JP7302761B1 - 生体電極およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

テキスタイル形状の生体電極であって、柔軟で汎用性が高く、堅牢度に優れ、洗濯による導電性低下を抑制した生体電極およびその製造方法を提供することを課題とし、非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、前記導電体は、カーボンブラックおよび、ウレタン樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記導電体に対して15~35質量%であり、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、前記導電体の表面において、前記カーボンブラックの粒子と隣り合う前記カーボンブラックの粒子との最短距離に対すると最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であり、かつ、前記導電体の表面の湿摩擦堅牢度が4級以上である生体電極およびその製造方法を本旨とする。

Description

本発明は、生体電極およびその製造方法に関するものである。
人体や動物の脳波や心電図、筋電図等、生体電気信号を測定するためや、生体に電気刺激を付与するために用いる生体電極としては、ゲル電極やゴム電極、金属薄板を使用した電極、導電性繊維素材を使用した電極など、様々な種類の生体電極が使用されている。
上記ゲル電極やゴム電極は、柔軟性に富み、生体の体表面に密着し、安定した生体信号取得が可能であるというメリットがある一方、通気性が悪く、接触箇所に蒸れが生じ、かぶれなどを引き起こすという問題があった。
また、金属薄板を使用した電極は疎水性で硬く、水分が豊富で柔軟である生体の体表面と接触する用途には適合性が低いという問題があった。体表面に密着させるには、高い接圧を必要とするか、導電性のペースト(ゼリー)を使用する必要があった。
導電性のペースト等を使用することなく、生体の体表面に直接貼付し得る電極として、導電性を有するテキスタイル形状の電極は、有効であると考えられ、さまざまな提案がなされている。テキスタイル電極は折り曲げに強く、体表面の凹凸に合わせて形状変化させることができる。
テキスタイル形状の電極において、導電性を付与するため、導電性高分子をコーティングしたもの、金属繊維を使用したものやカーボン材料を使用したものが提案されている。導電性高分子を使用した電極としてポリエステル繊維基材に導電性高分子(PEDOT-PSS)とオレフィンバインダーを含侵した電極が提案されている(特許文献1)。金属繊維やカーボン材料を使用した電極として、ステンレス鋼を有する織り糸を用いた基材にカーボンブラックとシリコンラバーを配置した電極(特許文献2)や、カーボンブラックを基材に含侵させた電極(特許文献3)や、カーボンブラックを含む導電性インクを基材上に印刷した電極(特許文献4)が提案されている。
国際公開第2017/183463号 特表2006-512128号公報 特開2020-180406号公報 特表2017-512542号公報
特許文献1に記載の生体電極は単糸細繊度(500nm以下)のポリエステル繊維基材にPEDOT-PSSとオレフィンバインダーを含侵してなる。導電性高分子とバインダーを細繊度の単繊維間の担持させることで電極断面の導通性を高めている。生体電極が含むオレフィン素材は離型性に優れ、繊維基材との接着力が弱いため、洗濯耐久性に改善の余地があった。また、導電性高分子として使用しているPEDOT-PSSは高価であり汎用性に課題がある。特許文献2に記載の生体電極はステンレス綱などの導電糸から構成される基材もしくは導電ワイヤから構成される基材を有している。また、これらの生体電極は、カーボンブラックとシリコンラバー(シリコーンゴム)の使用が例示されている。ステンレス綱などの導電糸から構成される基材および導電ワイヤから構成される基材は、非導電性の繊維から構成される基材と比較して柔軟性が劣る傾向にある。また、これらの生体電極が含むシリコーン素材は離型性に優れた界面特性を有する。そのため、これらの生体電極は、使用時に肌離れしやすくなり、生体信号取得中の着用者の動きで、生体電極の位置ずれを生じ、微弱な信号を取得または入力する生体電極において、アーチファクトを発生させてしまうおそれがある。一方で、特許文献3に記載の生体電極は安価なカーボンブラックをウレタンバインダーと共に繊維基材に含侵した構成を有する。繊維基材に導電樹脂が含侵するため、肌と接触する電極表面の導電性の安定性に課題があり、洗濯前後の電極間インピーダンスの差が大きくなるなど改善の余地があった。特許文献4に記載の生体電極はカーボンブラックとウレタンバインダーを含む導電性インクを弾性材料上に印刷した構成を有する。柔軟性のある導電性インクを用いているため、柔軟性は十分であるが、これらの生体電極の導電材料中の導電粒子量が多いため、摩擦堅牢度が悪く色移りする傾向にある。
上記に鑑み、本発明は、テキスタイル形状の生体電極であって、柔軟で汎用性が高く、堅牢度に優れ、洗濯による導電性低下を抑制した生体電極およびその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決し、目的を達成するための発明の構成は以下のいずれかである。
