以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るエアダスタ1について説明する。図1に示すエアダスタ1は、吐出口203から空気を吐出することで、塵埃等を吹き飛ばすことが可能な送風機の一種であって、使用者が把持して使用する手持ち式の電動ツールとして構成されている。
まず、エアダスタ1の概略構成について説明する。
図1および図2に示すように、エアダスタ1の外郭は、主として、本体ハウジング2と、ハンドル3とによって形成されている。本体ハウジング2は、モータ4、複数のファン(羽根車ともいう)6等を収容する中空体として構成されている。本実施形態では、本体ハウジング2は、概ね円筒状に形成されており、その軸方向における一端部に吐出口203を有する。ハンドル3は、使用者による把持が可能に構成されており、本体ハウジング2の軸と交差する方向(概ね直交する方向)に、本体ハウジング2から突出している。ハンドル3の基端部(本体ハウジング2に接続する端部)には、使用者による押圧操作(引き操作)が可能なトリガ311が設けられている。また、ハンドル3の突出側の端部(先端部)には、バッテリ装着部34を介して、バッテリ340が取り外し可能に装着されている。使用者によってトリガ311が引き操作されると、モータ4が通電されてファン6が駆動され、圧縮された空気が吐出口203から吐出される。
以下、エアダスタ1の詳細構成について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、本体ハウジング2の軸方向(後述するモータシャフト45およびファン6の回転軸A1の軸方向(以下、回転軸A1方向という)ともいえる)をエアダスタ1の前後方向と規定し、吐出口203が配置されている側を前側、反対側を後側と規定する。また、本体ハウジング2の軸(回転軸A1)に直交し、ハンドル3の延在方向に対応する方向を上下方向と規定し、基端部側を上側、突出端側(バッテリ340が着脱される側)を下側と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
ハンドル3およびその内部構造について説明する。
図1および図2に示すように、ハンドル3は、概ね上下方向に延在する筒状の把持部31と、把持部31の下端部に接続し、ハンドル3の下端部を構成する矩形箱状のコントローラ収容部33とを含む中空体として構成されている。ハンドル3(把持部31)の上端部は、本体ハウジング2にネジで固定されており、これにより、ハンドル3は本体ハウジング2と一体化されている。
把持部31は、エアダスタ1の使用時(稼働時)に使用者によって把持される部分である。トリガ311は、把持部31の上端部の前側に設けられている。把持部31内には、スイッチ313が収容されている。スイッチ313は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ311の引き操作に応じてオン状態とされる。スイッチ313は、図示しない配線を介して後述するコントローラ331に接続されており、オン状態とされた場合、トリガ311の操作量(引き量)に応じた信号を、コントローラ331に出力するように構成されている。
コントローラ収容部33内には、モータ4の駆動制御等、エアダスタ1の各種動作を制御するように構成されたコントローラ331が収容されている。なお、本実施形態では、コントローラ331は、CPU、ROM、RAM、メモリを含むマイクロコンピュータとして構成されており、メイン基板に搭載され、ケースに収容された状態でコントローラ収容部33内に配置されている。本実施形態では、コントローラ331は、スイッチ313から出力される信号(つまり、トリガ311の操作量)に応じて、モータ4の回転数を無段階で制御するように構成されている。なお、トリガ311の最大操作量に対応するモータ4の最高回転数は、毎分63,000回転(63,000rpm)である。
更に、コントローラ収容部33の上部には、使用者による外部操作が可能な操作部333が設けられている。操作部333は、各種情報の入力を受け付ける押しボタンを有する。操作部333は、図示しない配線を介してコントローラ331に接続されており、入力された情報を示す信号をコントローラ331に出力するように構成されている。
コントローラ収容部33の下端部には、バッテリ装着部34が設けられている。バッテリ装着部34は、充電式のバッテリ340をスライド係合可能な係合構造と、バッテリ340の係合に伴って、バッテリ340の端子に接続可能な端子とを有する。なお、バッテリ装着部34およびバッテリ340の構成自体は周知であるため、ここでの説明は省略する。
本体ハウジング2およびその内部構造について説明する。
図1および図2に示すように、本体ハウジング2の大部分は円筒状に形成される一方、前端部は先細りの漏斗状(円錐状)に形成されている。この漏斗状部分の円筒状の先端部を、ノズル231という。ノズル231の開口は、本体ハウジング2内で圧縮された空気が本体ハウジング2の外部へ吐出される吐出口203を構成する。なお、本実施形態では、吐出口203は円形であって、その直径(ノズル径ともいう)は6ミリメートル(mm)である。吐出口203は、回転軸A1上に配置される。なお、詳細は図示しないが、ノズル231には、ノズル径より大きい、または小さい内径を有する円筒状のアタッチメントを着脱可能である。アタッチメントがノズル231に装着された場合には、吐出口203から吐出された空気は、アタッチメント内を通過して、アタッチメントの先端の開口から吐出されることになる。また、本体ハウジング2の後端部を規定する後壁には、複数の貫通孔が形成されている。これらの貫通孔は、本体ハウジング2の外部から内部へ空気を吸い込むための吸込み口201を構成する。
なお、本実施形態では、本体ハウジング2は、筒状部21と、筒状部21に連結された前側カバー23および後側カバー25とを主体として形成されている。本体ハウジング2は、合成樹脂製である。
筒状部21は、概ね円筒状の部材である。図3および図4に示すように、筒状部21の後部には、内周面から内側(中心軸側)に突出する複数のリブ211が設けられている。リブ211の前端面212は、後述する第1区画板711、ひいては区画構造7を前後方向に位置決めするための位置決め面として機能する。前側カバー23は、筒状部21の前端の開口を覆う漏斗状の部材である。前側カバー23は、ノズル231を含み、本体ハウジング2の前端部を構成する。後側カバー25は、筒状部21の後端の開口を覆う背面視円形の部材である。後側カバー25は、本体ハウジング2の後壁を構成する部材であって、吸込み口201としての貫通孔を複数有する。また、後側カバー25には、前方へ突出する複数のリブ251が設けられている。リブ251は、筒状部21のリブ211と共に、モータ4のステータ41を支持するように構成されている。
