JP7302761B1 - 生体電極およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) 非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、前記導電体は、カーボンブラックおよびウレタン樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記導電体に対して15~35質量%であり、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、前記導電体の表面において、前記カーボンブラックの粒子と隣り合う前記カーボンブラックの粒子との最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であり、かつ、前記導電体の表面の湿摩擦堅牢度が4級以上である生体電極。
(2) 前記導電体の表面のSSRMで測定される面内抵抗値の4~6logΩの面積比率が8~18%である、前記(1)に記載の生体電極。
(3) JIS L0217(1995)103法 による20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下である、前記(1)または(2)に記載の生体電極。
(4) ホモミキサーで攪拌されたカーボンブラックとウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、該塗工液を非導電性のマルチフィラメント繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させる工程、により、前記(1)~(3)のいずれかに記載の生体電極を製造する生体電極の製造方法。
本発明の生体電極は、非導電性の繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、導電体が生体への接触面となり、生体信号を取得し伝達するものである。ここで、上記の積層構造は、繊維基材と導電体とが、直接積層されてなる積層構造であってもよいし、繊維基材と導電体との間に繊維と導電体とが混在している混合層などを備えた3層以上の積層構造であってもよい。
本発明において導電体とは、導電性を発現する材料である。ここでいう導電体とは、生体電極に導電性を付与するための配合物であり、(A)カーボンブラックおよび(B)ウレタン樹脂を含む。そして、該配合物および導電体は、(A)カーボンブラックおよび(B)ウレタン樹脂以外に、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、(C)水系増粘剤(D)導電性向上剤、(E)柔軟性付与剤、(F)界面活性剤及び/又はレベリング剤、架橋剤、触媒、消泡剤等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ここでいう導電性とは、後述の測定方法により生体電極の表面抵抗を測定した場合に、1×1010Ω未満の表面抵抗値を示すものとする。
本発明に使用するカーボンブラック(以下CBと記載することがある)は導電性物質である。CBによる導電性付与にあたっては、CBのベースを形成している粒子径(ストラクチャーを構成する粒子の粒子径、以下前記粒子を一次粒子、前記粒子径を一次粒子径と称する場合もある)と、一次粒子の連鎖構造であるストラクチャーと、粒子表面性状を考慮することが肝要である。CBとバインダーを含む溶液を調製する場合、特に重要なのは、粒子表面性状を改質することで比表面積を大きくすることである。比表面積が大きいことは粒子表面に細孔が多いことを意味し、細孔にバインダーが入り込み、導電体中に粒子状で分散するCBの粒子間距離(後述)を小さくすることができ、高い導電性を得ることに繋がる。
導電体は上記(A)カーボンブラックに加え、さらに(B)ウレタン樹脂を含有する。ここで、(B)ウレタン樹脂の役割は、導電体を構成する配合物を、繊維基材に担持させるバインダーの役目を担う。バインダーは生体電極の柔軟性に大きく関与するため、バインダーがウレタン樹脂であることが重要である。ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂以外の樹脂と比較して、柔軟性にすぐれるため、本発明の生態電極は柔軟で着衣快適性に優れる。
本発明の生体電極が備える繊維基材を構成する繊維としては、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅などの金属繊維や、銀などの金属で被覆した金属皮膜繊維、金属やカーボンを練り込んだ樹脂を用いて紡糸した導電性繊維などを使用せず、非導電性の繊維を使用する。ここでいう非導電性とは、後述の実施例に記載の方法により繊維基材の表面抵抗を測定した場合に、1×1010Ω以上の表面抵抗値を示すものとする。非導電性繊維は導電性繊維と比較して、入手が容易で、本発明の生体電極は生産性に優れる。
本発明の生体電極の導電体表面の湿摩擦堅牢度は4級以上であることが必要である。4級以上とすることで、着用や洗濯時の摩擦でのカーボンブラック脱落を抑制することができる。このような湿摩擦堅牢度はカーボンブラックの導電体に対する含有量を前記範囲に制御し、バインダー内にカーボンブラックを均一分散することで達成が可能である。
