JP7320070B2 - 下地基板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、13族元素の窒化物又は酸化物の結晶成長のために用いられる下地基板及びその製造方法に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)を用いた半導体デバイスが実用化されている。例えば、サファイア基板上に、n型GaN層、InGaN層からなる量子井戸層とGaN層からなる障壁層とが交互積層された多重量子井戸層(MQW)、及びp型GaN層が順に積層形成されたものが量産化されている。
また、サファイアと同じ結晶構造であるコランダム相型のα-酸化ガリウム(α-Ga)の研究開発も盛んに行われている。実際、α-Gaは、そのバンドギャップが5.3eVと大きく、パワー半導体素子用材料として期待を集めている。例えば、特許文献1(特開2014-72533号公報)には、コランダム型結晶構造を有する下地基板とコランダム型結晶構造を有する半導体層、コランダム型結晶構造を有する絶縁膜とから形成される半導体装置に関して、サファイア基板上に、半導体層としてα-Gaを成膜した例が開示されている。また、特許文献2(特開2016-25256号公報)には、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含むn型半導体層と六方晶の結晶構造を有する無機化合物を主成分とするp型半導体層と電極を備えている半導体装置について、実施例において、c面サファイア基板上に、n型半導体層として準安定相であるコランダム構造を有するα-Gaを、p型半導体層として六方晶の結晶構造を有するα-Rh膜を形成して、ダイオードを作製することが開示されている。
ところで、これらの半導体デバイスにおいて、材料中の結晶欠陥が少ない方が、良好な特性を得ることができることが知られている。特に、パワー半導体は耐電圧特性に優れることが要求されるため、結晶欠陥を低減することが望ましい。これは、結晶欠陥の多寡によって絶縁破壊電界特性が左右されるためである。しかしながら、GaNやα-Gaでは、結晶欠陥の少ない単結晶基板が実用化されておらず、これらの材料とは格子定数が異なるサファイア基板上にヘテロエピタキシャル成長で形成されるのが一般的である。このため、サファイアとの格子定数の差に起因した結晶欠陥が生じやすい。例えば、サファイアc面上にα-Gaを成膜する場合、サファイア(α-Al)のa軸長(4.754Å)とα-Gaのa軸長(4.983Å)は約5%異なり、この差が結晶欠陥の主たる原因となっている。
このような半導体層との格子定数差を緩和し、結晶欠陥を低減する取り組みとして、α-Gaを成膜する際、サファイアとα-Ga層間にバッファ層を形成することで、欠陥が低減することが報告されている。例えば、非特許文献1(Applied Physics Express, vol.9, pages 071101-1~071101-4)には、サファイアとα-Ga層間にバッファ層として(Al,Ga1-x層(x=0.2~0.9)を導入することで、刃状転位とらせん転位が、それぞれ3×10/cm及び6×10/cmになるとされる例が示されている。また、非特許文献2には、α-Ga膜を成膜する基板として、サファイア上にバッファ層としてα-Cr膜を形成した基板が開示されている。
特開2014-72533号公報 特開2016-25256号公報
Riena Jinno et al., Reduction in edge dislocation density in corundum-structured α-Ga2O3 layers on sapphire substrates with quasi-graded α-(Al,Ga)2O3 buffer layers, Applied Physics Express, Japan, The Japan Society of Applied Physics, June 1, 2016, vol.9, pages 071101-1 to 071101-4 Giang T. Dang et al., Growth of α-Cr2O3 single crystals by mist CVD using ammonium dichromate, Applied Physics Express 11, 111101 (2018)
しかしながら、非特許文献1や非特許文献2に開示されるようなバッファ層を導入する手法は、高い絶縁破壊電界特性が必要なパワー半導体への適用には不十分であり、結晶欠陥をさらに低減することが望ましい。非特許文献2に開示されるようなα-Crをバッファ層として形成した場合においても、高い絶縁破壊電界特性が必要なパワー半導体への適用には不十分であり、結晶欠陥をさらに低減することが望ましい。バッファ層としてα-Cr膜を用いた場合、i)α-Crとα-Ga間に格子不整合があること、及びii)サファイア上に薄いバッファ層をヘテロエピタキシャル成長で形成した構成となっているため、バッファ層中に大きな結晶欠陥を含有することが結晶欠陥を十分低減できない理由と推定される。
また、このように下地基板上にヘテロエピタキシャル成長で半導体層を形成する際に、半導体層が下地基板から部分的に剥離する場合があった。部分的な剥離は、半導体層の反りやクラックの原因の一つとなる。特に厚肉の半導体層を形成する場合、部分的な剥離が生じやすい問題があり、剥離しづらい下地基板が望まれていた。
このような半導体層の結晶欠陥やクラックは、成膜に用いる下地基板の品質の影響が大きい。本発明者らは、今般、13族元素の窒化物又は酸化物の結晶成長のために用いられる側(配向層)の表面がα-Cr、又はα-Cr系固溶体を主成分とし、不純物としてMgを含有する材料で構成されることで、その上に形成した半導体層の結晶欠陥を少なく、かつ、成膜時に配向層と半導体層とが剥離しづらいものとすることができるとの知見を得た。また、配向層がα-Cr、又はα-Cr系固溶体に、不純物としてSi及び/又はCaを含有する材料で構成されることによっても、その上に形成した半導体層の結晶欠陥を少なく、かつ、成膜時に配向層と半導体層とが剥離しづらいものとすることができるとの知見を得た。とりわけα-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜の結晶成長において、上記の下地基板を用いることで結晶欠陥が少なく、成膜時に剥離しづらいα-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体層を形成することができるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、13族元素の窒化物又は酸化物の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板であって、その上に形成されることになる半導体膜の結晶欠陥を少なく、かつ、成膜時に剥離しづらいものとすることができる下地基板を提供することにある。
本発明の一態様によれば、α-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板であって、
前記配向層がα-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Mgを含有する材料で構成される、下地基板が提供される。
また、本発明の別の一態様によれば、α-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板であって、
前記配向層がα-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Si及び/又はCaを含有する材料で構成される、下地基板が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記下地基板の製造方法であって、
サファイア基板を準備する工程と、
前記サファイア基板の表面に、α-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Mgを含有する材料、あるいは熱処理によって上記組成となる材料を含む配向前駆体層を形成する工程と、
前記サファイア基板と前記配向前駆体層を1000℃以上の温度で熱処理する工程と、を有する、方法が提供される。
また、本発明のさらに他の態様によれば、前記下地基板の製造方法であって、
サファイア基板を準備する工程と、
前記サファイア基板の表面に、α-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Si及び/又はCaを含有する材料、あるいは熱処理によって上記組成となる材料を含む配向前駆体層を形成する工程と、
前記サファイア基板と前記配向前駆体層を1000℃以上の温度で熱処理する工程と、を有する、方法が提供される。
エアロゾルデポジション(AD)装置の構成を示す模式断面図である。 ミストCVD装置の構成を示す模式断面図である。 例1における複合下地基板の作製工程を模式的に示す図である。 例1における配向層裏面評価用試料の作製工程を模式的に示す図である。
下地基板
本発明による下地基板は、13族元素の窒化物又は酸化物の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板である。すなわち、この下地基板は、配向層上に13族元素の窒化物又は酸化物で構成される半導体層(特にα-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜)を結晶成長させるために用いられる。ここで、13族元素はIUPAC(国際純正・応用化学連合)が策定した周期律表による第13族元素のことであり、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)及びニホニウム(Nh)のいずれかである。また、13族元素の窒化物や酸化物は、典型的には、窒化ガリウム(GaN)とα-酸化ガリウム(α-Ga)である。
