28a及び上述の各BcBry1-1のコード領域を含むPCR増幅産物を用いてIn-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(タカラバイオ)を用いて、発現用コンストラクトpET28a-rBcBry1-1N及びpET28a-rBcBry1-1Cを作製した。
(His-rBcBry1-1N及びHis-rBcBry1-1Cの発現大腸菌株の調製)
構築した発現用コンストラクトを用いて大腸菌株SHuffle T7 Expressを形質転換した。形質転換体をLB/Kan寒天培地に適量塗布し、37℃で一晩培養した。得られたコロニーを対象にインサートチェック及びシーケンシングによりインサートが正しく挿入されていることを確認した。該当クローンをLB/Kan液体培地で培養しHis-rBcBry1-1発現株SHuffle T7Express/pET28a-rBcBry1-1N及びSHuffle T7 Express/pET28a-rBcBry1-1Cとし、1/2容の40%グリセロールを加え(終濃度20%)、使用するまで-80℃で保存した。
(His-rBcBry1-1N及びHis-rBcBry1-1Cの大量発現)
上述のSHuffle T7 Express/pET28a-rBcBry1-1N及びSHuffleT7 Express/pET28a-rBcBry1-1C発現株をLB/Kan液体培地1Lに植菌し37℃で対数増殖期中期になるまで振とう培養した。OD600が0.5から0.8の間に入るまで培養し、終濃度が0.5mMとなるようにIPTGを添加することで発現誘導を開始し、20℃で12時間振とう培養した。培養後、遠心(10000×g、4℃、10分)により集菌し、培養液に対し1/20容の超音波破砕用緩衝液(20mMリン酸緩衝液(pH7.4)、500mM NaCl、20mMイミダゾール)に懸濁した後、超音波破砕を行った。超音波処理後、遠心(10000×g、4℃、30分)し上清を可溶性画分、残渣を不溶性画分として回収した。
(ニッケルキレートカラムによる精製)
先に調製した可溶性画分に含まれるHisタグ融合組換え体を、ニッケルキレートカラムHis Gravi Trap(GE ヘルスケア バイオサイエンス)により精製した。カラムを平衡化緩衝液(20mMリン酸緩衝液(pH7.4)、500mM NaCl、20mMイミダゾール)にて十分平衡化後、可溶性画分を添加し、カラム担体とHis-rBcBry1-1N及びHis-rBcBry1-1Cを結合させた。カラムを平衡化緩衝液で十分に洗浄後、溶出用緩衝液(20mMリン酸緩衝液(pH7.4)、500mM NaCl、500mMイミダゾール)を添加し組換え体を溶出した。溶出画分に対し緩衝液(300mMアルギニン塩酸塩、50mMトリス(pH8.0)、100mM NaCl)で十分透析し、精製標品とした。
<結果>
(精製漂品の収量及びその赤血球凝集活性)
SHuffleT7 Express/pET28a-rBcBry1-1N及びSHuffle T7Express/pET28a-rBcBry1-1Cをそれぞれ1LのLB/Kanで発現誘導を行い、超音波破砕後、可溶性画分についてニッケルキレートカラムに供し精製後透析を行うことで精製標品を獲得した。精製標品のタンパク質収量及び赤血球凝集活性を測定したところ、rBcBry1-1Nでは0.96mg、512のHA活性が確認されrBcBry1-1Cでは2.52mg、128のHA活性が確認された(表1)。なお、タンパク質収量は、UV280nmに対する吸光度を測定することにより決定した。具体的に、280nmの吸光度が1.0の場合にタンパク質濃度が1mg/mLと推定し、又はウシ血清アルブミン(BSA)を標品として用いて、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo FisherScientific, IL, USA)により測定し、赤血球凝集活性は、上記と同様に測定した。当結果を、前述のSHuffle Express/pCold-rBcBry1-1株を発現させ獲得したHis-rBcBry1-1の収量(培養液200mlあたり240μg)と比較した時、pETシステム及び大腸菌株SHuffle T7 Expressを用いたことによる劇的な収量の増大は認められなかった。
[実施例4:糖鎖固定化アレイによるBcBry1-1の糖鎖結合特異性解析]
<方法>
(抗Hisタグ抗体を用いたウェスタンブロッティングによる検出)
調製したHis-rBcBry1-1N又はHis-rBry1-1Cを糖鎖固定化アレイに供し糖鎖との結合を包括的に調べるため、同組換え体の検出に用いる標識抗体として抗Hisタグ抗体Anti-His-tag-Alexa Fluor 647(医学生物学研究所)を用いることが出来るかウェスタンブロッティングにより試験した。すなわち、His-rBcBry1-1N及びHis-rBcBry1-1Cを対象とし、ポジティブコントロールとしてHis-rKAA、ネガティブコントロールとしてrKAAを用いた。各試料を5μg相当となるように調製し非還元下でSDS-PAGEに供した。ウェスタンブロッティングは上述の方法と同様にして行った。
