この発明に係る眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラムの実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る眼科情報処理装置は、被検眼の角膜(表面)上の2以上の位置における2以上の角膜形状情報を取得し、取得された2以上の角膜形状情報に基づいて、上記の2以上の位置を通る直線上の外挿位置における角膜形状情報を推定することが可能である。角膜形状情報は、角膜の形状を表す情報である。角膜形状情報の例として、角膜曲率半径、角膜曲率、角膜屈折力などがある。3以上の位置における3以上の角膜形状情報が取得される場合、3以上の位置を通る直線は、当該3以上の位置の近似直線であってよい。近似直線は、3以上位置に対して最小二乗法等の公知の手法を適用することにより求められる。
例えば、角膜形状情報は、公知の眼科装置を用いて取得される。この場合、眼科装置は、被検眼の角膜に対して同心円状の2以上のリングパターン(例えば、ケラトリングパターン又はプラチドリングパターン)を投影し、その戻り光を受光する。眼科装置は、戻り光を受光することにより得られた2以上のリングパターン像を解析し、各リングパターン像上の位置における角膜形状情報を取得する。角膜形状情報の取得位置を通る直線(又は近似直線。以下同様)上の外挿位置における角膜形状情報は、取得位置における角膜形状情報を外挿することにより推定される。いくつかの実施形態では、直線は、角膜の基準位置を通る。基準位置の例として、角膜中心位置、角膜重心位置、角膜頂点位置、後述の被検眼に対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)の基準となる位置(アライメント基準位置)などがある。いくつかの実施形態では、上記の2以上のリングパターンは、角膜の基準位置を中心とする同心円状のパターンである。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、上記の2以上の位置に対して基準位置側と反対側の位置である。この場合、基準位置を中心とする径の小さいリングパターンを投影する場合に、リングパターンよりも外側の角膜形状情報を推定することが可能になる。それにより、少ないリングパターン数で、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、上記の2以上の位置に対して基準位置側の位置である。この場合、基準位置を中心とする径の大きいリングパターンを投影する場合に、リングパターンよりも内側の角膜形状情報を推定することが可能になる。それにより、少ないリングパターン数で、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
また、いくつかの実施形態では、基準位置を通る2以上の経線のそれぞれについて、取得された2以上の角膜形状情報に基づいて、外挿位置における角膜形状情報が推定される。2以上の外挿位置における2以上の角膜形状情報に基づいて近似された所定の関数から、上記の2以上の経線と異なる経線上の所定の位置における角膜形状情報を求めることで、乱視状態に対応した角膜形状情報を特定することが可能である。
実施形態に係る眼科情報処理方法は、実施形態に係る眼科情報処理装置においてプロセッサ(処理回路、コンピュータ)により実行される処理を実現するための1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、プロセッサに実施形態に係る眼科情報処理方法の各ステップを実行させる。
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
以下では、実施形態に係る眼科装置が、実施形態に係る眼科情報処理装置の機能を有する場合について説明する。しかしながら、実施形態に係る眼科情報処理装置が、外部の眼科装置から角膜形状情報を取得するように構成されていてもよい。また、実施形態に係る眼科情報処理装置は、角膜に投影された2以上のリングパターンの受光結果を取得し、取得された受光結果に基づいて角膜形状情報を算出するように構成されていてもよい。
以下、説明の便宜上、主として、角膜形状測定において角膜中心位置を中心とする同心円状の2つのリングパターン(ケラトリングパターン)を角膜に投影する場合について説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る眼科装置は、検査(測定)の種別及び光学系の配置に起因する制約条件の下で、角膜形状を測定するために径の小さいリングパターンを角膜に投影する。この場合、角膜におけるリングパターンの投影位置より外側の外挿位置における角膜形状情報が推定される。
以下、実施形態に係る眼科装置が、左被検眼及び右被検眼の双方について自覚検査及び他覚測定が可能な眼科検査装置である場合について説明する。しかしながら、実施形態に係る眼科検査装置は、左被検眼及び右被検眼のいずれか一方だけについて自覚検査及び他覚測定が可能であってよい。
[構成]
図1に、実施形態に係る眼科検査装置の外観構成の概略を模式的に示す。実施形態に係る眼科検査装置1は、自覚検査と他覚測定とが可能な眼科装置である。自覚検査は、被検者の眼(被検眼)に視標を呈示し、その見え方に関する被検者からの応答に基づいて被検眼に関する情報を取得するための検査である。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主として物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得するための測定である。
眼科検査装置1は、有線又は無線の通信路を介して、図示しない検者用コントローラ(例えば、タブレット端末)又は被検者用コントローラ(例えば、コントロールレバーユニット)と通信接続が可能である。眼科検査装置1は、検者用コントローラ又は被検者用コントローラに対する操作に基づいて制御される。以下では、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、被検者から見て測定ヘッド100の奥行き方向をZ方向として説明する場合がある。
眼科検査装置1は、測定ヘッド100と、制御装置200とを含む。測定ヘッド100には、上記の自覚検査や他覚測定を行うための光学系と移動機構系とが設けられている。制御装置200は、測定ヘッド100に対する制御と、検者用コントローラ又は被検者用コントローラに対する制御とを行う。
眼科検査装置1は、検眼用テーブル3を備える。検眼用テーブル3は、測定ヘッド100の支持、及び検者用コントローラ又は被検者用コントローラの載置のための机である。検眼用テーブル3は、支持部4によって床の上に支持された状態で設置される。検眼用テーブル3の高さは、上下方向に調節可能である。
検眼用テーブル3には、支柱5が立設される。支柱5の先端部には、横アーム6の基端部が保持される。横アーム6の先端部には、測定ヘッド100が吊り下げられている。例えば、支柱5は、アーム移動機構7により軸回り方向(矢印方向j、矢印方向k)に回動可能である。それにより、横アーム6は、軸回り方向に回動される。すなわち、測定ヘッド100は、軸回り方向に回動される。従って、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させることが可能になり、検眼用テーブル3上の空きスペースを利用して効率的に検査を進めることができるようになる。
アーム移動機構7は、アーム上下動機構として、支柱5の先端部を上下方向(矢印方向h)に移動させるようにしてもよい。それにより、横アーム6は、上下方向に移動される。すなわち、測定ヘッド100は、上下方向に移動される。アーム移動機構7は、アーム伸縮機構として、検眼用テーブル3から上方に突出する支柱5を伸縮させることにより横アーム6を上下方向に移動させてもよい。この場合でも、測定ヘッド100を被検者の座高に合わせて上下したり、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させたりすることが可能になる。
測定ヘッド100を保管するための台を別途に設け、前述の回動や上下方向の移動により測定ヘッド100を安定した位置に配置するようにしてもよい。この場合、測定ヘッド100の重さに起因した横アーム6への継続的な負荷の低減が可能になる。
アーム移動機構7は、操作者による操作を受け、手動により軸回り方向や上下方向に横アーム6を移動させることが可能である。アーム移動機構7は、電気的な機構で横アーム6を移動させてもよい。この場合、アーム移動機構7を移動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。
支持部4の側面には格納部9が設けられ、制御装置200が格納される。なお、検眼用テーブル3の構成は、図1に示す構成に限定されるものではない。
〔測定ヘッド〕
測定ヘッド100は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを含む。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、それぞれ検眼窓130L、130Rが形成されている。被検者の左眼(左被検眼)は、検眼窓130Lを通じて検査が行われる。被検者の右眼(右被検眼)は、検眼窓130Rを通じて検査が行われる。
図2に、実施形態に係る測定ヘッド100の構成例のブロック図を示す。測定ヘッド100は、移動機構系110と、左眼用検査ユニット120Lと、右眼用検査ユニット120Rとを含む。移動機構系110は、横アーム6に吊り下げられる。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、移動機構系110により独立に又は連動して3次元的に移動される。左眼用検査ユニット120Lは、左被検眼の検査用の光学系を収容する。右眼用検査ユニット120Rは、右被検眼の検査用の光学系を収容する。
(移動機構系)
移動機構系110は、水平動機構111と、回動機構112L、112Rと、上下動機構113L、113Rとを含む。移動機構系110は、アーム移動機構7を更に含んでもよい。
水平動機構111は、回動機構112L、112R、上下動機構113L、113R、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを水平方向(横方向(X方向)、前後方向(Z方向))に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130L、130Rの水平方向の位置を調整することができる。水平動機構111は、例えば、パルスモータや送りネジなどを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて回動機構112L、112R等を水平方向に移動させる。水平動機構111は、操作者による操作を受け、前述の回動機構112L、112R等を水平方向に手動で移動させることも可能である。
回動機構112Lは、水平動機構111に連結された所定の第1軸を中心に上下動機構113L及び左眼用検査ユニット120Lを回動させる。第1軸は、略垂直方向の延びる軸であり、水平面に対して任意の角度で傾斜可能であってよい。回動機構112Lは、例えば、パルスモータや回動軸などを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて第1軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を回動させる。回動機構112Lは、操作者による操作を受け、第1軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を手動で回動させることも可能である。
回動機構112Rは、水平動機構111に連結された所定の第2軸を中心に上下動機構113R及び右眼用検査ユニット120Rを回動させる。第2軸は、第1軸と同様に略垂直方向の延びる軸であり、水平面に対して任意の角度で傾斜可能であってよい。第2軸は、第1軸から所定の距離だけ離間した位置に配置された軸である。第1軸と第2軸との間の距離は、調整可能である。回動機構112Rは、回動機構112Lの回動に連動して右眼用検査ユニット120R等を回動させてもよいし、回動機構112Lの回動とは独立に右眼用検査ユニット120R等を回動させてもよい。回動機構112Rは、回動機構112Lと同様の公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて第2軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を回動させる。回動機構112Rは、操作者による操作を受け、第2軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を手動で回動させることも可能である。
回動機構112L、112Rにより左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを回動させることにより、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとの向きを相対的に変更することが可能である。例えば、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとが、被検者の左右眼の眼球回旋点を中心にそれぞれ逆方向に回転される。それにより、被検眼を開散、輻輳させることができる。
上下動機構113Lは、左眼用検査ユニット120Lを上下方向(Y方向)に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Lは、例えば、パルスモータや送りネジなどを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて左眼用検査ユニット120Lを上下方向に移動させる。上下動機構113Lは、操作者による操作を受け、左眼用検査ユニット120Lを上下方向に手動で移動させることも可能である。
上下動機構113Rは、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Rは、上下動機構113Lによる移動に連動して右眼用検査ユニット120Rを移動させてもよいし、上下動機構113Lによる移動とは独立に右眼用検査ユニット120Rを移動させてもよい。上下動機構113Rは、上下動機構113Lと同様の公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動させる。上下動機構113Rは、操作者による操作を受け、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に手動で移動させることも可能である。
(各検査ユニットの構成)
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、個別に動作可能である。