更に、後側カバー25は、ベアリング47の保持部材として構成されており、中央部に設けられたベアリング保持部255を有する。ベアリング保持部255は、後端側に開口する有底円筒状の部分であって、貫通孔を有する底壁(前壁)と、円筒状の周壁とを有する。ベアリング保持部255内には、ベアリング47が嵌め込まれている。ベアリング47は、リテーナ256によって、ベアリング47の外輪471がベアリング保持部255の底壁に当接した状態で後側カバー25に締着されている。なお、リテーナ256は、ベアリング47の後側から周壁の内周面に形成された雌ネジ部にねじ込まれている。
上述の通り、本体ハウジング2には、モータ4と、ファン6とが収容されている。より詳細には、図3および図4に示すように、モータ4の本体部40は、本体ハウジング2の後部内に配置され、モータ本体部40の前側にファン6が配置されている。つまり、モータ4は、吸込み口201から吐出口203までの本体ハウジング2内の空気の流路において、吸込み口201とファン6の間(ファン6の上流側)に配置されている。
本実施形態では、モータ4として、ブラシレスモータが採用されている。モータ4は、ステータ41およびロータ43を含む本体部40と、ロータ43から延設され、ロータ43と一体的に回転するモータシャフト45とを備えている。
ステータ41は、円筒状のケース411に収容され、本体ハウジング2の後端部内で保持されている。より詳細には、ステータ41のケース411は、筒状部21のリブ211と後側カバー25のリブ251との間で挟み込まれ、支持されている。
モータシャフト45は、本体ハウジング2の軸に沿って前後方向に延在している。なお、本実施形態のモータシャフト45は、本体部40に比べて非常に長く、本体ハウジング2の前端部から後端部まで延在している。モータシャフト45は、ベアリング46、47によって、本体ハウジング2に対して回転軸A1周りに回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、ベアリング46、47は何れも、外輪と、内輪と、転動体としてのボールを備えたボールベアリングである。モータシャフト45の前端部を支持するベアリング46は、後述する整流部材75を介して本体ハウジング2に保持されている。モータシャフト45の後端部を支持するベアリング47は、上述した後側カバー25のベアリング保持部255に保持されている。
ロータ43は、モータシャフト45の後端部に固定されており、後側のベアリング47の前側で、ステータ41の内側に配置されている。また、モータシャフト45には、ロータ43の前側に、バランスリング431が取り付けられている。バランスリング431は、切削が可能な素材(例えば、銅)で形成されており、必要に応じて切削されて、ロータ43の回転時の動的バランスを最適化することを可能とするものである。更に、モータシャフト45は、バランスリング431の前側に、径方向外側に突出するフランジ451を有する。モータシャフト45の前端部は、外周面にネジが切られた雄ネジ部453として構成されている。モータシャフト45のうち、雄ネジ部453とフランジ451との間の部分(以下、ファン取付け部455という)には、後述する3つのファン6が取り付けられている。ファン取付け部455は、雄ネジ部453よりも大径であって、均一径を有する。
図3および図4に示すように、本実施形態では、エアダスタ1は、同一構成を有する3つのファン6を備えている。ファン6は、モータシャフト45上に同軸状に配置され、モータ4の駆動に伴ってモータシャフト45と一体的に回転軸A1周りに回転するように構成されている。ファン6は、回転軸A1方向に空気を吸い込み、径方向外側に送出する遠心ファンである。3つのファン6は、夫々、区画された3つの領域(部屋ともいう)に配置されている。以下では、3つのファン6を区別して指す場合、第1段側(吸込み口201の側。本体ハウジング2内の空気の流れ方向における最上流側ともいえる。本実施形態では本体ハウジング2の後端側)から順に、第1ファン601、第2ファン602、第3ファン603ともいう。また、第1ファン601、第2ファン602、第3ファン603に夫々対応する領域(部屋)を、夫々、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3ともいう。
ここで、本体ハウジング2内部の区画について説明する。図3および図4に示すように、本体ハウジング2内には、中央部に貫通孔を有する円形の区画板71が3枚配置されている。3枚の区画板71は、夫々、3つのファン6の後側(前段側または吸込み側ともいえる)に配置されている。第1ファン601の後側に配置された区画板71は、モータ4が収容される領域(以下、モータ領域という)と、ファン6が収容される領域(以下、ファン領域という)との境界を画定する。第2ファン602の後側に配置された区画板71は、第1領域R1と第2領域R2との境界を画定する。第3ファン603の後側に配置された区画板71は、第2領域R2と第3領域R3との境界を画定する。なお、以下では、3つの区画板71を区別して指す場合、第1段側から順に、第1区画板711、第2区画板712、第3区画板713ともいう。区画板71の外径は、本体ハウジング2(筒状部21)の内径に概ね等しい。各区画板71の中央部の貫通孔は、回転軸A1上に配置され、その前段(後側)の領域と次段(前側)の領域とを連通させる通気口710を構成する。
第1領域R1および第2領域R2の夫々において、ファン6の前側(次段側、吐出口203側ともいえる)には、ファン6によって送出された空気を径方向内側へ向かわせ、次段へ導くための整流部材73が配置されている。2つの整流部材73は、同一の構成を有する。また、第3領域R3において、ファン6の前側には、ファン6によって径方向外側に送出された空気を径方向内側へ向かわせ、吐出口203へ導くための整流部材75が配置されている。つまり、本実施形態では、各段のファン6に対応して、空気の流れを特定の方向へ案内するための整流部材73または75が設けられている。
なお、ファン6がモータシャフト45に組み付けられるのに対し、区画板71、整流部材73および75は、本体ハウジング2に組み付けられる部材である。本実施形態では、3つのファン6は、ベアリング46を介してモータシャフト45に組み付けられている。一方、区画板71、整流部材73および75は、間に配置されたスペーサ77と一体的に、ベアリング46を介して本体ハウジング2に組み付けられている。この点については後で詳述する。
以下、ファン6の詳細構成について説明する。上述の通り、ファン6は、遠心ファンである。図5および図6に示すように、ファン6は、いわゆるオープン式の羽根車であって、ハブ61と、背板631と、複数の羽根633とを含む。