配向層は、略法線方向に結晶方位が概ね揃った構成を有している。このような構成とすることで、その上に、優れた品質、特に配向性に優れた半導体層を形成することが可能となる。すなわち、配向層上に半導体層を形成する際、半導体層の結晶方位は配向層の結晶方位に概ね倣ったものとなる。したがって、下地基板を配向層を備えた構成とすることで、半導体膜を配向膜とすることが可能となる。なお、配向層は多結晶やモザイク結晶(結晶方位が若干ずれた結晶の集合)であってもよく、単結晶であってもよい。配向層が多結晶の場合、ツイスト方向(すなわち基板表面に対して略垂直に方位付けられた基板法線を中心とした回転方向)も概ね揃った二軸配向層であることが好ましい。
配向層の結晶成長に用いられる側の表面(以下、単に「表面」又は「配向層表面」ということがある)は、α-Cr、又はα-Cr系固溶体(すなわち、α-Crと異種材料との固溶体)を主成分とし、不純物としてMgを含有する材料で構成されている。α-Cr又はα-Cr系固溶体を主成分とし、不純物としてMgを含有する材料で構成される配向層を形成することで、その上に形成されることになるα-Ga等の半導体層中の結晶欠陥を著しく低減し、配向層と半導体層とが剥離しづらいものとすることができる。半導体層中の結晶欠陥が低減する理由は不明だが、以下のように想定している。α-Cr又はα-Cr系固溶体はコランダム構造を有するが、13族元素の窒化物又は酸化物で構成される半導体層と完全には格子定数が合致しない。このため、α-Cr又はα-Cr系固溶体上に半導体層を形成する場合、格子ミスマッチによる応力が印加されるが、α-Cr中にMgを含むことで応力が緩和され、結晶欠陥が生じづらくなると考えられる。
半導体層が部分的に剥離しづらくなる理由も不明だが、上述したように成膜時の格子ミスマッチによる応力が緩和されることが理由の一つと推定される。また、配向層の表面を構成するα-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有することで、配向層表面の電気的な特性が変化し、半導体層との親和性が高まる効果も想定される。
また、別の態様として、配向層の結晶成長に用いられる側の表面は、α-Cr又はα-Cr系固溶体を主成分とし、不純物としてSi及び/又はCaを含有する材料で構成されている。このような配向層は、上述したα-Cr又はα-Cr系固溶体を主成分とし、不純物としてMgを含有する材料で構成された配向層と同様の効果が得られる。すなわち、α-Cr又はα-Cr系固溶体を主成分とし、不純物としてSi及び/又はCaを含有する材料で構成される配向層を形成することで、その上に形成されることになるα-Ga等の半導体層中の結晶欠陥を著しく低減し、配向層と半導体層とが剥離しづらいものとすることができる。この理由は不明だが、不純物としてMgを含む配向層と同様、格子ミスマッチによる応力の緩和や配向層表面の電気的特性の変化が作用しているものと想定される。
半導体層の部分的な剥離を抑制するという観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層中のMgの含有量は5×1015atoms/cm以上であることが好ましい。ただし、Mgの含有量が多すぎると半導体層表面にピットが生じることがある。ピットが生じる原因は不明だが、下地基板中にMg濃度が局所的に高い箇所ができ、半導体層が成膜しづらい領域となることが理由の1つと想定される。このため、半導体層のピット抑制の観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体中のMgの含有量は5×1019atoms/cm以下であることが好ましい。このため、半導体層の部分的な剥離抑制とピット抑制を両立する観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層中のMgの含有量は5×1015~5×1019atoms/cmが好ましい。
また、半導体層の部分的な剥離を抑制するという観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層中のSi及びCaの含有量は、Siが含まれる場合はSiの含有量が1×1016atoms/cm以上、Caが含まれる場合はCaの含有量が5×1015atoms/cm以上であることが好ましい。ただし、Si及び/又はCaの含有量が多すぎると半導体層表面にピットが生じることがある。ピットが生じる原因は不明だが、下地基板中にSi及び/又はCaの濃度が局所的に高い箇所ができ、半導体層が成膜しづらい領域となることが理由の1つと想定される。このため、半導体層のピット抑制の観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層中のSi及びCaの含有量は、Siが含まれる場合はSiの含有量が1×1018atoms/cm以下、Caが含まれる場合はCaの含有量が5×1017atoms/cm以下であることが好ましい。このため、半導体層の部分的な剥離抑制とピット抑制を両立する観点では、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層中のSi及びCaの含有量は、Siが含まれる場合はSiの含有量が1×1016~1×1018atoms/cm、Caが含まれる場合はCaの含有量が5×1015~5×1017atoms/cmであることが好ましい。以上のことより、α-Cr又はα-Cr系固溶体で構成される配向層は、
i)配向層中にSiのみが(例えばSIMS分析により)検出される場合、Siの含有量が1×1016~1×1018atoms/cm
ii)配向層中にCaのみが(例えばSIMS分析により)検出される場合、Caの含有量が5×1015~5×1017atoms/cm、又は、
iii)配向層中にSi及びCaが(例えばSIMS分析により)検出される場合、Siの含有量が1×1016~1×1018atoms/cm、及びCaの含有量が5×1015~5×1017atoms/cm
の関係を満たすことが好ましい。
また、配向層はα-Cr又はα-Cr系固溶体中にMgだけでなく、Si及び/又はCaを共に含有することが好ましい。その場合、配向層中のSiの含有量及びCaの含有量の各々が、Mgの含有量よりも少ない方が好ましい。このようにすることで、半導体層の部分的な剥離をさらに生じづらくさせることができる。
配向層中のMg、Si及びCaの含有量は公知の方法を用いて決定することができるが、例えばEDS、EPMA、D-SIMS、TOF-SIMS及びGD-MSが使用できる。この中でD-SIMSが好ましい。
本発明の下地基板の配向層の結晶成長に用いられる側の表面におけるコランダム型結晶構造の(104)面のX線ロッキングカーブ半値幅(以下、XRC半値幅という)は500arcsec.以下が好ましく、150arcsec.以下がより好ましく、100arcsec.以下がさらに好ましく、50arcsec.以下が特に好ましく、最も好ましくは40arcsec.以下である。
材料の結晶性を評価する手法として、コランダム型結晶構造の(006)面や(104)面のXRC測定を実施し、その半値幅で評価する方法が知られている。XRC半値幅は結晶欠陥やモザイク性、材料の反り量も反映する。特にコランダム型結晶構造の(104)面のXRC半値幅は、貫通刃状転位や貫通らせん転位等の各種欠陥、チルト(成長方位の結晶軸の傾き)やツイスト(表面面内の結晶軸の回転)が異なる領域(ドメイン)のモザイク性、及び反りの状態を全て反映するため、配向層の品質を評価手法として好適である。したがって、上記範囲内のXRC範囲幅であると、配向層は結晶欠陥が少なく、モザイク性が小さく(ドメインが少なく)、反りも小さいことになり、その結果、このような配向層上にα-Gaなどの半導体層を形成する場合、半導体層の内部に結晶欠陥やモザイク性が伝搬せず、反りも小さい高品位な半導体層が得られる。このように、配向層におけるコランダム型結晶構造の(104)面のXRC半値幅は小さいほど好ましく、測定に使用したX線源固有の半値幅と同等の値でも問題はないが、実際には30arcsec.以上が好ましい。
配向層の結晶成長に用いられる側の表面におけるコランダム型結晶構造の(104)面のXRCプロファイルの測定は、一般的なXRD装置を用いて行うことができる。例えば、XRD装置としてBruker-AXS製D8-DISCOVERを用いる場合、2θ、ω、χ、及びφを調整してコランダム型結晶構造の(104)面のピークが出るように軸立てを行った後、管電圧40kV、管電流40mA、アンチスキャッタリングスリット3mmで、ω=14.5~19.5°の範囲、ωステップ幅0.001°、及び計数時間0.5秒の条件で測定を行えばよい。この測定は、Ge(022)非対称反射モノクロメーターでCuKα線を平行単色光化した上で行うのが好ましい。そして、コランダム型結晶構造の(104)面のXRCプロファイルにおける半値幅は、XRD解析ソフトウェア(Bruker-AXS製、「LEPTOS」Ver4.03)を使用し、プロファイルのスムージングを行った後にピークサーチを行うことにより決定することができる。
