JP7301460B2 - シームレスシフト機構 - Google Patents
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Description
シームレスシフト機構14を備える変速機100は、駆動源の出力回転が入力される入力軸2を有している。
入力軸2では、入力軸2と一体に回転するカムリング41、42、43と、入力軸2に回転可能に支持された変速用のギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)と、が隣接して設けられている。
そして、歯部26、56同士を互いに係合させたギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)とスリーブ51、52、53との組み合わせを変更することで、変速段が変更される。
カム駆動機構9は、回転軸Xc回りに回転するシフトドラム90を有しており、シフトドラム90の外周には、回転軸Xc回りの角度位置に応じて回転軸Xc方向の位置が変化するカム溝91、92、93が設けられている。
これにより、シフトロッド71、72、73で支持されたシフトアーム81、82、83が、スリーブ51、52、53を回転軸Xa方向に変位させる
この際に、音が発生することがあり、発生する音の程度によっては、変速機を搭載した車両の運転者に違和感を与えてしまうことがある。
そこで、変速時における音の発生を抑えられるようにすることが求められている。
第1回転軸と一体回転可能、かつ第1回転軸の軸線方向に変位可能に設けられたスリーブと、
第2回転軸に回転伝達可能、かつ第1回転軸で回転可能に支持されたギヤと、を有し、
シフトロッドの軸線方向の往復変位に連動して、前記スリーブを前記第1回転軸の軸線方向に往復変位させることで、前記スリーブと前記ギヤの互いの対向部に設けた歯部同士を係脱させるように構成されたシームレスシフト機構であって、
前記スリーブの歯部を前記ギヤの歯部に係合させる回転伝達位置と、前記スリーブの歯部を前記ギヤの歯部から離脱させる回転非伝達位置で、前記シフトロッドを位置決めする位置決め機構を、有しており、
前記位置決め機構は、
前記シフトロッドの軸線方向の所定位置に配置されて、前記軸線の径方向から前記シフトロッドの外周に向けて弾性的に付勢されたチェックボールと、
前記シフトロッドの外周に開口すると共に、前記シフトロッドの軸線方向の所定位置に到達すると、前記チェックボールが弾発的に係合する凹溝と、を有しており、
前記凹溝は、前記回転伝達位置に対応する第1凹溝と、前記回転非伝達位置に対応する第2凹溝と、を有すると共に、前記第1凹溝と前記第2凹溝が前記軸線方向で隣接して設けられており、
前記第1凹溝と前記第2凹溝との間に、前記チェックボールを前記第1凹溝と前記第2凹溝との間で移動させずに滞留させる滞留部を設け、
前記滞留部には、前記チェックボールの付勢方向に窪んだ凹部が設けられている、構成のシームレスシフト機構とした。
これにより、変速時の音の発生を抑えることができる。
図1は、シームレスシフト機構14を備える変速機10の構成を説明図である。図1の(a)は、変速機10の全体構成を説明する模式図である。図1の(b)は、2速ギヤ22の歯部26とスリーブ52の歯部56とが係合した際の噛み合い代Wcを説明する図である。
図2は、シームレスシフト機構のカムリング42とスリーブ52を説明する図である。
図2の(a)は、入力軸2と一体に回転するカムリング42にスリーブ52を組み付けた状態を示す斜視図である。図2の(b)は、カムリング42とスリーブ52を入力軸2の軸方向で離間して示した分解斜視図である。
なお、図2においては、入力軸2で支持された変速用のギヤ(2速ギヤ22)を仮想線で示しており、仮想線で示した2速ギヤ22は、外周の歯部の図示を省略している。
入力軸2では、複数の変速用のギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)が、入力軸2の軸方向に間隔をあけて並んでいる。変速用のギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の各々は、入力軸2で回転可能に支持されている。
カムリング41、42、43の外周においてカム溝45は、回転軸Xa周りの周方向に所定間隔で複数設けられている。
