JP7326165B2 - 巨大単層小胞形態の機能性合成細胞を調製する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、巨大単層小胞形態の合成細胞を調製する方法およびこの工程で入手可能な合成細胞に関する。以降、合成細胞を原始細胞とのみ称する。
脂質膜に基づく区画の形成は、原核細胞とは対照的な真核細胞の際立った特徴の1つである。区画は、分子成分が周囲の環境に、また周囲の環境から無制御に拡散するのを防止する物理的および化学的バリアとなり、それにより、独立した自己完結型の代謝活性、シグナル伝達活性または合成活性を可能にする。さらに、生体膜によって、イオンチャネルおよび受容体などの様々な膜貫通タンパク質による細胞内および細胞間での化学選択的な物質輸送およびシグナル伝達が可能になる。このため、生命体を開発し加工するには、機械的かつ化学的に明確に定められ十分に制御された区画が不可欠な要素である。合成生物学の観点から言えば、原始細胞とは、合成された、生体分子を含有する、脂質に基づく区画のことである。このような区画は、小型単層小胞(SUVと略される)、大型単層小胞(LUVと略される)または巨大単層小胞(GUVと略される)のいずれかであり得る。小型単層小胞、大型単層小胞および巨大単層小胞は通常球状であり、小型単層小胞の直径が通常25~50nm、大型単層小胞の直径が通常50超~1,000nm、巨大単層小胞は直径が通常1~1,000μmである。一方、合成生物学で原始細胞を用いるうえで、高イオン強度条件下、特に多価陽イオン下での不飽和脂肪酸の化学的不安定性および機械的不安定性ならびに不飽和脂肪酸のpH変化に対する感受性が主要な課題であると考えられている。さらに、原始細胞の不透過性および機械的不安定性を考えると、これに諸分子を挿入するのは特に困難な課題である。
エレクトロフォーメーションは、乾燥脂質薄膜を水溶液中で水和する際に低い電圧を印加し、通常は電場を変化させるということに依拠した1つの方法である。より具体的には、この技術の1つの既知の変形形態では、交流を印加することにより、酸化インジウムスズ電極で覆ったスライドガラスの間に挟まれたチャネル内で巨大単層小胞を形成させる。ただし、生理的緩衝溶液中でのGUVの収率が低いこと、GUVの脂質組成が不均一であること、および少量の荷電脂質(10%未満)に大きく制限されることが、依然としてGUVを作製するうえでのエレクトロフォーメーション法の大きな欠点となっている。これとは対照的に、マイクロ流体相間移動法(microfluidic phase transfer method)は、回路内で、低キャピラリー数でのフローフォーカシングによって生じた脂質安定化油中水型液滴を平行する高キャピラリー数の小胞外の水溶液流に渡すことを含む。液滴が微細加工されたポストに到達すると、脂質安定化油/水界面を通って物理的に移動し、脂質の第二の外層を集めて小胞二重層を完成させる。マイクロ流体法の利点は、均一な区画の大きさを制御しながらハイスループットでGUVを作製することができる点である。さらに、膜組成および緩衝液条件の選択についても、エレクトロフォーメーション法より柔軟性がある。ただし、この作製工程とは無関係に、主に不飽和脂肪酸およびリン脂質が高イオン強度条件下で化学的にも機械的にも不安定であるという理由から、このようにして得られたGUVは化学的に、また特に機械的に不安定であるため、これにタンパク質、特に膜貫通タンパク質および細胞骨格タンパク質を例えばピコ注入技術によって追加的または連続的に搭載することができないことから、依然として操作性が低い。
巨大単層小胞形態の原始細胞に代わる区画として、両親媒性ブロックコポリマーから作製されるポリマーソームが知られている。ポリマーソームは水溶液を取り囲むとともに、通常、水溶液によって取り囲まれている。一部のポリマーソームは、巨大単層小胞形態の原始細胞より化学的にも機械的にも安定性が高く、特定の環境および機能性に合わせて調整することができるため、特定の化学物質にポリマー膜を通過させる膜貫通タンパク質または合成チャネル分子を用いて設計することができる。一方、巨大単層小胞とは対照的に、化学的および物理的特性の操作に制約がある場合、ブロックコポリマーの分子特性を変化させることによってポリマー膜の厚さ、変角振動および伸縮振動の係数を調整する。ただし、従来の水中水型ポリマーソームの生体分子の封入およびさらなる操作が依然として課題となっている。ポリマーソームの透過性が制御できないこと、および様々な生体成分の精密で効率的な送達を可能にする技術がないことが主な欠点となっている。
Yangらは、Nature Chemistry 2016の476~483ページに、リポソーム自己集合体が核を持ち、強固なDNAナノテンプレート内に閉じ込められた、高度に単分散な100nm未満の単層小胞を作製する方法を記載している。より具体的には、小型のDNA環が形成された後、DNA環内にリポソームが形成される。ただし、このような100nm未満の単層小胞は大きさが小さいため、機械的に不安定であり、ピコ注入技術などの注入によってタンパク質を搭載することができない。さらに、DNA環が巨大単層小胞を封入するのに必要であると思われる大きさに形成されることはほとんどあり得ない。
上記のことを考慮し、本発明の根底にある目的は、改善された巨大単層小胞形態の原始細胞内での生物学的過程の集合を空間的および時間的に制御する方法を提供することである。ここでは、巨大単層小胞に膜貫通タンパク質および細胞骨格などの様々なタンパク質および分子を例えばピコ注入技術によって連続的に搭載できるように、巨大単層小胞を化学的にも機械的にも安定化させる。さらに、この方法は、簡便で時間効率に優れ、かつハイスループットな巨大単層小胞作製を可能にするものである。
本発明によれば、この目的は、巨大単層小胞形態の原始細胞を調製する方法であって、
a)水性の液滴であって、液滴の内側空間に接する外側ポリマー殻によって封入され、液滴の最大寸法が0.5μm~1000μmであり、液滴の内側空間に少なくとも1つの脂質が含まれている液滴を準備する段階、
b)液滴の脂質内容物をポリマー殻の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層に変換して、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成する段階、
c)任意選択で、段階b)で得られたポリマー殻安定化巨大単層小胞内に1つもしくは複数のタンパク質および/または核を組み込む段階、ならびに
d)任意選択で、ポリマー殻安定化巨大単層小胞からポリマー殻および油相を除去する段階
を含む方法を提供することによって満たされる。
この解決方法は、水性の液滴であって、液滴の内側空間に接する外側ポリマー殻によって封入され、液滴の最大寸法が0.5μm~1,000μmであり、内側空間に少なくとも1つの脂質が含まれている液滴を準備し、液滴の脂質内容物をポリマー殻の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層に変換することによって、ポリマー殻により安定化し化学的にも機械的にも極めて安定化した巨大単層小胞が得られるという驚くべき発見に基づくものである。特に、のちに記載する好ましい実施形態であって、段階a)で、外側ポリマー殻を有する液滴が油相に分散し、液滴の内側空間に少なくとも1つの脂質を含有する水性相が含まれている油中水型分散液を準備する実施形態では、ポリマー殻安定化巨大単層小胞の化学的安定性および機械的安定性が、先行技術で知られている巨大単層小胞それぞれと比較して大幅に改善される。このように化学的安定性が高く、特に機械的安定性が高いことにより、ポリマー殻安定化巨大単層小胞をピコ注入技術などの注入技術で容易に処理することができ、したがって、膜貫通タンパク質および細胞骨格タンパク質などのタンパク質を容易に搭載することができる。そののち、巨大単層小胞からポリマー殻を除去してもよい。さらに、提案される方法は、簡便で時間効率に優れたものである。さらに、本発明による方法は、ハイスループットな巨大単層小胞作製、すなわち、通常1秒あたり1,000個以上の巨大単層小胞の作製を可能にするものである。したがって、本発明による方法をハイスループットなマイクロ流体工学によって実施することができる。
全般的に言えば、本発明による方法で入手可能であり、液滴サイズで安定性が高く、したがって操作可能な細胞様区画、すなわち、一定の大きさの原始細胞は、明確に定められた微小環境内での生物物理学的過程および生化学的過程をモデル化し、検討するのに理想的なものである。安定性の増大により、これらの区画にピコ注入マイクロ流体工学によって生体分子を連続的に搭載することが可能になり、したがって、単に混合しても完全に機能的なものに自己集合しないと考えられる内容物、すなわち、脂質、精製した膜貫通タンパク質および細胞骨格タンパク質による区画のボトムアップ集合が可能になる。集合後、ポリマー殻および任意選択で安定化油相を完全に除去して、例えば機能的な細胞骨格タンパク質および接着タンパク質を含有する自立した原始細胞を水相に放出し、それを生理学的に関連する生細胞、マトリックスおよびタンパク質と相互作用させることが容易にできる。
巨大単層小胞は、本発明では、必ずというわけではないが、好ましくは、球状で最大寸法が0.5μm~1000μmである単層小胞である。好ましくは、巨大単層小胞は球状であり、したがって、外径が0.5μm~1000μmである。
本発明では、液滴は、その形態に関係なく小体積の液体である。好ましくは、液滴は、少なくとも実質的に楕円状または少なくとも実質的に球状である。より好ましくは、段階a)で準備する液滴は球状であり、外径が0.5~1000μm、さらにより好ましくは10~1200μm、最も好ましくは20~60μmである。これにより、球状で細胞様の大きさの巨大単層小胞が得られる。
さらに、本発明では、水性の液滴は、水または任意の物質を水に分散させたものを含有する液滴である。また、水性の液滴は、水または任意の物質を水に分散させたものからなる液滴である。より具体的には、本発明の意味における水性の液滴とは、塩を含む水と少なくとも1つの脂質とからなる液滴のことである。
上記の通り、本発明の特定の好ましい実施形態では、段階a)で、液滴が油相に分散し、少なくとも1つの脂質を含有する水相が液滴の内側空間に含まれている分散液を準備する。この実施形態では、巨大単層小胞がポリマー殻ばかりでなく外側の油相によっても安定化するため、ポリマー殻安定化巨大単層小胞の化学的安定性および機械的安定性が、先行技術で知られている巨大単層小胞それぞれと比較して大幅に改善される。本発明者らは、両親媒性コポリマーを含む連続油相が液滴の安定な分離およびその内容物の保護ばかりでなく、ピコ注入技術による専ら液滴内への生体物質の組合せ送達にも重要な役割を果たすことを明らかにした。この実施形態では、段階d)で、ポリマー殻を除去した巨大単層小胞を油相から水相に移動させるのが好ましい。
液滴を油相に十分に分散させるため、また、脂質を含有する水相を液滴のポリマー殻の内部に十分に分散させるため、本発明の考えをさらに発展させて、液滴のポリマー殻をポリマー殻の外側に配置された親油性末端とポリマー殻の内側に配置された親水性末端とを有する両親媒性コポリマーで作製することが提案される。
このことは、液滴のポリマー殻をジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーまたは統計コポリマーで形成することによって達成し得る。
