JP7318310B2 - 誘電体フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体フィルムに関し、さらに詳しくは、ポリマーと無機フィラーとの複合体からなる誘電体フィルムに関する。
コンデンサは、2枚の電極の間に誘電体を挿入したものであり、その静電容量は、誘電体の比誘電率に比例する。コンデンサに使用される誘電体としては、例えば、セラミックス、プラスチック、絶縁油、マイカなどが知られている。特に、BaTiO3は、比誘電率が大きいため、小型・大容量のコンデンサの誘電体には、主としてBaTiO3が用いられている。
BaTiO3は、常温(25℃)では正方晶であるが、結晶構造が正方晶(強誘電体)から立方晶(常誘電体)に変化するキュリー点(約125℃)を持ち、キュリー点では比誘電率が最も高くなる。そのため、BaTiO3を用いたコンデンサは、キュリー点近傍において静電容量が大きく変化する。しかし、BaTiO3からなる緻密な焼結体を得るためには、1300℃前後の高い焼結温度を必要とする。さらに、BaTiO3は、加工性に乏しいために、任意の形状や複雑な形状に加工するのが難しい。
一方、ポリプロピレンなどのポリマーからなるプラスチックフィルムは、フィルムコンデンサの誘電体として用いられている。プラスチックフィルムは、可撓性があるために、容易にロール状に巻き取ることができる。しかしながら、ポリマーは、比誘電率が小さいために、コンデンサ容量を大きくするためには、巻回数を多くする必要がある。そのため、フィルムコンデンサは、積層セラミックチップコンデンサに比べて大型化するという問題がある。
これに対し、可撓性のあるポリマーと、高い比誘電率を有する無機フィラーとを複合化させると、可撓性と高比誘電率とを両立させることができる。また、このような複合体を用いてフィルムコンデンサを作製すると、ポリマーのみを用いた場合に比べて、フィルムコンデンサを小型化することができる。しかしながら、ポリマーと無機フィラーとの複合体は、絶縁破壊強度が低いという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、チタン酸ストロンチウム粉末を40体積%含む複合誘電体層の両面に、ポリビニルアセトアセタール樹脂からなる高耐電圧性樹脂層を形成した誘電体フィルムが開示されている。
同文献には、
(a)熱硬化性樹脂に無機成分を分散させると、複合誘電体層の表面の平滑性が低下し、複合誘電体層の両主面に形成される電極と、複合誘電体層を構成する無機成分との間にある樹脂部分に電界集中が発生するために、耐電圧性が低下する点、及び
(b)有機成分と無機成分とを複合化した複合誘電体層の両面に高耐電圧性樹脂層を形成すると、誘電体フィルム全体の耐電圧性が向上する点
が記載されている。
また、特許文献2には、有機樹脂中に非晶質の金属酸化物粒子を分散させた誘電体フィルムが開示されている。
同文献には、
(a)有機樹脂中に結晶質のセラミック粒子を分散させると、有機樹脂とセラミック粒子との間で誘電率の急峻な変化が生じるために、破壊電界強度が低下する点、及び、
(b)有機樹脂中に非晶質の金属酸化物粒子を分散させると、界面における局所的な電界強度の増大が緩和され、破壊電界強度が高くなる点
が記載されている。
ハイブリッド自動車や電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)には、フィルムコンデンサが用いられている。フィルムコンデンサは、PCUの構成部品の中でも大型であるため、小型化が望まれている。フィルムコンデンサを小型化するためには、最大エネルギー密度を向上させる必要がある。最大エネルギー密度は、材料の比誘電率及び絶縁破壊強度と正の相関があり、比誘電率が高くなるほど、及び/又は、絶縁破壊強度が高くなるほど、最大エネルギー密度は高くなる。
一般的に、ポリマーフィルムの比誘電率を向上させる方法の一つとして、ポリマーフィルム中に高誘電率の無機フィラーを配合してコンポジット化する方法がある。しかし、一般に、ポリマー中に無機フィラーを配合すると、無機フィラーがポリマーフィルム中で凝集し、絶縁破壊強度が大きく低下する。その結果、最大エネルギー密度は向上しない。
さらに、無機フィラーの配合により性能を向上させるためには、コンポジットフィルム中において無機フィラーを均一に分散させる必要がある。しかしながら、コンポジットフィルム中に無機フィラーを均一に分散させる方法が提案された例は、従来にはない。
特許第4893396号公報 特開2015-201513号公報
