JP7340848B2 - 皮革様材料およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、皮革様材料およびその製造方法に関し、詳細には、通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が、脱アセチル化処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料およびその製造方法に関する。
皮革とは、天然皮革と人造皮革とに分類されている。天然皮革とは、一般には、動物の皮膚をそのまま剥ぎ、製品として使用したもの(皮)と、動物の皮膚の毛を除去してなめしたもの(革)をいい、人造皮革とは、一般には、天然の布地を基材として合成樹脂を塗布したもの(合成皮革)と、不織布などのマイクロファイバーの布地に合成樹脂を含浸させた、あるいはそれを基材として合成樹脂を塗布したもの(人工皮革)をいう。従来、皮革は、衣服やかばん、靴、室内装飾品、家具、アクセサリー、自動車といった、膨大な用途において使用されており、世界の皮革需要の規模は、2025年には6,296億米ドルまで達すると推定されている(Leather Goods Market Size, Share & Trends Analysis Report,By Distribution Channel(E-commerce,Retail Stores),By Product(Footwear,Luggage,Accessories,Others),By Material And Segment Forecasts,2019 - 2025,Grand View Research,Inc.)。
天然皮革の対象となる動物は、哺乳類、は虫類、鳥類、魚類と生物資源の多岐に及ぶが、生物資源には絶対的な限りがあるうえ、動物愛護の観点から鑑みても、天然皮革をもってして、前述した世界の需要をまかなうというのは無理があり、望まれるものではない。一方、合成樹脂を使用する人造皮革をもってして、前述した世界の需要をまかなうというのも、化石資源の枯渇や地球温暖化防止の観点から、将来的に困難となり得る。そこで、昨今、環境的、社会的および経済的コストを考慮しつつ当該需要を満たすべく、再生可能なバイオマス資源を用いて、皮革の代替材料が開発されている。
キチンは、エビ、カニなどの甲殻類の外骨格、あるいは菌類の細胞壁など天然に広く存在する多糖類の一種であり、キトサンは、キチンを脱アセチル化して得られるが、いずれも再生可能なバイオマス資源であり、皮革の代替材料として注目されている。例えば、特許文献1には、皮膚糸状菌からキチンおよび/またはキトサンを量産する方法が開示されており、特許文献2および特許文献3には、糸状菌の一種である担子菌を、固体培地を用いて静置培養または固体培養して菌糸を生育させ、担子菌や霊芝などの真菌類の菌糸に含まれるキチンを利用して菌糸体材料を製造する方法が開示されている。
国際公開第1993/014216号パンフレット 米国特許出願公開第2009/0307969号 米国特許出願公開第2018/0014468号
しかしながら、特許文献2に開示されている方法により、菌糸体材料を製造するためには、静置培養を採用しているため、21~45日もの培養期間を要し、特許文献3に開示されている方法もまた、固体培養を採用しているため、菌糸を成長させるだけでも10日以上の期間を要しており、すべての製造工程を含めると2週間以上の期間を要していることから、量産するためには少なくとも培養期間を大幅に短縮する必要がある。また、そのような菌糸体材料は、実用に耐え得るほどの引張強度や伸び率を有していないのが実情である。
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、従来の静置培養または固体培養を採用した菌糸体材料の製造方法と比較して、効率的に菌糸体材料を製造し、その菌糸体材料から実用に耐え得る引張強度および伸び率を有する皮革様材料を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養して大量に培養し、得られた菌体を回収して破砕(特に湿式破砕)および/または抄造して菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を得た後、得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理し、得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を可塑化処理するという菌糸体材料の製造方法が、従来の静置培養または固体培養を採用した菌糸体材料の製造方法と比較して、短期間で菌糸体材料を製造することができること、また、当該製造方法により製造した菌糸体材料が皮革様材料であり、従来の菌糸体材料と比較して引張強度および伸び率が向上していることを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が、脱アセチル化処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料。
(2)通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が、脱アセチル化処理され、架橋処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料。
(3)(i)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程、(ii)前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を得る菌体破砕/抄造工程、(iii)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程、(iv)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を可塑化処理して、前記脱アセチル化処理物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程、以上、(i)、(ii)、(iii)および(iv)の工程を含む方法により製造されてなる、皮革様材料。