具体的には、ポリマー殻の外側に配置された親油性または疎水性ブロックとポリマー殻の内側に配置された親水性ブロックとを含むブロックコポリマーで液滴のポリマー殻を作製すれば良い結果が得られる。親油性または疎水性ブロックは、特に限定されないが、例えば、ペルフルオロ化ポリマー、例えばペルフルオロ化されたポリエーテル、ポリスチレンまたはポリ(プロピレンオキシド)などのポリ(オレフィンオキシド)などからなる群より選択されるメンバーであり得るのに対し、親水性ブロックは、例えば、ポリエーテルグリコール、ポリエーテルアミン、ポリアクリラート酸、ポリメチルアクリラート酸またはポリ[ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリラート]から選択され得る。
同様に、2つの疎水性ペルフルオロ化ポリマー末端ブロックとその間の親水性ポリエーテルグリコールブロックとを含み、疎水性ペルフルオロ化ポリマーブロックがポリマー殻の外側に配置され、親水性ポリエーテルグリコールブロックがポリマー殻の内側に配置されるよう折り畳まれたトリブロックコポリマーで液滴のポリマー殻を作製すれば良い結果が得られる。親油性または疎水性ブロックおよび親水性ブロックの例には、上に挙げたものと同じブロックがある。
好ましくは、ペルフルオロ化ポリマーブロックはペルフルオロ化ポリエーテルブロック(PFPE)、より好ましくは、重量平均分子量が1,000~10,000g/molであるペルフルオロ化ポリエーテルブロックである。同様に、ポリエーテルグリコール(PEG)およびポリエーテルアミン(JEFFAMINE)ブロックは、好ましくは重量平均分子量が100~10,000g/molであるのが好ましい。より具体的には、各コポリマーの適切な例にはPFPE-カルボン酸(Krytox、MW2500またはMW7000g/mol)があり、各ジブロックコポリマーの適切な例には、PFPE(7000g/mol)-PEG(1400g/mol)、PFPE(7000g/mol)-PEG(600g/mol)、PFPE(2500g/mol)-PEG(600g/mol)、PFPE(4000g/mol)-PEG(600g/mol)、PFPE(4000g/mol)-PEG(1400g/mol)、PFPE(2000g/mol)-PEG(600g/mol)、PFPE(7000g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)、PFPE(7000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)、PFPE(2500g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)、PFPE(2500g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)、PFPE(4000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)、PFPE(2500g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)、PFPE(2000g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)、PFPE(2000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)があり、各トリブロックコポリマーの適切な例には、PFPE(7000g/mol)-PEG(1400g/mol)-PFPE(7000g/mol)、PFPE(7000g/mol)-PEG(600g/mol)-PFPE(7000g/mol)、PFPE(4000g/mol)-PEG(1400g/mol)-PFPE(4000g/mol)PFPE(2500g/mol)-PEG(600g/mol)-PFPE(2500g/mol)、PFPE(2000g/mol)-PEG(600g/mol)-PFPE(2000g/mol)、PFPE(7000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)-PFPE(7000g/mol)PFPE(7000g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)-PFPE(7000g/mol)、PFPE(4000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)-PFPE(4000g/mol)、PFPE(4000g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)-PFPE(4000g/mol)、PFPE(2500g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)-PFPE(2500g/mol)、PFPE(2500g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)-PFPE(2500g/mol)、PFPE(2000g/mol)-JEFFAMINE(900g/mol)-PFPE(2000g/mol)およびPFPE(2000g/mol)-JEFFAMINE(600g/mol)-PFPE(2000g/mol)がある。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにポリスチレン標準品を用いて求められる。
本発明のさらなる好ましい実施形態では、ポリマー殻を形成するコポリマーの親水性末端に金ナノ粒子を付加する。金ナノ粒子は、タンパク質またはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドなどのペプチドをポリマー殻の内表面に固定化するアンカーとして使用し得る。
本発明は、脂質二重層を形成することができる限り、外側ポリマー殻を有する液滴の内側空間に含まれている少なくとも1つの脂質の化学的性質に関して特に制限はない。特にリン脂質で、特に、ホスフォコリン、ホスフォコリン誘導体、ホスホエタノールアミン、ホスホエタノールアミン誘導体、ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロール誘導体および上記の脂質のうち2つ以上の脂質の任意の組合せからなる群より選択される脂質で良い結果が得られる。脂質の適切な具体例には、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](DGS-NTA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(リサミンローダミンBスルホニル)(RhB DOPE)、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスファート、L-α-ホスファチジルコリン、L-α-ホスファチジルグリセロールおよび上記の脂質のうち2つ以上の脂質の任意の組合せからなる群より選択される脂質がある。
液滴のポリマー殻が接する内側空間内に少なくとも1つの脂質を組み込む技術に関して、本発明に制限はない。例えば、油中水型エマルションに適した任意のマイクロ流体工学またはその他の技術を用い得る。
本発明のある特定の好ましい実施形態では、段階a)で、フローフォーカシングマイクロ流体装置内での液滴作製によって、少なくとも1つの脂質を液滴の内側空間に組み込む。のちに図2に関連してさらに詳細に記載するこの技術では、2つの相、すなわち、連続相と分散相がフローフォーカシング接合部で合流する。フローフォーカシング接合部は3つの入口チャネルからなり、各チャネルは狭い開口部で主要チャネルまたは出口チャネルに合流している。例えば、3つの入口チャネルのうち2つが垂直方向に配置されており、この2つの垂直の入口チャネルはフローフォーカシング接合部で合流し、1つはフローフォーカシング接合部の上方から、1つはフローフォーカシング接合部の下方から来ている。さらに、第三の入口チャネルが水平方向に配置されており、左側から来てフローフォーカシング接合部で他の2つの入口チャネルと合流する。主要チャネルまたは出口チャネルもそれぞれ水平方向に配置されており、水平の入口チャネルの終端の反対側にある狭い開口部から始まる。稼働時、油に分散または溶解した両親媒性コポリマー(1つまたは複数)(のちにポリマー殻を形成する)を含む連続油相が2つの垂直の入口チャネルの中を流れ、両方の連続油相の一部の流れがフローフォーカシング接合部で合流する。脂質(1つまたは複数)を含む分散した水相が水平の入口チャネルの中を流れ、フローフォーカシング接合部で2つの垂直の入口チャネルの中を流れる油相がこれに割り込む。この2つの相が3つの入口チャネルの下流に位置する小さな開口部を通過し、分散相の流れが狭くなって脂質含有水相の液滴になり、この液滴が両親媒性コポリマー(1つまたは複数)に覆われ、それにより、コポリマーの親油性または疎水性末端が外殻側で連続油相に向かって配置され、コポリマーの親水性末端が内殻側で分散した脂質含有水相に向かって配置されたポリマー殻が形成される。液滴の大きさは、2つの相の流速、流速の比およびチャネルの形状によって調節することができる。
あるいは、段階a)で、例えばフローマイクロ流体工学技術で2つの相を混合することを含む他の液滴作製技術によって、少なくとも1つの脂質を液滴の内側空間内に組み込んでもよい。例えば、油に分散または溶解しており、のちにポリマー殻を形成する両親媒性コポリマー(1つまたは複数)を含む、連続油相と、脂質(1つまたは複数)を含む分散した水相がT字型接合部で合流し得る。
本発明のまた別の好ましい実施形態では、段階b)で、好ましくはピコ注入器である注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって、少なくとも1つの脂質を液滴の内側空間内に組み込む。のちに図4に関連してさらに詳細に記載するこの技術では、液滴の分散液がチャネルの中を流れる。チャネルの一方の側には、チャネルに交流電位を印加する2つの電極が配置されているのに対し、チャネルの他方の側にはピコ注入器が配置されており、そこから液体がチャネル内に注入され得る。稼働時、250Vおよび1kHzなどの交流電位が印加され、それによりポリマー殻の安定性が低下して、ピコ注入器によって供給される脂質含有水性液体の液滴内への組込みが可能になる。
液体(1つまたは複数)は、小型単層脂質小胞、大型単層脂質小胞または巨大単層脂質小胞の水性分散液として液滴の内側空間に含まれ得る。ただし、段階b)で内側の液滴周辺の二重層への変換を容易にするため、脂質(1つまたは複数)が小型または大型の十分に分散した単層小胞として液滴の内側空間に含まれていれば好ましい。
この点に関して、段階a)で、少なくとも1つの脂質を小型単層脂質小胞または大型単層脂質小胞の形態で液滴の内側空間内に組み込むと良い結果が得られ、ここでは、大型単層脂質小胞は例えば、脂質(1つまたは複数)をクロロホルムなどの溶媒に溶解させ、このようにして得られた混合物を不活性ガス雰囲気下で乾燥させ、乾燥させた脂質を水性緩衝液に再懸濁させ、混合物をボルテックスし、このようにして得られた混合物をフィルターに通して押し出すことによって小胞の大きさを均一にすることにより形成されたものである。例えば、フィルターは細孔径50nmのポリカルボナートフィルターであり得る。あるいはプロテオリポソームの場合、界面活性剤除去により大型単層脂質小胞を形成し得る。
さらなる別法として、段階a)で、少なくとも1つの脂質を、エレクトロフォーミング工程によって、好ましくは、脂質(1つまたは複数)をクロロホルムなどの溶媒に溶解させる段階と、このようにして得られた混合物を2枚の酸化インジウムでコートしたガラスの上に塗布する段階と、溶媒を蒸発させる段階と、2枚のガラスの間の空間を水で満たす段階と、1~100Hzの交流電位を0.1~10ボルトで0.1~10時間印加する段階とを含む工程によって形成された小型単層脂質小胞、大型単層脂質小胞または巨大単層脂質小胞の形態で、液滴の内側空間内に組み込んでもよい。