スリーブ51、52、53の各々は、カムリング41、42、43のカム溝45に係合する係合突起55(図2参照)を、カム溝45と同数有している。
カム面451は、これら平坦部451aと、傾斜部451dと、中央部451cと、傾斜部451eと、平坦部451bと、が回転軸Xa方向に連なって形成されている。
カム面452は、これら平坦部452aと、傾斜部452dと、中央部452cと傾斜部452eと、平坦部452bと、が回転軸Xa方向に連なって形成されている。
実施の形態では、カムリング42の回転軸Xa周りの周方向において、中央部451c、452cが、平坦部451a、451b、452a、452bよりも上流側に位置している。
実施の形態では、図3の(a)における左側に、2速ギヤ22が位置している。そのため、係合突起55は、カム溝45における中心線Cよりも左側の領域を摺動する。
この場合には、スリーブ52の歯部56を、ギヤ側の歯部26に係合させる際に、スリーブ52を図3の(a)における右側に向けて変位させることになる。
本実施形態では、回転軸Xaの径方向から見て、カム溝45は、略V字形状を成している。
シフトフォーク61、62、63の他端部61b、62b、63bは、入力軸2(回転軸Xa)に対して平行に配置されたシフトロッド71、72、73に連結されている。
カムリング41、42、43に外挿されたスリーブ51、52、53は、入力軸2の軸方向で、変速用のギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)に対向している。
これにより、入力軸2と変速用のギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)との間での回転の伝達/非伝達が切り替えられる。
伝達用のギヤ(第1伝達ギヤ31、第2伝達ギヤ32、第3伝達ギヤ33)は、出力軸3で相対回転不能に設けられている。
これにより、入力軸2に入力された回転が、1速ギヤ21のギヤ比で変速されて、出力軸3に伝達されたのち、ファイナルギヤ35と、差動装置36を介して、駆動輪37に伝達される。
駆動装置1は、前記したシフトフォーク61、62、63と、シフトロッド71、72、73の他に、カム駆動機構9と、制御装置15を有している。
なお、図4では、カム溝91、92、93の位置を判り易くするために、シフトドラム90の外周にハッチングを付して示している。
カム溝91、92、93は、シフトドラム90の回転軸Xc回りの角度位置に応じて、回転軸Xc方向の位置が変化する形状で形成されている(図6参照)。
カム溝91、92、93は、回転軸Xc方向に間隔をあけて設けられている。本実施形態では、カム溝91、92、93が、それぞれ1速、2速、3速の変速段に対応するカム溝である。
回転軸Xcの径方向から見て、係合ピン851、852、853の各々は、回転軸Xcと重なる位置で、カム溝91、92、93に係合している。
回転軸Xcの径方向から見て、係合ピン851、852、853の各々は、回転軸Xc上で直列に並んでいる。
そして、変位したシフトロッド71、72、73に連結されたシフトフォーク61、62、63が、対応するスリーブ51、52、53を、入力軸2の回転軸Xa方向に変位させる。
この位置決め機構70は、軸線X1、X2、X3の径方向(直交方向)からシフトロッド71、72、73の外周に向けて弾性的に付勢されたチェックボールBと、シフトロッド71、72、73の外周に開口する凹溝70a、70b、70cと、を有している。
シフトロッド71、72、73において凹溝70a、70b、70cは、シフトロッド71、72、73の軸線X1、X2、X3方向で直列に連なって配置されている。
すなわち、入力軸2に入力された回転が1速ギヤ21のギヤ比で変速されて出力軸3に伝達される位置でスリーブ51が保持される。
この場合には、シフトロッド73を、チェックボールBを凹溝70aに係合させた位置で保持することで、スリーブ53の歯部56を、他の変速用のギヤの歯部に係合させた位置で保持することができる。
なお、図5の(b)では、シフトロッド72が、チェックボールBを凹溝70bに係合させる位置(回転非伝達位置)から、チェックボールBを凹溝70cに係合させる位置(回転伝達位置)に向けて変位する過程でのチェックボールBの位置の変化が示されている。
