以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、レーザ加工装置の第1実施形態を示す概略側面図である。図2は、レーザ加工装置の加工ヘッドを拡大して示す側面図である。図3は、加工ヘッドにおけるノズルの先端付近を更に拡大して示す切断側面図である。
図4は、レーザ加工装置における加工ヘッドの姿勢を示すもので、図4(a)は、1層3パスのレーザ加工を行うためにワークにおける溝の形成予定個所に溝幅方向に並べて設定される3つのパス加工位置のうち、溝幅方向の配列順序が2番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図、図4(b)は、溝幅方向の配列順序が1番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図、図4(c)は、溝幅方向の配列順序が3番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図である。図5は、レーザ加工装置における加工ヘッドの姿勢を示すもので、図5(a)は、ワークに形成された溝の底部に溝幅方向に並べて設定される3つのパス加工位置のうち、溝幅方向の配列順序が2番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図、図5(b)は、溝幅方向の配列順序が1番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図、図5(c)は、溝幅方向の配列順序が3番目のパス加工位置のレーザ加工を行うときの状態を示す図である。図6は、1層3パスのレーザ加工を行う場合に、制御装置によりワークにおける溝の形成予定個所に設定される3つのパス加工位置を示す概要図である。
本実施形態のレーザ加工装置は、図1に符号1で示すもので、マニピュレータ3を備えたロボット2と、マニピュレータ3の先端側にエンドエフェクタとして取り付けられた加工ヘッド4と、加工ヘッド4に光ファイバ5を介して接続されたレーザ発振器6と、制御装置7と、アシストガス9の噴射を行うガスノズル8と、溝検出装置としてのカメラ10と、を備えた構成とされている。
なお、説明の便宜上、ワーク100は、加工ヘッド4によるレーザ加工で溝103を形成する面を表面101といい、その逆側の面を裏面102という。
また、ワーク100に形成予定の溝103、および、ワーク100に形成された溝103に関して、溝幅方向は、図4(a)に示すように、x軸方向という。なお、x軸は、溝103の溝幅方向の一方の端部104から、溝幅方向の他方の端部105へ向かう方向を、x軸の正方向とする。したがって、x軸を基準にすると、溝103におけるx軸の負方向の端部は、端部104であり、x軸の正方向の端部は、端部105である。また、溝103がワーク100の表面101に沿って延びる溝長手方向は、図2に示すように、y軸方向という。更に、ワーク100の表面101を基準とする溝103の深さ方向は、図2、図4(a)に示すように、z軸方向という。なお、x軸方向、y軸方向、z軸方向は、ワーク100の姿勢や、ワーク100に形成する溝103に依存して定まる方向であって、いずれも、ワールド座標系や、ロボット2に備えた座標系を基準とするものではない。たとえば、ワーク100の表面101に曲がった形状の溝103を形成する場合は、溝103の長手方向の各個所ごとに、x軸方向およびy軸方向は変化する。また、ワーク100の表面101の傾斜などに応じて、x軸方向およびy軸方向は水平方向に限定されず、z軸方向は鉛直方向に限定されない。また、x軸、y軸、z軸についての正方向と負方向は、逆に設定してもよいことは勿論である。
更に、レーザビーム11を照射する加工ヘッド4を、図2に示すように、レーザビーム11の照射個所に生じる溶融材15を、ガスノズル8から吹き付けるアシストガス9により吹き飛ばす処理を行いながら、ワーク100に形成すべき溝103の長手方向に沿わせて移動させる動作は、レーザ加工のパスという。このレーザ加工のパスが1回行われると、ワーク100には、レーザビーム11の照射個所が移動した経路に沿い、ワーク100の母材が除去された溝が1条形成される。このようにレーザ加工の1回のパスで形成される溝は、以下、単位溝という。単位溝は、ワーク100に形成予定の溝103に比して、x軸方向の幅寸法が狭く、且つ、z軸方向の深さ寸法が小さい。
加工ヘッド4を、ワーク100の表面101からの距離はほぼ変化させずに、加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射個所の位置を、x軸方向に単位溝の幅寸法よりも小さく設定された或る寸法ずつずらしながら、レーザ加工のパスを複数回行うと、ワーク100には、前記単位溝がx軸方向に複数条繋がった状態で形成される。この状態は、ワーク100では、z軸方向の深さ寸法が前記単位溝とほぼ同様で、且つ、x軸方向に前記単位溝が複数条繋がった幅寸法を有する、ワーク100の表面101に沿う層状の領域について、ワーク100の母材の除去が行われた状態である。したがって、この状態で、ワーク100は、表面101から、前記層状の領域に対応する断面形状の溝が形成された状態となる。
そこで、本明細書では、前記したように、加工ヘッド4を、ワーク100の表面101からの距離はほぼ変化させずに、加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射位置をx軸方向に前記所定の寸法ずつずらしながら、レーザ加工のパスをn回(nは2以上の整数)行い、ワーク100に前記層状の領域に対応する断面形状の溝を形成する加工を、1層nパスのレーザ加工という。また、nは、1層当たりのパス数という。更に、ワーク100にて、1層nパスのレーザ加工を行う前に、各パスのレーザ加工で個別の単位溝が形成される予定の位置は、各パスに個別に対応するパス加工位置という。
ロボット2は、マニピュレータ3による加工ヘッド4の動作範囲および角度調整範囲が、加工ヘッド4を後述する所定の姿勢で、ワーク100における溝103の形成個所の全長に亘り移動させる場合の加工ヘッド4の動作範囲と角度調整範囲を含むように設定されている。
