JP7289475B2 - 生分解性繊維の製造方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 〔発行者名〕 一般社団法人日本繊維機械学会 〔刊行物名〕 日本繊維機械学会第71回年次大会 研究発表論文集C2-02 〔発行日〕 平成30年5月24日 〔集会名〕 日本繊維機械学会第71回年次大会 〔開催日〕 平成30年6月2日 〔集会名〕 東京工業大学 物質理工学院 材料系 博士インターンシップ 修士・博士論文中間発表会 〔開催日〕 平成30年10月3日 〔集会名〕 The Fiber Society’s Fall 2018 Techinical Meeting and Conference 〔開催日〕 平成30年10月29日 〔発行者名〕 独立行政法人日本学術振興会 繊維・高分子機能加工第120委員会 〔刊行物名〕 ISDF2018 要旨集 〔発行日〕 平成30年11月11日 〔集会名〕 ISDF2018 〔開催日〕 平成30年11月12日 〔発行者名〕 一般社団法人プラスチック成形加工学会 〔刊行物名〕 プラスチック成形加工学会第26回秋季大会 予稿集 〔発行日〕 平成30年11月19日 〔集会名〕 プラスチック成形加工学会第26回秋季大会 〔開催日〕 平成30年11月26日及び27日 〔発行者名〕 東京工業大学 物質理工学院 材料系 材料コース 〔刊行物名〕 東京工業大学 物質理工学院 材料系 材料コース(有機材料分野)修士論文要旨集 〔発行日〕 平成31年2月5日 〔集会名〕 東京工業大学 物質理工学院 材料系 材料コース 修士論文発表会(有機材料分野) 〔開催日〕 平成31年2月12日
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、「PHA」と略記することがある)を原料とした生分解性繊維の製造方法に関する。
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境に大きな負荷を与える原因になっていることが懸念されており、これを解決できるプラスチックとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
なかでも、植物由来の生分解性プラスチックは、これを燃焼させた際に出る二酸化炭素がもともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しないとされている。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素の削減目標値を課したパリ協定の下、重要視され、植物由来の生分解性プラスチックの積極的な使用が望まれている。
最近、生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来の生分解性プラスチックとして脂肪族ポリエステルが注目されている。なかでも、PHA、特に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)単独重合体、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)共重合体、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合体(以下、PHBHと略記する場合がある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)共重合体等が注目されている。
これらPHA、特にPHBHは結晶化が遅く、通常の溶融紡糸による繊維化には困難を伴うため、市場の要求を満たすような機械的物性値を有する繊維化の検討が種々行われている。
特許文献1では、1500m/分以上の引取り速度でPHBHの溶融紡糸を行うことで引張強度の高いポリエステル繊維を製造することが開示されている。
また、特許文献2では、PHAに特定の結晶核剤と特定の滑剤を配合してポリエステル繊維を形成することで、高い引取速度での紡糸性及び生産性を向上させて、繊維の引張強度を高めることが開示されている。
高強度を目的としたものではないが、特許文献3では、PHBH等のPHAを溶融押出した後、0℃に繊維を急冷し、その温度で保持した後、繊維を連続的に延伸することで、長さ方向に繊維形状が安定したPHA繊維を製造することが開示されている。
一方、特許文献4では、PHAではなく、ポリエチレンテレフタレートを主な成分とするポリエステル繊維の製造に関して、ポリエステルを紡糸口金より吐出した後、180℃の加熱装置を通過させた後、40℃の冷却装置を通過させることで、高強度のポリエステル繊維を製造することが開示されている。
国際公開第2015/029316号 国際公開第2017/122679号 特開2018-159142号公報 特開2006-328550号公報
特許文献1又は2に記載された手法によると、高強度のPHA繊維を得ることができるが、高速で紡糸する必要があった。しかし、高速での紡糸には、紡糸中に糸切れが生じるリスクがあり、また、引取りに使用する装置として特殊で高価なものを使用する必要があった。
本発明は、上記現状に鑑み、高速での紡糸を行わなくとも、引張強度の高いポリヒロドキシアルカノエート繊維を与えることができる製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行い、PHAの溶融紡糸において、口金から吐出した繊維を引取りロールで巻き取る途中で、特定温度の液体相を通過させることで、低速の紡糸で、引張強度の高いポリヒロドキシアルカノエート繊維を製造できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、ポリヒロドキシアルカノエートを含有する樹脂材料を溶融させて、紡糸口金より繊維状に吐出する工程、吐出された前記樹脂材料からなる繊維を、水以外の水溶性液体を含み温度を20~60℃とした液体相を通過させる工程、及び、前記液体相を通過した前記繊維をロールに巻き取る工程、を含む、生分解性繊維の製造方法に関する。
