添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、第1の実施形態で使用する拡張装置2について説明する。図1は、拡張装置2の斜視図である。なお、図1では、拡張装置2の構成要素の一部を省略している。
拡張装置2は、各構造を支持する基台4を備える。基台4の上面4aの中央部には、昇降機構6が配置されている。昇降機構6は、円柱形状のピストンと、ピストンを上下移動させるエアシリンダとを含む。昇降機構6の上端部には、板状のワーク11(図3(A)等参照)が保持される円盤状のチャックテーブル(保持テーブル)8が固定されている。
チャックテーブル8は、円盤状の多孔質プレート(不図示)を有する。多孔質プレートには、流路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源を動作させると、多孔質プレートの上面には負圧が発生する。
この負圧により、多孔質プレートの上面は、ワーク11等(図3(A)等参照)を吸引して保持する保持面8a(図2等参照)として機能する。なお、保持面8aの大きさは、ワーク11の一面(例えば、裏面11b)の大きさと略同じである。
チャックテーブル8の近傍には、基台4に対して移動可能な第1の移動基台10が設けられている。第1の移動基台10は、基台4に設けられた第1の移動機構12と連結されている。
第1の移動機構12は、第1の移動基台10の底部がスライド可能に取り付けられたガイドレール(不図示)と、ボールネジとを含み、このボールネジには、第1の移動基台10に設けられたナット部(不図示)が回転可能な態様で連結されている。
第1の移動機構12は、ボールネジの一端に取り付けられたパルスモータを更に含む。パルスモータを駆動させれば、ボールネジが回転し、第1の移動基台10は、チャックテーブル8の保持面8aを横断する第1の方向D1に沿って移動する。第1の方向D1は、例えば、保持面8aに略平行な方向である。
第1の移動基台10には、ワーク11に貼り付けられた保護テープ(シート)17(図3(A)等参照)を挟持する第1の挟持ユニット14が設けられている。第1の挟持ユニット14は、第1の上側ユニット16と第1の下側ユニット18とを有する。
第1の上側ユニット16は、略L字状の第1の上側アーム部16aを含む。第1の上側アーム部16aの先端部には、下面側が保護テープ17に接触する第1の上側接触部16bが固定されている。
第1の上側接触部16bは、平面視においてチャックテーブル8の外側の領域に配置されている。また、第1の上側接触部16bは、保持面8aを横断し且つ第1の方向D1に直交する第2の方向D2に沿って直線状に配置されている。本実施形態において第1の上側接触部16bの第2の方向D2の長さは、350mm以上380mm以下である。
第2の方向D2も、第1の方向D1と同様に、保持面8aに平行な方向である。なお、第1の上側接触部16bの下部には、第2の方向D2に沿って複数のローラー(不図示)が設けられている。各ローラーは、高さが第1の方向D1に沿う円柱形状である。
第1の上側アーム部16aの基端部には、第1の移動基台10に設けられた第1の上側昇降機構16cが連結されている。第1の上側昇降機構16cは、拡張装置2の高さ方向に沿うボールネジと、当該ボールネジの上端部に設けられたパルスモータとを含む。ボールネジは、第1の上側アーム部16aの基端部に設けられたナット部に回転可能な態様で連結されている。
第1の上側ユニット16と同様に、第1の下側ユニット18は、略L字状の第1の下側アーム部18aを含む。第1の下側アーム部18aの先端部には、上面側が保護テープ17に接触する第1の下側接触部18bが固定されている。
第1の下側接触部18bは、第1の上側接触部16bと対面する態様で、第1の上側接触部16bの下方に配置されている。また、第1の下側接触部18bは直線状の長手部を有し、当該長手部は第2の方向D2に沿って配置されている。本実施形態において第1の下側接触部18bの第2の方向D2の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第1の下側接触部18bの上部には、第2の方向D2に沿って複数のローラーが設けられている。各ローラーは、高さが第1の方向D1に沿う円柱形状である。ところで、第1の下側アーム部18aの基端部には、第1の移動基台10に設けられた第1の下側昇降機構18cが連結されている。