加工ヘッド4は、内部に、レーザ発振器6より光ファイバ5を介して伝送されるレーザ光を、レーザビーム11として集光させるレンズ、集光ミラーなどの図示しない集光光学系を備えている。なお、レーザビーム11は、図示する便宜上、ドットのハッチングを付して示す(図3、図4(a)(b)(c)、図5(a)(b)(c)も同様)。
更に、加工ヘッド4は、図3に示すように、集光光学系により集光されたレーザビーム11を、先端側の開口13を通して外部へ照射するノズル12を備えている。
加工ヘッド4は、集光光学系により集光させるレーザビーム11の焦点が、ノズル12の開口13の位置に配置されるように、集光光学系の焦点距離が設定されていることが好ましい。これは、以下の理由による。
図示しないが、ワーク100をレーザ切断する加工の場合は、ワーク100には表面101から裏面102に貫通する溝が形成されることになる。そのため、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所に生じる溶融材は、既に形成されている溝を通してワーク100の裏面102側へ吹き飛ばして除去することができる。
これに対し、図2に示すように、ワーク100に裏面102に貫通しない溝103を形成する加工の場合は、レーザビーム11の照射個所から吹き飛ばされる溶融材15は、溝103からワーク100の表面101側に排出されるようになる。したがって、ワーク100に溝103を形成する加工を行う際、加工ヘッド4が配置されているワーク100の表面101側の環境は、吹き飛ばされた溶融材15が飛散する可能性のある環境になる。
この環境では、加工ヘッド4のノズル12の開口13は、飛散した溶融材15が加工ヘッド4に侵入する経路になる可能性がある。そして、万一、加工ヘッド4に飛散した溶融材15が侵入した場合は、集光光学系を含む光学系の損傷につながる可能性がある。
したがって、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100に溝103を形成する加工を実施するためには、飛散した溶融材15が加工ヘッド4のノズル12の開口13に到達すること、あるいは、飛散した溶融材15がノズル12の開口13から加工ヘッド4に侵入すること、を抑制する対策が重要になる。
そこで、本実施形態における加工ヘッド4は、レーザビーム11の焦点がノズル12の開口13の位置に配置された構成とすることにより、レーザビーム11の焦点がノズル12の開口13以外の位置に配置された構成と比較して、ノズル12の開口13の開口面積を小さく設定することができるようにしてある。これにより、本実施形態における加工ヘッド4は、飛散した溶融材15が開口13から加工ヘッド4の内部へ侵入する虞を抑制することができる。
なお、加工ヘッド4は、設定されたスポットのサイズでワーク100に対してレーザビーム11を照射することができれば、レーザビーム11の焦点がノズル12の開口13の位置に配置される構成のみに限定されないことは勿論である。
更に、加工ヘッド4は、少なくともノズル12の内部空間に、図示しないパージガス供給部からパージガス14が供給される構成を備えることが好ましい。パージガス14としては、たとえば、空気が0.6~0.7MPaの圧力で加工ヘッド4の内部空間に供給される。これにより、加工ヘッド4は、図3に示すように、パージガス供給部から供給されたパージガス14をノズル12の開口13を通して外部に吹き出す機能を備えることができる。したがって、この構成によれば、加工ヘッド4は、ノズル12の開口13に、外向きのパージガス14のガス流れを形成できるため、飛散した溶融材15が開口13から加工ヘッド4の内部へ侵入する可能性を、更に抑制することができる。なお、パージガス14のガス種と、供給圧力は、前記した例に限定されず、適宜変更してもよいことは勿論である。
また、加工ヘッド4は、ノズル12から、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所までの距離(以下、ノズル・ワーク間距離という)が大きければ大きいほど、レーザビーム11の照射個所から飛散した溶融材15が加工ヘッド4の開口13に到達する可能性は小さくなる。
そこで、本実施形態のレーザ加工装置1は、ノズル・ワーク間距離を、一例を後述するように、或る寸法に設定してある。これにより、本実施形態のレーザ加工装置1は、このノズル・ワーク間距離の大きさに基づいて、飛散した溶融材15が加工ヘッド4のノズル12の開口13に到達することを抑制することができる。
更に、本実施形態では、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所で行われるアシストガス9による溶融材15を吹き飛ばす処理に対し、ノズル12から吹き出すパージガス14のガス流れが影響することを抑制することも目的として、ノズル・ワーク間距離を、前記或る寸法に設定している。
なお、本実施形態のレーザ加工装置1は、ノズル・ワーク間距離の大きさに基づいて、飛散した溶融材15が加工ヘッド4の開口13に到達する可能性を抑制できる場合は、加工ヘッド4は、パージガス14をノズル12の開口13から外部に吹き出す機能を備える構成に限定されないことは勿論である。
本実施形態では、レーザビーム11の焦点がノズル12の開口13の位置に配置されているので、ノズル12から外部に向けて照射されるレーザビーム11は、ノズル12からの距離が増加するにしたがって、ビーム径が次第に拡大する。この距離とビーム径との関係は、加工ヘッド4の集光光学系による焦点距離などに依存している。
そこで、本発明では、たとえば、ノズル・ワーク間距離が約150mmの状態で、ワーク100におけるレーザ加工による溝103の形成個所に、レーザビーム11が、約10mmのビーム径のスポットとして照射されるように、加工ヘッド4の集光光学系が設定されている。また、この状態で、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所に、ワーク100の母材の溶融材15が生じるように、レーザビーム11のエネルギーが設定されている。
