JP7327906B2 - マグネシウム-リチウム系合金の部材、機器、及び光学機器 - Google Patents

マグネシウム-リチウム系合金の部材、機器、及び光学機器 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウム-リチウム系合金の部材に関する。
物品を軽量化するうえで、マグネシウム合金が金属材料として使用されている。近年、物品の更なる軽量化が要求されてきており、例えば特許文献1に記載のようなマグネシウム-リチウム系合金が提案されている。しかし、リチウムは、非常に活性な(イオン化しやすい、溶解しやすい)金属元素であるため、例えば、湿潤状態において腐食しやすい性質を有する。このため、マグネシウム-リチウム系合金は、マグネシウム合金よりも耐食性が重要となっている。特許文献1には、表層をリチウムの含有量が少ないα相単体とする低リチウム層とすることが記載されている。
特開2000-119787号公報
しかしながら、従来のマグネシウム-リチウム系合金で物品を形成しても、物品が高温高湿の環境に長期間に亘って晒されると、合金が腐食する問題が生じていた。このため、従来よりも更に耐食性に優れている合金が求められていた。
そこで、本発明は、高温高湿環境に長期間に亘って晒されても、耐食性に優れたマグネシウム-リチウム系合金の部材を提供することを目的とする。
本発明者は、従来法により作製したマグネシウム-リチウム系合金が腐食する原因を検討したところ、合金が長期間に亘って高温高湿環境に晒されることにより、内部から表面にリチウムが移動するからではないかと考え付いた。そこで、本発明者は、表層に硫化物を配置することにより、合金表面近傍のリチウム濃度の濃化を抑制することができることを見出した。
即ち、本発明のマグネシウム-リチウム系合金の部材は、Lig、硫化物Ca、Al、Zn、Mn、および不可避的不純物からなるマグネシウム-リチウム系合金の部材であって、前記部材は、前記Li及び前記Mg以外の元素の総含有量が5質量%以下であり、前記Mgの含有量と、前記Liの含有量との和が90質量%以上であり、前記Mgの含有量と前記Liの含有量との和に対する前記Liの含有量が5質量%以上20質量%以下であり、前記硫化物は、表面から内部に向かって少なくとも深さ100nmまでの範囲に分布しており、前記表面から前記内部に向かって深さ100nmまでの範囲において、前記表面の側における前記Li及び前記Mgの和に対する前記Mgの割合は、前記内部の側における前記Li及び前記Mgの和に対する前記Mgの割合より多いことを特徴とする。
本発明によれば、高温高湿の環境に長期間に亘って晒されても、部材が腐食するのを抑制することができる。
実施形態に係る光学機器の一例であるレンズ鏡筒の断面模式図である。 (a)は、実施形態に係るレンズ鏡筒の筐体及びその表面上に形成された膜の部分断面図である。(b)は、筐体の部分断面図である。 (a)~(d)は、実施形態に係るレンズ鏡筒の筐体の製造方法の各工程を示す模式図である。 実施例1のXPSによるスペクトルを示すグラフである。 実施例1のXPSによるスペクトルを示すグラフである。 比較例1のXPSによるスペクトルを示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施形態に係る光学機器の一例であるレンズ鏡筒の断面模式図である。図1に示すレンズ鏡筒100は、例えば一眼レフカメラである不図示のカメラ本体に着脱可能な交換レンズである。
レンズ鏡筒100は、筐体101と、筐体101の内部に配置された光学系102とを有する。筐体101は、筒状に形成されている。光学系102は、例えば複数のレンズ20~29を有する。これら複数のレンズ20~29が、間隔をあけて光軸C0方向に配列されている。具体的には、筐体101の入射光側からカメラ本体との着脱マウント側に向かって、レンズ20、レンズ21、レンズ22、レンズ23、レンズ24、レンズ25、レンズ26、レンズ27、レンズ28、レンズ29の順に配列されている。なお、光学系102におけるレンズの数は、上記の例に限定するものではない。また、光学系がミラーを有していてもよい。
