JP7350608B2 - グリース組成物および転がり玉軸受 - Google Patents

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Description

本発明はグリース組成物およびそのグリース組成物を封入した転がり玉軸受に関する。
転がり玉軸受の内部には、転がり摩擦や滑り摩擦の軽減などを目的として、潤滑用のグリース組成物が封入されている。グリース組成物を封入してなる転がり玉軸受は、長寿命で外部の潤滑ユニットなどが不要かつ安価であるため、自動車や産業用機器などの汎用用途によく利用される。
転がり玉軸受における軸受トルク(回転トルクともいう)は、製品上重要な特性であり、省エネルギーや省資源の観点から、低トルク化が求められている。転がり玉軸受の回転トルクには、チャネリングやチャーニングといったグリースの挙動が関与している。チャネリングの場合、回転中にグリースがかき分けられ、転動体表面や軌道面へのグリースの付着量が少なくなり、低トルクになる傾向がある。一方、チャーニングの場合、回転によりかき分けられたグリースが再び軌道面に戻ることで、転動体表面や軌道面へのグリースの付着量が常に多くなり、高トルクになる傾向がある。そのため、グリースの挙動として、チャネリング状態になるグリースの開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、基油と増ちょう剤を含有し、その増ちょう剤が12-ヒドロキシステアリン酸リチウムであり、当該グリース組成物の全質量に対する増ちょう剤の質量比が15%以下であり、降伏応力が2kPa以上であるグリース組成物が開示されている。この特許文献1では、降伏応力を上げることでチャネリング性を高め、低トルク化を図っている。
特開2013-23644号公報
ところで、近年、転がり玉軸受の使用条件は過酷化しており、低トルク性を有しながら、高荷重条件下や高温条件下でも軸受寿命に優れる転がり玉軸受が求められている。上記特許文献1では、回転トルクについては評価されているものの、軸受寿命について検討はなされておらず、長期使用の点で改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低トルクで、かつ、軸受寿命に優れるグリース組成物、およびこれを封入した転がり玉軸受を提供することを目的とする。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、上記グリース組成物は、25℃におけるせん断速度20000s-1のせん断応力が0.2Pa以下であり、かつ、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が1600Pa以上であることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られるジウレア化合物であり、上記モノアミン成分が、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンであることを特徴とする。
上記脂環式モノアミンがジシクロヘキシルアミンを含むことを特徴とする。
上記基油は、合成炭化水素油を主成分として含み、該基油の40℃における動粘度が30mm/s~80mm/sであることを特徴とする。
本発明の転がり玉軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する玉と、上記玉を保持する樹脂製の保持器と、上記玉の周囲に封入されたグリース組成物とを備える転がり玉軸受であって、上記グリース組成物が本発明のグリース組成物であることを特徴とする。
上記転がり玉軸受は、2000min-1以下の回転速度域で使用されることを特徴とする。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含み、25℃におけるせん断速度20000s-1のせん断応力が0.2Pa以下であり、かつ、降伏応力が1600Pa以上であるので、所定のせん断速度域においてグリースが低粘度であるとともに、グリースのチャネリング性が高められることで、回転トルクを低下させることができ、また、軸受寿命にも優れる。
本発明の転がり玉軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する玉と、玉を保持する樹脂製の保持器と、玉の周囲に封入された本発明のグリース組成物とを備え、2000min-1以下の回転速度で使用されるので、特に、使用回転速度域においてグリースが低粘度であり、回転トルクの低下に寄与する。また、高負荷条件や高温条件でも優れた軸受寿命が得られる。
本発明の転がり玉軸受の一例を示す断面図である。 図1における保持器の一部斜視図である。 保持器ポケットにおけるグリースの状態を示す図である。 レオメータの一例を示す概要図である。