好ましくは、前記水溶性液体が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルキレングリコール、及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種を含む。より好ましくは、前記水溶性液体が、ポリエチレングリコールを含み、該ポリエチレングリコールが有するオキシエチレン鎖の数が2~4個である。
好ましくは、液体相の深さが2~30cmである。
好ましくは、前記ロールに巻き取る速度が50~2000m/minである。
好ましくは、前記樹脂材料が、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、及びオレイン酸アミドからなる群より選択される少なくとも1種の滑剤を含有する。
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)、およびポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-4-ヒドロキシ酪酸)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。より好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)を含む。さらに好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)における3-ヒドロキシ酪酸のモノマー比率が85.0モル%以上99.5モル%以下である。
本発明によれば、高速での紡糸を行わなくとも、引張強度の高いポリヒロドキシアルカノエート繊維を製造することができる。
本発明の製造方法の一実施態様を示す概念図
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を主体とする生分解性繊維(以下、「PHA繊維」とも言う)の製造方法に関する。本発明で用いられるPHAとは、ヒドロキシアルカン酸をモノマーとするポリエステルであるが、特に、式(1):[-CHR-CH-CO-O-](式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルが好ましい。
本発明におけるPHAの具体例としては、例えば、PHB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、又はポリ3-ヒドロキシ酪酸〕、PHBH〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、又はポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、又はポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。これらのなかでも、工業的に生産が容易であるものとして、PHB、PHBH、PHBV、P3HB4HBが挙げられる。本発明においては、得られるPHA繊維の強度の観点から、PHAとしてPHBHを用いることが好ましい。
PHAは、柔軟性と強度の観点から、3-ヒドロキシブチレート単位を含むものが好ましい。なかでも、柔軟性と強度のバランスの観点から、PHAに含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の平均組成比が85.0モル%~99.5モル%を示すものがより好ましく、85.0モル%~97.0モル%を示すものがさらに好ましい。3-ヒドロキシブチレート単位の平均組成比が85.0モル%未満であると剛性が不足する傾向があり、99.5モル%より多いと柔軟性が不足する傾向がある。
本発明において、PHAは1種類のみを単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、PHAとしてPHBH等の共重合体を使用する場合には、3-ヒドロキシブチレート単位等のモノマー単位の平均組成比が異なる2種類以上の共重合体を混合して使用することもできる。
本発明で使用するPHAの分子量は、最終物のPHA繊維が目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。しかし、分子量が低いとPHA繊維の強度が低下する傾向があり、逆に高いと加工性が低下し、繊維化が困難になる場合があるので、それらを勘案して分子量を決定すればよい。この観点から、本発明で使用するPHAの重量平均分子量の範囲は、50,000~3,000,000が好ましく、100,000~1,500,000がより好ましい。なお、ここでの重量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
本発明で用いられるPHAの160℃、5kg荷重で測定したメルトフローレートは0.1~100であることが好ましく、1~50であることがより好ましく、10~40であることがさらに好ましい。メルトフローレートが低すぎると、溶融樹脂の流動性が不十分となり、また、高すぎると流動性が高くなりすぎ、いずれにおいても繊維を引き取ることが難しくなる。
本発明で使用するPHAのガラス転移温度は特に限定されないが、-30~10℃が好ましい。本発明において、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析で10℃/minの昇温速度にて測定される。