左眼用検査ユニット120Lは、第1視標呈示部122Lと、第1他覚測定部123Lと、第1撮影部124Lとを含む。第1視標呈示部122Lは、複数の視標を選択的に左被検眼に呈示する。第1他覚測定部123Lは、左被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。第1撮影部124Lは、左被検眼の前眼部を撮影する。左眼用検査ユニット120Lには、左被検眼と後述の偏向部材PLとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に左被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
右眼用検査ユニット120Rは、第2視標呈示部122Rと、第2他覚測定部123Rと、第2撮影部124Rとを含む。第2視標呈示部122Rは、複数の視標を選択的に右被検眼に呈示する。第2他覚測定部123Rは、右被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。第2撮影部124Rは、右被検眼の前眼部を撮影する。右眼用検査ユニット120Rには、右被検眼と後述の偏向部材PRとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に右被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、図3に示すような光学系が収容されている。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、その光学系を動作させることで、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対して、視標呈示部を用いた自覚検査と他覚測定部及び撮影部を用いた他覚屈折測定とを実行するように構成されている。検者や被検者は、コントローラ等を適宜操作することにより検査を行う。
各検査ユニットに上記の光学素子適用部が設けられる場合、光学素子適用部は、複数の光学素子と駆動機構とを含む。複数の光学素子は、被検眼の視機能を検査するための各種レンズからなる集合であり、例えば、球面レンズ、円柱レンズ及びプリズムレンズのうち少なくとも1つを含む。複数の光学素子は、検眼パラメータの種別ごとに組分けされる。例えば、検眼パラメータの種別は、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム基底方向のうち少なくとも1つを含む。検眼パラメータの種別ごとの組分けとして、球面度数の組は、複数の球面レンズを含み、それぞれ異なる球面度数の球面レンズにより構成される。乱視度数の組は、複数の円柱レンズを含み、それぞれ異なる乱視度数の円柱レンズにより構成される。なお、乱視度数の組は、更に乱視軸角度に合わせて回転可能となっていてもよい。加入度数の組は、挿脱可能なプラス度数の球面レンズやマイナス度数の球面レンズにより構成される。プリズム度数の組は、複数のプリズムレンズを含み、それぞれ異なるプリズム度数のプリズムレンズにより構成される。なお、プリズム度数の組は、更にプリズム基底方向に合わせて回転可能となっていてもよい。瞳孔間距離は、被検眼の瞳孔間距離に合わせて設定される検査条件である。瞳孔間距離は、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rの一方又は双方が、水平方向(図1の矢印方向m)にスライドすることにより設定される。
各検査ユニットに含まれる駆動機構は、複数の光学素子のそれぞれを検眼窓に配置させ、且つ、検眼窓から退避させることが可能に構成される。各駆動機構は、制御装置200から制御信号を受けて光学素子を切り替える。それにより、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム基底方向のうち少なくとも1つを切り替えて被検眼に適用することが可能である。
〔光学系の構成〕
図3に、測定ヘッド100に収容された光学系の構成例を示す。図3は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに収容された光学系の構成例のブロック図を表す。
左眼用検査ユニット120Lは、偏向部材PLと、視標呈示光学系10Lと、撮影光学系20Lと、アライメント光学系30L、31Lと、レフ測定光学系40Lと、ケラト測定光学系50Lとを含む。左眼用検査ユニット120Lには、対物レンズ60Lと、ビームスプリッタBS1L~BS3Lとが設けられている。右眼用検査ユニット120Rは、偏向部材PRと、視標呈示光学系10Rと、撮影光学系20Rと、アライメント光学系30R、31Rと、レフ測定光学系40Rと、ケラト測定光学系50Rとを含む。右眼用検査ユニット120Rには、対物レンズ60Rと、ビームスプリッタBS1R~BS3Rとが設けられている。左眼用検査ユニット120Lの光学系と右眼用検査ユニット120Rの光学系とは左右対称に構成されている。以下、特に指摘しない限り、左眼用検査ユニット120Lの光学系について説明することとする。
視標呈示光学系10Lは、左被検眼ELの眼底Efに視標を投影するための光学系である。視標呈示光学系10Lは、LCD(Liquid Crystal Display)11Lと、移動レンズ70Lと、反射ミラーMLとを含む。LCD11Lは、検眼用の各種の視標(チャート)を表示する。LCD11Lには、風景チャートからなる固視標、視力検査用のランドルト環等の視力チャート、クロスシリンダテストチャート、乱視検査用の放射チャート、斜位検査用の十字チャート、レッドグリーンテストチャートなどの視標が選択的に表示される。視標呈示光学系10Lには、LCD11Lに代えて、EL(エレクトロルミネッセンス)などを利用した電子表示デバイスや、回転するガラス板等に描画された複数の視標のいずれかを光軸上に適宜配置するもの(ターレットタイプ)が設けられていてもよい。
移動レンズ70Lは、視標呈示光学系10Lの光軸方向に移動可能である。移動レンズ70Lは、駆動機構70DL(後述)により移動される。駆動機構70DLは、制御装置200からの制御信号を受けて移動レンズ70Lを移動させる。それにより、左被検眼ELに付加される球面度を変更することが可能である。例えば、レフ測定時に左被検眼ELの屈折力に応じた移動量だけ移動レンズ70Lを光軸方向に移動させることにより、左被検眼ELに対する固視雲霧を行うことができる。また、自覚検査時に、被検眼の遠点に相当する位置、近点に相当する位置、又はその中間の任意の位置に視標を呈示することができ、任意の検査距離で検査を行うことができる。
LCD11Lからの光は移動レンズ70Lを通過し、反射ミラーMLにより反射される。反射ミラーMLにより反射された光は、ビームスプリッタBS2Lを透過し、ビームスプリッタBS1Lにより反射される。ビームスプリッタBS1Lにより反射された光は、対物レンズ60Lを通過し、偏向部材PLにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。
視標呈示光学系10Lには、左被検眼ELの乱視度数及び乱視軸角度を矯正するためのVCCレンズが設けられていてもよい。
撮影光学系20Lは、左被検眼ELの前眼部を撮影するための光学系である。撮影光学系20Lは、CCD(Charged-Coupled Device)21Lを含む。例えば図示しない前眼部照明系により左被検眼ELの前眼部が照明されると、偏向部材PLには、左被検眼ELの前眼部からの反射光が入射する。偏向部材PLは、反射光を対物レンズ60Lに向けて偏向する。偏向部材PLにより偏向された反射光は、対物レンズ60Lを通過し、ビームスプリッタBS1L、BS3Lを透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21Lの受光面に結像される。また、撮影光学系20Lは、レフ測定やケラト測定において左被検眼ELに投影された測定光束の反射光を受光する受光系として機能する。
アライメント光学系30Lは、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うための光学系である。アライメント光学系30Lは、アライメント用の光束(平行光)を左被検眼ELに投影する。アライメント用の光束は、ビームスプリッタBS3Lにより反射され、ビームスプリッタBS1Lを透過し、対物レンズ60Lを通過して略平行光束とされ、偏向部材PLにより左被検眼ELの角膜に向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたアライメント用の光束の角膜による反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS3Lを通過し、撮影光学系20LのCCD21Lにより受光される。
アライメント光学系31Lは、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のZ方向(或いは、XYZ方向)のアライメントを行うための光学系である。アライメント光学系31Lは、互いに異なる2以上の方向から左被検眼ELの前眼部を実質的に同時に撮影する2以上の撮影光学系を含む。以下、アライメント光学系31Lは、2つの撮影光学系により左被検眼ELを異なる2つの方向から撮影するものとする。各撮影光学系は、狭域カメラとして近赤外領域に高い感度を有するCCDと、左被検眼ELからの光をCCDの受光面に結像させる結像レンズとを備えた赤外カメラを含む。各撮影光学系は、被検眼の前眼部(瞳孔や虹彩)だけではなく、被検眼の上瞼の少なくとも一部と下瞼の少なくとも一部を撮影可能である。これらの撮影光学系を用いて取得された互いに異なる2以上の方向からの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向(作動距離方向)のアライメントが行われる。
レフ測定光学系40Lは、左被検眼ELのレフ測定(他覚屈折測定、眼屈折力測定)を行うための光学系である。レフ測定光学系40Lにより出射されたレフ測定用の光束は、ビームスプリッタBS2Lにより反射され、ビームスプリッタBS1Lにより反射され、対物レンズ60Lを通過し、偏向部材PLにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたレフ測定用の光束の眼底からの反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS1L、BS3Lを透過し、撮影光学系20LのCCD21Lにより受光される。
ケラト測定光学系50Lは、左被検眼ELのケラト測定を行うための光学系である。例えば、ケラト測定光学系50Lは、ケラトリング光源と、2つのリングパターンに対応した透光部が形成されたケラト板とを含む。ケラトリング光源からの光がケラト板を照明したとき、透光部を透過した光により2つのリングパターンが形成される。形成された2つのリングパターンは、偏向部材PLにて偏向され左被検眼ELの角膜に投影される。左被検眼ELの角膜からの反射光は偏向部材PLにより偏向され、対物レンズ60Lを通過し、ビームスプリッタBS1L、BS3Lを透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21Lの受光面にリング状の像として結像される。
測定ヘッド100は、後述の制御系の制御により、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれの光学系のアライメント、他覚測定、自覚検査などを自動的に実行するようになっている。測定ヘッド100は、更に、両眼バランステストを自動的に実行するようにしてもよい。自覚検査においては、他覚測定にて得られた値(他覚値)が利用される。特に、自覚検査のうちのクロスシリンダテストにおいては、他覚検査にて得られた乱視度数及び乱視軸角度が利用される。
〔制御系〕
次に、図4~図6を参照しながら、実施形態の眼科検査装置1の制御系について説明する。図4に示すブロック図は、眼科検査装置1の制御系の主要部分の概略構成を表している。図5に示すブロック図は、図4の演算部210の主要部分の概略構成を表している。図6に示すブロック図は、図5の角膜形状算出部320の主要部分の概略構成を表している。図4~図6において、図1~図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
眼科検査装置1の制御系は、図4に示すように、装置各部を制御する制御装置200を中心に構成されている。制御装置200は、例えば、格納部9に格納されている。制御装置200は、制御部201と、記憶部202とを含む。
記憶部202には、後述する処理を実行するための制御プログラムを含む眼科検査用のコンピュータプログラムや、LCD11L、11Rに表示される視標パターンの画像データなどが記憶されている。また、記憶部202には、被検眼の前眼部の画像、レフ測定結果、ケラト測定結果などが保存される。被検眼の前眼部の画像は、撮影光学系20L、20Rを用いて取得された前眼部の画像と、アライメント光学系31L、31Rを用いて取得された前眼部の画像とを含む。前眼部の画像は、左被検眼ELの前眼部の画像と、右被検眼ERの前眼部の画像とを含む。制御部201は、記憶部202に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、記憶部202に記憶された画像データなどを参照しつつコンピュータプログラムを順次に実行する。このような制御部201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算制御用プロセッサを含む。
眼科検査装置1にはコンピュータ装置(図示せず)が接続されていてもよい。この場合、コンピュータ装置は、眼科検査装置1のコンソールとして用いられるとともに、眼科検査装置1による検査結果を蓄積して管理するために用いられる。なお、このコンピュータ装置のCPUや記憶装置を制御装置200として構成することも可能である。
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの動作制御を行う。具体的には、制御装置200は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを水平動させる水平動機構111を制御する。制御装置200は、左眼用検査ユニット120Lを回動させる回動機構112Lと、左眼用検査ユニット120Lを上下動させる上下動機構113Lとをそれぞれ制御する。同様に、制御装置200は、右眼用検査ユニット120Rを回動させる回動機構112Rと、右眼用検査ユニット120Rを上下動させる上下動機構113Rとをそれぞれ制御する。制御装置200は、横アーム6を上下動させたり回動させたりするアーム移動機構7を制御するようにしてもよい。
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに収容された光学系の動作を制御する。制御装置200は、例えば、LCD11L、11Rの表示制御、移動レンズ70L、70Lのそれぞれを光軸方向に移動させる駆動機構70DL、70DRの動作制御などを実行する。LCD11L、11Rの表示制御には、視標の切り替え制御、視標の点灯制御、視標の消灯制御等がある。