ハブ61は、モータシャフト45が挿通される貫通孔を有する筒状の部分である。背板631は、ハブ61から径方向外側に突出する円板状の部分である。なお、本実施形態の背板631は、平板状であって、概ね均一の厚みを有する。羽根633は、背板631の2つの板面のうち、吸込み口201の側(吸込み側)の面、つまり、後面から後方へ突出している。なお、ファン6の羽根633と、後側(吸込み側)の区画板71との間の隙間は、径方向外側に送出された空気がこの隙間に逆流することを防ぐため、最小限とされている。羽根633は、ハブ61(詳細には、後述するボス635)の外周から背板631の外縁まで、湾曲しつつ放射状に延びている。回転軸A1方向に吸い込まれた空気は、背板631および隣接する羽根633によって規定される流路(以下、ファン流路という)を径方向外側に流れ、羽根633の径方向外側の端部の間の開口(出口)から流出する。
本実施形態では、ファン6は、後向き羽根を有する後向きファン(ターボファンともいう)であって、図7に示すように、羽根633の径方向外側の端部は、ファン6の回転方向Rとは反対側に傾いている。このような後向きファンを採用することで、径向き羽根を有するラジアルファンを採用する場合に比べ、高効率で、径方向の大型化を抑えつつ比較的大きな風量を発揮可能な多段式遠心送風機を実現することができる。
なお、本実施形態では、ファン6は、別部材として構成された3つの部材が固定状に連結されることによって構成されている。より詳細には、図6に示すように、ファン6は、スリーブ610と、本体63と、ロック部材65とで構成されている。なお、本実施形態では、スリーブ610とロック部材65は強度確保のために鉄製とされ、本体63は軽量化のためにアルミニウム合金製とされている。
スリーブ610は、図5に示すように、モータシャフト45の外周に嵌め込まれる円筒状の部材であって、モータシャフト45の直径と概ね等しい内径を有する。図6に示すように、スリーブ610の概ね半分は大径部612として構成され、残りの半分は、より小さい外径を有する小径部614として構成されている。大径部612のうち、小径部614とは反対側の一端には、フランジ613が設けられている。詳細は後述するが、大径部612の外周には、本体63が圧入される。フランジ613は、本体63の位置決め部および抜け止め部として機能する。
図5~図8に示すように、本体63は、円筒状のボス635と、上述の背板631と羽根633とを含む部材である。ボス635は、スリーブ610の大径部612に圧入される部分であって、大径部612の外径より若干小さい内径を有する。背板631は、ボス635の前端部から径方向外側に突出している。背板631の外径は、本体ハウジング2(筒状部21)の内径よりも小さい。なお、本実施形態では、背板631の外径(つまり、ファン(羽根車)6の外径(ファン径ともいう))は、50mmである。また、図5および図9に示すように、背板631のうち、羽根633が設けられているのとは反対側の面、つまり、前面には、複数の突起632が設けられている。本実施形態では、4つの突起632が、本体63中央部の貫通孔の周囲に等間隔で配置されている。
図6に示すように、ロック部材65は、スリーブ610の小径部614の外周に圧入されて、スリーブ610と本体63とをより強固に固定する部材である。図6および図10に示すように、ロック部材65は、円筒状のボス651と、ボス651の軸方向の一端から径方向外側に突出するフランジ653とを含む部材である。ボス651は、小径部614の外径よりも若干小さい内径を有する。フランジ653の周縁には、複数の凹部654が設けられている。本実施形態では、本体63の4つの突起632(図9参照)に対応して、4つの凹部654が周方向に等間隔で設けられている。各凹部654は、突起632に整合する形状を有する。
ファン6は、以上のように構成されたスリーブ610、本体63およびロック部材65によって、次のようにして組み立てられる。まず、本体63が、突起632がフランジ613とは反対側に位置する向きに配置され、スリーブ610の大径部612の外周に圧入される。そして、凹部654が突起632に係合するように、ロック部材65が本体63に対して周方向に位置決めされた状態で、ロック部材65がスリーブ610の小径部614に圧入される。これにより、スリーブ610、本体63およびロック部材65が一体化され、ファン6が完成する。なお、ファン6が完成すると、スリーブ610と、本体63のボス635と、ロック部材65のボス651とによって、ハブ61が構成される。本実施形態では、ハブ61は、3つのファン6がモータシャフト45上に直列状に配置されたときに、隣接するファン6の背板631同士の間隔を規定するスペーサとしても機能する。
整流部材73の詳細構成について説明する。図5および図11に示すように、整流部材73は、ベース板731と、複数の案内羽根735とを含む。なお、本実施形態では、ベース板731と案内羽根735とは、アルミニウム合金によって一体的に成形されている。
ベース板731は、中央部に貫通孔733を有する円板状の部分である。ベース板731の2つの板面のうち一方は平面である。他方の面は、中央部に、中心に向けて緩やかに湾曲しつつ突出する突出部732を有する。ベース板731は、平面側がファン6の背板631の前面(羽根633が設けられているのとは反対側の面)に非接触で対向するように配置される。なお、背板631とベース板731との間の隙間は、ファン通路の出口から送出された空気がこの隙間に逆流することを防ぐため、最小限とされている。また、ベース板731の外径は、ファン6の背板631の外径と概ね等しい。貫通孔733は、背板631に対向したときに、ベース板731がファン6に接触しないように構成されている。
案内羽根735は、径方向内側へ空気を導くための羽根である。案内羽根735は、ベース板731の2つの板面のうち、同じ段のファン6(背板631)との対向面とは反対側の面、つまり、前面から前方へ突出している。また、案内羽根735は、ベース板731の突出部732の外周から、湾曲しつつ放射状に延びている。なお、案内羽根735の数は、ファン6の羽根633の数よりも少ない。ファン通路の出口から径方向外側に送出された空気は、ベース板731、隣接する案内羽根735、および次段側の区画板71によって規定される流路(以下、戻り流路という)を径方向内側に流れる。案内羽根735の径方向外側(空気が流入する側)の端部は、ファン6の回転方向Rとは反対側に傾いている。また、案内羽根735の径方向外側の端は、ベース板731の外縁よりも径方向外側に突出し、本体ハウジング2(筒状部21)の内面まで達している。つまり、整流部材73の外径は、本体ハウジング2(筒状部21)の内径に概ね等しい。
なお、本実施形態では、整流部材73(案内羽根735)の前端は、次段側の区画板71に当接している。このため、整流部材73と次段側の区画板71とは、一体的に次の段との境界を画定する区画構造7を構成しているということもできる。なお、整流部材73と区画板71とを単一の部材として一体成形することも可能であるが、本実施形態のように、別部材とすることで、夫々をよりシンプルな構成として製造コストを抑えることができる。