PHAを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、PHA産生能を有する微生物によりPHAを産生させる方法が挙げられる。そのような微生物としては特に限定されないが、例えば、PHB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumの他、カプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等が挙げられる。また、3-ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体生産菌としては、PHBVおよびPHBH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、PHBH生産菌としては、PHBHの生産性を上げるためにPHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bacteriol.,179,p4821-4830(1997))が挙げられる。
これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHAを蓄積させ、そのPHAを回収することでPHAを製造することができる。用いる微生物にあわせて、基質の種類を含む培養条件を最適化することができる。また、上掲した微生物以外にも、生産したいPHAに合わせて、各種PHA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を培養してPHAを製造することもできる。
本発明において生分解性繊維を製造するにあたっては、PHAのみを溶融押出してもよいし、PHAに、PHA以外のポリマー成分や、各種添加剤を配合したものを溶融押出してもよい。これらの成分の添加量は、PHA繊維の特性を損なわない範囲であれば特に限定されない。
PHA以外のポリマー成分としては、生分解性を有するポリマー成分が好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、未変性デンプン、変性デンプン、酢酸セルロース、キトサン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これら他のポリマー成分を配合する場合には、その配合量は、PHA100重量部に対し他のポリマー成分0.1~50重量部、好ましくは0.5~30重量部、より好ましくは1~10重量部程度であればよい。
本発明で使用できる添加剤としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、滑剤、無機充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、帯電防止剤、結晶化速度を調整するための核剤等が挙げられる。
上記の滑剤としては特に限定されないが、例えば、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレン脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエステルワックス、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノラウレートなどのグリセリンモノ脂肪酸エステル、コハク酸飽和脂肪酸モノグリセライドなどの有機酸モノグリセライド、ソルビタンベヘネート、ソルビタンステアレート、ソルビタンラウレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンラウレート、テトラグリセリンステアレート、テトラグリセリンラウレート、デカグリセリンステアレート、デカグリセリンラウレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアリルステアレートなどの高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。上記滑剤の中でも、入手のし易さや効果の高さの点で、脂肪酸アミド、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドがより好ましい。
上記の可塑剤としては特に限定されないが、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエートなどの変性グリセリン系化合物、ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル系化合物、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどのポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、セバシン酸系モノエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。上記可塑剤の中でも、入手のし易さや効果の高さの点で、変性グリセリン系化合物、ポリエーテルエステル系化合物が好ましい。
上記の無機充填剤としては特に限定されないが、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、カーボンブラック、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維、炭酸マグネシウム、ガラス粉末、金属粉末、カオリン、グラファイト、二硫化モリブデン、酸化亜鉛などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。上記無機充填剤の中でも、効果の高さの点で、酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましい。