また、配向層の結晶成長に用いられる側の表面におけるコランダム型結晶構造の(006)面のXRC半値幅も小さい方が望ましく、好ましくは50arcsec.以下、より好ましくは40arcsec.以下である。コランダム型結晶構造の(006)面のXRC半値幅は、測定に使用したX線源固有の半値幅と同等の値でも問題はないが、実際には30arcsec.以上が好ましい。コランダム型結晶構造の(006)面のXRC半値幅は、貫通らせん転位、チルト及び反り、ドメインの情報を反映する。このため、上記範囲内のXRC半値幅であると、結晶欠陥が少なく、モザイク性が小さく(ドメインが少なく)、反りも小さいことになり、その結果、このような配向層上に半導体層を形成する場合、半導体層の内部に結晶欠陥やドメインが伝搬せず、より高品位な半導体層が得られる。
配向層の結晶成長に用いられる側の表面に対する、コランダム型結晶構造の(006)面のXRCプロファイルの測定も、一般的なXRD装置を用いて行うことができる。例えば、XRD装置としてBruker-AXS製D8-DISCOVERを用いる場合の測定条件は、2θ、ω、χ、及びφを調整してコランダム型結晶構造の(006)面のピークが出るように軸立てを行った後、ω=18.0~22.0°とすること以外はコランダム型結晶構造の(104)面に関して前述した条件と同様であることができる。
本発明の下地基板は、配向層の結晶成長に用いられる側の表面の結晶欠陥密度が1.0×10/cm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×10/cm以下、さらに好ましくは4.0×10/cm以下、特に好ましくは1.0×10/cm以下である。このように結晶欠陥密度が著しく低い成膜面の場合、その上に形成するα-Gaなどの半導体層中に結晶欠陥伝搬せず、絶縁破壊電界特性に優れた高品位な半導体層を得ることができる。結晶欠陥密度の下限は特に限定がなく、低い方が好ましい。なお、本明細書において、結晶欠陥とは、貫通刃状転位、貫通らせん転位、貫通混合転位、及び基底面転位を指し、結晶欠陥密度は、各転位密度の合計のことである。なお、基底面転位は、半導体膜にオフ角がある場合に問題となるものであり、オフ角がない場合は半導体膜の表面まで露出しないため、問題とならない。例えば、貫通刃状転位を3×10/cm、貫通らせん転位を6×10/cm、貫通混合転位を4×10/cm含むとすれば、結晶欠陥密度は1.3×10/cmとなる。
配向層の結晶成長に用いられる側の表面の結晶欠陥密度は、平面TEM観察(プランビュー)により評価することができる。平面TEM観察を実施する場合、一般的な透過型電子顕微鏡を用いて行うことができる。例えば、透過型電子顕微鏡として日立製H-90001UHR-Iを用いる場合、加速電圧300kVでTEM観察を行えばよい。TEM観察に用いる試験片は、配向層の結晶成長に用いられる側の表面が含まれるようにサンプルを切り出し、測定視野4.1μm×3.1μmの領域が8箇所以上観察可能で、測定視野周辺の厚さが150nmとなるようにイオンミリングによって加工すればよい。こうして得られた試験片表面の平面TEM像から結晶欠陥密度を評価することができる。
配向層の全体がコランダム型結晶構造を有する材料で構成されるのが好ましい。こうすることで、配向層及び半導体層の結晶欠陥を低減することが可能となる。配向層はサファイア基板の表面に形成されることが望ましい。サファイア基板を構成するα-Alはコランダム型結晶構造を有しており、配向層をコランダム型結晶構造を有する材料で構成することで、その結晶構造をサファイア基板と同一とすることができ、その結果、結晶構造のミスマッチに起因する結晶欠陥が配向層中に生じるのが抑制される。この点、配向層中の結晶欠陥が低減されると、その上に形成される半導体層中の結晶欠陥も低減されるため好ましい。これは、配向層中に多量に結晶欠陥が存在すると、その上に形成される半導体層にも結晶欠陥が引き継がれ、その結果、半導体層中にも結晶欠陥が生じるためである。
配向層の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは40μm以上である。厚さの上限は特に限定されるものではないが、典型的には1000μm以下である。後述するような配向層単独の自立基板として使用する場合は、ハンドリング性の観点からさらに厚くてもよく、例えば1mm以上でもよいが、コスト的な観点では例えば2mm以下である。このように、配向層を厚くすることによっても、配向層表面の結晶欠陥を低減することが可能になる。サファイア基板上に配向層を形成する場合、サファイア基板と配向層は格子定数が若干異なり、その結果、これらの界面、すなわち配向層下部で結晶欠陥が生じやすい。しかし、配向層を厚くすることで、配向層表面においては、このような配向層下部で生じた結晶欠陥の影響を低減することができる。この理由は定かではないが、配向層下部で生じた結晶欠陥が厚い配向層の表面まで到達せず、消失するためと考えている。その上、配向層を厚くすることで、配向層上に半導体層を形成した後に、半導体層を剥離し、下地基板を再利用することが可能になるという効果も期待される。
サファイア基板に配向層を形成する場合、配向層内に、厚さ方向に組成が変化する傾斜組成領域が存在するのが好ましい。例えば、傾斜組成領域は、配向層の結晶成長に用いられる側の表面を構成する材料とα-Alとの固溶体で構成され、かつ、α-Alの固溶量がサファイア基板側から配向層表面側に向かって減少する傾斜組成となる領域(傾斜組成領域)を備えたものとすることが好ましい。傾斜組成領域はα-Al及びα-Crを含む固溶体で構成するのが好ましく、特に、α-Alとα-CrにSi及び/又はCaを含む固溶体で構成することが好ましい。すなわち、配向層はサファイア基板の表面に形成されることが望ましいが、サファイア基板と配向層間の格子定数(a軸長及び/又はc軸長)差による応力が緩和され、結晶欠陥の発生を抑制する効果がある。言い換えると、配向層の表面と裏面でa軸長及び/又はc軸長が異なることが好ましく、配向層の裏面より表面の方が大きなa軸長及び/又はc軸長となることが好ましい。このような構造とすることで、配向層は単結晶又はモザイク結晶若しくは二軸配向層であるにもかかわらず、格子定数が厚さ方向で変化する。このため、格子定数が異なる基板上に、応力が緩和された状態で、単結晶又はモザイク結晶若しくは二軸配向層を形成することができる。このような傾斜組成領域は、後述する下地基板の製造において、サファイア基板と配向前駆体層を1000℃以上の温度で熱処理することで形成することができる。すなわち、このような高温で熱処理すると、サファイア基板と配向前駆体層の界面で反応が生じて、サファイア基板中のAl成分が配向前駆体層中に拡散したり、配向前駆体層中の成分がサファイア基板中に拡散したりする。その結果、α-Alの固溶量が厚さ方向で変化する傾斜組成領域が形成される。傾斜組成領域は厚い方が格子定数差による応力が緩和されやすいため、厚い方が好ましい。したがって、傾斜組成領域の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上である。厚さの上限は、特に限定されるものではないが、典型的には1000μm以下である。また、1000℃以上の熱処理を行うことで、配向層表面に到達する結晶欠陥を効果的に低減することができる。この理由は定かではないが、高温での熱処理によって結晶欠陥同士の対消滅が促進されるためと考えている。
本発明のより好ましい態様によれば、配向層が、表面近くに位置する、厚さ方向に組成が安定している組成安定領域と、表面から遠くに位置する、厚さ方向に組成が変化する傾斜組成領域とを有する。組成安定領域とは、各金属元素の含有比率の変化が1.0at%未満となる領域であり、傾斜組成領域とは各金属元素の含有比率の変化が1.0at%以上となる領域を指す。例えば、組成安定領域と傾斜組成領域は以下のようにして決定することができる。まず、配向層の断面試料を準備し、配向層表面付近の任意の10箇所においてエネルギー分散型X線分析(EDS)を実施し、検出された金属元素の含有比率(at%)の平均値を算出する。次に、表面から厚さ方向に2μm離れた任意の10箇所においてEDS分析を実施し、厚さ2μm地点での含有比率(at%)の平均値を算出する。この時、表面と厚さ2μm地点での含有比率の平均値を比較し、検出された全ての金属元素のうち少なくとも1種の含有比率の差異が1.0at%未満か1.0at%以上かで、表面から厚さ2μmまでの領域に対し、組成安定領域と傾斜組成領域のいずれかに帰属できる。同様の方法で厚さ方向2μm毎に金属元素の含有比率の平均値を算出し、ある厚さ地点とそこから厚さ方向に2μm離れた地点間の金属元素の含有比率の平均値を比較することで、地点間の領域の帰属を決定することができる。例えば、表面から厚さ24μmの地点と厚さ26μmの地点の間の領域は、それぞれの地点での金属元素含有比率の平均値を算出して、比較することで帰属を決定できる。そして、例えば配向層にAlを含有する場合、傾斜組成領域においてAl濃度が組成安定領域に向かって厚さ方向に低下するのがより好ましい。この態様においては、コランダム型結晶構造を有する材料(例えば、傾斜組成領域)が、α-Crに不純物としてMgを含む材料、又はα-Al及びα-Crに不純物としてMgを含む材料の固溶体であるのが好ましい。また、他の態様においては、コランダム型結晶構造を有する材料(例えば、傾斜組成領域)が、α-Crに不純物としてSi及び/又はCaを含む材料、又はα-Al及びα-Crに不純物としてSi及び/又はCaを含む材料の固溶体であるのが好ましい。特に好ましくは、傾斜組成領域が、α-Crに不純物としてMgと、Mgより少量のSi及び/若しくはCaを含む材料、又はα-Al及びα-Crに不純物としてMgと、Mgより少量のSi及び/若しくはCaを含む材料の固溶体で構成される。
配向層を構成する材料は、下地基板の表面に対して配向性を有する限り特に限定はなく、例えばc軸配向又はa軸配向又はm軸配向である。こうすることで、下地基板上に半導体層を形成したときに、この半導体膜をc軸配向膜、a軸配向又はm軸配向とすることができる。