凹溝70aは、軸部720の外周720aに平行な平坦部701と、軸線X2方向における平坦部701の一方側に配置された第1傾斜面702と、他方側に配置された第2傾斜面703と、を有している。
軸部720において凹溝70aは、軸線X2周りの周方向の全周に亘って設けられている。
具体的には、隣接する凹溝70aと凹溝70bの間と、凹溝70bと凹溝70cの間に、滞留部704が設けられている。
滞留部704は、シフトロッド72が、チェックボールBを隣接する他の凹溝に向けて移動させる方向(軸線X1方向)に変位する過程で、チェックボールBが隣接する他の凹溝(移動先の凹溝)に引き込まれることを防止するために設けられている。
この過程で、凹溝70bと凹溝70cとの間に滞留部704が設けられていることで、シフトロッド72に対応するスリーブ52と2速ギヤ2との間での回転伝達が開始される前に、チェックボールBが移動先の凹溝70cに引き込まれないようにしている。
図6は、カム溝91、92、93を説明する図である。図6の(a)は、シフトドラム90の外周に設けたカム溝91、92、93を説明する図であって、シフトドラム90を回転軸Xc回りの周方向で展開して示した図である。図6の(b)は、カム溝91を代表して説明する図である。
図6における「アップシフト方向」「ダウンシフト方向」は、係合ピン851、852、853の移動方向を基準とした方向である。
なお、図6の(a)では、変速段の1速から2速への変更が、シームレスに行われた場合の係合ピン851、852、853の位置の変位を示している。
そのため、変速段を変更する際には、カム駆動機構9により、シフトロッド71、72、73を軸線X1、X2、X3方向における一方側(図中、右側)から他方側(図中、左側)に向けて変位させる。
そうすると、変位させたシフトロッド71、72、73に対応するスリーブ51、52、53の歯部56が、対応する変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の歯部26に噛合する。
そして、歯部56、26同士を噛合させたスリーブ51、52、53と、変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)とを介して、入力軸2から出力軸3に、駆動源11からの回転駆動力が伝達される。この際に、回転駆動力の伝達に関与する変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の変速比で、回転駆動力が変速されて、出力軸3に伝達される。
本実施形態では、係合ピン851、852、853が、1速、2速、3速の変速段にそれぞれ対応している。
さらに、この図4の状態では、係合ピン851に対応するスリーブ51と1速ギヤ21とが、互いの歯部56、26同士を噛合させて、変速機10の変速段が「1速」になる。
そのため、変速機の変速段を1速、2速、3速の順番で変更する場合(アップシフト変速する場合)には、シフトロッド71、シフトロッド72、シフトロッド73の順番で、シフトロッドを変位させる。
また、変速機の変速段を3速、2速、1速の順番で変更する場合(ダウンシフト変速する場合)には、シフトロッド73、シフトロッド72、シフトロッド71の順番で、シフトロッドを変位させる。
具体的には、カム溝91、92、93は、回転軸Xc周りの周方向における各カム部915、925、935の角度位置(位相)を異ならせて設けられている。
第1カム面920と第2カム面921は、回転軸Xc方向に間隔Wxをあけて設けられている。カム溝92係合した係合ピン852は、シフトドラム90が回転軸Xc周りに回動した際に、カム溝92内を摺動しながら、カム溝92の形状に応じて決まる回転軸Xc方向の所定位置に配置される。
カム部925は、係合ピン852を作動位置で保持する第1保持部920cを有している。第1保持部920cは、回転軸Xcに直交する平坦面となっており、回転軸Xc周りの周方向に所定幅Waで設けられている。
これら第1傾斜部920bと、第2傾斜部920dは、第1保持部920cを挟んで対称となる位置関係で設けられている。
第1傾斜部920bと第2傾斜部920dは、基準位置に配置された係合ピン852を作動位置に向けて変位させるために設けられている。
変速機の変速段を3速、2速、1速の順番で変更する場合(ダウンシフト変速する場合)に、第2傾斜部920dが、係合ピン852を作動位置に向けて変位させる。