(4)(i)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程、(ii)前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を得る菌体破砕/抄造工程、(iii)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程、(iv)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を架橋処理して、前記脱アセチル化処理物の架橋物を得る架橋処理工程、(v)前記得られた脱アセチル化処理物の架橋物を可塑化処理して、前記架橋物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程、以上、(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の工程を含む方法により製造されてなる、皮革様材料。
(5)(1)から(4)の少なくともいずれかに記載の皮革様材料を原材料としてなる製品。
(6)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程と、前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を得る菌体破砕/抄造工程と、前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程と、前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を可塑化処理して、前記脱アセチル化処理物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程とを有する、皮革様材料の製造方法。
(7)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程と、前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を得る菌体破砕/抄造工程と、前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程と、前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を架橋処理して、前記脱アセチル化処理物の架橋物を得る架橋処理工程と、前記得られた脱アセチル化処理物の架橋物を可塑化処理して、前記架橋物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程とを有する、皮革様材料の製造方法。
本発明に係る皮革様材料およびその製造方法によれば、従来の静置培養または固体培養を採用した菌糸体材料の製造方法と比較して、短期間で菌糸体材料を製造することができ、また、従来の菌糸体材料と比較して引張強度および伸び率が向上した、皮革様材料たる菌糸体材料を提供することができる。
本発明に係る皮革様材料の製造方法の第1実施形態の工程を示すフロー図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法の第2実施形態の工程を示すフロー図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法の第3実施形態の工程を示すフロー図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法の第4実施形態の工程を示すフロー図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法の第5実施形態の工程を示すフロー図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法において、中間生産物として製造された菌体抄造物(菌体紙状物)の断面を表す写真図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法で製造した皮革様材料の断面を表す写真図である。 本発明に係る皮革様材料の製造方法で製造した皮革様材料の、拡大した断面を表す写真図である。 従来採用されている方法である、糸状菌を静置培養する工程を含む方法により得られた菌糸体膜の断面を表す写真図である。 従来採用されている方法である、糸状菌を静置培養する工程を含む方法により得られた菌糸体膜を用いて作製した菌糸体材料の断面を表す写真図である。 従来採用されている方法である、糸状菌を静置培養する工程を含む方法により得られた菌糸体膜を用いて作製した菌糸体材料の、拡大した断面を表す写真図である。
以下、本発明に係る皮革様材料およびその製造方法について、実施形態に基づき詳細に説明する。本発明に係る皮革様材料の第一実施形態は、通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が、脱アセチル化処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料であり、本発明に係る皮革様材料の製造方法の第一実施形態は、図1に示すように、「(i)通気・液体培養工程S1」、「(ii)菌体破砕/抄造工程S2」、(iii)「脱アセチル化処理工程S3」および「(iv)可塑化処理工程S4」を有している。第一実施形態の皮革様材料は、製品に用いるなどの実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有し、第一実施形態の皮革様材料の製造方法は、製品に用いるなどの実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有した皮革様材料を製造することができるのである。
本第一実施形態において、「皮革様材料」とは、上述した皮革、主に天然皮革(革)に似た触感やグリップ性を有している菌糸体材料をいい、主に天然皮革(革)に似た触感やグリップ性を有している菌糸体材料であれば特に限定されない。