上記の核剤としては特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、金属リン酸塩などの無機物、エリスリトール、ガラクチトール、マンニトール、アラビトールのような天然物由来の糖アルコール化合物、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、ポリエチレンオキシド、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルセバケートのようなジカルボン酸誘導体、インジゴ、キナクリドン、キナクリドンマゼンタのようなC=OとNH、SおよびOから選ばれる官能基を分子内に有する環状化合物、ビスベンジリデンソルビトールやビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールのようなソルビトール系誘導体、ピリジン、トリアジン、イミダゾールのような窒素含有ヘテロ芳香族核を含む化合物、リン酸エステル化合物、高級脂肪酸のビスアミド、高級脂肪酸の金属塩、分岐状ポリ乳酸、低分子量ポリ3-ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。上記核剤の中でも、結晶化速度の改善効果や生分解性繊維に混合する観点から、ペンタエリスリトール、糖アルコール化合物、ポリビニルアルコール、キチン、キトサンが好ましく、なかでも、ペンタエリスリトールが好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の生分解性繊維の製造方法は、連続的な溶融紡糸による繊維の製造方法に関し、少なくとも溶融押出工程(第一工程)、液体通過工程(第二工程)、及び、巻取工程(第三工程)を、この順で含み、これにより、PHAを含有する樹脂材料から、生分解性繊維を連続的に製造するものである。
まず第一工程では、押出機を用いてポリヒドロキシアルカノエートを含有する樹脂材料を溶融させて、押出機の先端に接続した紡糸口金より繊維状に吐出することで、溶融状態のポリエステル繊維(以下、溶融フィラメントともいう)を形成する。使用する押出機としては、溶融紡糸方法において通常使用される一般的な単軸押出機または二軸押出機を用いることができる。押出機のシリンダー温度及びダイ出口温度に関しては、使用するPHAの分子量やモノマー組成に応じてPHAの溶融粘度が適度に保たれるように調節すればよい。押出機から押し出される溶融フィラメントの溶融粘度は、繊維の巻き取りに適した張力が保持され、かつ冷却及び結晶固化が可能な範囲に収めることが好ましい。
第一工程における溶融押出時の温度については、溶融フィラメントの溶融粘度の観点から調節すればよく、特に限定されないが、好ましくは、145℃~200℃であり、より好ましくは、150℃~190℃である。ここで、溶融押出時の温度とは、押出機のシリンダー温度及びダイ出口温度の双方を含む。溶融押出時の温度が145℃より低いと、溶融フィラメント中に融解していない成分が存在するために紡糸が不安定になる場合がある。一方、200℃より高いと、樹脂の熱分解が起き易くなるので、紡糸が安定せず、また、得られる繊維の物性が損なわれる場合がある。
溶融状態の樹脂材料を繊維状に押し出すために使用される紡糸口金は、製造する繊維の径を考慮して適切な開口面積を有するものを選択すればよい。また、紡糸口金の開口部の形状により、種々の断面形状を有する繊維を取得することができる。開口部の断面形状は特に限定されないが、一般的な丸型に加え、楕円型、Y字型、X字型、H字型、多葉型などの断面形状を有する口金を使用することができる。
第二工程では、前述のように紡糸口金から吐出された繊維を、液体相を通過させる。液体相を通過させることで、繊維に応力を与えて、これによって、繊維中の樹脂の配向させ、結果、繊維の引張強度を向上させることができる。
本発明において、液体相に使用する液体として、水以外の水溶性液体を使用する。水溶性液体を使用することで、液体相を通過した後の繊維に対して水洗を行うことで、容易に該液体を繊維から除去することができる。
水溶性液体としては、任意の液体を使用することができるが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルキレングリコール、又は、アルコールを好適に使用することができる。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。また、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール等を挙げることができる。水溶性液体としては1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
水溶性液体としては、繊維の引張強度向上効果に優れることから、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。この時、ポリエチレングリコールが有するオキシエチレン単位は、2-4個であることが特に好ましい。
液体相は、液体相の通過によって繊維に応力を付与する観点から、ある程度の粘性を有していることが好ましい。具体的に、液体相が示す好ましい粘度は、10~60mPa・sの範囲であり、より好ましくは15~50mPa・sの範囲であり、更に好ましくは、20~40mPa・sの範囲である。水溶性液体の粘度は、温度依存性があり、温度により粘度が変化する。例えば、水溶性液体として2-4個のオキシエチレン単位鎖を有するポリエチレングリコールを使用する場合、該ポリエチレングリコールの粘度が上記粘度範囲に入るように温度を設定して該ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。
具体的には、オキシエチレン鎖が3個のポリエチレングリコールの粘度は、20℃で10-15mPa・s、40℃で21-27mPa・s、60℃で52-58mPa・sである。この場合、20℃未満の温度では、液体相の粘度が高くなりすぎ、60℃より高い温度になれば、液体相の粘度が低くなりすぎる。液体相の粘度が高すぎる場合は、紡糸中の繊維に応力がかかりすぎ、糸切れの原因となる。一方、液体相の粘度が低すぎる場合は、繊維に応力を付与することができず、繊維の配向が不十分となる。