本発明が解決しようとする課題は、ポリマーと無機フィラーとのコンポジットからなり、絶縁破壊強度の高い誘電体フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る誘電体フィルムは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記誘電体フィルムは、
ポリマーからなる基材と、
前記基材中に分散させた無機フィラーと
を備えている。
(2)前記誘電体フィルムは、次の式(1)で表される分散度が0.45以下である。
分散度=ADL/Lm …(1)
但し、
ADLは、前記無機フィラーの重心間距離の平均偏差、
mは、前記無機フィラーの重心間距離の平均値。
(3)前記無機フィラーは、平均粒子アスペクト比が1.8以上である。
(4)前記誘電体フィルムは、比誘電率が12以上である。
キャスト法を用いて無機フィラーを含む誘電体フィルムを作製する場合において、無機フィラーの作製から誘電体フィルムの作製に至るまでの間に、無機フィラーを乾燥させる工程がある時には、乾燥時に無機フィラーが凝集する。一旦凝集した無機フィラーは、その後の工程において分散処理を施しても、凝集を完全になくすことはできない。そのため、このような方法により得られた誘電体フィルムは、無機フィラーが凝集しているために、絶縁破壊強度が低い。
これに対し、キャスト法により誘電体フィルムを作製する場合において、無機フィラーの作製から誘電体フィルムの作製に至るまでの間に、無機フィラーを乾燥させる工程がない時には、無機フィラーの凝集が抑制される。このような方法により得られた誘電体フィルムは、無機フィラーが均一に分散しているために、高い絶縁破壊強度を示す。
平均粒子アスペクト比の定義を説明するための模式図である。 実施例1~2、及び、比較例1~4で得られた試料のSEM像、並びに、分散度、平均粒子アスペクト比、比誘電率@10kHz、及び、絶縁破壊強度(BDS)である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 誘電体フィルム]
本発明に係る誘電体フィルムは、
ポリマーからなる基材と、
前記基材中に分散させた無機フィラーと
を備えている。
[1.1. ポリマー]
本発明において、ポリマーの材料は、特に限定されない。ポリマーは、熱可塑性樹脂であっても良く、あるいは、熱硬化性樹脂であっても良い。
ポリマーとしては、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリフルオレン、ポリスルホン、ポリエチレンイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリウレタン、セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、シアノエチルセルロースなどがある。ポリマーには、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。
これらの中でも、ポリマーは、PVDFが好ましい。これは、他のポリマーに比べて比誘電率が高いためである。すなわち、PVDFの比誘電率は最大で11である。そのため、これと高比誘電率の無機フィラーとを複合化させると、無機フィラーの添加量が相対的に少ない場合であっても、比誘電率が12以上である誘電体フィルムを容易に得ることができる。
[1.2. 無機フィラー]
[1.2.1. 組成]
本発明において、無機フィラーは、誘電特性を持つ無機化合物であれば良く、その組成は特に限定されない。無機フィラーとしては、例えば、層状ペロブスカイト型酸化物誘電体、ペロブスカイト型酸化物誘電体、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタルなどがある。これらの中でも、層状ペロブスカイト型酸化物誘電体は、
(a)相対的に高い比誘電率を持つ、
(b)結晶構造に異方性があるために、板状粒子の合成が容易である、
などの利点があるので、無機フィラーの材料として好適である。
ここで、「層状ペロブスカイト型酸化物誘電体」とは、BO6八面体(但し、Bは、1種又は2種以上の遷移金属イオン)を単位格子内に少なくとも4個内包したペロブスカイト型構造を有する酸化物をいう。Bは、特にNb、Ta、又はTiが好ましい。
層状ペロブスカイト型酸化物誘電体としては、具体的には、以下のようなものがある。無機フィラーは、これらのいずれか1種を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