前記所定のノズル・ワーク間距離の保持は、加工ヘッド4を保持するマニピュレータ3の動作によって実現すればよく、このマニピュレータ3の動作は、制御装置7の指令で制御すればよい。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1では、ワーク100に対して加工ヘッド4よりレーザビーム11を照射すると、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所に、照射されたレーザビーム11のスポットに対応するサイズの溶融池を形成することができる。
本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100に溝103を形成する加工を行うときには、後述するように、マニピュレータ3の動作により、加工ヘッド4をワーク100に対して溝長手方向に相対移動させて、レーザビーム11の照射個所を、ワーク100における溝103の形成予定個所および形成個所に沿い移動させる。
この際、本実施形態のレーザ加工装置1は、たとえば、ワーク100を基準とする加工ヘッド4の相対移動方向が図1、図2に矢印Dで示す方向の場合、加工ヘッド4からワーク100に対してレーザビーム11を照射する方向が、矢印Dの方向の前方側へ斜めに向くように、加工ヘッド4を傾斜姿勢とすることが好ましい。この傾斜姿勢は、以下、加工ヘッド4の前進角姿勢という。なお、図1、図2では、矢印Dの方向は、y軸の正方向としてあるが、複数パスのレーザ加工を行う場合は、溝103の長手方向に沿い往復動作させる加工ヘッド4の往路と復路で、順次異なるパスのレーザ加工を行う場合があるので、矢印Dの方向がy軸の負方向の場合もあることは勿論である。
加工ヘッド4の前進角姿勢は、加工ヘッド4を保持するマニピュレータ3の動作によって実現すればよく、このマニピュレータ3の動作は、制御装置7の指令で制御すればよい。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1では、加工ヘッド4の位置が、ワーク100にレーザビーム11が照射される位置、すなわち、ワーク100における溶融材15の飛散が行われる位置に対し、ワーク100の表面101の垂直方向に配置されることを回避することができる。
よって、この構成によれば、加工ヘッド4の位置が、ワーク100にレーザビーム11が照射される位置に対し、ワーク100の表面101の垂直方向に配置される構成と比較して、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所から飛散する溶融材15が、加工ヘッド4のノズル12の開口13に到達する可能性を、抑制することができる。
ガスノズル8は、加工ヘッド4によるワーク100に対するレーザビーム11の照射個所よりも矢印Dの方向の後方側に、レーザビーム11の照射個所に向く姿勢で配置されている。この姿勢で、ガスノズル8は、支持部材16を介して加工ヘッド4に取り付けられている。ガスノズル8の基端側は、図示しないアシストガス9の供給部に、アシストガスライン17を介して接続されている。これにより、ガスノズル8は、ワーク100に対し加工ヘッド4が相対移動して、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所が移動するときに、その照射個所に追従して移動しながら、レーザビーム11の照射による溶融材15の発生個所に向けてアシストガス9を吹き付けることができる。なお、アシストガス9のガス種と、吹付量は、従来実施されているか、または、従来提案されている、レーザビームを用いてワークに溝を形成する加工手法で用いられるアシストガスと同様のガス種と、吹付量に適宜設定すればよい。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1では、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所に生じる溶融材15を、ガスノズル8より吹き付けるアシストガス9の流れに乗せて、図2に示すように、溝103から矢印Dの方向に先行する側へ吹き飛ばして除去することができる。よって、この構成によっても、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所から飛散する溶融材15が、加工ヘッド4のノズル12の開口13に到達する可能性を、抑制することができる。
更に、本実施形態におけるガスノズル8は、図2の矢印Dの方向、および、ガスノズル8の長手方向の双方に垂直な方向の寸法を、ノズル幅寸法とする。このガスノズル8のノズル幅寸法は、図4(a)では、図上、ガスノズル8の左右方向の幅寸法となる。図4(a)に示すように、ガスノズル8のノズル幅寸法は、ワーク100に形成する溝103の溝幅寸法に比して小さく設定されている。これは、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100に形成する溝103の深さが次第に深くなると、加工ヘッド4から溝103の底部にレーザビーム11を照射することになるため、それに対応してガスノズル8を溝103に挿入して配置できるようにするためである。なお、図4(a)では、加工ヘッド4に取り付けられているガスノズル8とカメラ10は、便宜上、破線で示している(図4(b)(c)、図5(a)(b)(c)も同様)。
なお、ガスノズル8は、ワーク100におけるレーザビーム11の照射個所に生じる溶融材15にアシストガス9を吹き付けることができるようにしてあれば、ガスノズル8の形状と配置は、図示した形状と配置に限られないことは勿論である。
カメラ10は、ワーク100に形成された溝103を撮影し、撮影した溝103の情報を、制御装置7に送る機能を備えている。
本実施形態では、カメラ10は、図1、図2に示すように、加工ヘッド4からワーク100にレーザビーム11が照射される個所に対して矢印Dの方向の前方側の領域を撮影する姿勢で、加工ヘッド4にブラケット18を介して取り付けられている。したがって、本実施形態におけるカメラ10は、マニピュレータ3の動作により加工ヘッド4と共にカメラ10を移動させることで、カメラ10による撮影範囲を、ワーク100に形成された溝103に向けて配置することができる。なお、このマニピュレータ3の動作によるカメラ10の移動は、制御装置7からマニピュレータ3へ与える指令で制御すればよい。
