特許法第30条第2項適用 発行日 平成30年3月6日 刊行物 2018年電子情報通信学会総合大会、講演論文集1、第477頁「UWB電波センサを用いたSVMによる浴室内監視システムの提案」 〔刊行物等〕 開催日 平成30年3月21日 集会名 2018年電子情報通信学会総合大会 開催場所 東京電機大学(東京都足立区千住旭町5番)2号館 7F 2704教室
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[浴室監視システムの構成]
浴室監視システム1の構成について、図1を参照して説明する。浴室監視システム1は、入浴者Hのエリア及び状態を検知して、浴室から離れた場所に検知結果を知らせるように構成されている。浴室監視システム1は、浴室監視装置10と、報知装置20とを備える。
ここで、浴室30の構成を説明する。浴室30は、洗い場31と、ドア32と、シャワー33と、浴槽34とを含む。洗い場31は、例えば矩形状を呈している。ドア32は、洗い場31と脱衣所(図示せず)との間を出入り可能に仕切っている。図1に例示される形態では、ドア32は、洗い場31の長手方向の一端(図1の左端)に設けられている。シャワー33は、洗い場31の壁面に設けられている。図1に例示される形態では、シャワー33は、洗い場31の長手方向の他端(図1の右端)に設けられている。浴槽34は、例えば矩形状を呈しており、洗い場31と隣接して位置している。
浴室監視装置10は、浴室30内の入浴者Hのエリア及び様子を検知する機能を有する。浴室監視装置10は、浴槽34の長手方向に沿って延びる浴室30の壁面に取り付けられており、ドア32とは対面していない。浴室監視装置10は、図2に示されるように、発信機11(発信部)と、受信機12(受信部)と、通信機13と、制御部14(コントローラ)と、バス15とを含む。
発信機11は、制御部14からの指示に基づいて、浴室30内に向けて広帯域又は超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の無線電波を発信するように構成されている。発信機11の水平面における指向角は、例えば、40°~80°程度であってもよいし、60°~80°程度であってもよい。発信機11は、指向角の範囲におおよそ対応した検知エリアRを有している。なお、浴槽34の湯面の変動による影響を抑制する目的で、発信機11の垂直面における指向角は、例えば30°以下に設定されていてもよい。
本明細書において「広帯域」とは、周波数帯域幅が100MHz以上で且つ500MHz以下の場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、100MHz以上であってもよいし、300MHz以上であってもよい。「超広帯域」とは、周波数帯域幅が500MHzを超える場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する超広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、3GHz以上であってもよいが、電波法及びコストパフォーマンスに鑑みて5GHz以下であってもよい。そのため、発信機11は、周波数帯域幅が500MHz超の超広帯域無線センサであってもよい。広帯域又は超広帯域の無線電波を用いる場合、無線電波の発信出力を小さくすることができ、入浴者Hに対する無線電波の影響を小さくすることができる。
受信機12は、発信機11から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成されている。発信機11において広帯域の無線電波を用いているので、受信機12は、無線電波の反射波を反射パス長に対応した時間軸上で分離して受信することができる。すなわち、受信機12は、図1に例示されるように、検知エリアRの距離方向において複数に区切られた測定エリア(レンジビンともいい、周波数帯域幅で決まる)B1~B8ごとに、信号を抽出することが可能である。各レンジビンB1~B8の幅は、例えば15cm~30cm程度であってもよい。なお、周波数帯域幅が750MHzの場合には、一つのレンジビンの幅は約20cm程度となる。本実施形態ではレンジビンの数が8個であったが、レンジビンの幅及び検知エリアRの大きさに応じてレンジビンの数を変更可能である。
図1に示される例では、レンジビンB1~B4がおおよそ浴槽34をカバーしており、レンジビンB5~B8がおおよそ洗い場31をカバーしている。そこで、本明細書では、検知エリアRのうち浴槽34をカバーしているレンジビンB1~B4の範囲を浴槽エリアRαということとし、検知エリアRのうち洗い場31をカバーしているレンジビンB5~B8の範囲を洗い場エリアRβということとする。
図2に戻って、通信機13は、報知装置20の通信機23と通信可能に構成されている。通信機13の通信機23との通信方式は特に限定されず、例えば、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB、Bluetooth(登録商標)、その他の通信方式が用いられてもよい。
制御部14は、バス15を介して、発信機11、受信機12及び通信機13との間で信号の送受信を行い、これらの動作を制御するように構成されている。制御部14は、例えば、プロセッサ16と、メモリ17と、ストレージ18とを含む。
メモリ17、ストレージ18等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)が読み込まれると、プロセッサ16は、所定の演算を行い、発信機11からの無線電波の発信、受信機12が受信した反射波の解析、通信機13による通信、メモリ17及びストレージ18におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、浴室監視装置10における各機能が実現される。