第1の下側昇降機構18cは、拡張装置2の高さ方向に沿うボールネジと、当該ボールネジの下端部に設けられたパルスモータとを含む。ボールネジは、第1の下側アーム部18aの基端部に設けられたナット部に回転可能な態様で連結されている。
第1の挟持ユニット14で保護テープ17を挟持するには、第1の上側昇降機構16cで第1の上側接触部16bを下降させ、第1の下側昇降機構18cで第1の下側接触部18bを上昇させる。これにより、第1の上側接触部16b及び第1の下側接触部18bの各ローラーにより、保護テープ17の外周部の一部(被挟持領域P1(図3(A)等参照))が上下方向で挟持される。
第1の方向D1においてチャックテーブル8を間に挟む様に、第1の挟持ユニット14及び第2の挟持ユニット24が設けられている。第2の挟持ユニット24も、第1の挟持ユニット14と同様に保護テープ17を挟持する。
第2の挟持ユニット24の構成は、第1の挟持ユニット14の構成と同様である。第2の挟持ユニット24は、第2の移動基台20に設けられている。第2の移動基台20は、第2の移動機構22によって第1の方向D1に沿って移動する。
第2の挟持ユニット24は、第2の上側ユニット26と第2の下側ユニット28とを有する。第2の上側ユニット26は、略L字状の第2の上側アーム部26aを含む。第2の上側アーム部26aの先端部には、保護テープ17に接触する第2の上側接触部26bが固定されている。
第2の上側接触部26bは、平面視においてチャックテーブル8の外側の領域に配置されている。また、第2の上側接触部26bは、直線状の長手部を有し、当該長手部は第2の方向D2に沿って配置されている。本実施形態において第2の上側接触部26bの第2の方向D2の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第2の上側接触部26bの下部には、第2の方向D2に沿って複数のローラー(不図示)が設けられている。各ローラーは、高さが第1の方向D1に沿う円柱形状である。また、第2の上側アーム部26aの基端部には、第2の移動基台20に設けられた第2の上側昇降機構26cが連結されている。第2の上側昇降機構26cは、第1の上側昇降機構16cと同じであるので説明を省略する。
第2の上側ユニット26と同様に、第2の下側ユニット28は、略L字状の第2の下側アーム部28aを含む。第2の下側アーム部28aの先端部には、保護テープ17に接触する第2の下側接触部28bが固定されている。
第2の下側接触部28bは、第2の上側接触部26bと対面する態様で、第2の上側接触部26bの下方に配置されている。また、第2の下側接触部28bは、直線状の長手部を有し、当該長手部は第2の方向D2に沿って配置されている。本実施形態において第2の下側接触部28bの第2の方向D2の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第2の下側接触部28bの上部には、第2の方向D2に沿って複数のローラーが設けられている。各ローラーは、高さが第1の方向D1に沿う円柱形状である。また、第2の下側アーム部28aの基端部には、第2の移動基台20に設けられた第2の下側昇降機構28cが連結されている。第2の下側昇降機構28cは、第1の下側昇降機構18cと同じであるので説明を省略する。
第2の挟持ユニット24で保護テープ17を挟持するには、第2の上側昇降機構26cで第2の上側接触部26bを下降させ、第2の下側昇降機構28cで第2の下側接触部28bを上昇させる。これにより、第2の上側接触部26b及び第2の下側接触部28bの各ローラーにより、保護テープ17の外周部の別の一部(被挟持領域P2(図3(A)等参照))が上下方向で挟持される。
第1の挟持ユニット14及び第2の挟持ユニット24で保護テープ17を挟持した状態で、第1の移動機構12及び第2の移動機構22により、第1の挟持ユニット14及び第2の挟持ユニット24を第1の方向D1に沿って互いに離れる向きに移動させれば、保護テープ17を第1の方向D1に拡張できる。
第2の方向D2においてチャックテーブル8を間に挟む様に、第3の挟持ユニット34及び第4の挟持ユニット44が設けられている。第3の挟持ユニット34は、第3の移動基台30に設けられている。
第3の移動基台30は、第3の移動機構32によって第2の方向D2に移動する。第3の移動機構32は、第2の方向D2に沿うボールネジ、当該ボールネジの一端に設けられたパルスモータ等で構成されている。