なお、カメラ10は、ワーク100に形成された溝103を、動作する加工ヘッド4およびマニピュレータ3に遮られることなく撮影することができれば、加工ヘッド4以外の個所に支持された構成としてもよいことは勿論である。また、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100に形成する溝103の長さや配置に対応するために、複数のカメラ10を備える構成としてもよいことは勿論である。
次に、制御装置7の機能の説明と共に、本実施形態のレーザ加工装置1で実施するレーザ加工方法について説明する。
制御装置7は、本実施形態のレーザ加工装置1を用いてワーク100に溝103を形成する作業を行うときには、図4(a)に示すように、ワーク100について、一点鎖線で示す如き溝103の形成予定個所と、形成予定の深さが設定される機能を備えている。
また、制御装置7は、溝103の形成を1層Mパス(Mは3以上の整数)のレーザ加工で行うかという点も設定される機能を備えている。なお、1パスのレーザ加工で形成される単位溝の幅寸法と深さ寸法との比にもよるが、溝103の形成予定の深さが大きくなるにしたがって、1層当たりのパス数Mの設定値は大きくなる傾向にある。
ところで、1パスのレーザ加工でワーク100に形成される単位溝の幅寸法と深さ寸法は、加工ヘッド4からワーク100に対して照射するレーザビーム11のスポットのサイズ、レーザビーム11の照射によりワーク100に吸収されるエネルギー、ワーク100の母材の性状などの条件から、自ずと定まる。これにより、本実施形態のレーザ加工装置1においては、単位溝の幅寸法を基に、複数条の単位溝をx軸方向に繋げて形成するために必要な、パス加工位置の1パスごとのx軸方向の変位量が明らかになると共に、1層当たりのパス数Mの設定値を基に、形成予定の溝103のx軸方向の溝幅寸法が定まる。あるいは、本実施形態のレーザ加工装置1では、形成予定の溝103に所望するx軸方向の溝幅寸法を基にして、1層当たりのパス数Mを定めるようにしてもよい。
一例として、本実施形態では、制御装置7に、1層3パスのレーザ加工が設定された場合の例を示す。この場合、1層3パスのレーザ加工でワーク100に形成される溝103は、図4(a)に示すように、x軸方向の溝幅寸法が、1パスのレーザ加工で形成される単位溝の幅寸法の2倍か、2倍以上の範囲、よって、加工ヘッド4からワーク100に照射されるレーザビーム11のスポットのビーム径を基準にすると、該ビーム径の2倍以上に設定される。
図示しないが、制御装置7は、加工ヘッド4からのレーザビーム11の照射のオンとオフとを切り替える機能、および、ガスノズル8からのアシストガス9の噴射のオンとオフとを切り替える機能を備えている。
制御装置7は、ワーク100に対し溝103を形成する加工を行うときには、加工ヘッド4を前記した前進角姿勢に保持するための指令を、マニピュレータ3へ与える機能を備えている。
また、制御装置7は、レーザビーム11を照射する加工ヘッド4を、ワーク100に形成する溝103の長手方向に沿わせて移動させる動作が、レーザ加工の1つのパスとして設定され、設定されたパスを実行するための指令を、マニピュレータ3へ与える機能を備えている。
更に、制御装置7は、パス加工位置設定機能と、加工順序設定機能と、中間部加工制御機能と、端部加工制御機能としての第1の端部加工制御機能および第2の端部加工制御機能と、を備えている。
パス加工位置設定機能は、制御装置7が、1層3パスのレーザ加工とされた設定に基づいて、図6に示すように、ワーク100に対し、x軸方向に3つのパス加工位置Pa1,Pa2,Pa3を並べて設定する機能である。この際、各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3は、個別に形成予定の二点鎖線で示す単位溝Ga1,Ga2,Ga3同士が、x軸方向に繋がるように、各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3の端部同士が重なる配置で設定される。このように、各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3が定まると、制御装置7では、各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3に、個別に対応する単位溝Ga1,Ga2,Ga3を形成するためのノズル・ワーク間距離を決めることができる。
加工順序設定機能は、パス加工位置設定機能でx軸方向に並べて設定された3つのパス加工位置Pa1,Pa2,Pa3について、次の第1と第2の順序設定条件が共に満たされるように、レーザ加工を行う加工順序を設定する機能である。
第1の順序設定条件は、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置Pa1のレーザ加工を、隣接するx軸方向の配列順序が2番目のパス加工位置Pa2のレーザ加工よりも後に実施するという条件である。
第2の順序設定条件は、x軸方向の配列順序が最後のパス加工位置のレーザ加工を、隣接するx軸方向の配列順序が最後から2番目のパス加工位置のレーザ加工よりも後に実施するという条件である。この第2の条件は、本実施形態の場合は、x軸方向の配列順序が3番目のパス加工位置Pa3のレーザ加工を、隣接するx軸方向の配列順序が2番目のパス加工位置Pa2のレーザ加工よりも後に実施するという条件となる。
したがって、本実施形態では、これら2つの順序設定条件が共に満たされるのは、パス加工位置Pa2の加工順序が1番目の場合のみである。そこで、制御装置7は、加工順序設定機能により、たとえば、パス加工位置Pa2、パス加工位置Pa1、パス加工位置Pa3の順に、加工順序を設定する。なお、パス加工位置Pa1とパス加工位置Pa3の加工順序は、入れ替えてもよいことは勿論である。
中間部加工制御機能は、制御装置7が、先ず、x軸方向の配列順序が1番目と、配列順序が最後である3番目とを除く中間部のパス加工位置、本実施形態では、パス加工位置Pa2を特定する。その後、制御装置7は、中間部のパス加工位置として特定されたパス加工位置Pa2についてレーザ加工を行うときには、図4(a)に示すように、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面に沿う姿勢に制御する機能である。