浴室監視装置10における各機能について、図3を参照して説明する。制御部14は、機能ブロックとして、記憶部14aと、送受信処理部14bと、信号強度算出部14cと、データ生成部14d(解析データ生成部)と、分類モデル生成部14eと、クラス判定部14fとを含む。
記憶部14aは、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部14aが記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、発信機11の動作設定データ、受信機12が受信した反射波のデータ、データ生成部14dが生成した基準データ又は解析データ、分類モデル生成部14eが生成した各種分類モデル、クラス判定部14fによる判定結果に関するデータ等が挙げられる。
送受信処理部14bは、発信機11、受信機12及び通信機13の間で信号を送受信する機能を有する。具体的には、送受信処理部14bは、発信機11に指示信号を送信して、発信機11から無線電波を発信させる。送受信処理部14bは、受信機12から反射波のデータを受信し、当該データを記憶部14aに記憶させる。送受信処理部14bは、通信機13に指示信号を送信して、クラス判定部14fによる判定結果を報知装置20に送信させる。
信号強度算出部14cは、送受信処理部14bが受信した反射波のデータに基づいて、各レンジビンB1~B8のそれぞれにおける信号強度を算出する機能を有する。信号強度算出部14cは、各レンジビンB1~B8のそれぞれにおいて、時間軸で平滑化処理された信号強度を算出してもよい。平滑化処理としては、例えば、単純移動平均、重み付き移動平均などの種々の処理方法を採用してもよい。信号強度算出部14cによって算出された信号強度は、記憶部14aに記憶されてもよい。
データ生成部14dは、信号強度算出部14cによって算出された信号強度を用いて少なくとも2つのパラメータを求め、これらが対応付けられたデータを生成する機能を有する。例えば、データ生成部14dは、レンジビンB1~B4における信号強度p
1~p
4を用いて、浴槽エリアRαにおける信号強度の平均m
1及び分散σ
1
2をそれぞれ式1,2により求めてもよい。同様に、データ生成部14dは、レンジビンB5~B8における信号強度p
5~p
8を用いて、洗い場エリアRβにおける信号強度の平均m
2及び分散σ
2
2をそれぞれ式3,4により求めてもよい。本明細書において、データ生成部14dによって生成されたデータのうち、解析対象のデータを「解析データ」といい、解析対象でないデータ(機械学習用のデータ)を「基準データ」ということがある。データ生成部14dによって生成されたデータは、記憶部14aに記憶されてもよい。
分類モデル生成部14eは、データ生成部14dにおいて生成される基準データを複数用いた機械学習により、当該基準データを複数のクラスのうちいずれか一つに分類して、分類モデルを生成する機能を有する。例えば、データ生成部14dによって生成された複数の基準データ(所定数の基準データを含むデータセット)が分類モデル生成部14eに入力された場合、分類モデル生成部14eは、教師あり学習を行ってもよいし、教師なし学習を行ってもよいし、強化学習を行ってもよい。教師あり学習のアルゴリズムとしては、例えば、サポートベクタマシン、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、決定木、k-近傍法、パーセプトロン、ニューラルネットワーク等が挙げられる。教師なし学習のアルゴリズムとしては、例えば、k-平均法、主成分分析、自己組織化マップ等が挙げられる。強化学習のアルゴリズムとしては、例えば、Q学習、モンテカルロ法、SARSA等が挙げられる。分類モデル生成部14eによって生成された分類モデルは、記憶部14aに記憶されてもよい。
例えば、図4(a)に示されるデータセットDS1が分類モデル生成部14eに入力された場合、分類モデル生成部14eは、データセットDS1のうちの○印の基準データと□印の基準データとを区画する境界線L1を生成してもよい。図4(a)に示される例において、データセットDS1は、浴槽エリアRαにおける信号強度の平均m1及び洗い場エリアRβにおける信号強度の平均m2の2つのパラメータが対応付けられた基準データの集合である。データセットDS1を構成する複数の基準データは、境界線L1により、クラスC1a(○印の基準データの集合)とクラスC1b(□印の基準データの集合)との一方に分類される。クラスC1aは、例えば、入浴者Hが洗い場31に存在することを示す分類であってもよい。クラスC1bは、例えば、入浴者Hが浴槽34に存在することを示す分類であってもよい。境界線L1は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。以下では、境界線L1によって区画されるクラスC1a,C1bによって構成される分類モデルを「分類モデルM1」と称することがある。
例えば、図4(b)に示されるデータセットDS2が分類モデル生成部14eに入力された場合、分類モデル生成部14eは、データセットDS2のうちの○印の基準データと□印の基準データと△印の基準データとを区画する境界線L2を生成してもよい。図4(b)に示される例において、データセットDS2は、洗い場エリアRβにおける信号強度の平均m2及び分散σ2