(a)KCa2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)。
(b)Ca2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)。
(c)一般式:A'・An-1n3n+1(nは、1以上の整数)で表されるディオンヤコブソン(DJ)型化合物。
(d)一般式:A'm・An-1n3n+1(n、mは、1以上の整数)で表されるルドルスデンポッパー(RP)型化合物。
(e)一般式:A'22・An-1n3n+1(n、mは、1以上の整数)で表されるオーリビリウス型化合物。
但し、
A'は、1種又は2種以上のアルカリ金属イオン、
Aは、アルカリ金属イオン、第2族元素のイオン、及び希土類金属イオンからなる群から選ばれるいずれか1種以上のイオン、
Bは、1種又は2種以上の遷移金属イオン。
無機フィラーは、特に、KCa2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)、又は、Ca2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)が好ましい。これは、比誘電率が高く、かつ、板状の無機フィラーを作製するのが比較的容易であるためである。
[1.2.2. 平均粒子アスペクト比]
図1に、平均粒子アスペクト比の定義を説明するための模式図を示す。
「粒子アスペクト比」とは、誘電体フィルムの断面に現れる無機フィラーの主軸方向幅(t)に対する主軸方向長(D)の比(=D/t)をいう。
「主軸方向長(D)」とは、誘電体フィルムの断面に現れる無機フィラーの長さの最大値をいう。
「主軸方向幅(t)」とは、主軸方向長に対して垂直方向の長さの最大値をいう。
「平均粒子アスペクト比」とは、誘電体フィルムの断面に現れる50個以上の無機フィラーについて測定された粒子アスペクト比の平均値をいう。
無機フィラーの平均D/t比は、相対性能指数に影響を与える。ここで、「相対性能指数」とは、球形フィラーを含む誘電体フィルムの最大エネルギー密度に対する矩形フィラを含む誘電体フィルムの最大エネルギー密度の比をいう。
一般に、平均D/t比が大きくなるほど、相対性能指数が向上する。高い相対性能指数を得るためには、平均D/t比は、1.8以上である必要がある。
一方、平均D/t比が大きくなりすぎると、フィルムの可撓性が低下し、巻き取りが困難となる。また、フィラーの僅かな傾きによってフィラー同士が接触しやすくなる。従って、平均D/t比は、200以下が好ましい。平均D/t比は、好ましくは、100以下、さらに好ましくは、20以下である。
[1.2.3. 比誘電率]
無機フィラーを構成する無機化合物の比誘電率は、誘電体フィルムの特性に影響を与える。一般に、無機化合物の比誘電率が大きくなるほど、これを含む誘電体フィルムの比誘電率も大きくなる。高い比誘電率(≧12)を持つ誘電体フィルムを得るためには、無機化合物の比誘電率は、120以上が好ましい。
[1.3. 誘電体フィルムの特性]
[1.3.1. 分散度]
「分散度」とは、次の式(1)で表される値をいう。式(1)で表される分散度は、ポリマー中における無機フィラーの分散の程度を表す尺度であり、分散度が低くなるほど、無機フィラーがより均一に分散していることを表す。
分散度=ADL/Lm …(1)
但し、
ADLは、前記無機フィラーの重心間距離の平均偏差、
mは、前記無機フィラーの重心間距離の平均値。
「無機フィラーの重心間距離」とは、隣接する粒子の重心間の距離をいう。
無機フィラーの分散度は、誘電体フィルムの絶縁破壊強度に影響を与える。一般に、分散度が低くなるほど(無機フィラーがより均一に分散するほど)、絶縁破壊強度が高くなる。高い絶縁破壊強度を得るためには、分散度は、0.45以下である必要がある。
[1.3.2. 比誘電率]
最大エネルギー密度は、誘電体フィルムの比誘電率及び絶縁破壊強度と正の相関がある。そのため、比誘電率が高くなるほど、最大エネルギー密度は高くなる。最大エネルギー密度を向上させるためには、誘電体フィルムの比誘電率は高いほど良い。
誘電体フィルムに含まれる無機フィラーの組成、含有量などを最適化すると、誘電体フィルムの比誘電率は、12以上となる。製造条件をさらに最適化すると、誘電体フィルムの比誘電率は、15以上となる。
[1.3.3. 絶縁破壊強度]
誘電体フィルムの最大エネルギー密度を向上させるためには、誘電体フィルムの絶縁破壊強度もまた、高いほど良い。