整流部材75の詳細構成について説明する。図5および図12に示すように、整流部材75は、円筒部751と、複数の案内羽根753とを含む。また、本実施形態では、整流部材75は、ベアリング46の保持部材も兼用する。このため、整流部材75は、ベアリング保持部755を有する。なお、本実施形態では、円筒部751、案内羽根753およびベアリング保持部755は、アルミニウム合金によって一体的に成形されている。
円筒部751は、本体ハウジング2の筒状部21内に嵌め込まれる部分であって、筒状部21の内径と概ね等しい外径を有する。案内羽根753は、径方向内側へ空気を導くための羽根であって、ベアリング保持部755と円筒部751とを放射状に接続している。案内羽根753は、整流部材73の案内羽根735と同様、湾曲しつつ放射状に延びており、案内羽根753の径方向外側の端は、ファン6の回転方向Rとは反対側に傾いている。ベアリング保持部755は、円筒部751の前端部中央に設けられている。ベアリング保持部755は、前端側に開口する有底円筒状の部分であって、貫通孔756を有する底壁(後壁)と、円筒状の周壁とを有する。貫通孔756の直径は、ファン6のハブ61の前端部(ロック部材65)の外径よりも大きく設定されている。ベアリング保持部755内には、ベアリング46が嵌め込まれている。ベアリング46の外輪461はベアリング保持部755の底壁に当接している。また、ベアリング46の内輪463は、第3ファン603のハブ61の前端に当接した状態で、モータシャフト45(ファン取付け部455)の前端部に圧入されている。
モータシャフト45の雄ネジ部453は、ベアリング46よりも前方へ突出している。雄ネジ部453には、ナット81と緩み止めナット83とが締結されている。ベアリング46とナット81の間には、ワッシャ89が配置されている。本実施形態では、ナット6は、ベアリング46の内輪463を介して3つのファン6をモータシャフト45に締着するとともに、ベアリング46の外輪461を介して区画構造7等を本体ハウジング21に締着している。なお、この点については後で詳述する。
スペーサ77の詳細構成について説明する。スペーサ77は、各段(第1領域R1~第3領域R3の各々)において、後側(前段側)の区画板71と、整流部材73、75とに当接して区画板71と整流部材73、75との間の間隔を規定することで、整流部材73、75を前後方向において位置決めするための部材である。具体的には、3つのスペーサ77が、夫々、第1区画板711と第1ファン601に対応する整流部材73の間、第2区画板712と第2ファン602に対応する整流部材73の間、および第3区画板713と第3ファン603に対応する整流部材75の間に配置されている。本実施形態では、スペーサ77は、筒状部21の内径に概ね等しい外径を有する円筒部材であって、アルミニウム合金の薄板で形成されている。スペーサ77の軸方向の長さは、同じ段のファン6の背板631の前面と、整流部材73のベース板731の後面(互いに対向する二面)の間の隙間が最小限となるように設定されている。
以下、モータ4駆動時の空気の流れについて説明する。モータ4が駆動され、モータシャフト45と一体的に3つのファン6が回転すると、吸込み口201(図2参照)から本体ハウジング2内部へ空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、モータ本体部40を冷却しつつモータ領域を通過し、図5に太矢印で示すように、第1区画板711の通気口710から、第1ファン601が配置された第1領域R1へ流入する。そして、第1ファン601のファン流路を通って、ファン流路の出口から第1ファン601の径方向外側へ送出される。なお、図5には、便宜上、本体ハウジング2内部の上半分における空気の流れが太矢印で示されているが、下半分における流れも同様である。
送出された空気は、スペーサ77の内周面によって向きを変えられ、整流部材73の案内羽根735の径方向外側の端部の間から戻り流路へ流入する。本実施形態では、上述したように、ファン6の背板631と整流部材73のベース板731とは、概ね同一の外径を有する。また、整流部材73の案内羽根735は、ベース板731よりも径方向外側に突出し、本体ハウジング2の内面まで達している。このような構成によれば、ファン通路の出口から送出された空気を、案内羽根735の径方向外側の端部(ベース板731から突出している端部)の間へ後側から容易に流入させ、ベース板731の前面側に形成された戻り流路へ容易に流すことができる。更に、案内羽根735は、夫々の径方向外側の端部が、ファン6の回転方向と反対側に傾斜するように配置されているため、ファン6から送出された空気は、案内羽根の径方向外側の端部に沿って、戻り流路へ円滑に流入することができる。戻り流路内を径方向内側へ向かって案内された空気は、第2区画板712の通気口710から第2領域R2へ流入する。
第2領域R2に流入した空気は、第2ファン602のファン通路を通って径方向外側へ送出され、スペーサ77の内周面によって向きを変えられ、整流部材73の戻り流路へ容易且つ円滑に流入する。更に、戻り流路内を径方向内側へ向かって案内された空気は、第3区画板713の通気口710から第3領域R3へ流入する。第3領域R3に流入した空気は、第3ファン603のファン通路を通って径方向外側へ送出され、スペーサ77の内周面によって向きを変えられ、整流部材75の案内羽根753の間に形成される戻り流路へ流入する。整流部材75の案内羽根753も、整流部材73の案内羽根735と同様、ベース板731よりも径方向外側に突出し、円筒部751の内面まで達している。また、案内羽根753の径方向外側の端部は、ファン6の回転方向と反対側に傾斜するように配置されている。よって、第3ファン603から送出された空気は、整流部材75の戻り流路へ容易且つ円滑に流入する。
流入した空気は、案内羽根753によって、戻り流路内を径方向内側へ向かって案内され、前側カバー23のノズル231を通って、回転軸A1上にある吐出口203から吐出される。このように、最終段の第3ファン603と吐出口203の間に整流部材75を配置することで、第3ファン603から送出された空気を、吐出口203へ効率的に案内し、風力の低下を抑制することができる。
以下、エアダスタ1の組み立て(特に、モータシャフト45に対するファン6の組み付け、ならびに、区画板71、スペーサ77、整流部材73、75の本体ハウジング2に対する組み付け)について説明する。