転がり玉軸受のグリース潤滑において、低トルク化には、玉と保持器ポケット面間に介在するグリースのせん断抵抗を低減することが重要である。本発明者らは、このせん断抵抗の低減を図るべく、グリース粘度(粘性)とチャネリング性に着目して鋭意検討を重ねた結果、所定せん断速度におけるせん断応力と降伏応力とを所定範囲にすることで、低トルクかつ長寿命を示すことを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明の転がり玉軸受の一例を図1および図2に基づき説明する。図1は、本発明の転がり玉軸受として、樹脂製冠形保持器を組み込んだ深溝玉軸受の一部断面図であり、図2はこの冠形保持器の一部斜視図である。図1に示すように、深溝玉軸受1は、外周面に軌道面2aを有する内輪2と、内周面に軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置される。内輪の軌道面2aと外輪の軌道面3aとの間に複数個の玉4が介在して配置される。この複数個の玉4が、冠形の保持器5により保持される。また、深溝玉軸受1は、内・外輪の軸方向両端開口部に設けられた環状のシール部材6を備え、内輪2と外輪3と保持器5とシール部材6とで構成される軸受内空間に封入されたグリース組成物7によって潤滑される。このグリース組成物7が本発明のグリース組成物に相当する。
図2に示すように、冠形の保持器5は、環状の本体5a上面に周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持爪8を形成し、その対向する各保持爪8を相互に接近する方向にわん曲させるとともに、その保持爪8間に転動体である玉を保持するポケット9を形成したものである。隣接するポケット9の縁に形成された相互に隣接する保持爪8の背面相互間に、保持爪8の立ち上がり基準面となる平坦部10が形成される。軸受内部において、このポケット9において、保持器5と玉とのポケット隙間にグリースが入り込んでいる状態(チャーニング)の場合にグリースのせん断抵抗の影響を受けやすくなる。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含み、必要に応じて各種添加剤を添加したものである。該グリース組成物は、特に、25℃におけるせん断速度20000s-1のせん断応力が0.2Pa以下であり、かつ、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が1600Pa以上であることを特徴としている。
グリース組成物の降伏応力は、レオメータを用いて、JIS K 7244に準拠した動的粘弾性測定法により測定される。具体的には、所定の条件下でレオメータで揺動角を変化させて、グリースの弾性成分を表す貯蔵弾性率G′と、粘性成分を表す損失弾性率G″を実測し、その比(tanδ=G″/G′)が1となるせん断応力値を降伏応力とする。なお、貯蔵弾性率G′は、グリース組成物が受けた外力の内で、弾性的に蓄えることのできるエネルギーに相当し、損失弾性率G″は、グリース組成物が受けた外力の内で熱として散逸するエネルギーに相当する。
動的粘弾性測定の条件として、好ましくは、周波数1Hz、温度25℃の条件である。また、レオメータとしては、パラレルプレート型のセルを有するレオメータを用いることが好ましい。このレオメータは、一定の応力を印加することが可能であるという特徴を有しているため、グリース組成物の降伏応力の測定に適している。
ここで、図3に、モデル軸受を用いて、X線CTスキャナで撮影した軸受内部のグリース付着状態の写真を示す。図3では、X線が透過できるように、内外輪、玉、保持器、およびシールに樹脂製を用いた。また、グリースと部材間のコントラストがつきやすいように、グリースにトレーサとしてタングステンを5質量%添加した。この軸受をトルク測定しながら運転し、初期(5時間)に停止したチャーニング品(トルク13Nmm)および長時間(23時間)で停止したチャネリング品(トルク5Nmm)を観察した。図3に示すように、チャネリング時とチャーニング時では、保持器と玉のポケット隙間のグリース量に大きな違いがあることが分かる。すなわち、ポケット隙間において、チャネリング時はグリースが存在しないのに対して、チャーニング時にはグリースが存在することでせん断抵抗を受ける。
本発明のグリース組成物は、25℃における降伏応力が1600Pa以上であるので、回転中にグリース組成物がかき分けられ、一度軌道面から弾かれたグリース組成物が位置決めされ、軌道面に導入されにくくなる。例えば、内輪回転される玉軸受では、グリース組成物は遠心力により軌道面から外輪内径面に移動し、そこに塊として堆積する。その結果、玉表面や軌道面へのグリースの付着量が少なくなるチャネリング状態となり、回転トルクが減少する。なお、堆積したグリース組成物またはその分離油が軌道面に還流されることで、軸受が潤滑される。