本第一実施形態の「皮革様材料」においては、図8に表すように、本第一実施形態の「皮革様材料」すなわち菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物の可塑化処理物を構成する菌体が、略配向的に整列して積層していることが分かる。一方、従来採用されている方法である、糸状菌を静置培養する工程を含む方法により得られた菌糸体膜を用いて作製した菌糸体材料においては、図11に表すように、菌糸体材料を構成する菌体が、略配向的に整列して積層していないことが明らかである。
なお、本第一実施形態の「皮革様材料」について、その構造および/または特性により直接特定するためには、本第一実施形態における「皮革様材料」を複数作製して、様々な手法を用いて構造または特性による特定を試みる必要があるが、そのような試験は、一人の有能な当業者であっても、多くの回数の試験を行うことを要するものであって、多大な時間を必要とするとともに、大きな経済的支出を伴うものである(特許・実用新案審査ハンドブック 第II部 第2章 特許請求の範囲の記載要件「2205 物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合の審査における『不可能・非実際的事情』についての判断」の第16ページ最下行~第17ページ第1~4行目をご参照)。すなわち、本第一実施形態における「皮革様材料」を、その構造または特性により直接特定するためには、出願時において、当業者は採算的に見合わない時間と費用を要することとなり、そのような特定作業を要求することは、先願主義の下、一日も早い出願日を追い求める出願人にとって、技術の急速な進展と国際規模での競争の激しい特許取得の場面においては酷なことであるといえる(最高裁平成24年(受)1204号の第10ページ、または最高裁平成24年(受)2658号の第10~11ページ等)。
次に、本第一実施形態における「糸状菌」には、Hawksworthなど,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,bUniversity,Press,Cambridge,UKにより定義されるように、細区分真菌類(Eumycota)および卵菌(Oomycota)に属する全ての糸状形の菌が包含される。また、糸状菌は、一般的に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナンおよび他の複合多糖類から構成される菌糸体壁により特徴づけられ、その栄養成長は、菌糸拡張によってであり、そして炭素代謝は絶対好気性である。
本第一実施形態において、「細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類」とは、上述した糸状菌のうち、例えば、藻菌類(Oomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)に属する菌であって、かつ、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含んでいる菌の他、白色腐朽菌、褐色腐朽菌などを挙げることができる。また、例えば、Acremonium属、Aspergillus属、Aureobasidium属、Bjerkandera属、Cellulomonas属、Ceriporiopsis属、Choanephora属、Chrysosporium属、Clostridium属、Coprinus属、Coriolus属、Cryptococcus属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Irpex属、Magnaporthe属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Parasitella属、Penicillium属、Phanerochaete属、Phlebia属、Phycomyces属、Piromyces属、Pleurotus属、Rhizopus属、Schizophyllum属、Streptomyces属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、Trichoderma属、Zygorhynchus属に属する菌を挙げることができる。
次に、本第一実施形態において、「通気・液体培養工程S1」とは、本第一実施形態の糸状菌類を通気かつ液体培養する工程であり、「通気・液体培養工程S1」の目的は、効率的に糸状菌の菌体を生産することである。当該目的を達成するためには、単位体積当たりの菌体生産速度を担保する必要があることから、「通気・液体培養工程S1」における「通気・液体培養」としては、液体培地における通気攪拌培養を採用することが好ましい。
また、本第一実施形態において、「菌体破砕/抄造工程S2」とは、図1に示すように、「通気・液体培養工程S1」において通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物を得る工程であり、「菌体破砕/抄造工程S2」の目的は、糸状菌類の菌体が繊維状となった菌体破砕物を得ることおよび/または紙状の菌体抄造物(菌体紙状物)を得ることである。なお、「通気・液体培養工程S1」における培養後の糸状菌類の菌体が十分に離解して繊維状と化している場合、「菌体破砕/抄造工程S2」は、破砕を行わない「菌体抄造工程」となり、「通気・液体培養工程S1」における培養後の糸状菌類の菌体が十分に離解しておらず、繊維状と化していない場合、「菌体破砕/抄造工程S2」は、破砕を行う「菌体破砕工程」、または、破砕および抄造を行う「菌体破砕・抄造工程」となる。
また、本第一実施形態において、「菌体破砕」は、リファイナーやホモジナイザーなどの破砕装置を用いて行うことができ、これにより通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕した菌体破砕物を得ることができる。なお、得られた菌体破砕物はパルプ様である。一方、本第一実施形態において、「菌体抄造」は、ワイヤーパートや吸引ろ過、真空ろ過などの装置を用いて行うことができ、これにより紙状の菌体抄造物(菌体紙状物)を得ることができる。