制御装置200は、CCD21L、21Rによる受光制御、アライメント光学系30L、31L、30R、31R、レフ測定光学系40L、40R、ケラト測定光学系50L、50Rなどの動作制御などを実行する。アライメント光学系30Lにより左被検眼ELに投影されたスポット光の像の位置と左被検眼ELの瞳孔中心の位置とのずれがキャンセルされるように、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系30Rも同様に、右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系31Lを用いて取得された互いに異なる2以上の方向からの左被検眼ELの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系31Rも同様に、互いに異なる2以上の方向からの右被検眼ERの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向のアライメントを行うことが可能である。レフ測定光学系40L、40Rの動作制御には、レフ測定用の光束を出射する測定用光源の制御などがある。ケラト測定光学系50L、50Rの動作制御には、ケラトリング光源の制御などがある。
各検査ユニットに光学素子適用部が設けられる場合、制御装置200(制御部201)は、複数の光学素子を選択的に左被検眼EL及び右被検眼ERの少なくとも一方に適用するための駆動機構の制御などを実行する。
制御装置200(制御部201)は、演算部210を制御する。
図6に示すように、演算部210は、眼屈折力算出部310と、角膜形状算出部320とを含む。
眼屈折力算出部310は、左眼用検査ユニット120Lを用いた眼屈折力測定及び右眼用検査ユニット120Rを用いた眼屈折力測定のそれぞれについて、眼屈折力値を求める。角膜形状算出部320は、左眼用検査ユニット120Lを用いた角膜形状測定及び右眼用検査ユニット120Rを用いた角膜形状測定のそれぞれについて、角膜形状情報を求める。
以下、眼屈折力算出部310及び角膜形状算出部320の動作は、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれについて同様であるため、左被検眼EL及び右被検眼ERのいずれか一方について説明する。
眼屈折力算出部310は、左眼用検査ユニット120L(右眼用検査ユニット120R)を用いた眼屈折力測定(他覚屈折測定)による測定結果に基づいて左被検眼EL(右被検眼ER)の眼屈折力値(他覚値)を求める。眼屈折力算出部310は、例えば、レフ測定光学系40L(40R)により眼底Efに投影されたリング状の測定光束をCCD21L(21R)により受光することにより取得されたリング像の形状を公知の手法で解析することにより眼屈折力値を求める。
具体的には、眼屈折力算出部310は、CCD21L(21R)による受光結果に基づいて取得された被検眼Eの眼底像に描出されたパターン光の戻り光に基づくリング像(パターン像)を解析する。
例えば、眼屈折力算出部310は、取得された受光像(眼底像)の輝度分布を求め、求められた輝度分布からリング像の重心位置を求める。更に、眼屈折力算出部310は、求められた重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部310は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度Aを求める。いくつかの実施形態では、眼屈折力値として等価球面度数SE(=S+C/2)が算出される。
いくつかの実施形態では、眼屈折力算出部310は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて、球面度数S、乱視度数C及び乱視軸角度A、又は等価球面度数SEを求める。
角膜形状算出部320は、左眼用検査ユニット120L(右眼用検査ユニット120R)を用いた角膜形状測定による測定結果に基づいて左被検眼EL(右被検眼ER)の角膜形状を表す角膜形状情報を求める。角膜形状算出部320は、例えば、ケラト測定光学系50L(50R)により被検眼の角膜に投影された2つのリングパターンの戻り光をCCD21L(21R)により受光することにより取得されたリングパターン像に対して所定の演算処理を施す。それにより、2つのリングパターン上の2つの位置における角膜の形状を表すパラメータを他覚値として算出することが可能である。
更に、角膜形状算出部320は、算出された2つの位置の外挿位置におけるパラメータを推定することが可能である。これにより、リングパターン像の形状がほぼ正円である場合(すなわち、角膜の形状がほぼ正常である場合)に、2つのリングパターンを投影することにより角膜の広い範囲におけるパラメータを求めることができる。それにより、角膜の形状を広範囲にわたって高精度に特定することが可能になる。
また、角膜形状算出部320は、角膜における基準位置(例えば、角膜中心位置又はアライメント基準位置)を中心とする2以上の経線のそれぞれについて、上記の2つの位置の外挿位置のパラメータを推定することが可能である。角膜形状算出部320は、推定された2以上の外挿位置のパラメータを所定の関数で近似し、近似された所定の関数を用いて上記の2以上の経線と異なる経線上の所定の位置におけるパラメータを推定することが可能である。これにより、リングパターン像の形状が非正円である場合(すなわち、角膜の形状が異常である場合)に、2つのリングパターンを投影することにより角膜の広い範囲におけるパラメータを求めることができる。それにより、角膜の形状を広範囲にわたって高精度に特定することが可能になる。
このような角膜形状算出部320は、図6に示すように、像特定部321、像高特定部322、形状情報算出部323、第1フィッティング処理部324、第1推定部325、第2フィッティング処理部326、及び第2推定部327を含む。
像特定部321は、2つのリングパターンが投影された角膜からの戻り光の受光結果に基づいて、2つのリングパターン像を特定する。例えば、像特定部321は、角膜からの戻り光の受光結果に基づいて取得された受光像(前眼部像)の輝度分布を求め、求められた輝度分布から2つのリングパターン像の内側の位置(重心位置、中心位置)を求める。像特定部321は、求められた2つのリングパターン像の内側の位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布から2つのリングパターン像を特定する。
像高特定部322は、像特定部321により特定された2つのリングパターン像のそれぞれの像高を特定する。例えば、像高特定部322は、ケラト測定光学系50L(50R)の光軸(対物レンズ60L(60R)の光軸)を基準にリングパターン像のY方向(上下方向)の高さを像高(リングパターン像の半径に相当する高さ)として特定する。いくつかの実施形態では、受光像におけるケラト測定光学系50L(50R)の光軸の位置は、特定された2つのリングパターン像の内側の位置(重心位置、中心位置)に略一致する。この場合、像高特定部322は、特定された2つのリングパターン像の内側の位置を基準にリングパターン像のY方向(上下方向)の高さを像高として特定する。
形状情報算出部323は、像高特定部322により特定された像高を用いて角膜の形状を表す形状情報を算出する。
図7に、実施形態に係る形状情報算出部323の動作説明図を示す。図7は、CCD21L(21R)による受光結果に基づいて取得されたリングパターン像をXY平面上に模式的に表したものである。図7では、像高の基準となる光軸Oを図示するため、便宜的に対物レンズ60L(60R)が図示されている。
角膜の中央部の形状が略円形形状であると仮定すると、大きさが既知のリングパターンが投影された角膜からの戻り光に基づいて形成されるリングパターン像の像高hは、角膜の表面の曲率半径Rの関数として表される。例えば、無限遠から入射角(2×θ)で投影されたリングパターン光束の戻り光が平行光束として対物レンズ60L(60R)に戻る場合、角膜とリングパターン光束との交点(接平面Sp)の傾きdX/dYは、次の式(1)のように表される。
従って、dX/dYは曲率半径Rによらず一定となり、像高hを特定することにより曲率半径Rを求めることができる(θは既知)。
いくつかの実施形態では、形状情報算出部323は、像高特定部322により特定された像高hを用いて、リングパターン像上の位置における角膜形状情報としての曲率半径Rを式(1)から算出する。形状情報算出部323は、2つのリングパターン像上のそれぞれの位置における角膜形状情報としての曲率半径Rを算出する。
いくつかの実施形態では、形状情報算出部323は、2つのリングパターン像のそれぞれについて、次のように角膜形状情報を算出する。すなわち、曲率半径が既知の模型眼を用いて、大きさが既知の複数種類のリングパターンを投影したときの接平面Spの傾きdX/dYを事前に求めておく。形状情報算出部323は、リングパターン像毎に像高特定部322により特定された像高hを用いて接平面の傾きdX/dYを求めることで、測定対象の角膜の断面形状の微分カーブを表す情報を求める。形状情報算出部323は、求められた角膜の断面形状の微分カーブを表す情報を積分することにより、角膜の断面形状を表す情報を算出する。
第1フィッティング処理部324は、形状情報算出部323により算出されたリングパターン像上の位置と当該位置における曲率半径(角膜形状情報)とを、角膜の基準位置からの距離を変数として非球面を表す関数にフィッティングする。非球面の例として、コーニック面、バイコーニック面、チェビシェフ多項式面などがある。
以下では、第1フィッティング処理部324が、コーニック面を表す関数にフィッティングする場合について説明する。すなわち、第1フィッティング処理部324は、形状情報算出部323により算出された2つのリングパターン像上の2つの位置と当該2つの位置における2つの曲率半径とを、角膜の基準位置からの距離を変数としてコーニック面を表す関数にフィッティングする。
図8A及び図8Bに、実施形態に係る第1フィッティング処理部324及び第1推定部325の動作説明図を示す。図8Aは、2つのリングパターン像RP1、RP2上の2つの位置X1、X2と外挿位置X3とを模式的に表したものである。図8Bは、第1フィッティング処理部324によりフィッティングされるコーニック面を模式的に表したものである。
図8Aに示すように、形状情報算出部323は、リングパターン像RP1、RP2と角膜の基準位置O1を通る直線との交点である2つの位置X1、X2における曲率半径r1、r2を求める。第1フィッティング処理部324は、直線上の外挿位置X3における曲率半径r3を推定するために、コーニック面を表す関数を用いて角膜の表面を近似する。
コーニック面における基準位置O1からの距離xに対する像高hを表す関数h(x)は、次の式(2)のように表される。関数h(x)は、コーニック面を表す関数である。
式(2)において、kはコーニック定数を表し、A4、A6、A8は非球面係数を表し、
r0は基準位置O1における曲率半径を表す。第1フィッティング処理部324は、2つの位置X1、X2における曲率半径r1、r2を最小二乗法でフィッティングすることにより、コーニック定数(k)、非球面係数(A4、A6、A8)、基準位置O1における曲率半径(r0)を求める。
具体的には、第1フィッティング処理部324は、式(3)が最小になるように、コーニック定数(k)、非球面係数(A4、A6、A8)、基準位置O1における曲率半径(r0)を求める。式(3)において、nはリングパターン像の数を表し、riは距離xiにおける像高hiから求められる曲率半径を表す。
コーニック面を表す関数が式(2)のように表される場合、第1フィッティング処理部324は、式(4)~式(8)を解くことにより、コーニック定数(k)、非球面係数(A4、A6、A8)、基準位置O1における曲率半径(r0)を求める。
図8Bに示すコーニック面CMにおける基準位置O1からの距離xに対する曲率半径rを表す関数r(x)は、上記のように求められた式(2)を変形することで得られる。関数r(x)を用いて、基準位置O1からの所望の距離における曲率半径rを求めることが可能である。
第1推定部325は、2つの位置X1、X2の外挿位置X3(図8B参照)における曲率半径r3(角膜形状情報)を推定する。第1フィッティング処理部324により求められたコーニック定数、非球面係数及び曲率半径により特定される関数r(x)は、図8Bに示すように、コーニック面CMに対応する。コーニック面CMに対応する関数(r)を用いることで、基準位置O1から任意の距離の位置における曲率半径を求めることができる。第1推定部325は、関数r(x)を用いて外挿位置X3における曲率半径を算出し、算出された曲率半径r3を外挿位置X3における曲率半径として推定する。
角膜の形状がほぼ正常である場合、リングパターン像は略正円となる。それにより、外挿位置X3において推定された曲率半径をそのまま用いることができる。
角膜の形状が異常である場合、リングパターン像は非正円となる。この場合、複数の外挿位置において推定された複数の曲率半径を所定の関数(例えば、三角関数)でフィッティングし、得られた関数を用いて他の位置における曲率半径を推定することが可能である。
図9A及び図9Bに、実施形態に係る第2フィッティング処理部326及び第2推定部327の動作説明図を示す。図9Aは、角膜の基準位置O1を中心とする複数の経線上の複数の外挿位置X3-1、X3-2、・・・を模式的に表したものである。図9Bは、第2フィッティング処理部326によりフィッティングされる三角関数を模式的に表したものである。
形状情報算出部323は、角膜の基準位置O1を中心とする複数の経線のそれぞれについて、リングパターン像RP1、RP2と経線との交点である2つの位置(例えば、位置X1-1、X2-1)における曲率半径(例えば、r1-1、r2-1)を求める。リングパターン像と経線との交点における曲率半径については、図8Aと同様に求められる。これにより、リングパターン像RP1、RP2と2つの位置X1-1、X2-1を通る経線との交点における曲率半径r1-1、r2-1、リングパターン像RP1、RP2と2つの位置X1-2、X2-2を通る経線との交点における曲率半径r1-2、r2-2、・・・、リングパターン像RP1、RP2と2つの位置X1-N(Nは経線の総数)、X2-Nを通る経線との交点における曲率半径r1-N、r2-Nが得られる。
続いて、第1フィッティング処理部324は、複数の経線のそれぞれについて、求められた曲率半径を、経線上の外挿位置X3-1、X3-2、・・・、X3-Nを推定するためのコーニック面を表す関数にフィッティングする。第1フィッティング処理部324は、上記したように、各経線について求められたコーニック面を表す関数h(x)からコーニック面CMにおける基準位置O1からの距離xに対する曲率半径rを表す関数r(x)を求める。第1推定部325は、経線毎に、求められた関数r(x)を用いて経線上の外挿位置における曲率半径を求めることで、外挿位置X3-1、X3-2、・・・、X3-Nにおける曲率半径r3-1、r3-2、・・・、r3-Nを取得する(図9A)。