2の2つのパラメータが対応付けられた基準データの集合である。データセットDS2を構成する複数の基準データは、境界線L2により、クラスC2a(○印の基準データの集合)とクラスC2b(□印の基準データの集合)とクラスC2c(△印の基準データの集合)とのいずれか一つに分類される。クラスC2aは、例えば、洗い場31に存在する入浴者Hに異常がないことを示す分類であってもよい。クラスC2bは、例えば、洗い場31に存在する入浴者Hが転倒したことを示す分類であってもよい。クラスC2cは、例えば、洗い場31に存在する入浴者Hが所定時間継続して動作していないことを示す分類であってもよい。境界線L2は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。以下では、境界線L2によって区画されるクラスC2a~C2cによって構成される分類モデルを「分類モデルM2」と称することがある。
例えば、図4(c)に示されるデータセットDS3が分類モデル生成部14eに入力された場合、分類モデル生成部14eは、データセットDS3のうちの○印の基準データと□印の基準データと△印の基準データとを区画する境界線L3を生成してもよい。図4(c)に示される例において、データセットDS2は、浴槽エリアRαにおける信号強度の平均m1及び分散σ1
2の2つのパラメータが対応付けられた基準データの集合である。データセットDS3を構成する複数の基準データは、境界線L3により、クラスC3a(○印の基準データの集合)とクラスC3b(□印の基準データの集合)とクラスC3c(△印の基準データの集合)とのいずれか一つに分類される。クラスC3aは、例えば、浴槽34に存在する入浴者Hに異常がないことを示す分類であってもよい。クラスC3bは、例えば、浴槽34に存在する入浴者Hが沈溺したことを示す分類であってもよい。クラスC3cは、例えば、浴槽34に存在する入浴者Hが所定時間継続して動作していないことを示す分類であってもよい。境界線L3は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。以下では、境界線L3によって区画されるクラスC3a~C3cによって構成される分類モデルを「分類モデルM3」と称することがある。
クラス判定部14fは、データ生成部14dによって生成された解析データを、分類モデル生成部14eによって生成された分類モデルにおける複数のクラスのいずれか一つに分類する機能を有する。すなわち、クラス判定部14fは、当該解析データを当該分類モデルに当てはめて、当該解析データが複数のクラスのうちどのクラスに属するのかを判定する。
入退室判定部14gは、入浴者Hの浴室30への入退室を判定する機能を有する。まず、入退室判定部14gは、送受信処理部14bが受信した反射波のデータに基づいて、受信機12からの距離に応じた信号強度を取得する。具体的には、浴室30に入浴者Hが存在していない場合には、壁からの反射波の信号強度が卓越する(図5(a)及び図5(b)参照)。一方、浴室30に入浴者Hが存在している場合、入浴者Hは浴室監視装置10の正面壁の手前側に位置し、浴室監視装置10から入浴者Hまでの距離d1は浴室監視装置10から正面壁までの距離d2よりも短い(図5(a)参照)。このとき、発信機11からの無線電波の一部が入浴者Hで反射して壁に到達しなくなる。そのため、壁からの反射波の信号強度が小さくなり(図5(a)及び図5(c)の矢印Ar1参照)、壁よりも手前側(受信機12側)からの反射波の信号強度が大きくなる(図5(c)の矢印Ar2参照)。従って、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前側からの反射波が所定の閾値TH1よりも大きくなったときに、入浴者Hが浴室30に入室したと判断してもよい。入退室判定部14gは、経時的に壁からの反射波の信号強度を取得し、壁よりも手前側からの反射波が所定の閾値TH1以下となったときに、入浴者Hが浴室30から退室したと判断してもよい。
入退室判定部14gは、入浴者Hの浴室30への入退室を判定する際に、壁からの反射波の信号強度も考慮してもよい。具体的には、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前からの反射波が所定の閾値TH1よりも大きくなり且つ壁からの反射波の信号強度が所定の閾値TH2以下となったときに、入浴者Hが浴室30に入室したと判断してもよい。入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前からの反射波が所定の閾値TH1以下となり且つ壁からの反射波の信号強度が所定の閾値TH2より大きくなったときに、入浴者Hが浴室30から退室したと判断してもよい。壁からの反射波の信号強度の時間変動も考慮することにより、入浴者Hの入退室をより精度よく判断することが可能となる。
図1に戻って、報知装置20は、例えば浴室30とは壁Wを隔てた別の室内に取り付けられている。報知装置20は、図6に示されるように、モニタ21(報知部)と、スピーカ22(報知部)と、通信機23と、制御部24(コントローラ)と、バス25とを含む。
モニタ21及びスピーカ22はそれぞれ、通信機23を介して受信した入退室判定部14gによる判定結果を、映像及び/又は音で当該別の室内にいる在室者(例えば、家族)に報知するように構成されている。通信機23は、浴室監視装置10の通信機13と同様の構成を有しており、通信機13と同様に機能する。
制御部24は、プロセッサ24aと、メモリ24bと、ストレージ24cとを含んでおり、浴室監視装置10の制御部14と同様に機能する。バス25は、浴室監視装置10のバス15と同様の構成を有しており、バス15と同様に機能する。
[浴室監視方法]
続いて、図7を参照して、浴室30の監視方法について説明する。なお、浴室監視装置10の記憶部14aは、複数の基準データを用いた機械学習により得られる少なくとも一つの学習済みの分類モデルが記憶している。
まず、送受信処理部14bは、発信機11に指示して、発信機11から無線電波を浴室30内に発信させる。次に、送受信処理部14bは、受信機12を介して無線電波の反射波のデータを受信する。
