以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、実施形態に係る角度検出装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る角度検出装置1は、磁気トラック2を有する回転体100と、磁気センサ3と、角度演算部4と、を備える。
図2は、回転体の斜視図である。図3は、回転体の平面図である。図2に示すように、回転体100は、回転軸Xを中心に回転する円環状の部材である。回転体100は、図3に示すように、平面視においてN極とS極とからなる磁極対2Aが等間隔に同心のリング状に並ぶ磁気トラック2を有する。磁気トラック2は、回転体100の軸方向の一方の端面を周方向に等間隔でN極及びS極に交互に着磁することで得られ、N極及びS極の磁極対がリング状に設けられて構成される。回転体100は、必要な磁束密度に応じて、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石等の磁性体で構成することが可能である。
本実施形態において、磁気トラック2に設けられる磁極対2Aの数(以下、「極対数p」とも称する)は、2のべき乗に設定されている。これにより、着磁工程における精度を高めることができる。なお、図3では、極対数pが8(=23)である例を示しているが、これに限定されない。
本実施形態では、磁気トラック2が回転体100の軸方向の一方の端面に着磁されたアキシャル型の構成としている。このような構成とすることで、角度検出装置1を軸方向に薄くすることができ、実施形態に係る角度検出装置1の適用範囲を拡大することができる。また、実施形態に係る角度検出装置1を適用する機器の設計の自由度を高めることができる。
図4は、磁気センサの平面図である。本実施形態において、磁気センサ3は、磁気トラック2の回転軸方向の磁束密度を検出するための複数の検出基準点を有している。具体的に、磁気センサ3の検出基準点としては、第1検出基準点P1、第2検出基準点P2、第3検出基準点P3、第4検出基準点P4、第5検出基準点P5、第6検出基準点P6、第7検出基準点P7、第8検出基準点P8、を含む。第1検出基準点P1、第2検出基準点P2、第3検出基準点P3、第4検出基準点P4、第5検出基準点P5、第6検出基準点P6、第7検出基準点P7、第8検出基準点P8は、磁気トラック2の磁気中心と平面視上で異なる位置にある、回転体100の回転軸上の点を原点Oとして、この原点Oを中心とする同心円上に設けられている。本実施形態では、平面視上における磁気トラック2の磁気中心をXとしている。
第2検出基準点P2は、第1検出基準点P1から原点Oを中心とする同心円の円周上の一方向に第1角度γだけずれた位置に設けられている。
第3検出基準点P3は、第2検出基準点P2から円周上の一方向に第1角度γだけずれた位置に設けられている。
第4検出基準点P4は、第3検出基準点P3から円周上の一方向に第1角度γだけずれた位置に設けられている。
第5検出基準点P5は、第1検出基準点P1から円周上の一方向に第2角度π/2[rad](=90[deg.])だけずれた位置に設けられている。
第6検出基準点P6は、第2検出基準点P2から円周上の一方向に第2角度π/2[rad](=90[deg.])だけずれた位置に設けられている。
第7検出基準点P7は、第3検出基準点P3から円周上の一方向に第2角度π/2[rad](=90[deg.])だけずれた位置に設けられている。
第8検出基準点P8は、第4検出基準点P4から円周上の一方向に第2角度π/2[rad](=90[deg.])だけずれた位置に設けられている。
磁気センサ3は、第1検出基準点P1における検出値f1、第2検出基準点P2における検出値f2、第3検出基準点P3における検出値f3、第4検出基準点P4における検出値f4、第5検出基準点P5における検出値f5、第6検出基準点P6における検出値f6、第7検出基準点P7における検出値f7、第8検出基準点P8における検出値f8を、それぞれ角度演算部4に出力する。
磁気センサ3は、例えば、円環状の基板に、検出基準点毎の検出値を出力する磁気センサICを実装した構成であっても良いし、第1検出基準点P1、第2検出基準点P2、第3検出基準点P3、及び第4検出基準点P4の各検出値f1,f2,f3,f4を出力する磁気センサICと、第5検出基準点P5、第6検出基準点P6、第7検出基準点P7、及び第8検出基準点P8の各検出値f5,f6,f7,f8を出力する磁気センサICと、を実装した構成であっても良い。磁気センサ3の構成により限定されない。