第2傾斜部920dにおける第1保持部920cとは反対側(アップシフト側)には、係合ピン852を基準位置で保持する第3保持部920eが設けられている。
そして、これら第2保持部920aと第3保持部920eよりも、第2カム面921側に離間した位置に、前記した第1保持部920cが設けられている。
第1保持部921cは、回転軸Xcに直交する平坦面となっており、回転軸Xc周りの周方向に所定幅Wbで設けられている。
第1保持部921cの所定幅Wbは、前記した第1保持部920cの所定幅Waよりも長くなっており、第1保持部921cは、第1保持部920cよりもアップシフト側に延びている。
これら第1傾斜部921bと、第2傾斜部921dは、第1保持部920cを挟んで対称となる位置関係で設けられている。
第1傾斜部921bと、第2傾斜部921dは、作動位置に配置された係合ピン852を基準位置に向けて変位させるために設けられている。
変速機の変速段を3速、2速、1速の順番で変更する場合(ダウンシフト変速する場合)に、第1傾斜部921bが、係合ピン852を基準位置に向けて変位させる。
これら第1傾斜部921bと第1傾斜部920bもまた間隔Wxをあけて設けられている。
第2傾斜部921dと第2傾斜部920dとの間に、1速から2速へのシームレスな変更の過程で、係合ピン852の回転軸Xc方向の変位を許容する領域Rを形成するためである。
第2傾斜部921dにおける第1保持部921cとは反対側(アップシフト側)には、係合ピン852を基準位置で保持する第3保持部921eが設けられている。
そして、これら第2保持部921aと第3保持部921eは、前記した第1保持部921cよりも、前記した第1カム面920側に離間した位置に設けられている。
そのため、第1保持部921cは、第2保持部921aと第3保持部921eよりも、隣接する他のカム溝93側に位置している(図6の(a)参照)。
そのため、カム溝91では、第2保持部910aおよび第2保持部911aの回転軸Xc周りの周方向の長さが、カム溝92の第2保持部920aおよび第2保持部921aの長さよりも短くなっている。
さらに、カム溝91では、第3保持部910eおよび第3保持部911eの回転軸Xc回りの周方向の長さが、カム溝92の第3保持部920eおよび第3保持部921eの長さよりも長くなっている。
また、第2保持部911aと、第1傾斜部911bと、第1保持部911cと、第2傾斜部911dと、第3保持部911eで、第2カム面911を構成している。
第2カム面911の第2傾斜部911dと、第1カム面910の第2傾斜部920dが、回転軸Xc回りの周方向における位相を異ならせて設けられている。
カム溝93のカム部935では、カム溝91、92における第2傾斜部と第3保持部に相当する部位が存在しない。
本実施形態にかかる変速機10は、変速段が3つであり、3速よりも高速側の変速段を有していないからである。
そうすると、カム溝91、92、93における係合ピン851、852、853の位置が、図6に実線で示した「1速」に対応する位置(位置a)から、破線で示した「2速」に対応する位置(位置d)に向けて変位する。
この係合ピン852が変位する方向は、基準位置から作動位置に向かう方向(図中、左方向)である。
そうすると、図3の(a)に示すように、2速ギヤ22に隣接するカムリング42のカム溝45では、スリーブ52の係合突起55が、図中仮想線で示す中立位置から、2速ギヤ22に近づく方向(図中、左方向)に変位して、図中符号F1で示す係合位置に向けて変位する。
また、スリーブ52の係合突起55が係合位置に配置された状態では、スリーブ52の歯部56と、2速ギヤ22の歯部26とが係合しており、変速機10では、2速の変速が実現している。
この結果、2速に対応するスリーブ52の歯部56と、2速ギヤ22の歯部26とが噛合して、スリーブ52と2速ギヤ22との間での回転伝達(変更後の変速段での回転伝達)が開始される。
そうすると、スリーブ51の係合突起55は、カム面452の傾斜部452dにより、1速ギヤ21から離れる方向(図3の(b)における右方向)に速やかに変位する。
そうすると、係合ピン851が、カム溝91の第3保持部910eに接触する位置まで変位する(図6の(a)参照)。
図3の(a)に示すようにカム面451の傾斜部451dは、2速ギヤ22から離れる方向へのスリーブ52(係合突起55)の変位を規制する向きで設けられている。