また、本第一実施形態において、「脱アセチル化処理工程S3」とは、図1に示すように、本第一実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」を経て得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)を脱アセチル化処理する工程であり、より詳細には、アルカリ処理やイオン液体処理などによって、「菌体破砕/抄造工程S2」を経て得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が有するキチンを脱アセチル化し、キチンの一部をキトサンに変換する工程である。「脱アセチル化処理工程S3」によって、「菌体破砕/抄造工程S2」において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の引張強度や伸び率を向上させることができる。前記菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物の脱アセチル化度としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%がよりさらに好ましく、85%以上が特に好ましい。
また、本第一実施形態において、「可塑化処理工程S4」とは、図1に示すように、本第一実施形態の「脱アセチル化処理工程S3」を経て得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を可塑化処理して、前記脱アセチル化処理物の可塑化処理物を得る工程であり、「可塑化処理工程S4」の目的は、「脱アセチル化処理工程S3」で得られた糸状菌の紙状物に引張強度や伸び率を付与した皮革様シートを得ることである。「可塑化処理工程S4」により、「脱アセチル化処理工程S3」を経て得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物の柔軟性を向上させることができ、その結果、割れなどを抑制することができる。
本第一実施形態の「可塑化処理工程S4」において使用することができる可塑剤は、特に限定されず、当業者により適宜選択可能な可塑剤を使用することができるが、そのような可塑剤としては、例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、グリコール類などを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
油脂類としては、例えば、アボガド油、アマニ油、ツバキ油、アルモンド油、サザンカ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、キョウニン油、ブドウ油、グレープシード油、メドフォーム油、ホホバ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ナタネ油、シナモン油、卵黄油、ゴマ油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、米胚芽油、コメヌカ油、カカオ脂、ヤシ油、月見草油、シア脂、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化ヒマシ油などを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
ロウ類としては、例えば、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、還元ラノリン、POEラノリンアルコールエーテルなどを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカンなどを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸などを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコールなどの直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分枝鎖アルコール;などを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
合成エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシルなどを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種類以上を配合することができる。
次に、本第一実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が脱水できていない場合、図2に示すように、本第一実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」と「脱アセチル化処理工程S3」との間に「脱水工程S5」を備えて、本発明に係る皮革様材料の製造方法の第二実施形態としてもよく、さらに、図3および図4に示すように、本第一実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」と「脱アセチル化処理工程S3」との間、または本第二実施形態の「脱水工程S5」と「脱アセチル化処理工程S3」との間に「乾燥工程S6」を備えて、それぞれ本発明に係る皮革様材料の製造方法の第三実施形態および第四実施形態としてもよい。
本第一実施形態において、「脱水」は、フィルタープレス、ベルトプレス、真空ろ過などの装置を用いてすることができ、「乾燥」は、熱風乾燥、ヒートプレスなどの装置を用いてすることができる。また、菌糸を伸長させながら通風乾燥することができる。