図5は、平面視における回転体と磁気センサとの位置関係を示す図である。図5に示すように、磁気トラック2の磁気中心Xは、磁気センサ3の原点Oに対して偏心している。図5では、原点Oに対する磁気中心Xの偏心量をaとしている。
上述した構成において、角度演算部4は、磁気センサ3から出力される、第1検出基準点P1における検出値f1、第2検出基準点P2における検出値f2、第3検出基準点P3における検出値f3、第4検出基準点P4における検出値f4、第5検出基準点P5における検出値f5、第6検出基準点P6における検出値f6、第7検出基準点P7における検出値f7、第8検出基準点P8における検出値f8に基づき、回転体100の角度を演算する。
具体的に、角度演算部4は、検出値f1、検出値f2、検出値f3、及び検出値f4から得られる値をQ1、検出値f5、検出値f6、検出値f7、及び検出値f8から得られる値をQ2としたとき、下記の式(1)、式(2)、及び式(3)を用いて絶対角ωTを算出する。
なお、角度演算部4は、上述した角度演算処理の前処理及び後処理として、アンチエイリアシングフィルタ処理、オフセット調整処理、アナログ/デジタル変換処理、その他各種フィルタ処理を行う態様であっても良い。角度演算部4における付加処理の内容により本開示は限定されない。また、各処理を行う順序により本開示は限定されない。
以下、本実施形態に係る角度検出装置1における、上記の式(1)、式(2)、及び式(3)の絶対角ωTの演算式の導出概念について説明する。
まず、本実施形態に係る角度検出装置1において、磁気センサ3により検出される検出値について、図6を参照して説明する。図6は、実施形態に係る角度検出装置において、磁気センサにより検出される検出値について説明する図である。回転体100が図6に示す破線矢示方向に角速度ωで回転するとき、時刻tにおける磁気トラック2の磁気中心Xの極座標は、(a,ωt)と表せる。
また、極座標が(R,θ)の点P、すなわち、原点Oを中心とする半径Rの円周上の任意位置において、下記の式(4)式が成立する。ここで、角度OPXすなわちα(t)は、求めようとする機械角の誤差成分である。
線分OPと、磁気トラック2の磁気中心Xから線分OPに延びる垂線との交点をQとする。また、線分XPの長さをrとする。このとき、下記の式(5)が成立する。また、検出基準点Pと原点Oとの長さRは、原点Oに対する磁気中心Xの偏心量aを用いて、下記の式(6)で表せる。
上記の式(5)式を線分XPの長さrの式に変形して式(6)に代入すると、下記の式(7)が得られる。
上記の式(7)をtan(α(t))の式に変形すると、下記の式(8)が得られる。
上記の式(8)をα(t)の式に変形すると、下記の式(9)が得られる。
上記の式(9)において、ω’
t=ωt-θとすると、下記の式(10)が得られる。
上記の式(1)をφ(t)の式に変形して上記の式(10)を代入すると、下記の(11)式が得られる。
一方、上記の式(8)は、下記の式(12)のように変形できる。
ここで、偏心量aが検出基準点Pと原点Oとの長さRより十分に小さいと仮定する。このとき、上記の式(12)の分母(R2-a2cos2(ω’t))はR2と見做せる。このため、上記の式(12)は、下記の式(13)で表すことができる。
上記の式(13)をα(t)の式に変形すると、下記の式(14)が得られる。
上記の式(14)の右辺をマクローリン展開すると、下記の式(15)が得られる。ここでは、上述したように、偏心量aが点Pと原点Oとの長さRより十分に小さいと仮定している。このため、マクローリン展開後の3次以上の項を無視することができる。
上述したように、α(t)は、求めようとする機械角の誤差成分である。上記の式(15)では、機械角で1次に相当する誤差成分と2次に相当する誤差成分を含んでいる。ここで、上記の式(15)の右辺を下記の式(16)のように表す。
回転体100が極対数pで着磁されているとした場合、点Pにおける回転軸X方向の磁束密度は、上記の式(11)及び式(16)から下記の式(17)のように表せる。なお、下記の式(17)では、磁束密度の振幅を1としたときの磁束密度を示している。
上記の式(16)及び式(17)に示すように、原点Oを中心とする半径Rの円周上の任意位置において検出される検出値には、p次の基本成分に加えて、機械角で1次に相当する誤差成分と2次に相当する誤差成分が含まれる。本実施形態では、原点Oを中心とする半径Rの円周上に設けられた検出基準点において検出される検出値の1次の誤差成分から絶対角を求める。また、p次の基本成分から相対角を求める。