図2(a)は、実施形態に係るレンズ鏡筒100の筐体101及びその表面上に形成された膜の部分断面図である。図2(a)に示すように、筐体101の表面101A上には、化成被膜110、プライマ120、及び塗装膜130が形成されている。化成被膜110は、筐体101の耐食性を向上させるための被膜であり、例えばリン酸マグネシウム等のリン酸系の被膜とするのが好ましい。塗装膜130は、遮熱材を含む遮熱用の塗料から形成される塗装膜である。筐体101は、マグネシウム-リチウム系合金(Mg-Li系合金)で構成された部材(成形品)である。本実施形態の筐体101を構成するMg-Li系合金は、Mg(マグネシウム)を主成分としている。
Mg-Li系合金は、軽量金属材料であり、筐体101を軽量にすることができ、剛性や振動の吸収性を高めることができる。しかし、Li(リチウム)は卑な金属で腐食しやすいため、Mg-Li系合金からなる部材の耐食性を向上させる必要がある。そのため、本実施形態では、筐体101の表面上に、塗装膜130の下地として、耐食性を向上させる化成被膜110を被覆させている。
一方で、従来、合金で構成された部材の表層をリチウムの含有量が少ないα相単体とする低リチウム層のMg-Li系合金とすることで、合金そのものの耐食性を向上させることも考えられている。しかし、このようなMg-Li系合金において表面上に耐食性を向上させる化成被膜を被覆させても、合金で構成された部材が高温高湿環境に長期間に亘って晒されると、部材の表面が腐食することがあった。
従来のMg-Li系合金が腐食する原因は、塗装膜の膨れや剥がれが生じるためであると考えられる。塗装膜の膨れや剥がれの原因として、Mg-Li系合金からなる部材の表面上に水や水酸化物が付着すると、例え塗装膜や化成被膜があっても、水又は水酸化物とLi元素との間で反応が促進され、水素ガスが発生するためであると推定した。特にリチウム元素を5質量%以上含むMg-Li系合金では、表面近傍においてリチウムの濃度が濃化し易く、水素ガスが発生し易くなっているためと考えた。
そこで、表層をα相単体とする低リチウム層のMg-Li系合金の部材を作製し、この部材を高温高湿環境(温度70℃、湿度80RH%)で長期間(100hr)に亘って晒す環境試験を行った。その結果、Mg-Li系合金の母相(β相を含む相)から表面へリチウムが移動してしまい、上記の環境では表面のリチウム濃化を抑制することはできなかった。
ここで、文献“「二元合金状態図集」、長崎誠三、平林眞編著、出版社:アグネ技術センター、ISBN-13:978-4900041882、発売日:2001/01”に記載の相図に基づき説明する。この文献に記載の相図によると、例えば常温(例えば25℃)において、Liが5質量%よりも低い場合、合金はα相のみとなる。また、Liが5質量%以上11質量%以下の場合、合金は(α+β)相となる。また、Liが11質量%を超える場合、合金はβ相のみとなる。
本実施形態では、Mg-Li系合金からなる筐体101の表層に硫化物が配置されている。具体的には、硫化物は、少なくとも筐体101の表面101Aから内部に向かって深さ100nmまでの範囲内に分布(分散)して配置されている。
本実施形態の筐体101を構成するMg-Li系合金は、Mg(マグネシウム)及びLi(リチウム)を含有している。Mgの含有量と、Liの含有量との和は、90質量%以上である。また、Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量は、5質量%以上20質量%以下である。つまり、Liを含有する合金はβ相単体又は(α+β)相である。Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量を5質量%以上とすることで、筐体101を効果的に軽量化することができる。また、Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量を20質量%以下とすることで、硫化物の作用により、耐食性を向上させることができる。つまり、Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量を、5質量%以上20質量%以下の範囲内とし、更に筐体101の表層において硫化物を含有することにより、筐体101の表面101Aにおけるリチウム濃化を抑制している。ここで、リチウム濃化とは、Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量が20質量%を超える状態をいうものとする。