第2フィッティング処理部326は、第1推定部325により得られた複数の経線上の外挿位置X3-1、X3-2、・・・、X3-Nにおける曲率半径r3-1、r3-2、・・・、r3-Nを、経線の角度を変数として周期関数にフィッティングする。周期関数の例として、三角関数などがある。第2フィッティング処理部326は、第1推定部325により求められた2以上の外挿位置X3-1~X3-Nと、当該2以上の外挿位置における2以上の曲率半径r3-1~r3-Nとを、経線の角度を変数として三角関数にフィッティングする。
第2フィッティング処理部326は、第1フィッティング処理部324と同様に、2以上の外挿位置における曲率半径を最小二乗法でフィッティングすることにより、三角関数を表す公知の式の係数、位相、定数を求めることが可能である。
第2推定部327は、第2フィッティング処理部326により求められた三角関数を用いて、強主経線、弱主経線、及び軸角度を推定する。例えば、図9Bに示すような三角関数が求められた場合、第2推定部327は、曲率半径の最大値を強主経線と推定し、曲率半径の最小値を弱主経線と推定し、曲率半径が最小値となる経線の角度を軸角度と推定する。これにより、2つのリングパターンを角膜に投影することにより角膜の広い範囲で角膜の形状を特定し、角膜の乱視状態を高精度に特定することが可能になる。
以上のような構成を有する演算部210は、記憶部202又は図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、記憶部に記憶されたデータなどを参照しつつコンピュータプログラムを順次に実行することにより以下の機能を実現する。このような演算部210は、CPU等の演算制御用プロセッサを含む。
制御装置200は、以上のような制御の他に、眼科検査装置1のあらゆる動作制御やデータ処理を実行する。
制御装置200は、検者用コントローラ250と被検者用コントローラ260とそれぞれ有線又は無線の通信路を介して接続可能である。制御装置200は、検者用コントローラ250や被検者用コントローラ260に対する操作内容に対応した操作信号を受けて、眼科検査装置1の各部を制御する。制御装置200は、操作画面や測定を行うための各種情報などを検者用コントローラ250や被検者用コントローラ260の表示部に表示させることが可能である。
制御装置200や演算部210は、例えば、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成されていてもよい。演算部210は、制御装置200に含まれていてもよい。
なお、前述の光学系を用いたアライメントの動作原理、自覚検査の測定原理などは既に公知であるので、詳細な説明は省略する。
第1視標呈示部122Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれる視標呈示光学系10Lにより実現される。第2視標呈示部122Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれる視標呈示光学系10Rにより実現される。第1他覚測定部123Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれるレフ測定光学系40Lやケラト測定光学系50Lにより実現される。第2他覚測定部123Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれるレフ測定光学系40Rやケラト測定光学系50Rにより実現される。
制御装置200及び演算部210は、実施形態に係る「眼科情報処理装置」の一例である。眼科検査装置1は、実施形態に係る「眼科装置」の一例である。ケラト測定光学系50L、50R、像特定部321、像高特定部322、及び形状情報算出部323は、実施形態に係る「取得部」の一例である。第1推定部325、又は、第1推定部325及び第2推定部327は、実施形態に係る「推定部」の一例である。レフ測定光学系40L、40Rは、実施形態に係る「屈折力測定光学系」の一例である。ケラト測定光学系50L、50Rは、実施形態に係る「角膜形状測定光学系」の一例である。形状情報算出部323は、実施形態に係る「角膜形状情報算出部」の一例である。
[動作例]
次に、実施形態に係る眼科検査装置1の動作について説明する。
図10~図12に、眼科検査装置1の動作例のフロー図を示す。図10は、眼科検査装置1の全体的な動作例のフローを表す。図11は、図10のステップS2において取得されるリングパターン像が略正円である場合の具体的な動作例のフローを表す。図12は、図10のステップS2において取得されるリングパターン像が非正円である場合の具体的な動作例のフローを表す。
図10~図12は、特に言及しない限り左被検眼ELに対する検査フローを表すが、右被検眼ERに対する検査フローも左被検眼ELに対する検査フローと同様である。いくつかの実施形態では、左被検眼ELに対する検査フローの少なくとも一部が、右被検眼ERに対する検査フローの少なくとも一部と同時に実行される。記憶部202には、図10~図12に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。制御部201(制御装置200)は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、図10~図12に示す処理を実行する。
(S1:アライメント)
制御部201は、左右眼についてアライメント制御を実行する。すなわち、制御部201は、アライメント光学系30Lを用いて左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを実行する。また、制御部201は、アライメント光学系30Rを用いて右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のXY方向のアライメントを実行する。
続いて、制御部201は、アライメント光学系31Lを用いて取得された2つの被検眼画像に基づいて左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のZ方向のアライメントを実行する。また、制御部201は、アライメント光学系31Rを用いて取得された2つの被検眼画像に基づいて右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のZ方向のアライメントを実行する。
(S2:角膜形状測定)
次に、制御部201は、角膜形状測定を実行する。ステップS2については後述する。
制御部201では、ステップS2において算出された角膜形状情報が記憶部202に記憶される。制御部201からの指示、又は図示しない操作部に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科検査装置1の動作はステップS3に移行する。
(S3:眼屈折力測定)
続いて、制御部201は、屈折力測定を実行する。
眼屈折力測定では、制御部201は、前述のように眼屈折力測定のためのリング状の測定パターン光束を左被検眼EL(右被検眼ER)に投射させる。左被検眼EL(右被検眼ER)の測定パターン光束の戻り光に基づくリング像がCCD21L(21R)の撮像面に形成される。制御部201は、CCD21L(21R)により検出された眼底Efからの戻り光に基づくリング像を取得できたか否かを判定する。例えば、制御部201は、CCD21L(21R)により検出された戻り光に基づく像のエッジの位置(画素)を検出し、像の幅(外径と内径との差)が所定値以上であるか否かを判定する。或いは、制御部201は、所定の高さ(リング径)以上の点(像)に基づいてリングを形成できるか否かを判定することにより、リング像を取得できたか否かを判定してもよい。
リング像を取得できたと判定されたとき、眼屈折力算出部310は、左被検眼EL(右被検眼ER)に投射された測定パターン光束の戻り光に基づくリング像を公知の手法で解析する。制御部201は、LCD11L(11R)を更に雲霧位置に移動させた後、本測定としてリング像を再び取得させる。制御部201は、前述と同様に得られたリング像の解析結果から球面度数、乱視度数及び乱視軸角度(眼屈折力値)を眼屈折力算出部310に算出させる。
制御部201では、眼屈折力値などが記憶部202に記憶される。制御部201からの指示、又は図示しない操作部に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科検査装置1の動作はステップS4に移行する。
リング像を取得できないと判定されたとき、制御部201は、強度屈折異常眼である可能性を考慮して、図示しない合焦レンズをあらかじめ設定したステップでマイナス度数側(例えば-10D)、プラス度数側(例えば+10D)へ移動させることが可能である。制御部201は、各位置でリング像を検出させる。それでもリング像を取得できないと判定されたとき、制御部201は、所定の測定エラー処理を実行する。このとき、眼科検査装置1の動作はステップS4に移行してもよい。制御部201では、眼屈折力測定結果が得られなかったことを示す情報が記憶部202に記憶される。
(S4:自覚検査)
次に、制御部201は、自覚検査を実行する。
具体的には、制御部201は、ステップS2及びステップS3における他覚測定の結果に応じた位置に移動レンズ70L(70R)を移動させると共に、LCD11L(11R)に自覚検査用の視標を表示させる。このとき、制御部201は、他覚測定で得られた被検眼Eの乱視状態(乱視度数、乱視軸角度)に基づいて、この乱視状態が矯正されるように光学系を制御することが可能である。例えば、VCCレンズを制御することにより乱視状態を矯正することができる。
検者又は制御部201により視標が選択されると、制御部201は、LCD11L(11R)を駆動し、所望の視標を表示させる。この視標からの光は、眼底Efに投影される。
被検者は、眼底Efに投影された視標に対する応答を行う。例えば、視力表の場合には、被検者の応答により被検眼の視力値が決定される。例えば、乱視検査の場合には、ドットチャートが表示され、被検者の応答により左被検眼EL(右被検眼ER)の乱視度数が決定される。視標の選択とそれに対する被検者の応答が、検者又は制御部201の判断により繰り返し行われる。検者又は制御部201は、被検者からの応答に基づいて視力値或いは処方値(S、C、A)を決定する。
以上で、眼科検査装置1の動作は終了する(エンド)。
図10のステップS2において取得されるリングパターン像が略正円である場合、角膜形状算出部320は、ステップS2において図11に示すフローに従って動作する。
(S11:リングパターンを投影)
例えば、制御部201は、角膜形状測定用の固視標をLCD11L(11R)に表示させる。その後、制御部201は、ケラトリング光源を点灯させる。ケラトリング光源から光が出力されると、左被検眼EL(右被検眼ER)の角膜に2つのリングパターンが投射される。
(S12:戻り光を検出)
ステップS11において角膜に投影された2つのリングパターンの戻り光は、撮影光学系20L(20R)のCCD21L(21R)の撮像面で結像する。制御部201は、CCD21L(21R)を制御することにより、CCD21L(21R)の撮像面で形成された受光像を取得する。
(S13:リングパターン像を特定)
次に、制御部201は、ステップS12において取得された受光像に描出された2つのリングパターン像を、上記のように像特定部321に特定させる。
(S14:像高を特定)
続いて、制御部201は、ステップS13において特定されたリングパターン像の像高を、上記のように像高特定部322に特定させる。
(S15:曲率半径を算出)
次に、制御部201は、ステップS14において特定された像高から角膜形状情報としての曲率半径を、上記のように形状情報算出部323に算出させる。
(S16:コーニック面に近似)
その後、制御部201は、第1フィッティング処理部324を制御することにより、ステップS15において曲率半径が算出されたリングパターン像の位置と算出された曲率半径とを、上記のようにコーニック面を表す関数にフィッティングさせる。
(S17:外挿位置の曲率半径を推定)
次に、制御部201は、ステップS16において求められたコーニック面を表す関数を用いて、第1推定部325に外挿位置における曲率半径を推定させる。以上で、図10のステップS2の処理は終了である(エンド)。
以上のように、角膜形状算出部320は、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれについて、角膜形状を表す情報を算出する。すなわち、角膜形状算出部320は、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれについて、2つのリングパターン像上の位置における曲率半径(角膜形状情報)を算出し、当該2つの位置の外挿位置における曲率半径を推定する。
図10のステップS2において取得されるリングパターン像が非正円である場合、角膜形状算出部320は、ステップS2において図12に示すフローに従って動作する。
(S21:リングパターンを投影)
例えば、制御部201は、角膜形状測定用の固視標をLCD11L(11R)に表示させる。その後、制御部201は、ステップS11と同様に、ケラトリング光源を点灯させる。それにより、左被検眼EL(右被検眼ER)の角膜に2つのリングパターンが投射される。
(S22:戻り光を検出)
制御部201は、ステップS12と同様に、CCD21L(21R)を制御することにより、CCD21L(21R)の撮像面で形成された受光像を取得する。
(S23:リングパターン像を特定)
次に、制御部201は、ステップS13と同様に、ステップS22において取得された受光像に描出された2つのリングパターン像を像特定部321に特定させる。
(S24:像高を特定)
続いて、制御部201は、ステップS14と同様に、所定の経線について、ステップS23において特定されたリングパターン像の像高を像高特定部322に特定させる。
(S25:曲率半径を算出)
次に、制御部201は、ステップS15と同様に、ステップS24において特定された像高から角膜形状情報としての曲率半径を形状情報算出部323に算出させる。
(S26:コーニック面に近似)
その後、制御部201は、ステップS16と同様に、第1フィッティング処理部324を制御することにより、ステップS25において曲率半径が算出されたリングパターン像の位置と当該曲率半径とを、コーニック面を表す関数にフィッティングさせる。
(S27:外挿位置の曲率半径を推定)
次に、制御部201は、ステップS17と同様に、ステップS26において求められたコーニック面を表す関数を用いて、第1推定部325に外挿位置における曲率半径を推定させる。
(S28:次の経線?)
続いて、制御部201は、次の経線(現在の経線に対して角膜の中心位置を中心に所定の角度だけ回転させた経線)について、リングパターン像上の曲率半径の算出と、外挿位置における曲率半径の推定とを行うか否かを判定する。
例えば、制御部201は、外挿位置における曲率半径の推定数があらかじめ決められた数に達したか否かを判定することにより、次の経線についてリングパターン像上の曲率半径の算出と外挿位置における曲率半径の推定とを行うか否かを判定する。例えば、制御部201は、次の処理対象の経線の角度があらかじめ決められた角度に達したか否かを判定することにより、次の経線についてリングパターン像上の曲率半径の算出と外挿位置における曲率半径の推定とを行うか否かを判定する。