(1) 非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、前記導電体は、カーボンブラックおよびウレタン樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記導電体に対して15~35質量%であり、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、前記導電体の表面において、前記カーボンブラックの粒子と隣り合う前記カーボンブラックの粒子との最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であり、かつ、前記導電体の表面の湿摩擦堅牢度が4級以上である生体電極。
(2) 前記導電体の表面のSSRMで測定される面内抵抗値の4~6logΩの面積比率が8~18%である、前記(1)に記載の生体電極。
(3) JIS L0217(1995)103法 による20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下である、前記(1)または(2)に記載の生体電極。
(4) ホモミキサーで攪拌されたカーボンブラックとウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、該塗工液を非導電性のマルチフィラメント繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させる工程、により、前記(1)~(3)のいずれかに記載の生体電極を製造する生体電極の製造方法。
本発明は、テキスタイル形状の生体電極であって、柔軟で汎用性が高く、堅牢度に優れ、洗濯による導電性低下を抑制した生体電極が得られる。
以下に、本発明にかかる生体電極の実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
<生体電極>
本発明の生体電極は、非導電性の繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、導電体が生体への接触面となり、生体信号を取得し伝達するものである。ここで、上記の積層構造は、繊維基材と導電体とが、直接積層されてなる積層構造であってもよいし、繊維基材と導電体との間に繊維と導電体とが混在している混合層などを備えた3層以上の積層構造であってもよい。
<導電体>
本発明において導電体とは、導電性を発現する材料である。ここでいう導電体とは、生体電極に導電性を付与するための配合物であり、(A)カーボンブラックおよび(B)ウレタン樹脂を含む。そして、該配合物および導電体は、(A)カーボンブラックおよび(B)ウレタン樹脂以外に、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、(C)水系増粘剤(D)導電性向上剤、(E)柔軟性付与剤、(F)界面活性剤及び/又はレベリング剤、架橋剤、触媒、消泡剤等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ここでいう導電性とは、後述の測定方法により生体電極の表面抵抗を測定した場合に、1×1010Ω未満の表面抵抗値を示すものとする。
<(A)カーボンブラック>
本発明に使用するカーボンブラック(以下CBと記載することがある)は導電性物質である。CBによる導電性付与にあたっては、CBのベースを形成している粒子径(ストラクチャーを構成する粒子の粒子径、以下前記粒子を一次粒子、前記粒子径を一次粒子径と称する場合もある)と、一次粒子の連鎖構造であるストラクチャーと、粒子表面性状を考慮することが肝要である。CBとバインダーを含む溶液を調製する場合、特に重要なのは、粒子表面性状を改質することで比表面積を大きくすることである。比表面積が大きいことは粒子表面に細孔が多いことを意味し、細孔にバインダーが入り込み、導電体中に粒子状で分散するCBの粒子間距離(後述)を小さくすることができ、高い導電性を得ることに繋がる。
比表面積はBET法で測定することができ、カーボンブラックのBET比表面積は、400~2000m/g以上であることが好ましい。カーボンブラックのBET比表面積は、600~1600m/gであることがより好ましい。カーボンブラックのBET比表面積が、400m/g以上であることで、粒子間距離が十分小さくなり、生体電極へ十分な導電性を付与できる範囲となり、600m/g以上でよりいっそう高い導電性能が得られる。上限を2000m/g以下とすることでストラクチャーを維持することができ、生体電極へ安定した導電性能の付与が可能となる。この効果は、カーボンブラックのBET比表面積が、1600m/g以下であることでより顕著なものとなる。上記BET比表面積を有するカーボンブラックの市販品としては、ライオンペーストW-310A、W-311N、W-376R、W-370Cなどが挙げられる。
また、高い導電性を得るためには、CBの一次粒子が小さいことが望ましい。CBの一次粒子の平均粒子径は1~200nmの範囲とすることが好ましく、5~100nmの範囲がより好ましい。1nm以上とすることで生体電極の摩擦における堅牢性が顕在化し、5nm以上で高い堅牢性が得られる。200nm以下とすることで、生体電極への導電性能付与が十分となり、さらに100nm以下とすることで高い導電性が付与される。一次粒子径は、導電体から切り出した極薄切片を、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)によって、一次粒子径が観察できる任意の倍率で観察し取得した像から、任意に選択した複数の一次粒子について外接する円の直径を求め、それらの値を平均化して得る。