本発明の生体電極の導電体表面を走査型広がり抵抗顕微鏡(Scanning Spreading Resistance Microscopy)(以下SSRMと称する)で測定される面内抵抗値が4~6logΩの高導電領域の面積比率が8~18%であることが好ましい。上記の面積比率を8%以上とすることで生体からの電気信号を十分に安定取得でき、着圧を高めるなど、快適性を損なう措置が不要となる。18%以下とすることで最表面の導電成分であるカーボンブラックが均一分散し、優れた湿摩擦堅牢度が得られ、洗濯前後の電気特性変化も小さくなる。上記面積比率は、所定のカーボン量を使用し、均一に分散させることで制御することができる。
本発明の生体電極は、JIS L0217(1995)103法にて、20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下であることが好ましい。抵抗値や抵抗率は導電体全体における導電成分の残存量に依存するが、電極間インピーダンスは導電体の最表層における導電成分の残存量に依存するため洗濯による脱落の影響がより顕著になる。医療用生体電極などより精緻な生体情報を取得する場合には、電極間インピーダンスを低値に保つだけではなく、洗濯前後の電極間インピーダンスの変化が小さいことが重要である。20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下とすることで、繰り返し着用での精度を保つことができる。さらに、JIS L1930(2014)C4G法による50回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差を0.2kΩ以下とすることで、繰り返し着用での精度をさらに維持することができる。上記電極間インピーダンスの差は、所定のカーボン量を使用し、均一に分散させることで制御することができる。
上記のとおり、本発明の生体電極において、導電体は(A)カーボンブラック、および(B)ウレタン樹脂以外に、他の成分として、(C)水系増粘剤、(D)導電性向上剤、(E)柔軟性付与剤、(F)界面活性剤及び/又はレベリング剤、架橋剤、触媒、消泡剤等を含んでいてよい。
本発明の生体電極は、たとえば、以下の手順で作製することができる。まず、非導電性のマルチフィラメント繊維などを用いて、非導電性繊維で構成された繊維基材を作製する。ホモミキサーで攪拌したカーボンブラック分散液とウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、および、該塗工液を前記の非導電性繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させることで、非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有する生体電極を作製できる。より好ましくは、カーボンブラック分散液をホモミキサーで攪拌後、そのカーボンブラック分散液を真空乾燥機で脱泡し、ウレタン樹脂と遊星ボールミルで混合・脱泡することが、さらにカーボンブラックの分散性を向上させる点で好ましい。生体電極としたときにカーボンブラックの均一性が不十分である場合は、分散性を上げるよう、攪拌、混合条件を調整する。
上記溶媒としては、特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;テトラヒドロフラン;アセトン;アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
カーボンブラックの粒子同士の間の距離は、生体電極の導電体表面から切り出した極薄切片を、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)によって測定することによって求めた。
生体電極についてJIS L 0849(1996)に従い(但し、規格中100回往復摩擦のところを30回往復摩擦とする)、摩擦試験機II形(学振形)にて湿潤試験(試験片は標準状態に4時間以上放置、摩擦用白綿布は水でぬらし約100%の湿潤状態)を行い、着色判定は汚染用グレースケール判定にて1級から5級の級数判定を行った。
本発明の生体電極の導電体表面における面内抵抗値が4~6logΩとなる面積比率は以下のようにして求めた。生体電極の導電体表面を走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)を用いて、測定用試料の裏側から電圧を印加し、導電性探針を用いて、試料表層の60μm×60μmの領域の導通性を観察した。画像処理ソフト(GIMP2.8portable)を用い、測定した領域のうち、面内抵抗値が4~6logΩとなる部分の面積比率を求めた。この時、観察する数は無作為抽出した表面3箇所を測定した。3箇所で求めたそれぞれの面積比率の平均値を計算し、これを「導電体表面の面内抵抗値の4~6logΩの面積比率」とした。
観察装置: Bruker AXS社Digital Instruments製
NanoScope Iva AFM
Dimension 3100ステージAFMシステム+SSRMオプション
SSRM走査モード : コンタクトモードと拡がり抵抗の同時測定