まず、モータ4が本体ハウジング2内に収容される。具体的には、前側カバー23と後側カバー25とが外された状態の筒状部21の後部に、ケース411に収容されたステータ41が配置され、後側カバー25がネジ29で筒状部21に固定される。後側カバー25が筒状部21に取り付けられることで、ステータ41は、リブ211および251によって、本体ハウジング2内で支持される(図3および図4参照)。また、ロータ43およびバランスリング431が固定されたモータシャフト45が、筒状部21内に配置され、モータシャフト45の後端部がベアリング47の内輪473に圧入される。
続いて、第1区画板711によって、モータ領域とファン領域(詳細には、第1領域R1)とが区画される。具体的には、第1区画板711が、モータシャフト45が挿通された状態で、筒状部21前端の開口から内部へ挿入される。第1区画板711の外縁部が筒状部21のリブ211の前端面212に当接し、第1区画板711が筒状部21に対して前後方向に位置決めされる(図4参照)。
続いて、次の手順で、第1段の構造の配置、および第1領域R1と第2領域R2との区画が行われる。
まず、第1段のスペーサ77が、モータシャフト45が挿通された状態で、前端側から筒状部21内部に嵌め込まれる。スペーサ77は、第1区画板711の後端面の外縁部に当接し、前後方向に位置決めされる。続いて、第1ファン601が、モータシャフト45の前端側からモータシャフト45の外周に嵌め込まれ、筒状部21内に挿入される。ハブ61(詳細には、フランジ613)の後端が、モータシャフト45のフランジ451の前端面に当接し、第1ファン601がモータシャフト45に対して前後方向に位置決めされる(図5参照)。
更に、整流部材73が、モータシャフト45が挿通された状態で、前端側から筒状部21内部に嵌め込まれる。整流部材73の案内羽根735の径方向外側の端部の後端面が、スペーサ77の前端面に当接し、整流部材73が前後方向に位置決めされる。これにより、同じ段のファン6の背板631の前面と、整流部材73のベース板731の後面の間に最小限の隙間が形成された状態で、第1ファン601の前側(次段側)に整流部材73が配置される。また、ファン6のハブ61の前部(ロック部材65)と突起632が貫通孔733に挿通された状態で、ハブ61の径方向外側に整流部材73が配置される(図5参照)。
更に、第2区画板712が筒状部21内に挿入される。第2区画板712の外縁部が第1段の整流部材73の前端面に当接し、前後方向に位置決めされる。これをもって、第1段のファン6、スペーサ77および整流部材73の配置と、第1領域R1と第2領域R2の区画が完了する(図5参照)。
続いて、次の手順で、第2段の構造の配置、および第2領域R2と第3領域R3との区画が行われる。
第2段の構造の配置方法は、上述の第1段の方法と実質的に同じである。具体的には、第2段に対応するスペーサ77が、筒状部21内部に嵌め込まれ、前後方向に位置決めされる。第2ファン602がモータシャフト45に嵌め込まれ、ハブ61の後端が、前段の第1ファン601のハブ61の前端に当接するように位置決めされる。なお、位置決めされた第2ファン602のハブ61の前端は、第2区画板712の通気口710内に配置される。また、羽根633は、第2区画板712から僅かに前方に離間した位置に配置される。第2段に対応する整流部材73、および第2領域R2と第3領域R3とを区画する第3区画板713が、筒状部21内部に順に嵌め込まれ、前後方向に位置決めされる。これをもって、第2段のファン6、スペーサ77および整流部材73の配置と、第2領域R2と第3領域R3の区画が完了する(図5参照)。
続いて、第2段と同様の手順で、第3段の構造が配置される。具体的には、第3段に対応するスペーサ77が筒状部21内部に嵌め込まれ、前後方向に位置決めされる。第3ファン603がモータシャフト45に嵌め込まれ、ハブ61の後端が、前段の第2ファン602のハブ61の前端に当接するように位置決めされる。第3段に対応する整流部材75が筒状部21内部に嵌め込まれ、前後方向に位置決めされる。これをもって、第3段のファン6、スペーサ77および整流部材75の配置が完了する。第3段のファン6のハブ61の前端部は、貫通孔756を介してベアリング保持部755内に突出する(図5参照)。
なお、第3段の構造の配置が完了した時点では、第1段~第3段の3つのファン6は、隣接するハブ61同士が当接した状態で、回転軸A1方向(前後方向)に直列状に配置されるとともに、第1ファン601のハブ61の後端(フランジ613)が、モータシャフト45のフランジ451の前端に当接する。但し、3つのファン6は、モータシャフト45には固定されていない。また、第1区画板711、スペーサ77、整流部材73、第2区画板712、スペーサ77、整流部材73、第3区画板713、スペーサ77、および整流部材75は、隣接する部材の外縁同士が当接した状態で、回転軸A1方向(前後方向)に直列状に配置されるとともに、第1区画板711の後端面の外縁が、本体ハウジング2(筒状部21)内のリブ211の前端面に当接する。但し、これらの部材は、本体ハウジング2に対して固定されていない状態である。
続いて、次の手順で、ナット81によって、3つのファン6がモータシャフト45に締着されるとともに、区画板71、スペーサ77、ならびに整流部材73、75が本体ハウジング2に締着される。
まず、モータシャフト45の雄ネジ部453(前端部)にベアリング46が遊嵌され、その一部がベアリング保持部755の前端部内に配置される。更に、ベアリング46の前側で、環状のワッシャ89が雄ネジ部453に嵌められる。なお、ワッシャ89の内径は雄ネジ部453の外径と概ね等しく、ワッシャ89の外径はベアリング46の外輪461の内径よりも小さい。よって、ワッシャ89は、ベアリング46の内輪463にのみ当接し、外輪461には接触しない。続いて、ワッシャ89の前側からナット81が雄ネジ部453に締結される。締結が進行し、ナット81がモータシャフト45の後方へ移動するにつれて、ワッシャ89を介してベアリング46が押圧されて、ベアリング保持部755内で後方へ移動するとともに、内輪463がファン取付け部455の前端部に圧入される。
ベアリング46の内輪463が第3ファン603のハブ61の前端に当接し、且つ、外輪461がベアリング保持部755の底壁に当接した状態で、ナット81が更に締め付けられる。これにより、ワッシャ89、ベアリング46の内輪463、第3ファン603のハブ61、第2ファン602のハブ61、第1ファン601のハブ61が、ナット81とフランジ451の間で挟持され、モータシャフト45に作用する軸力によってモータシャフト45に締着される。また、ベアリング46の外輪461、整流部材75、スペーサ77、第3区画板713、整流部材73、スペーサ77、第2区画板712、整流部材73、スペーサ77、第1区画板711が、ナット81とリブ211との間で挟持され、軸力によって本体ハウジング2に締着される。