したがって、制御装置7は、この中間部加工制御機能で制御される加工ヘッド4の姿勢と、パス加工位置Pa2に単位溝Ga2を形成するために必要とされるノズル・ワーク間距離の情報とを基に、パス加工位置Pa2を対象としてレーザ加工を行う場合の加工ヘッド4の姿勢と移動経路とを定めることができる。制御装置7は、パス加工位置Pa2を対象とするパスを実行するための指令をマニピュレータ3へ与えるときには、前記のように定めた加工ヘッド4の姿勢と移動経路の情報を含む指令を、マニピュレータ3へ与える機能を備えている。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1は、図4(a)に示すように、1層3パスのレーザ加工の工程では、先ず、ワーク100における溝103の形成予定個所にて、パス加工位置Pa2に対するレーザ加工が行うことができる。
この場合、図4(a)に示すように、ワーク100は、加工ヘッド4によるパス加工位置Pa2を対象とするレーザ加工が行われると、溝103の形成予定個所におけるパス加工位置Pa2に対応する個所で、且つ表面101の近傍のハッチングを付した部分について、母材が除去されて、単位溝Ga2が形成される。
この状態で、本実施形態のレーザ加工装置1では、ワーク100に形成された単位溝Ga2を、カメラ10で撮影して検出することが可能になる。
そこで、制御装置7は、カメラ10で撮影した単位溝Ga2の情報を受け取り、画像処理により、単位溝Ga2におけるx軸の負方向の端部と正方向の端部とを求める機能を備えている。
第1の端部加工制御機能は、図4(b)に示すように、加工ヘッド4により、溝103の形成予定個所におけるx軸の負方向の端部104側のパス加工位置Pa1を対象とするレーザ加工を行う場合に、制御装置7が実行する機能である。
制御装置7は、第1の端部加工制御機能では、図4(b)に示すように、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置Pa1についてレーザ加工を行うときに、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の負方向に傾く姿勢に制御する。この際、制御装置7は、図7(a)に示すように、カメラ10(図1参照)の撮影情報から求めた単位溝Ga2のx軸の負方向の端部のx座標がx1、単位溝Ga2の深さ寸法から求まる単位溝Ga2の底部のz座標がz1の場合、二点鎖線で示す加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向を、座標(x1,z1)に向けた傾斜姿勢に配置することが好ましい。このようにすれば、制御装置7は、加工ヘッド4の傾斜姿勢を定める制御を容易に実現することができる。
したがって、制御装置7は、この第1の端部加工制御機能で制御される加工ヘッド4の傾斜姿勢と、パス加工位置Pa1に単位溝Ga1を形成するために必要とされるノズル・ワーク間距離の情報とを基に、パス加工位置Pa1を対象としてレーザ加工を行う場合の加工ヘッド4の傾斜姿勢と移動経路とを定めることができる。制御装置7は、パス加工位置Pa1を対象とするパスを実行するための指令をマニピュレータ3へ与えるときには、前記のように定めた加工ヘッド4の傾斜姿勢と移動経路の情報を含む指令を、マニピュレータ3へ与える機能を備えている。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1は、図4(b)に示すように、ワーク100における溝103の形成予定個所にて、パス加工位置Pa1に対するレーザ加工を行うことができる。
この場合、図4(b)に示すように、ワーク100は、加工ヘッド4によるパス加工位置Pa1を対象とするレーザ加工が行われると、溝103の形成予定個所におけるx軸の負方向の端部104側のパス加工位置Pa1に対応する個所で、且つ表面101の近傍のハッチングを付した部分について、母材が除去されて、単位溝Ga1が、パス加工位置Pa2に先に形成されている単位溝Ga2のx軸の負方向側に繋がった状態で形成される。
第2の端部加工制御機能は、図4(c)に示すように、加工ヘッド4により、溝103の形成予定個所におけるx軸の正方向の端部105側のパス加工位置Pa3を対象とするレーザ加工を行う場合に、制御装置7が実行する機能である。
制御装置7は、第2の端部加工制御機能では、図4(c)に示すように、x軸方向の配列順序が最後のパス加工位置である配列順序が3番目のパス加工位置Pa3についてレーザ加工を行うときに、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の正方向に傾く姿勢に制御する。この際、制御装置7は、図7(b)に示すように、カメラ10(図1参照)の撮影情報から求めた単位溝Ga2のx軸の正方向の端部のx座標がx2、単位溝Ga2の深さ寸法から求まる単位溝Ga2の底部のz座標がz1の場合、二点鎖線で示す加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向を、座標(x2,z1)に向けた傾斜姿勢に配置することが好ましい。このようにすれば、制御装置7は、加工ヘッド4の傾斜姿勢を定める制御を容易に実現することができる。
したがって、制御装置7は、この第2の端部加工制御機能で制御される加工ヘッド4の傾斜姿勢と、パス加工位置Pa3に単位溝Ga3を形成するために必要とされるノズル・ワーク間距離の情報とを基に、パス加工位置Pa3を対象としてレーザ加工を行う場合の加工ヘッド4の傾斜姿勢と移動経路とを定めることができる。制御装置7は、パス加工位置Pa3を対象とするパスを実行するための指令をマニピュレータ3へ与えるときには、前記のように定めた加工ヘッド4の傾斜姿勢と移動経路の情報を含む指令を、マニピュレータ3へ与える機能を備えている。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1は、図4(c)に示すように、ワーク100における溝103の形成予定個所にて、パス加工位置Pa3に対するレーザ加工を行うことができる。
