以下、本開示の実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「Tm」とは、特に断りのない限り、ヒートシール剤に含まれる樹脂の融点(℃)を意味する。
<ヒートシールフィルムの製造方法>
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法は、樹脂を含むヒートシール剤を溶融押出する工程(以下、「溶融押出工程」という場合がある。)と、第1の圧着部材を用いて、上記ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着する工程(以下、「熱圧着工程」という場合がある。)と、を有し、上記ヒートシール剤に含まれる上記樹脂の融点をTmとする場合、上記第1の圧着部材の温度が、Tm-20℃~Tm+50℃であり、上記ヒートシール剤が溶融押出されてから上記ヒートシール剤と上記樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間における上記ヒートシール剤の温度が、Tm-20℃以上である。本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法は、上記のような工程を有することで、簡便な工程で、基材とヒートシール層との密着性に優れるヒートシールフィルムを製造することができる。
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法が上記効果を奏する理由は、以下のように推察される。従来のヒートシールフィルムの製造方法においては、通常、樹脂基材フィルム上に溶融押出されたヒートシール剤を冷却することによって固めた後、樹脂基材フィルムとヒートシール剤とを熱圧着する。一方、本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法においては、温度がTm-20℃~Tm+50℃である第1の圧着部材を用いてヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着する工程を有し、さらに、ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間におけるヒートシール剤の温度がTm-20℃以上であることで、ヒートシール剤が溶融押出されてから樹脂基材フィルムに熱圧着されるまでに要する工程数を削減しつつ、基材とヒートシール層との密着性を高くすることができる。よって、本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法によれば、簡便な工程で、基材とヒートシール層との密着性に優れるヒートシールフィルムを製造することができる。
以下、本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法の各工程について説明する。
<<溶融押出工程>>
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法は、樹脂を含むヒートシール剤を溶融押出する工程(溶融押出工程)を有する。
溶融押出工程において、ヒートシール剤を溶融押出して、上記ヒートシール剤を樹脂基材フィルムに接触させることが好ましい。溶融押出工程において、ヒートシール剤を溶融押出して、樹脂基材フィルムを搬送しながら、上記ヒートシール剤を上記樹脂基材フィルムに接触させることがより好ましい。
ヒートシール剤を溶融押出する方法としては、制限されず、公知の方法を利用できる。例えば、公知の押出機を用いて、溶融混練したヒートシール剤をTダイから押し出す方法が挙げられる。押出機としては、例えば、単軸押出機、及び多軸押出機が挙げられる。
ヒートシール剤を溶融混練する際の加熱温度は、制限されず、ヒートシール剤に含まれる樹脂の融点(Tm)に応じて決定すればよい。加熱温度は、例えば、120℃~250℃の範囲で決定することができる。
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法において、ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間(以下、「熱圧着前の移行期間」という場合がある。)におけるヒートシール剤の温度は、Tm-20℃以上である。熱圧着前の移行期間におけるートシール剤の温度がTm-20℃以上であることで、ヒートシール剤が完全に固化する前にヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することができるため、簡便な工程で、基材とヒートシール層との密着性に優れるヒートシールフィルムを製造することができる。熱圧着前の移行期間におけるヒートシール剤の温度は、Tm-20℃以上であることが好ましく、Tm-10℃以上であることがより好ましい。熱圧着前の移行期間におけるヒートシール剤の温度の上限は、制限されない。熱圧着前の移行期間におけるヒートシール剤の温度は、例えば、Tm+100℃以下であることが好ましく、Tm+90℃以下であることがより好ましい。
ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの時間(以下、「熱圧着前の移行時間」という場合がある。)は、30秒以下であることが好ましく、10秒以下であることがより好ましく、5秒以下であることがさらに好ましく、1秒以下であることが特に好ましい。熱圧着前の移行時間が30秒以下であることで、簡便な工程で、基材とヒートシール層との密着性に優れるヒートシールフィルムを製造することができる。また、熱圧着前の移行時間が30秒以下であることで、ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間におけるヒートシール剤の温度をTm-20℃以上に保持しやすくなる。
[ヒートシール剤]
本開示において、「ヒートシール剤」とは、熱融着性を有する化合物、又は熱融着性を有する組成物を意味する。
ヒートシール剤に含まれる樹脂(以下、単に「樹脂」という場合がある。)としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル、及び合成ゴムが挙げられる。ヒートシール剤に含まれる樹脂は、耐熱性、耐薬品性、及び長期耐久性の観点から、ポリオレフィンであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがより好ましい。
ポリオレフィンとしては、オレフィン由来の構成単位を有する重合体であれば制限されず、公知のポリオレフィンを利用できる。ポリオレフィンは、オレフィンの単独重合体であってもよく、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよく、オレフィンとオレフィン以外の単量体との共重合体であってもよい。
ポリオレフィンとしては、例えば、炭素数2~8のオレフィンの単独重合体、炭素数2~8のオレフィンの共重合体、及び炭素数2~8のオレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。具体的なポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ4-メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メチルメタクリレート共重合体、及びアイオノマー樹脂が挙げられる。ポリオレフィンは、上記のようなポリオレフィンを塩素化してなる塩素化ポリオレフィンであってもよい。