上記平均粒子径を有するカーボンブラックの市販品としては、ライオンペーストW-310A、W-311N、W-376R、W-370Cなどが挙げられる。
本発明の生体電極において、(A)カーボンブラックの含有量は、導電体の固形分100質量%に対して、15質量%~35質量%であることが必要である。(A)カーボンブラックの含有量は、導電体の固形分100質量%に対して、20質量%~30質量%であることが好ましい。カーボンブラックの含有量が多いほど導電性が得られるが、含有量が増えると摩擦による堅牢度が低下し、汚染するだけでなく、実使用時の性能低下にもつながる。15質量%以上とすることで、カーボンブラックの連続性により洗濯後においても生体電極における導電性が得られ、20質量%以上でさらに導電性能が向上する。また、CBの含有量を35質量%以下、さらには30質量%以下とすることで導電体の摩擦における堅牢性が得られる。ここでいう固形分とは、導電体を形成するのに用いた成分のうち溶媒を除いたものをいう。
また、前記カーボンブラックは、通常導電体内で粒子状に分散している。高い導電性を得るためには、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、導電体表面のCBの粒子(I)と隣り合うCBの粒子との粒子間距離を評価したとき、最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であることが必要である。最短距離に対する最長距離の比が1~18であることが好ましい。ここでいう粒子状で分散としては、カーボンブラックがストラクチャー単位で分散していてもよいし、ストラクチャーが凝集した二次粒子の状態で分散していてもよい。この分散したストラクチャーまたは二次粒子のひとかたまりを、最短距離、最長距離を評価するための粒子として扱う。最短距離と最長距離とは、導電体表面の任意のCBの粒子の周囲360度において、隣り合うCBの粒子まで最も近い距離を最短距離、最も遠い距離を最長距離とする。この比(最長距離/最短距離)が小さいということは、最短距離と最長距離の差が小さいということを意味し、均一にCBが分散していることを意味する。最短距離と最長距離が等しくなる場合に上記比が1となり、それに近づくほど好ましいことはいうまでもない。最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が20以下とすることで導電体表面においてカーボンブラックが均一分散することで、効率よく導電パスを形成できるので導電性が高まり、CB使用量を減らすことが出来、摩擦堅牢度と導電性の両立が可能となる。さらには上記の比を18以下とすることで、洗濯後においてもカーボンブラックの連続性を維持でき、生体電極としての導電性が得られる。最短距離に対する最長距離の比を上記の範囲とするには、後述の製造方法により達成することができる。なお、CBの粒子同士の最短距離は10~25nm、最長距離は10~500nmの範囲であることが良好な導電性を得るために好ましい。
<(B)ウレタン樹脂>
導電体は上記(A)カーボンブラックに加え、さらに(B)ウレタン樹脂を含有する。ここで、(B)ウレタン樹脂の役割は、導電体を構成する配合物を、繊維基材に担持させるバインダーの役目を担う。バインダーは生体電極の柔軟性に大きく関与するため、バインダーがウレタン樹脂であることが重要である。ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂以外の樹脂と比較して、柔軟性にすぐれるため、本発明の生態電極は柔軟で着衣快適性に優れる。
(B)ウレタン樹脂は、生体電極中の導電体を構成する配合物の繊維基材からの脱落を防ぎ、さらに、生体電極の肌離れを軽減し、生体信号取得性を向上させることができる。この点から、導電体がウレタン樹脂を含むことが本発明の特徴の一つである。
導電体は、バインダーとして、ウレタン樹脂単独でも、その他の樹脂を1種もしくは複数含んでいてもよく、その他の樹脂として好ましい具体例としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂およびアクリル系樹脂等が挙げられる。
ウレタン樹脂は、原材料のポリオールによりエーテル系、エステル系、カーボネート系、変性ポリオール、またはエステル/カーボネート系、あるいはそれらを組み合わせたポリマー等に分類されるが、いずれも用いることができる。耐加水分解性の観点から、特にエーテル系ウレタン樹脂およびカーボネート系ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
ウレタン樹脂として使用できる市販品としては、以下のものを例示できる。すなわち、エーテル系ウレタン樹脂として、“レザミン(商標登録)D-2040”(大日精化)、“スーパーフレックス(登録商標)E-4800”(第一工業製薬)、カーボネート系ウレタン樹脂として、“エバファノール(登録商標)HA-107C”(日華化学)、“レザミン(登録商標)D-6300”(大日精化社製)、“レザミン(登録商標)D-6065NP”(大日精化)、“スーパーフレックス(登録商標)460”(第一工業製薬社製)さらに、ポリエーテル/カーボネート系ウレタン樹脂として“レザミン(登録商標)D-4080”(大日精化)、“レザミン(登録商標)D-4200”(大日精化)等が挙げられる。