この場合、図4(c)に示すように、ワーク100は、加工ヘッド4によるパス加工位置Pa3を対象とするレーザ加工が行われると、溝103の形成予定個所におけるx軸の正方向の端部105側のパス加工位置Pa3に対応する個所で、且つ表面101の近傍のハッチングを付した部分について、母材が除去されて、単位溝Ga3が、パス加工位置Pa2に先に形成されている単位溝Ga2のx軸の正方向側に繋がった状態で形成される。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1では、1層3パスのレーザ加工として、加工ヘッド4により、パス加工位置Pa2、パス加工位置Pa1、パス加工位置Pa3を対象とするレーザ加工を、順次実施することができる。
したがって、各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3を対象とする1層3パスのレーザ加工の処理が終了すると、ワーク100には、図5(a)に示すように、一点鎖線で示す溝103の形成予定個所に、表面101から、x軸方向に溝103に所望される溝幅寸法を備えてはいるが、所望する深さには達していない状態の溝103が形成される。なお、本実施形態の場合は、パス加工位置Pa1のレーザ加工を行うときに、加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向を座標(x1,z1)に向け、また、パス加工位置Pa3のレーザ加工を行うときに、加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向を座標(x2,z1)に向けることが好ましいとした。しかし、厳密には、目標が同じでも、加工ヘッド4の傾斜姿勢の角度が異なれば、ワーク100におけるレーザビーム11が照射される位置は変化する。よって、本実施形態の場合は、ワーク100に形成される溝103の溝幅寸法は、パス加工位置Pa1とパス加工位置Pa3のレーザ加工を行うときの加工ヘッド4の傾斜姿勢の角度の影響を受けた状態で決まる。
更に、この溝103は、パス加工位置Pa1には、レーザビーム11を、照射方向をx軸の負方向に傾けた状態で照射し、パス加工位置Pa3には、レーザビーム11を、照射方向をx軸の正方向に傾けた状態で照射しているので、形成された溝103は、ワーク100の表面101から溝103の底部まで、x軸方向の溝幅寸法がほぼ同様となる。この状態で、本実施形態のレーザ加工装置1では、ワーク100に形成された溝103を、カメラ10で撮影して検出することが可能になる。
そこで、制御装置7は、カメラ10で撮影した溝103の情報を受け取り、画像処理により、溝103の底部におけるx軸の負方向の端部と正方向の端部とを求める機能を備えている。次いで、制御装置7は、図5(a)に示すように、それまでに形成された溝103の底部を対象として、前記したと同様の1層3パスのレーザ加工を再度開始する機能を備えている。
これにより、本実施形態のレーザ加工装置1は、図5(a)(b)(c)に示すように、ワーク100の表面101から既に形成されている溝103の底部に、図4(a)(b)(c)に示したと同様に、x軸方向に3つのパス加工位置Pa1,Pa2,Pa3を並べて設定して、それぞれのパス加工位置Pa1,Pa2,Pa3に対してレーザビーム11の照射を行う1層3パスのレーザ加工を行うことができる。したがって、既に形成された溝103の底部で、更に、層状の領域の母材を除去して、より深い溝103を形成する加工を行うことができる。この際、ワーク100に既に形成されている溝103は、x軸方向の溝幅寸法が、加工ヘッド4からワーク100に照射されるレーザビーム11のスポットのビーム径の2倍以上となっている。そのため、既に形成された溝103では、ワーク100の表面101における溝103の開口部から、溝103の底部に設定されたパス加工位置Pa1に、レーザビーム11を、照射方向をx軸の負方向に傾けた状態で照射すること、および、パス加工位置Pa3に、レーザビーム11を、照射方向をx軸の正方向に傾けた状態で照射することに支障は生じない。
したがって、本実施形態のレーザ加工装置1は、1層3パスのレーザ加工を、既設の溝103の底部に対して更に行うことで、溝103の深さを次第に増加させる加工を行うことができる。
制御装置7は、ワーク100に形成される溝103の深さが、計画している深さに達するまで、加工ヘッド4による1層3パスのレーザ加工を繰り返し行うようにすればよい。これにより、ワーク100には、溝103の形成予定個所に、設定された幅と深さを有する溝103が形成される。
このように、本実施形態のレーザ加工装置1は、1層3パスのレーザ加工で、レーザビーム11のスポットのビーム径の2倍以上の溝幅寸法を有する溝103を形成し、更に、既に形成された溝103の底部を対象として、1層3パスのレーザ加工を行うことで、次第に深い溝103を形成することができる。
更に、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100に、表面101から裏面102に達する溝103の形成を計画して、溝103の形成予定個所に対して、1層3パスのレーザ加工を繰り返し行う処理を実施するようにしてもよい。この手法によれば、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク100を、溝103の形成個所で切断する加工を実施することができる。
本実施形態のレーザ加工装置1では、制御装置7は、第1の端部加工制御機能および第2の端部加工制御機能による端部加工制御機能により、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置Pa1および3番目のパス加工位置Pa3についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を互いにx軸方向の逆向きに傾く姿勢に制御することができる。たとえば、制御装置7は、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置Pa1についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向がx軸の負方向に傾く姿勢に制御し、x軸方向の配列順序が3番目のパス加工位置Pa3についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向がx軸の正方向に傾く姿勢に制御する。したがって、本実施形態のレーザ加工装置1では、ワーク100に既に形成された溝103の内側の空間を利用して、溝103の両側壁を形成しているワーク100の母材に干渉されることなく、加工ヘッド4から、溝103の底部に設定される各パス加工位置Pa1,Pa2,Pa3に、レーザビーム11を照射することができる。このため、本実施形態のレーザ加工装置1は、1層3パスのレーザ加工を順次繰り返し行うことで、ワーク100に形成された溝103の底部に、新たな溶融材15を生じさせるこができ、その溶融材15をガスノズル8から吹き付けるアシストガス9により吹き飛ばすことで、溝103の深さを順次深くする加工を実施することができる。