配向層はヘテロエピタキシャル成長層であるのが好ましい。例えば、配向層をサファイア基板上に成長させる場合、サファイア基板と配向層はいずれもコランダム型結晶構造を有するため、これらの格子定数が近接する場合には、熱処理中に配向層の結晶面がサファイア基板の結晶方位に倣って配列するエピタキシャル成長が起こる場合がある。このように配向層をエピタキシャル成長させることにより、サファイア基板の単結晶特有の高い結晶性と結晶配向を配向層に引き継ぐことが可能となる。
配向層の表面における算術平均粗さRaは、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.5nm以下、さらに好ましくは0.2nm以下である。このように、配向層の表面を平滑にすることで、その上に設けられる半導体層の結晶性がより向上すると考えられる。
下地基板は、その片面が、好ましくは20cm以上、より好ましくは70cm以上、さらに好ましくは170cm以上の面積を有する。このように下地基板を大面積化することにより、その上に形成する半導体層の大面積化が可能となる。したがって、一枚の半導体層から半導体素子を多数個取りすることが可能となり、製造コストの更なる低減が期待される。大きさの上限は特に限定されるものではないが、典型的には、片面700cm以下である。
本発明の下地基板は、配向層の表面と反対側(すなわち裏面側)に支持基板をさらに備えているのが好ましい。すなわち、本発明の下地基板は、支持基板と、支持基板上に設けられた配向層とを備えた下地基板であることができる。そして、支持基板はサファイア基板、Cr等のコランダム単結晶であるのが好ましく、サファイア基板が特に好ましい。支持基板をコランダム単結晶とすることで、配向層がヘテロエピタキシャル成長するための種結晶を兼ねることが可能となる。また、このようにコランダム単結晶を備えた構成とすることで、品質の優れた半導体層を得ることが可能となる。すなわち、コランダム単結晶は優れた機械的特性、熱的特性、化学的安定等の特徴を有している。特に、サファイアは、その熱伝導率が常温で42W/m・Kと高く、熱伝導性に優れている。したがって、サファイア基板を備えた下地基板とすることで、基板全体の熱伝導性を優れたものとすることが可能になる。その結果、下地基板上に半導体層を成膜する際、基板面内での温度分布が不均一になることが抑制され、均一な膜厚を有する半導体層を得ることが可能になると期待される。また、サファイア基板は大面積なものの入手が容易であり、全体のコストを下げることができるとともに、大面積の半導体層を得ることができるという効果もある。
支持基板として用いるサファイア基板は、いずれの方位面を有するものであってもよい。すなわち、a面、c面、r面、m面を有するものであってもよく、これらの面に対して所定のオフ角を有するものであってもよい。また、電気特性を調整するために、ドーパントを加えたサファイアであってもよい。このようなドーパントとしては公知のものが使用可能である。
本発明による下地基板の配向層を用いて、13族元素の窒化物又は酸化物で構成される半導体層を形成することが可能である。半導体層の形成手法は公知の手法が可能であるが、各種CVD法、HVPE法、昇華法、MBE法、PLD法及びスパッタリング法等の気相成膜法、水熱法、Naフラックス法等の液相成膜法のいずれかが好ましい。CVD法の例としては、熱CVD法、プラズマCVD法、ミストCVD法、MO(有機金属)CVD法等が挙げられる。これらの中で、13族元素の酸化物で構成される半導体層を形成するには、ミストCVD法、水熱法、又はHVPE法が特に好ましい。
本発明の下地基板は、配向層単独の自立基板の形態であってもよいし、サファイア基板等の支持基板を伴った下地基板の形態であってもよい。したがって、必要に応じて、配向層は最終的にサファイア基板等の支持基板から分離されてもよい。支持基板の分離は、公知の手法により行えばよく、特に限定されない。例えば、機械的衝撃を加えて配向層を分離する手法、熱を加えて熱応力を利用して配向層を分離する手法、超音波等の振動を加えて配向層を分離する手法、不要部分をエッチングして配向層を分離する手法、レーザーリフトオフにより配向層を分離する手法、切削や研磨等の機械的加工により配向層を分離する手法等が挙げられる。また、サファイア基板上に配向層をヘテロエピタキシャル成長させる形態の場合、サファイア基板を分離後、配向層を別の支持基板に設置してもよい。別の支持基板の材質は特に限定はないが、材料物性の観点から好適なものを選択すればよい。例えば熱伝導率の観点では、Cu等の金属基板や基板、SiC、AlN等のセラミックス基板等が挙げられる。
製造方法
本発明の下地基板は、(a)サファイア基板を準備し、(b)所定の配向前駆体層を作製し、(c)サファイア基板上で配向前駆体層を熱処理してその少なくともサファイア基板近くの部分を配向層に変換し、所望により(d)研削や研磨等の加工を施して配向層の表面を露出させることにより好ましく製造することができる。この配向前駆体層は熱処理により配向層となるものであり、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料、あるいは後述する熱処理によって、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料となる材料を含む。また、配向前駆体層はコランダム型結晶構造を有する材料やMgの他に、微量成分を含んでいてもよい。このような製造方法によれば、サファイア基板を種結晶として配向層の成長を促すことができる。すなわち、サファイア基板の単結晶特有の高い結晶性と結晶配向方位が配向層に引き継がれる。
また、上述した製造方法において、配向前駆体層は熱処理により配向層となるものであり、α-Cr又はα-Cr系固溶体にSi及び/又はCaを含有する材料、あるいは後述する熱処理によって、α-Cr又はα-Cr系固溶体にSi及び/又はCaを含有する材料となる材料を含む。また、配向前駆体層はコランダム型結晶構造を有する材料やSi及び/又はCaの他に、微量成分を含んでいてもよい。
以下では配向層に不純物としてMgを含む場合の製造方法について例示するが、Si及び/又はCaを含む場合、並びにMgと、Mgより少量のSi及び/又はCaを含む場合についても同様の製造方法を用いることができる。
(a)サファイア基板の準備
下地基板を作製するには、まず、サファイア基板を準備する。用いるサファイア基板は、いずれの方位面を有するものであってもよい。すなわち、a面、c面、r面、m面を有するものであってもよく、これらの面に対して所定のオフ角を有するものであってもよい。例えばc面サファイアを用いた場合、表面に対してc軸配向しているため、その上に、容易にc軸配向させた配向層をヘテロエピタキシャル成長させることが可能となる。また、電気特性を調整するために、ドーパントを加えたサファイア基板を用いることも可能である。このようなドーパントとしては公知のものが使用可能である。
(b)配向前駆体層の作製
α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料、あるいは熱処理によって、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料となる材料を含む配向前駆体層を作製する。配向前駆体層を形成する方法は特に限定されず、公知の手法が採用可能である。配向前駆体層を形成する方法の例としては、AD(エアロゾルデポジション)法、ゾルゲル法、水熱法、スパッタリング法、蒸着法、各種CVD(化学気相成長)法、HVPE法、PLD法、CVT(化学気相輸送)法、昇華法等が挙げられる。CVD法の例としては、熱CVD法、プラズマCVD法、ミストCVD法、MO(有機金属)CVD法等が挙げられる。あるいは、配向前駆体の成形体を予め作製し、この成形体をサファイア基板上に載置する手法であってもよい。このような成形体は、配向前駆体の材料を、テープ成形又はプレス成形等の手法で成形することで作製可能である。また、配向前駆体層として予め各種CVD法や焼結等で作製した多結晶体を使用し、サファイア基板上に載置する方法も用いることができる。
しかしながら、エアロゾルデポジション(AD)法、各種CVD法、又はスパッタリング法が好ましい。これらの方法を用いることで緻密な配向前駆体層を比較的短時間で形成することが可能となり、サファイア基板を種結晶としたヘテロエピタキシャル成長を生じさせることが容易になる。特に、AD法は高真空のプロセスを必要とせず、成膜速度も相対的に速いため、製造コストの面でも好ましい。スパッタリング法を用いる場合は、配向前駆体層と同材料のターゲットを用いて成膜することも可能であるが、金属ターゲットを使用し、酸素雰囲気下で成膜する反応性スパッタ法も用いることができる。予め作製した成形体をサファイア上に載置する手法も簡易な手法として好ましいが、配向前駆体層が緻密ではないため、後述する熱処理工程において緻密化するプロセスを必要とする。配向前駆体層として予め作製した多結晶体を用いる手法では、多結晶体を作製する工程と、サファイア基板上で熱処理する工程の二つが必要となる。また、多結晶体とサファイア基板の密着性を高めるため、多結晶体の表面を十分に平滑にしておく等の工夫も必要である。いずれの手法も公知の条件を用いることができるが、AD法を用いて配向前駆体層を直接形成する手法と、予め作製した成形体をサファイア基板上に載置する手法について、以下に説明する。