次に、本実施形態に係る角度検出装置1における誤差成分について説明する。
以下の説明では、図4に示す第1検出基準点P1の極座標を(R,θ1)、第2検出基準点P2の極座標を(R,θ2)、第3検出基準点P3の極座標を(R,θ3)、第4検出基準点P4の極座標を(R,θ4)、第5検出基準点P5の極座標を(R,θ5)、第6検出基準点P6の極座標を(R,θ6)、第7検出基準点P7の極座標を(R,θ7)、第8検出基準点P8の極座標を(R,θ8)としている。
第N検出基準点PN(Nは、1,2,3,4,5,6,7,8)における検出値fNは、下記の式(18)に示される。なお、ψN(t)は、上述したω’tに相当する。
ここで、下記の式(19)、式(20)、及び式(21)について考える。
上記の式(21)の右辺において、2pωtは、相対角の成分である。2pωtを含まない項を纏めたF12を下記の式(22)に示し、相対角2pωtを含む項を纏めたF34を下記の式(23)に示す。
上記の式(22)に示すF12と式(23)で示すF34とを用いると、上記の式(21)は、下記の式(24)で表される。
上記の式(23)に示すF34を略0とすることができれば、相対角の成分である2pωtを取り除くことができる。式(23)は、下記の式(25)に示す三角関数の公式を用いて、下記の式(26)のように相対角の成分である2pωtを含む三角関数と含まない三角関数との積で表される。
上記の式(26)において、相対角の成分である2pωtを含まない三角関数を0とするとき、自然数nを用いた下記の式(27)、及び式(28)に示す条件式を満たす必要がある。
ここで、θm=(m-1)γとする(mは、1,2,3,4)。θm=(m-1)γを上記の式(27)に代入すると、下記の式(29)が得られる。
また、θm=(m-1)を上記の式(28)に代入すると、下記の式(30)が得られる。
上記の式(30)は、三角関数の公式を用いて、下記の式(31)のように変形できる。
上記の式(31)は、下記の式(32)、及び式(33)を満たすことにより、略0となる。すなわち、上記の式(28)に示す条件式を満たすことになる。
上記の式(32)、及び式(33)は、下記の式(34)に示す関係を用いて、それぞれ、下記の式(35)、及び式(36)のように変換できる。
上記の式(35)、及び式(36)は、γが十分に小さいとき、上記の式(32)、及び式(33)を満たし、上記の式(28)に示す条件式を満たすことができる。これにより、F34は、下記の式(37)に示すように略0と見做せる。
次に、上記の式(22)を変形した下記の式(38)において、下記の式(39)及び式(40)を代入すると、下記の式(41)が得られる。
θm=(m-1)γを上記の式(39)に代入すると、下記の式(42)が得られる。また、θm=(m-1)γを上記の式(40)に代入すると、下記の式(43)が得られる。
上記の式(42)に示すh1とh2との和は、下記の式(44)に示される。
上記の式(43)に示すh1とh2との差は、下記の式(45)に示される。
上記の式(44)、及び式(45)は、γが十分に小さいとき、それぞれ、下記の式(46)、及び式(47)のように近似できる。
上記の式(46)及び式(47)から、下記の式(48)の関係が成立する。
三角関数の公式を用いて上記の式(41)を変形し、さらに、上記の式(48)を用いてh1とh2との差の式に変換すると、下記の式(49)が得られる。
上記の式(47)を式(49)に代入すると、下記の式(50)が得られる。
上記の式(50)を変形した下記の式(51)において、第N検出基準点PNと原点Oとの長さR(図4参照)に対する磁気中心Xの偏心量aの比(a/R)をA、ωt-3γ/2をy、極対数pと検出基準点間の角度(第1角度)γとの積をPとし、さらに、下記の式(52)を代入すると、下記の式(53)が得られる。
上記の式(53)をマクローリン展開すると、下記の式(54)が得られる。
本実施形態において、第N検出基準点PNと原点Oとの長さRに対する磁気中心Xの偏心量aの比A(=a/R)が十分に小さいとすると、高次の成分を無視することができる。ここで、4次以上の高次の項を0と仮定すると、上記の式(53)は、0次の項の係数をa2m、1次の項の係数をb2m、2次に項の係数をc2m、3次の項の係数をd2mとして、下記の式(55)のように簡略化できる。なお、各次の係数a2m,b2m,c2m,d2mは、各次の振幅を示している。
上記の式(55)における各次の係数は、下記の式(56)に示す関係が成立する。ここでは、4次以上の高次の項をR2(m+1)としている。