誘電体フィルムに含まれる無機フィラーの組成、含有量などを最適化すると、誘電体フィルムの絶縁破壊強度は、250V/μm以上となる。製造条件をさらに最適化すると、誘電体フィルムの絶縁破壊強度は、300V/μm以上となる。
[1.3.4. 無機フィラーの含有量]
誘電体フィルムに含まれる無機フィラーの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な含有量を選択することができる。ポリマーは、無機フィラーに比べて比誘電率が小さい。そのため、無機フィラーの含有量が少なすぎると、誘電体フィルムの比誘電率が低下する。従って、無機フィラーの含有量は、10vol%以上が好ましい。無機フィラーの含有量は、好ましくは、20vol%以上である。
一方、無機フィラーの含有量が過剰になると、無機フィラーがフィルム内で凝集しやすくなり、絶縁破壊強度の低下を招く。従って、無機フィラーの含有量は、40vol%以下が好ましい。無機フィラーの含有量は、好ましくは、30vol%以下である。
[1.3.5. 誘電体フィルムの厚さ]
誘電体フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。一般に、誘電体フィルムの厚さが薄くなりすぎると、自立膜としての取り扱いが困難となる。従って、誘電体フィルムの厚さは、2μm以上が好ましい。
一方、誘電体フィルムの厚さが厚くなりすぎると、容量密度が低下する。従って、誘電体フィルムの厚さは、10μm以下が好ましい。誘電体フィルムの厚さは、好ましくは、6μm以下、さらに好ましくは、4μm以下である。
[2. 誘電体フィルムの製造方法]
本発明に係る誘電体フィルムは、
(a)所定の組成及び平均粒子アスペクト比を有する無機フィラーを作製し、
(b)所定の組成となるようにポリマー及び無機フィラーを溶媒中に分散させてスラリーとし、
(c)スラリーを基板表面にキャストし、塗膜を乾燥させる
ことにより製造することができる。
[2.1. 無機フィラー作製工程]
まず、所定の組成及び平均粒子アスペクト比を有する無機フィラーを作製する(無機フィラー作製工程)。
所定の条件を満たす無機フィラーの製造方法は、特に限定されるものではなく、無機フィラーの組成に応じて最適な方法を選択することができる。
例えば、無機フィラーが層状ペロブスカイト型酸化物の一種であるCa2Nam-3Nbm3m+1(CNN)である場合、所定の平均粒子アスペクト比を有する無機フィラーは、
(a)固相反応法を用いて、KCa2Nam-3Nbm3m+1(KCNN)からなる粉末を合成し、
(b)KCNN粉末を硝酸で処理することにより、層間のK+がH+で交換されたHCa2Nam-3Nbm3m+1(HCNN)粉末を作製し、
(b)HCNN粉末を層間剥離させる
ことにより製造することができる。
この場合、合成された無機フィラーを乾燥させると、無機フィラーが凝集する。一旦凝集した無機フィラーは、その後の工程において分散処理を施しても、凝集を完全になくすことはできない。そのため、このようにして得られた無機フィラーは、乾燥させることなく、溶媒(A)中に分散させた状態のまま次工程に供する必要がある。
[2.2. スラリー作製工程]
次に、所定の組成となるようにポリマー及び無機フィラーを溶媒(B)中に分散させてスラリーとする(スラリー作製工程)。
溶媒(B)の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な溶媒を用いることができる。スラリー調製用の溶媒(B)は、無機フィラー分散用の溶媒(A)と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。溶媒(B)が溶媒(A)とは異なっている場合、無機フィラーを乾燥させることなく、溶媒置換を行う。
スラリー中のポリマー濃度及び無機フィラー濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。
[2.3. キャスト工程]
次に、スラリーを基板表面にキャストし、塗膜を乾燥させる(キャスト工程)。これにより、本発明に係る誘電体フィルムが得られる。
キャストの方法及び条件、並びに、乾燥の方法及び条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
[3. 作用]
[3.1. 矩形フィラーによる絶縁破壊強度の向上]