SSRM探針(Tip): ダイヤモンドコートシリコンカンチレバー
探針品番: DDESP-FM(Bruker AXS社製)
Arイオンビーム加工装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製IM-4000 加速電圧3kV
<洗濯方法>
下記2つの方法にて洗濯処理を行った。
1.JIS L0217(1995)103法 で20回の洗濯の後、吊り干しして乾燥した。
2.JIS L1930(2014)C4G法 で50回の洗濯の後、吊り干しして乾燥した。
生体電極の導電体同士を接触させ、1平方センチメートルあたり31.3gの圧力をかけ、ANSI4.2.2.1に従い電極間インピーダンス(kΩ)を測定した。3回測定し、その平均値を電極間インピーダンスとした。
生体電極が有する繊維基材は、表面電気抵抗器(シシド静電気製メガレスタH0709)を用いて、20℃、40%RH環境下で、500V、60秒間、表面抵抗値(Ω)を測定した。3点測定し、平均化した。
経糸と緯糸に84dtex-72Fのポリエステルフィラメント(ポリエチレンテレフタレート(PET)製)を用い、平織物を製織した。得られた織物を界面活性剤0.5g/L、水酸化ナトリウム0.7g/Lの水溶液、(80℃で20分)で精練、水洗(50℃で10分)し、乾熱処理機にて熱セット(180℃で1分)し、織密度(経180本/2.54cm、緯94本/2.54cm)の繊維基材を得た。カーボンブラック分散液「“ライオンペースト(登録商標)”W-376R」(ライオンスペシャリティケミカル社製、固形分12.5%)をホモミキサーで15分間攪拌後、真空乾燥機にて脱泡し、408g/Lのカーボンブラック分散液と、389g/Lの水系ウレタン樹脂「“スーパーフレックス(登録商標)460”」(第一工業製薬社製脂肪族イソシアネートカーボネート系ウレタン、固形分38%)、11g/Lの水系増粘剤「プリントゲンNFV」(松井色素化学社製、固形分45%)、合計1Lとなるように溶媒としてイオン交換水を混合し、遊星ボールミルで90秒間攪拌・脱泡し塗工液を得た。繊維基材に、得られた塗工液をパイプコーターに塗布し、130℃で加熱後、水洗し、170℃でセットし、導電体付着量が70g/m2の生体電極を得た。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液326g/L、と水系ウレタン樹脂416g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液538g/L、と水系ウレタン樹脂346g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液277g/L、と水系ウレタン樹脂432g/Lに使用量を変更し、遊星ボールミルでの攪拌・脱泡を45秒間に変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液571g/L、と水系ウレタン樹脂335g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液212g/L、と水系ウレタン樹脂454g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液652g/L、と水系ウレタン樹脂309g/Lに使用量を変更した以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
カーボンブラック分散液の攪拌にホモミキサーを使用せずスターラーを使用し15分攪拌し、脱泡しない状態でカーボンブラック分散液と水系ウレタン樹脂と水系増粘剤とをスターラーを使用して90秒混合すること以外は、実施例1と同じ処理を行って導電体付着量が70g/m2の生体電極を製造した。使用部材および得られた生体電極の特性を表1に示す。
Claims (4)
- 非導電性繊維で構成された繊維基材と導電体との積層構造を有し、前記導電体は、カーボンブラックおよびウレタン樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記導電体に対して15~35質量%であり、前記カーボンブラックは少なくとも前記導電体の表面に粒子状で分散しており、前記導電体の表面において、前記カーボンブラックの粒子と隣り合う前記カーボンブラックの粒子との最短距離に対する最長距離の比(最長距離/最短距離)が1~20であり、かつ、前記導電体の表面の湿摩擦堅牢度が4級以上である生体電極。
- 前記導電体の表面のSSRMで測定される面内抵抗値の4~6logΩの面積比率が8~18%である、請求項1に記載の生体電極。
- JIS L0217(1995)103法による20回の洗濯の前後の電極間インピーダンスの差が0.2kΩ以下である、請求項1または2に記載の生体電極。
- ホモミキサーで攪拌されたカーボンブラックとウレタン樹脂とを含む溶液を遊星ボールミルで混合・脱泡し塗工液を得る工程、
該塗工液を非導電性のマルチフィラメント繊維で構成された繊維基材の片面に塗布し、乾燥させる工程、により、請求項1または2に記載の生体電極を製造する生体電極の製造方法。
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