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び線状低密度ポリエチレンが挙げられる。
α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、及びエチレン・へキセン共重合体が挙げられる。
ポリオレフィンは、被着体(例えば、金属)に対する密着性の観点から、官能基を有することが好ましい。官能基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物構造を有する基、及びヒドロキシ基(以下、「水酸基」という場合がある。)が挙げられる。カルボン酸無水物構造を有する基としては、例えば、無水マレイン酸構造を有する基、及び無水フタル酸構造を有する基が挙げられる。
ポリオレフィンに含まれる官能基は、被着体(例えば、金属)に対する密着性の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物構造を有する基、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることが好ましく、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることがより好ましく、カルボキシ基、及び無水マレイン酸構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることが特に好ましい。
ポリオレフィンは、被着体(例えば、金属)に対する密着性の観点から、官能基が導入されたポリオレフィン(以下、「変性ポリオレフィン」という場合がある。)であることも好ましい。変性ポリオレフィンは、変性ポリプロピレンであることが好ましい。変性ポリオレフィンに含まれる官能基としては、例えば、上記した官能基が挙げられる。
変性ポリオレフィンは、被着体(例えば、金属)に対する密着性の観点から、カルボキシ基、カルボン酸無水物構造を有する基、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましく、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することがより好ましく、カルボキシ基、及び無水マレイン酸構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが特に好ましい。
変性ポリオレフィンは、被着体(例えば、金属)に対する密着性、及び電解質に対する耐性の観点から、酸価が0.5mgKOH/g~200mgKOH/gである変性ポリオレフィン(以下、「酸変性ポリオレフィン」という場合がある。)、及び水酸基価が0.5mgKOH/g~200mgKOH/gである変性ポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種の変性ポリオレフィン(以下、「水酸基変性ポリオレフィン」という場合がある。)であることが好ましく、酸価が0.5mgKOH/g~200mgKOH/gである変性ポリオレフィンであることがより好ましい。
酸価は、試料1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示し、「JIS K 0070:1992」に準じて測定する。具体的には、混合キシレン:n-ブタノール=1:1質量比の混合溶媒に、精秤した試料を溶解させて試料溶液を得る。次いで、この試料溶液に、指示薬として1質量/体積%のフェノールフタレインエタノール溶液を数滴加え、滴定液として0.1mol/Lの水酸化カリウムのエチルアルコール溶液を用いて、滴定を行い、次式に従って酸価を算出する。下記式において、Tは滴定量(mL)、Fは滴定液のファクター、Wは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
式:酸価=(T×F×56.11×0.1)/W
水酸基価は、「JIS K 0070:1992」に準じて測定する。
酸変性ポリオレフィンは、カルボキシ基、及びカルボン酸無水物構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましく、カルボキシ基、及び無水マレイン酸構造を有する基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが特に好ましい。
酸価は、被着体(例えば、金属)に対する密着性、及び電解質に対する耐性の観点から、0.5mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、0.5mgKOH/g~100mgKOH/gであることがより好ましく、0.5mgKOH/g~50mgKOH/gであることが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸三元共重合体、及びエチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸三元共重合体が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、例えば、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和カルボン酸、又はその誘導体を用いて、ポリオレフィンをグラフト変性、又は共重合化することによって製造することができる。変性させるポリオレフィンとしては、例えば、上記したポリオレフィンが挙げられる。変性させるポリオレフィンの好ましい例としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレンの単独重合体、及びエチレンとα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、例えば、三菱ケミカル株式会社製「モディック」(登録商標)、三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標)、三井化学株式会社製「ユニストール」(登録商標)、東洋化成株式会社製「トーヨータック」(登録商標)、三洋化成工業株式会社製「ユーメックス」(登録商標)、日本ポリエチレン株式会社製「レクスパールEAA」、日本ポリエチレン株式会社製「レクスパールET」、ダウ・ケミカル社製「プリマコール」、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製「ニュクレル」、及びアルケマ社製「ボンダイン」(登録商標)として入手可能である。
水酸基変性ポリオレフィンは、分子中に水酸基を有するポリオレフィンである。
水酸基価は、被着体(例えば、金属)に対する密着性、及び電解質に対する耐性の観点から、1mgKOH/g~100mgKOH/gであることが好ましく、1mgKOH/g~80mgKOH/gであることがより好ましく、1mgKOH/g~70mgKOH/gであることが特に好ましい。
水酸基変性ポリオレフィンは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、又は水酸基含有ビニルエーテルを用いて、ポリオレフィンをグラフト変性、又は共重合化することによって合成できる。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセロール、ラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールが挙げられる。