筐体101の表面101Aにおけるリチウム濃化を抑制することで、水素ガスの発生を抑制し、塗装膜130の膨れや剥がれを抑制し、筐体101の腐食を抑制することができる。
硫化物による作用のメカニズムの詳細は明らかではないが、筐体101の表面101Aに水や水酸化物が付着しても、硫化物は硫化されていない合金より生成自由エネルギー的に安定であるため酸素の拡散速度が低下する。その結果、酸素が母相へ侵入するのを抑制するためと推定される。このため、母相のリチウムの反応が抑制され、表面へのリチウム濃化を抑制したと推定される。
硫化物は、少なくとも表面101Aから内部に向かって深さ1.0μmまでの範囲に存在していることが好ましい。より好ましくは5.5μmまでの範囲内に分布(分散)して配置されるのが好ましい。これにより、より効果的に筐体101の表面101Aにおけるリチウム濃化を抑制することができる。
硫化物としてはマグネシウムやリチウムの硫化物が挙げられる。また、硫化物は、Li-Mg系合金を構成するMgとの化合物である硫化マグネシウムが好ましい。Li-Mg系合金の表面の酸化を防止することができるためである。また、硫化物である硫化マグネシウムは、以下に説明する製造方法で容易に生成することができる。
以下、筐体101の製造方法について説明する。図3(a)~図3(d)は、実施形態に係るレンズ鏡筒100の筐体101の製造方法の各工程を示す模式図である。Mg-Li系合金のインゴットから、筐体101の形状に近い形状の図3(a)に示す構造物201を作製する。この構造物201を構成するMg-Li系合金は、β相を含有する、つまり、Mgの含有量とLiの含有量との和に対し、5質量%以上20質量%以下のLiを含有する。
この構造物201に対し、図3(b)に示すように、加熱処理を行い、図3(c)に示す構造物301を得る。その後、図3(c)に示すように構造物301を水中で急冷する溶体化処理を行い、図3(d)に示す構造物401を得る。これにより、構造物301の表面近傍のLiを水中へ溶出させ、表層をマグネシウムリッチな状態とした構造物401を得る。
次に、図3(d)に示すように、S(硫黄)元素を含む物質500を構造物401の表面401Aに付与し、スルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物とする処理を施す。S元素を含む物質500としては、硫化油脂、硫酸エステル、硫化物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
構造物401の表面近傍をスルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物とするには、構造物401の表面401AをS元素を含む物質500で覆い、表面401Aにせん断力と厚み方向への圧縮の圧力とを同時に加える。例えば、構造物401の表面401Aにしごき加工を行う。しごき加工は、構造物401の表面401Aにダイス600を押し付け、ダイス600を表面401Aに沿う方向に移動させて行う。これにより、構造物401の変形発熱によって表層にて反応を促進させて、構造物401の表面近傍をスルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物とする。しごき加工を行う場合、物質500は、S元素を含む潤滑剤であるのが好ましい。
構造物401の表面401Aにせん断力を加えることで、初期の表面が割れ、母材の新生面が現れる。新生面においては、酸化被膜が薄く活性なため、Sが表面から固相拡散すると同時に、S元素と母相が反応して、比較的容易にスルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物を生成することができる。
構造物401の表面401Aにおいてスルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物を生成する過程において、Liを主成分とする化合物は、活性なため、Mgを主成分とする化合物よりも表面側に生成される。繰返しせん断力を加えることにより、Liを主成分とする化合物は、スラッジとして除去されると考えられる。また、Liは、グリースとして用いられることは広く知られており、せん断面における摺動性も良化させていると考えられる。以上の処理を経て、図2(b)に示す筐体101が製造される。