本発明による方法の段階b)で、液滴の脂質内容物をポリマー殻の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層に変換してポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成するためには、小型単層脂質小胞および大型単層脂質小胞とポリマー殻の内表面との間の静電的相互作用が必要とされる。このことは、負荷電ブロックコポリマーの液滴のポリマー殻を形成することによって達成し得る。特に、液滴のポリマー殻をPEG系のジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーまたはPEG系もしくはJEFFAMINE系のトリブロックコポリマーとPFPE-カルボン酸コポリマーからなる統計コポリマーで作製すれば良い結果が得られる。ポリマー殻の負に荷電した内表面がアルカリ土類イオンを攻撃し、次いで、中性または負荷電の小型単層小胞または大型単層小胞の接着および破裂による形成安定化巨大単層小胞を促進する。本発明者らは、アルカリ土類イオン、より好ましくはカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン、最も好ましくはマグネシウムイオンの濃度を適切な値に調整することが必要であることを明らかにした。特にマグネシウムイオンの濃度を適切な値に調整することが、段階b)で液滴の脂質内容物を脂質二重層に変換するのに効果的である。好ましくは、段階b)で、液滴の内側空間内のイオン、特にマグネシウムイオンの濃度を調整すること、および/または電場を印加することによって、液滴の脂質内容物を脂質二重層に変換する。特に有利なのは、段階b)で、マグネシウムイオンの濃度を1~100mMの値、より好ましくは2~100mMの値、さらにより好ましくは5~50mMの値、さらにより好ましくは5~20mMの値、最も好ましくは8~12mMの値、例えば具体的には約10mMなどに調整することによって、液滴の脂質内容物を脂質二重層に変換することである。このようなマグネシウムイオン濃度が段階b)で液滴の脂質内容物を脂質二重層に変換するのに最も効率的であることがわかっている。
本発明のさらなる好ましい実施形態では、液滴形成時に液滴の内側空間内のマグネシウムイオンの濃度を調整する。より具体的には、段階a)で、上記のようにフローフォーカシングマイクロ流体装置での液滴作製によって、少なくとも1つの脂質を液滴の内側空間内に組み込むのが好ましく、その結果、使用する脂質を含有する水相は、それぞれのマグネシウム濃度、すなわち、好ましくは1~100mM、より好ましくは2~100mM、さらにより好ましくは5~50mM、さらにより好ましくは5~20mM、最も好ましくは8~12mM、例えば特に約10mMなどのマグネシウムイオン濃度を有する。本発明者らは、脂質(1つまたは複数)が小型単層脂質小胞および大型単層脂質小胞の形態で液滴に含まれていると、液滴の内側空間に含まれる脂質含有水相のマグネシウムイオン濃度が10mMである場合、脂質二重層の形成が数秒で完了することを明らかにした。これに対して、脂質(1つまたは複数)が巨大単層脂質小胞の形態で液滴に含まれていると、液滴の内側空間に含まれる脂質含有水相のマグネシウムイオン濃度が10mMである場合、脂質二重層の形成が約30分間続く。したがって、これらの実施形態では、段階b)による液滴の脂質内容物の脂質二重層への変換は、段階a)を実施している間に開始され、段階b)による液滴の脂質内容物の脂質二重層への変換は、段階a)が終了してから数秒後または場合によっては数十分後に終了する。したがって、これらの実施形態では、段階b)と段階a)の時間が事実上重複する。
本発明の別の好ましい実施形態では、液滴の内側空間内のマグネシウムイオンの濃度を段階b)で、好ましくはピコ注入器である注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって調整する。ピコ注入器は、上記のものおよび図4に示されるものと同じであり得る。この実施形態では、段階a)の後に段階b)を実施する。
中性および負荷電の巨大単層小胞は上に記載した同じ方法で処理されるのに対し、正荷電の巨大単層小胞は、ポリマー殻の負荷電内表面との直接的な静電的相互作用により、イオンを加えなくても同様に形成される。あるいは、電場を印加して、ポリマー液滴の内側界面で脂質と巨大単層小胞とを融合させてもよい。
任意選択の段階c)では、段階b)で得られたポリマー殻安定化巨大単層小胞内に1つまたは複数のタンパク質を組み込み得る。この任意選択の段階は、段階b)で得られるポリマー殻安定化巨大単層小胞が、上に記載した理由により化学的および機械的に極めて安定であるため可能である。このような理由により、実際に段階c)を実施して、すなわち、段階b)で得られたポリマー殻安定化巨大単層小胞内に1つまたは複数のタンパク質を組み込むのが好ましい。タンパク質は緩衝液可溶性形態で準備してもよく、または、タンパク質が既に小型のタンパク質リポソームの壁の中に組み込まれており、それにより、プロテオリポソーム、すなわち、好ましくは中に1つまたは複数のタンパク質が挿入された少なくとも1つの脂質二重層を有する小胞を形成していてもよい。これらのタンパク質リポソームは、液滴の内部で所与の巨大単層小胞と融合する。例えば、好ましくはピコ注入器である注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって、1つまたは複数のタンパク質を、段階b)で得られたポリマー殻安定化巨大単層小胞内に組み込むことにより、段階c)を実施し得る。ピコ注入器は、上記のものおよび図4に示されるものと同じであり得る。
この実施形態では、より好ましくは、1つまたは複数のタンパク質をそれぞれのプロテオリポソームの形態でピコ注入器で注入することによって、ポリマー殻安定化巨大単層小胞内に組み込む。
例えば、段階c)で、膜貫通タンパク質および/または細胞骨格タンパク質をポリマー殻安定化巨大単層小胞の脂質二重層内および/または内側空間内に組み込み得る。本発明は、ポリマー殻安定化巨大単層小胞に組み込むタンパク質の種類に制限がない。単なる例として、受容体、ATP合成酵素、ポリメラーゼ、アクチン、チューブリン、抗体、インテグリン、細胞から単離した核および上記のタンパク質のうち2つ以上のタンパク質の任意の組合せからなる群より選択されるタンパク質ならびに核が挙げられる。アクチンとしては、GアクチンおよびFアクチンが挙げられる。使用し得るその他のタンパク質として、特に限定されないが、リボソームおよびリボソーム関連タンパク質、核または核関連タンパク質、シグナル伝達タンパク質、免疫学的に重要なタンパク質、抗体、様々なイオンポンプタンパク質、接着関連タンパク質ならびに様々なタンパク質および分子を互いに結び付ける合成分子がある。
任意選択の段階d)では、ポリマー殻安定化巨大単層小胞からポリマー殻および油相を除去する。ポリマー殻によってもたらされる機械的安定性を必要とするポリマー殻安定化巨大単層小胞内への1つまたは複数のタンパク質の組込みの後、ポリマー殻は不要になるため、実際には、段階d)を実施して巨大単層小胞を得るのが好ましい。さらに、ポリマー殻および油相を除去した後、巨大単層小胞を水相に分散させる必要がある。
例えば、段階d)で、不安定化分子の添加によりマイクロ流体装置またはバルク技術によって、ポリマー殻安定化巨大単層小胞からポリマー殻および油相を除去し得る。例えば、のちにさらに詳細に記載する図5に示されるマイクロ流体装置で除去段階を実施し得る。より具体的には、この装置は、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を導入する第一の入口チャネルと、ポリマー殻不安定化界面活性剤(1つまたは複数)を油に分散させたものを第一の入口チャネルに導入する第二の入口チャネルとを含む。この目的のために、第一の入口チャネルと第二の入口チャネルがT字型接合部により接続されている。さらに、T字型接合部の下流には、巨大単層小胞を減速させる受動的捕捉構造が設置されている。さらに下流、すなわち、受動的捕捉構造の下流では、第一の入口チャネルが、水相が流れる広い垂直チャネルに合流する。好ましくは、第二の入口チャネルから導入される不安定化界面活性剤(1つまたは複数)が、第一の入口チャネル内のポリマー殻安定化巨大単層小胞のポリマー殻を不安定化させるのに十分な時間が得られるように、稼働時にマイクロ流体装置の総流量を調節する。さらに、チャネルの高さは、ポリマー殻安定化巨大単層小胞の直径を上回るよう設計するのが好ましく、入口チャネルでの圧力は、第一の入口チャネル内のずり応力を最小限に抑えるため最大20mbarに調節するのが好ましい。不安定化界面活性剤としては、例えば、20体積%のペルフルオロ-1-オクタノールを含有する油流を使用し得る。受動的捕捉構造は、巨大単層小胞を減速させて、水相が流れる広い垂直チャネルへの下流接合部での巨大単層小胞に対する機械的衝撃を最小限に抑えるために設置されている。第一の入口チャネルと水相が流れる広い垂直チャネルとの接合部でポリマー殻安定化巨大単層小胞と水相が接触すると、ポリマー殻のない巨大単層小胞が水相中に放出される。
除去段階を図示されるバルク技術によって実施してもよい。バルク除去法では、形成されたポリマー殻安定化巨大単層小胞をエッペンドルフチューブに100μl収集する。フッ素化油と水との間の密度差により、チューブの最上部でポリマー殻安定化巨大単層小胞が高密度の層を形成する。ポリマー殻の除去に水相を供給するため、100μlの緩衝液を1つの大きな滴としてポリマー殻安定化巨大単層小胞層の中央に添加する。浸透圧作用を抑えるため、緩衝液のイオン含有量がポリマー殻安定化巨大単層小胞内の緩衝液内容物と一致するのが好ましい。緩衝液を添加した後、20体積%のペルフルオロ-1-オクタノールを含有する油を緩衝液滴の最上部に静かに落とす。不安定化剤を全量加えた後、チューブを傾けて界面面積を大きくし、その縦軸の周りでゆっくり回転させる。この条件では、エマルションの破壊にかかる時間は5分未満である。ポリマー殻のない巨大単層小胞を含有する水溶液は、ピペットで慎重に取り出すことができる。
本発明のさらなる態様は、上記の段階a)およびb)ならびに任意選択でさらなる段階c)を含む工程により得られ、外側ポリマー殻を有するポリマー殻安定化巨大単層小胞形態の原始細胞である。
このことは、本発明が具体的には、内側空間に接する外側ポリマー殻を含むポリマー殻安定化巨大単層小胞形態の原始細胞であって、巨大単層小胞が0.5μm~1,000μmの最大寸法を有し、少なくとも1つの脂質からなる脂質二重層をさらに含み、脂質二重層がポリマー殻の内表面に配置されてこれを覆っている、原始細胞に関するものであることを意味する。
さらに、本発明は、上記の段階a)、b)およびd)ならびに任意選択でさらなる段階c)を含む工程によって得られる、巨大単層小胞形態の原始細胞に関するものである。
好ましくは、本発明による原始細胞は、脂質二重層内および/または内側空間内に膜貫通タンパク質および/または細胞骨格タンパク質を含む。例えば、タンパク質は、インテグリン、ATP合成酵素、Gアクチン、チューブリン、リボソームおよびリボソーム関連タンパク質、核または核関連タンパク質、シグナル伝達タンパク質、免疫学的に重要なタンパク質、抗体、様々なイオンポンプタンパク質、接着関連タンパク質ならびに様々なタンパク質および分子を互いに結び付ける合成分子ならびに上記のタンパク質のうち2つ以上のタンパク質の任意の組合せからなる群より選択され得る。
次に、図面によって本発明を説明するが、これらの図面は本特許出願を限定するものではない。