液体相の粘度が上記粘度の範囲内になるように、温度で液体相の粘度を調節することが望ましい。また、ポリエチレングリコールが有するオキシエチレン鎖の数が増加することでも粘度が上昇するので、適度な粘度となるように、使用するポリエチレングリコールの種類を変えることも有効である。また、適度な粘度に調整するために、ポリエチレングリコールに、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、水溶性アルコール等を混合して液体相を構成してもよい。
液体相の温度は、使用する水溶性液体の種類やその粘度特性にもよるが、20~60℃が好ましい範囲である。この温度範囲内で、液体相の粘度が、前記段落で記載の範囲内であることが好ましい。溶融紡糸中、液体相の温度がこの範囲内で維持されるように調節されることが好ましい。液体相の温度が20℃未満であったり、また、60℃を超えると、結晶化に最適な温度範囲を外れるため、PHAを主体とする繊維の引張強度を十分に向上させることができない。前記液体相の温度の下限値は25℃が好ましく、30℃がより好ましい。また、上限値は50℃がより好ましく、45℃がさらに好ましく、40℃が特に好ましい。
なお、特許文献4では、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維の製造において、紡糸口金より吐出した繊維を、180℃の加熱装置を通過させた後、40℃の冷却装置を通過させることが記載されているが、本発明では、180℃の加熱装置を通過させる必要はなく、紡糸口金より吐出した繊維を、直接、20~60℃の液体相を通過させればよい。
液体相の深さは特に限定されないが、浅すぎると液体相による効果を十分に得ることができない。また、深すぎても相応の効果を得ることはできす、液槽が大型化するため好ましくない。この観点から、2~30cmが好ましい。深さの下限値は5cmがより好ましく、10cmが更に好ましい。深さの上限値は25cmがより好ましく、20cmが更に好ましい。
第三工程は、液体相を通過した後の繊維をロールに巻き取る工程である。ロールは通常の巻取りロールを使用すればよい。なお、当該巻取りロールは、液体相の外部に配置される。前記液体相と前記巻取りロールの間に引取りロールを設置することも可能である。引取ロールを設置することで、巻取りロールの負荷が減少し、巻取りが安定する。また、引取ロールと巻取りロールの間に、繊維に付着した水溶性液体を除去するための水槽の設置、また、繊維洗浄後の乾燥工程を設置することも可能である。
前記ロールに繊維を巻き取る速度は当業者が適宜設定することができるが、本発明においては、繊維の引張強度向上効果の観点から、50~2000m/minであることが好ましい。本発明において巻取り速度が2000m/minを超えると、繊維の引張強度が向上しない場合がある。巻取り速度の下限値は100m/minが好ましく、200m/minがより好ましく、300m/minがさらに好ましく、400m/minが特に好ましく、500m/minが最も好ましい。また、巻取り速度の上限値は1500m/minが好ましく、1400m/minがより好ましく、1300m/minがさらに好ましく、1200m/minがより更に好ましく、1100m/minが特に好ましく、1000m/minが最も好ましい。
次に本発明を図を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施態様を示す概念図である。この実施態様では、押出機1の先端に接続した紡糸口金2より、繊維3が吐出されている。吐出された繊維3は、直線的に走行し、鉛直下方に配置された巻取りロール4によって巻き取られる。紡糸口金2と巻取りロール4の間で、繊維3は、液槽5中の液体相6を通過する。液体相6の温度は、例えば30℃に保持されている。液体相6を保持する液槽5の底面には、繊維3が通過する程度の径を有する孔7が設けられている。繊維3は、液体相6の液面から液体相に侵入して、前記孔を通じて、液体相6の外に出て、巻取りロール4に巻き取られることになる。
図1では、繊維3が直線的に走行する場合について示したが、本発明はこれに限定されず、紡糸口金2から液体相6までのあいだ、又は、液体相6から巻取りロール4までのあいだに別のロール(図示せず)を設けて繊維3の走行経路の方向を変更するように構成されてもよい。また、液体相6のなかに別のロール(図示せず)を設けて繊維3の走行経路を液体相6中で反転させることで、液体相6の液面から液体相に侵入した繊維が、同じく液体相6の液面から、液体相の外に出るようにしてもよい。この場合、液槽5の底面に孔7を設ける必要はない。
本発明によると、溶融紡糸によって、連続的に生分解性繊維を製造することができ、得られた生分解性繊維は、PHAを主体とする繊維でありながら、良好な引張強度を有することができる。また、溶融紡糸の条件を上述した範囲内において選択することによって、従来の高速紡糸等を利用した、例えば特許文献1及び2に記載の製造方法において達成できなかったレベルの高い引張強度を達成することも可能である。
また、本発明では、特許文献3に記載されているような、溶融紡糸後の延伸工程を行ってもよいが、延伸工程を行わなくとも、本発明の効果を達成することができる。PHAはガラス転移温度が0℃付近と低く、室温では結晶化してしまう材料であるため、紡糸後に延伸工程を実施することが通常困難である。そのため、本発明によって、延伸工程を行わずに高強度のPHA繊維が得られる利点は大きい。
本発明により得られる生分解性繊維は、公知の繊維と同様、農業、漁業、林業、衣料、非衣料繊維製品(例えばカーテン、絨毯、鞄など)、衛生品、園芸、自動車部材、建材、医療、食品産業、その他の分野において好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
<製造例1>PHBHの製造
培養生産にはKNK-005株(米国特許第7384766号明細書を参照)を用いた。