第3の挟持ユニット34は、第3の上側ユニット36と第3の下側ユニット38とを有する。第3の上側ユニット36は、第2の方向D2に沿う直線状の第3の上側アーム部36aを含む。第3の上側アーム部36aの先端部には、保護テープ17に接触する第3の上側接触部36bが固定されている。
第3の上側接触部36bは、平面視においてチャックテーブル8の外側の領域に配置されている。また、第3の上側接触部36bは直線状の長手部を有し、当該長手部は第1の方向D1に沿って配置されている。本実施形態において第3の上側接触部36bの第1の方向D1の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第3の上側接触部36bの下部には、第1の方向D1に沿って複数のローラー(不図示)が設けられている。各ローラーは、高さが第2の方向D2に沿う円柱形状である。また、第3の上側アーム部36aの基端部には、第3の移動基台30に設けられた第3の上側昇降機構36cが連結されている。第3の上側昇降機構36cは、第1の上側昇降機構16cと同じであるので説明を省略する。
第3の上側ユニット36と同様に、第3の下側ユニット38は、第2の方向D2に沿う直線状の第3の下側アーム部38aを含む。第3の下側アーム部38aの先端部には、保護テープ17に接触する第3の下側接触部38bが固定されている。
第3の下側接触部38bは、第3の上側接触部36bと対面する態様で、第3の上側接触部36bの下方に配置されている。また、第3の下側接触部38bは、直線状の長手部を有し、当該長手部は第1の方向D1に沿って配置されている。本実施形態において第3の下側接触部38bの第1の方向D1の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第3の下側接触部38bの上部には、第1の方向D1に沿って複数のローラーが設けられている。各ローラーは、高さが第2の方向D2に沿う円柱形状である。また、第3の下側アーム部38aの基端部には、第3の移動基台30に設けられた第3の下側昇降機構38cが連結されている。第3の下側昇降機構38cは、第1の下側昇降機構18cと同じであるので説明を省略する。
第3の挟持ユニット34で保護テープ17を挟持するには、第3の上側昇降機構36cで第3の上側接触部36bを下降させ、第3の下側昇降機構38cで第3の下側接触部38bを上昇させる。これにより、第3の上側接触部36b及び第3の下側接触部38bの各ローターにより、保護テープ17の外周部の他の一部(被挟持領域P3(図3(A)等参照))が上下方向で挟持される。
第4の挟持ユニット44は、第4の移動基台40に設けられている。第4の移動基台40は、第4の移動機構42によって第2の方向D2に移動する。第4の移動機構42は、第2の方向D2に沿うボールネジ、当該ボールネジの一端に設けられたパルスモータ等で構成されている。なお、第4の移動機構42、第3の移動機構32、第2の移動機構22及び第1の移動機構12は、各挟持ユニットを移動させる移動装置を構成する。
第4の挟持ユニット44は、第4の上側ユニット46と第4の下側ユニット48とを有する。第4の上側ユニット46は、第2の方向D2に沿う直線状の第4の上側アーム部46aを含む。第4の上側アーム部46aの先端部には、保護テープ17に接触する第4の上側接触部46bが固定されている。なお、図1では、第4の上側接触部46bの一部が省略されている。
第4の上側接触部46bは、平面視においてチャックテーブル8の外側の領域に配置されている。また、第4の上側接触部46bは直線状の長手部を有し、当該長手部は第1の方向D1に沿って配置されている。本実施形態において第4の上側接触部46bの第1の方向D1の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第4の上側接触部46bの下部には、第1の方向D1に沿って複数のローラー(不図示)が設けられている。各ローラーは、高さが第2の方向D2に沿う円柱形状である。第4の上側アーム部46aの基端部には、第4の移動基台40に設けられた第4の上側昇降機構46cが連結されている。第4の上側昇降機構46cは、第1の上側昇降機構16cと同じであるので説明を省略する。
第4の上側ユニット46と同様に、第4の下側ユニット48は、第2の方向D2に沿う直線状の第4の下側アーム部48aを含む。第4の下側アーム部48aの先端部には、保護テープ17に接触する第4の下側接触部48bが固定されている。
