JP7339742B2 - 多層フィルム - Google Patents
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Description
[1]下記式(I)で表され、全単量体単位に対するa、b及びcの含有量(モル%)が下記式(1)~(3)を満足し、かつ下記式(4)で定義されるケン化度(DS)が90モル%以上である変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と樹脂(B)とを含み、樹脂(B)は酸変性ポリオレフィン系樹脂および酸変性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と樹脂(B)の質量比[B/A]が1/99~30/70である樹脂組成物;
18≦a≦55 (1)
0.5<c≦4 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4);
[2]aが40未満である、[1]の樹脂組成物;
[3]樹脂(B)中の酸変性ポリオレフィン系樹脂および酸変性エラストマーの合計含有量が15質量%以上である、[1]または[2]の樹脂組成物;
[4]さらに、未変性またはエポキシ変性のエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を含む、[1]~[3]のいずれかの樹脂組成物;
[5]EVOH(C)のエチレン単位含有量が40モル%以上である、[4]の樹脂組成物;
[6]変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の合計質量に対する樹脂(B)の質量比[B/(A+C)]が1/99以上30/70未満である、[4]または[5]の樹脂組成物;
[7]変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対するエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の質量比[C/A]が5/95~40/60である、[4]~[6]のいずれかの樹脂組成物;
[8]R1、R2、R3及びR4が水素原子である、[1]~[7]のいずれかの樹脂組成物;
[9]X、Y及びZが、それぞれ独立に水素原子又はアセチル基である、[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物;
[10][1]~[9]のいずれかの樹脂組成物からなる層を備えるフィルム;
[11][1]~[9]のいずれかの樹脂組成物からなる層を備える熱収縮フィルム;
を提供することにより達成される。
本発明の樹脂組成物は、下記式(I)で表され、全単量体単位に対するa、b及びc(以下、cの含有量を「変性量」と表現する場合がある)の含有量(モル%)が下記式(1)~(3)を満足し、かつ下記式(4)で定義されるケン化度(DS)が90モル%以上である変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)(以下「変性EVOH(A)」と略記する場合がある)と樹脂(B)とを含み、変性EVOH(A)と樹脂(B)の質量比[B/A]が1/99~30/70であるものである。この変性EVOH(A)は、下記式(I)の左端に示されるエチレン単位及び下記式(I)の真ん中に示されるXを有するビニルアルコール系単位に加えて、下記式(I)の右端に示されるY及びZを有する1,3-ジオール系単位を有しており、この1,3-ジオール系単位を特定割合有することで変性EVOH(A)に樹脂(B)をブレンドしてなる層を有する多層フィルムにおける層間接着力の低下を抑制できる。また変性量0.5~4モル%においては樹脂組成物のガスバリア性が低下することなく、樹脂(B)の分散性が高まるため、延伸後においても高いガスバリア性を維持できる。
18≦a≦55 (1)
0.5<c≦4 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4)
18≦a≦55 (1)
0.5<c≦4 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
すなわち、本発明の変性EVOH(A)においては、エチレン単位と式(I)中で右端に示されたY及びZを含む1,3-ジオール系単位以外の単量体単位のうちの90%以上がビニルアルコール単位又はビニルエステル単位であるということである。式(3)を満足しない場合、ガスバリア性が不十分となる。好適には下記式(3’)を満足し、より好適には下記式(3”)を満足する。
[100-(a+c)]×0.95≦b≦[100-(a+c)] (3’)
[100-(a+c)]×0.98≦b≦[100-(a+c)] (3”)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4)
ここで、「X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数」は、水酸基のモル数を示し、「X、Y及びZの合計モル数」は、水酸基とエステル基の合計モル数を示す。ケン化度(DS)が90モル%未満になると、十分なガスバリア性能が得られないばかりか、変性EVOH(A)の熱安定性が不十分となり、溶融成形時にゲルやブツが発生しやすくなる。ケン化度(DS)は95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。
樹脂(B)は、酸変性ポリオレフィン系樹脂および酸変性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む柔軟な樹脂である。本発明の樹脂組成物は樹脂(B)を含むことで良好な耐屈曲性を達成できる。本発明に用いられる樹脂(B)は、変性EVOH(A)及びEVOH(C)等のEVOH以外の樹脂である。