その後、ナット81の緩みを防止するため、緩み止めナット83が雄ネジ部453締結される。更に、前側カバー23が筒状部21の前端部に螺合される。これにより、本体ハウジング2の組み立てが完了する。更に、ハンドル3が本体ハウジング2に固定され、エアダスタ1の組み立てが完了する。
以上に説明したように、本実施形態のエアダスタ1は、3段の遠心送風機であって、3つのファン(遠心ファン)6の夫々の吸込み側に配置された区画板71(第1区画板711~第3区画板713)によって、各段の領域の境界が画定されている。また、最終段以外の段(つまり、第1段および第2段)では、夫々、ファン6(第1ファン601および第2ファン602)に対応して整流部材73が設けられている。ファン6の羽根633は、背板631の吸込み側の面である後面から突出する一方、整流部材73の案内羽根735は、ベース板731の前面、つまり、ファン6とは反対側の面から突出する。ベース板731の後面、つまりファン6側の面には、空気の流れを何らかの方向に案内する羽根等の突出部は設けられていないため、ベース板731と背板631とをできるだけ近くに配置することができる。これにより、ファン6から径方向外側へ送出された空気が、圧力差で背板631とベース板731の間で径方向内側へ流れることを抑制することができる。また、ベース板731の後面には突出部が設けられていないため、組立時にファン6と整流部材73とが干渉する可能性を低減でき、組立性も向上することができる。このように、合理的な構成を有するエアダスタ1が実現されている。
また、本実施形態のエアダスタ1では、3つのファン6(第1ファン601~第3ファン603)の間に夫々配置された2つの区画構造7(整流部材73と第2区画板712、および整流部材73と第3区画板713)によって、本体ハウジング2の内部が、第1領域R1~第3領域R3に区画されている。そして、共通する単一のナット81によって、3つのファン6がモータシャフト45に締着されるとともに、2つの区画構造7(詳細には、上記2つの区画構造7、第1区画板711、整流部材75および3つのスペーサ77))が本体ハウジング2に締着されている。
このような構成により、上述のように、エアダスタ1の組み立てにおいては、ファン6をモータシャフト45に組み付ける作業と、区画構造7を本体ハウジング2に組み付ける作業とを、単一のナット81を用いて一度に行うことができる。このように、組立性に優れた多段送風機としてのエアダスタ1が実現されている。特に、本実施形態では、ファン6および区画構造7の締着は、ネジ部材であるナット81をモータシャフト45の雄ネジ部453に螺合することで行われるため、組み付け作業が非常に容易である。更に、ナット81に加え、緩み止めナット83を更にモータシャフト45に螺合することで、ファン6および区画構造7をより確実に締着することができる。
また、本実施形態では、ナット81は、ベアリング46の内輪463を介してファン6をモータシャフト45に締着し、且つ、外輪461を介して区画構造7を本体ハウジング2に締着している。このように、互いに相対移動可能な外輪461と内輪463とを有し、モータシャフト45を回転可能に支持するベアリング46を利用することで、単一のナット81によって、ファン6および区画構造7を異なる経路で容易に締着することができる。また、モータシャフト45のガタを抑制し、ロータ43をステータ41に対して適切に位置決めすることができる。更に、モータシャフト45のファン取付け部455は均一径を有するため、モータシャフト45を容易に製造することができ、且つ、モータシャフト45に締着される3つのファン6を、全て同一構造とすることができる。
また、本実施形態では、各区画構造7は、次段との境界を画定するとともに、次段へ空気を流入させる通気口710を有する区画板71と、区画板71に当接配置され、ファン6によって送出された空気を径方向内側、つまり通気口710へ向かわせる整流部材73とを含む。よって、第1段および第2段の各々において、ファン6によって送出された空気を次段のファン6の吸込み領域に効率的に案内するための構成を、ナット81によって本体ハウジング2に容易に組み付けることができる。更に、本実施形態では、最終段である第3段にも、第3ファン603から送出された空気を吐出口203へ向かわせるように構成された整流部材75が設けられている。そして、整流部材75も、区画構造7と共に、ナット81によって本体ハウジング2に締着されている。よって、第3ファン603から送出された空気を吐出口へ効率的に案内し、風力の低下を抑制するための構成も、本体ハウジング2に容易に組み付けることができる。
以下、エアダスタ1の諸元の数値設定に関する詳細について説明する。
本実施形態では、エアダスタ1は、小型でありつつも、モータ4が最高回転数で駆動された場合に塵埃等を吹き飛ばすのに十分な風力(吐出能力)を発揮可能な電動式の多段送風機として構成されている。一般的には、風力が1ニュートン(N)から3Nの範囲内であれば、塵埃等を吹き飛ばすのに十分と考えられる。なお、この風力の値は、米国国家規格協会(略称ANSI)によって定められた「ANSI B175.2規格」に従って測定される値である。
本実施形態では、要求される風力に応じて、エアダスタ1の吐出口203の直径(ノズル径)、ファン6の外径(ファン径)、およびモータ4の最高回転数が、次のような手順で選定されている。
まず、要求される風力F(ニュートン:N)を、1Nから3Nの範囲内で選定する。ここで、空気の密度をρ(キログラム毎立方メートル:kg/m
3)、吐出口203を通過する空気の風量をQ(立法メートル毎秒:m
3/s)、風速をV(メートル毎秒:m/s)、吐出口203の面積をA(平方メートル:m
2)、ノズル径をd(メートル:m)とした場合、風力Fは次の数式1で表される。
数式1中の空気の密度ρは既知の値であるから、ノズル径dを選定すれば、数式1に基づき、所望の風力Fを得るために必要な風量Qを算出することができる。本実施形態では、ノズル径dは、本体ハウジング2の小型化に鑑み、2.5mmから10mmの範囲内で選定される。なお、できるだけ広範囲に空気を吹き付けて効率的に塵埃を吹き飛ばすべく、ノズル径dは、5mmから10mmの範囲内で選定されるとより好ましい。このような範囲から選定されたノズル径dに応じて、必要な風量Qが算出される。更に、吐出口203の面積Aおよび風量Qとの関係(Q=AV)から、風速Vが算出される。
更に、吐出口203から吐出される空気の圧力をP(パスカル:Pa)、背圧をP
b(Pa)、空気の比熱比をγとした場合、風速Vは次の数式2で表される。
なお、数式2中の背圧P
bは大気圧で既知の値であり、空気の密度ρと比熱比γも既知の値である。よって、数式2に基づき、風速Vを得るのに必要な圧力P(要求圧力Pともいう)を算出することができる。
更に、理論締切圧力(吐出口203を完全に塞いだときに理論上得られる圧力)をP
th(Pa)、滑り係数をk、ファン6の周速度をu