AD法は、微粒子や微粒子原料をガスと混合してエアロゾル化し、このエアロゾルをノズルから高速噴射して基板に衝突させ、被膜を形成する技術であり、常温で緻密化された被膜を形成できるという特徴を有している。このようなAD法で用いられる成膜装置(エアロゾルデポジション(AD)装置)の一例を図1に示す。図1に示される成膜装置20は、大気圧より低い気圧の雰囲気下で原料粉末を基板上に噴射するAD法に用いられる装置として構成されている。この成膜装置20は、原料成分を含む原料粉末のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、原料粉末をサファイア基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成する成膜部30とを備えている。エアロゾル生成部22は、原料粉末を収容し図示しないガスボンベからのキャリアガスの供給を受けてエアロゾルを生成するエアロゾル生成室23と、生成したエアロゾルを成膜部30へ供給する原料供給管24と、エアロゾル生成室23及びその中のエアロゾルに10~100Hzの振動数で振動が付与する加振器25とを備えている。成膜部30は、サファイア基板21にエアロゾルを噴射する成膜チャンバ32と、成膜チャンバ32の内部に配設されサファイア基板21を固定する基板ホルダ34と、基板ホルダ34をX軸-Y軸方向に移動するX-Yステージ33とを備えている。また、成膜部30は、先端にスリット37が形成されエアロゾルをサファイア基板21へ噴射する噴射ノズル36と、成膜チャンバ32を減圧する真空ポンプ38とを備えている。
AD法は、成膜条件によって膜厚や膜質等を制御できることが知られている。例えば、AD膜の形態は、原料粉末の基板への衝突速度、原料粉末の粒径、エアロゾル中の原料粉末の凝集状態、単位時間当たりの噴射量等に影響を受けやすい。原料粉末の基板への衝突速度は、成膜チャンバ32と噴射ノズル36内の差圧や、噴射ノズルの開口面積等に影響を受ける。適切な条件を用いない場合、被膜が圧粉体となったり気孔を生じたりする場合があるので、これらのファクターを適切に制御することが必要である。
配向前駆体層を予め作製した成形体を用いる場合、配向前駆体の原料粉末を成形して成形体を作製することができる。例えば、プレス成形を用いる場合、配向前駆体層はプレス成形体である。プレス成形体は、配向前駆体の原料粉末を公知の手法に基づきプレス成形することで作製可能であり、例えば、原料粉末を金型に入れ、好ましくは100~400kgf/cm、より好ましくは150~300kgf/cmの圧力でプレスすることにより作製すればよい。また、成形方法は特に限定されず、プレス成形の他、テープ成形、鋳込み成形、押出し成形、ドクターブレード法、及びこれらの任意の組合せを用いることができる。例えば、テープ成形を用いる場合、原料粉末にバインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等の添加物を適宜加えてスラリー化し、このスラリーをスリット状の細い吐出口を通過させることにより、シート状に吐出及び成形するのが好ましい。シート状に成形した成形体の厚さに限定はないが、ハンドリングの観点では5~500μmであるのが好ましい。また、厚い配向前駆体層が必要な場合はこのシート成形体を多数枚積み重ねて、所望の厚さとして使用すればよい。
これらの成形体はその後のサファイア基板上での熱処理によりサファイア基板近くの部分が配向層となるものである。上述したように、このような手法では後述する熱処理工程において成形体を焼結させ、緻密化する必要がある。このため、成形体はコランダム型結晶構造を有する又はもたらす材料の他に、焼結助剤等の微量成分を含んでいてもよい。
(c)サファイア基板上配向前駆体層の熱処理
配向前駆体層が形成されたサファイア基板を1000℃以上の温度で熱処理する。この熱処理により、配向前駆体層の少なくともサファイア基板近くの部分を緻密な配向層に変換することが可能となる。また、この熱処理により、配向層をヘテロエピタキシャル成長させることが可能となる。すなわち、配向層を、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有するコランダム材料で構成することで、熱処理時にサファイア基板を種結晶として結晶成長するヘテロエピタキシャル成長が生じる。その際、結晶の再配列が起こり、サファイア基板の結晶面に倣って結晶が配列する。この結果、サファイア基板と配向層の結晶軸を揃えることができる。例えば、c面サファイア基板を用いると、サファイア基板と配向層が下地基板の表面に対していずれもc軸配向した態様とすることが可能となる。その上、この熱処理により、配向層の一部に傾斜組成領域を形成することが可能となる。すなわち、熱処理の際に、サファイア基板と配向前駆体層の界面で反応が生じ、サファイア基板中のAl成分が配向前駆体層中に拡散する及び/又は配向前駆体層中の成分がサファイア基板中に拡散して、α-Alを含む固溶体で構成される傾斜組成領域が形成される。
なお、各種CVD法、スパッタリング法、PLD法、CVT法、昇華法等の方法では、1000℃以上の熱処理を経ることなくサファイア基板上にヘテロエピタキシャル成長を生じる場合があることが知られている。しかし、配向前駆体層はその作製時には配向していない状態、すなわち非晶質や無配向の多結晶であり、本熱処理工程時にサファイアを種結晶として結晶の再配列を生じさせることが好ましい。こうすることで、配向層表面に到達する結晶欠陥を効果的に低減することができる。この理由は定かではないが、配向層下部で生じた結晶欠陥が対消滅しやすいためではないかと考えている。
熱処理は、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料が得られ、サファイア基板を種としたヘテロエピタキシャル成長が生じるかぎり特に限定されず、管状炉やホットプレート等、公知の熱処理炉で実施することができる。また、これらの常圧(プレスレス)での熱処理だけでなく、ホットプレスやHIP等の加圧熱処理や、常圧熱処理と加圧熱処理の組み合わせも用いることができる。熱処理条件は、配向層に用いる材料によって適宜選択することができる。例えば、熱処理の雰囲気は、大気、真空、窒素及び不活性ガス雰囲気から選択することができる。好ましい熱処理温度も配向層に用いる材料によって変わるが、例えば1000~2000℃が好ましく、1200~2000℃がさらに好ましい。熱処理温度や保持時間はヘテロエピタキシャル成長で生じる配向層の厚さやサファイア基板との拡散で形成される傾斜組成領域の厚さと関係しており、材料の種類、狙いとする配向層、傾斜組成領域の厚さ等によって適宜調整することができる。ただし、予め作製した成形体を配向前駆体層として用いる場合、熱処理中に焼結して緻密化させる必要があり、高温での常圧焼成、ホットプレス、HIP、又はそれらの組み合わせが好適である。例えば、ホットプレスを用いる場合、面圧は50kgf/cm以上が好ましく、より好ましくは100kgf/cm以上、特に好ましくは200kgf/cm以上であり、上限は特に限定されない。また、焼成温度も、焼結及び緻密化並びにヘテロエピタキシャル成長が生じる限り、特に限定されないが、1000℃以上が好ましく、1200℃以上がさらに好ましく、1400℃以上がさらに好ましく、1600℃以上が特に好ましい。焼成雰囲気も大気、真空、窒素及び不活性ガス雰囲気から選択することができる。モールド等の焼成冶具は黒鉛製やアルミナ製のもの等が利用できる。
(d)配向層表面の露出
熱処理によりサファイア基板近くに形成される配向層の上には、配向前駆体層又は配向性に劣る若しくは無配向の表面層が存在又は残留しうる。この場合、配向前駆体層に由来する側の面に研削や研磨等の加工を施して配向層の表面を露出させるのが好ましい。こうすることで配向層の表面に優れた配向性を有する材料が露出することになるため、その上に効果的に半導体層をエピタキシャル成長させることができる。配向前駆体層や表面層を除去する手法は特に限定されるものではないが、例えば、研削及び研磨する手法やイオンビームミリングする手法を挙げることができる。配向層の表面の研磨は、砥粒を用いたラップ加工や化学機械研磨(CMP)により行われるのが好ましい。このようにして、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料を配向層とした下地基板を作製することができる。なお、下地基板に支持基板を含まないもの、すなわち、α-Cr又はα-Cr系固溶体にMgを含有する材料で構成された配向層の自立基板を作製する場合、サファイア等の支持基板兼種結晶上に厚肉の配向層を形成した後、研削等によって支持基板とすることで自立した配向層を得ることができる。
半導体層
本発明の下地基板を用いて、13族元素の窒化物又は酸化物からなる半導体層を形成することが可能である。半導体層の形成手法は公知の手法が可能であるが、各種CVD法、HVPE法、昇華法、MBE法、PLD法及びスパッタリング法等の気相成膜法、水熱法、Naフラックス法等の液相成膜法のいずれかが好ましく、ミストCVD法、水熱法、又はHVPE法が特に好ましい。ミストCVD法について以下に説明する。
ミストCVD法は、原料溶液を霧化又は液滴化してミスト又は液滴を発生させ、キャリアガスを用いてミスト又は液滴を基板を備えた成膜室に搬送し、成膜室内でミスト又は液滴を熱分解及び化学反応させて基板上に膜を形成及び成長させる手法であり、真空プロセスを必要とせず、短時間で大量のサンプルを作製することができる。ここで、図2にミストCVD装置の一例を示す。図2に示されるミストCVD装置1は、基板9を載置するサセプタ10と、希釈ガス源2aと、キャリアガス源2bと、希釈ガス源2aから送り出される希釈ガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス源2bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室となる石英管7と、石英管7の周辺部に設置されたヒーター8と、排気口11を備えている。サセプタ10は石英からなり、基板9を載置する面が水平面から傾斜している。