(糖鎖固定化アレイ)
His-rBcBry1-1CにつきN-glycanを7種、O-glycanを2 種、グリコサミノグリカン(GAG)を5種、ルイス型を4種、Lacを7種及びABO型を3種、計28種類を固定化した糖鎖固定化アレイ(図6、住友ベークライト)に供し、検出試薬として抗Hisタグ抗体Anti-His-tag-Alexa Fluor 647(医学生物学研究所)を用いた。すなわちrBcBry1-1Cを反応バッファー(50mM Tris-HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM CaCl、1mM MnCl、1mM MgCl、0.05%(v/v)Tween20)で希釈し(終濃度83.9μg/ml)、検出プレートに適量滴下した。カバーを被せ室温にて2時間インキュベートした後、超純水中にてカバーを振り落とし、次いで洗浄用バッファー(50mM Tris-HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM CaCl、1mM MnCl、1mM MgCl)中で1分間緩やかに洗浄した。さらに超純水にて1分間緩やかに洗浄する操作を2回繰り返した後、エアーブローでアレイスライドを乾燥させた。Anti-His-tag-Alexa Fluor 647を1μg/mlとなるように反応用バッファーで希釈し、検出プレートに適量滴下し室温にて1時間インキュベートし抗体を反応させた。反応完了後、超純水中にてカバーを振り落とし、次いで洗浄用バッファー中で1分間緩やかに洗浄した。さらに超純水にて1分間緩やかに洗浄する操作を2回繰り返した後、エアーブローでアレイスライドを乾燥させた。蛍光検出及びデータ解析は住友ベークライトに委託した。
<結果>
(抗Hisタグ抗体を用いたウェスタンブロッティングによるHis-rBcBry1-1N及びCの検出)
His-rBcBry1-1N又はCを糖鎖固定化アレイに供した際、検出抗体としてAnti-His-tag-AlexaFluor 647を用いることが出来るか、ウェスタンブロッティングにより確認した。検出結果を図7に示す。なお、図7において、レーンMは分子量マーカー、レーン1はHis-rBcBry1-1N、レーン2はHis-rBcBry1-1C、レーン3はHis-rKAA、レーン4はrKAAである。図7に示すように、ネガティブコントロールとして用いたrKAAの検出は確認されず、ポジティブコントロールとして用いたHis-rKAA、His-rBcBry1-1N及びHis-rBcBry1-1Cからの検出が確認出来た。したがってHis-rBcBry1-1N及びCの検出にAnti-His-tag-Alexa Fluor 647を用いることが可能であることが示された。また、等量のタンパク質を添加しているもののHis-rBcBry1-1Nに比べHis-rBcBry1-1Cの方が強く検出されており、N末端側にHisタグを融合したHis-rBcBry1-1(pColdベクターを用いて発現)で検出出来なかったことを考慮し、糖鎖固定化アレイ試験にはHis-rBcBry1-1Cを採用することとした。
(糖鎖固定化アレイ試験)
検出試薬としてAnti-His-tag-Alexa Fluor 647を用いHis-rBcBry1-1Cを糖鎖固定化アレイ(住友ベークライト)に供した。結果を図8に示す。図8に示すようにヘパリンにおいて有意なシグナルが認められ、De2S Hep、De6S Hep、DeNS/AcHepにおいても弱いシグナルが観測された。すなわちGAGにおいてのみ結合がみられ、特に硫酸基脱離によりシグナルが減退する傾向を示したことから、rBcBry1-1はGAGの硫酸基部分を認識することが示唆された。

Claims (6)

  1. 硫酸化グリコサミノグリカン糖鎖結合性タンパク質をコードし、
    配列番号1のヌクレオチド配列を含む、又は該配列番号1のヌクレオチド配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
  2. ハネモ(Bryopsis)属由来であることを特徴とする請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  3. ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)由来であることを特徴とする請求項2に記載のポリヌクレオチド。
  4. 硫酸化グリコサミノグリカン糖鎖結合性を有し、
    配列番号3に記載のアミノ酸配列、又は該配列番号3に記載のアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列、を含むことを特徴とする新規タンパク質。
  5. ハネモ(Bryopsis)属由来であることを特徴とする請求項4に記載の新規タンパク質。
  6. ネザシハネモ(Bryopsis corticulans)由来であることを特徴とする請求項5に記載の新規タンパク質。
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