第4の下側接触部48bは、第4の上側接触部46bと対面する態様で、第4の上側接触部46bの下方に配置されている。また、第4の下側接触部48bは、直線状の長手部を有し、当該長手部は第1の方向D1に沿って配置されている。本実施形態において第4の下側接触部48bの第1の方向D1の長さは、350mm以上380mm以下である。
なお、第4の下側接触部48bの上部には、第1の方向D1に沿って複数のローラーが設けられている。各ローラーは、高さが第2の方向D2に沿う円柱形状である。また、第4の下側アーム部48aの基端部には、第4の移動基台40に設けられた第4の下側昇降機構48cが連結されている。第4の下側昇降機構48cは、第1の下側昇降機構18cと同じであるので説明を省略する。
第4の挟持ユニット44で保護テープ17を挟持するには、第4の上側昇降機構46cで第4の上側接触部46bを下降させ、第4の下側昇降機構48cで第4の下側接触部48bを上昇させる。これにより、第4の上側接触部46b及び第4の下側接触部48bの各ローラーにより、保護テープ17の外周部の別の他の一部(被挟持領域P4(図3(A)等参照))が上下方向で挟持される。
第3の挟持ユニット34及び第4の挟持ユニット44で保護テープ17を挟持した状態で、第3の移動機構32及び第4の移動機構42により、第3の挟持ユニット34及び第4の挟持ユニット44を第2の方向D2に沿って互いに離れる向きに移動させれば、保護テープ17を第2の方向D2に拡張できる。
チャックテーブル8の上方には上方気体供給部50が設けられており、チャックテーブル8の下方には下方気体供給部52が設けられている。図2は、上方気体供給部50及び下方気体供給部52と、チャックテーブル8との位置関係を示す斜視図である。
上方気体供給部50は、第1の上方気体噴射ユニット50aを有する。第1の上方気体噴射ユニット50aの噴射口は被挟持領域P1の一面17a(図3(A)等参照)側に向かって配置されており、第1の上方気体噴射ユニット50aは、チャックテーブル8の上方から被挟持領域P1の一面17a側に向かって気体を噴射(供給)する。なお、被挟持領域P1は、例えば、保護テープ17の外周部のうち第1の上側接触部16b及び第1の下側接触部18bの間に位置する領域である。
また、上方気体供給部50は、第2の上方気体噴射ユニット50bを有する。第2の上方気体噴射ユニット50bの噴射口は被挟持領域P2の一面17a側に向かって配置されており、第2の上方気体噴射ユニット50bは、チャックテーブル8の上方から被挟持領域P2の一面17a側に向かって気体を噴射(供給)する。なお、被挟持領域P2は、例えば、保護テープ17の外周部のうち第2の上側接触部26b及び第2の下側接触部28bの間に位置する領域である。
更に、上方気体供給部50は、第3の上方気体噴射ユニット50cを有する。第3の上方気体噴射ユニット50cの噴射口は被挟持領域P3の一面17a側に向かって配置されており、第3の上方気体噴射ユニット50cは、チャックテーブル8の上方から被挟持領域P3の一面17a側に向かって気体を噴射(供給)する。なお、被挟持領域P3は、例えば、保護テープ17の外周部のうち第3の上側接触部36b及び第3の下側接触部38bの間に位置する領域である。
加えて、上方気体供給部50は、第4の上方気体噴射ユニット50dを有する。第4の上方気体噴射ユニット50dの噴射口は被挟持領域P4の一面17a側に向かって配置されており、第4の上方気体噴射ユニット50dは、チャックテーブル8の上方から被挟持領域P4の一面17a側に向かって気体を噴射(供給)する。なお、被挟持領域P4は、例えば、保護テープ17の外周部のうち第4の上側接触部46b及び第4の下側接触部48bの間に位置する領域である。
噴射される気体は、例えばエアーAであり(図3(A)等参照)、第1の上方気体噴射ユニット50aから第4の上方気体噴射ユニット50dの各々は、例えば、圧縮エアーを噴射するエアー噴射装置である。
各エアー噴射装置は、圧縮エアー供給源(不図示)に一端が接続されたエアー流路(不図示)と、このエアー流路の他端に接続されたノズルとを含む。各エアー噴射装置は、被挟持領域に対応する範囲であって、保護テープ17の一辺の1/4以上1/3以下(例えば、100mm)の範囲にエアーAを噴射する。
各エアー噴射装置のエアー流路には、電磁弁(不図示)と、流量計(不図示)とが接続されており、エアーAの噴射時間、流量等は、拡張装置2に接続されたコンピュータ等の制御部(不図示)により制御される。
上方気体供給部50と同様に、下方気体供給部52は、噴射口が被挟持領域P1の他面17b(図3(A)等参照)側に向かって配置された第1の下方気体噴射ユニット52aを有する。第1の下方気体噴射ユニット52aは、チャックテーブル8の下方から被挟持領域P1の他面17b側に向かって気体を噴射(供給)する。