2(m/s)、モータ4の最高回転数をn(回転毎分:rpm)、ファン径をD
2(m)とした場合、理論締切圧力P
thは、次の数式3で表すことができる。
なお、数式3中の滑り係数kおよび空気の密度ρは既知の値である。よって、要求圧力Pを理論締切圧力P
thとして、数式3に基づき、要求圧力Pを得るために必要なファン径D
2と最高回転数nの組み合わせを選定することができる。本実施形態では、ファン径D
2は、本体ハウジング2の小型化に鑑み、30mmから70mmの範囲内、より好ましくは30mmから50mmの範囲内で選定される。また、ノズル径dおよびファン径D
2を比較的小さく設定する代わりに、モータ4の最高回転数nは、50,000rpmから120,000rpmという比較的高い数値範囲内で選定される。なお、コストの抑制等に鑑みれば、モータ4の最高回転数nは、50,000rpmから70,000rpmの範囲内で選定されることが好ましい。
ここで、理論締切圧力Pthは、吐出口203を完全に塞いだときの理論上の最高圧力であるため、実際に吐出される空気の圧力は、その20パーセント程度であると考えられる。よって、ファン6を1つのみとした場合、上述の範囲から選定されたファン径D2と最高回転数nでは、実際には要求圧力Pが得られないことになる。そこで、ファン6を多段配置することで要求圧力Pを実現可能なファン径D2と最高回転数nの組み合わせが選定される。
本実施形態では、要求される風力Fを1.5Nとして、上述の手順により、ノズル径、ファン径、モータ4の最高回転数、およびファン6の段数が決定されている。具体的には、ノズル径は6mm、ファン径は50mm、モータ4の最高回転数は63,000rpm、ファン6の段数は3である。なお、日本工業規格(JIS規格)の「JIS B8330」に従って測定されたエアダスタ1の風量は概ね0.36m3/s、風速は概ね212m/s、圧力は概ね26.6kPaである。エアダスタ1は、比較的小風量、且つ高圧型の多段式遠心送風機であるといえる。
以上に説明したように、本実施形態のエアダスタ1では、ノズル径やファン径が上述の範囲内で選定され、ノズル231やファン6が小径化されていることから、本体ハウジング2を比較的小型化することができる。一方で、ノズル231やファン6の小径化に伴う風力の低下は、モータ4の最高回転数が、上述の範囲内で選定され、比較的高く設定されることで抑制される。このように、諸元が上述の範囲に設定されることで、比較的小型で、塵埃等を吹き飛ばすことが可能な風力を発揮することができる電動式の多段式送風機が実現されている。
また、本実施形態では、モータ4は、ブラシレスモータである。そして、コントローラ331は、トリガ311の操作量に応じて、モータ4の回転数を制御するように構成されている。よって、使用者は、トリガ311の操作に応じて、回転数、ひいては風力を調整することができる。また、エアダスタ1は、使用者がハンドル3(把持部31)を把持してトリガ311を引き操作しつつ使用可能な手持ち式の送風機であるため、利便性に優れている。
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。エアダスタ1は、本発明の「送風機」の一例である。モータ4は、「モータ」の一例である。ファン6は、「ファン」の一例である。回転軸A1は、「回転軸」の一例である。本体ハウジング2、吸込み口201、吐出口203は、夫々、「ハウジング」、「吸込み口」、「吐出口」の一例である。バッテリ装着部34は、「バッテリ装着部」の一例である。バッテリ340は、「バッテリ」の一例である。トリガ311は、「操作部材」の一例である。コントローラ331は、「制御装置」の一例である。ハンドル3(把持部31)は、「把持部」の一例である。
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る送風機は、例示されたエアダスタ1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すエアダスタ1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、エアダスタ1の電源は、充電式のバッテリ340に限られるものではなく、使い捨ての電池であってもよい。また、モータ4はブラシを有するモータであってもよい。
ファン6の数(つまり、段数)は例示された3に限られるものではなく、2であっても4以上であってもよい。ファン6の数は、例えば、上述したエアダスタ1の諸元に応じて適宜選定されうる。
ファン6の構成も、適宜変更が可能である。例えば、ファン6の種類は、例示されたオープン式の後向きファンである必要はなく、他の構成を有する遠心ファン(例えば、クローズ式の後向きファン、ラジアルファン、多翼ファン)、斜流ファン、または軸流ファンであってもよい。背板631の大きさや形状、羽根633の数、大きさ、形状、配置は、適宜変更されうる。また、ファン6は、互いに連結固定された複数の部材で構成されるのではなく、全体が一体化されていても、一部が一体化されていてもよい。また、複数のファン6の全てが必ずしも同一構造を有する必要はない。
また、ファン6は、必ずしもナット81によってモータシャフト45に締着される必要はなく、例えば、夫々がモータシャフト45に圧入され、固定されていてもよい。また、ファン6は、モータシャフト45に代えて、モータ4の駆動に伴って回転駆動される別の回転シャフトに締着あるいは圧入されてもよい。
区画構造7は、回転軸A1方向において複数のファン6の間に配置され、本体ハウジング2の内部をファン6に対応する複数の領域に区画すればよく、その数は、上記実施形態の例に限られない。具体的には、区画構造7の数は、ファン6の数に応じて決まるものであって、ファン6の数が2の場合は1であり、3以上の場合は複数(ファン6の数より1少ない数)となる。
区画構造7の構成も、適宜変更が可能である。上記実施形態では、区画構造7は、別個の部材として形成された整流部材73と区画板71とを含むが、整流部材73と区画板71とは、一体的に形成された単一部材であってもよい。また、例えば、区画板71が省略され、整流部材73が区画板を兼用してもよい。つまり、区画構造7は、整流部材73のみで構成されてもよい。例えば、整流部材73が、案内羽根735がベース板731から後方(同じ段のファン6側)に突出する向きに配置された場合、ベース板731が次段との境界を画定する区画板を兼用することができる。なお、複数の区画構造7が設けられる場合、必ずしも全ての区画構造7が同一構造を有する必要はない。