次の経線について処理を行うと判定されたとき(S28:Y)、眼科検査装置1の動作はステップS24に移行する。このとき、次の経線の角度は、現在の経線の角度に対して角膜の中心位置を中心に所定の角度だけ回転させた角度に設定される。
次の経線について処理を行わないと判定されたとき(S28:N)、眼科検査装置1の動作はステップS29に移行する。
(S29:三角関数に近似)
S28において次の経線について処理を行わないと判定されたとき(S28:N)、制御部201は、ステップS24~S27を繰り返して取得された2以上の外挿位置における曲率半径を、第2フィッティング処理部326に三角関数にフィッティングさせる。
(S30:強主経線、弱主経線等を推定)
続いて、制御部201は、ステップS29において求められた三角関数を用いて、強主経線、弱主経線、及び軸角度を第2推定部327に推定させる。以上で、図10のステップS2の処理は終了である(エンド)。
以上のように、角膜形状算出部320は、角膜の中心位置を中心とする複数の経線のそれぞれについて、2つのリングパターン像上の位置における曲率半径と外挿位置における曲率半径とを求め、2以上の外挿位置における曲率半径を推定する。そして、角膜形状算出部320は、上記のように、強主経線、弱主経線、及び軸角度を求める。
<変形例>
第1実施形態では、2つのリングパターンを角膜に投影する場合について説明したが、実施形態に係る眼科検査装置の構成はこれに限定されるものではない。3以上のリングパターンを角膜に投影する場合も、上記と同様である。
図13A及び図13Bに、第1実施形態の変形例に係る第1フィッティング処理部324及び第1推定部325の動作説明図を示す。図13Aは、3つのリングパターン像RP1、RP2、RP3上の3つの位置X1、X2、X3と外挿位置X4とを模式的に表したものである。図13Bは、第1フィッティング処理部324によりフィッティングされるコーニック面を模式的に表したものである。図13A及び図13Bにおいて、図8A及び図8Bと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
本変形例において、形状情報算出部323は、リングパターン像RP1、RP2、RP3と角膜の基準位置O1を通る直線との交点である3つの位置X1、X2、X3における曲率半径r1、r2、r3を求める。第1フィッティング処理部324は、直線上の外挿位置X4における曲率半径r4を推定するために、第1実施形態と同様に、コーニック面を表す関数を用いて角膜の表面を近似する。
第1実施形態と同様に求められた関数r(x)(図13B参照)を用いて、基準位置O1からの所望の距離における曲率半径rを求めることが可能である。すなわち、第1推定部325は、関数r(x)を用いて3つの位置X1、X2、X3の外挿位置X4(図13B参照)における曲率半径r4(角膜形状情報)を推定する。
角膜の形状がほぼ正常である場合、外挿位置X4において推定された曲率半径をそのまま用いることができる。
角膜の形状が異常である場合、第1実施形態と同様に、複数の外挿位置において推定された複数の曲率半径を所定の関数(例えば、三角関数)でフィッティングし、得られた関数を用いて他の位置における曲率半径を推定することが可能である。
図14に、第1実施形態の変形例に係る第2フィッティング処理部326及び第2推定部327の動作説明図を示す。図14は、角膜の基準位置O1を中心とする複数の経線上の複数の外挿位置X4-1、X4-2、・・・を模式的に表したものである。
形状情報算出部323は、角膜の基準位置O1を中心とする複数の経線のそれぞれについて、リングパターン像RP1、RP2、RP3と経線との交点である3つの位置(例えば、位置X1-1、X2-1、X3-1)における曲率半径(例えば、r1-1、r2-1、r3-1)を求める。これにより、リングパターン像RP1、RP2、RP3と3つの位置X1-1、X2-1、X3-1を通る経線との交点における曲率半径r1-1、r2-1、r3-1、リングパターン像RP1、RP2、RP3と3つの位置X1-2、X2-2、X3-2を通る経線との交点における曲率半径r1-2、r2-2、r3-2、・・・、リングパターン像RP1、RP2、RP3と3つの位置X1-N、X2-N、X3-Nを通る経線との交点における曲率半径r1-N、r2-N、r3-Nが得られる。
続いて、第1フィッティング処理部324は、複数の経線のそれぞれについて、経線上の外挿位置X4-1、X4-2、・・・、X4-Nを推定するためのコーニック面を表す関数にフィッティングする。第1フィッティング処理部324は、上記したように、各経線について求められたコーニック面を表す関数h(x)からコーニック面CMにおける基準位置O1からの距離xに対する曲率半径rを表す関数r(x)を求める。第1推定部325は、経線毎に、求められた関数r(x)を用いて経線上の外挿位置における曲率半径を求めることで、外挿位置X4-1、X4-2、・・・、X4-Nにおける曲率半径r4-1、r4-2、・・・、r4-Nを取得する(図14)。
第2フィッティング処理部326は、第1推定部325により得られた複数の経線上の外挿位置X4-1、X4-2、・・・、X4-Nにおける曲率半径r4-1、r4-2、・・・、r4-Nを、経線の角度を変数として周期関数にフィッティングする。第2フィッティング処理部326は、第1推定部325により求められた2以上の外挿位置X4-1~X4-Nと、当該2以上の外挿位置における2以上の曲率半径r4-1~r4-Nとを、経線の角度を変数として三角関数にフィッティングする。
第2推定部327は、第2フィッティング処理部326により求められた三角関数を用いて、強主経線、弱主経線、及び軸角度を推定する。例えば、図9Bに示すような三角関数が求められた場合、第2推定部327は、曲率半径の最大値を強主経線と推定し、曲率半径の最小値を弱主経線と推定し、曲率半径が最小値となる経線の角度を軸角度と推定する。
<第2実施形態>
第1実施形態又はその変形例では、基準位置O1に対して、外挿位置がリングパターン像上の位置より外側に存在する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。基準位置O1に対して外挿位置がリングパターン像上の位置より内側にある場合にも実施形態を適用することが可能である。
第2実施形態に係る眼科装置は、検査(測定)の種別及び光学系の配置に起因する制約条件の下で、角膜形状を測定するために径の大きいリングパターンを角膜に投影する。この場合、角膜におけるリングパターンの投影位置より内側の外挿位置における角膜形状情報が推定される。
第2実施形態に係る眼科装置は、対物レンズを共用化しつつ、複数の検査や測定を実行可能である。複数の検査や測定を実行可能な眼科装置において、検査や測定の種別に対応した複数の光学系で対物レンズを共用化することで装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
第2実施形態に係る眼科装置は、眼屈折力測定(レフ測定)と、スキャン計測とを実行可能である。スキャン計測は、計測用の光を偏向し、偏向された光を被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を検出することにより計測結果を得る。スキャン計測には、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いた計測や撮影、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)光学系を用いた計測や撮影などがある。以下では、実施形態に係る眼科装置が、スキャン計測として、眼底(又は前眼部)に対してOCTを実行する場合について説明する。
以下、実施形態では、スウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に詳しく説明するが、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ、タイムドメインタイプ)のOCTを用いる眼科装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、更に、自覚検査を行うための自覚検査光学系や、その他の他覚測定を行うための他覚測定系を含む。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。その他の他覚測定には、眼圧測定、眼底撮影等がある。
以下、眼底共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。同様に、瞳孔共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。
以下、作動距離は、被検眼から眼科装置の先端までの距離であるものとする。眼科装置の先端には、例えば、対物レンズの物体側のレンズ面、又はケラト板等の装置本体(筐体)の一部などがある。いくつかの実施形態では、作動距離は、対物レンズの光軸における距離である。
[構成]
図15及び図16に、第2実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。実施形態に係る眼科装置1000zは、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eを検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察系5zが設けられている。被検眼Eを検査するための光学系としてOCT光学系やレフ測定光学系(屈折力測定光学系)が設けられている。
眼科装置1000zは、Zアライメント系1z、XYアライメント系2z、ケラト測定系3z、固視投影系4z、前眼部観察系5z、レフ測定投射系6z、レフ測定受光系7z、及びOCT光学系8zを含む。以下では、例えば、前眼部観察系5zが940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6z、レフ測定受光系7z)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4zが400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8zが1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
(前眼部観察系5z)
前眼部観察系5zは、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5zを経由する光学系において、撮像素子59zの撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50zは、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51zを通過し、ダイクロイックミラー52zを透過し、絞り(テレセン絞り)53zに形成された孔部を通過し、ハーフミラー23zを透過する。ハーフミラー23zを透過した光は、リレーレンズ55z及び56zを通過し、ダイクロイックミラー76zを透過する。ダイクロイックミラー52zは、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5zの光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52zは、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51zの光軸に対して傾斜して配置される。実施形態において、リレーレンズ56zは、前眼部観察系5zの光軸(又はリレーレンズ56zの光軸)に沿って移動可能である。ダイクロイックミラー76zを透過した光は、結像レンズ58zにより撮像素子59z(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59zは、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59zの出力(映像信号)は、後述の処理部9zに入力される。処理部9zは、この映像信号に基づく前眼部像E´を後述の表示部10zの表示画面10zaに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。
(Zアライメント系1z)
Zアライメント系1zは、対物レンズ51zの光軸方向におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。Zアライメント光源11zから出力された光は、被検眼Eの角膜Crに投射され、角膜Crにより反射され、結像レンズ12zによりラインセンサー13zのセンサー面に結像される。角膜頂点の位置が前眼部観察系5zの光軸方向(対物レンズ51zの光軸方向)に変化すると、ラインセンサー13zのセンサー面における光の投射位置が変化する。処理部9zは、ラインセンサー13zのセンサー面における光の投射位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき光学系を移動させる機構を制御してZアライメントを実行する。
(XYアライメント系2z)
XYアライメント系2zは、前眼部観察系5zの光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2zは、ハーフミラー23zにより前眼部観察系5zの光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21zとコリメータレンズ22zとを含む。XYアライメント光源21zから出力された光は、コリメータレンズ22zを通過し、ハーフミラー23zにより反射され、前眼部観察系5zを通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5zを通じて撮像素子59zに導かれる。
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。処理部9zは、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部の表示画面に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9zは、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
(ケラト測定系3z)