また、下方気体供給部52は、噴射口が被挟持領域P2の他面17b側に向かって配置された第2の下方気体噴射ユニット52bを有する。第2の下方気体噴射ユニット52bは、チャックテーブル8の下方から被挟持領域P2の他面17b側に向かって気体を噴射(供給)する。
更に、下方気体供給部52は、噴射口が被挟持領域P3の他面17b側に向かって配置された第3の下方気体噴射ユニット52cを有する。第3の下方気体噴射ユニット52cは、チャックテーブル8の下方から被挟持領域P3の他面17b側に向かって気体を噴射(供給)する。
加えて、下方気体供給部52は、噴射口が被挟持領域P4の他面17b側に向かって配置された第4の下方気体噴射ユニット52dを有する。第4の下方気体噴射ユニット52dは、チャックテーブル8の下方から被挟持領域P4の他面17b側に向かって気体を噴射(供給)する。
第1の下方気体噴射ユニット52aから第4の下方気体噴射ユニット52dの各々は、例えば、上方気体噴射ユニットと同様の構成を有するエアー噴射装置であり、被挟持領域に対応する範囲であって、保護テープ17の一辺の1/4以上1/3以下の範囲にエアーAを噴射する。各エアー噴射装置のエアー流路に接続された電磁弁等の動作を制御することにより、エアーAの噴射時間、流量等が制御される。
次に、拡張装置2を用いて加工されるワーク11について説明する。図3(A)及び図3(B)に示す様に、ワーク11は、例えば、シリコン等の材料でなる円盤状のウェーハである。ワーク11の表面11a側には、格子状に複数の分割予定ライン13が設定されている。
複数の分割予定ライン13で区画された各領域には、IC、LSI等のデバイス15が形成されている。また、ワーク11には、各分割予定ライン13に沿って、分割の起点となる改質領域(即ち、機械的強度が比較的低い領域)が形成されている。
改質領域は、例えば、ワーク11を透過する波長を有するレーザービームをワーク11の内部に集光させた状態で、レーザービームの集光点とワーク11とを分割予定ライン13に沿って相対的に移動させることで形成できる。
なお、ワーク11は、各分割予定ライン13に沿って切断されていてもよい。例えば、環状の切削ブレード(不図示)を分割予定ライン13に沿って切り込み、切削ブレードとワーク11とを分割予定ライン13に沿って相対的に移動させることで、ワーク11を切断できる。
ワーク11の裏面11b側には、保護テープ17の一面(上面)17a側が貼り付けられている。本実施形態のワーク11は、保護テープ17の一面17aの中央部に貼り付けられている。なお、ワーク11の裏面11b側には、DAF(Die Attach Film)が設けられてもよい。
保護テープ17は、略矩形形状を有する。本実施形態の保護テープ17は、一辺の長さが390mm以上400mm以下の略正方形形状を有する。保護テープ17の一面17aは、ワーク11の表面11a又は裏面11bよりも大きい。
保護テープ17を介してワーク11の裏面11b側を保持面8aで保持すると、保護テープ17の外周部は、第1の方向D1の一方側及び他方側と、第2の方向D2の一方側と他方側とで保持面8aの外側にはみ出す。
保護テープ17は、樹脂で形成されており、伸縮性を有する。保護テープ17は、例えば、基材層及び粘着層(糊層)の積層構造を有する。本実施形態の基材層は、ポリオレフィン(PO)等の樹脂で形成されており、厚さが80μmである。
基材層の一面の全体、又は、基材層の外周部には、粘着層(糊層)が形成されている。本実施形態の粘着層は、粘着性の樹脂(例えば、紫外線(UV)硬化型樹脂)で形成されており、厚さが30μmである。
次に、拡張装置2を用いて保護テープ17を拡張する拡張方法について説明する。まず、ワーク11の裏面11b側を、保護テープ17の一面(上面)17a側の中央部に貼り付ける(貼り付け工程(S10))。
貼り付け工程(S10)の後、保護テープ17の一面17aとは反対側に位置する他面(下面)17bを、チャックテーブル8の保持面8aで保持する(保持工程(S20))。保持工程(S20)では、保護テープ17のうちワーク11の貼り付け領域に対応する他面17bの中央部が、保持面8aで保持される。なお、保持面8aの外側にはみ出している保護テープ17の外周部は、重力により垂れ下がっている場合がある。