次に、入退室判定部14gは、送受信処理部14bが受信した反射波のデータに基づいて、受信機12からの距離に応じた信号強度を経時的に取得する。入退室判定部14gは、所定のエリアからの反射波の信号強度の変動に基づいて、入浴者Hが浴室30に入室したか否かを判定する(図7のステップS1)。具体的には、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前からの反射波が所定の閾値TH1よりも大きくなったか否かを判定する。入浴者Hが浴室30に入室していないと入退室判定部14gが判定した場合には(図7のステップS1でNO)、ステップS1の処理を繰り返す。
一方、入浴者Hが浴室30に入室したと入退室判定部14gが判定した場合には(図7のステップS1でYES)、信号強度算出部14cは、信号強度算出部14cが受信した反射波のデータに基づいて、各レンジビンB1~B8の信号強度を所定のサンプリング周期でそれぞれ算出する(図7のステップS2)。サンプリング周期としては、例えば、0.01秒~0.1秒程度であってもよい。
次に、データ生成部14dは、信号強度算出部14cによって算出された信号強度の平均及び分散を求め、解析データを生成する(図7のステップS3)。次に、クラス判定部14fは、データ生成部14dにおいて生成された解析データを分類モデルM1に当てはめて、入浴者Hのエリアを特定する(図7のステップS4)。例えば、データ生成部14dが図4(a)に示される解析データx1を生成した場合、クラス判定部14fは、解析データx1がクラスC1aに属すると判定する。すなわち、クラス判定部14fは、入浴者Hが洗い場31に存在していると判定する。一方、データ生成部14dが図4(a)に示される解析データx2を生成した場合、クラス判定部14fは、解析データx2がクラスC1bに属すると判定する。すなわち、クラス判定部14fは、入浴者Hが浴槽34に存在していると判定する。
次に、クラス判定部14fは、データ生成部14dにおいて生成された解析データを分類モデルM2又は分類モデルM3に当てはめて、入浴者Hの状態を判定する(図7のステップS5)。例えば、解析データx1がクラスC1aに属するとクラス判定部14fが判定した場合には、クラス判定部14fは、当該解析データx1を分類モデルM2に当てはめて、当該解析データx1がクラスC2a~C2cのいずれに属するのかを判定する。
解析データx1がクラスC2aに属すると判定された場合には、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常がないと判断する。解析データx1がクラスC2bに属すると判定された場合には、入浴者Hが転倒しているので、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常があると判断する。解析データx1がクラスC2cに属すると判定された場合には(図4(b)に例示される解析データx1を参照)、入浴者Hが所定時間継続して動作していないので、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常があると判断する。
解析データx2がクラスC3aに属すると判定された場合には(図4(c)に例示される解析データx2を参照)、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常がないと判断する。解析データx2がクラスC3bに属すると判定された場合には、入浴者Hが沈溺しているので、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常があると判断する。解析データx2がクラスC3cに属すると判定された場合には、入浴者Hが所定時間継続して動作していないので、クラス判定部14fは、入浴者Hに異常があると判断する。
次に、ステップS5におけるクラス判定部14fの結果、入浴者Hに異常がある場合には(図7のステップS6でYES)、送受信処理部14bは、通信機13に指示信号を送信して、クラス判定部14fによる判定結果を報知装置20に送信させる。これにより、浴室監視装置10とは別の室内にある報知装置20のモニタ21又はスピーカ22を通じて、当該別の室内の在室者に入浴者Hの危険性が報知される(図7のステップS7)。
一方、ステップS5におけるクラス判定部14fの結果、入浴者Hに異常がない場合には(図7のステップS6でNO)、入退室判定部14gは、所定の位置からの反射波の信号強度の変動に基づいて、入浴者Hが浴室30から退室したか否かを判定する(図7のステップS8)。具体的には、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前からの反射波が所定の閾値TH1以下となったか否かを判定する。入浴者Hが浴室30から退室していないと入退室判定部14gが判定した場合には(図7のステップS8でNO)、ステップS2以下の処理を繰り返す。一方、入浴者Hが浴室30に入室したと入退室判定部14gが判定した場合には(図7のステップS8でYES)、浴室30の監視処理が終了する。
[作用]
以上の実施形態では、浴室30内における各レンジビンB1~B8での信号強度の少なくとも2つのパラメータ(例えば、平均、分散など)が対応付けられた基準データを用いた機械学習により、浴室30内における入浴者Hの状態を複数のクラスに分類している。従って、このような分類モデルに基づいて解析データが属するクラスを判定することにより、入浴者Hの状態を正確に検知することが可能となる。
以上の実施形態では、入浴者Hが洗い場31に存在することを示すクラスC1aと、入浴者Hが浴槽34に存在することを示すクラスC1bとで構成された分類モデルM1を記憶部14aが記憶している。そのため、入浴者Hが洗い場31と浴槽34とのどちらに存在しているのかを正確に検知することが可能となる。