なお、表面にせん断力を与える方法としてしごき加工を行うのが好適であるが、表面にせん断力を与える方法としては特にこれに限定されるものではない。例えば、引き抜き加工やバーリング加工など新生面が現れる方法であればよい。新生面が現れる方法を用いることにより、本発明のMg-Li系合金の表面から内部に向かって少なくとも深さ5.5μmの範囲に硫化物を配置させることができる。
図2(b)は、筐体101の部分断面図である。筐体101は、筐体101の表面101Aから内部に向かって、第1相104、第2相105、第3相106、第4相107で構成される。本実施形態のLi-Mg系合金の部材におけるLiの含有量は、Mgの含有量とLiの含有量との和に対して5質量%以上20質量%以下であるが、これは部材全体の組成である。これら第1相104、第2相105、第3相106、及び第4相107のいずれにおいても、Mgの含有量とLiの含有量との和に対するLiの含有量が5質量%以上20質量%以下の範囲内にあるというわけではない。
第1相104は、スルホン酸、硫酸塩及び硫化物を含有する相である。第2相105は、硫化物を含有する、マグネシウムリッチな相である。また、第1相104及び第2相105は、硫化物が拡散している相である。第3相106は、マグネシウムリッチな相である。第4相107は、母相である。
第1相104には、炭酸リチウムや水酸化リチウムのLi成分を含む相があってもよい。また、第1相104において、LiとMgとの成分割合は、表面側が相対的にマグネシウムリッチで母相側が相対的にリチウムリッチの濃度勾配となる。
第1相104に含まれるマグネシウムは、硫酸マグネシウム、スルホン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び硫化マグネシウムなどの化合物の構造となっているものを含む。
硫化物を含む第2相105には、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが含まれていてもよい。
マグネシウムリッチな第2相105及び第3相106におけるリチウム元素とマグネシウム元素との成分割合について説明すると、後述するXPSの分析装置により得られるスペクトルで、Li/Mgの成分割合の比が0.35以下である。母相である第4相107においては、Li/Mgの成分割合の比が0.55である。よって、第2相105及び第3相106は、第4相107よりもマグネシウムリッチとなっている。
硫化物の濃度は、表面101Aから内部に向かって漸次減少する濃度勾配となる。したがって、第1相104においては、第2相105よりも硫化物の濃度が高い。第3相106及び第4相107には、硫化物はほとんど存在しない。
具体的に説明すると、硫化物の濃度の高い第1相104は、表面101Aから深さ方向に100nmの範囲において存在する。これにより、表面101Aにおけるリチウム濃化が抑制され、高温高湿環境でも耐食性が良好な筐体101を得ることができる。
なお、筐体101、即ち筐体101を構成するMg-Li系合金には、不可避的不純物が含まれていてもよい。
[実施例]
まず、アルゴン雰囲気中でMg地金とLi合金片を700~800℃に加熱し、溶融させた。ここで、Li合金片は作製するインゴット中に15質量%含まれるよう添加量を調整した。その後、金型に鋳造冷却し、Mg-15質量%Li合金のインゴットを作製した。
なお、Mg-Li合金系のインゴットには、Mg、Li以外の金属元素が含有されていても構わない。含有可能な金属元素としては、Ca,Al、Zn、Mn、等がある。また不可避的不純物としてFe、Co、Ni、Cu、Cr、Mo等がある。ただし、これらの金属元素はLiの含有量以下であることが好ましい。本実施例においてはMg-Li系合金のインゴット全体中に含まれる、Mg、Li以外の元素の含有量は5質量%以下である。Mg-Li系合金のインゴットの表面は、Mg:10.8質量%、S:0質量%であった。
作製されたMg-Li系合金のインゴットに対し、絞り加工を施し、カップ形状の構造物を得た。
<実施例1>
実施例1では、このカップ形状の構造物を、1hrに亘って300℃に加熱した後、水中で急冷する溶体化処理を行った。この溶体化処理を行った構造物にS系極圧添加材を含む潤滑油を塗布し、表面にせん断力を与える方法として、しごき加工を行って実施例1の薄肉円筒体(サンプル)を得た。しごき加工は、複数回行った。
<比較例1>