保持工程(S20)の後、上方気体供給部50及び下方気体供給部52を動作させて、保護テープ17の外周部に気体を供給する(即ち、送風する)(送風工程(S30))。例えば、3秒以上10秒以下の間、0.1MPa以上0.2MPa以下の噴射圧力で、上方気体供給部50及び下方気体供給部52から気体を供給する。
図3(A)は、送風工程(S30)での拡張装置2の上面図であり、図3(B)は、送風工程(S30)での拡張装置2の一部断面側面図である。なお、図3(B)以降の図では、図1で説明したローラーを省略している。
送風工程(S30)により、保護テープ17の内側から外側に向かう気体の流れが形成される。保護テープ17の外周部が重力により垂れ下がっていた場合には、保護テープ17の外周部が浮上して中央部と略同じ高さとなる。
加えて、送風工程(S30)では、気体の流れにより、第1の挟持ユニット14から第4の挟持ユニット44で挟持される保護テープ17の被挟持領域P1からP4近傍の保護テープ17のたるみが低減される。
送風工程(S30)を継続しながら、第1の挟持ユニット14から第4の挟持ユニット44で、たるみが低減された状態の保護テープ17の外周部をそれぞれ挟持する(挟持工程(S40))。図4は、挟持工程(S40)での拡張装置2の一部断面側面図である。
挟持工程(S40)の後、上方気体供給部50及び下方気体供給部52の動作を停止させて、送風を止める。更に、チャックテーブル8に接続されている吸引源の動作を停止させる。これにより、保持面8aでの保護テープ17の吸引が解除される。
その後、第1の移動機構12及び第2の移動機構22を動作させて、第1の挟持ユニット14及び第2の挟持ユニット24を第1の方向D1に沿って互いに離れる向きに移動させる。これと同時に、第3の移動機構32及び第4の移動機構42を動作させて、第3の挟持ユニット34及び第4の挟持ユニット44を第2の方向D2に沿って互いに離れる向きに移動させる(拡張工程(S50))。
拡張工程(S50)では、保護テープ17が第1の方向D1及び第2の方向D2において外側に引き延ばされて拡張される。図5(A)は、拡張工程(S50)直前の拡張装置2の上面図であり、図5(B)は、拡張工程(S50)での拡張装置2の一部断面側面図である。
保護テープ17を拡張すると、ワーク11には、保護テープ17の拡張方向に対応する外力が付与される。ワーク11の各分割予定ライン13に沿って改質領域が形成されている場合には、ワーク11は、付与された外力によって複数のチップ19へと分割される。
なお、ワーク11が各分割予定ライン13に沿って既に複数のチップ19に分割されている場合には、拡張工程(S50)で、各チップ19の間隔が、第1の方向D1及び第2の方向D2に沿って拡張される。
拡張工程(S50)の後、保護テープ17の他面17b側に紫外線を照射して粘着力を低下させる。その後、例えば、コレット(不図示)を用いて、各チップ19を保護テープ17から取り出す。
上述の様に第1の実施形態に係る拡張装置2では、上方気体供給部50及び下方気体供給部52から気体を供給することで、保護テープ17の内側から外側に向かう気体の流れを形成する。
これにより、被挟持領域P1からP4近傍の保護テープ17のたるみを低減した状態で、各挟持ユニットにより保護テープ17を挟持できる。それゆえ、第1の方向D1及び第2の方向D2で予め定められた長さだけ正確に保護テープ17を拡張できる。
次に、第2の実施形態について説明する。図6(A)は、第2の実施形態に係る拡張装置2の一部断面側面図である。第2の実施形態において、第1の挟持ユニット14、第2の挟持ユニット24、第3の挟持ユニット34及び第4の挟持ユニット44の各々は、各被挟持領域P1からP4に面する様に設けられ且つ気体を吸引可能な内部吸引ユニットを有する。
各内部吸引ユニットの流路の一端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されており、当該流路の他端には、1又は複数の吸引ノズルが接続されている。各吸引ノズルは、ローラーの隙間から気体を吸引する。
第1の上側接触部16bは、その内部に第1の上側内部吸引ユニット60の一部である第1の上側吸引ノズルを有する。また、第1の下側接触部18bは、その内部に第1の下側内部吸引ユニット62の一部である第1の下側吸引ノズルを有する。
同様に、第2の上側接触部26bは、その内部に第2の上側内部吸引ユニット70の一部である第2の上側吸引ノズルを有し、第2の下側接触部28bは、その内部に第2の下側内部吸引ユニット72の一部である第2の下側吸引ノズルを有する。