さらに、スリーブ52の歯部56と、2速ギヤ22の歯部26とが完全に係合している状態では、後記するカム駆動機構9側からの操作力が入力されない限り、スリーブ52の歯部56と2速ギヤ22の歯部26との係合が解消されないようになっている。
これにより、アップシフト変速時に、回転駆動力を途切れさせることなく変速段の変更が行えるようになっている。
そのため、本実施形態では、位置決め機構70の凹溝70a~70cのうち、隣接する凹部の間の領域に滞留部704を設けている(図7の(a)参照)。
図7の(a)は、滞留部704を有する位置決め機構70の作用を説明する図である。図7の(b)は、滞留部704を有する位置決め機構70の場合におけるカム溝92での係合ピン852の位置の変位を説明する図である。
図7の(c)は、滞留部704が設けられていない既存の凹溝70a~70cを有する位置決め機構70Xの作用を説明する図である。図7の(d)は、既存の凹溝70a~70cを有する位置決め機構70の場合におけるカム溝92での係合ピン852の位置の変位を説明する図である。
そのため、シフトロッド72が、チェックボールBを凹溝70bから70cに移動させる方向(軸線X2方向)に変位する過程で、チェックボールBは、頂点Pを乗り越えることになる。
ここで、カム駆動機構9によりシフトロッド71、72、73を軸線X1、X2、X3方向に変位させる過程でのシフトロッド71、72、73の変位量には、ばらつきがある。
例えばシフトロッド72では、軸線X2方向の変位量が大きい場合に、チェックボールBの重心が、凹溝70bと凹溝70cとの境界の頂点Pよりも凹溝70c側に位置することがある。
そのため、シフトロッド72は、チェックボールBの重心が境界の頂点Pを超えた時点で、チェックボールBを凹溝70cに係合させる位置まで急激に変位する。すなわち、チェックボールBが移動先の凹溝70c内に引き込まれる。
この際に、シフトドラム90では、2速に対応する係合ピン852が、1速から2速への変速段の変更のために、カム溝92の第1カム面920(第1傾斜部920b)により押されて回転軸Xc方向に変位している(図7の(d)参照)。
係合ピン852が第1傾斜部920bを摺動している途中で、チェックボールBの凹溝70c内への引き込みが発生すると、係合ピン852は、第2カム面921(第1傾斜部921b)側に引き込まれる(図7の(d)参照)。
そうすると、係合ピン852は、第2カム面921の第1傾斜部921bに衝突した後、第1傾斜部921bを摺動しながら、第1保持部921c側(図7の(d)における下側)に向けて移動することになる。
そして、係合ピン852の移動に対する抵抗が、スリーブ51の歯部56と1速ギヤ21の歯部26との噛み合い代に応じて変化すること、噛み合い代が大きい場合と、小さい場合に抵抗が大きいことを見いだした。
図9は、1速から2速へのアップシフト変速時のくさび効果を説明する図である。図9の(a)は、2速側のカム溝92における係合ピン852に作用する力を説明する図である。図9の(b)は、くさび効果が発生した場合での係合ピン851の操作に必要な力Wpを説明する模式図である。図9の(b)は、くさび効果が発生しない場合での係合ピン851の操作に必要な力Wを説明する模式図である。
この際に、係合ピン851には、シフトドラム90の回転に伴う力Faが作用しており、係合ピン851に作用する力Faは、二つの分力Fa1、Fa2に分解されて、第2傾斜部911dに作用する。
これら二つの分力Fa1、Fa2は、第2傾斜部911dに沿う係合ピン851の移動に対する抵抗となる。
この際に、係合突起55には、スリーブ51の移動に伴う力Fbが作用しており、係合突起55に作用する力Fbは、二つの分力Fb1、Fb2に分解されて、傾斜部451dに作用する。
これら二つの分力Fb1、Fb2は、係合突起55の移動に対する抵抗となる。
ここで、図9の(a)に示すように、係合ピン852が第1傾斜部921bを摺動している途中で、チェックボールBの凹溝70c内への引き込みが発生すると、係合ピン852には、引き込み力に応じた力Wが作用する。
この力Wは、係合ピン852が第1傾斜部921bに接触すると、二つの分力N、Kに分解されて作用して、係合ピン852が第1傾斜部921bを摺動しながら第1保持部921c側に移動する。
1速側の係合ピン851/係合突起55に作用する抵抗が、係合ピン852の移動を阻止する方向(図中、矢印K’で示す方向)に作用する。