本発明において、グリース組成物の降伏応力は1700Pa以上であることが好ましい。降伏応力が高い方が、振動や昇温などを駆動力とするグリース組成物の軌道面への移動を妨げ、安定なチャネリング状態を維持しやすい。また、回転トルクの上昇に伴う発熱によって軸受寿命が短寿命になることを抑制できる。一方、降伏応力の上限は、例えば5000Paであり、3000Paであることが好ましい。降伏応力が高くなると潤滑成分が供給されにくくなり、軸受寿命が短寿命になるおそれがあるためである。好ましくは、グリース組成物の降伏応力は、1700Pa~2500Paである。
続いて、グリース組成物のせん断応力は、レオメータを用いて算出することができる。レオメータとして、コーンプレート型のセルを有するものを用いることが好ましい。このようなレオメータの概要を図4に示す。図4に示すように、レオメータ11は、コーンプレート型のセル12と、水平円盤プレート13とから構成されており、セル12とプレート13とは1点で接する(僅かなギャップあり)ように配置され、これらの間に試料であるグリース14を配置する。このレオメータでは、グリース14に加わるせん断速度が、セル中心からの距離に依存せずに、どの位置においても同一となる。レオロジー測定の条件としては、(1)一定温度・一定方向回転での回転速度依存性、(2)一定温度・一定せん断ひずみにおける振動周波数依存性、(3)一定周波数における動的粘弾性のせん断応力依存性などがある。例えば、(1)の条件では、一定温度・一定方向回転で所定時間回転させ、せん断応力が一定になった値が用いられる。
さらに、レオメータの測定範囲外のせん断速度におけるせん断応力は、非ニュートン流体の一般的な流動方程式であるハーシェル・バークレイ式(Herschel-Bulkley’s equation)を用いて、算出(予測)できる。ハーシェル・バークレイ式は下記式で表される。
Figure 0007350608000001
せん断速度は、玉と保持器のポケット隙間に存在するグリースに掛かるせん断速度であり、設定する軸受回転数などから算出できる。例えば、玉が保持器のポケット中心に位置すると仮定すれば、玉軸受(6204)を1800min-1~10000min-1で内輪回転させた場合、ポケットのグリースのせん断速度は24000s-1~130000s-1となる。また、降伏応力と各定数は、レオメータを用いたグリースのレオロジー特性の評価などに基づき特定できる。上記式によって、所定のせん断速度でのグリース組成物の粘度が算出される。また、算出された粘度から測定範囲外のせん断速度における粘度を外挿して求めることもできる。得られた粘度に対してせん断速度を乗じることで、該せん断速度におけるせん断応力を算出できる。
上記グリース組成物において、25℃のせん断速度20000s-1のせん断応力が0.1Pa以下であることが好ましく、せん断応力が0.08Pa以下であることがより好ましい。上記せん断応力の下限は、例えば0.05Paである。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含み、上述の降伏応力およびせん断応力が所定範囲内であれば、特に限定されない。基油は、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。基油としては、例えば、高度精製油、鉱油、エステル油、エーテル油、合成炭化水素油(PAO油)、シリコーン油、フッ素油およびこれらの混合油などを使用できる。なお、後述の実施例で示すように、基油にエステル油を含むことで、寿命時間の低下や軸受トルクの上昇を招くおそれがあるので、エステル油を除く基油を用いることが好ましい。エステル油は、分子内にエステル基を有し室温で液状を示す化合物であり、例えば、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油などが挙げられる。
上記基油の中でも、PAO油を主成分とする基油が好ましい。この場合、PAO油の含有量は、基油(混合油)全体に対して50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。特に、PAO油のみからなる基油(PAO油100%)を用いることが好ましい。
上記基油の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)は、例えば、40℃において30mm/s~100mm/sであり、30mm/s~80mm/sであることが好ましい。基油の動粘度は、低トルク化の観点では低い方が適しているが、軸受寿命の短縮を招くおそれがある。そのため、30mm/s~80mm/sとすることで、低トルク化と長寿命化の両立を一層図りやすい。より好ましくは、40℃における動粘度が30mm/s~50mm/sである。