ウレタン樹脂には芳香族イソシアネートと脂肪族イソシアネートに由来するウレタン樹脂があるが、毒性および黄変の観点から、皮膚接触しまた耐久性が必要な生体電極用途としては、脂肪族イソシアネートを有するウレタン樹脂であることが望ましい。さらに、脂肪族イソシアネートを有するウレタン樹脂の中でも脂肪族イソシアネートカーボネート系ウレタンが、耐加水分解性や柔軟性が高くより好ましい。
本発明の生体電極において、得られる生体電極の柔軟性の観点から、ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~±0℃あることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、以下の方法に基づき測定される。まずステンレスの箱中に樹脂溶液を流し込み、60℃にて1時間、更に120℃にて2時間乾燥し、厚さ約0.3mmのフィルムを作成する。このフィルムを用いて、粘弾性測定装置DMS6100(セイコーインスツルメンツ(株)製)にて-100~200℃の動的粘弾性を測定し、得られた損失粘弾率のピーク温度(T℃)をガラス転移温度(Tg)とする。なお測定は、昇温速度5℃/分、測定周波数1Hzにて行う。
また得られる生体電極の耐摩擦性の観点から、ウレタン樹脂単体の引張強度は、5~50MPaであることが好ましい。ウレタン樹脂単体の引張強度が5MPa以上であることで、生体電極の摩擦に対する堅牢性が得られ、ウレタン樹脂単体の引張強度が50MPa以下であることで、生体電極のテキスタイル特有の柔軟性をより確実に保持することができる。
本発明の生体電極において、ウレタン樹脂の含有量は、特に限定されないが、導電体の固形分100質量%に対して、65~85質量%が好ましく、70~80質量%がより好ましい。ウレタン樹脂の含有量が65質量%以上であることで、生体電極に含有される(A)カーボンブラックがより脱落しにくくなる。一方、ウレタン樹脂の含有量が85質量%以上であると、生体電極中のカーボンブラック間距離が長くなり、安定した導電性を確保できなくなる。
<繊維基材>
本発明の生体電極が備える繊維基材を構成する繊維としては、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅などの金属繊維や、銀などの金属で被覆した金属皮膜繊維、金属やカーボンを練り込んだ樹脂を用いて紡糸した導電性繊維などを使用せず、非導電性の繊維を使用する。ここでいう非導電性とは、後述の実施例に記載の方法により繊維基材の表面抵抗を測定した場合に、1×1010Ω以上の表面抵抗値を示すものとする。非導電性繊維は導電性繊維と比較して、入手が容易で、本発明の生体電極は生産性に優れる。
本発明に用いられる繊維基材を構成する非導電性の繊維は、天然繊維でも化学繊維でもよい。天然繊維としては、綿や麻などのセルロース系繊維、羊毛や絹などの蛋白繊維などが挙げられる。化学繊維としては、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、そして合成繊維が挙げられる。加工性の観点から、本発明に用いられる繊維基材を構成する繊維は合成繊維であることが好ましい。
合成繊維としては、ナイロン、アラミドなどのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維などの複素環高分子繊維などが挙げられる。生体電極により高い柔軟性を付与することができるとの観点から、特に、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維のいずれか1種または複数種を用いることが好ましい。
本発明の生体電極において、繊維基材を構成する繊維の断面形状については、丸断面、三角断面、扁平断面、多角断面、中空型、その他異形度が高い異形断面の形状でもよく、特に限定されるものではない。
本発明にかかる繊維基材の形態としては、メッシュ、抄紙、織物、編物、不織布、リボン、紐などが挙げられる。使用目的に応じた形態であれば良く、特に限定されないが、導電性、加工性の観点から、織物が望ましい。
織物である場合は、繊度の平方根に糸密度を乗じて算出されるカバーファクターについて、経糸と緯糸それぞれのカバーファクターの合計が1500以上、3000以下の織物であることが望ましい。カバーファクターが小さいとコーティング剤が裏面に到達し、繊維基材が絶縁層として機能しないおそれがあるだけでなく、裏面に到達した塗工液が製造設備に付着し、塗布量が安定しない。一方、カバーファクターが3000を超える織物は製織性が低下するだけでなく、剛性が高まり柔軟性が低下する。
繊維の形態は、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、ステープル糸のいずれでもかまわない。
単繊維繊度としては、特に制限されず、例えば0.0001dtex~300dtex程度が挙げられる。