そうすると、係合ピン851の図中矢印Kで示す方向への移動が阻害される結果、第1傾斜部921bに対する押しつけ力Wが大きくなって、Wpまで増加する。
かかる場合には、スリーブ51の歯部56と1速ギヤ21の歯部26との接触荷重が大きくならないので、スリーブ51の歯部56と1速ギヤ21の歯部26との係合を解消する際に発生する際の音も大きくならない。
滞留部704は、シフトロッド72が、チェックボールBを隣接する凹溝の間で移動させる方向(軸線X1方向)に変位する過程で、チェックボールBが隣接する他の凹溝側に引き込まれることを防止する。
そうすると、変更後の変速段での回転伝達の開始により、係合ピン852をカム溝92の第2カム面921に変位させる方向の力Fが作用しても、係合ピン852と第2カム面921(第1傾斜部921b)との間に隙間があるので、第2カム面921に近づく方向(図7の(b)における左方向)に変位できる。
これにより、くさび効果が生じても、スリーブ51の歯部56と1速ギヤ21の歯部26との接触荷重が大きくならないので、スリーブ51の歯部56と1速ギヤ21の歯部26との係合を解消する際に発生する際の音も大きくならない。
よって、2速での回転伝達に伴う衝撃力が増幅されて大きな音が発生する事態が好適に防止される。
ここでは、1速から2速へのアップシフト変速時について説明をしたが、2速から3速へのアップシフト変速についても同様である。
(1)シームレスシフト機構14は、
入力軸2(第1回転軸)と一体回転可能、かつ入力軸2の回転軸Xa方向に変位可能に設けられたスリーブ51、52、53と、
出力軸3(第2回転軸)に回転伝達可能、かつ入力軸2で回転可能に支持された変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)と、を有している。
シームレスシフト機構14では、シフトロッド71、72、73の軸線X1、X2、X3方向の往復変位に連動して、スリーブ51、52、53を入力軸2の回転軸Xa方向に、変速段の順番で往復変位させる。スリーブ51、52、53の入力軸2の回転軸Xa方向の往復変位により、スリーブ51、52、53と変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の互いの対向部に設けた歯部56、26同士を係脱させる。
シフトロッド71、72、73を、回転伝達位置と回転非伝達位置とで位置決めする位置決め機構70を有している。
シフトロッド71、72、73が回転伝達位置に配置されると、スリーブ51、52、53の歯部56が、変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の歯部26に係合する。
シフトロッド71、72、73が回転非伝達位置に配置されると、スリーブ51、52、53の歯部56が、変速用ギヤ(1速ギヤ21、2速ギヤ22、3速ギヤ23)の歯部26から離脱する。
位置決め機構70は、チェックボールBと、凹溝70a、70b、70cを有している。
チェックボールBは、シフトロッド71、72、73の軸線X1、X2、X3方向の所定位置に配置されて、軸線X1、X2、X3の径方向からシフトロッド71、72、73の外周に向けて、スプリングSpにより弾性的に付勢されている。
凹溝70a、70b、70cは、シフトロッド71、72、73の外周に開口している。凹溝70a、70b、70cには、シフトロッド71、72、73の軸線X1、X2、X3方向の所定位置に到達すると、チェックボールBが弾発的に係合する。
凹溝70a、70b、70cは、回転伝達位置に対応する第1凹溝(凹溝70a、70c)と、回転非伝達位置に対応する第2凹溝(凹溝70b)と、を有する。
第1凹溝(凹溝70a、70c)と、第2凹溝(凹溝70b)は、軸線X1方向で隣接して設けられている。
第1凹溝(凹溝70a、70c)と第2凹溝(凹溝70b)との間に、チェックボールBを第1凹溝(凹溝70a、70c)と第2凹溝(凹溝70b)との間で移動させずに滞留させる滞留部704が設けられている。
これにより、変速時の音の発生を抑えることができる。
(2)滞留部704は、チェックボールBの付勢方向に直交する平坦面である。
かかる状態で、アップシフト変速後の変速段での回転の伝達が開始されると、係合ピン852、853の回転軸Xc方向への変位が第2カム面921、931で規制されているので、くさび効果に起因する音が発生する。