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としては、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんなどが、ウレア化合物およびウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物、ジウレタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、高温耐久性に優れるジウレア化合物が好ましい。
ジウレア化合物は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。ジウレア化合物の中でも、特に、脂肪族・脂環式ジウレア化合物が好ましい。脂肪族・脂環式ジウレア化合物は、モノアミン成分として脂肪族モノアミンと脂環式モノアミンを用いて得られる。ここで、脂肪族モノアミンと脂環式モノアミンの配合比(例えばモル%)は特に限定されないが、脂環式モノアミンの方が脂肪族モノアミンよりも多いことが好ましい。具体的には、モノアミン全体に対して、脂環式モノアミンを60モル%以上にすることが好ましい。
ジウレア化合物を構成するジイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられ、特に、ジシクロヘキシルアミンを含むことが好ましい。
また、ジウレア化合物として、脂環式モノアミンを用いた脂環式ジウレア化合物や、脂肪族モノアミンを用いた脂肪族ジウレア化合物、芳香族モノアミン(p-トルイジンなど)を用いた芳香族ジウレア化合物も使用できる。
基油に増ちょう剤を配合してベースグリースが得られる。ジウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。グリース組成物全体に占める増ちょう剤の配合割合は、例えば5質量%~40質量%であり、好ましくは10質量%~30質量%であり、より好ましくは10質量%~20質量%である。増ちょう剤の含有量が5質量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となる。また、40質量%をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られにくくなる。
また、グリース組成物には、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗防止剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。
グリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220)は、200~350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。
本発明の転がり玉軸受には、上述のグリース組成物が封入されている。このグリース組成物は、20000s-1のせん断速度で低粘度であることから、転がり玉軸受として、比較的低回転速度域で使用される軸受に適している。この転がり玉軸受の使用回転速度域としては、2000min-1以下が好ましく、1600min-1以下がより好ましい。
また、後述の実施例で示すように、本発明の転がり玉軸受は、高負荷条件かつ低回転条件において低トルクを示し、さらに高温耐久性にも優れることから、高負荷、低速、かつ高温の条件で使用される転がり玉軸受に適している。例えば、高温環境下で使用される低速モータの軸受や、連続鋳造設備のセグメントロール軸受などに用いることができる。
本発明の転がり玉軸受について、上記図1では深溝玉軸受について示したが、転がり玉軸受の形態はこれに限らない。例えば、アンギュラ玉軸受や、転動体として玉を使用する自動車のハブベアリングに適用してもよい。本発明の転がり玉軸受は、産業での利用分野が極めて広く、各種の機器などに使用できる。
実施例1および比較例1~5について、表1に示す配合組成(質量%)で基油および増ちょう剤を混合してグリース組成物を得た。得られた各グリース組成物を用いて、せん断応力および降伏応力を算出した。
(1)せん断応力
コーンプレート型(直径20mm、コーン角1°)のレオメータを用い、各グリース組成物に対して、温度25℃、周波数1Hzで、せん断速度を1s-1から8000s-1まで増加させた。各せん断速度において定常流となったせん断応力を求め、上述のハーシェル・バークレイ式より各せん断速度におけるグリース粘度を算出した。得られた各グリース粘度を用いて、せん断速度20000s-1におけるグリース粘度を外挿して算出した。算出されたグリース粘度にせん断速度20000s-1を乗じて、せん断速度20000s-1におけるせん断応力を算出した。結果を表1に示す。
(2)降伏応力