上記実施形態では、区画構造7とは別個に形成され、区画構造7を回転軸A1方向(前後方向)に位置決めするためのスペーサ77が、区画構造7と共に本体ハウジング2に締着されている。しかしながら、例えば、第1段および第2段のスペーサ77は、夫々、同じ段の整流部材73と一体化されていてもよいし、同じ段の整流部材73およびその次段側(前側)の区画板71(第2区画板712、第3区画板713)と一体化されていてもよい。あるいは、スペーサ77は、前段側(後側)の区画板71(第1区画板711、第2区画板712)と一体化されていてもよい。同様に、第3段のスペーサ77は、整流部材75と一体化されていてもよいし、前段側(後側)の区画板71(第3区画板713)と一体化されていてもよい。なお、最終段のファン6と吐出口203の間に配置される整流部材75は、省略されてもよい。
区画板71、整流部材73、75、スペーサ77の個々の構成も、上記実施形態で例示されたものに限られない。例えば、整流部材73のベース板731の大きさや形状は、適宜変更されうる。例えば、ベース板731は、ファン6の背板631の外径よりも大きいまたは小さい外径を有してもよい。また、整流部材73、75の案内羽根735、753の数、大きさ、形状、配置、向きは、適宜変更されうる。例えば、案内羽根735の径方向外側の端は、ベース板731の外縁と同じ位置にあってもよい。また、例えば、整流部材73、75は、前面(ファン6とは反対側の面)に設けられる案内羽根735、753以外にも、特定の方向に空気の流れを案内するための突出部を有してもよい。例えば、後面(ファン6の背板631との対向面)から突出するディフューザが設けられてもよい。また、上記実施形態では、本体ハウジング2のリブ211が、第1区画板711を受けているが、本体ハウジング2のうち、区画構造7または介在部材を受ける部分は、リブ211以外の部分であってもよい。
上記実施形態では、モータシャフト45に螺合されて固定される単一のナット81によって、ファン6がモータシャフト45に締着され、且つ、区画板71、整流部材73、75、スペーサ77が本体ハウジング2に締着されている。しかしながら、区画板71、整流部材73、75は、ファン6とは独立して、本体ハウジング2に固定されていてもよい。この場合、スペーサ77は省略されうる。なお、区画板71、整流部材73、75の固定方法は、上記実施形態のような締着に限られない。例えば、本体ハウジング2が、回転軸A1に平行な面で分割された2つの半割体によって構成される場合、区画板71は、本体ハウジング2と一体的に形成されてもよいし、整流部材73、75は本体ハウジング2内部に設けられたリブによって保持されてもよい。
本体ハウジング2の構成および内部構造の配置は、適宜変更されうる。例えば、本体ハウジング2(筒状部21)の形状は、円筒状ではなく、矩形筒状等に変更されてもよい。吸込み口201および吐出口203の大きさ、形状、配置等は、上記実施形態の例から適宜変更されてよい。また、例えば、モータ4は、吸込み口201と第1段のファン6の間ではなく、最終段のファン6と吐出口203の間に配置されてもよい。ハンドル3の構成も適宜変更されうる。また、ハンドル3に代えて、本体ハウジング2の一部が、使用者によって把持される把持部を有してもよい。
上記実施形態では、モータ4の回転数は、トリガ311の操作量に応じて無段階で変更可能であるが、予め定められた回転数から変更不能であってもよいし、複数段階で変更可能であってもよい。例えば、エアダスタ1は、操作部333(押しボタン)の操作によって、モータ4の回転数を複数段階に設定可能に構成されてもよい。この場合、コントローラ331は、操作部333から出力された信号に応じて、モータ4の回転数を制御すればよい。また、モータ4の回転数の設定を入力可能な操作部材は、トリガ311や押しボタンのほか、ダイアル、タッチパネル等が採用されうる。コントローラ331は、マイクロコンピュータではなく、他の種類の制御回路で構成されてもよい。
更に、本発明、上記実施形態およびその変形例の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態および上述の変形例に示すエアダスタ1、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記複数のファンは、夫々、遠心ファンであって、
前記送風機は、
前記回転軸の軸方向において前記複数のファンの夫々の吸込み側に配置され、夫々のファンに対応する領域の境界を画定するとともに、前記回転軸上に設けられた通気口を夫々に有する複数の区画板と、
前記軸方向において前記複数のファンの間に配置され、空気の流れを特定の方向に案内するように構成された少なくとも1つの整流部材とを備える。
る。
上記実施形態の区画板71(第1区画板711、第2区画板712、第3区画板713の各々)は、本態様における「区画板」の一例である。通気口710は、「通気口」の一例である。第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の各々は、「ファンに対応する領域」の一例である。整流部材73は、「整流部材」の一例である。
[態様2]
前記複数のファンの各々は、
吸込み側の第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する円板状の背板と、
前記第1面から突出する複数の羽根とを備え、
前記少なくとも1つの整流部材の各々は、
前記背板の前記第2面に対向配置されるとともに、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の反対側の第4面とを有する円板状のベース板と、
前記ベース板から突出し、空気の流れを特定の方向に案内するように構成された複数の突出部とを備え、
前記複数の突出部はすべて、前記ベース板の前記第4面に設けられており、前記空気の流れを、次段の遠心ファンに対応する区画板の前記通気口へ向けて案内する複数の案内羽根として構成されている。
上記実施形態の背板631は、「背板」の一例である。背板631の後面、前面は、夫々、「第1面」、「第2面」の一例である。羽根633は、「羽根」の一例である。ベース板731は、「ベース板」の一例である。ベース板731の後面、前面は、夫々、「第3面」、「第4面」の一例である。案内羽根735は、「突出部」および「案内羽根」の一例である。
[態様3]
前記複数の案内羽根は、夫々の径方向外側の端部が、前記遠心ファンの回転方向と反対側に傾斜するように配置されている。
[態様4]
前記複数の羽根は、夫々の径方向外側の端部が、前記遠心ファンの回転方向と反対側に傾斜するように配置されている。
[態様5]
前記複数の案内羽根は、夫々、前記ベース板よりも径方向外側に突出し、前記ハウジングの内面まで達している。
[態様6]
前記背板と前記ベース板とは、同一の外径を有する。
[態様7]
前記複数のファンのうち、最終段のファンと前記吐出口の間に配置され、前記最終段のファンから送出された空気を前記吐出口へ向かわせるように構成された最終整流部材を更に備える。
上記実施形態の整流部材75は、本態様における「最終整流部材」の一例である。