ケラト測定系3zは、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31zは、対物レンズ51zと被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31zの背面側(対物レンズ51z側)にはケラトリング光源32zが設けられている。ケラト板31zには、対物レンズ51zの光軸を中心とする同心円状の2つの円周上に沿ってケラトリング光源32zからの光を透過するケラトパターン(透過部)が形成されている。なお、ケラトパターンは、対物レンズ51zの光軸を中心とする円弧状(円周の一部)に形成されていてもよい。ケラトリング光源32zからの光でケラト板31zを照明することにより、被検眼Eの角膜Crに同心円状の2つのリングパターンが投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59zにより前眼部像E´とともに検出される。処理部9zは、第1実施形態又はその変形例と同様に、ケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状情報を算出する。
(レフ測定投射系6z、レフ測定受光系7z)
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6z及びレフ測定受光系7zを含む。レフ測定投射系6zは、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7zは、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6zは、レフ測定受光系7zの光路に設けられた孔開きプリズム65zによって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65zに形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7zを経由する光学系において、撮像素子59zの撮像面は眼底共役位置に配置される。
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61zは、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61zは、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61zは、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61zから出力された光は、リレーレンズ62zを通過し、円錐プリズム63zの円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63zの底面から出射する。円錐プリズム63zの底面から出射した光は、リング絞り64zにリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64zの透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65zの孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66zを通過し、ダイクロイックミラー67zにより反射される。ダイクロイックミラー67zにより反射された光は、ダイクロイックミラー52zにより反射され、対物レンズ51zを通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム66zは、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51zを通過し、ダイクロイックミラー52z及びダイクロイックミラー67zにより反射される。ダイクロイックミラー67zにより反射された戻り光は、ロータリープリズム66zを通過し、孔開きプリズム65zの孔部を通過し、リレーレンズ71zを通過し、反射ミラー72zにより反射され、リレーレンズ73z及び合焦レンズ74zを通過する。合焦レンズ74zは、レフ測定受光系7zの光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74zを通過した光は、反射ミラー75zにより反射され、ダイクロイックミラー76zにより反射され、結像レンズ58zにより撮像素子59zの撮像面に結像される。処理部9zは、撮像素子59zからの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
(固視投影系4z)
ダイクロイックミラー67zによりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に、後述のOCT光学系8zが設けられる。ダイクロイックミラー83zによりOCT光学系8zの光路から分岐された光路に固視投影系4zが設けられる。
固視投影系4zは、固視標を被検眼Eに呈示する。固視投影系4zの光路には、固視ユニット40zが配置されている。固視ユニット40zは、後述の処理部9zからの制御を受け、固視投影系4zの光路に沿って移動可能である。固視ユニット40zは、LCD41zを含む。ダイクロイックミラー83zと固視ユニット40zとの間に、リレーレンズ42zが配置されている。
処理部9zによる制御を受けたLCD41zは、固視標を表すパターンを表示する。LCD41zの画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。
LCD41zからの光は、リレーレンズ42zを通過し、ダイクロイックミラー83zを透過し、リレーレンズ82zを通過し、反射ミラー81zにより反射され、ダイクロイックミラー67zを透過し、ダイクロイックミラー52zにより反射される。ダイクロイックミラー52zにより反射された光は、対物レンズ51zを通過して眼底Efに投射される。いくつかの実施形態では、LCD41z及びリレーレンズ42zのそれぞれは、独立に光軸方向に移動可能である。
(OCT光学系8z)
OCT光学系8zは、OCT計測を行うための光学系である。OCT計測よりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が撮影部位(眼底Ef又は前眼部)と光学系に共役となるように合焦レンズ87zの位置が調整される。
OCT光学系8zは、ダイクロイックミラー67zによりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4zの光路は、ダイクロイックミラー83zによりOCT光学系8zの光路に結合される。それにより、OCT光学系8z及び固視投影系4zのそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
OCT光学系8zは、OCTユニット100zを含む。図16に示すように、OCTユニット100zにおいて、OCT光源101zは、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、共振器を含むレーザー光源を含んで構成される。OCT光源101zは、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
図16に例示するように、OCTユニット100zには、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、処理部9zに送られる。
OCT光源101zは、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。OCT光源101zから出力された光L0は、光ファイバー102zにより偏波コントローラ103zに導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104zによりファイバーカプラー105zに導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバー110zによりコリメータ111zに導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112z及び分散補償部材113zを経由し、コーナーキューブ114zに導かれる。光路長補正部材112zは、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113zは、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114zは、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
コーナーキューブ114zを経由した参照光LRは、分散補償部材113z及び光路長補正部材112zを経由し、コリメータ116zによって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117zに入射する。光ファイバー117zに入射した参照光LRは、偏波コントローラ118zに導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119zによりアッテネータ120zに導かれて光量が調整され、光ファイバー121zによりファイバーカプラー122zに導かれる。
一方、ファイバーカプラー105zにより生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89zにより平行光束に変換され、光スキャナー88z、合焦レンズ87z、リレーレンズ85z、及び反射ミラー84zを経由し、ダイクロイックミラー83zにより反射される。
光スキャナー88zは、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88zは、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8zの光軸に直交する水平方向に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8zの光軸に直交する垂直方向に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。例えば、第1ガルバノミラーと第2ガルバノミラーとの間に、瞳孔共役位置が配置される。このような光スキャナー88zによる測定光LSの走査態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
ダイクロイックミラー83zにより反射された測定光LSは、リレーレンズ82zを通過し、反射ミラー81zにより反射され、ダイクロイックミラー67zを透過し、ダイクロイックミラー52zにより反射され、対物レンズ51zにより屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105zに導かれ、光ファイバー128zを経由してファイバーカプラー122zに到達する。
ファイバーカプラー122zは、光ファイバー128zを介して入射された測定光LSと、光ファイバー121zを介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラー122zは、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123z及び124zを通じて検出器125zに導かれる。
検出器125zは、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125zは、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130zに送る。
DAQ130zには、OCT光源101zからクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101zにおいて、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101zは、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130zは、検出器125zから入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130zは、検出器125zからの検出信号のサンプリング結果を処理部9zの演算処理部220zに送る。演算処理部220zは、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算処理部220zは、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
本例では、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114zが設けられているが、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
処理部9zは、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61zと撮像素子59zとが共役となる位置に、レフ測定光源61z及び合焦レンズ74zのそれぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9zは、合焦レンズ74zの移動に連動してOCT光学系8zの合焦レンズ87zをその光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9zは、レフ測定光源61z及び合焦レンズ74zの移動に連動してLCD41z(固視ユニット40z)をその光軸方向に移動させる。
実施形態に係る眼科装置1000zは、少なくともレフ測定光学系及びOCT光学系8zにおいて対物レンズを共用化しつつ、レフ測定光学系を用いたレフ測定(眼屈折力測定)とOCT光学系8zを用いたOCT計測とで作動距離を変更することが可能である。それにより、OCT光学系8zによるスキャン範囲を確保しつつ、簡素な構成で、高精度なレフ測定結果と高精度なOCT計測結果とを取得することができる。
[レフ測定を行うときの作動距離]
眼科装置1000zでは、レフ測定を行うときに器械近視の影響を受けないように作動距離(第1作動距離)が設定される。この作動距離は、角膜形状解析に有用なケラト測定結果の取得が可能な作動距離である。
図17に、第2実施形態に係るレフ測定を行うときの作動距離の説明図を示す。図17は、図15の光学系の一部を拡大した図である。図17において、図15と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
ケラト測定系3zは、作動距離が変化しても像高が変化しないケラトリング像を取得できるようにテレセントリックな光学である。ケラト測定系3zにより角膜Crに光を投射したとき、角膜が凸面鏡として作用し、主として角膜Crの前面で反射された像が現れる。
被検眼Eの角膜Crの曲率半径をRとし、対物レンズ51zの光軸に対するケラトリング像の像高をh1とし、光軸に対するリング状光束の投影角をαとする。ケラトリング光源32zからのリング状光束の入射位置にリングパターン(測定パターン)が配置されるためには、角膜Crの曲率中心と当該入射位置とを結ぶ線が光軸となす角をβとすると、以下の式(9)~式(10)が成立する。
ケラト板31zに形成されたケラトパターンの半径をHとし、ケラト板31zから被検眼E(角膜頂点)までの距離を作動距離WDrefとし、リング状光束の入射位置と角膜頂点との距離Δd(=R-√(R2-h12))を考慮すると、以下の式(11)が成立する。