以上の実施形態では、洗い場31における入浴者Hの状況を示す複数のクラスC2a~C2cで構成された分類モデルM2と、浴槽34における入浴者Hの状況を示す複数のクラスC3a~C3cで構成された分類モデルM3とを記憶部14aが記憶している。そのため、洗い場31又は浴槽34における入浴者Hの状況を正確に検知することが可能となる。
以上の実施形態では、クラス判定部14fは、解析データを分類モデルM1に当てはめて、入浴者Hのエリアを判定している。続いて、クラス判定部14fは、入浴者Hのエリア(洗い場31又は浴槽34)に応じて解析データを分類モデルM2又は分類モデルM3に当てはめて、入浴者Hの状況を判定している。そのため、入浴者Hの場所及び状況を同時に判定する場合と比較して、入浴者Hの状況をより正確に検知することが可能となる。
以上の実施形態では、入退室判定部14gは、所定のエリアからの反射波の信号強度の時間変動に基づいて、入浴者Hの浴室30への入退室を判定している。そのため、信号強度の比較により、極めて簡便に入浴者Hの入退室を判定することが可能となる。
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
(1)浴室監視装置10は、給湯機器用浴室リモコン、浴室用手すりなどの内部に、上記の発信機11、受信機12、通信機13、制御部14、バス15等が組み込まれたものであってもよい。
(2)浴室監視装置10は、有線で報知装置20と接続されていてもよい。
(3)上記の実施形態では、報知装置20は、浴室監視装置10と同じ建物内に取り付けられていたが、浴室監視装置10とは異なる建物内に取り付けられていてもよいし、移動通信可能な携帯端末(例えば、携帯電話、スマートフォンなど)であってもよい。当該異なる建物としては、例えば、入浴者Hと別居している家族の家、救急医療サービスを提供する施設(日本においては消防署)などが挙げられる。これらの場合、浴室監視装置10が、入浴者Hの場所、動作、危険な状態か否か等の検出した情報を報知装置20に送信することで、入浴者Hとは離れた場所にいる家族、救急隊などが入浴者Hの状態を知ることができる。そのため、入浴者Hが単身生活者の場合であっても、入浴者Hの状態を見守ることが可能となる。
(4)上記の実施形態では、浴室30の洗い場31と浴槽34とのどちらに入浴者H存在するかを判定していたが、浴室30内を3つ以上のエリアに区画して、いずれのエリアに入浴者Hが存在するかを判定してもよい。この場合、例えば、判定結果に基づいて浴室30内の照明の明るさを制御し、省エネ化を図ってもよい。照明の明るさの制御方法の例としては、入浴者Hが存在するエリアの照明を点灯し、他のエリアの照明を消灯又は減光することが上げられる。
(5)上記の実施形態では、入浴者Hが存在するエリアを判定した後に、当該エリアに対応する分類モデルを用いて、入浴者Hの状況を判定していたが、入浴者Hの存在場所の判定と、入浴者Hの状況とを同時又は近接したタイミングにおいて判定してもよい。
(6)浴室監視装置10が報知装置20を含んでいてもよい。すなわち、浴室監視装置10が、モニタ21(報知部)、スピーカ22(報知部)等を内蔵していてもよい。この場合、報知装置20が浴室30内に配置される。そのため、例えば、入浴者Hが浴槽34内で眠りに入ってしまい半覚醒状態にあるような軽度の異常に際して、モニタ21の点滅、スピーカ22からの警報(例えば、警報音、警告アナウンス等)によって、入浴者Hが重度な異常に移行してしまうことを抑制することが可能となる。
(7)浴室監視装置10は、入浴者Hを含むユーザからの入力操作を受け付けるように構成された入力部を含んでいてもよい。入力部としては、例えば、スイッチ、タッチパネルなどが挙げられる。浴室監視装置10は、入力部が受け付けた入力操作に基づいて分類モデル(境界線)を更新するように構成された更新部を含んでいてもよい。例えば、報知装置20が警報を発した際に、当該警報が誤警報であることを示すユーザからの入力操作が入力部に入力された場合(入浴者Hが異常状態にあるとして報知装置20が警報を発したが、実際には入浴者Hに異常が生じていない場合)、更新部は、当該入力操作を契機として分類モデルを更新してもよい。この場合、ユーザが入力部を通じて誤警報をフィードバックすることにより、分類モデルがアップデートされる。そのため、浴室30内における入浴者Hの状況をより正確に検知することが可能となる。
(8)制御部14は、クラス判定部14fにおいて判定される入浴者の状態(例えば、浴室30内における入浴者Hの位置、入浴者の動作の有無、入浴者の異常状態など)に関するデータに基づいて、他の機器(例えば、給湯器、浴室30内の照明など)を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部を含んでいてもよい。当該制御信号生成部は、通信機13(通信部)を通じて、当該制御信号を当該他の機器に送信してもよい。当該制御信号としては、例えば、浴槽34の湯温を調節するための給湯器への制御信号や、浴室30内の照明を調光するための当該照明への制御信号が挙げられる。
(9)クラス判定部14fは、入浴者Hが浴槽34内にいると共に異常ありと判定した場合には、浴槽34の排水栓を制御して、当該排水栓を自動で開放するようにしてもよい。この場合、浴槽34内で入浴者Hが気絶した場合でも、入浴者Hの沈溺を防止することが可能となる。
(10)図1に示されるように、リフレクタ35(例えば、鏡)を少し傾けて浴室30内に設置してもよい。図1において、リフレクタ35は、洗い場31のうちドア32から離れた側の壁面に、ドア32の方向を向くように取り付けられている。これにより、発信機11から発信された無線電波は、リフレクタ35によって反射されてドア32に向かっていく。また、リフレクタ35に向かってくる反射波も、リフレクタ35反射されて受信機12に向かっていく。そのため、通常は発信機11から発信される無線電波の死角になっている脱衣所も検知対象とすることが可能となる。