上記の式(56)において、各次の項の係数は、それぞれ、下記の式(57)、式(58)、式(59)、及び式(60)となる。ここでは、4次以上の高次の項を無視している。
上記の式(57)、式(58)、式(59)、及び式(60)から、各次の係数はそれぞれ下記の式(61)、式(62)、式(63)、及び式(64)のように表される。
ここで、上記の式(61)は、0次の振幅を示し、式(62)は、機械角で1次に相当する誤差成分の振幅を示し、式(63)は、機械角で2次に相当する誤差成分の振幅を示し、式(64)は、機械角で3次に相当する誤差成分の振幅を示している。これら各成分の振幅のうち、機械角で2次以上に相当する誤差成分は機械角で1次に相当する誤差成分より小さくなることがわかる。すなわち、上記の式(55)、すなわちF12における誤差成分の主成分は、機械角で1次に相当する誤差成分となる。
前述の式(24)に対し、式(37)及び式(55)を適用して変形すると、下記の式(65)に示す機械角で1次に相当する誤差成分を含む正弦波の信号値Qが得られる。
ここで、前述の式(53)を求める際に、ωt-3γ/2をy、すなわち、図6に示すωtと原点Oを中心とする半径Rの円周上の2点間の角度差とで表される値とした。つまり、信号値Qは、回転体100の1回転を一周期とする正弦波の信号値として与えられる。
本実施形態において、第1検出基準点P1と第5検出基準点P5、第2検出基準点P2と第6検出基準点P6、第3検出基準点P3と第7検出基準点P7、第4検出基準点P4と第8検出基準点P8は、それぞれ、原点Oを中心とする半径Rの円周上において第2角度π/2[rad](=90[deg.])だけずれている(図4参照)。このため、第1検出基準点P1、第2検出基準点P2、第3検出基準点P3、及び第4検出基準点P4の各検出値f1,f2,f3,f4から得られる信号値をQ1とし、第5検出基準点P5、第6検出基準点P6、第7検出基準点P7、及び第8検出基準点P8の各検出値f5,f6,f7,f8から得られる信号値をQ2としたとき、信号値Q1と信号値Q2とは、互いにπ/2[rad]だけずれた値となる。従って、ωt-3γ/2をy1、ωt-π/2-3γ/2をy2とすると、信号値Q1及び信号値Q2は、それぞれ、下記の式(66)及び式(67)で与えられ、絶対角ωTは、下記の(68)により算出することができる。
また、本実施形態に係る角度検出装置1における相対角φの算出式は、下記の式(69)で与えられる。式(69)において、fM(Mは、1~3、5~7)は、第M検出基準点における検出値を示している。
本実施形態の構成では、上述したように、単一の磁気トラックにより絶対角と相対角の双方を検出することができる。
以上、本実施形態における絶対角ωTの演算式の導出概念について説明した。以下、2次以上の高次誤差成分に起因する絶対角の角度誤差について説明する。
信号値Q1及び信号値Q2は、それぞれ、上記の式(66)及び式(67)で与えられる。上記の式(66)及び式(67)において、a2mは0次の成分でありオフセット量として除去できる。ここで、1次誤差成分をE1とし、当該1次誤差成分E1を除く2次以上の高次誤差成分を加算した合成誤差成分をE2としたとき、1次誤差成分E1に対する合成誤差成分E2の成分比Eは、下記の式(70)で与えられる。
例えば、1次誤差成分E1は、前述の式(65)より下記の式(71)で与えられる。
ここで、b2mは、前述の式(62)で表される値であり、第N検出基準点PNと原点Oとの長さRに対する磁気中心Xの偏心量aの比A(=a/R)で決まる。また、Pは、極対数pと第1角度γとの積である。すなわち、原点Oと第N検出基準点PNとの距離R、原点Oに対する磁気中心Xの偏心量a、極対数p、及び第1角度γで表される。2次以上の高次誤差成分についても同様である。これらの各パラメータのうち、原点Oと第N検出基準点PNとの距離R、原点Oに対する磁気中心Xの偏心量a、及び極対数pは、設計上の初期段階において決定する値である。すなわち、1次誤差成分E1に対する合成誤差成分E2の成分比Eは、第1角度γに関する関数と見做すことができる。
図7は、1次誤差成分E1に対する合成誤差成分E2の成分比Eと第1角度γとの関係のシミュレ-ション結果の一例を示す図である。図7では、p=64(=26)、A=0.06としたシミュレーション結果を例示している。各パラメータと角度誤差との関係を表1に示す。なお、表1に示す例では、p=128(=27)、p=256(=28)、A=0.02、A=0.04、A=0.08の場合についても併せて記載している。