ミストCVD法に用いる原料溶液4aとしては、13族元素の窒化物又は酸化物からなる半導体層が得られる溶液であれば、限定されるものではないが、例えば、Ga及び/又はGaと固溶体を形成する金属の有機金属錯体やハロゲン化物を溶媒に溶解させたものが挙げられる。有機金属錯体の例としては、アセチルアセトナート錯体が挙げられる。また、半導体層にドーパントを加える場合には、原料溶液にドーパント成分の溶液を加えてもよい。さらに、原料溶液には塩酸等の添加剤を加えてもよい。溶媒としては水やアルコール等を使用することができる。
次に、得られた原料溶液4aを霧化又は液滴化してミスト又は液滴4bを発生させる。霧化又は液滴化する方法の好ましい例としては、超音波振動子6を用いて原料溶液4aを振動させる手法が挙げられる。その後、得られたミスト又は液滴4bを、キャリアガスを用いて成膜室に搬送する。キャリアガスは特に限定されるものではないが、酸素、オゾン、窒素等の不活性ガス、及び水素等の還元ガスの一種又は二種以上を用いることができる。
成膜室(石英管7)には基板9が備えられている。成膜室に搬送されたミスト又は液滴4bは、そこで熱分解及び化学反応されて、基板9上に膜を形成する。反応温度は原料溶液の種類に応じて異なるが、好ましくは300~800℃、より好ましくは400~700℃である。また、成膜室内の雰囲気は、所望の半導体膜が得られる限り特に限定されるものではなく、酸素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空又は還元雰囲気であってよいが、大気雰囲気が好ましい。
このようにして下地基板を用いて作製した半導体層は、典型的には、表面の結晶欠陥密度が1.0×10/cm以下と著しく低いものである。このように結晶欠陥密度が著しく低い半導体層は、絶縁破壊電界特性に優れ、パワー半導体の用途に適している。なお、半導体層の結晶欠陥密度は、一般的な透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた、平面TEM観察(プランビュー)、又は断面TEM観察にて評価することができる。例えば、透過型電子顕微鏡に日立製H-90001UHR-Iを用いてプランビュー観察する場合、加速電圧300kVで行えばよい。試験片は膜表面が含まれるように切り出し、測定視野50μm×50μm、測定視野周辺の試験片厚さが150nmとなるようにイオンミリングによって加工すればよい。このような試験片を10個準備し、計10視野のTEM像を観察することで、精度よく結晶欠陥密度を評価することができる。結晶欠陥密度は、好ましくは1.0×10/cm以下、より好ましくは4.0×10/cm以下であり、特に下限はない。
本発明者の知る限り、このように結晶欠陥密度が低く、部分的な剥離が抑制された半導体層を得る技術は従来知られていない。例えば、非特許文献1には、サファイアとα-Ga層間にバッファ層として(Al、Ga1-x層(x=0.2~0.9)を導入した基板を用いてα-Ga層を成膜することが開示されているが、得られたα-Ga層は、その刃状転位とらせん転位の密度が、それぞれ3×10/cm及び6×10/cmである。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
(1)複合下地基板の作製
(1a)配向前駆体層の作製
原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO粉体をモル比100:5で秤量し、湿式混合した粉末を用いた。種基板としてサファイア(直径50.8mm(2インチ)、厚さ1.0mm、c面、オフ角0.3°)を用いて、図1に示されるエアロゾルデポジション(AD)装置20により種基板(サファイア基板)上にAD膜(配向前駆体層)を形成した。エアロゾルデポジション(AD)装置20の構成については前述したとおりである。
AD成膜条件は以下のとおりとした。すなわち、キャリアガスはArとし、長辺5mm×短辺0.3mmのスリットが形成されたセラミックス製のノズルを用いた。ノズルのスキャン条件は、0.5mm/sのスキャン速度で、スリットの長辺に対して垂直かつ進む方向に55mm移動、スリットの長辺方向に5mm移動、スリットの長辺に対して垂直かつ戻る方向に55mm移動、スリットの長辺方向かつ初期位置とは反対方向に5mm移動、とのスキャンを繰り返し、スリットの長辺方向に初期位置から55mm移動した時点で、それまでとは逆方向にスキャンを行い、初期位置まで戻るサイクルを1サイクルとし、これを400サイクル繰り返した。室温での1サイクルの成膜において、搬送ガスの設定圧力を0.06MPa、流量を9L/min、チャンバ内圧力を100Pa以下に調整した。このようにして形成したAD膜(配向前駆体層)は厚さ約100μmであった。
(1b)配向前駆体層の熱処理
AD膜を形成したサファイア基板をAD装置から取り出し、窒素雰囲気中で1700℃にて4時間アニールした。
(1c)研削及び研磨
得られた基板をセラミックスの定盤に固定し、AD膜に由来する側の面を配向層が露出するまで、#2000までの番手の砥石を用いて研削した後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面をさらに平滑化した。このとき、ダイヤモンド砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつラップ加工を行うことで、板面の平坦性を高めた。その後、コロイダルシリカを用いた化学機械研磨(CMP)により鏡面仕上げを施し、サファイア基板上に配向層を備えた複合下地基板を得た。加工後の配向層表面の算術平均粗さRaは0.1nm、研削及び研磨量は50μmであり、研磨後の複合下地基板の厚さは1.05mmとなった。なお、AD膜を形成した側の面を「表面」と称することとする。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
エネルギー分散型X線分析器(EDS)を用いて複合下地基板表面の組成分析を行った。その結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、複合下地基板表面の組成分析を行った。このD-SIMS分析の諸条件は以下のとおりとした。
<D-SIMS分析条件(Ca及びMgを検出する場合)>
・注目元素:Ca、Mg
・装置:CAMECA社製 IMS-6f
・一次イオン種:O 2+
・一次イオン加速エネルギー:8keV
・二次イオン極性:Positive
・質量分解能:High
・電荷補償:Pt coat、E-gun
<D-SIMS分析条件(Siを検出する場合)>
・注目元素:Si
・装置:CAMECA社製 IMS-7f
・一次イオン種:Cs
・一次イオン加速エネルギー:14.5keV
・二次イオン極性:Negative
・質量分解能:High
・電荷補償:Pt coat,E-gun
測定の結果、Mgの検出値は4.3×1019atoms/cmであり、Si及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
電子線後方散乱回折装置(EBSD)(オックスフォード・インストゥルメンツ社製Nordlys Nano)を取り付けたSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、SU-5000)にてCr-Tiの酸化物層で構成される複合下地基板表面の逆極点図方位マッピングを500μm×500μmの視野で行った。このEBSD測定の諸条件は以下のとおりとした。
<EBSD測定条件>
・加速電圧:15kV
・スポット強度:70
・ワーキングディスタンス:22.5mm
・ステップサイズ:0.5μm
・試料傾斜角:70°
・測定プログラム:Aztec(version 3.3)
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
多機能高分解能X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、D8 DISCOVER)を用いて配向層の結晶成長に用いられる側の表面の(104)面のXRC測定を行った。このXRC測定の諸条件は以下のとおりとした。
<XRD測定条件>
・管電圧:40kV
・管電流:40mA
・検出器:Tripple Ge(220) Analyzer
・Ge(022)非対称反射モノクロメーターにて平行単色光化(半値幅28秒)したCuKα線
・ステップ幅:0.001°
・スキャンスピード:0.5秒/ステップ
実際には2θ、ω、χ及びφを調整してコランダム型結晶構造の(104)面のピークが出るように軸立てを行った後、アンチスキャッタリングスリット3mmで、ω=14.5~19.5°の範囲を測定した。得られたコランダム型結晶構造の(104)面のXRCプロファイルの半値幅は、XRD解析ソフトウェア(Bruker-AXS製、「LEPTOS」Ver4.03)を使用し、プロファイルのスムージングを行った後にピークサーチを行うことにより決定した。その結果、配向層の結晶成長に用いられる側の表面のコランダム型結晶構造の(104)面XRCプロファイルの半値幅は39arcsec.であった。
また、配向層の結晶成長に用いられる側の表面のコランダム型結晶構造の(006)面のXRC測定も行った。XRD装置としてはBruker-AXS製D8-DISCOVERを使用し、2θ、ω、χ、及びφを調整してコランダム型結晶構造の(006)面のピークが出るように軸立てを行った後、ω=18.0~22.0°として測定した。その他の条件や解析方法はコランダム型結晶構造の(104)面のXRC測定と同条件で行った。その結果、配向層の結晶成長に用いられる側の表面のコランダム型結晶構造の(006)面XRCプロファイルの半値幅は33arcsec.であった。