また、第3の上側接触部36bは、その内部に第3の上側内部吸引ユニット(不図示)の一部である第3の上側吸引ノズルを有し、第3の下側接触部38bは、その内部に第3の下側内部吸引ユニット(不図示)の一部である第3の下側吸引ノズルを有する。
更に、第4の上側接触部46bは、第4の上側内部吸引ユニット(不図示)の一部である第4の上側吸引ノズルを有し、第4の下側接触部48bは、その内部に第4の下側内部吸引ユニット(不図示)の一部である第4の下側吸引ノズルを有する。
第2の実施形態に係る拡張装置2を用いて保護テープ17を拡張する拡張方法では、送風工程(S30)において、被挟持領域P1からP4に気体を供給しつつ、各内部吸引ユニットを用いて気体を吸引する。
これにより、内部吸引ユニットで気体を吸引しない場合に比べて、保護テープ17と各接触部との間で気体の流れの乱れが生じ難くなり、保護テープ17と各接触部との間に気体がスムーズに入り込み易くなる。その結果、内部吸引ユニットで気体を吸引しない場合に比べて、保護テープ17のたるみを低減できる。
送風工程(S30)における気体の供給及び気体の吸引は、第1の挟持ユニット14から第4の挟持ユニット44で保護テープ17の外周部が挟持されるまで継続される。他の工程は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
次に、第3の実施形態について説明する。図6(B)は、第3の実施形態に係る拡張装置2の一部断面側面図である。第3の実施形態に係る拡張装置2は、チャックテーブル8の外周部よりも外側に各々設けられた複数の外部吸引ユニットを更に備える。
各外部吸引ユニットの流路の一端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されており、当該流路の他端には、1又は複数のノズルが接続されている。第1の上側ユニット16及び第1の下側ユニット18に対してチャックテーブル8とは反対側には、第1の外部吸引ユニット80の一部である第1の外側吸引ノズルが設けられている。第1の外側吸引ノズルは、第1の上方気体噴射ユニット50a及び第1の下方気体噴射ユニット52aから供給される気体を吸引する。
同様に、第2の上側ユニット26及び第2の下側ユニット28に対してチャックテーブル8とは反対側には、第2の外部吸引ユニット90の一部である第2の外側吸引ノズルが設けられている。第2の外側吸引ノズルは、第2の上方気体噴射ユニット50b及び第2の下方気体噴射ユニット52bから供給される気体を吸引する。
また、第3の上側ユニット36及び第3の下側ユニット38に対してチャックテーブル8とは反対側には、第3の外部吸引ユニット(不図示)の一部である外側吸引ノズルが設けられている。第3の外側吸引ノズルは、第3の上方気体噴射ユニット50c及び第3の下方気体噴射ユニット52cから供給される気体を吸引する。
更に、第4の上側ユニット46及び第4の下側ユニット48に対してチャックテーブル8とは反対側には、第4の外部吸引ユニット(不図示)の一部である第4の外側吸引ノズルが設けられている。第4の外側吸引ノズルは、第4の上方気体噴射ユニット50d及び第4の下方気体噴射ユニット52dから供給される気体を吸引する。
第3の実施形態でも、内部吸引ユニットで気体を吸引しない場合に比べて、保護テープ17と各接触部との間で気体の流れの乱れが生じ難くなり、保護テープ17と各接触部との間に気体がスムーズに入り込み易くなる。それゆえ、内部吸引ユニットで気体を吸引しない場合に比べて、保護テープ17のたるみを低減できる。
その他、第1から第3の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。一例において、チャックテーブル8の外周部において、周方向に互いに離れた態様で4つのクランプ機構(不図示)を設けてもよい。
この場合、貼り付け工程(S10)後、且つ、保持工程(S20)前に、4つのクランプ機構で保護テープ17の四隅を挟持し、保護テープ17の一面17aの対角線方向に沿って外側に保護テープ17を引っ張る。これにより保護テープ17を張った状態とした後、保持工程(S20)及び送風工程(S30)を行う。
送風工程(S30)では、保護テープ17の四隅を張った状態としつつ、保護テープ17の被挟持領域P1からP4近傍の保護テープ17のたるみを低減できる。送風工程(S30)を継続しながら挟持工程(S40)を行い、クランプ機構による保護テープ17の挟持を解除し、更に、保持面8aでの吸引保持を解除した後に、拡張工程(S50)を行う。