上記のように構成して、チェックボールBが滞留部704に留まるようにして、隣接する凹溝70aまたは凹溝70cに引き込まれることを防止することで、くさび効果に起因する音の発生を抑制または防止できる。
前記した実施形態では、滞留部704が、隣接する凹溝の間に尖り状の頂点Pが位置する既存の凹溝(図7の(b)参照)において、頂点P側の所定高さの領域Rxを切り欠いて形成した平坦面である場合を例示した(図7の(a)参照)。
(3)変形例にかかる滞留部704Aは、チェックボールBの付勢方向に窪んだ凹部である。
この場合、滞留部704Bは、凹溝70bから見て、凹溝70a、70cに向かうにつれて、平坦部701からの高さが高くなる向きで傾斜した傾斜面となる。
10 変速機
11 駆動源
12 メインクラッチ
14 シームレスシフト機構
15 制御装置
2 入力軸
21 1速ギヤ(変速用ギヤ)
22 2速ギヤ(変速用ギヤ)
23 3ギヤ(変速用ギヤ)
26 歯部
3 出力軸
31 第1伝達ギヤ
32 第2伝達ギヤ
33 第3伝達ギヤ
35 ファイナルギヤ
36 差動装置
37 駆動輪
9 カム駆動機構
41、42、43 カムリング
45 カム溝
451、452 カム面
451a、452a 平坦部
451b、452b 平坦部
451c、452c 中央部
451d、452d 傾斜部
451e、452e 傾斜部
51、52、53 スリーブ
55 係合突起
56 歯部
61、62、63 シフトフォーク
70、70X 位置決め機構
70a、70b、70v 凹部
701 平坦部
702 第1傾斜面
703 第2傾斜面
704 滞留部
71、72、73 シフトロッド
710、720、730 軸部
710a、720a、730a 外周
81、82、83 シフトアーム
90 シフトドラム
91、92、93 カム溝
100 変速機
851、852、853 係合ピン
910、920、930 第1カム面
910a、920a、930a 第2保持部
910b、920b、930b 第1傾斜部
910c、920c、930c 第1保持部
910d、920d 第2傾斜部
910e、920e 第3保持部
911、921、931 第2カム面
911a、921a、931a 第2保持部
911b、921b、931b 第1傾斜部
911c、921c、931c 第1保持部
911d、921d 第2傾斜部
911e、921e 第3保持部
915、925、935 カム部
951、952、953 係合ピン
B チェックボール
M1 モータ
P、P’ 頂点
R 領域
Sp スプリング
X1、X2、X3 軸線
Xa、Xb、Xc 回転軸
Claims (1)
- 第1回転軸と一体回転可能、かつ前記第1回転軸の軸線方向に変位可能に設けられたスリーブと、
第2回転軸に回転伝達可能、かつ前記第1回転軸で回転可能に支持された変速用ギヤと、を有し、
シフトロッドの軸線方向の往復変位に連動して、前記スリーブを前記第1回転軸の軸線方向に往復変位させることで、前記スリーブと前記変速用ギヤの互いの対向部に設けた歯部同士を係脱させるように構成されたシームレスシフト機構であって、
前記スリーブの歯部を前記変速用ギヤの歯部に係合させる回転伝達位置と、前記スリーブの歯部を前記変速用ギヤの歯部から離脱させる回転非伝達位置で、前記シフトロッドを位置決めする位置決め機構を、有しており、
前記位置決め機構は、
前記シフトロッドの軸線方向の所定位置に配置されて、前記軸線の径方向から前記シフトロッドの外周に向けて弾性的に付勢されたチェックボールと、
前記シフトロッドの外周に開口すると共に、前記シフトロッドの軸線方向の所定位置に到達すると、前記チェックボールが弾発的に係合する凹溝と、を有しており、
前記凹溝は、前記回転伝達位置に対応する第1凹溝と、前記回転非伝達位置に対応する第2凹溝と、を有すると共に、前記第1凹溝と前記第2凹溝が前記軸線方向で隣接して設けられており、
前記第1凹溝と前記第2凹溝との間に、前記チェックボールを前記第1凹溝と前記第2凹溝との間で移動させずに滞留させる滞留部を設け、
前記滞留部には、前記チェックボールの付勢方向に窪んだ凹部が設けられている、シームレスシフト機構。
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