本発明の好ましい実施形態による方法の段階a)で得られ、液滴の内側空間に接する外側ポリマー殻によって封入され、液滴の最大寸法が0.5μm~1,000μmであり、内側空間に少なくとも1つの脂質が含まれている、液滴の断面を示す図である。 液滴の内側空間に接する外側ポリマー殻によって封入され、内側空間に少なくとも1つの脂質が含まれている液滴を作製するためのものであり、本発明のある好ましい実施形態による段階a)および/または段階b)を実施するのに使用し得る、フローフォーカシングマイクロ流体装置のノズル設計を示す図である。 本発明のある好ましい実施形態による方法の段階b)で得られ、ポリマー殻の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層を有する、ポリマー殻安定化巨大単層小胞の断面を示す図である。 本発明のある好ましい実施形態による段階c)を実施するためのものであり、ポリマー殻安定化巨大単層小胞内に1つまたは複数のタンパク質を組み込むためのピコ注入器装置の一部分を示す図である。 本発明のある好ましい実施形態による段階d)を実施するためのものであり、ポリマー殻安定化巨大単層小胞からポリマー殻を除去するためのマイクロ流体装置を模式的に示す図である。 本発明のある好ましい実施形態による段階d)を実施するためのものであり、ポリマー殻安定化巨大単層小胞からポリマー殻および油相を除去するためのバルク技術を模式的に示す図である。 実施例1で実施したコポリマー合成の反応物および生成物のFTIRスペクトルを示す図である。(A)実施例1に記載される反応物のPFPE(7000)-カルボン酸(20mM)とPFPE(7000)-PEG(1400)-PFPE(7000)トリブロック生成物(20mM)との間の比較を示している。(B)実施例1に記載される反応物のPFPE(7000)-カルボン酸(20mM)とPFPE(7000)-PEG-OMe(750)ジブロック生成物(20mM)との間の比較を示している。 実施例2で作製し表1にまとめた小胞を示す図である。 実施例2で作製し表2にまとめた小胞を示す図である。 実施例7で得られ、生理的緩衝溶液中での放出後、接着により様々なマトリックスと接触したインテグリン巨大単層小胞を示す図である。 ポリマー殻安定化巨大単層小胞(1%ATTO 488標識DOPE、1番目のパネル)、再構成したTAMRA標識αIIbβ3インテグリン(2番目のパネル)、アクチン細胞骨格(1%Alexa Fluor 647標識アクチン、3番目のパネル)およびアクチンおよびインテグリン再構成ポリマー殻安定化巨大単層小胞を示す全チャンネルの合成蛍光像(4番目のパネル)の代表的な蛍光像を示す図である。 実施例9で得られたF-ATP合成酵素再構成ポリマー殻安定化単層小胞および酸性FC-40油の添加によって得られた膜を挟んだpH勾配、すなわちATP合成の駆動力の略図である。 実施例12で実施した実験の封入脂質濃度に対する脂質の液滴界面での蛍光強度を示す図である。 実施例13で実施した放出の後の脂質二重層の安定性を示す図である。(A)油相(ATTO 520、黄色)、(B)脂質二重層(RhB DOPE、緑色)、(C)封入した水相(HyLite 405、青色)および(D)連続水相(Alexa 647、赤色)を異なるフルオロフォアで標識した。(E)全チャンネルの合成像。 実施例14で実施した液滴安定化巨大単層小胞および放出されたポリマー殻のない各巨大単層小胞のラマンスペクトルを示す図である。
本発明による方法の段階a)で得られるものであり、図1に断面を模式的に示した液滴10は、液滴10の内側空間14に接する外側ポリマー殻12によって封入されている。液滴10は球状であり、直径が40μmである。ポリマー殻12は、ポリマー殻12の外側に配置された疎水性ペルフルオロ化ポリエーテルブロック16とポリマー殻12の内側に配置された親水性ポリエーテルグリコールブロック18とを含む両親媒性コポリマーからできている。模式図であるという理由から、親水性ポリエーテルグリコールブロック18は図1、3および4に黒色の環として示されている。液滴10の内側空間14には、直径が約80nmの大型単層脂質小胞または小型単層脂質小胞20の形態の脂質が含まれている。これらの大型単層脂質小胞および小型単層脂質小胞20は、例えば、脂質をクロロホルムなどの溶媒に溶解させ、このようにして得られた混合物を不活性ガス雰囲気下で乾燥させ、乾燥させた脂質を緩衝液に再懸濁させ、混合物をボルテックスし、このようにして得られた混合物をフィルターに通して押し出すことによって小胞の大きさを均一にすることにより形成し得る。
本発明の好ましい実施形態では、図1に示される外側ポリマー殻12を有し脂質20を含有する液滴10をフローフォーカシングマイクロ流体装置での液滴作製によって調製する。この技術は、図2に示されるノズル設計を有するフローフォーカシングマイクロ流体装置22で本発明のある実施形態に従って実施し得る。より具体的には、フローフォーカシングマイクロ流体装置22は、それぞれが狭い開口部32で主要チャネルまたは出口チャネル30に合流する3つの入口チャネル26、26’、28から形成される、接合部24を含み得る。3つの入口チャネルのうち2つのチャネル26、26’が垂直方向に配置されており、垂直の入口チャネル26、26’はともにフローフォーカシング接合部24で合流し、1つの入口チャネル26はフローフォーカシング接合部24の上方から、1つの入口チャネル26’はフローフォーカシング接合部24の下方から来ている。さらに、第三の入口チャネル28が水平方向に配置されており、左側から来てフローフォーカシング接合部24で他の2つの入口チャネル26、26’と合流する。主要チャネルまたは出口チャネル30もそれぞれ水平方向に配置されており、水平の入口チャネル28の終端の反対側にある狭い開口部32から始まる。稼働時、油に分散または溶解した両親媒性コポリマー(1つまたは複数)(のちにポリマー殻を形成する)を含む連続油相が2つの垂直の入口チャネル26、26’の中を流れ、両方の連続油相の一部の流れがフローフォーカシング接合部24で合流する。脂質(1つまたは複数)を含む分散した水相が水平の入口チャネル28の中を流れ、フローフォーカシング接合部24で2つの垂直の入口チャネル26、26’の中を流れる油相がこれに割り込む。この2つの相が、3つの入口チャネル26、26’、28の下流に位置する小さな開口部32を通過し、分散相の流れが狭くなって脂質含有水相の液滴10になり、液滴10が両親媒性コポリマー(1つまたは複数)に覆われ、それにより、コポリマーの親油性または疎水性末端が外殻側15で連続油相に向かって配置され、コポリマーの親水性末端が内殻側で分散した脂質含有水相に向かって配置されたポリマー殻が形成される。液滴の大きさは、2つの相の流速によって、流速の比によって、およびチャネルの形状によって調節することができる。
方法の段階b)では、液滴10の脂質内容物20をポリマー殻12の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層に変換して、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成する。上記のように、このことは、液滴10の内側空間14に含まれる脂質20含有水相のマグネシウムイオン濃度を10mMに調整することによって達成し得るものであり、液滴10の内側空間14内のマグネシウムイオンの濃度は、図2に関連して上に記載した液滴10形成の過程で調整し得る。この場合、図2に示し上に記載したフローフォーカシングマイクロ流体装置22を稼働させるとき、脂質20を含有しマグネシウムイオン濃度が10mMである水相を第三の入口チャネル28で使用する。それにより、液滴10の中にある大型単層脂質小胞および小型単層脂質小胞20が、ポリマー殻12の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層34に変換されて、図3に示されるポリマー殻安定化巨大単層小胞36が形成される。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞36は、化学的および機械的に極めて安定であるため、図4に模式的に示すように、ピコ注入技術で容易に処理することができ、したがって、膜貫通タンパク質および細胞骨格タンパク質などのタンパク質を容易に搭載することができる。ピコ注入器装置38はチャネル40を含み、その中をポリマー殻安定化巨大単層小胞36の分散液が流れる。チャネル40の一方の側には、チャネル40に交流電位を印加する2つの電極42、42’が配置されているのに対し、チャネル40の他方の側にはピコ注入器44が配置されており、そこから液体がチャネル内に注入され得る。稼働時、250Vおよび1kHzなどの交流電位が印加され、それによりポリマー殻12の安定性が低下して、ピコ注入器44によって供給される脂質および/またはタンパク質含有水性液体のポリマー殻安定化巨大単層小胞内への組込みが可能になる。それにより、タンパク質をポリマー殻安定化巨大単層小胞36の脂質二重層34内および/または内側空間14内に組み込み得る。具体的には、膜貫通タンパク質46をポリマー殻安定化巨大単層小胞36の脂質二重層34内に注入し組み込み得る。この場合、膜貫通タンパク質(1つまたは複数)46を好ましくはリポソーム、すなわち、中に1つまたは複数の膜貫通タンパク質46が挿入された少なくとも1つの脂質二重層を有する小胞であるプロテオリポソーム48の形態でポリマー殻安定化巨大単層小胞36内に注入する。上記のものに代えて、またはこれに加えて、1つまたは複数の細胞骨格タンパク質50をポリマー殻安定化巨大単層小胞36の内側空間14内に組み込んでもよく、これにより、のちにフィラメント52が形成され得る。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞36内にタンパク質(1つまたは複数)を組み込んだ後、ポリマー殻12は不要となる。したがって、本発明では、段階d)の後、好ましくはマイクロ流体工学技術によってポリマー殻12および油相15を除去するのが好ましい。図5に示されるように、マイクロ流体装置54は、ポリマー殻安定化巨大単層小胞36を導入する第一の入口チャネル56と、ポリマー殻不安定化界面活性剤(1つまたは複数)を油に分散させたものを第一の入口チャネル56へと導入する第二の入口チャネル58とを含み得る。この目的のために、第一および第二の入口チャネル56、58がT字型接合部60により接続されている。さらに、T字型接合部60の下流には、ポリマー殻安定化巨大単層小胞36を減速させる受動的捕捉構造62が設置されている。さらに下流、すなわち、受動的捕捉構造62の下流では、第一の入口チャネル56が、水相が流れる広い垂直チャネル64に合流する。好ましくは、第二の入口チャネル58から導入される不安定化界面活性剤(1つまたは複数)が、第一の入口チャネル56内のポリマー殻安定化巨大単層小胞36のポリマー殻12を不安定化させるのに十分な時間が得られるように、稼働時にマイクロ流体装置の総流量を調節する。さらに、第一の入口チャネル56の高さは、ポリマー殻安定化巨大単層小胞36の直径を上回るよう設計するのが好ましく、第一の入口チャネル56での圧力は、第一の入口チャネル56内のずり応力を最小限に抑えるため最大20mbarに調節するのが好ましい。不安定化界面活性剤としては、例えば、20体積%のペルフルオロ-1-オクタノールを含有する油流を使用し得る。第一の入口チャネル56と水相が流れる広い垂直チャネル64との接合部でポリマー殻安定化巨大単層小胞36と水相が接触すると、ポリマー殻のない巨大単層小胞66が水相中に放出される。油が水相チャネル64内に侵入するのを避けるため、捕捉構造内に液滴が存在する場合は必ず、油/水接合部でゼロ圧力勾配が得られるよう水相流を調節する。その結果、油は隣接する油出口チャネル68、68’に流れ込む。