種母培地の組成は1w/v% Meat-extract、1w/v% Bacto-Tryptone、0.2w/v% Yeast-extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPO、(pH6.8)とした。
前培養培地の組成は1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、1.29w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、とした。炭素源としてはパーム油を10g/Lの濃度で一括添加した。
生産培地の組成は0.385w/v% NaHPO・12HO、0.067w/v% KHPO、0.291w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.5v/v% 微量金属塩溶液(0.1N 塩酸に1.6w/v%FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v% CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)、0.05w/v% BIOSPUREX200K(消泡剤:コグニスジャパン社製)とした。
まず、KNK-005株のグリセロールストック(50μl)を種母培地(10ml)に接種して24時間培養し種母培養を行なった。次に種母培養液を、1.8Lの前培養培地を入れた3Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDL-300型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度33℃、攪拌速度500rpm、通気量1.8L/minとし、pHは6.7~6.8の間でコントロールしながら28時間培養し、前培養を行なった。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。
次に、前培養液を、6Lの生産培地を入れた10Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製MDS-1000型)に1.0v/v%接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度400rpm、通気量6.0L/minとし、pHは6.7~6.8の間でコントロールした。pHコントロールには14%水酸化アンモニウム水溶液を使用した。炭素源としてパーム油を使用した。培養は64時間行い、培養終了後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
得られた乾燥菌体1gに100mlのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHBHを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が30mlになるまで濃縮後、90mlのヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したPHBHをろ別後、50℃で3時間真空乾燥し、PHBHを得た。
得られたPHBHの3HH組成は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHBH20mgに2mlの硫酸-メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHBH分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のポリエステル分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所GC-17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND-1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μLを注入した。温度条件は、初発温度100℃から200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200℃から290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、上記PHBHは、3-ヒドロキシヘキサノエート(3HH)のモノマー比率が5.4モル%のPHBHであった。GPCで測定した重量平均分子量Mwは35万であり、融点は141℃、ガラス転移温度は0℃であった。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めた。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成した。
<実施例1~9、及び比較例3~5>
製造例1で得られたPHBH(100重量部)に対して0.5重量部のベヘン酸アミドをドライブレンドし、東芝機械社製の2軸押出機(TEM26SS)を用いて130~160℃で溶融混錬してペレット化した。ついで当該ペレットを、スクリュー径20mmの1軸押出機で溶融し、ギアポンプで流量を調整し、溶融紡糸温度180℃で、直径が1mmの紡糸孔を1個有する紡糸ダイスから樹脂の吐出量5.0g/minで押出し、25℃の引取りロールで、表に記載の引取り速度にて繊維を引取ることで、連続的な溶融紡糸を行った。
繊維の引取りが安定した後に、連続的な溶融紡糸を継続しながら、紡糸ダイスと引取りロールの間に恒温槽を設置した。該恒温槽の底部には、円形の孔を設けており、該孔を走行中の繊維が通過するように該恒温槽を設置した。設置後、該恒温槽に、表に記載の温度に設定した液体(ポリエチレングリコール:重合度=4、粘度:表1に記載)を、表に記載の液浴深さとなるように充填した。該恒温槽には、別途設置した恒温槽より、送液ポンプを使用して、設定した温度の液体を循環させ、液体の温度および液浴の深さを表に記載の値に保持した。このようにして、紡糸ダイスから吐出した繊維を引取りロールで巻き取る途中で、特定温度の液体相を通過させるようにした。この状態で、表に記載の引取り速度で連続的な溶融紡糸を継続して、繊維を取得した。取得した繊維は、純水で洗浄し、室温で1日間自然乾燥し、以下の評価を実施した。