水酸基含有ビニルエーテルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、及び4-ヒドロキシブチルビニルエーテルが挙げられる。
樹脂の融点(Tm)は、制限されない。樹脂の融点(Tm)は、耐熱性、及び長期耐久性の観点から、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。樹脂の融点(Tm)は、加工性の観点から、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることが特に好ましい。樹脂の融点(Tm)は、実施例に記載された方法に従って測定する。
樹脂の分子量は、制限されない。樹脂の分子量は、加工性、及び長期耐久性の観点から、10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましい。樹脂の分子量は、加工性、及び長期耐久性の観点から、50万以下であることが好ましく、45万以下であることがより好ましく、40万以下であることが特に好ましい。樹脂の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される単純ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
(1)カラム:TSKgel GMH6-HT(2本、東ソー株式会社)、及びTSKgel GMH6-HTL(2本、東ソー株式会社)
(2)溶離液:o-ジクロロベンゼン(0.025質量%BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)含有)
(3)試料濃度:0.1mg/mL
(4)流量:1mL/分
(5)測定温度:140℃
(6)標準物質:ポリスチレン
(7)検出器:示差屈折計
ヒートシール剤は、1種単独の樹脂を含んでいてもよく、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
ヒートシール剤における樹脂の含有量は、被着体に対する接着性の向上の観点から、ヒートシール剤の全質量に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
ヒートシール剤における樹脂の含有量の上限は、制限されない。ヒートシール剤における樹脂の含有量は、例えば、100質量%以下の範囲で決定すればよい。
ヒートシール剤は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記樹脂に加えて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、顔料、及びフィラーが挙げられる。ヒートシール剤は、1種単独の他の成分を含んでいてもよく、2種以上の他の成分を含んでいてもよい。
[樹脂基材フィルム]
(樹脂成分)
樹脂基材フィルムを構成する樹脂は、制限されない。樹脂基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、目的とする用途において基材に求められる特性に応じて選択することができる。
樹脂基材フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。樹脂基材フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度が70℃以上であることで、湿熱環境下におけるヒートシール層と樹脂基材フィルムとの密着性を向上することができる。樹脂基材フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度の上限は、制限されない。樹脂基材フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度は、例えば、400℃以下の範囲で決定すればよい。
ガラス転移温度は、以下の方法によって測定する。試料10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入する。上記アルミニウム製パンを、示差走査熱量計(TAインスツルメンツ社製・Q100型DSC)に装着する。20℃/分の速度で25℃から300℃まで昇温し、300℃で5分間保持した後、上記アルミニウム製パンを取り出して、金属板上で冷却することで急冷する。上記アルミニウム製パンを再度、示差走査熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度を測定する。なお、ガラス転移温度は、補外開始温度とする。
樹脂基材フィルムを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましく、ポリエチレンナフタレートであることが特に好ましい。
ポリエチレンナフタレートは、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、又はポリエチレン-2,7-ナフタレートであることが好ましく、ポリエチレン-2、6-ナフタレートであることがより好ましい。
ポリエステルにおいてエステル結合を含む構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。すなわち、ポリエステルは、1種単独の多価カルボン酸と1種単独の多価アルコールとの共重合体に限られず、3種以上の単量体から形成される共重合体であってもよい。3種以上の単量体から形成される共重合体における共重合成分としては、例えば、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、及び2価アルコールが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸(メインポリマーがポリエチレン-2,6-ナフタレートでない場合)、2,7-ナフタレンジカルボン酸(メインポリマーがポリエチレン-2,7-ナフタレートでない場合)、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、及びジフェニルエーテルジカルボン酸が挙げられる。
オキシカルボン酸としては、例えば、p-オキシ安息香酸、及びp-オキシエトキシ安息香酸が挙げられる。
2価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、及びポリエチレンオキシドグリコールが挙げられる。
上記した各化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記したポリエステルの共重合成分において、酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、及びp-オキシ安息香酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、グリコール成分としては、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、及びビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