任意選択の段階d)では、図6に示されるように、ポリマー殻安定化巨大単層小胞36からポリマー殻12および油相15を除去する。ポリマー殻12によってもたらされる機械的安定性を必要とするポリマー殻安定化巨大単層小胞36内への1つまたは複数のタンパク質の組込みの後、ポリマー殻12は不要になるため、実際には、段階d)を実施して巨大単層小胞36を得るのが好ましい。さらに、ポリマー殻12および油相15を除去した後、巨大単層小胞36を水相に分散させる必要がある。
除去段階を図6に示されるバルク技術によって実施してもよい。バルク除去法では、形成されたポリマー殻安定化巨大単層小胞36をエッペンドルフチューブに100μl収集する。フッ素化油76と水との間の密度差により、チューブの最上部でポリマー殻安定化巨大単層小胞36が高密度の層を形成する。ポリマー殻の除去に水相を供給するため、100μlの緩衝液70を1つの大きな滴78としてポリマー殻安定化巨大単層小胞36層の中央に添加する。浸透圧作用を抑えるため、緩衝液のイオン含有量がポリマー殻安定化巨大単層小胞36内の緩衝液含有物と一致するのが好ましい。緩衝液を添加した後、20体積%のペルフルオロ-1-オクタノールを含有する油72を緩衝液滴78の最上部に落とす。不安定化剤を全量加えた後、チューブを傾けて界面面積を大きくし、その縦軸の周りでゆっくり回転させる。これらの条件では、エマルションの破壊にかかる時間は5分未満である。ポリマー殻12のない巨大単層小胞36を含有する水溶液74は、ピペットで慎重に取り出すことができる。
次に、本発明を実施例によって説明するが、これらの実施例は本特許出願を限定するものではない。
実施例1
(ポリマー殻安定化巨大単層小胞の作製)
ポリマー殻の両親媒性ブロックコポリマーの合成
Platzman,I.,Janiesch,J.-W.およびSpatz,J.P.Synthesis of Nanostructured and Biofunctionalized Water-in-Oil Droplets as Tools for Homing T Cells.J.Am.Chem.Soc.135,3339-3342(2013)ならびにJaniesch,J.W.ら.Key factors for stable retention of fluorophores and labeled biomolecules in droplet-based microfluidics.Anal Chem 87,2063-2067(2015)により報告されているプロトコルに従ってブロックコポリマー界面活性剤を合成した。より具体的には、トリブロックコポリマーのペルフルオロポリエーテル(PFPE)(7,000g/mol)-ポリエチレングリコール(PEG)(1,400g/mol)-PFPE(7000g/mol)(TRI7000)および金結合ジブロックコポリマー界面活性剤のAu-PEG(436g/mol)-PFPE(7000g/mol)を合成した。合成後、トリブロック界面活性剤を別個に金結合界面活性剤と混合し、FC-40フッ素化油(3M社、米国)に溶解させて、トリブロックおよび金結合界面活性剤の最終濃度をそれぞれ2.5mMおよび3μMとした。
IR測定を実施して、コポリマー合成の成功を確認し、純度を評価した。FC-40ペルフルオロ化油をバックグランド溶媒に用いてスペクトルを取得した。測定は、液体FTIR用の取外し可能な光路長セル(Thermo Scientific社、米国)をKBrガラスおよび溶媒のFC-40ペルフルオロ化油とともに用いてNicolet Nexus 870フーリエ変換赤外分光光度計(Thermo Electron社、ドライアイヒ、ドイツ)で実施した。
図7(A)に、PFPE(7000)-カルボン酸反応物およびトリブロック界面活性剤生成物PFPE(7000)-PEG(1400)-PFPE(7000)(TRI7000)の代表的なFTIRスペクトルを示す。この図には、1701cm-1、1775cm-1、2848cm-1、2956cm-1および3556cm-1に5つの主要なバンドが示されている。1701cm-1のバンドはエステル(C=O)伸縮モードに起因するものである。1775cm-1のバンドは、カルボン酸基に対してアルファ位にある電気陰性のフッ素原子によって強く(約50cm-1)ブルーシフトするPFPE-カルボン酸の(C=O)結合の伸縮モードに起因するものである。トリフルオロ酢酸のFTIRスペクトルを測定した研究で、同じカルボン酸(C=O)バンドのブルーシフトが既に観察されている。2848cm-1および2956cm-1のバンドは、PFPE-PEG-PFPE生成物のPEG(C-H)基の対称伸縮モードおよび非対称伸縮モードに割り当てられる。3556cm-1のバンドは非対称伸縮(OH)振動に割り当てられる。
図7(B)に、DI7000およびPFPE(7000)-カルボン酸の代表的なFTIRスペクトルを示す。この図には、1698cm-1、1775cm-1、2889cm-1、2993cm-1および3556cm-1に主要なバンドが示されている。1698cm-1のバンドはエステルν(C=O)の伸縮モードを表す。2889cm-1および2993cm-1の広いバンドは、PEGν(CH)の対称伸縮および非対称伸縮を表す。3556cm-1のバンドは非対称伸縮(OH)振動に割り当てられる。
エレクトロフォーメーション
Herold,C.,Chwastek,G.,Schwille,P.およびPetrov,E.P.Efficient Electroformation of Supergiant Unilamellar Vesicles Containing Cationic Lipids on ITO-Coated Electrodes.Langmuir 28,5518-5521(2012)により記載されているエレクトロフォーメーションプロトコルを用いて、重量比8:1:1の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DOPC):1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE):1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)からなり、1%のATTO 488標識DOPEをさらに含む、巨大単層小胞形態の脂質を形成した。より具体的には、濃度5mMの脂質混合物を純クロロホルムに溶解させ、2つの酸化インジウムスズ(ITO)コートガラス(Sigma-Aldrich社、ドイツ)上に塗布した。クロロホルムを蒸発させた後、エレクトロフォーメーションセルを取り付けた。この目的のために、2枚のITOコートガラスの導電側を互いに向い合せた。直接接触するのを避けるため、2つのテフロンスペーサー(1mm)を使用した。銅テープ(3M社、米国)を用いて、導電側と信号発生器(RS Components社、ドイツ)とを接続した。次いで、チャンバにマグネシウムイオン濃度が10mMの(Milliporeでろ過した)Milli-Q水を満たし、2成分接着剤(Twinsil Picodent社、Germany)で密封した。振幅1Vで10Hzの交流電位を2時間印加して巨大単層小胞を形成した。小胞作製後、溶液を直ちにマイクロ流体油中水型コポリマー安定化液滴内への封入に使用した。
マイクロ流体工学および脂質の脂質二重層への変換による、中に脂質が含まれているポリマー殻の形成:
Gu,H.,Duits,M.H.G.およびMugele,F.Droplets Formation and Merging in Two-Phase Flow Microfluidics.International Journal of Molecular Sciences 12,2572-2597(2011)ならびにXia,Y.およびWhitesides,G.M.SOFT LITHOGRAPHY.Annual Review of Materials Science 28,153-184(1998)により記載されているフォトリソグラフィーおよびソフトリソグラフィー法により、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(Sylgard 184、Dow Corning社、米国)製の液滴ベースのマイクロ流体装置を調製した。液滴作製時の液滴径を制御するため、フローフォーカシング接合部のノズル設計を図2に示される通りに実施した。シリンジポンプPUMP 11 ELITE(Harvard apparatus社、米国)を用いて、1kHzの速度での安定な液滴作製(直径d=40μm)に必要とされる通り、水相の流速を120μL/時に、油相の流速を160μL/時に制御した。油相には上記の通りに合成した両親媒性ブロックコポリマーが含まれており、水相には上記の通りに合成した脂質が含まれ、マグネシウムイオン濃度が上記の通り10mMであった。水相のマグネシウムイオン濃度を10mMに調整したため、液滴の内側空間に含まれる脂質混合物が脂質二重層に変換されてポリマー殻の内表面に配置された。このようにしてポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成した。
上記のように得られたポリマー殻安定化巨大単層小胞の模式的構造を図3に示す。
実施例2
(様々な巨大単層小胞のポリマー殻安定化巨大単層小胞からの形成および放出)
全般的には、実施例1に従って作製し図1に示した直径30μmのポリマー殻安定化巨大単層小胞内に、Milli-Q水に溶解した定められた濃度(直径30μmのポリマー殻安定化巨大単層小胞には最低950μM、通常は1~2mMを用いた)の小型単層小胞形態の脂質を封入した。ポリマー安定化液滴およびその放出に様々な脂質組成を用いて中性荷電、負荷電または正荷電の巨大単層小胞を作製することができた。
中性および負荷電のポリマー殻安定化巨大単層小胞の場合、封入した小型単層小胞を液滴の内側界面で支持される連続脂質二重層に変換するには、最適化したMgCl濃度が10mMの溶液を液滴作製過程で、または図4に示される装置でピコ注入によって導入した。脂質二重層が数秒以内に形成された。Mg2+イオンは支持表面への接着を促進することから、最も効率的な脂質小胞破裂のメディエーターであると考えられる。
正荷電ポリマー殻安定化巨大単層小胞の場合、封入した小型単層小胞を液滴の内側界面で支持される連続脂質二重層に変換するには、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を作製するのに少なくとも20mol%の正荷電脂質(および負荷電脂質に対して明らかに過剰な正荷電脂質)を含有する小型単層小胞にいかなるイオン添加も必要としない。正荷電ポリマー殻安定化巨大単層小胞は、水相内を向いているポリマー殻(PFPE-PEG)の負荷電の内表面との直接的な静電的相互作用により、イオンを添加しなくても同様に形成される。したがって、正荷電小型単層小胞はポリマー殻の内表面に接着し、直ちに破裂して脂質二重層を形成する。巨大単層小胞の放出については最大40mol%の濃度の正荷電脂質で良好な試験結果が得られた。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞からの巨大単層小胞の放出
バルク放出技術:
巨大単層小胞を良好に放出させるため、下の表1および2に示す各場合についてポリマー殻安定化巨大単層小胞の脂質組成物を最適化した。上に記載したあらゆるタイプのポリマー殻安定化巨大単層小胞に対して、巨大単層小胞を油相から水相中に放出させる以下の方法を用いた。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞の形成後、油/ポリマー殻安定化巨大単層小胞含有溶液100μLをFC-40油/界面活性剤溶液(ポリマー殻安定化巨大単層小胞に使用したFC-40油/界面活性剤溶液と同一のもの)1mlが入った2mlエッペンドルフチューブの中に移した。次に、適切な溶液または緩衝液100μlをピペットで液滴エマルションの上に落した。通常、ポリマー殻安定化巨大単層小胞によって封入されるものと同じ緩衝液または溶液を使用した(例えば、MilliQ水、10mM MgCl、アクチン重合緩衝液またはインテグリン活性化緩衝液)。液滴のポリマー殻を不安定化させるため、FC-40油に溶解した20体積%のペルフルオロ-1-オクタノール不安定化界面活性剤(Sigma-Aldrich社、ドイツ)100μlを添加した。エッペンドルフチューブを慎重に傾け、エマルションが破壊されるまでゆっくり回転させた。放出された巨大単層小胞をBSAコートスライドガラスとカバーガラスとで作製された観察チャンバで検査した。観察チャンバは、ガラスをPBS中10mg/mlのBSAと室温で2時間インキュベートした後、2種類の5分間の洗浄段階、すなわち、PBSでの洗浄および水での洗浄を実施することによって調製した。
実施例3
(インテグリンタンパク質を含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞-方法1)
インテグリンαIIbβを界面活性剤除去法により大型単層小胞内に再構成した。このため、0.1%のTriton X-100を含有する緩衝液に乾燥卵PCを溶解させた。インテグリン-脂質比が1:1000になるようインテグリンαIIbβを加えた。溶液を振盪器内で37℃にて2時間、600rpmでインキュベートした。それに続く50mg/mlのSM-2 Bio- beadsを用いた3.5時間の2回の洗浄段階でTriton X-100を除去した。約100~140nmに設定したMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern社、イギリス)でリポソームおよびインテグリン-リポソームのサイズ分布を動的光散乱法により測定した。液滴形成時、再構成したインテグリンαIIbβを含む大型単層小胞を10%含有する脂質混合物を封入して、実施例1に記載される通りにインテグリンαIIbβを含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成した。
実施例4
(インテグリンタンパク質を含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞-方法2)
インテグリンαIIbβを実施例3に記載した界面活性剤除去法により大型単層小胞内に再構成した。
同時に、実施例1に記載される通りに、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を形成し、作製後に収集した。
上記の調製段階の後、液滴を図4に示されるピコ注入装置の中に注入した。このため、マイクロ流体流動制御システム(MFCS-EZ、Fluigent社、フランス)を用いて全入口チャネルでの圧力を制御した。液滴の間隔を合流型油チャネルにより制御した。
分離段階の後、単離した液滴が、HM 8150信号発生器(HAMEG社、ドイツ)によって発生し、Indalloy 19(インジウム51%、ビスマス32.5%、スズ16.5%、Indium社、米国)製の2つの電極に取り付けた623B-H-CE線形増幅器(TREK社、米国)によって増幅されたAC電場(周波数1kHz、電圧250V)を通過した。インテグリン-LUVを含有する溶液を注入チャネルにつないだ。液滴を電位が250Vで1kHzの電場に曝すことにより、ポリマー殻が不安定化する。これにより、隣接する注入チャネルのノズルでの第二の水相との合体が促進される。主チャネルと隣接するチャネルとの間の圧力差を制御することにより、液滴内への注入を細かく調節することができる。
注入されたインテグリン-大型単層小胞を既に存在するポリマー殻安定化巨大単層小胞と融合した。
実施例5
(インテグリンタンパク質を含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞-方法3)
実施例3に記載したようにインテグリンαIIbβをLUV内に再構成する代わりに、0.1%Triton X-100を用いてタンパク質を可溶化した。実施例4の他の段階はいずれも同じものとした。ポリマー殻安定化巨大単層小胞内へのピコ注入の電場によって誘発される穿孔により、インテグリンαIIbβが脂質膜内に挿入される。
実施例6
(インテグリンタンパク質を含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞は液滴の生物機能化内側ポリマー殻と相互作用する)
油相中でのポリマー安定化水滴の形成を実施例1に記載される通りに実施した。金ナノ粒子結合ブロックコポリマーの使用により内側液滴界面を機能化した。例えば、リガンド模倣ペプチドをチオール化学により金ナノ粒子と結合させ、したがって、インテグリンαIIbβの結合部位が得られた。この方法を用いて、実施例3~5に従って作製した再構成インテグリンαIIbβを含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞とポリマー殻とを結合させた。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞内に再構成した膜貫通タンパク質のFRAP測定により、インテグリンの拡散係数が0.70±0.1μm/秒であることが明らかになった。さらに、再構成したインテグリンの機能性を試験するため、金結合界面活性剤に係留したRGDペプチドを用いて、インテグリンが接着する結合部位を得た。この場合、インテグリンの拡散係数は0.13±0.03μm/秒に低下し、液滴を安定化させるコポリマー界面活性剤層の流動性と一致していた。
液滴界面でのインテグリンとRGDとの間の結合が成功を収めたことにより、インテグリンがポリマー殻安定化巨大単層小胞の脂質二重層内に機能的に組み込まれたことがわかった。また、インテグリンタンパク質の少なくとも一部が正しく配向し、その細胞外部分が液滴を安定化させるコポリマー殻の内側界面の方を向いていることもわかる。
金結合界面活性剤の機能化
金ナノ構造液滴の表面にインテグリンの接着部位を得るため、チオール化学によりGNPをRGD模倣ペプチドで機能化する2段階のプロトコルを考案した。
凍結乾燥PFPE-PEG-Auジブロックコポリマー界面活性剤をフッ素化油FC-40 100μlに濃度25μMで溶解させた。RGDペプチドを含有する水溶液(50μM、100μl)を添加し、このエマルションを1時間攪拌した。未結合のRGDペプチドを除去するため、エマルションを遠心分離し、それにより重い油を沈降させた。次いで、上清を捨て、沈殿を24時間凍結乾燥させて残留水をすべて除去した。
最後に、生成物を(油)FC-40 1mlに溶解させ、疎水性フィルター(PTFE0.2μm)でろ過し、微量の未反応ペプチドを除去した。
実施例7
(インテグリン機能化巨大単層小胞の放出およびインテグリン機能性の評価)
油相中でのポリマー安定化水滴の形成を実施例1に記載される通りに実施した。
次いで、実施例3~5に従って再構成インテグリンαIIbβを含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞を作製し、反応チューブに収集した。
実施例2に記載されているバルク放出技術によりインテグリン機能化巨大単層小胞の放出を実施した。放出された巨大単層小胞を含有する水溶液をピペット操作によって慎重に取り出し、直ちに観察または実験に使用した。
放出された巨大単層小胞は、図10に示されるように、蛍光標識したインテグリンの均一な分布を示した。再構成したインテグリンαIIbβの機能性を検証するため、図10に示されるように、放出されたインテグリン機能化巨大単層小胞の伸展挙動を検討した。上記のインテグリンαIIbβ原始細胞は、血小板接着受容体であるインテグリンαIIbβから予測される通り、BSAでコートした界面で伸展することはなく、フィブリノーゲン上ではよく伸展するが、フィブロネクチンまたはコラーゲンマトリックス上ではそれほど伸展しない。様々なマトリックス上での接着性の差からさらに、タンパク質の再構成および放出の工程がインテグリン機能化巨大単層小胞の生物学的機能性に影響を及ぼすことはないことがわかる。
実施例8
(ポリマー殻安定化巨大単層小胞内でのアクチンおよびインテグリン再構成)
油相中でのポリマー殻安定化水滴の形成を実施例1に記載される通りに実施した。アクチンフィラメントとインテグリンαIIbβをともに含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞の作製には、最初に、実施例1に記載した界面活性剤除去により、50%卵PCと50%卵PGとからなる大型単層小胞内にインテグリンαIIbβ(50%TAMRA標識インテグリンαIIbβ)を再構成した。次いで、このプロテオリポソームと、20mMトリス/HCl、pH7.4、50mM NaCl、0.5mM CaCl、25mM MgCl中に76%DOPC、20%コレステロール、3%DOPGおよび1%ATTO 488標識DOPEを含有するリポソームとを1:9の比で混合し、次いで、ポリマー殻安定化巨大単層小胞の形成に使用した。第二の段階として、Gアクチン(2.0mMトリス/HCl pH8、0.2mM CaCl、0.2mM ATP、0.005%NaNおよび0.2mM DTT中1%のAlexa Fluor 647標識アクチン)をこの液滴中にピコ注入した。さらに、液滴を収集し、観察チャンバに移して、脂質二重層内でのインテグリンの再構成およびポリマー殻安定化巨大単層小胞内でのアクチンフィラメントの再構成を制御した。
実施例8に示した全段階の後、図11に示すように、ポリマー殻安定化巨大単層小胞内にアクチンフィラメントおよびインテグリンタンパク質が良好に含まれていることがわかった。
図11には、アクチンおよびインテグリンが再構成されたポリマー殻安定化巨大単層小胞20を示すポリマー殻安定化巨大単層小胞(1%ATTO 488標識DOPE、1番目のパネル)、再構成されたTAMRA標識αIIbβ3インテグリン(2番目のパネル)、アクチン細胞骨格(1%Alexa Fluor 647標識アクチン、3番目のパネル)および全チャンネルの合成蛍光像(マージという標題-4番目のパネル)の代表的な蛍光像が示されている。
実施例9
(脂質二重層内へのATP合成酵素の組込み)