比較例1として、溶体化処理を行っていないカップ形状の構造物に、S系極圧添加材を含む潤滑油を塗布し、実施例1と同様のしごき加工により薄肉円筒体(サンプル)を得た。
<比較例2>
比較例2として、カップ形状の構造物に溶体化処理を行い、薄肉円筒体(サンプル)を得た。比較例2ではしごき加工は行わなかった。
-表面分析-
実施例1、比較例1及び比較例2により製造した筒体の表面を、SEM-EDX、XPSにて分析を行った。各サンプル共に、1000hr室温環境に放置し、時効したサンプルを測定に供した。
SEM及びEDX分析は、Sigma 500VP(カールツァイスマイクロスコピー株式会社製)を用いて行った。倍率は200倍(570×420μm)の視野において、電圧15KV、ワークディスタンス8.5mm、アパーチャーサイズ30μmの条件で、各成分割合が略一定となる時間まで測定を行った。
実施例1では、EDX分析の結果、Mg元素とS元素の成分割合は、Mg:29.8質量%、S:0.3質量%であった。これにより、実施例1では、サンプルの表面が硫化されていることが確認された。
比較例1では、EDX分析の結果、Mg元素とS元素の成分割合は、Mg:9.5質量%、S:0.2質量%であった。比較例2では、EDX分析の結果、Mg元素とS元素の成分割合は、Mg:18.2質量%、S:0.0質量%であった。これにより、実施例1では、サンプルの表面において、Mg元素の成分割合が比較例1,2よりも高く、このことによりLiの成分割合が比較例1よりも低いことが推測される。
比較例2のサンプルは、急冷で使用した水からLi元素が検出され、水冷時に水中へLiが溶出したことが確認された。そのため比較例2のMg割合がインゴットよりも高くなったのは、表面のリチウム割合が低減されたことに起因すると推察される。
実施例1では、図示を省略するが、SEM画像及び面分析より、サンプルの表面は、Mgの濃度及びSの濃度が異なる海島構造を持つ表面形態であることが分かった。すなわち、実施例1におけるサンプルの表面において、スルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物の硫黄元素が濃淡となっており、その濃淡差が海島構造となっていた。
表面近傍の層構造を解析するためにXPS分析を行った。分析装置は、PHI Quantera II(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて行った。測定条件は、200μm×200μmの領域を、X線照射条件25W15KV、パスエナジー112eVで、Arスパッタを併用した深さ方向分析を行った。深さ換算は、測定後の深さをレーザー顕微鏡VR-3000(株式会社キーエンス製)で測定した後、スパッタ条件の電圧、時間、サイクル数から、各測定データの深さを算出した。
図4及び図5は、実施例1のXPSによるS2P3/2スペクトルを示すグラフである。図4に示す深さプロファイルより、表面から内部に向かって深さ100nmの位置では、スルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物が生成されていた。即ち、少なくとも表面から深さ100nmまでの範囲に亘って、スルホン酸塩、硫酸塩及び硫化物が分布(分散)して存在していることがわかった。なお、それぞれの材料の存在の有無は、各材料固有の光電子の結合エネルギーの大きさにピークが存在するか否かで判断した。各結合エネルギーは、硫化物が160.1~163.9(eV)、スルホン酸塩が166.3~169.8(eV)、硫酸塩が168.4~171.1(eV)である。図5に示すように、さらにその下層においては、スルホン酸塩及び硫酸塩はほとんどなく、主に硫化物が存在していた。硫化物は、少なくとも表面から深さ5.5μmまでの範囲に亘って分布(分散)して存在していた。図示していないその他の元素のスペクトルと合わせて考察すると、スルホン酸塩はスルホン酸リチウム及びスルホン酸マグネシウム、硫酸塩は硫酸マグネシウム、硫化物は硫化マグネシウムと推定される。
図6は、比較例1のXPSによるS2P3/2スペクトルを示すグラフである。深さプロファイルより、表面から22.5nmでは、僅かに硫化物のスペクトルが確認されるが、それ以上の深さ97.5nmでは硫黄元素によるスペクトルは確認できなかった。
-環境評価試験-