(11)浴室監視装置10において用いられる分類モデルは、複数の基準データが予め学習された学習済みモデルであってもよいし、解析データを当該学習済みモデルにリアルタイムで追加学習させた動的な分類モデルであってもよい。
(12)入浴者Hが浴室30内に存在していない場合(例えば、入浴者Hの退室後)においても引き続き浴室監視装置10が動作して、浴室30内を監視してもよい。具体的には、入浴者Hが浴室30内に存在していないにもかかわらず、シャワー33、水栓等から湯水が流れ続けていることを、機械学習により判定してもよい。この場合、シャワー33、水栓等の閉め忘れを報知することにより、湯水の浪費を抑制することが可能となる。
(13)ところで、図8に例示されるように、浴室30の湿度の変化に伴い、受信機12が受信する反射波の信号強度が変化することがある。これは、浴槽34に湯張りしてから時間が経過するにつれて浴室30内の水蒸気が増えて、水蒸気に電波が吸収されやすくなるので、浴室30の湿度が高くなるほど(時間が経つほど)、発信機11から発信されて受信機12が受信するまでの間に電波が減衰してしまうことに起因すると考えられる。なお、図8において、破線は湿度に対する信号強度の移動平均である。そこで、受信機12が受信した反射波の信号強度を湿度に応じて補正してもよい。具体的には、制御部14が機能ブロックとして補正部をさらに含んでおり、補正部は、浴室30内の湿度に応じた反射波の減衰量に基づいて、信号強度算出部14cにおいて算出される信号強度を補正してもよい。記憶部14aが記憶する分類モデルは、補正部による補正後の信号強度から求められる平均及び分散が対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により得られたものであってもよい。この場合、データ生成部14dにおいて求められる信号強度の平均及び分散が湿度の影響により実際よりも小さくなってしまうことが抑制される。そのため、解析データの分類がより正確に行われるので、入浴者Hの状況をより正確に検知することが可能となる。
ここで、当該減衰量の推定方法の一例としては、湿度と受信信号強度との関係のデータ(例えば、図8の破線参照)を予め取得して記憶部14aに記憶しておき、湿度計によって測定された浴室30内の湿度に対応する減衰量を当該データに基づいて算出してもよい。
あるいは、当該減衰量の推定方法の他の例としては、浴室30内の湿度は一般に時間経過に伴い変化する傾向にあるので、入浴者Hによる影響を排除した状態での信号強度の変化に基づいて反射波の減衰量を推定してもよい。すなわち、浴室30内に入浴者Hが存在していない場合の反射波から信号強度の時間変動を観測し、信号強度算出部14cではその信号強度の時間変動特性に基づいて、入浴者Hの入浴時における反射波の減衰量を推定してもよい。
(14)図9に示されるように、浴室監視装置10は、浴槽34の短手方向に沿って延びる浴室30の壁面に、ドア32と対面するように取り付けられていてもよい。この場合、発信機11から発信される無線電波の指向性を制御して、無線電波の伝播方向と交差する方向において複数の検知エリア(例えば、図9では2つの検知エリアR1,R2)を検知可能に発信機11が構成されていてもよい。指向性の制御方法としては、例えば、メカニカルスキャン方式、モノパルス方式、デジタルビームフォーミング方式などを採用しうる。なお、図9に示される例において、入浴者Hの存在場所以外の検知(入浴者Hの動作及び入浴者Hが危険な状態かの検知)は、上記の実施形態と同様に実行可能である。
(15)浴槽34の短手方向に沿って延びる浴室30の壁面に、ドア32と対面するように浴室監視装置10が取り付けられている場合、無線電波の指向性を制御せずに入浴者Hを検知してもよい。具体的には、図10(a)に示されるように、浴室監視装置10から浴室30の正面壁までの距離d3と、浴室監視装置10からドア32までの距離d4とが異なっていることを利用して、受信機12からの距離に応じた信号強度の変動に基づいて、入浴者Hの入退室及び存在場所を検知してもよい。以下に、検知方法の詳細について説明する。
浴室30に入浴者Hが存在していない場合には、ドア付近における反射波の信号強度が比較的小さい(図10(a)及び図10(b)参照)。一方、ドア32から入浴者Hが入室した場合、正面壁からの反射波の信号強度はほとんど変化しないが、ドア付近からの反射波の信号強度が大きくなる(図10(a)及び図10(c)の矢印Ar3参照)。従って、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、ドア付近からの反射波が所定の閾値TH3よりも大きくなったときに、入浴者Hが浴室30に入室したと判断してもよい。入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、ドア付近からの反射波が所定の閾値TH3以下となったときに、入浴者Hが浴室30から退室したと判断してもよい。
一方、入浴者Hが洗い場31から浴槽34に移動した場合、入浴者Hは浴室監視装置10の正面壁の手前側に位置し、浴室監視装置10から入浴者Hまでの距離d5は浴室監視装置10から正面壁までの距離d3よりも短い(図11(a)参照)。このとき、発信機11からの無線電波の一部が入浴者Hで反射して壁に到達しなくなる。そのため、壁からの反射波の信号強度が小さくなり(図11(a)及び図11(b)の矢印Ar4参照)、壁よりも手前側(受信機12側)からの反射波の信号強度が大きくなる(図11(b)の矢印Ar5参照)。従って、入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前側からの反射波が所定の閾値TH4よりも大きくなったときに、入浴者Hが洗い場31から浴槽34に移動したと判断してもよい。入退室判定部14gは、経時的に信号強度を取得し、壁よりも手前側からの反射波が所定の閾値TH4以下となったときに、入浴者Hが浴槽34から洗い場31に移動したと判断してもよい。