繊維基材には、繊維の絡合処理、起毛処理の他に、収縮処理、形態固定処理、圧縮処理、染色仕上げ処理、油分付与処理、熱固定処理、溶剤除去、形態固定剤除去、コーミング処理、つや出し処理、平面(ロール)ブレス処理、高性能ショートカットシャーリング処理(立毛のカット)など多くの処理が、各工程で適宜組合せて実施されるが、電極としての性能を損なわない限り、実施が限定されるものではない。
また、繊維基材は、後述する方法で繊維基材単体での表面抵抗値を測定したとき、1×1010Ω以上であることが好ましい。繊維基材単体での抵抗値を下げるためにステンレス綱などの導電糸もしくは導電ワイヤを使用して、該表面抵抗値を1×1010Ω以下とすると、導電体を付与したときに電極に剛性が生じ、着衣快適性が阻害される恐れがある。また繊維基材自体が導電性を持つと、繊維基材を絶縁層として活用することができない。表面抵抗値が1×1018Ω以上である繊維基材としてフッ素系ポリマーを使用するものが挙げられるが、加工剤の塗工性が悪くなる懸念があるため、繊維基材の表面抵抗値が1×1018Ω以下であることが好ましい。なお、かかる繊維基材単体での表面抵抗値は、繊維基材を形成するポリマーの選定や、基材形成時や形成後に導電性物質付与を制限することによってコントロールすることができる。
<導電体表面の湿摩擦堅牢度>
本発明の生体電極の導電体表面の湿摩擦堅牢度は4級以上であることが必要である。4級以上とすることで、着用や洗濯時の摩擦でのカーボンブラック脱落を抑制することができる。このような湿摩擦堅牢度はカーボンブラックの導電体に対する含有量を前記範囲に制御し、バインダー内にカーボンブラックを均一分散することで達成が可能である。
<導電体表面の面内抵抗値の面積比率>
本発明の生体電極の導電体表面を走査型広がり抵抗顕微鏡(Scanning Spreading Resistance Microscopy)(以下SSRMと称する)で測定される面内抵抗値が4~6logΩの高導電領域の面積比率が8~18%であることが好ましい。上記の面積比率を8%以上とすることで生体からの電気信号を十分に安定取得でき、着圧を高めるなど、快適性を損なう措置が不要となる。18%以下とすることで最表面の導電成分であるカーボンブラックが均一分散し、優れた湿摩擦堅牢度が得られ、洗濯前後の電気特性変化も小さくなる。上記面積比率は、所定のカーボン量を使用し、均一に分散させることで制御することができる。
<電極間インピーダンス>
本発明の生体電極は、JIS L0217(1995)103法にて、20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下であることが好ましい。抵抗値や抵抗率は導電体全体における導電成分の残存量に依存するが、電極間インピーダンスは導電体の最表層における導電成分の残存量に依存するため洗濯による脱落の影響がより顕著になる。医療用生体電極などより精緻な生体情報を取得する場合には、電極間インピーダンスを低値に保つだけではなく、洗濯前後の電極間インピーダンスの変化が小さいことが重要である。20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下とすることで、繰り返し着用での精度を保つことができる。さらに、JIS L1930(2014)C4G法による50回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差を0.2kΩ以下とすることで、繰り返し着用での精度をさらに維持することができる。上記電極間インピーダンスの差は、所定のカーボン量を使用し、均一に分散させることで制御することができる。
<その他の配合物>
上記のとおり、本発明の生体電極において、導電体は(A)カーボンブラック、および(B)ウレタン樹脂以外に、他の成分として、(C)水系増粘剤、(D)導電性向上剤、(E)柔軟性付与剤、(F)界面活性剤及び/又はレベリング剤、架橋剤、触媒、消泡剤等を含んでいてよい。
中でも、(C)水系増粘剤は、導電体を形成するための塗工液を繊維基材に塗布する際に、塗布厚みおよび塗工液の繊維基材への浸透度合いや塗布厚みを制御するために使用できる。導電体を構成する配合物で形成された溶液(塗工液)に粘性特性を与えることで、導電体の厚さを制御することができ、より優れた導電性を有する生体電極を得ることができる。
水系増粘剤は、製造時におけるVOC低減の観点から、通常、水に溶解させて用いる。水系増粘剤は1種類を用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
水系増粘剤としては、以下のものを例示できる。無機系としては、ケイ酸塩、モンモリロナイト、有機系としては、セルロース系のカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ビニル系のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合物、ポリアクリル酸系のポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、架橋コアーカルボン酸エマルジョン、ポリウレタン系のポリエーテル変性ウレタン化合物、疎水性変性ポリオキシエチレンポリウレタン共重合物、ウレア系のウレタンーウレア系化合物などが挙げられる。