<比較例1~2、及び参考例1~2>
製造例1で得られたPHBH(100重量部)に対して0.5重量部のベヘン酸アミドをドライブレンドし、東芝機械社製の2軸押出機(TEM26SS)を用いて130~160℃で溶融混錬してペレット化した。ついで当該ペレットを、スクリュー径20mmの1軸押出機で溶融し、ギアポンプで流量を調整し、溶融紡糸温度180℃で、直径が1mmの紡糸孔を1個有する紡糸ダイスから樹脂の吐出量5.0g/minで押出し、25℃の引取りロールで、表に記載の引取り速度にて繊維を引き取ることで、連続的な溶融紡糸を行って、繊維を取得した。取得した繊維は、恒温槽を使用したサンプルと条件を統一するために、純水で洗浄し、1日間自然乾燥した。
引取速度、液浴の深さ、及び液体温度を、表に示した。
得られたポリエステル繊維について、以下のとおり評価を行った。
(引張強度)
得られた繊維について、島津社の引張測定装置オートグラフAG-Iを用いて、以下の条件で引張強度を測定した。すなわちサンプルの初期長を20mmとし、20mm/minの速度で測定した。結果を表に示した。
(特定結晶からの回折強度)
得られた繊維の回折強度の測定には、リガク社のX線回折装置(RINT)を用い、フィラメント電圧45kV、フィラメント電流60mAで発生させたCuKα線を、ニッケルフィルターを通して使用した。リガク社のMercuryCCDを用いて、2次元の回折パターンを測定し、その赤道方向の強度から回折強度分布を算出した。サンプルとカメラの間隔は48.92mmとし、回折角はシリコン結晶の(111)反射を利用して校正した。得られた回折強度分布の回折角が15°から21°の範囲において、まずは15°から21°に引いた直線を非晶の散乱に基づく強度と見なし、その分を回折強度から差し引いた。その後、15°から18°の間の最大値を、結晶化度(α):α型結晶からの回折強度とし、18°から21°の間の最大値を、結晶化度(β):β型結晶からの回折強度とした。結果を表に示した。
Figure 0007289475000001
表より、紡糸ダイスから吐出した繊維を、20~60℃の範囲に設定した液体相を通過させた実施例1~9では、高速紡糸を実施した参考例1及び2と同等の引張強度、または参考例1及び2を超える高い引張強度を備えた繊維が得られたことが分かる。
一方、実施例1~9と同じ引取速度を採用しながら、吐出後の繊維を、液体相を通過させなかった比較例1及び2では、得られた繊維の引張強度が低かったことが分かる。
また、実施例1~9と同じ引取速度を採用し、吐出後の繊維を液体相に通過させたものの、該液体相の温度が80℃以上と高かった比較例3~5においても、繊維の引張強度が低かったことが分かる。
1 押出機
2 紡糸口金
3 繊維
4 巻取りロール
5 液槽
6 液体相
7 孔

Claims (6)

  1. 式(1):[-CHR-CH -CO-O-](式中、RはC 2n+1 で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであるポリヒロドキシアルカノエートを含有する樹脂材料を溶融させて、紡糸口金より繊維状に吐出する工程、
    吐出された前記樹脂材料からなる繊維を、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アルキレングリコール、及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種を含む水溶性液体を含み温度を20~60℃とした液体相を通過させる工程、及び
    前記液体相を通過した前記繊維をロールに巻き取る工程、を含み、
    前記液体相の深さが2~30cmであり、
    前記ロールに巻き取る速度が50~2000m/minであり、
    前記樹脂材料において、前記ポリヒロドキシアルカノエート以外のポリマー成分の配合量が、前記ポリヒロドキシアルカノエート100重量部に対して50重量部以下である、生分解性繊維の製造方法。
  2. 前記水溶性液体が、ポリエチレングリコールを含み、該ポリエチレングリコールが有するオキシエチレン単位が2~4個である、請求項に記載の生分解性繊維の製造方法。
  3. 前記樹脂材料が、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、及びオレイン酸アミドからなる群より選択される少なくとも1種の滑剤を含有する、請求項1又は2に記載の生分解性繊維の製造方法。
  4. 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)、およびポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-4-ヒドロキシ酪酸)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~の何れか1項に記載の生分解性繊維の製造方法。
  5. 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)を含む、請求項に記載の生分解性繊維の製造方法。
  6. 前記ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸)における3-ヒドロキシ酪酸のモノマー比率が85.0モル%以上99.5モル%以下である、請求項に記載の生分解性繊維の製造方法。
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