本発明の樹脂組成物は、さらに未変性またはエポキシ変性EVOH(C)(以下「EVOH(C)」と略記する場合がある。)を含んでもよい。本発明の樹脂組成物がEVOH(C)を含むことにより、より高い延伸後のバリア性を維持しつつ、フィルムの柔軟化が可能となる。EVOH(C)としては、公知の方法で得られる未変性EVOHおよびエポキシ変性EVOHを用いることができる。エポキシ変性EVOHとしては、例えばWO2003/072653に記載されているエポキシ変性EVOHを用いることができる。
変性EVOH(A)に対する樹脂(B)の質量比[B/A]は1/99以上であり、4/96以上が好ましく、5/95以上がより好ましい。質量比[B/A]が1/99未満であると、柔軟性、耐屈曲性が低下し、屈曲時にピンホールが発生しやすくなる傾向となる。一方、質量比[B/A]は30/70以下であり、20/80以下が好ましく、15/85以下がより好ましく、10/90以下がさらに好ましい。質量比[B/A]が30/70を超えると延伸後のガスバリア性が低下する傾向となる。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、例えば、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ素化合物、金属塩、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維などの補強剤などの変性EVOH(A)、樹脂(B)及びEVOH(C)以外の成分を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば変性EVOH(A)と樹脂(B)と必要に応じてEVOH(C)やその他成分とを溶融条件下で混合または混練することによって製造できる。溶融条件下における混合または混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置または混練装置を使用して行うことができる。混合または混練の時の温度は使用する変性EVOH(A)の融点などに応じて適宜調節すればよいが、通常160℃以上300℃以下である。
本発明の樹脂組成物からなる層(以下「変性EVOH層」と称する場合がある)を備えるフィルムが本発明の好適な実施態様である。フィルムの成形法としては、押出成形、インフレーション成形、プレス成形、カレンダー成形等の任意の方法を採用できる。変性EVOH層の厚みは、通常、1~250μmである。
本発明のフィルムは、変性EVOH層の他に、変性EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂からなる層(以下、「他の熱可塑樹脂層」と称する場合がある)を備える多層フィルムであることが好ましい。本発明の多層フィルムにおける他の熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらを不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどのポリオレフィン;ポリエステル;ポリアミド(共重合ポリアミドも含む);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリビニルエステル;ポリエステルエラストマー;ポリウレタンエラストマー;塩素化ポリスチレン;塩素化ポリプロピレン;芳香族ポリケトン又は脂肪族ポリケトン、及びこれらを還元して得られるポリアルコール;ポリアセタール;ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも、ヒートシール性及び熱収縮性が優れる観点からはエチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエチレンが好適に用いられ、突刺強度や耐ピンホール性等の機械強度が優れる観点からはポリアミドが好適に用いられる。
本発明の樹脂組成物からなる層を備えるフィルムは、一軸延伸、二軸延伸、延伸ブロー成形、熱成形、圧延などの二次加工に供されることが好ましい。中でも二軸延伸が好ましい。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。延伸方法としては、テンター延伸法、チューブラー延伸法、ロール延伸法などが例示される。熱収縮フィルムが本発明の変性EVOH層を備えるフィルムの好適な実施態様である。本発明の熱収縮フィルムは、高い倍率で延伸されたものであることが好適である。具体的には、面積倍率7倍以上に延伸されてなる熱収縮フィルムが特に好適である。延伸温度は、通常50~130℃である。フィルムを延伸する前に、放射線照射などによる架橋を施してもよい。熱収縮性をより高める観点からは、フィルムを延伸した後に、速やかに冷却することが好適である。
前記熱収縮性を示す多層フィルムを、熱収縮フィルムとして使用することが好ましい。本発明の熱収縮フィルムは、接着性、ガスバリア性、延伸性及び熱収縮性に優れ、しかも生産性にも優れている。したがって、食品包装容器、医薬品包装容器、工業薬品包装容器、農薬包装容器等の各種包装容器の材料として好適に用いられる。
・樹脂(B)
B-1:「タフマーMP0610」(三井化学株式会社製、無水マレイン酸変性エチレンプロピレンエラストマー、酸価6.1mg-KOH/g)
B-2:「アドマーNF518」(三井化学株式会社製、無水マレイン酸変性ポリエチレン、酸価1.4mg-KOH/g)
B-3:「タフテックM1911」(旭化成株式会社製、無水マレイン酸変性水添スチレンブタジエン系エラストマー、酸価2.0mg-KOH/g)
・樹脂(B)の未変性成分
B-4:「タフマーP0280」(三井化学株式会社製、エチレンプロピレンエラストマー)
・EVOH(C)(株式会社クラレ製)
C-2:「エバール(登録商標)E171」(EVOH、エチレン単位含有量44モル%、けん化度99.9モル%以上、MFR(190℃、2160g荷重下)1.7g/10分)