ハイブリッド自動車や電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)には、フィルムコンデンサが用いられている。フィルムコンデンサは、PCUの構成部品の中でも大型であるため、小型化が望まれている。フィルムコンデンサを小型化するためには、材料の容量密度を向上させることが必須である。容量は、次の式(1)で表される。
容量密度[F/m3]=ε0εr/d2 …(1)
但し、
ε0:真空の誘電率、8.854×10-12[F/m]、
εr:材料の比誘電率、
d:フィルムの厚み[m]
容量密度を向上させるためには、フィルムの薄膜化が必要である。それに伴い、フィルム中の無機フィラーの微細化も求められる。しかし、従来用いられてきた球状フィラーは、サイズ効果があり、平均粒子サイズが小さくなるほど、比誘電率が減少する。そのため、従来の誘電体フィルムでは、高性能なコンデンサ用フィルムは得られない。
これに対し、無機化合物からなる無機フィラーは、ポリマーに比べて比誘電率が高い。特に、層状ペロブスカイト型酸化物は、結晶構造に異方性があるため、比較的容易に板状粒子を合成することができる。さらに、板状粒子はサイズ効果がないため、粒子サイズを小さくしても比誘電率の低下が少ない。そのため、このような板状粒子を無機フィラーとして用いると、球状フィラーを用いた場合に比べて高性能な誘電体フィルムを作製することができる。
具体的には、板状の無機フィラーを用いた誘電体フィルムは、球状の無機フィラーを用いた場合に比べて高エネルギー密度化する。その結果、フィルムの厚さを薄くした場合であっても、高い絶縁破壊強度を示す。また、板状の無機フィラーは、粒子サイズ効果がないため、フィルムの厚さを薄くし、それに適合するように粒子サイズを小さくした場合であっても、高い比誘電率を示す。
さらに、誘電体フィルムに同じ体積の無機フィラーが配合されている場合、平均粒子アスペクト比が大きくなるほど、膜厚方向に存在する無機フィラーの割合が減少する。そのため、膜厚方向の絶縁破壊強度の低下が抑制され、誘電体フィルムの相対性能指数が向上する。特に、平均粒子アスペクト比が1.8以上になると、相対性能指数は1.02以上となる。
[3.2. 分散度の制御による絶縁破壊強度の向上]
無機フィラーを含む誘電体フィルムは、例えば、無機フィラーとポリマーを溶媒に分散させてスラリーとし、スラリーを基板上にキャストする方法(キャスト法)により作製することができる。この場合において、無機フィラーの作製から誘電体フィルムの作製に至るまでの間に、無機フィラーを乾燥させる工程がある時には、乾燥時に無機フィラーが凝集する。一旦凝集した無機フィラーは、その後の工程において分散処理を施しても、凝集を完全になくすことはできない。そのため、このような方法により得られた誘電体フィルムは、無機フィラーが凝集しているために、絶縁破壊強度が低い。
これに対し、キャスト法により誘電体フィルムを作製する場合において、無機フィラーの作製から誘電体フィルムの作製に至るまでの間に、無機フィラーを乾燥させる工程がない時には、無機フィラーの凝集が抑制される。このような方法により得られた誘電体フィルムは、無機フィラーが均一に分散しているために、高い絶縁破壊強度を示す。
特に、分散度が0.45以下になると、無機フィラーの凝集による短絡部が少なくなる。そのため、絶縁破壊強度の低下が抑制される。
(実施例1~2、比較例1~4)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
[1.1.1. 無機フィラーの作製]
まず、層状ペロブスカイト型酸化物の一種であるKCa2Nam-3Nbm3m+1(KCNN)の粉末を固相反応法により合成した。得られたKCNN粉末を粉砕した(平均粒径: 200nm)。次いで、粉砕されたKCNN粉末を5M硝酸で処理し、層間のK+がH+で置換されたHCa2Nam-3Nbm3m+1(HCNN)粉末を得た。
次に、HCNN粉末をテトラブチルアンモニウム水溶液で処理した。HCNN粉末中のHとテトラブチルアンモニウムとのモル比は、1:1とした。これにより、HCNN粉末が層間剥離し、Ca2Nam-3Nbm3m+1(CNN)フィラーを含有する分散液を得た。
さらに、CNNフィラーを含有する分散液の溶媒を遠心分離により、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に交換し、CNNフィラーのDMF分散液を得た。
[1.1.2. 誘電体フィルムの作製]