上記の中でも、ポリエステルは、力学的物性、及び耐湿熱性の観点から、ポリエチレン-2、6-ナフタレートを主体とするポリエステルであることが好ましい。ここで、「ポリエチレン-2、6-ナフタレートを主体とする」とは、ポリエステルの全構成単位に対するエチレン-2,6-ナフタレート単位の含有量が、90モル%以上(好ましくは95モル%以上)であることを意味する。エチレン-2,6-ナフタレート単位の含有量の上限は、制限されない。ポリエステルの全構成単位に対するエチレン-2,6-ナフタレート単位の含有量は、例えば、100モル%以下の範囲で決定すればよい。
樹脂基材フィルムは、力学的物性、及び耐湿熱性の観点から、ポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。「ポリエステルフィルム」とは、フィルムの全質量に対して90質量%以上(好ましくは95質量%以上)のポリエステルを含むフィルムを意味する。「ポリエチレンナフタレートフィルム」とは、フィルムの全質量に対して90質量%以上(好ましくは95質量%以上)のポリエチレンナフタレートを含むフィルムを意味する。上記した各成分の含有量の上限は、制限されない。上記した各成分の含有量は、100質量%以下の範囲で決定すればよい。
(添加剤)
樹脂基材フィルムは、本開示の目的を阻害しない限りにおいて、滑り性を向上させる等の観点から、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、従来からポリエステルフィルム等のフィルムの滑り性付与剤として知られているものを用いることができる。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、カーボンブラック、炭化珪素、酸化錫、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、及び架橋シリコン樹脂粒子が挙げられる。
樹脂基材フィルムは、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑材、触媒等の添加剤を含んでいてもよい。
(厚さ)
樹脂基材フィルムの厚さは、制限されない。樹脂基材フィルムの平均厚さは、強度の観点から、20μm~300μmであることが好ましい。
樹脂基材フィルムの厚さは、以下の方法によって測定する。ヒートシールフィルムにおいて、幅方向に100mm間隔で5箇所、及び上記5箇所に対して長手方向に500mm間隔で5箇所から、三角形の試料を切り出す。上記各試料を包埋カプセルに固定した後、エポキシ樹脂を用いて包埋する。ミクロトーム(ULTRACUT-S)を用いて、包埋された試料を縦方向(厚さ方向)に切断し、薄膜切片を作製する。光学顕微鏡を用いて、薄膜切片を観察及び撮影する。得られた写真から樹脂基材フィルムの厚さを測定する。樹脂基材フィルムの厚さは、3か所の厚さの算術平均とする。各写真から得られる測定値を算術平均することによって得られる値を、樹脂基材フィルムの平均厚さとする。
(他の層)
樹脂基材フィルムは、少なくとも一方の面に易接着層を有していてもよい。樹脂基材フィルムが易接着層を有することで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性を向上させることができる。
易接着層は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよく、2種以上の重合体の混合物(ポリマーブレンド)であってもよい。また、バインダー樹脂は、架橋剤によって架橋したものであってもよい。バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。具体的なバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオレフィンが挙げられる。上記の中でも、バインダー樹脂は、ポリエステル、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、又はポリウレタンであることが好ましい。
易接着層は、1種単独のバインダー樹脂を含んでいてもよく、2種以上のバインダー樹脂を含んでいてもよい。
バインダー樹脂の含有量は、易接着層の全質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。バインダー樹脂の含有量の上限は、制限されない。バインダー樹脂の含有量は、易接着層の全質量に対して、例えば、100質量%以下の範囲で決定すればよい。
易接着層の厚さは、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性の向上という観点から、5nm~200nmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましく、20nm~100nmであることが特に好ましい。易接着層の厚さは、樹脂基材フィルムの厚さの測定方法に準ずる方法によって測定する。
易接着層の形成方法としては、例えば、ラミネート法、及びコーティング法が挙げられる。コーティング法は、押出樹脂コーティングであってもよく、溶融樹脂コーティングであってもよい。
易接着層の形成方法は、塗液を用いる方法であることが好ましい。例えば、塗液を樹脂基材フィルムに塗布することによって、易接着層を形成することができる。
塗液は、例えば、上記バインダー樹脂と溶媒とを混合することによって調製することができる。溶媒としては、例えば、有機溶媒、及び水が挙げられる。有機溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、及びメチルエチルケトンが挙げられる。
塗液は、1種単独の溶媒を含んでいてもよく、2種以上の溶媒を含んでいてもよい。
塗液は、樹脂基材フィルムへの塗れを促進させるという観点から、塗布層を構成する成分と化学的に不活性な界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン型界面活性剤、及びノニオン型界面活性剤が挙げられる。具体的な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、及びアルキルスルホコハク酸塩が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、塗液の全固形分質量に対して、1質量%~10質量%であることが好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることで、塗液の表面張力を40mN/m以下にすることができるため、塗液のハジキを防止することができる。
塗液は、上記各成分以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、上記バインダー樹脂以外の樹脂(例えば、メラミン樹脂)、帯電防止剤、及び着色剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、軟質重合体、フィラー、熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、充填剤、硬化剤、及び難燃剤も挙げられる。
塗液の固形分濃度は、通常、1質量%~20質量%であり、1質量%~10質量%であることが好ましい。塗液の固形分濃度が1質量%未満であると、樹脂基材フィルムへの塗れ性が不足する傾向にある。塗液の固形分濃度が20質量%を超えると、塗液の安定性、又は塗布外観が悪化する傾向にある。