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る浴室監視装置(10)は、広帯域又は超広帯域の無線電波を浴室(30)内に向けて発信可能に構成された発信部(11)と、発信部(11)から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成された受信部(12)と、受信部(12)が受信した反射波に基づいて、浴室(30)内の複数のエリア(B1~B8)のそれぞれにおける信号強度を算出するように構成された信号強度算出部(14c)と、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、基準データが複数のクラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶するように構成された記憶部(14a)と、受信部(12)が解析対象の反射波を受信したときに、信号強度算出部(14c)によって算出される複数のエリアの信号強度から少なくとも2つのパラメータを求め、当該少なくとも2つのパラメータが対応付けられた解析データを生成するように構成された解析データ生成部(14d)と、解析データが複数のクラスのいずれに属するのかを判定するように構成されたクラス判定部(14f)とを備える。
ところで、入浴者の浴室への入退室、入浴者の動作、入浴者の静止、入浴者の浴室内における移動などに応じて、受信部における信号強度の距離スペクトルが変化する。そのため、浴室内における各エリアでの信号強度の少なくとも2つのパラメータ(例えば、各エリアでの信号強度の平均、分散など)が対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、浴室内における入浴者の状態を複数のクラスに分類できる。従って、このような分類モデルに基づいて解析データが属するクラスを判定することにより、入浴者の状態を正確に検知することが可能となる。
例2.例1の装置(10)において、記憶部(14a)は、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データに対する機械学習により、浴室(30)における入浴者(H)の位置を示す複数のクラス(C1a,C1b)のうちいずれか一つに基準データが分類された第1の分類モデル(M1)を記憶するように構成されていてもよい。この場合、入浴者が洗い場と浴槽とのどちらに存在しているのかを正確に検知することが可能となる。
例3.例1又は例2の装置(10)において、記憶部(14a)は、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データに対する機械学習により、浴室(30)内における入浴者(H)の状況を示す複数のクラス(C2a~C2c,C2a~C2c)のうちいずれか一つに基準データが分類された第2の分類モデル(M2,M3)を記憶するように構成されていてもよい。この場合、浴室内における入浴者の状況を正確に検知することが可能となる。
例4.例2の装置(10)において、記憶部(14a)は、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データに対する機械学習により、浴室(30)の洗い場(31)における入浴者(H)の状況を示す複数のクラス(C2a~C2c)のうちいずれか一つに基準データが分類された第2の分類モデル(M2)と、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データに対する機械学習により、浴室(30)の浴槽(34)における入浴者(H)の状況を示す複数のクラス(C3a~C3c)のうちいずれか一つに基準データが分類された第3の分類モデル(M3)とをさらに記憶するように構成されており、クラス判定部(14f)は、解析データを第1の分類モデル(M1)に入力して、解析データが第1の分類モデル(M1)のうちいずれのクラス(C1a,C1b)に属するのかを判定する第1の処理と、第1の処理において、解析データが属するクラス(C1a)に基づいて入浴者(H)が浴室(30)の洗い場(31)に存在すると判定された場合に、解析データを第2の分類モデル(M2)に入力して、解析データが第2の分類モデル(M2)のうちいずれのクラス(C2a~C2c)に属するのかを判定する第2の処理と、第1の処理において、解析データが属するクラス(C1b)に基づいて入浴者(H)が浴室(30)の浴槽(34)に存在すると判定された場合に、解析データを第3の分類モデル(M3)に入力して、解析データが第3の分類モデル(M3)のうちいずれのクラス(C3a~C3c)に属するのかを判定する第3の処理とを実行するように構成されていてもよい。この場合、まず、入浴者が洗い場と浴槽とのどちらに存在するのかを判定し、続いて、入浴者がどのような状況にあるのかを判定している。そのため、分類モデルが階層化され、それぞれの分類モデルがシンプルになる。したがって、入浴者の場所及び状況を同時に判定する場合と比較して、入浴者の状況をより正確に検知することが可能となる。