以上より、実施形態に係る眼科装置1000zでは、レフ測定を行うとき、以下の式(12)に示す作動距離WDrefに設定される。式(12)は、式(11)に式(9)及び式(10)を代入することにより得られる。
いくつかの実施形態では、曲率半径Rには、模型眼等の既知のデータが用いられる。なお、対物レンズ51zの有効径Dは、リングパターンの半径Hから決定することができる。
例えば、角膜形状解析に有用な角膜Cr上のφ3のエリアの角膜形状を測定するために、h1=1.5ミリメートルである。
以上のように、レフ測定を行うとき、式(12)に示す作動距離WDrefを設定することにより、作動距離を長くして器械近視の影響を低減しつつ、ケラト板31zのサイズの大型化を防ぐことができる。それにより、簡素な構成で、高精度なレフ測定結果やケラト測定結果の取得可能な眼科装置を提供することができる。
[OCT計測を行うときの作動距離]
実施形態に係る眼科装置1000zでは、OCT計測を行うときに少なくとも標準データを用いた解析に有用なスキャン範囲をスキャンできるように作動距離(第2作動距離)が設定される。標準データは、多数の正常眼の測定データと当該測定データの被測定者の情報から統計的に導出され、正常眼データ(ノーマティブデータ)などと呼ばれる。OCT計測を行うときに設定される作動距離は、上記の標準データの導出に用いられた測定データが取得されたときのスキャン範囲(又は当該スキャン範囲より広い範囲)をスキャン可能な作動距離であってよい。
図18に、実施形態に係るOCT計測を行うときの作動距離の説明図を示す。図18は、図15の光学系の一部を拡大した図である。図18において、図15と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
所望のスキャン範囲のデータを網羅なく取得するために、光スキャナー88zはX方向及びY方向それぞれの方向に測定光LSを偏向する。眼底Efにおけるスキャン範囲をRA×RAの範囲とすると、光スキャナー88zは各方向に少なくともRA×√2(=SA)だけ偏向する必要がある。
ここで、光スキャナー88zが被検眼Eの瞳孔と光学的に略共役になるように配置される。作動距離をWDoctとし、角膜前面から瞳孔までの距離をLaとし、瞳孔から眼底までの距離をLeとし、ケラト板31z(被検眼Eの側の面)から対物レンズ51zの主面までの距離をLkとする。瞳孔を頂点とし底辺が対物レンズ51zの半径とする三角形と、瞳孔を頂点とし底辺が眼底Efにおけるスキャン範囲SA/2とする三角形との相似の関係から、スキャン範囲SAは、以下の式(13)を満たす。
以上より、実施形態に係る眼科装置1000zでは、OCT計測を行うとき、以下の式(14)に示す作動距離WDoctに設定される。
例えば、対物レンズ51zの有効径Dは、対物レンズ51zにおいてスキャン範囲SAのスキャンに必要なスキャン範囲の径(スキャン径)として、リングパターンの半径Hから決定される。いくつかの実施形態では、距離Le、Laには、標準的な眼のデータ、若しくは模型眼等の既知のデータが用いられる。いくつかの実施形態では、距離Lkは、眼科装置1000zにおいて既知のデータである。いくつかの実施形態では、距離Lkは略零である。
これにより、OCT計測で得られた結果を既存の標準データと比較し、既存の標準データを活用してOCT計測結果に対して有用な判断を補助することができるようになる。
以上のように、OCT計測を行うとき、式(14)に示す作動距離WDoctを設定することにより、標準データを用いた解析に有用なスキャン結果を取得することができる。それにより、簡素な構成で、既存の標準データを活用してOCT計測結果に対して有用な判断を補助することが可能な眼科装置を提供することができる。
眼科装置1000zは、レフ測定を行うときに作動距離WDrefとなるように被検眼Eに対して光学系をZ方向に相対的に移動し、OCT計測を行うときに作動距離WDoctとなるように被検眼Eに対して光学系をZ方向に相対的に移動する。
このような構成を有する眼科装置1000zにおいて、スキャン範囲SAとリングパターンの半径Hと作動距離WDref、WDoctとの間には所定の関係が存在する。
スキャン範囲SAを広くする場合、式(13)に示すように、対物レンズ51zの有効径Dを大きくしつつ、作動距離WDoctを小さくする必要がある。一方、式(11)に示すように、作動距離WDrefが小さくなると、リングパターンの半径Hが小さくなる。すなわち、対物レンズ51zの有効径Dを大きくすると、リングパターンの半径Hが小さくなる。
スキャン範囲を確保するためには対物レンズ51zの有効径Dを大きいことが望ましい。そこで、半径が大きいリングパターンを角膜に投影し、リングパターン像上の位置における角膜形状情報を用いて、リングパターンの内側の位置の角膜形状情報を推定する。この場合、φ3(h1=1.5mm)よりも大きいリングパターンを角膜に投影し、φ3に相当する位置の角膜形状情報を取得することができるようになる。
<処理系の構成>
眼科装置1000zの処理系の構成について説明する。眼科装置1000zの処理系の機能的構成の例を図19に示す。図19は、眼科装置1000zの処理系の機能ブロック図の一例を表す。図19において、図15又は図16と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
処理部9zは、眼科装置1000zの各部を制御する。また、処理部9zは、各種演算処理を実行可能である。処理部9zは、プロセッサ又は処理回路を含む。処理部9zは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
処理部9zは、制御部210zと、演算処理部220zとを含む。また、眼科装置1000zは、移動機構200zと、表示部270zと、操作部280zと、通信部290zとを含む。
レンズ移動機構56zDは、リレーレンズ56を移動させるための機構である。例えば、レンズ移動機構56zDには、リレーレンズ56を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210z(主制御部211z)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることによりレンズ移動機構56zDに対する制御を行う。
移動機構200zは、Zアライメント系1z、XYアライメント系2z、ケラト測定系3z、固視投影系4z、前眼部観察系5z、レフ測定投射系6z、レフ測定受光系7z及びOCT光学系8z等の光学系が収納されたヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。例えば、移動機構200zには、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210z(主制御部211z)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構200zに対する制御を行う。
(制御部210z)
制御部210zは、プロセッサを含み、眼科装置の各部を制御する。制御部210zは、主制御部211zと、記憶部212zとを含む。記憶部212zには、眼科装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部211zが動作することにより、制御部210zは制御処理を実行する。
主制御部211zは、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。主制御部211zは、Zアライメント系1z、XYアライメント系2z、ケラト測定系3z、固視投影系4z、前眼部観察系5z、レフ測定投射系6z、レフ測定受光系7z及びOCT光学系8zを制御する。
OCT光学系8zに対する制御には、OCT光源101zの制御、光スキャナー88zの制御、合焦レンズ87zの制御、コーナーキューブ114zの制御、検出器125zの制御、DAQ130zの制御などがある。OCT光源101zの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88zの制御には、第1ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御、第2ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御などがある。
合焦レンズ87zの制御には、合焦レンズ87zの光軸方向への移動制御、撮影部位に対応した合焦基準位置への合焦レンズ87zの移動制御、撮影部位に対応した移動範囲(合焦範囲)内での移動制御などがある。主制御部211zは、例えば、合焦レンズ74zの移動に連動して合焦レンズ87zを移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87zだけを移動させるようにしてもよい。
コーナーキューブ114zの制御には、コーナーキューブ114zの光路に沿った移動制御などがある。例えば、OCT光学系8zは、コーナーキューブ114zを光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200zと同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211zは、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114zを光路に沿った方向に移動させる。検出器125zの制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211zは、検出器125zにより検出された信号をDAQ130zによりサンプリングし、サンプリングされた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220z(画像形成部223z)に実行させる。
また、主制御部211zは、記憶部212zにデータを書き込む処理や、記憶部212zからデータを読み出す処理を行う。
(記憶部212z)
記憶部212zは、各種のデータを記憶する。記憶部212zに記憶されるデータとしては、例えば他覚測定の測定結果、断層像の画像データ、眼底像の画像データ、主制御部211zにより参照される制御情報、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212zには、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
(演算処理部220z)
演算処理部220zは、眼屈折力算出部221zと、角膜形状算出部222zと、画像形成部223zと、データ処理部224zとを含む。
眼屈折力算出部221zは、レフ測定投射系6zにより眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59zが受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。眼屈折力算出部221zの機能は、眼屈折力算出部310の機能と同様である。
角膜形状算出部222zは、前眼部観察系5zにより取得されたリングパターン像(ケラトリング像)に基づいて、角膜形状情報を算出する。角膜形状算出部222zの機能は、角膜形状算出部320の機能と同様である。すなわち、角膜形状算出部222zは、図6に示すように、像特定部321、像高特定部322、形状情報算出部323、第1フィッティング処理部324、第1推定部325、第2フィッティング処理部326、及び第2推定部327を含む。
図20A及び図20Bに、実施形態に係る第1フィッティング処理部324及び第1推定部325の動作説明図を示す。図20Aは、2つのリングパターン像RP1、RP2上の2つの位置X1、X2と外挿位置X3とを模式的に表したものである。図20Bは、第1フィッティング処理部324によりフィッティングされるコーニック面を模式的に表したものである。
図20Aに示すように、形状情報算出部323は、リングパターン像RP1、RP2と角膜の基準位置O1を通る直線との交点である2つの位置X1、X2における曲率半径r1、r2を求める。第1フィッティング処理部324は、直線上の外挿位置X3における曲率半径r3を推定するために、コーニック面を表す関数を用いて角膜の表面を近似する。
図20Bに示すコーニック面CMにおける基準位置O1からの距離xに対する曲率半径rを表す関数r(x)を用いて、基準位置O1からの所望の距離における曲率半径rを求めることが可能である。
第1推定部325は、2つの位置X1、X2の外挿位置X3(図20B参照)における曲率半径r3(角膜形状情報)を推定する。第1フィッティング処理部324により求められたコーニック定数、非球面係数及び曲率半径により特定される関数r(x)は、図20Bに示すように、コーニック面CMに対応する。コーニック面CMに対応する関数(r)を用いることで、基準位置O1から任意の距離の位置における曲率半径を求めることができる。第1推定部325は、関数r(x)を用いて外挿位置X3における曲率半径を算出し、算出された曲率半径r3を外挿位置X3における曲率半径として推定する。
角膜の形状がほぼ正常である場合、外挿位置X3において推定された曲率半径をそのまま用いることができる。
角膜の形状が異常である場合、第1実施形態と同様に、複数の外挿位置において推定された複数の曲率半径を所定の関数(例えば、三角関数)でフィッティングし、得られた関数を用いて他の位置における曲率半径を推定することが可能である。この処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
画像形成部223zは、検出器125zにより検出された信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部223zは、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、フィルター処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。このようにして取得される画像データは、複数のAライン(被検眼E内における各測定光LSの経路)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データを含むデータセットである。
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
データ処理部224zは、画像形成部223zにより形成された断層像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部224zは、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部224zは、前眼部観察系5zを用い得られた画像(前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
データ処理部224zは、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部224zは、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