C-3:「エバール(登録商標)H171」(EVOH、エチレン単位含有量38モル%、けん化度99.9モル%以上、MFR(190℃、2160g荷重下)1.7g/10分)
(1)変性EVAcの合成
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニル(以下、VAcと称する)を100kg、メタノール(以下、MeOHと称することがある)を10kg、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート(以下、MPDAcと称する)を2.9kg仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が4.9MPaとなるようにエチレンを導入した。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として60gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V-65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を3.4MPaに、重合温度を60℃に維持した。6時間後にVAcの重合率が45%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応のVAcを除去した後、MPDAc由来の構造単位が共重合により導入された変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(本明細書中、変性EVAcと称することがある)にMeOHを添加して20質量%MeOH溶液とした。
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた500L反応槽に(1)で得た変性EVAcの20質量%MeOH溶液を仕込んだ。この溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、変性EVAc中の酢酸ビニルユニットに対し0.5等量の水酸化ナトリウムを2規定のMeOH溶液として添加した。水酸化ナトリウムMeOH溶液の添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間攪拌してケン化反応を進行させた。その後酢酸を添加してケン化反応を停止した。その後、60~80℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を添加し、反応槽外にMeOHを留出させ、変性EVOHを析出させた。析出した変性EVOHを収集し、ミキサーで粉砕した。得られた変性EVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:粉末1kgに対して水溶液20Lの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、更に1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。次いで、酢酸0.5g/L及び酢酸ナトリウム0.1g/Lを含有する水溶液10Lに4時間攪拌浸漬してから脱液し、これを60℃で16時間乾燥させることで変性EVOHの粗乾燥物を得た。
ジャケット、攪拌機及び還流冷却器を備えた80L攪拌槽に、(2)で得た変性EVOHの粗乾燥物、水、MeOHを仕込み、80℃に昇温して溶解させた。この溶解液を径4mmの管を通して5℃に冷却した水/MeOH=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることで変性EVOHの含水ペレットを得た。得られた変性EVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、60質量%であった。
前記(3)で得た変性EVOHの含水ペレットを1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、更に1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行い、ケン化反応時の触媒残渣が除去された、変性EVOHの含水ペレットを得た。当該含水ペレットを酢酸ナトリウム濃度0.5g/L、酢酸濃度0.8g/L、リン酸濃度0.005g/Lの水溶液(浴比20)に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬させた。これを脱液し、80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることによって、変性EVOHペレットを得た。
変性EVAc中の、エチレン単位含有率(式(IV)におけるaモル%)、酢酸ビニル由来の構造単位の含有量(式(IV)におけるbモル%)及びMPDAc由来の構造単位の含有量(式(IV)におけるcモル%)は、ケン化前の変性EVAcを1H-NMR測定して算出した。
・0.6~1.0ppm:末端部位エチレン単位のメチレンプロトン(4H)
・1.0~1.85ppm:中間部位エチレン単位のメチレンプロトン(4H)、MPDAc由来の構造単位の主鎖部位メチレンプロトン(2H)、酢酸ビニル単位のメチレンプロトン(2H)
・1.85-2.1ppm:MPDAc由来の構造単位のメチルプロトン(6H)と酢酸ビニル単位のメチルプロトン(3H)
・3.7-4.1ppm:MPDAc由来の構造単位の側鎖部位メチレンプロトン(4H)
・4.4-5.3ppm:酢酸ビニル単位のメチンプロトン(1H)
a=(2x+2y-z-4w)/(2x+2y+z+4w)×100
b=8w/(2x+2y+z+4w)×100
c=2z/(2x+2y+z+4w)×100
上記方法により算出した結果、エチレン単位の含有量(a)は38.0モル%、ビニルエステル単位の含有量(b)は60.5モル%、MPDAc由来の構造単位の含有量(c)は1.5モル%であった。変性EVAcにおけるa、b及びcの値は、ケン化処理後の変性EVOHにおけるa、b及びcの値と同じである。