例5.例2の装置(10)において、記憶部(14a)は、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データに対する機械学習により、浴室(30)の洗い場(31)及び浴槽(34)における入浴者(H)の状況を示す複数のクラス(C2a~C2c,C3a~C3c)のうちいずれか一つに基準データが分類された第2の分類モデル(M2,M3)をさらに記憶するように構成されており、クラス判定部(14f)は、解析データを第1の分類モデル(M1)に入力して、解析データが第1の分類モデル(M1)のうちいずれのクラス(C1a,C1b)に属するのかを判定する処理と、解析データを第2の分類モデル(M2,M3)に入力して、解析データが第2の分類モデル(M2,M3)のうちいずれのクラス(C2a~C2c,C3a~C3c)に属するのかを判定する処理とを実行するように構成されていてもよい。この場合、入浴者が洗い場と浴槽とのどちらに存在するのかと、入浴者がどのような状況にあるのかとを同時または近接したタイミングで判定している。そのため、浴室内における入浴者の状況を正確に検知することが可能となる。
例6.例1~例5のいずれかの装置(10)は、受信部(12)が解析対象の反射波を受信したときに信号強度算出部(14c)によって算出される信号強度の時間変動に基づいて、入浴者(H)の浴室(30)への入退室を判定するように構成された入退室判定部(14g)をさらに備えていてもよい。入浴者が浴室内に入室した場合には受信部が入浴者からの反射波を受信するので、不在の場合と比較して、洗い場における信号強度が大きくなる。そのため、信号強度の比較により、極めて簡便に入浴者の入退室を判定することが可能となる。
例7.例1~例6のいずれかの装置(10)は、浴室(30)内の湿度に応じた反射波の減衰量に基づいて、信号強度算出部(14c)が算出する信号強度を補正する補正部をさらに備え、記憶部(14a)は、補正部による補正後における複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データを複数用いた機械学習により、基準データが複数のクラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを記憶しており、解析データ生成部(14d)は、受信部(12)が解析対象の反射波を受信したときに、補正部による補正後における複数のエリア(B1~B8)の信号強度から少なくとも2つのパラメータを求め、当該少なくとも2つのパラメータが対応付けられた解析データを生成するように構成されていてもよい。ところで、浴室内の湿度が高まるほど、浴室内を漂う水蒸気に無線電波が吸収されやすくなり、受信部が受信する反射波の信号強度が減衰する傾向にある。すなわち、減衰後の信号強度からパラメータ(例えば、平均、分散等)を求めると、これらの値が小さくなってしまう。この場合、解析データを分類モデルに適用したときに当該解析データが実際の状況とは異なるクラスに分類されてしまうことが懸念される。しかしながら、例6によれば、湿度による減衰量を補正した後の信号強度に基づいて解析データを生成している。そのため、解析データの分類がより正確に行われるので、入浴者の状況をより正確に検知することが可能となる。
例8.例7の装置(10)において、補正部は、浴室(30)内に入浴者(H)が存在していないときの反射波から信号強度算出部(14c)が算出する信号強度の時間変動特性に基づいて、入浴者の入浴時における反射波の減衰量を推定してもよい。
例9.例7の装置(10)は、浴室(30)内の湿度を測定するように構成された湿度センサを更に備え、補正部は、湿度センサによって測定された浴室(30)内の湿度に基づいて、反射波の減衰量を推定してもよい。
例10.例1~例9のいずれかの装置(10)は、クラス判定部(14f)による判定の結果、入浴者(H)が異常状態にある場合に、警報を報知するように構成された報知部を更に備えてもよい。ところで、異常状態には、例えば、入浴者が倒れ込んだり、浴槽内に沈んでしまったり、気絶等により静止状態を継続するといった重度の異常と、例えば、入浴者が浴槽内で眠りに入ってしまい半覚醒状態にあるような軽度の異常とが存在する。例9によれば、軽度の異常にある入浴者を警報によって覚醒状態とすることで、入浴者が重度な異常に移行してしまうことを抑制することが可能となる。
例11.例10の装置(10)は、ユーザからの入力操作を受け付けるように構成された入力部と、報知部が警報を報知したときに、入力部が受け付けた入力操作に基づいて、分類モデルを更新するように構成された更新部とを更に備えていてもよい。この場合、ユーザが入力部を通じて誤警報をフィードバックすることにより、分類モデルがアップデートされる。そのため、浴室内における入浴者の状況をより正確に検知することが可能となる。
例12.例1~例11のいずれかの装置(10)は、入浴者の状態に関するデータに基づいて生成された制御信号を他の機器に送信するように構成された通信部をさらに備えていてもよい。この場合、入浴者の状態(例えば、浴室内における入浴者の位置、入浴者の動作の有無、入浴者の異常状態など)に応じて、他の機器(例えば、給湯器、浴室内の照明など)の制御の最適化を図ることが可能となる。
例13.本開示の他の例に係る浴室監視方法は、広帯域又は超広帯域の無線電波を浴室(30)内に向けて発信する第1の工程と、無線電波の反射波に基づいて、浴室(30)内の複数のエリアのそれぞれにおける信号強度を算出する第2の工程と、複数のエリア(B1~B8)の信号強度から求められる少なくとも2つのパラメータが対応付けられた基準データを複数用いて機械学習を行い、基準データが複数のクラスのうちのいずれか一つに分類された分類モデルを作成する第3の工程と、解析対象の反射波に基づいて複数のエリア(B1~B8)の信号強度から少なくとも2つのパラメータを求め、当該少なくとも2つのパラメータが対応付けられた解析データを生成する第4の工程と、解析データが複数のクラスのいずれに属するのかを判定する第5の工程とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。