[第1実施形態の応用例]
前記第1実施形態では、制御装置7に、1層3パスのレーザ加工が設定された場合の例について説明した。これに対し、制御装置7は、1層4パス、1層5パスなど、1層当たりのパス数がより多く設定される機能を備えていてもよい。
そこで、第1実施形態の応用例では、前記第1実施形態で示した1層3パスの場合の構成を、1層4パス、5パス、あるいはそれ以上の多パスの場合にも応用して適用できるように、Mを3以上の任意の整数として、1層Mパスの場合に一般化して説明する。具体的には、制御装置7に、1層Mパスのレーザ加工が設定される場合に、制御装置7が備える機能について説明する。
制御装置7は、パス加工位置設定機能と、加工順序設定機能と、中間部加工制御機能と、端部加工制御機能としての第1の端部加工制御機能および第2の端部加工制御機能と、を備える。
パス加工位置設定機能は、制御装置7が、1層Mパスのレーザ加工とされた設定に基づいて、ワーク100に対し、x軸方向にM個のパス加工位置を並べて設定する機能である。この際、各パス加工位置は、個別に形成予定の単位溝同士が、x軸方向に繋がるように設定される。
加工順序設定機能は、パス加工位置設定機能でx軸方向に並べて設定されたM個のパス加工位置について、次の第1と第2の順序設定条件が共に満たされるように、レーザ加工を行う加工順序を設定する機能である。
第1の順序設定条件は、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置のレーザ加工を、隣接するx軸方向の配列順序が2番目のパス加工位置のレーザ加工よりも後に実施するという条件である。
第2の順序設定条件は、x軸方向の配列順序が最後、すなわちM番目のパス加工位置のレーザ加工を、隣接するx軸方向の配列順序が最後から2番目、すなわち前記配列順序が(M-1)番目のパス加工位置のレーザ加工よりも後に実施するという条件である。
加工順序設定機能では、前記第1と第2の順序設定条件が満たされれば、その他の加工順序は、たとえば、マニピュレータ3による加工ヘッド4の動作の効率化を図るなどの観点から、任意に設定してよい。
たとえば、図8に示すように、1層4パスの場合は、x軸方向に並べて4つのパス加工位置Pb1,Pb2,Pb3,Pb4が設定される。この場合、制御装置7の加工順序設定機能は、パス加工位置Pb1の加工順序がパス加工位置Pb2よりも後で、且つパス加工位置Pb4の加工順序がパス加工位置Pb3よりも後であれば、その他の加工順序は任意に設定してよい。
たとえば、パス加工位置Pb2とパス加工位置Pb3は、いずれの加工順序が先であってもよい。この場合、パス加工位置Pb2とパス加工位置Pb3のうち、加工順序が先とされる一方が、1番目の加工順序に設定される。具体的には、1層4パスの場合の加工順序は、各パス加工位置の符号のみを並べて示すと、Pb2,Pb1,Pb3,Pb4と、Pb2,Pb3,Pb1,Pb4と、Pb2,Pb3,Pb4,Pb1と、Pb3,Pb2,Pb1,Pb4と、Pb3,Pb2,Pb4,Pb1と、Pb3,Pb4,Pb2,Pb1のうちのいずれかに設定される。
また、たとえば、図9に示すように、1層5パスの場合は、x軸方向に並べて5つのパス加工位置Pc1,Pc2,Pc3,Pc4,Pc5が設定される。この場合、制御装置7の加工順序設定機能は、パス加工位置Pc1の加工順序がパス加工位置Pc2よりも後で、且つパス加工位置Pc5の加工順序がパス加工位置Pc4よりも後であれば、その他の加工順序は任意に設定してよい。
1層5パスの場合は、パス加工位置Pc1とパス加工位置Pc2の加工順序の条件、および、パス加工位置Pc4とパス加工位置Pc5の加工順序の条件は、前記した1層4パスの場合におけるパス加工位置Pb1とパス加工位置Pb2の加工順序の条件、および、パス加工位置Pb3とパス加工位置Pb4の加工順序の条件と同様である。したがって、1層5パスの場合にて、パス加工位置Pc3を除いた4つのパス加工位置Pc1,Pc2,Pc4,Pc5についての加工順序の並べ方は、前記した1層4パスの場合の加工順序と同様に、6通りの設定が可能である。すなわち、1層5パスの場合におけるパス加工位置Pc1,Pc2,Pc4,Pc5の加工順序の並べ方は、各パス加工位置の符号のみで示すと、Pc2,Pc1,Pc4,Pc5と、Pc2,Pc4,Pc1,Pc5と、Pc2,Pc4,Pc5,Pc1と、Pc4,Pc2,Pc1,Pc5と、Pc4,Pc2,Pc5,Pc1と、Pc4,Pc5,Pc2,Pc1と、のいずれかに設定することができる。ところで、パス加工位置Pc3については、加工順序の設定に関わる条件は特にない。そのため、パス加工位置Pc3の加工順序は、前記したパス加工位置Pc1,Pc2,Pc4,Pc5についての6通りの加工順序の並べ方のそれぞれに対して、加工順序が1番目となるように加えた設定としてもよいし、2番目または3番目または4番目のいずれかとなるように挿入した設定としてもよいし、5番目となるように加えた設定としてもよい。よって、1層5パスの場合は、パス加工位置Pc2とパス加工位置Pc3とパス加工位置Pc4のうちのいずれかが、1番目の加工順序に設定される。
中間部加工制御機能は、制御装置7が、x軸方向の配列順序が1番目と、配列順序がM番目とを除く中間部のパス加工位置、すなわち、x軸方向の配列順序が2番目から(M-1)番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、図4(a)に示したと同様に、加工ヘッド4を、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面に沿う姿勢に制御する機能である。