(3)ミストCVD法によるα-Ga膜の形成
(3a)ミストCVD装置
図2に示されるミストCVD装置1を用いて以下のようにしてα-Ga膜を形成した。
(3b)原料溶液の調製
ガリウムアセチルアセトナート濃度が0.07mol/Lの水溶液を調製した。この際、36%塩酸を体積比で1.5%を含有させ、原料溶液4aとした。
(3c)成膜準備
次に、得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。上記(1)で作製した複合下地基板を基板9としてサセプタ10上に設置させ、ヒーター8を作動させて石英管7内の温度を480℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a及び3bを開いて希釈ガス源2a及びキャリアガス源2bから希釈ガス及びキャリアガスを石英管7内に供給し、石英管7の雰囲気を希釈ガス及びキャリアガスで十分に置換した後、希釈ガスの流量を0.7L/min、キャリアガスの流量を1L/minにそれぞれ調節した。希釈ガス及びキャリアガスとしては、窒素ガスを用いた。
(3d)膜形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aをミスト化させて、ミスト4bを生成した。このミスト4bが、希釈ガス及びキャリアガスによって成膜室である石英管7内に導入され、石英管7内で反応して、基板9の表面でのCVD反応によって基板9上に膜を形成させた。こうして、結晶性半導体膜(半導体層)を得た。成膜時間は300分とした。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
電子線後方散乱回折装置(EBSD)(オックスフォード・インストゥルメンツ社製Nordlys Nano)を取り付けたSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、SU-5000)にてGa酸化物で構成される成膜側の膜表面の逆極点図方位マッピングを500μm×500μmの視野で行った。このEBSD測定の諸条件は以下のとおりとした。
<EBSD測定条件>
・加速電圧:15kV
・スポット強度:70
・ワーキングディスタンス:22.5mm
・ステップサイズ:0.5μm
・試料傾斜角:70°
・測定プログラム:Aztec(version 3.3)
得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の結晶欠陥密度を評価するため、平面TEM観察(プランビュー)を行った。成膜側の表面が含まれるように切り出し、測定視野周辺の試料厚さ(T)が150nmとなるようにイオンミリングによって加工した。得られた切片に対し、透過型電子顕微鏡(日立製H-90001UHR-I)を使用して加速電圧300kVでTEM観察を行い、結晶欠陥密度を評価した。実際には測定視野4.1μm×3.1μmのTEM像を8視野観察し、その中で認められた欠陥の数を算出した。その結果、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡(ニコン製、ECLIPSE LV150N)を用いて、接眼レンズを10倍、対物レンズを5倍とし、偏光・微分干渉モードにて膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例2
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO粉体をモル比100:0.02で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mgが検出され、Si及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例3
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のSiO紛体をモル比100:2で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr、Oのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Siが検出され、Mg及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例4
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のSiO紛体をモル比100:0.03で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Siが検出され、Mg及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例5
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のCaCO紛体をモル比100:2で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Caが検出され、Mg及びSiは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例6
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のCaCO紛体をモル比100:0.03で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Caが検出され、Mg及びSiは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例7
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO紛体と市販のSiO紛体と市販のCaCO粉体をモル比100:0.5:0.3:0.2で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mg、Si及びCaが検出された。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例8
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO粉体をモル比100:6で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mgが検出され、Si及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、わずかにピットが観察された。
例9
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO粉体をモル比100:0.01で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mgが検出され、Si及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と比較して基板外周部の剥離箇所が多かったものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例10
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のSiO紛体をモル比100:3で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Siが検出され、Mg及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、わずかにピットが観察された。
例11
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のSiO紛体をモル比100:0.01で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Siが検出され、Mg及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と比較して基板外周部の剥離箇所が多かったものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例12
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のCaCO紛体をモル比100:3で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Caが検出され、Mg及びSiは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、わずかにピットが観察された。
例13
上記(1)にて、原料粉体として市販のCr粉体と市販のCaCO紛体をモル比100:0.01で秤量し、湿式混合した粉末を用いたこと以外は例1と同様にして複合下地基板の作製、複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価を行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Caが検出され、Mg、Siは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と比較して基板外周部の剥離箇所が多かったものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例14