中でもポリアクリル酸系化合物は、塗工液に増粘性に加えチクソトロピック性を付与できるため、好適に用いられる。ポリアクリル酸系化合物により増粘およびチクソトロピック性を付与した塗工液は、貯蔵時の沈降防止や塗工時の粘性低下による作業性向上など優れた特性が得られる。
本発明の生体電極において、水系増粘剤の含有量は、特に限定されないが、導電体の固形分100質量%に対して0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。水系増粘剤の含有量が0.1質量%以上であることで、生体電極の導電体を形成する塗工液に増粘性およびチクソトロピック性を付与し塗工性を向上させることができ、10質量%以下とすることで、過度な増粘による塗工不良を抑制することができるので好ましい。
<生体電極の製造方法>
本発明の生体電極は、たとえば、以下の手順で作製することができる。まず、非導電性のマルチフィラメント繊維などを用いて、非導電性繊維で構成された繊維基材を作製する。ホモミキサーで攪拌したカーボンブラック分散液とウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、および、該塗工液を前記の非導電性繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させることで、非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有する生体電極を作製できる。より好ましくは、カーボンブラック分散液をホモミキサーで攪拌後、そのカーボンブラック分散液を真空乾燥機で脱泡し、ウレタン樹脂と遊星ボールミルで混合・脱泡することが、さらにカーボンブラックの分散性を向上させる点で好ましい。生体電極としたときにカーボンブラックの均一性が不十分である場合は、分散性を上げるよう、攪拌、混合条件を調整する。
なお、塗工液としては、(A)カーボンブラック、およびウレタン樹脂を含む分散液若しくは、溶液などを用い、それを繊維基材上に塗布することが好ましい。なお、本明細書においては、導電体に含まれる全ての成分を完全に溶解させるもの(即ち、「溶媒」)と、不溶成分を分散させるもの(即ち、「分散媒」)とは特に区別せずに、いずれも「溶媒」と記載する。以下溶媒について説明する。
<溶媒>
上記溶媒としては、特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;テトラヒドロフラン;アセトン;アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
溶媒は、水、又は、水と有機溶媒との混合物であることが好ましい。溶媒として水を含有する場合、水の含有量は、特に限定されないが、導電体の固形分100質量%に対して、10~1000質量%が好ましく、20~500質量%がより好ましい。水の含有量が10質量%以上であることで、溶液中の配合物の流動性が確保されハンドリングが良好となり、1000質量%以下とすることで、配合物濃度が低くなりすぎず、塗工液使用量が増え過ぎることもない。
カーボンブラックは、あらかじめ溶媒中に均一に分散されていることが望ましい。カーボンブラックを溶媒中に均一に分散する手法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモミキサー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根、スターラー等による機械撹拌法等が挙げられるが、ホモミキサーで攪拌することが好ましい。カーボンブラック分散液の形態での市販品を使用する場合においても、本発明への使用に適する分散状態とするため、使用前にホモミキサーで攪拌することがより好ましい。
さらにカーボンブラック分散液とウレタン樹脂を混合した塗工液においても、カーボンブラックの分散性が保持され、かつ、気泡を含まないことが望ましい。カーボンブラック分散液とウレタン樹脂を混合・脱泡する手法としては、遊星ボールミルで混合・脱泡することが好ましい。カーボンブラックをホモミキサーであらかじめ均一分散させた後に、遊星ボールミルでウレタン樹脂と混合・脱泡することで、カーボンブラックが均一に分散した塗工液が得られる。このような塗工液を用いることで、カーボンブラックの使用量を低減しても、高い導電性を有する生体電極が得られる。
本発明において、前記塗工液を繊維基材の上に付与するにあたっては、パイプコーターやナイフコーターなど、片面に塗布できる通常の方法を用いればよい。塗工液を均一な厚みで塗工でき、塗布厚みを得られる点からパイプコーターが好ましい。付与後は、溶媒を熱で揮発させ、乾燥することが好ましい。乾燥後、不純物除去のため水洗や高温処理を施してもよい。塗工液を繊維基材に塗布し、その後乾燥することにより、非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有する生体電極を得ることができる。
かくして得られる生体電極は柔軟で、洗濯による導電性の変化が小さいので、生体電気信号取得性に優れるだけでなく、快適に着用でき、脳波や人体の心電図、筋電図等、生体電気信号を測定するのに好適である。
次に、実施例により本発明の生体電極について詳細に説明する。本発明の生体電極はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における測定値は、次の方法で得たものである。