塗布液の塗布方法としては、制限されず、公知の方法を利用できる。塗布液の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、及びカーテンコート法が挙げられる。塗布液の塗布方法においては、1種単独の方法を用いてもよく、2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
樹脂基材フィルムへの塗布液の塗布は、任意の段階で実施することができる。樹脂基材フィルムへの塗布液の塗布は、樹脂基材フィルムの製造過程で実施することが好ましく、配向結晶化が完了する前の樹脂基材フィルムに塗布することがより好ましい。ここで、「結晶配向が完了する前の樹脂基材フィルム」との用語は、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向及び横方向のいずれか一方に配向させてなる一軸延伸フィルム、及び未延伸フィルムを縦方向及び横方向の二方向に低倍率延伸配向させてなる二軸延伸フィルム(ただし、縦方向又は横方向に再延伸し、配向結晶化を完了させる前の二軸延伸フィルムに限る。)を包含する。上記の中でも、塗布液の塗布は、未延伸フィルム、又は一軸延伸フィルムに対して行うことが好ましい。未延伸フィルム、又は一軸延伸フィルムに対して塗布液を塗布した後、縦延伸及び/又は横延伸と熱固定とを施すことが好ましい。
塗液を樹脂基材フィルムに塗布する際、塗布性を向上させるための予備処理として、樹脂基材フィルム表面に物理処理(例えば、コロナ表面処理、火炎処理、及びプラズマ処理)を施すことが好ましい。
(製造方法)
樹脂基材フィルム、及び樹脂基材フィルムの原料として用いられる樹脂は、それぞれ、公知の方法によって製造することができる。以下、樹脂の一例としてポリエステルを用いた樹脂基材フィルムの製造方法について説明する。ポリエステル以外の樹脂を用いた樹脂基材フィルムは、下記の方法を参考にして製造することができる。
-ポリエステルの製造方法-
ポリエステルの製造方法としては、例えば、カルボン酸(例えば、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸)とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法、及びジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換触媒を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合を行う方法が挙げられる。
エステル交換触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、又はコバルトを含む化合物が挙げられる。エステル交換触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合触媒としては、例えば、アンチモン化合物(例えば、三酸化アンチモン、及び五酸化アンチモン)、ゲルマニウム化合物(例えば、二酸化ゲルマニウム)、チタン化合物(例えば、テトラエチルチタネート及びその部分加水分解物、テトラプロピルチタネート及びその部分加水分解物、テトラフェニルチタネート及びその部分加水分解物、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム、並びにチタントリスアセチルアセトネート)が挙げられる。
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェート、及び正リン酸(H3PO4)が挙げられる。ポリエステル中のリン元素の含有量は、ポリエステルの熱安定性の観点から、20質量ppm~100重量ppmであることが好ましい。
ポリエステルは、溶融重合後にチップ化し、加熱減圧下、又は不活性気流(例えば、窒素)中において固相重合することもできる。
樹脂基材フィルムを構成するポリエステルの固有粘度(35℃、オルトクロロフェノール)は、0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40dl/g~0.90dl/gであることがより好ましい。固有粘度が低すぎると工程切断が発生し易くなる傾向にある。また、固有粘度が高すぎると溶融粘度が高くなる傾向にあるため、溶融押出が困難になる傾向にあり、また、重合時間が長くなる傾向にある。なお、固有粘度が低すぎると、耐加水分解性が低下する傾向もある。
-ポリエステルフィルムの製造方法-
ポリエステルフィルムは、例えば、以下の方法によって製造することができる。ポリエステルをシート状に溶融押出し、次いで、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムを形成する。未延伸フィルムを、Tg~Tg+60℃で長手方向(製膜機械軸方向をいう。縦方向、又はMDともいう。)に1回又は2回以上の合計の倍率が3倍~6倍になるよう延伸し、そして、Tg~Tg+60℃で幅方向(製膜機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向をいう。横方向、又はTDともいう。)に1回又は2回以上の合計の倍率が3倍~5倍になるように延伸する。必要に応じて、延伸フィルムに対して、Tm-80℃~Tm-20℃で1秒間~60秒間熱処理を行うことができる。さらに必要に応じて、延伸フィルムに対して、熱処理温度より10℃~20℃低い温度で幅方向に0%~20%収縮させながら再熱処理を行うことができる。本段落において、「Tg」は、樹脂基材フィルムの原料であるポリエステルのガラス転移温度(℃)を表す。本段落において、「Tm」は、樹脂基材フィルムの原料であるポリエステルの融点(℃)を表す。また、上記延伸は、逐次二軸延伸であってもよく、同時二軸延伸であってもよい。
<<熱圧着工程>>
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法は、第1の圧着部材を用いて、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着する工程(熱圧着工程)を有する。
熱圧着工程における温度(すなわち、熱圧着の温度)は、少なくとも第1の圧着部材の温度に基づいて調節することができる。第1の圧着部材の温度については後述する。
熱圧着工程における圧力(すなわち、熱圧着の圧力)は、制限されない。圧力は、例えば、第1の圧着部材の温度、ヒートシール剤の組成、及び樹脂基材フィルムの組成に応じて決定すればよい。ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着する際の圧力は、0.01MPa~5MPaであることが好ましく、0.05MPa~3MPaであることがより好ましく、0.05MPa~2MPaであることが特に好ましい。
ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着する方法としては、第1の圧着部材を用いる方法であれば制限されない。例えば、第1の圧着部材を、ヒートシール剤及び樹脂基材フィルムの少なくとも一方に接触させることによって、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することができる。