また、本第一実施形態の皮革様材料の製造方法は、図5に示すように、本第一実施形態の「脱アセチル化処理工程S3」と「可塑化処理工程S4」との間に「架橋処理工程S7」を備えて、本発明に係る皮革様材料の製造方法の第五実施形態としてもよい。「架橋処理工程S7」により、「脱アセチル化処理工程S3」を経て得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が有するタンパクやキチン、キトサンを、タンニン(タンニン酸)やゲニピンなどの架橋剤を用いて架橋することができ、引張強度や伸び率をより向上させることができる。
本第五実施形態の「架橋処理工程S7」において使用することができる架橋剤は、特に限定されず、当業者により適宜選択可能な架橋剤を使用することができるが、そのような架橋剤としては、例えば、ゲニピン、タンニン(タンニン酸)、その他のフラボノイド(例えば、プロアントシアニジン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、ケルセチン、カルコン、アピゲニン、ルテオリン(luteoiin)、ポリメトキシ化フラボン、クエルシトール(quercitoi)、ケンペロール、ミリセチン、アントシアニン、レスベラトロール(resveritrol)、イソフラボノイド、ダイゼイン、ゲニステイン、ノビレチン、およびタンゲレチン)、バイオフラボノイド、リボフラビン、イミドエステル、エポキシド(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル)、ジアルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、2,3-ジブロモプロピオニル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、およびクロラムブシル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、6-マレイミドヘキサン酸活性エステル、ジスクシンイミジルスベレート、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート、アジド、ジアジリン、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートなどを挙げることができ、さらに、これらの1種または2種以上を配合することができる。
なお、本第五実施形態の皮革様材料の製造方法においても、本第二実施形態の皮革様材料の製造方法と同様に、本第五実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)が脱水できていない場合は、本第五実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」と「脱アセチル化処理工程S3」との間に「脱水工程S5」を備えて、本発明に係る皮革様材料の製造方法の第六実施形態としてもよく、さらに、本第三実施形態の皮革様材料の製造方法および本第四実施形態の皮革様材料の製造方法と同様に、本第五実施形態の「菌体破砕/抄造工程S2」と「脱アセチル化処理工程S3」との間、または本第六実施形態の「脱水工程S5」と「脱アセチル化処理工程S3」との間に「乾燥工程S6」を備えて、それぞれ本発明に係る皮革様材料の製造方法の第七実施形態および第八実施形態としてもよいことはいうまでもない。第六実施形態の皮革様材料の製造方法、第七実施形態の皮革様材料の製造方法および第八実施形態の皮革様材料の製造方法の工程については図示しない。
なお、本発明に係る皮革様材料の製造方法は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない範囲において、適宜変更することができる。
例えば、上述した各実施形態や構成以外の構成を、本発明の特徴を損なわない範囲において、適宜採用することができる。そのような構成としては、例えば、前培養工程や加熱工程、洗浄(水洗)工程、さらなる脱水工程、さらなる乾燥工程などを挙げることができる。
以下、本発明に係る皮革様材料およびその製造方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される実施態様に限定されない。
《実施例1》皮革様材料の製造
本発明に係る皮革様材料を製造した。細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)を使用した。バッフルフラスコにアスペルギルス・オリゼーの胞子を1.0×10個/mLとなるように植菌し、振盪培養器を用いて、30℃の温度条件下で24時間、前培養した。前培養では、24g/Lのポテトデキストロースを溶解した水溶液を培地として用いた。得られた培養液を、本培養液に対して3%(v/v)となるように植菌し、30L容積のジャーファーメンターを用いて、30℃、通気量1vvm、pH5.0の条件下で24時間、通気攪拌培養した。通気攪拌培養すなわち本培養では、10g/Lのコーンスティープリカーおよび25g/Lの廃糖蜜を調整した水溶液を培地として用いた。
得られた培養液からステンレス金網で粒状の菌体を回収した。回収した菌体に除去された等量の水道水を加え、ホモジナイザーで菌体を破砕した。破砕した菌体スラリー(乾燥菌体含有量10g)を、直径90mmのろ紙を用いて吸引ろ過し、菌体抄造物(菌体紙状物)を得た。得られた菌体抄造物(菌体紙状物)を室温で24時間自然乾燥させた。その菌体抄造物(菌体紙状物)の断面を図6に表す。図6に表されるように、菌体抄造物(菌体紙状物)に含まれる菌糸が密集しており、空隙の中に菌糸が伸長している様子が確認された。
前記得られた菌体抄造物(菌体紙状物)の乾燥物を、30%(w/v)のNaOH水溶液を用いて100℃の温度条件下で4時間浸漬することにより脱アセチル化処理をした。脱アセチル化処理された菌体抄造物(菌体紙状物)を水洗後、酢酸を用いて中和した。得られた菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を、室温で24時間、プロピレングリコール水溶液(20%(w/w))に浸漬することにより可塑化処理した後、自然乾燥することにより、シート状の皮革様材料を得た。当該得られた皮革様材料は、製品に用いるなどの実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有していた。