<カーボンブラックの粒子同士の間の距離の測定と最短距離と最長距離の比率の算出>
カーボンブラックの粒子同士の間の距離は、生体電極の導電体表面から切り出した極薄切片を、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)によって測定することによって求めた。
前記極薄切片はCBの一次粒子径の2倍の厚みになるように切り出した。なおCBの一次粒子径が不明の場合は、予備的に複数の厚みで極薄切片を切り出して表面観察を行い、確認できる最も大きな粒子の直径を仮の一次粒子径とし、該仮の一次粒子径の2倍、3倍、4倍の厚みで極薄切片を切り出して表面観察を行い、それぞれの像で確認できる最も大きな粒子の直径の差が10nm以下であった場合に該直径の平均値を一次粒子径として切り出す極薄切片の厚み、観察する視野を決定するものとする。各像の直径の差が10nm超であった場合には、その中で最も大きな粒子の直径を仮の一次粒子径とし、該粒子径の2倍、3倍、4倍の厚みで極薄切片を切り出して表面観察する作業を繰り返す。
TEMを用いて、CBの一次粒子径の40倍四方の視野で観察し取得した像において、前記像の対角線の交点を中心に半径が一次粒子径の3倍の範囲から、任意のCBの粒子3点を選択する。選択した粒子それぞれについて、その周囲360度において、外縁から隣り合うCBの粒子の外縁までの距離を測定し、最も近い粒子との距離を最短距離、最も遠い粒子との距離を最長距離とした。選択した3点の粒子について、得られた最短距離の平均を平均最短距離、得られた最長距離の平均を平均最長距離とした。平均最短距離に対する平均最長距離の比を最短距離と最長距離の比(最長距離/最短距離)とした。なお、上記の「隣り合うCBの粒子」は、その外縁の少なくとも一部が上記の像に含まれているCBの粒子である。
<湿摩擦堅牢度>
生体電極についてJIS L 0849(1996)に従い(但し、規格中100回往復摩擦のところを30回往復摩擦とする)、摩擦試験機II形(学振形)にて湿潤試験(試験片は標準状態に4時間以上放置、摩擦用白綿布は水でぬらし約100%の湿潤状態)を行い、着色判定は汚染用グレースケール判定にて1級から5級の級数判定を行った。
<面内抵抗値が4~6logΩとなる面積比率>
本発明の生体電極の導電体表面における面内抵抗値が4~6logΩとなる面積比率は以下のようにして求めた。生体電極の導電体表面を走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)を用いて、測定用試料の裏側から電圧を印加し、導電性探針を用いて、試料表層の60μm×60μmの領域の導通性を観察した。画像処理ソフト(GIMP2.8portable)を用い、測定した領域のうち、面内抵抗値が4~6logΩとなる部分の面積比率を求めた。この時、観察する数は無作為抽出した表面3箇所を測定した。3箇所で求めたそれぞれの面積比率の平均値を計算し、これを「導電体表面の面内抵抗値の4~6logΩの面積比率」とした。
観察装置: Bruker AXS社Digital Instruments製
NanoScope Iva AFM
Dimension 3100ステージAFMシステム+SSRMオプション
SSRM走査モード : コンタクトモードと拡がり抵抗の同時測定
SSRM探針(Tip): ダイヤモンドコートシリコンカンチレバー
探針品番: DDESP-FM(Bruker AXS社製)
Arイオンビーム加工装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製IM-4000 加速電圧3kV
<洗濯方法>
下記2つの方法にて洗濯処理を行った。
1.JIS L0217(1995)103法 で20回の洗濯の後、吊り干しして乾燥した。
2.JIS L1930(2014)C4G法 で50回の洗濯の後、吊り干しして乾燥した。
<電極間インピーダンス>
生体電極の導電体同士を接触させ、1平方センチメートルあたり31.3gの圧力をかけ、ANSI4.2.2.1に従い電極間インピーダンス(kΩ)を測定した。3回測定し、その平均値を電極間インピーダンスとした。
<繊維基材の表面抵抗値>
生体電極が有する繊維基材は、表面電気抵抗器(シシド静電気製メガレスタH0709)を用いて、20℃、40%RH環境下で、500V、60秒間、表面抵抗値(Ω)を測定した。3点測定し、平均化した。
[実施例1]
経糸と緯糸に84dtex-72Fのポリエステルフィラメント(ポリエチレンテレフタレート(PET)製)を用い、平織物を製織した。得られた織物を界面活性剤0.5g/L、水酸化ナトリウム0.7g/Lの水溶液、(80℃で20分)で精練、水洗(50℃で10分)し、乾熱処理機にて熱セット(180℃で1分)し、織密度(経180本/2.54cm、緯94本/2.54cm)の繊維基材を得た。カーボンブラック分散液「“ライオンペースト(登録商標)”W-376R」(ライオンスペシャリティケミカル社製、固形分12.5%)をホモミキサーで15分間攪拌後、真空乾燥機にて脱泡し、408g/Lのカーボンブラック分散液と、389g/Lの水系ウレタン樹脂「“スーパーフレックス(登録商標)460”」(第一工業製薬社製脂肪族イソシアネートカーボネート系ウレタン、固形分38%)、11g/Lの水系増粘剤「プリントゲンNFV」(松井色素化学社製、固形分45%)、合計1Lとなるように溶媒としてイオン交換水を混合し、遊星ボールミルで90秒間攪拌・脱泡し塗工液を得た。繊維基材に、得られた塗工液をパイプコーターに塗布し、130℃で加熱後、水洗し、170℃でセットし、導電体付着量が70g/mの生体電極を得た。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[実施例2]