ケン化後の変性EVOHについても同様に1H-NMR測定を行った。上記(2)で得られた変性EVOHの粗乾燥物を、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)-d6に溶解し、500MHzの1H-NMR(日本電子株式会社製:「GX-500」)を用いて80℃で測定した。ケン化度は酢酸ビニル単位のメチルプロトン(1.85~2.1ppm)と、ビニルアルコール単位のメチンプロトン(3.15~4.15ppm)のピーク強度比より算出した。変性EVOHのケン化度は99.9モル%以上であった。
上記(4)で得られた変性EVOHペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後蓋をし、湿式分解装置(株式会社アクタック製:「MWS-2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製「OPTIMA4300DV」)により含有金属の分析を行い、ナトリウム元素及びリン元素の含有量を求めた。ナトリウム塩含有量は、ナトリウム元素換算値で150ppmであり、リン酸化合物含有量は、リン酸根換算値で10ppmであった。
前記(4)で得られた変性EVOHペレットについて、JIS K 7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2160gでのMFRを測定した。MFRは1.8g/10分であった。
表1に示される重合条件に変更したこと以外は、合成例1と同様にして、変性EVOHペレットの製造及び評価を行った。結果を表1に示す。
エチレン含有量44モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することで、触媒含有EVOHを得た。
(a)延伸試験
実施例及び比較例で得られた厚さ150μmの単層フィルムを株式会社エトー製二軸延伸装置にかけ、80℃で3×3倍の延伸倍率において同時二軸延伸を行うことにより熱収縮フィルムを得た。3×3倍の延伸倍率で延伸して得られた熱収縮フィルムを、以下の基準に従い評価した。
判定: 基準
A :延伸ムラ及び局部的偏肉が認められず、外観が良好であった。
B :延伸ムラ又は局部的偏肉が生じた。
C :フィルムが破断した。
前記(a)で得られた延伸倍率3×3の熱収縮フィルムを10cm×10cmにカットし、80℃の熱水に10秒浸漬させ、シュリンク率(%)を下記のように算出した。
シュリンク率(%)={(S-s)/S}×100
S:シュリンク前のフィルムの面積
s:シュリンク後のフィルムの面積
実施例及び比較例で得られた厚さ20μmの単層フィルムを23℃/50%RHの条件下で調湿したのち、理学工業株式会社製のゲルボフレックステスターを使用し、屈曲性の測定を行った。まず、12インチ×8インチのフィルムを丸めてリングでとめて、直径3.5インチの円筒とした。ASTM F392に従い、この両端を把持し、初期把持間隔7インチ、最大屈曲時の把持間隔1インチ、ストロークの最初の3.5インチで角度440度のひねりを加え、その後2.5インチは直進水平運動である動作の繰り返しからなる往復運動を40回/分の早さで行った。500回屈曲後のピンホールを評価した。
実施例及び比較例で得られた厚さ150μmの単層フィルムを23℃、50%RHの条件下で3日間調湿したものを試料とし、ASTM D-638に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製「AGS-H」)により、引張速度5mm/分の条件でMD方向(フィルムの押出方向)のヤング率測定を行い、柔軟性の指標とした。測定は各10サンプルについて行い、その平均値を求めた。
実施例及び比較例で得られた多層熱収縮フィルムを10cm×10cmにカットし、80℃の熱水に60秒浸漬させ、収縮後のフィルムを目視し、下記の基準で評価した。
A:デラミが生じることなく、均一に収縮した。
B:デラミが生じなかったが不均一に収縮した。
C:デラミが生じた。
実施例及び比較例で得られた多層フィルムと延伸後の多層フィルム(熱収縮フィルム)を20℃、65%RHの条件下で7日間調湿後、同条件下で酸素透過速度の測定(Mocon社製「OX-TORAN MODEL 2/21」)を行った。
変性EVOH(A)として前記合成例1で得られた変性EVOHペレットを97質量部と、樹脂(B)として前記B-1を3質量部とをドライブレンドした後、二軸押出機にて溶融混練してからペレット化し、樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを用いて、下記条件にて単層フィルム及び多層フィルムを作製した。
(単層フィルム作製条件)
株式会社東洋精機製作所製20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて、以下の条件にて単層製膜を行い単層フィルムを得た。
(押出条件)
シリンダー温度:供給部175℃、圧縮部210℃、計量部210℃
ダイ温度:210℃
スクリュー回転数:40~100rpm
吐出量:0.4~1.5kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:0.8~3.2m/分
フィルム厚み:20~150μm
下記条件にて、多層フィルム[層構成:EVA層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/EVA層、厚み(μm):100/15/15/15/100]を作製した。
(使用した樹脂)
EVA層:「エバフレックスEV340」(三井デュポンポリケミカル株式会社製、ポリエチレンビニルアセテート樹脂)
接着性樹脂層:「アドマーVF500」(三井化学株式会社製、酸変性ポリエチレンビニルアセテート樹脂)
樹脂組成物層:得られた樹脂組成物ペレット
(共押出条件)