また、当該得られた皮革様材料の断面を図7に、拡大した当該断面を図8に、それぞれ表す。図7および図8に表されるように、当該得られた皮革様材料すなわち脱アセチル化処理および可塑化処理後の菌体抄造物(菌体紙状物)は、脱アセチル化処理および可塑化処理前の菌体抄造物(菌体紙状物)と同様の構造が保持されていることが明らかとなり、また、当該得られた皮革様材料すなわち脱アセチル化処理および可塑化処理後の菌体抄造物(菌体紙状物)を構成しているアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の菌体が、略配向的に整列して積層していることが明らかとなった。
[比較例]従来採用されている方法による菌糸体材料の製造
本発明に係る皮革様材料と比較するために、従来採用されている方法である、糸状菌類を静置培養する工程を含む方法により菌糸体材料を作製した。まず、48g/Lのポテトデキストロースを溶解した水溶液に、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の胞子を1.0×10個/mLとなるように植菌し、30℃の温度条件下で3日間、静置培養した。液体培地表面に生育したアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の菌糸体膜を回収し、新たに調整した液体培地に移植して、30℃の温度条件下で2日間、さらに静置培養した。得られた菌糸体膜を再度、新たに調整した液体培地に移植して、30℃の温度条件下で2日間、さらに静置培養した。得られた菌糸体膜を室温で24時間自然乾燥させた。得られた菌糸体膜の断面を図9に表す。図9に表されるように、当該得られた菌糸体膜を構成するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の菌体が互いに絡み合っているのが明らかとなった。また、本発明に係る脱アセチル化処理後の菌体抄造物(菌体紙状物)を構成しているアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の菌体の密度と比較して、当該得られた菌糸体膜を構成するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae NBRC 4075)の菌体密度は小さいことが明らかとなった。
前記得られた菌糸体膜に対し、実施例1と同様、脱アセチル化処理および可塑化処理を行い、自然乾燥することにより、シート状の菌糸体材料を得た。当該得られた菌糸体膜は、実施例1において製造した皮革様材料と比較して、引張強度と伸び率のいずれもが劣っており、製品に用いるなどの実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有していないことが明らかとなった。
また、当該得られた脱アセチル化処理および可塑化処理後の菌糸体材料の断面を図10に、拡大した当該断面を図11に、それぞれ表す。図10および図11に表されるように、当該得られた脱アセチル化処理および可塑化処理後の菌糸体材料では、脱アセチル化処理および可塑化処理により形態が消滅して菌体の姿がなくなっており、当該得られた脱アセチル化処理および可塑化処理後の菌糸体材料の断面構造は、脱アセチル化処理および可塑化処理前の菌糸体材料の断面構造と比較して、変化していることが明らかとなり、また、配向性のない菌体が密集し、整列しておらず、積層となっていないことが明らかとなった。
《実施例2》複数の糸状菌類の検討
細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類として、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei NBRC 31326)と、イルペックス・ラクテウス(Irpex lacteus NBRC 5367)を使用した以外は実施例1と同様の方法により、実施例1と同様の、実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有する皮革様材料を得ることができた。
《実施例3》脱アセチル化処理工程の要否の検討
脱アセチル化処理を実施しない以外は実施例1と同様の方法により、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度と伸び率のいずれもが劣っていた。
《実施例4》脱アセチル化処理工程における温度条件および処理時間の検討
30%(w/v)のNaOH水溶液を用いて100℃の温度条件下で4時間浸漬することにより脱アセチル化処理をすることに代えて、30%(w/v)のNaOH水溶液を用いて室温で24時間浸漬することにより脱アセチル化処理をしたこと以外は実施例1と同様の方法により、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度および伸び率が同程度であった。
《実施例5》可塑化処理工程の要否の検討
可塑化処理を実施しない以外は実施例1と同様の方法により、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度は同程度であったが、伸び率は劣っていた。
《実施例6》架橋処理工程の検討
実施例1の脱アセチル化処理工程の後に、架橋処理工程を加えた。脱アセチル化処理工程において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を、縮合型植物タンニン(ケブラチョ)水溶液(5%(w/v))に室温で24時間浸漬することにより架橋処理をした。当該得られた架橋処理物を水洗した後、室温で24時間、プロピレングリコール水溶液(20%(w/w))に浸漬することにより可塑化処理した後、自然乾燥することにより、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度は向上したものの、伸び率が低下したが、実施例1と同様の、実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有する皮革様材料であった。