ポリマー液滴内での巨大単層小胞形成を実施例1に記載される通りに調製した。大腸菌(E.coli)からF-ATP合成酵素を単離し、Zimmermann,B.,Diez,M.,Zarrabi,N.,Graber,P.およびBorsch,M:Movements of the epsilon-subunit during catalysis and activation in single membrane-bound H+-ATP synthase.Embo Journal 24,2053-2063(2005)により記載されている通りにAlexa 488で標識した。次いで、FischerおよびGraber:Comparison of Delta pH- and Delta phi-driven ATP synthesis catalyzed by the H+-ATPases from Escherichia coli or chloroplasts reconstituted into liposomes,Febs Letters 457,327-332(1999)により記載されている通りに20mMトリシン-NaOH(pH8.0)、20mMコハク酸、0.6mM KCl、50mM NaClおよび2.5mM MgClからなるトリシン緩衝液中、予め形成されたリポソーム(直径d約120nm)内にATP合成酵素を再構成した。20mMトリシン-NaOH(pH7.5)、20mMコハク酸、10mM MgCl、5mM NaHPOおよび50μM超高純度ADP(Cell Technology社、米国)からなるF-ATP活性緩衝液中、1%ローダミンB(RhB)標識DOPEを含むDOPC:DOPE:DOPS(8:1:1)の脂質混合物を用いて、ポリマー殻安定化巨大単層小胞を上記の通りに形成した。図4に模式的に示される通りに、マイクロ流体ピコ注入器を用いて、上記のATP合成酵素を含有するリポソームをポリマー殻安定化巨大単層小胞内に注入した。ピコ注入器の電極の交流電位を250Vおよび1kHzに設定し、一方、注入チャネルの圧力を液滴の体積の約10%が注入されるよう調節した。Alexa 488蛍光ATP合成酵素シグナルおよびローダミンB蛍光脂質シグナルの共局在によって示されるように、リポソームとポリマー殻安定化巨大単層小胞との良好な融合が得られた。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞内で再構成したF-ATP合成酵素の活性を評価するには、F-ATP合成酵素を含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞と周囲の油との間に膜を挟んで確立されるpH勾配によってF-ATP合成酵素にエネルギーを与える必要がある。pH勾配(ΔpH≒3)を生じさせるため、トリフルオロ酢酸(TFA、99%、Sigma-Aldrich社、ドイツ)1μLをFC40油1mlに溶解させ、油交換を実施した。酸性油を添加した後、プロトン拡散による液滴内部のpHの変化をピラニンの強度検出により解析した。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞内でF-ATP合成酵素を再構成した後、油/ポリマー殻安定化巨大単層小胞溶液100μLを500μLエッペンドルフに移し、酸性FC-40油20μLをピペット操作により添加した。エッペンドルフを慎重に傾け、2分間ゆっくり回転させた。次いで、20体積%の不安定化界面活性剤ペルフルオロ-1-オクタノール(Sigma-Aldrich社)5μLを添加して液滴の内容物を放出させた。ATP含有量を解析するため、放出された水溶液5μLをトリシン緩衝液180μLおよび10倍濃縮ルシフェラーゼ試薬(ATP Bioluminescence Kit CLS II、Sigma-Aldrich社、ドイツ)20μLの入った不透明な平底96ウェルプレートのウェルに移した。プレートリーダー(Infinite M200、Tecan社、スイス)を用いて、水溶液中の合成されたATPに対応する生物発光強度を検出した。対照として、膜を挟んだpH勾配によるエネルギーを与えていないF-ATP合成酵素含有巨大単層小胞から同じ量の水溶液を放出させ、解析した。
合成されたATPの量を評価するため、図12に示される通りに、100nM ATP溶液および酸性FC-40油の添加によって得られる膜を挟んだpH勾配、すなわちATP合成の駆動力の添加により生物発光検量曲線を作成した。右のグラフには、ATP含有量に対する生物発光強度応答が時間の関数として示されている。挿入されている小さい方のグラフには、pH勾配によって活性化された巨大単層小胞(赤色)およびpH勾配を加えていない巨大単層小胞(黒色)の水性内容物から得られた代表的な生物発光強度曲線が示されている。図12に示されるように、合成されたATPの量を評価するため、100nM ATP溶液の添加により生物発光曲線を較正した。
図12には、F-ATP合成酵素再構成ポリマー殻安定化巨大単層小胞および酸性FC-40油の添加によって得られた膜を挟んだpH勾配、すなわちATP合成の駆動力の模式図が示されている。右のグラフには、ATP含有量に対する生物発光強度応答が時間の関数として示されている。挿入されている小さい方のグラフには、pH勾配によって活性化されたポリマー殻安定化巨大単層小胞(赤色)およびpH勾配を加えていないポリマー殻安定化巨大単層小胞(黒色)の水性内容物から得られた代表的な生物発光強度曲線が示されている。合成されたATPの量を評価するため、100nM ATP溶液の添加により生物発光曲線を較正した。
実施例10
(ポリマー殻安定化巨大単層小胞内へのチューブリンの封入)
ポリマー液滴内での巨大単層小胞形成を実施例1に記載される通りに調製した。既に記載されているプロトコル:Castoldi,M.およびPopov,A.V.Purification of brain tubulin through two cycles of polymerization-depolymerization in a high-molarity buffer.Protein Expr.Purif.32,83-88(2003)に従い、ブタ脳からチューブリンを精製した。次いで、これをHyman,A.ら,Preparation of modified tubulins.Methods Enzymol 196,478-485(1991)に既に記載されている通りにATTO 488-SE(Life Technologies社、ドイツ)で標識した。標識チューブリンおよび未標識チューブリンを20mM PIPES pH6.8、7.25mM MgCl、1mM EGTA、1mM 2-メルカプトエタノール、50mM KCl、31mMグルコース、1mg/mlグルコースオキシダーゼおよび0.5mg/mlカタラーゼおよび0.25mg/mlベータカゼインからなるPIPES保存緩衝液中、-80℃で保存した。
ポリマー殻安定化巨大単層小胞の内部でチューブリンを重合させ、微小管ネットワークを形成させるため、2段階の方法を用いた。最初に、20mM PIPES pH6.8、7.25mM MgCl、1mM EGTA、3mM GTP、1mM 2-メルカプトエタノール、50mM KCl、31mMグルコース、1mg/mlグルコースオキシダーゼおよび0.5mg/mlカタラーゼ、0.25mg/mlベータカゼインからなる重合緩衝液中、1%ローダミンB(RhB)標識DOPEを含むDOPC:DOPS(9:1)の脂質混合物を用いて、上記の通りにポリマー殻安定化巨大単層小胞を作製した。次に、ピコ注入ユニットを用いて、保存緩衝剤に溶解したチューブリン(90%が未標識であり、10%が上記のようにATTO 488で標識したものである)をこのポリマー殻安定化巨大単層小胞内に注入した。最適な重合結果を得るため、チューブリンを含有するポリマー殻安定化巨大単層小胞を37℃の観察チャンバに移した。
実施例11
(マイクロ流体放出装置)
集合した脂質区画を安定化ポリマー液滴殻から水相内に放出させるため、図5に示されるハイスループットなマイクロ流体装置を開発した。装置内部の流動はいずれも、マイクロ流体流動制御システム(MFCS-EZ、Fluigent社、フランス)によって制御した。ずり応力を最小限に抑えるため、チャネルの高さは液滴径を上回るように設計し、入口チャネルでの圧力は最大20mbarに調節し、個々の装置および実験条件に合わせてわずかに修正した。ポリマー殻安定化巨大単層小胞が放出装置の入口チャネル内に注入し、T字型接合部で単離し、そこに20体積%のペルフルオロ-1-オクタノール不安定化界面活性剤(Sigma-Aldrich社)を含有する支流の油流を合流させた。放出ユニットに到達する前に、不安定化界面活性剤が安定化界面活性剤に置き換わって追い出すのに効率的な時間が与えられるよう総流量を調節した。このユニットでは、ポリマー殻安定化巨大単層小胞が広い垂直チャネル内の水相と出会う。油/水接合部での液滴に対する機械的衝撃を最小限に抑えるため、マイクロ流体チャネル内にあり、この目的のために設計した受動的捕捉構造(すなわち、代表的な液滴径より短い距離で隔てられて並んだ柱状物)を用いて液滴を減速させた。
油が水相チャネル内に侵入するのを避けるため、捕捉構造内に液滴が全く存在しない場合は必ず、油/水接合部でゼロ圧力勾配が得られるよう水相流を調節した。その結果、液滴がスリットを塞ぐことなく、油が隣接する油出口チャネルに流れ込む。液滴が侵入すると必ず、液滴が両側の第一のスリットを塞ぎ、それにより圧力が増大する。液滴が受動的捕捉構造に沿って流れるとき、液滴がスリットの対を通過し、油出口チャネルに油が流れるようスリットを広げる。油が隣接する油チャネルに流れるようチャネル横断面を広げる各スリット対が増加すると、それに続いて、チャネルに沿って液滴を押す圧力が低下する。液滴が油と水の界面に近づくにつれて、液滴が減速される。水相と接触すると、残存する界面活性剤相が液滴のポリマー殻を剥がし、それが油出口チャネルまで流れる。これにより、液滴の水性内容物(脂質区画を含む)が水相中に放出される。
実施例12
直径100μmの液滴に関して理論的に推定された脂質濃度237μMの妥当性を実験的に検証した。より具体的には、直径120μmの単分散液滴内に封入する蛍光標識脂質(卵PC:卵PG、9:1、0.5%ATTO 488標識DOPEを含む)の量を系統的に変化させ、液滴界面でのその蛍光強度を記録した。
その結果を図13に示す。
237μMより低い脂質濃度の場合、液滴そのものの大きさより小さい巨大単層小胞は観察されなかった。代わりに、液滴の内壁に利用可能な脂質の融合が検出された。観察される通り、脂質の蛍光強度値は理論的推定濃度までほぼ直線的に増大する。強度はそれより高い脂質濃度でプラトーに達する。濃度が高くなると、液滴界面で過剰な脂質がリポソームの凝集体を形成することに留意するべきである。強度の正確な推定に影響を及ぼす液滴の周辺部でのリポソームの不均一な凝集。したがって、脂質濃度400μMで記録された強度の逸脱が大きいのは、この作用に起因するものである。
実施例13
図5に関連して上記のように実施した放出工程で脂質二重層が無傷でとどまるかどうかを評価するため、図14に示される通り、(A)油相(ATTO 520、黄色)、(B)脂質二重層(RhB DOPE、緑色)、(C)封入した水相(HyLite 405、青色)および(D)連続水相(Alexa 647、赤色)を異なるフルオロフォアで標識した。
図14(E)に全チャンネルの合成像が示されている。
各フレームの左下には、水性媒体を封入している複数のポリマー殻安定化巨大単層小胞36を含有する連続油相がある。フレームの残りの部分は、単一の巨大単層小胞を含有する連続水相74で満たされている。(A~D)挿入図は、各フルオロフォアに示される白線に沿って、放出された巨大単層小胞を横断する線プロファイルを示している。(A)油チャネルでは、放出された巨大単層小胞に残存油の痕跡は検出されない。(B)RhB DOPEの蛍光シグナルはポリマー殻安定化巨大単層小胞より強い。これは回折および屈折の減少によるものであると思われる。(C)および(D)は、水相間に混合が検出されなかったことを示している。
実施例14
さらに、液滴安定化巨大単層小胞および放出されたポリマー殻のない各巨大単層小胞のラマンスペクトルを実施した。
ラマン顕微鏡を用いて、放出された巨大単層小胞に関するラマン分光法を実施し、放出された巨大単層小胞内の油/界面活性剤残渣を検出する方法とした。(A)は、界面活性剤をFC40油に溶かした溶液(茶色)および4:4:2のDOPC、POPCおよびコレステロールからなるSUV(緑色)からそれぞれ収集したラマンスペクトルの比較を示している。脂質尾部の炭素-水素伸縮振動が2800~3000cm-1の間の矢印によって示されている。