カーボンブラック分散液326g/L、と水系ウレタン樹脂416g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[実施例3]
カーボンブラック分散液538g/L、と水系ウレタン樹脂346g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[実施例4]
カーボンブラック分散液277g/L、と水系ウレタン樹脂432g/Lに使用量を変更し、遊星ボールミルでの攪拌・脱泡を45秒間に変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[実施例5]
カーボンブラック分散液571g/L、と水系ウレタン樹脂335g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[比較例1]
カーボンブラック分散液212g/L、と水系ウレタン樹脂454g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[比較例2]
カーボンブラック分散液652g/L、と水系ウレタン樹脂309g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
[比較例3]
カーボンブラック分散液の攪拌にホモミキサーを使用せずスターラーを使用し15分攪拌し、脱泡しない状態でカーボンブラック分散液と水系ウレタン樹脂と水系増粘剤とをスターラーを使用して90秒混合すること以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/mの生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
Figure 0007302761000001
実施例の生体電極は、導電体表面にカーボンブラックが粒子状で分散しており、カーボンブラックの粒子と隣り合うカーボンブラックの粒子との最短距離に対する最長距離の比(以下「粒子間距離の比)と称する)が小さく、面内抵抗値での高導電の面積比率が大きく、洗濯前後の電極間インピーダンスの変化も小さく、生体電極として高い生体信号取得性を有していた。高導電にも関わらず、優れた湿摩擦堅牢度を有していた。一方、比較例1は導電成分であるカーボンブラックの量が少なく、カーボンブラックの粒子間距離の比が大きく、高導電領域が少なく、電極間インピーダンスも高く、生体信号取得性が劣っていた。比較例2は導電成分であるカーボンブラックの量が多く、導電性は優れていたが、湿摩擦堅牢度が低く、洗濯前後の電極間インピーダンス変化が大きく、洗濯前後で安定した生体信号を取得することが出来なかった。比較例3はカーボンブラックの分散が不十分であるため、カーボンブラックの粒子間距離の比が大きく、高導電領域が少なく、洗濯前後の電極間インピーダンスの変化も大きく、生体信号取得性劣っており、湿摩擦堅牢度も低かった。
本発明により柔軟で着衣快適性が高く、洗濯前後での性能差が小さく、繰り返し使用が可能なテキスタイル形状の生体電極とすることができる。そして本発明の生体電極は、人体や動物の脳波や心電図、筋電図等、生体電気信号を測定したり、生体に電気刺激を付与する生体電極として好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、前記導電体は、カーボンブラックおよびウレタン樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記導電体に対して15~35質量%であり、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、前記導電体の表面において、前記カーボンブラックの粒子と隣り合う前記カーボンブラックの粒子との最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であり、かつ、前記導電体の表面の湿摩擦堅牢度が4級以上である生体電極。
  2. 前記導電体の表面のSSRMで測定される面内抵抗値の4~6logΩの面積比率が8~18%である、請求項1に記載の生体電極。
  3. JIS L0217(1995)103法による20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下である、請求項1または2に記載の生体電極。
  4. ホモミキサーで攪拌されたカーボンブラックとウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、
    該塗工液を非導電性のマルチフィラメント繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させる工程、により、請求項1または2に記載の生体電極を製造する生体電極の製造方法。
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