DMFに所定量のPVDFを溶解させ、PVDFのDMF溶液を得た。これにCNNフィラーのDMF分散液を加えて混合し、脱泡してスラリーを得た。このスラリーをガラス板上にキャストし、乾燥させることにより、誘電体フィルムを得た。無機フィラーの含有量は、30vol%であった。
なお、実施例1においては、無機フィラーの作製から誘電体フィルムの作製に至るまでの間に、無機フィラーを乾燥させることはなかった。
[1.2. 実施例2]
無機フィラーの含有量が25vol%となるように、CNNフィラーのDMF分散液とPVDFのDMF溶液とを混合した以外は、実施例1と同様にして、誘電体フィルムを作製した。
[1.3. 比較例1]
スラリー作製工程の前にCNNフィラーの乾燥工程を入れた以外は、実施例1と同様にして誘電体フィルムを作製した。
[1.4. 比較例2]
粉砕処理していないKCNN粉末(平均粒径: 250μm)を出発原料に用いた以外は、比較例1と同様にして誘電体フィルムを作製した。
[1.5. 比較例3]
市販のチタン酸バリウム(平均粒径: 300nm)を出発原料に用いた以外は、比較例1と同様にして誘電体フィルムを作製した。
[1.6. 比較例4]
特許文献2の図1を用いて、実施例1~2と同様の評価を行った。
[2. 試験方法]
[2.1. 分散度]
誘電体フィルムの断面の顕微鏡写真を撮影した。次いで、重心間距離法を用いて、無機フィラーの重心間距離を測定した。さらに、式(1)を用いて、分散度を算出した。
[2.2. 平均粒子アスペクト比]
撮影された顕微鏡写真から、平均粒子アスペクト比を測定した。
[2.3. 比誘電率]
フィルムの両面に金電極を形成し、インピーダンスアナライザを用いて、10kHzでの比誘電率を測定した。
[2.4. 絶縁破壊強度]
フィルムの両面に金電極を形成し、超高電圧耐圧試験器を用いて、絶縁破壊強度(BDS)を測定した。電流が1mA流れた時の電圧を絶縁破壊電圧とした。
[3. 結果]
図2に、実施例1~2、及び、比較例1~4で得られた試料のSEM像、並びに、分散度、平均粒子アスペクト比、比誘電率@10kHz、及び、絶縁破壊強度(BDS)を示す。図2より、以下のことが分かる。
(1)実施例1、2は、いずれも、比誘電率及び絶縁破壊強度がともに高い。これは、無機フィラーの平均粒子アスペクト比が1.8以上であり、かつ、分散度が0.45以下であるためと考えられる。
(2)比較例1は、比誘電率は高いが、絶縁破壊強度が低い。これは、無機フィラーが凝集しおり、分散度が0.45を超えているためと考えられる。
(3)比較例2は、比誘電率は高いが、絶縁破壊強度が低い。これは、無機フィラーの平均粒子アスペクト比は高いが、分散度が0.45を超えているためと考えられる。
(4)比較例3は、比誘電率は高いが、絶縁破壊強度が低い。これは、球形フィラーを用いているため、すなわち、平均粒子アスペクト比が1.8未満であるためと考えられる。
(5)比較例4は、絶縁破壊強度は高いが、比誘電率が低い。これは、マトリックスのポリマーがPVDFよりも比誘電率の小さいポリエチレンテレフタレートであるため、及び、フィラー含有量が少ないためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る誘電体フィルムは、ハイブリッド車やHV車のPCUに用いられるコンデンサの誘電体として使用することができる。

Claims (3)

  1. 以下の構成を備えた誘電体フィルム。
    (1)前記誘電体フィルムは、
    ポリマーからなる基材と、
    前記基材中に分散させた無機フィラーと
    を備えている。
    (2)前記誘電体フィルムは、次の式(1)で表される分散度が0.45以下である。
    分散度=ADL/Lm …(1)
    但し、
    ADLは、前記無機フィラーの重心間距離の平均偏差、
    mは、前記無機フィラーの重心間距離の平均値。
    (3)前記無機フィラーは、平均粒子アスペクト比が1.8以上である。
    (4)前記誘電体フィルムは、比誘電率が12以上である。
    (5)前記誘電体フィルムは、前記無機フィラーの含有量が10vol%以上40vol%以下である。
  2. 前記ポリマーは、PVDFからなる請求項1に記載の誘電体フィルム。
  3. 前記無機フィラーは、KCa2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)、又は、Ca2Nam-3Nbm3m+1(mは、3以上の整数)からなる請求項1又は2に記載の誘電体フィルム。
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