(1)複合下地基板の作製
(1a)配向前駆体層の作製
原料粉体として市販のCr粉体と市販のMgO紛体をモル比100:0.5で秤量し、湿式混合した混合粉末を用いた。種基板としてサファイア(直径50.8mm(2インチ)、厚さ1.0mm、c面、オフ角0.5°)を用いて、図1に示されるエアロゾルデポジション(AD)装置20により種基板(サファイア基板)上にAD膜(配向前駆体層)を形成した。エアロゾルデポジション(AD)装置20の構成については前述したとおりである。
AD成膜条件は以下のとおりとした。すなわち、キャリアガスはArとし、長辺5mm×短辺0.3mmのスリットが形成されたセラミックス製のノズルを用いた。ノズルのスキャン条件は、0.5mm/sのスキャン速度で、スリットの長辺に対して垂直かつ進む方向に55mm移動、スリットの長辺方向に5mm移動、スリットの長辺に対して垂直かつ戻る方向に55mm移動、スリットの長辺方向かつ初期位置とは反対方向に5mm移動、とのスキャンを繰り返し、スリットの長辺方向に初期位置から55mm移動した時点で、それまでとは逆方向にスキャンを行い、初期位置まで戻るサイクルを1サイクルとし、これを400サイクル繰り返した。室温での1サイクルの成膜において、搬送ガスの設定圧力を0.07MPa、流量を9L/min、チャンバ内圧力を100Pa以下に調整した。このようにして形成したAD膜(配向前駆体層)は厚さ約100μmであった。
(1b)配向前駆体層の熱処理
AD膜を形成したサファイア基板をAD装置から取り出し、窒素雰囲気中で1680℃にて4時間アニールした。
(1c)研削及び研磨
得られた基板をセラミックスの定盤に固定し、AD膜に由来する側の面を配向層が露出するまで、#2000までの番手の砥石を用いて研削した後、ダイヤモンド砥粒を用いたラップ加工により、板面をさらに平滑化した。このとき、ダイヤモンド砥粒のサイズを3μmから0.5μmまで段階的に小さくしつつラップ加工を行うことで、板面の平坦性を高めた。その後、コロイダルシリカを用いた化学機械研磨(CMP)により鏡面仕上げを施し、サファイア基板上に配向層を備えた複合下地基板を得た。加工後の配向層表面の算術平均粗さRaは0.1nm、研削及び研磨量は50μmであった。
これらのAD成膜、アニール、並びに研削及び研磨加工の工程を、計10回繰り返した。なお、AD膜を形成した側の面を「表面」と称することとする。この結果、最後の研磨完了後の厚さは1.50mmとなった。
複合下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価は例1と同様にして行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
複合下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
複合下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mgが検出され、Si及びCaは検出限界以下であった。検出された元素の検出値を表1に示す。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が観察されず、結晶欠陥密度は9.9×10/cm未満であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、例1と同様に基板外周部にわずかに剥離が見られたものの、全体的な剥離は認められなかった。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
例15(比較)
(1)複合下地基板の作製
図2に示すミストCVD装置1を用いて、サファイア基板(直径50.8mm(2インチ)、厚さ0.43mm、c面、オフ角0.3°)表面に以下のようにしてα-Cr膜を形成した。
(1a)原料溶液の調製
二クロム酸アンモニウム濃度が0.1mol/Lの水溶液を調製し、原料溶液4aとした。
(1b)成膜準備
得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。サファイア基板を基板9としてサセプタ10上に設置させ、ヒーター8を作動させて石英管7内の温度を410℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a及び3bを開いて希釈ガス源2a及びキャリアガス源2bから希釈ガス及びキャリアガスをそれぞれ石英管7内に供給し、石英管7の雰囲気を希釈ガス及びキャリアガスで十分に置換した後、希釈ガスの流量を2.2L/min、キャリアガスの流量を4.8L/minにそれぞれ調節した。希釈ガス及びキャリアガスとしては、窒素ガスを用いた。
(1c)膜形成
超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aをミスト化させて、ミスト4bを生成した。このミスト4bが、希釈ガス及びキャリアガスによって成膜室である石英管7内に導入され、石英管7内で反応して、基板9の表面でのCVD反応によって基板9上に膜を30分間形成し、酸化物堆積層を得た。
下地基板の各種評価、α-Ga膜の形成及び半導体膜の各種評価は例1と同様にして行った。
(2)複合下地基板の評価
(2a)表面EDS
下地基板の表面EDSの結果、Cr及びOのみが検出された。
(2b)D-SIMS分析
下地基板表面のD-SIMS測定の結果、Mg、Si及びCaは検出限界以下であった。
(2c)表面EBSD
得られた逆極点図方位マッピングから、複合下地基板表面は基板法線方向にc軸配向すると共に、面内方向にも配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有する配向層であることが分かった。また、この配向層は種基板として用いたサファイア基板と同じc軸配向をしていることから、サファイア基板からのヘテロエピタキシャル成長層であることが分かった。
(2d)XRC
複合下地基板のXRC測定を行い、得られた半値幅の結果を表1に示す。
(4)半導体膜の評価
(4a)表面EDS
ミストCVD法にて得られた膜の成膜側の膜表面のEDS測定を行った結果、Ga及びOのみが検出され、得られた膜はGa酸化物であることが分かった。
(4b)EBSD
膜表面のEBSD測定で得られた逆極点図方位マッピングから、Ga酸化物膜は基板法線方向にc軸配向、面内も配向した二軸配向のコランダム型結晶構造を有することが分かった。これらより、α-Gaで構成される配向膜が形成されていることが示された。
(4c)平面TEM
α-Ga膜の平面TEM観察より、得られたTEM像内には結晶欠陥が多数観察され、結晶欠陥密度は少なくとも1.1×1011/cm以上であることが分かった。
(4d)剥離評価
目視にてα-Ga膜の剥離有無を確認したところ、α-Ga膜は部分的に割れて剥離している箇所が認められた。
(4e)半導体膜の表面評価
工業用顕微鏡で膜表面全体を観察したところ、ピットは観察されなかった。
Figure 0007320070000001

Claims (10)

  1. α-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板であって、
    前記配向層がα-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Mgを含有する材料で構成されており、
    前記配向層中のMgの含有量が5×1015~5×1019atoms/cmである、下地基板。
  2. α-Ga、又はα-Ga系固溶体で構成される半導体膜の結晶成長のために用いられる配向層を備えた下地基板であって、
    前記配向層がα-Cr、又はα-Cr系固溶体に、Si及び/又はCaを含有する材料で構成されており、
    前記配向層が、
    i)Siの含有量が1×1016~1×1018atoms/cm
    ii)Caの含有量が5×1015~5×1017atoms/cm、又は、
    iii)Siの含有量が1×1016~1×1018atoms/cm、及びCaの含有量が5×1015~5×1017atoms/cm
    の関係を満たす、下地基板。
  3. 前記材料中に、Si及び/又はCaを含有する、請求項1に記載の下地基板。
  4. 前記配向層中のSiの含有量及びCaの含有量の各々が、Mgの含有量よりも少ない、請求項3に記載の下地基板。
  5. 前記配向層の結晶成長に用いられる側の表面におけるコランダム型結晶構造の(104)面のX線ロッキングカーブ半値幅が500arcsec.以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の下地基板。
  6. 前記配向層の結晶成長に用いられる側の表面におけるコランダム型結晶構造の(006)面のX線ロッキングカーブ半値幅が50arcsec.以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の下地基板。
  7. 前記配向層の結晶成長に用いられる側の表面の結晶欠陥密度が1×10/cm以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の下地基板。
  8. 前記配向層の結晶成長に用いられる側の表面と反対側に支持基板をさらに備えた、請求項1~7のいずれか一項に記載の下地基板。
  9. 前記支持基板がサファイア基板である、請求項8に記載の下地基板。
  10. 前記配向層がサファイア基板のヘテロエピタキシャル成長層である、請求項1~9のいずれか一項に記載の下地基板。
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