表1に示す許容角度誤差とは、本実施形態に係る角度検出装置1において、絶対角ωTの角度誤差ΔωTとして許容し得る値の最大値を示している。
2つの絶対角x1,x2における検出値を、それぞれf(x1),f(x2)とすると、前述の式(18)より、下記の式(72)及び式(73)が得られる。
上記の式(72)及び式(73)において、f(x1)=f(x2)、x1≠x2であるとき、絶対角x1と絶対角x2とは、異なる磁極対上に存在することとなる。この場合、絶対角x1と絶対角x2との角度差(以下、「x1-x2の値」とも称する)の最小値よりも角度誤差ΔωTが大きくなると、磁極位置の特定が不可能となる。このとき、上記の式(72)と式(73)との関係は、下記の式(74)で与えられる。
上記の式(74)の左辺を変形すると、下記の式(75)が得られる。
上記の式(75)において、Aが0の場合、x1-x2=2π/pである。ここではA≠0なので、x1-x2の最小値は2π/p以下である。つまり、pが2πに対して十分大きく、2π/pが十分小さいとき、x1-x2も十分小さいといえるので、上記の式(75)は、下記の式(76)のように変形できる。
上記の式(76)において、x1-x2の値が最も小さくなるのは、cos(x1+x2)/2=1のときである。このとき、x1-x2の値は、下記の式(77)で与えられる。
すなわち、絶対角ωTの角度誤差ΔωTは、下記の(78)式で与えられる。下記の式(78)の右辺が、絶対角ωTの許容角度誤差となる。
具体的には、図7に示す1次誤差成分E1に対する合成誤差成分E2の成分比Eと第1角度γとの関係において、成分比Eが極小値となるように、第1角度γを設定すれば良い。例えば、p=64(=26)、A=0.06としたとき、図7及び表1に示すように、第1角度γを成分比Eが極小値となる1.643[deg.]とすれば、絶対角ωTの角度誤差ΔωTを許容角度誤差5.29[deg.]よりも小さい2.94[deg.]とすることができる。
以下、シミュレーション結果を例示する。図8は、検出値f1乃至f4のシミュレーション結果の一例を示す図である。図9は、検出値f5乃至f8のシミュレーション結果の一例を示す図である。図10は、信号値Q1及びQ2のシミュレーション結果の一例を示す図である。図11は、絶対角ωTのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図8から図11では、p=64(=26)、A=0.06、角速度ω=1[rad/s]第1検出基準点P1における角度θ1(図6に示すθに対応)を0としたシミュレーション結果を例示している。
図8から図11に示すシミュレーション結果では、許容角度誤差が「5.29」、絶対角ωTの角度誤差ΔωTが「2.94」となり(表1参照)、十分な精度が得られることが分かる。表1から、第N検出基準点PNと原点Oとの長さRに対する磁気中心Xの偏心量aの比A(=a/R)が小さいほど、絶対角ωTの許容角度誤差に対する角度誤差ΔωTの裕度が大きくなる。また、極対数pが大きいほど、許容角度誤差が小さくなるものの、絶対角ωTの角度誤差ΔωTも小さくなる。すなわち高精度に絶対角を検出することができる。
以上説明したように、実施形態に係る角度検出装置1は、複数の磁極対2Aが等間隔に同心のリング状に並ぶ磁気トラック2を有する回転体100と、磁気トラック2の回転軸X方向の磁束密度を検出する複数の検出基準点を有し、回転体100の回転に応じた検出信号を出力する磁気センサ3と、磁気センサ3から出力される複数の検出基準点毎の検出値に基づき、回転体100の角度を演算する角度演算部4と、を備える。複数の検出基準点は、磁気トラック2の磁気中心と平面視上で異なる位置にある、回転体100の回転軸上の点を原点Oとして、当該原点Oを中心とする同心円上に設けられ、第1検出基準点P1と、第1検出基準点P1から円周上の一方向に所定の第1角度γだけずれた第2検出基準点P2と、第2検出基準点P2から一方向に第1角度γだけずれた第3検出基準点P3と、第3検出基準点P3から一方向に第1角度γだけずれた第4検出基準点P4と、第1検出基準点P1から一方向に第1角度γとは異なる所定の第2角度(π/2[rad])だけずれた第5検出基準点P5と、第2検出基準点P2から一方向に第2角度だけずれた第6検出基準点P6と、第3検出基準点P3から一方向に第2角度だけずれた第7検出基準点P7と、第4検出基準点P4から一方向に第2角度だけずれた第8検出基準点P8と、を含む。
上記構成により、角度検出装置1は、単一の磁気トラック2により絶対角と相対角の双方を検出することができ、回転体100の回転角度を高精度に検出することができる。