実施例1及び比較例1,2のサンプルを高温高湿環境で100hr放置した。100hr放置後、同サンプルについて、SEMにより得られた画像を分析し、XPSにて表面変化を確認した。なお高温高湿環境は、温度40~80℃、湿度60~100RH%の範囲が考えられるが、実施例1及び比較例1,2のサンプルでは、温度70℃、湿度80RH%で試験した。
実施例1のサンプルについて環境評価試験後のサンプルをSEM観察したところ、試験前後で大きな差はなかった。さらにXPSにより深さ方向解析を行ったところ、表面には僅かに水酸化物が確認されるものの、表面から3μmの深さでは水酸化物は確認されなかった。
比較例1のサンプルについて環境評価試験後のサンプルをSEM観察したところ、試験後の表面には鱗片形状の炭酸リチウムや水酸化リチウムの析出物が多数観察された。さらにXPSにより深さ方向解析を行ったところ、表面から30μm以上にわたり水酸化物のスペクトルが確認された。
比較例2のサンプルについて環境評価試験後のサンプルをSEM観察したところ、試験後の表面には鱗片形状の炭酸リチウムや水酸化リチウムの析出物が多数観察された。さらにXPSにより深さ方向解析を行ったところ、表面から30μm以上にわたり水酸化物と酸化物とが重なり合ったスペクトルが確認された。
以上、実施例1にて作製したサンプルでは、サンプルの内部において水酸化物の生成が確認されなかったので、水素ガスの発生が抑制されるものと推定される。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
上述の説明では、レンズ鏡筒における筐体に、本発明の実施形態に係る合金を適用した場合について説明したが、これに限定するものでない。例えば、自動車やドローンなどに搭載される光学機器の筐体などの部品に、本発明の合金を適用することが可能である。
100 レンズ鏡筒(光学機器)
101 筐体(部材)

Claims (7)

  1. i、g、硫化物Ca、Al、Zn、Mn、および不可避的不純物からなるマグネシウム-リチウム系合金の部材であって、
    前記部材は、前記Li及び前記Mg以外の元素の総含有量が5質量%以下であり、
    前記Mgの含有量と、前記Liの含有量との和が90質量%以上であり、
    前記Mgの含有量と前記Liの含有量との和に対する前記Liの含有量が5質量%以上20質量%以下であり、
    前記硫化物は、表面から内部に向かって少なくとも深さ100nmまでの範囲に分布しており、
    前記表面から前記内部に向かって深さ100nmまでの範囲において、前記表面の側における前記Li及び前記Mgの和に対する前記Mgの割合は、前記内部の側における前記Li及び前記Mgの和に対する前記Mgの割合より多いことを特徴とするマグネシウム-リチウム系合金の部材。
  2. 前記硫化物は、前記表面から前記内部に向かって少なくとも深さ5.5μmまでの範囲に分布していることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム-リチウム系合金の部材。
  3. 前記硫化物は、硫化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウム-リチウム系合金の部材。
  4. 前記表面から前記内部に向かって100nmの位置における前記硫化物の含有量が、前記表面から前記内部に向かって5.5μmの位置における前記硫化物の含有量より多いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマグネシウム-リチウム系合金の部材。
  5. 筐体を有する機器であって、
    前記筐体が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマグネシウム-リチウム系合金の部材を有することを特徴とする機器。
  6. 前記マグネシウム-リチウム系合金の部材の表面上に配置された塗装膜を有することを特徴とする請求項5に記載の機器。
  7. 筐体と、前記筐体の内部に配置された光学系と、を有し、
    前記筐体が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマグネシウム-リチウム系合金の部材を有することを特徴とする光学機器。
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