《実施例7》架橋剤の検討
脱アセチル化処理工程において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を、縮合型植物タンニン(ケブラチョ)水溶液(5%(w/v))に室温で24時間浸漬することに代えて、脱アセチル化処理工程において得られた菌体破砕物または菌体抄造物(菌体紙状物)の脱アセチル化処理物を、ゲニピン水溶液(2%(w/v))に室温で24時間浸漬浸漬した以外は実施例6と同様の方法により、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度は向上し、伸び率は同程度であった。
《実施例8》乾燥工程の検討
実施例1において、得られた菌体抄造物(菌体紙状物)を室温で24時間自然乾燥させることに代えて、得られた菌体抄造物(菌体紙状物)を105℃の温度条件下で1時間加熱乾燥させること以外は実施例1と同様の方法により、皮革様材料を得た。得られた皮革様材料は、実施例1で得られた皮革様材料と比較して、引張強度および伸び率が同程度であった。
本発明に係る皮革様材料およびその製造方法によれば、従来の菌糸体材料および静置培養または固体培養を採用したその製造方法と比較して、引張強度および伸び率が向上し、かつ、製品に用いるなどの実用に耐え得るほどの引張強度および伸び率を有した皮革様の菌糸体材料を提供することが可能となるとともに、短期間で製造することが可能となる。

Claims (7)

  1. 通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物が、脱アセチル化処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料。
  2. 通気かつ液体培養された、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類の菌体破砕物または菌体抄造物からなる皮革様材料であって、前記菌体破砕物または菌体抄造物が、脱アセチル化処理され、架橋処理され、かつ、可塑化処理された、前記皮革様材料。
  3. (i)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程、
    (ii)前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物を得る菌体破砕/抄造工程、
    (iii)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程、
    (iv)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を可塑化処理して、前記脱アセチル化処理物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程、
    以上、(i)、(ii)、(iii)および(iv)の工程を含む方法により製造されてなる、皮革様材料。
  4. (i)細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程、
    (ii)前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物を得る菌体破砕/抄造工程、
    (iii)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程、
    (iv)前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を架橋処理して、前記脱アセチル化処理物の架橋物を得る架橋処理工程、
    (v)前記得られた脱アセチル化処理物の架橋物を可塑化処理して、前記架橋物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程、
    以上、(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の工程を含む方法により製造されてなる、皮革様材料。
  5. 請求項1から請求項4の少なくともいずれかに記載の皮革様材料を原材料としてなる製品。
  6. 細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程と、
    前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物を得る菌体破砕/抄造工程と、
    前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程と、
    前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を可塑化処理して、前記脱アセチル化処理物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程と
    を有する、皮革様材料の製造方法。
  7. 細胞壁にキチンおよび/またはキトサンを含む糸状菌類を通気かつ液体培養する通気・液体培養工程と、
    前記通気かつ液体培養した糸状菌類の菌体を破砕および/または抄造して、菌体破砕物または菌体抄造物を得る菌体破砕/抄造工程と、
    前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物を脱アセチル化処理して、前記菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を得る脱アセチル化処理工程と、
    前記得られた菌体破砕物または菌体抄造物の脱アセチル化処理物を架橋処理して、前記脱アセチル化処理物の架橋物を得る架橋処理工程と、
    前記得られた脱アセチル化処理物の架橋物を可塑化処理して、前記架橋物の可塑化処理物を得る可塑化処理工程と
    を有する、皮革様材料の製造方法。
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