熱圧着工程において、第1の圧着部材とヒートシール剤とを接触させることによって、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい。第1の圧着部材とヒートシール剤とを接触させることによって、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性を向上させることができる。
第1の圧着部材とヒートシール剤とを接触させる場合、第1の圧着部材とヒートシール剤との接触時間は、1秒以上であることが好ましく、2秒以上であることがより好ましく、3秒以上であることが特に好ましい。第1の圧着部材とヒートシール剤との接触時間が1秒以上であることで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性を向上させることができる。第1の圧着部材とヒートシール剤との接触時間の上限は、制限されず、例えば、第1の圧着部材の温度、ヒートシール剤の組成、及び樹脂基材フィルムの組成に応じて決定すればよい。第1の圧着部材とヒートシール剤との接触時間は、例えば、60秒以下の範囲で決定すればよい。
熱圧着工程において、第1の圧着部材と、第1の圧着部材に対向する第2の圧着部材との間に、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを挟むことによって、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい(例えば、図1、及び図2参照)。上記方法によってヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性を向上させることができる。上記方法においては、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性の向上という観点から、第1の圧着部材とヒートシール剤とを接触させることが好ましい。具体的に、第1の圧着部材とヒートシール剤とを接触させ、及び第2の圧着部材と樹脂基材フィルムとを接触させることによって、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい。
樹脂基材フィルムと、易接着層と、ヒートシール剤と、をこの順で有するヒートシールフィルムを製造する場合、熱圧着工程において、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの間に配置された易接着層を介して、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい。易接着層は、熱圧着工程の前に樹脂基材フィルム上に配置されていることが好ましい。
熱圧着工程において、生産性の向上の観点から、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを搬送しながら、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい。
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法においては、溶融押出工程と熱圧着工程とを連続して実施することが好ましい。溶融押出工程と熱圧着工程とを連続して実施することで、工程数をより少なくすることができ、そして、生産性も向上させることができる。「溶融押出工程と熱圧着工程とを連続して実施する」とは、時間的に途切れることなく、溶融押出工程に続いて熱圧着工程を実施することを意味する。溶融押出工程と熱圧着工程とを連続して実施する方法として、例えば、ロールツーロール方式が挙げられる。本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法(具体的には、溶融押出工程、及び熱圧着工程)は、生産性の向上の観点から、ロールツーロール方式により実施することが好ましい。
[第1の圧着部材]
第1の圧着部材としては、少なくともTm-20℃~Tm+50℃の範囲で温度調節可能な圧着部材であれば制限されない。熱圧着工程において用いられる第1の圧着部材の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
第1の圧着部材の材料としては、制限されず、公知の材料を用いることができる。第1の圧着部材の材料としては、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼)が挙げられる。
第1の圧着部材の表面は、表面処理を施されていてもよい。例えば、第1の圧着部材の表面に、フッ素樹脂を含む層が配置されていることが好ましい。第1の圧着部材の表面にフッ素樹脂を含む層が配置されることで、第1の圧着部材の表面に原材料(特にヒートシール剤)が付着することを抑制することができる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)が挙げられる。
第1の圧着部材は、生産性の向上の観点から、ロールであることが好ましく、円周方向に回転可能なロールであることがより好ましい。第1の圧着部材がロールであることで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを搬送しながら、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することもできる。第1の圧着部材がロールである場合、ロールの外周面に沿って、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを搬送しながら、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを熱圧着することが好ましい。
第1の圧着部材の大きさは、制限されない。第1の圧着部材がロールである場合、第1の圧着部材の直径は、例えば、150mm~2000mmの範囲で決定すればよい。
第1の圧着部材の温度は、Tm-20℃~Tm+50℃である。Tmは、上記のとおり、ヒートシール剤に含まれる樹脂の融点(℃)を表す。第1の圧着部材の温度は、温度調節機構によって調節される第1の圧着部材の設定温度を指す。第1の圧着部材の温度がTm-20℃以上であることで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性を向上させることができる。第1の圧着部材の温度がTm+50℃以下であることで、ヒートシール層の厚みムラを低減することができる。
第1の圧着部材の温度は、Tm-20℃以上であることが好ましく、Tm-10℃以上であることがより好ましく、Tm+10℃以上であることがさらに好ましく、Tm+20℃以上であることが特に好ましく、Tm+30℃以上であることが最も好ましい。第1の圧着部材の温度がTm-20℃以上であることで、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの密着性をより向上させることができる。
第1の圧着部材の温度は、Tm+40℃以下であることが好ましく、Tm+30℃以下であることがより好ましく、Tm+20℃以下であることがさらに好ましく、Tm+10℃以下であることが特に好ましい。第1の圧着部材の温度がTm+40℃以下であることで、ヒートシール層の厚みムラをより低減することができる。
[第2の圧着部材]
熱圧着工程において、第1の圧着部材に加えて、第2の圧着部材を用いてもよい。熱圧着工程において用いられる第2の圧着部材の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