各樹脂の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170℃/210℃/210℃/210℃
EVA用押出機:32φ押出機GT-32-A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂用押出機:25φ押出機P25-18-AC型(大阪精機工作株式会社製)
樹脂組成物用押出機:20φ押出機 ラボ機ME型CO-EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ:300mm幅3種5層用(株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引取速度:4m/分
表1に示すように変性EVOH(A)、樹脂(B)およびEVOH(C)の種類及び添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で単層フィルム、多層フィルム及び熱収縮フィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表2に示す。
Claims (9)
- 樹脂組成物層を備える多層フィルムであって、
前記多層フィルムが、
ポリエチレン層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン層、
ポリプロピレン層/接着層/樹脂組成物層/接着層/ポリプロピレン層、
アイオノマー層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/アイオノマー層、
エチレン-酢酸ビニル共重合体層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/エチレン-酢酸ビニル共重合体層、
ポリアミド層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、
熱可塑性樹脂層/ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/熱可塑性樹脂層、
ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/熱可塑性樹脂層、
ポリアミド層/ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/熱可塑性樹脂層、
ポリアミド層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/エチレン-酢酸ビニル共重合体層、
ポリエチレン層/接着性樹脂層/ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/接着性樹脂層/ポリエチレン層、
ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/接着性樹脂層/ポリエチレン層、
ポリアミド層/接着性樹脂層/ポリアミド層/樹脂組成物層/ポリアミド層/接着性樹脂層/ポリエチレン層
のいずれかの層構成を有し、
前記樹脂組成物層が、下記式(I)で表され、全単量体単位に対するa、b及びcの含有量(モル%)が下記式(1)~(3)を満足し、かつ下記式(4)で定義されるケン化度(DS)が90モル%以上である変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と樹脂(B)とを含み、樹脂(B)は酸変性ポリオレフィン系樹脂および酸変性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のみからなり、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)と樹脂(B)の質量比[B/A]が1/99~15/85である樹脂組成物からなり、
前記熱可塑性樹脂層が、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)及びポリアミド以外の熱可塑性樹脂からなる、多層フィルム。
18≦a≦55 (1)
0.5<c≦3 (2)
[100-(a+c)]×0.9≦b≦[100-(a+c)] (3)
DS=[(X、Y及びZのうち水素原子であるものの合計モル数)/(X、Y及びZの合計モル数)]×100 (4) - aが40未満である、請求項1に記載の多層フィルム。
- 前記樹脂組成物が、さらに、未変性またはエポキシ変性のエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を含む、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
- エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)のエチレン単位含有量が40モル%以上である、請求項3に記載の多層フィルム。
- 変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の合計質量に対する樹脂(B)の質量比[B/(A+C)]が1/99以上である、請求項3又は4に記載の多層フィルム。
- 変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対するエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の質量比[C/A]が5/95~40/60である、請求項3~5のいずれかに記載の多層フィルム。
- R1、R2、R3及びR4が水素原子である、請求項1~6のいずれかに記載の多層フィルム。
- X、Y及びZが、それぞれ独立に水素原子又はアセチル基である、請求項1~7のいずれかに記載の多層フィルム。
- 請求項1~8のいずれかに記載の多層フィルムからなる、熱収縮フィルム。
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