上部プレートと下部プレートを有するパラレルプレート型(ギャップ1mm)のレオメータを用い、各グリース組成物に対して下記の条件に従って動的粘弾性測定を行った。具体的には、上部プレートと下部プレートの間にグリース組成物を挟み、そのグリース組成物に振動による周期的なせん断応力を印加し、その応答から貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″を測定した。得られた貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″が重なった点におけるせん断応力値を降伏応力とした。結果を表1に示す。
せん断応力 :10Paから3000Paまで増加
測定周波数 :1Hz
測定温度 :25℃
各プレート :直径25mm
(3)高温グリース寿命試験
上記で得たグリース組成物を深溝玉軸受(NTN社製TS3-6204ZZC3)に封入して、高温グリース寿命試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、温度150℃、アキシアル荷重67N、ラジアル荷重67Nの条件で、10000min-1の回転速度で回転させて、焼き付きに至るまでの時間を測定した。グリース寿命時間は3000時間以上を合格とした。結果を表1に示す。
(4)軸受トルク試験
上記で得たグリース組成物を樹脂製の保持器を有する深溝玉軸受(NTN社製6204T2LLBC3)に封入して、軸受トルク試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、回転数1600min-1、成り行き温度、アキシアル荷重8kgf、ラジアル荷重0kgfで回転させた。試験では30分間回転させ、20~30分間の平均値をトルク値(mNm)とした。トルク値は30以下を合格とした。結果を表1に示す。
Figure 0007350608000002
表1に示すように、25℃におけるせん断速度20000s-1のせん断応力が0.2Pa以下であり、かつ、降伏応力が1600Pa以上であるグリース組成物(実施例1)は、低トルクかつ長寿命を示し、いずれの試験も合格になった。一方、比較例1、2は、各物性値(せん断応力および降伏応力)は実施例1と大差ないが、高温グリース寿命試験は短寿命であった。また、比較例4、5は、基油の動粘度が実施例1と同程度であるものの、グリース組成物の降伏応力は低く、トルク試験で比較的高トルクを示した。
以上より、本発明に係るグリース組成物は、所定のせん断速度域で低粘度であり、かつ、高い降伏応力値を示すので、玉と保持器ポケット面間のグリースせん断抵抗が低下し、低トルク化を実現できるとともに、長寿命化にも寄与する。
本発明のグリース組成物は、低トルクで、かつ、寿命時間に優れるので、産業での利用分野が極めて広く、各種の機器などに使用できる。特に、高負荷条件や高温条件で使用される転がり玉軸受に適している。
1 深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 レオメータ
12 コーンプレート型セル
13 水平円盤プレート
14 グリース

Claims (4)

  1. 基油と増ちょう剤とを含むグリース組成物であって、
    前記グリース組成物は、25℃におけるせん断速度20000s-1のせん断応力が0.2Pa以下であり、かつ、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が1600Pa以上であり、
    前記基油は、合成炭化水素油を主成分として含み、該基油の40℃における動粘度が30mm /s~80mm /sであり、
    前記増ちょう剤は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られるジウレア化合物であり、前記モノアミン成分が、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンであり、前記グリース組成物全体に対して前記増ちょう剤が10質量%~30質量%含まれることを特徴とするグリース組成物。
  2. 前記脂環式モノアミンがジシクロヘキシルアミンを含むことを特徴とする請求項記載のグリース組成物。
  3. 内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する玉と、前記玉を保持する樹脂製の保持器と、前記玉の周囲に封入されたグリース組成物とを備える転がり玉軸受であって、
    前記グリース組成物が請求項1または請求項2記載のグリース組成物であることを特徴とする転がり玉軸受。
  4. 前記転がり玉軸受は、2000min-1以下の回転速度域で使用されることを特徴とする請求項記載の転がり玉軸受。
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