(B)は、挿入明視野像に赤線で示されている単一のポリマー殻安定化巨大単層小胞の水油界面から収集した代表的なラマンスペクトルを示している。明確に示すため、油相および水相から収集したスペクトルをそれぞれ茶および青に着色した。(C)挿入明視野像に赤線で示されている放出された巨大単層小胞の水-脂質相間から収集した代表的なラマンスペクトル。明確に示すため、水相および脂質二重層から収集したスペクトルをそれぞれ青および緑に着色した。重要なのは、収集したスペクトル内には、FC40油/界面活性剤に特徴的なピークが検出されなかったことである。脂質尾部の炭素-水素伸縮振動のラマン強度(矢印によって示される)をスクリーニング距離全体にわたってプロットした。
10 液滴
12 ポリマー殻
14 液滴の内側空間
15 液滴の外側空間;油相
16 ポリマー殻を形成するコポリマーの親油性ペルフルオロ化ポリエーテルブロック
18 ポリマー殻を形成するコポリマーの親水性ポリエーテルグリコールブロック
20 脂質(ここでは大型単層脂質小胞の形態)
22 フローフォーカシングマイクロ流体装置
24 接合部
26、26’ 油相の第一および第二の入口チャネル
28 水相の第三の入口チャネル
30 出口チャネル
32 狭い開口部
34 脂質二重層
36 ポリマー殻安定化巨大単層小胞
38 ピコ注入器装置
40 チャネル
42、42’ 電極
44 ピコ注入器
46 膜貫通タンパク質
48 プロテオリポソーム
50 細胞骨格タンパク質
52 フィラメント
54 マイクロ流体装置
56 第一の入口チャネル
58 第二の入口チャネル
60 T字型接合部
62 受動的捕捉構造
64 水相の広い垂直チャネル
66 ポリマー殻のない巨大単層小胞
68、68’ 油出口
70 緩衝液
72 油
74 水相
76 フッ素化油
78 滴

Claims (24)

  1. 巨大単層小胞(36、66)形態の原始細胞を調製する方法であって、
    a)水性の液滴(10)であって、前記液滴(10)の内側空間(14)に接する外側ポリマー殻(12)によって封入され、前記液滴(10)の最大寸法が0.5μm~1,000μmであり、前記液滴(10)の前記内側空間(14)に少なくとも1つの脂質(20)が含まれている液滴(10)を準備する段階と、
    b)前記液滴(10)の前記脂質(20)を、前記ポリマー殻(12)の内表面に配置されてこれを覆う脂質二重層(34)に変換して、ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)を形成する段階と、
    を含み、
    段階a)で、前記少なくとも1つの脂質(20)を小型単層脂質小胞、大型単層脂質小胞又は巨大単層脂質小胞の形態で前記液滴(10)の前記内側空間(14)内に組み込む、方法。
  2. 段階a)で得られる前記液滴(10)が球状であり、0.5~1000μmの外径を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記液滴(10)が、10~1200μmの外径を有する、請求項2に記載の方法。
  4. 段階a)で、前記液滴(10)が油相に分散し、前記少なくとも1つの脂質(20)を含む水相が前記液滴の前記内側空間に含まれている分散液を準備する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記液滴の前記ポリマー殻を、前記ポリマー殻の外側に配置された親油性または疎水性末端と前記ポリマー殻の内側に配置された親水性末端とを有するコポリマーで作製する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記液滴(10)のポリマー殻(12)をジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーまたは統計コポリマーで作製する、請求項5に記載の方法。
  7. i)前記液滴(10)の前記ポリマー殻(12)を、前記ポリマー殻(12)の外側に配置された疎水性ペルフルオロ化ポリマーブロック(16)と前記ポリマー殻(12)の内側に配置された親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)とを含むジブロックコポリマーで作製する、請求項6に記載の方法。
  8. ii)前記液滴(10)の前記ポリマー殻(12)を、2つの疎水性ペルフルオロ化ポリマー末端ブロック(16)とその間の親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)とを含み、水性ペルフルオロ化ポリマーブロック(16)が前記ポリマー殻の外側に配置され、前記親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)が前記ポリマー殻の内側に配置されるよう折り畳まれたトリブロックコポリマーで作製する、請求項6に記載の方法。
  9. iii)前記液滴(10)の前記ポリマー殻(12)を、前記ポリマー殻(12)の外側に配置された疎水性ペルフルオロ化ポリマーブロック(16)と前記ポリマー殻(12)の内側に配置された親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)とを含むジブロックコポリマーと、2つの疎水性ペルフルオロ化ポリマー末端ブロック(16)とその間の親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)とを含むトリブロックコポリマーとの組合せからなり、前記トリブロックコポリマーが、油性ペルフルオロ化ポリマーブロックが前記ポリマー殻の外側に配置され、前記親水性ポリエーテルグリコールブロック(18)が前記ポリマー殻の内側に配置されるよう折り畳まれた統計コポリマーで作製する、請求項6に記載の方法。
  10. 前記液滴(10)の前記内側空間に含まれる前記脂質(20)がリン脂質である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記脂質(20)が、ホスフォコリン、ホスフォコリン誘導体、ホスホエタノールアミン、ホスホエタノールアミン誘導体、ホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロール誘導体および上記の脂質のうち2つ以上の脂質の任意の組合せからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記脂質(20)が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-エタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-(5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](DGS-NTA)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(リサミンローダミンBスルホニル)(RhB DOPE)、1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスファート、L-α-ホスファチジルコリン、L-α-ホスファチジルグリセロールおよび上記の脂質のうち2つ以上の脂質の任意の組合せからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 段階a)で、フローフォーカシングマイクロ流体装置内での液滴作製によって、前記少なくとも1つの脂質(20)を前記液滴(10)の前記内側空間(14)内に組み込み、かつ/または段階a)で、注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって、前記少なくとも1つの脂質(20)を前記液滴(10)の前記内側空間(14)内に組み込む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
  14. 段階a)で、油中水型エマルション形成技術によって、前記少なくとも1つの脂質(20)を前記液滴(10)の前記内側空間(14)内に組み込む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
  15. 段階b)で、前記液滴(10)の前記内側空間(14)内のイオンの濃度を調整すること、および/または電場を印加することによって、前記液滴(10)の脂質(20)を脂質二重層に変換する、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記イオンがマグネシウムイオンであり、段階a)で、フローフォーカシングマイクロ流体装置(22)での液滴作製によって前記少なくとも1つの脂質(20)を前記液滴(10)の前記内側空間内に組み込むことにより、前記液滴(10)の内側空間(14)内のマグネシウムイオンの濃度を調整し、その結果、使用する前記脂質(20)を含有する水相が、1~100mMのマグネシウムイオン濃度を有する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記イオンがマグネシウムイオンであり、段階b)で、注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって、前記液滴(10)の前記内側空間(14)内のマグネシウムイオンの濃度を調整する、請求項15又は16に記載の方法。
  18. 段階b)で得られた前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)内に1つもしくは複数のタンパク質および/または核を組み込む段階c)をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 注入器を利用する電子マイクロ流体工学によって、1つまたは複数のタンパク質(46、50)を段階b)で得られた前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)内に組み込むことにより、段階c)を実施する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記1つまたは複数のタンパク質(46、50)をプロテオリポソーム(48)の形態で前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)内に組み込む、請求項19に記載の方法。
  21. 段階c)で、前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)の前記脂質二重層(34)内および/または前記内側空間(14)内に膜貫通タンパク質(46)および/または細胞骨格タンパク質(50)を組み込む、請求項18~20のいずれかに記載の方法。
  22. タンパク質であって、受容体、ATP合成酵素、ポリメラーゼ、アクチン、チューブリン、抗体、インテグリン、細胞から単離した核関連タンパク質、および、これらのうち2つ以上の任意の組合せからなる群より選択されるタンパク質と、
    核と、
    を使用する、請求項21に記載の方法。
  23. 前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)から前記ポリマー殻(12)を除去する段階d)をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 段階d)で、前記ポリマー殻安定化巨大単層小胞(36)から前記ポリマー殻(12)および当該ポリマー殻の外側の油相(15)を除去する、請求項23に記載の方法。
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