第2の圧着部材は、第1の圧着部材に対向して配置されていてもよく、熱圧着工程において第1の圧着部材よりも下流側に配置されていてもよい。
第2の圧着部材は、第1の圧着部材に対向して配置されていることが好ましい。第2の圧着部材が第1の圧着部材に対向して配置されることで、熱圧着工程において、第1の圧着部材と、第1の圧着部材に対向する第2の圧着部材との間に、ヒートシール剤と樹脂基材フィルムとを挟むことができる。
第2の圧着部材の材料としては、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼)、及び樹脂(例えば、ゴム、及びフッ素樹脂)が挙げられる。
第2の圧着部材は、表面にフッ素樹脂を含む層を有することが好ましい。第1の圧着部材の表面にフッ素樹脂を含む層が配置されることで、原材料が付着することを抑制することができる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)が挙げられる。
第2の圧着部材は、ロールであることが好ましく、円周方向に回転可能なロールであることがより好ましい。第2の圧着部材がロールであることで、生産性を向上させることができる。
第2の圧着部材の大きさは、制限されない。第2の圧着部材がロールである場合、第2の圧着部材の直径は、例えば、150mm~2000mmの範囲で決定すればよい。
第2の圧着部材の温度は、制限されない。第2の圧着部材の温度は、例えば、20℃~Tm+50℃の範囲で決定すればよい。第2の圧着部材の温度は、第2の圧着部材の表面の温度を指す。第2の圧着部材の温度は、必要に応じて、温度調節機構によって調節してもよい。
第2の圧着部材の温度、及び第1の圧着部材の温度は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の圧着部材の温度は、ヒートシール層の厚みの均一性の観点から、第1の圧着部材の温度より低いことが好ましい。具体的に、第2の圧着部材の温度は、第1の圧着部材の温度より1℃以上低いことが好ましく、25℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことがさらに好ましい。第2の圧着部材の温度は、20℃~150℃であることが好ましく、50℃~150℃であることがより好ましく、50℃~100℃であることが特に好ましい。
本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法について、図面を参照して説明する。ただし、図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面において重複する構成要素、及び符号については、説明を省略することがある。
図1は、本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法の一例を示す概略図である。図1において、第1のニップロール40、加熱ロール30、及び第2のニップロール50は、搬送方向(矢印方向)に沿って配置される。
図1において、第1の圧着部材の一例である加熱ロール30は、第1のニップロール40と第2のニップロール50との間に配置される。加熱ロール30は、円周方向に回転可能である。加熱ロール30の温度は、Tm-20℃~Tm+50℃の範囲に調節される。
図1において、第2の圧着部材の一例である第1のニップロール40は、搬送方向(矢印方向)の上流側において、加熱ロール30に対向して配置される。加熱ロール30と第1のニップロール40との間において、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを挟むことができる。第1のニップロール40は、円周方向に回転可能である。
図1において、第2の圧着部材の一例である第2のニップロール50は、搬送方向(矢印方向)の下流側において、加熱ロール30に対向して配置される。加熱ロール30と第2のニップロール50との間において、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを挟むことができる。第2のニップロール50は、円周方向に回転可能である。
図1において、Tダイ100は、第1のニップロール40の上方に配置される。Tダイ100は、ヒートシール剤10を溶融押出することができる。
例えば図1に示すように、溶融押出工程においては、Tダイ100からヒートシール剤10を溶融押出することによって、樹脂基材フィルム20上にヒートシール剤10を配置する。
例えば図1に示すように、熱圧着工程においては、加熱ロール30の外周面に沿って、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20を搬送方向(矢印方向)に搬送し、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20を、加熱ロール30と第1のニップロール40との間、次いで、加熱ロール30と第2のニップロール50との間を通過させることによって、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを熱圧着する。図1に示すように、加熱ロール30の外周面に沿って、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20を搬送することで、ヒートシール剤10と加熱ロール30との接触時間を長くすることができる。ヒートシール剤10と加熱ロール30との接触時間を長くすることで、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20との密着性を向上させることができる。
図1において、ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間(熱圧着前の移行期間)におけるヒートシール剤の温度は、測定点P10で測定する。
図1において、熱圧着後のヒートシール剤の温度は、測定点P20で測定する。
図2は、本開示に係るヒートシールフィルムの製造方法の一例を示す概略図である。図2において、加熱ロール31、第1のニップロール41、及び第2のニップロール51は、搬送方向(矢印方向)に沿って配置される。
図2において、第1の圧着部材の一例である加熱ロール31は、第1のニップロール41に対向して配置される。加熱ロール31と第1のニップロール41との間において、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを挟むことができる。加熱ロール31は、円周方向に回転可能である。加熱ロール31の温度は、Tm-20℃~Tm+50℃の範囲に調節される。
図2において、第2の圧着部材の一例である第1のニップロール41は、加熱ロール31と第2のニップロール51との間に配置される。第1のニップロール41は、円周方向に回転可能である。
図2において、第2の圧着部材の一例である第2のニップロール51は、第1のニップロール41に対向して配置される。第1のニップロール41と第2のニップロール51との間において、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを挟むことができる。第2のニップロール51は、円周方向に回転可能である。
図2において、Tダイ100は、加熱ロール31、及び第1のニップロール41の上方に配置される。Tダイ100は、ヒートシール剤10を溶融押出することができる。