(表示部270z、操作部280z)
表示部270zは、ユーザインターフェイス部として、制御部210zによる制御を受けて情報を表示する。表示部270zは、図15に示す表示部10zを含む。
操作部280zは、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280zは、眼科装置に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280zは、タッチパネル式の表示画面10zaに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
表示部270z及び操作部280zの少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10zaがある。
(通信部290z)
通信部290zは、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290zは、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000zに入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。通信部290zは、例えば処理部9zに設けられていてもよい。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態の変形例と同様に、2つのリングパターンを角膜に投影する場合に限定されるものではない。第2実施形態においても、3以上のリングパターンを角膜に投影することが可能である。
処理部9zは、実施形態に係る「眼科情報処理装置」の一例である。眼科装置1000zは、実施形態に係る「眼科装置」の一例である。ケラト測定系3z、像特定部321、像高特定部322、及び形状情報算出部323は、実施形態に係る「取得部」の一例である。第1推定部325、又は、第1推定部325及び第2推定部327は、実施形態に係る「推定部」の一例である。レフ測定投射系6z及びレフ測定受光系7zは、実施形態に係る「屈折力測定光学系」の一例である。ケラト測定系3zは、実施形態に係る「角膜形状測定光学系」の一例である。OCT光学系8zは、実施形態に係る「検査光学系」の一例である。形状情報算出部323は、実施形態に係る「角膜形状情報算出部」の一例である。
以上のように、第2実施形態では、外挿位置は、上記の2以上の位置に対して基準位置側の位置である。この場合、径の大きいリングパターンを投影し、リングパターンよりも内側の角膜形状情報を推定することが可能になる。それにより、少ないリングパターン数で、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
[効果]
実施形態に係る眼科情報処理装置、眼科装置、眼科情報処理方法、及びプログラムの効果について説明する。
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理装置(制御装置200及び演算部210、又は処理部9z)は、取得部(ケラト測定光学系50L、50R、像特定部321、像高特定部322、及び形状情報算出部323、又はケラト測定系3z、像特定部321、像高特定部322、及び形状情報算出部323)と、推定部(第1推定部325、又は、第1推定部325及び第2推定部327)とを含む。取得部は、被検眼の角膜上の2以上の位置における2以上の角膜形状情報を取得する。推定部は、2以上の角膜形状情報に基づいて、2以上の位置を通る直線上の外挿位置における角膜形状情報を推定する。
このような構成によれば、2以上の角膜形状情報を取得することで、外挿位置における角膜形状情報を推定することができる。それにより、少なくとも2つの角膜形状情報を取得するための測定パターンを角膜に投影することにより、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、推定部は、2以上の位置における2以上の角膜形状情報に対応した形状に近似された非球面を表す関数に基づいて外挿位置における角膜形状情報を求める。
このような構成によれば、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を高精度に推定することが可能になる。
いくつかの実施形態では、非球面を表す関数は、コーニック面を表す関数である。
このような構成によれば、コーニック面に近似された角膜のより広い範囲における角膜形状情報を高精度に推定することが可能になる。
いくつかの実施形態では、2以上の位置は、上記の直線上の基準位置を中心とする同心円状の2以上のリングパターン像上の位置である。
このような構成によれば、同心円状の2以上のリングパターンを角膜に投影することにより、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、取得部は、基準位置を通る2以上の経線のそれぞれについて、経線上の2以上の位置における2以上の角膜形状情報を取得し、推定部は、2以上の経線のそれぞれについて2以上の位置を通る経線上の外挿位置における角膜形状情報を推定し、推定された2以上の角膜形状情報に基づいて近似された所定の関数から2以上の経線と異なる所定の経線上の所定の位置における角膜形状情報を求める。
このような構成によれば、角膜の形状に異常がある場合でも、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、所定の関数は、三角関数である。
このような構成によれば、角膜の形状に異常がある場合でも、簡素な処理で角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、2以上の位置に対して基準位置側と反対側の位置である。
このような構成によれば、角膜形状情報が取得された2以上の位置に対して基準位置と反対側の外挿位置における角膜形状情報を取得することができる。それにより、例えば、基準位置を中心とする同心円状の径が小さいリングパターンを投影した場合でも、リングパターンより外側の外挿位置における角膜形状情報を推定することが可能となり、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、2以上の位置に対して基準位置側の位置である。
このような構成によれば、角膜形状情報が取得された2以上の位置に対して基準位置側の外挿位置における角膜形状情報を取得することができる。それにより、例えば、基準位置を中心とする同心円状の径が大きいリングパターンを投影した場合でも、リングパターンより内側の外挿位置における角膜形状情報を推定することが可能となり、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態に係る眼科装置(眼科検査装置1)は、対物レンズ(60L、60R)と、屈折力測定光学系(レフ測定光学系40L、40R)と、角膜形状測定光学系(ケラト測定光学系50L、50R)と、眼屈折力算出部(310)と、角膜形状情報算出部(形状情報算出部323)と、上記の眼科情報処理装置とを含む。屈折力測定光学系は、対物レンズを介して被検眼(左被検眼EL、右被検眼ER)に光を投射し、被検眼からの戻り光を検出する。角膜形状測定光学系は、基準位置を中心とする2以上のリングパターンを被検眼の角膜に投影し、角膜からの戻り光を検出する。眼屈折力算出部は、屈折力測定光学系において検出された戻り光に基づいて被検眼の屈折力を算出する。角膜形状情報算出部は、角膜形状測定光学系において検出された戻り光に基づいて2以上の位置における2以上の角膜形状情報を算出する。
一般に、屈折力測定において器械近視の影響を低減するために所定の作動距離を確保する必要がある場合に、所定の径以上のリングパターンを投影しようとすると対物レンズの径が大きくなる。対物レンズの大型化は装置の大型化及びコストの上昇を招くため、小さい径のリングパターンを投影せざるを得なくなる場合がある。このような場合、取得された2以上の位置における角膜形状情報を用いて上記2以上の位置に対して基準位置側と反対側の外挿位置における角膜形状情報を推定するようにしたので、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1z)は、対物レンズ(51z)と、検査光学系(OCT光学系8z)と、角膜形状測定光学系(ケラト測定系3z)と、角膜形状情報算出部(形状情報算出部323)と、上記の眼科情報処理装置とを含む。検査光学系は、光スキャナー(88z)を有し、光源(OCT光源101z)からの光(測定光LS)を光スキャナーにより偏向し、光スキャナーにより偏向された光を対物レンズを介して被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を検出する。角膜形状測定光学系は、基準位置を中心とする2以上のリングパターンを被検眼の角膜に投影し、角膜からの戻り光を検出する。角膜形状情報算出部は、角膜形状測定光学系において検出された戻り光に基づいて2以上の位置における2以上の角膜形状情報を算出する。
一般に、屈折力測定において器械近視の影響を低減するために所定の作動距離を確保することとスキャン範囲を広くすることとは、トレードオフの関係にある。このような場合に、スキャン範囲を広くする場合、対物レンズの径を小さくすることは難しいため、大きい径のリングパターンを投影せざるを得なくなる場合がある。このような場合、取得された2以上の位置における角膜形状情報を用いて上記2以上の位置に対して基準位置側の外挿位置における角膜形状情報を推定するようにしたので、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態に係る眼科情報処理方法は、被検眼の角膜上の2以上の位置における2以上の角膜形状情報を取得する取得ステップと、2以上の角膜形状情報に基づいて、2以上の位置を通る直線上の外挿位置における角膜形状情報を推定する推定ステップと、を含む。
このような方法によれば、2以上の角膜形状情報を取得することで、外挿位置における角膜形状情報を推定することができる。それにより、少なくとも2つの角膜形状情報を取得するための測定パターンを角膜に投影することにより、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、推定ステップは、2以上の位置における2以上の角膜形状情報に対応した形状に近似された非球面を表す関数に基づいて外挿位置における角膜形状情報を求める。
このような方法によれば、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を高精度に推定することが可能になる。
いくつかの実施形態では、非球面を表す関数は、コーニック面を表す関数である。
このような方法によれば、コーニック面に近似された角膜のより広い範囲における角膜形状情報を高精度に推定することが可能になる。
いくつかの実施形態では、2以上の位置は、上記の直線上の基準位置を中心とする同心円状の2以上のリングパターン像上の位置である。
このような方法によれば、同心円状の2以上のリングパターンを角膜に投影することにより、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、取得ステップは、基準位置を通る2以上の経線のそれぞれについて、経線上の2以上の位置における2以上の角膜形状情報を取得し、推定ステップは、2以上の経線のそれぞれについて2以上の位置を通る経線上の外挿位置における角膜形状情報を推定し、推定された2以上の角膜形状情報に基づいて近似された所定の関数から2以上の経線と異なる経線上の所定の位置における角膜形状情報を求める。
このような方法によれば、角膜の形状に異常がある場合でも、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、所定の関数は、三角関数である。
このような方法によれば、角膜の形状に異常がある場合でも、簡素な処理で角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、2以上の位置に対して基準位置側と反対側の位置である。
このような方法によれば、角膜形状情報が取得された2以上の位置に対して基準位置と反対側の外挿位置における角膜形状情報を取得することができる。それにより、例えば、基準位置を中心とする同心円状の径が小さいリングパターンを投影した場合でも、リングパターンより外側の外挿位置における角膜形状情報を推定することが可能となり、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態では、外挿位置は、2以上の位置に対して基準位置側の位置である。
このような方法によれば、角膜形状情報が取得された2以上の位置に対して基準位置側の外挿位置における角膜形状情報を取得することができる。それにより、例えば、基準位置を中心とする同心円状の径が大きいリングパターンを投影した場合でも、リングパターンより内側の外挿位置における角膜形状情報を推定することが可能となり、角膜のより広い範囲で角膜形状情報を取得することが可能になる。
いくつかの実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、上記のいずれかに記載の眼科情報処理方法の各ステップを実行させる。
このようなプログラムによれば、2以上の角膜形状情報を取得することで、外挿位置における角膜形状情報を推定することができる。それにより、少なくとも2つの角膜形状情報を取得するための測定パターンを角膜に投影することにより、角膜のより広い範囲における角膜形状情報を取得することが可能になる。
[その他]
なお、前述の実施形態又はその変形例は、図2、図3で説明した光学系の構成や図4~図6で説明した制御系の構成や制御内容に限定されるものではない。例えば、眼圧測定、眼底撮影、OCTの手法を用いたOCT計測などの他覚測定や、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などの自覚屈折測定や、視野検査などの自覚検査が可能に構成されていてよい。
すなわち、実施形態に係る眼科検査装置は、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などを実行可能であり、且つ、他覚測定として、他覚屈折測定、角膜形状測定、OCT計測などを実行可能な装置であってよい。OCT計測では、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などの被検眼の構造を表す眼球情報の取得が行われてもよい。
いくつかの実施形態では、上記の眼科情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。このようなプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD-ROM/DVD-RAM/DVD-ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を適宜に施すことが可能である。