第1の端部加工制御機能は、制御装置7が、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を、図4(b)に示したと同様に、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の負方向に傾く姿勢に制御する機能である。この際、制御装置7は、図7(a)に示したと同様に、x軸方向の配列順序が2番目のパス加工位置に形成されている単位溝のx軸の負方向の端部のx座標と、該単位溝の底部のz座標とを基に、そのx座標とz座標とを備える位置に加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向が向くように、加工ヘッド4の傾斜姿勢を定めることが好ましい。
第2の端部加工制御機能は、制御装置7が、x軸方向の配列順序がM番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を、図4(c)に示したと同様に、レーザビーム11の照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の正方向に傾く姿勢に制御する機能である。この際、制御装置7は、図7(b)に示したパス加工位置Pa3のレーザ加工の場合と同様に、x軸方向の配列順序が(M-1)番目のパス加工位置に形成されている単位溝のx軸の正方向の端部のx座標と、該単位溝の底部のz座標とを基に、そのx座標とz座標とを備える位置に加工ヘッド4によるレーザビーム11の照射方向が向くように、加工ヘッド4の傾斜姿勢を定めることが好ましい。
これにより、本応用例のレーザ加工装置1では、制御装置7は、第1の端部加工制御機能および第2の端部加工制御機能による端部加工制御機能により、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置およびM番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッド4を互いにx軸方向の逆向きに傾く姿勢に制御することができる。
したがって、本応用例のレーザ加工装置1は、1層Mパスのレーザ加工を行うことができるため、第1実施形態のレーザ加工装置1と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
なお、本開示のレーザ加工装置、および、レーザ加工方法は、前記実施形態および応用例にのみ限定されるものではない。
図1に示したロボット2のマニピュレータ3の関節数、形状、サイズ、および、エンドエフェクタである加工ヘッド4の形状、サイズは、図示するための便宜上のものであり、図示したものに限定されない。
また、ロボット2は、ワーク100に形成する溝103の全長に亘り、加工ヘッド4を前記した所定の傾斜姿勢で移動させる機能を備えていれば、ワーク100に形成する溝103が延びる方向と、ロボット2の配置は、任意に設定してよい。また、たとえば、ロボット2は、マニピュレータ3が取り付けられているベースが可動する形式であってもよい。
ワーク100に形成する溝103の溝幅寸法は、1層3パスの場合は、ワーク100に照射されるレーザビーム11のスポットのビーム径に対する比率が2倍以上として説明したが、これらは寸法例である。
溝103の溝幅の寸法は、大きくすればするほど、溝103の側壁との干渉を避けた状態で、溝103の底部に、1層Mパス(Mは3以上の整数)のレーザ加工のためのレーザビーム11の照射を実施しやすくなるが、溝103を形成するために除去するワーク100の母材の量が多くなるため、より多くのエネルギーと時間が必要になる。
一方、溝103の溝幅の寸法は、小さくすればするほど、溝103を形成するために除去するワーク100の母材の量が少なくなるが、溝103の底部を対象として1層Mパスのレーザ加工のためにレーザビーム11を照射するときに、溝103の側壁との干渉を避け難くなる。
よって、溝103の溝幅寸法の設定値は、加工ヘッド4から照射するレーザビーム11を、溝103の側壁と干渉させることなく、溝103の底部に設定される1層Mパスのレーザ加工を実施できるという条件が満たされる範囲で、前記した以外の寸法に変更してもよいことは勿論である。この場合であっても、溝103を形成する加工に要するエネルギーと時間を抑制するという点から考えると、溝103の溝幅寸法は、できるだけ小さくすることが好ましい。
前記各実施形態および応用例では、溝検出装置は、カメラ10を例示したが、ワーク100に形成された溝103または溝103の底部、あるいは、単位溝について、x軸の負方向の端部と、正方向の端部を検出することができれば、視覚センサ、3Dスキャナなど、カメラ10以外の任意の形式の溝検出装置を採用してもよい。したがって、制御装置7は、溝検出装置より受け取る情報の形式に応じて、ワーク100に形成された溝103や単位溝の位置を特定する処理を適宜行う機能を備えるものとすればよい。この構成によっても、本開示のレーザ加工装置およびレーザ加工方法は、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
なお、本開示のレーザ加工装置およびレーザ加工方法の更に別の応用としては、ワークにおける溝の形成予定個所に、1層2パスのレーザ加工を順次繰り返し行うことで、溝を形成することも可能である。この場合は、本開示のレーザ加工装置における制御装置は、先ず、ワークにおける溝の形成予定個所に、2つのパス加工位置をx軸方向に並べて設定する。その後、制御装置は、x軸方向の配列順序が1番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッドを、レーザビームの照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の負方向に傾く姿勢に制御し、x軸方向の配列順序が2番目のパス加工位置についてレーザ加工を行うときには、加工ヘッドを、レーザビームの照射方向が、z軸およびy軸(図2参照)の双方に平行な平面よりもx軸の正方向に傾く姿勢に制御するようにすればよい。