例えば図2に示すように、溶融押出工程においては、Tダイ100からヒートシール剤10を溶融押出することによって、樹脂基材フィルム20上にヒートシール剤10を配置する。
例えば図2に示すように、熱圧着工程においては、第1のニップロール41の外周面に沿って、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20を搬送方向(矢印方向)に搬送し、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20を、加熱ロール31と第1のニップロール41との間を通過させることによって、ヒートシール剤10と樹脂基材フィルム20とを熱圧着する。熱圧着後、ヒートシール剤10、及び樹脂基材フィルム20は、第1のニップロール41と第2のニップロール51との間を通過する。
図2において、ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間(熱圧着前の移行期間)におけるヒートシール剤の温度、及び熱圧着後のヒートシール剤の温度は、測定点P10で測定する。
図2において、熱圧着後のヒートシール剤の温度は、測定点P20で測定する。
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、実施例に制限されるものではない。
[測定方法]
次の各特性値は、以下の方法によって測定した。
(1)融点
試料10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入した。上記アルミニウム製パンを示差走査熱量計(TAインスツルメンツ社製、Q100型DSC)に装着し、20℃/分の速度で25℃から200℃まで昇温させ、融点(Tm:℃)を測定した。
(2)剥離強度
ヒートシールフィルムを幅10mm、長さ150mmに切り出し、密着性を測定したいヒートシール層の端部を剥離して試料を作製した。上記試料に対して、引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUCT-100型)を用いて、「JIS-K6854」に準じて剥離速度100mm/分にて180度剥離試験をした。測定は3回行い、各測定の初期ピーク値を除いた強度の平均値を剥離強度とした。
(3)厚みムラ
ヒートシールフィルムにおいて、幅方向に100mm間隔で5箇所、及び長手方向に500mm間隔で5箇所からそれぞれ三角形の試料(合計10個の試料)を切り出した。上記各試料を包埋カプセルに固定した後、エポキシ樹脂を用いて包埋した。ミクロトーム(ULTRACUT-S)を用いて、包埋された試料を縦方向(厚さ方向)に切断し、薄膜切片を作製した。光学顕微鏡を用いて、薄膜切片を観察及び撮影した。得られた写真からヒートシール層の厚さを測定した。ヒートシール層の厚さは、3か所の厚さの算術平均とする。各写真から得られるヒートシール層の厚さのうち、最大値から最小値を引いた値を厚みムラとした。
[実施例1-10、及び比較例1-5]
実施例1-10、及び比較例1-5においては、図1に示すような押出ラミネート法に基づいて、ヒートシールフィルムを作製した。
樹脂基材フィルムとして、厚さが125μmの二軸配向ポリエステルフィルム(Q51、帝人フィルムソリューション株式会社製)を用いた。表1の記載に従って、ヒートシール剤の成分(樹脂)として、アドマーQE840(三井化学株式会社製)、又はアドマーVE300(三井化学株式会社製)を用いた。ヒートシール剤の溶融押出においては、口径65mmφの押出機を用いて、ヒートシール剤をTダイから溶融押出した。エアーギャップが100mm、フィルム幅が750mm、ヒートシール層の厚さが30μ、及び加熱ロールとヒートシール剤との接触時間が表1に記載の値となるように引取速度を調節した。
加熱ロール(図1に示す加熱ロール30)の温度は、表1の記載に従って調節した。
第1のニップロール(図1に示す第1のニップロール40)の温度は、60℃に調節した。
第2のニップロール(図1に示す第2のニップロール50)の温度は、50℃に調節した。
ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間(熱圧着前の移行期間)におけるヒートシール剤の温度、及び熱圧着後のヒートシール剤の温度は、それぞれ、表1に記載のとおりである。熱圧着前の移行期間におけるヒートシール剤の温度は、図1に示す測定点P10で非接触式の温度計(ハイテスタ FT3701、日置電機株式会社製。以下同じ。)を用いて測定した。熱圧着後のヒートシール剤の温度は、図1に示す測定点P20で非接触式の温度計を用いて測定した。
ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの時間(熱圧着前の移行時間)、及び搬送過程における加熱ロールとヒートシール剤との接触時間(加熱ロール接触時間)は、それぞれ、表1に記載のとおりである。
熱圧着の際の圧力は、0.05MPaに調節した。
[実施例11-16、及び比較例6-8]
実施例11-16、及び比較例6-8においては、図2に示すような押出ラミネート法に基づいて、ヒートシールフィルムを作製した。
樹脂基材フィルムとして、厚さが125μmの二軸配向ポリエステルフィルム(Q51、帝人フィルムソリューション株式会社製)を用いた。ヒートシール剤の成分(樹脂)として、アドマーQE840(三井化学株式会社製)、又はアドマーVE300(三井化学株式会社製)を用いた。ヒートシール剤の溶融押出においては、口径65mmφの押出機を用いて、ヒートシール剤をTダイから溶融押出した。エアーギャップが100mm、フィルム幅が750mm、及びヒートシール層の厚さが30μとなるように引取速度を調節した。
加熱ロール(図2に示す加熱ロール31)の温度は、表2の記載に従って調節した。
第1のニップロール(図2に示す第1のニップロール41)の温度は、60℃に調節した。
第2のニップロール(図2に示す第2のニップロール51)の温度は、50℃に調節した。
ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの間(熱圧着前の移行期間)におけるヒートシール剤の温度、及び熱圧着後のヒートシール剤の温度は、それぞれ、表2に記載のとおりである。熱圧着前の移行期間におけるヒートシール剤の温度は、図2に示す測定点P10で非接触式の温度計を用いて測定した。熱圧着後のヒートシール剤の温度は、図2に示す測定点P20で非接触式の温度計を用いて測定した。
ヒートシール剤が溶融押出されてからヒートシール剤と樹脂基材フィルムとの熱圧着が開始されるまでの時間(熱圧着前の移行時間)は、表2に記載のとおりである。
熱圧着の際の圧力は、0.05MPaに調節した。
表1、及び表2において「樹脂」の欄に記載された次の記号は、それぞれ、以下の意味を有する。
「A」:アドマーQE840(三井化学株式会社製)
「B」:アドマーVE300(三井化学株式会社製)
表1より、実施例1~10は、比較例1~5に比べて、樹脂基材フィルムとヒートシール層との密着性に優れることがわかった。表2より、実施例11~16は、比較例6~8に比べて、基材とヒートシール層との密着性に優れることがわかった。
実施例1~16は、樹脂基材フィルムとヒートシール剤とを熱圧着する前に、樹脂基材フィルム上に溶融押出されたヒートシール剤を固化させるという従来の工法では必要とされる工程を削減できることがわかった。