JP7285532B2 - 芳香族ポリエーテルケトン基材の表面改質方法 - Google Patents
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Description
一方、表面に官能基を導入して、表面機能化を行う際には、化学的安定性のために、強酸による酸化処理やプラズマ照射やコロナ放電などの高エネルギー処理が不可欠となっており、導入される官能基にも制限があった。
最近、表面に重合性化合物をグラフト重合する方法が報告されているが(WO2010/58848)、反応系からの酸素の除去や重合性化合物の精製などのプロセスが必要であった。
(1)芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマーを塗布し、これに光照射することを特徴とする芳香族ポリエーテルケトン基材の表面改質方法。
(2)芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマーを塗布し、これに光照射することを特徴とする、芳香族ポリエーテルケトン基材と炭化水素系ポリマーとのポリマー複合体の製造方法。
(3)芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンである(1)又は(2)に記載の方法。
(4)芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトンである(1)又は(2)に記載の方法。
で示されるもの、
次式(2):
次式(3):
(6)X1を含む構造単位が、次式(13):
で示される基を表す。)で示されるもの、又は次式(13-2):
(7)X2を含む構造単位が、次式(21):
次式(22):
(8)芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマー薄膜が形成されたポリマー複合体。
(9)芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンである(8)に記載の複合体。
(10)芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトンである(8)に記載の複合体。
(11)炭化水素系ポリマーが、次式(1):
で示されるもの、
次式(2):
次式(3):
(12)X1を含む構造単位が、次式(13):
(13)X2を含む構造単位が、次式(21):
次式(22):
本発明において使用される芳香族ポリエーテルケトン基材は、スーパーエンジニアリングに使用されているものであり、その種類に限定されるものではない。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンなどが挙げられるが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が好ましい。
本発明において使用される炭化水素系ポリマーは、炭化水素基を有する限り特に限定されるものではない。ポリマー薄膜が芳香族ポリエーテルケトンの表面に共有結合する原理は、光照射により炭化水素系ポリマーからラジカルが生じ、相手側(芳香族ポリエーテルケトン基材)の水素を引き抜くことで共有結合するというものである。この原理を利用できる限り炭化水素系ポリマーの種類は限定されず、任意に選択することができる。炭化水素系ポリマーは、一元系、二元系、三元系などいずれのものでもよい。
<式(1)に示すポリマー>
次式(1):
で示されるポリマー。
また本発明においては、例えばR1が-C(O)O-で示される基、R2が水素原子であり、mが4である。
またR4は、次式(12):
a及びbは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を表すが、a+b≧2である。従って、例えばX1を含む構造単位がないとき(a=0のとき)は、X2を含む構造単位が2以上のポリマーとなる。
R1、R2、R3及びR4は前記と同様である。
R5はフェニルボロン酸、フェニルスルホン酸基、ペンタフルオロフェニル基、アミノフェニル基、ニトロフェニル基などの置換芳香環を表す。R5はPEEK表面への反応には無関係な官能基を採用することができ、例えばイオン交換機能、超撥水機能、生体分子固定化機能などを有する官能基である。
また、R5は、上記置換芳香環以外にも、次式(24):
式(24)において、R51は、単結合、又は-C(O)-、-C(O)O-、-O-、-CONH-若しくは-NHCOO-で示される基を表す。
R52は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい複素環式官能基、又はグリシジル基を表す。
a及びbは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、cは1以上の整数を表し(但し、a+b+c≧2である。)、X1を含む構造単位、X2を含む構造単位及びX3を含む構造単位はランダムな順序で結合している。
a及びbは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、cは1以上の整数を表す。但し、a+b+c≧2である。
本発明においては、上記ポリマーのほか、セグメント化ポリウレタン、ポリイソブチレンなども使用することができる。
C1-20アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
C2-20アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチルアリル基、2-ブテニル基等が挙げられる。
C4-20アルキルジエニル基としては、例えば1,3-ブタジエニル基等が挙げられる。
C6-18アリール基としては、例えばフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
C7-20アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、エチルベンジル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基、ジエチルベンジル基等が挙げられる。
C3-20シクロアルケニル基としては、例えばシクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
C1-20アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
C7-20アルキルアリールオキシ基としては、例えばメチルフェニルオキシ基、エチルフェニルオキシ基、プロピルフェニルオキシ基、ブチルフェニルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、ジエチルフェニルオキシ基、ジプロピルフェニルオキシ基、ジブチルフェニルオキシ基、メチルエチルフェニルオキシ基、メチルプロピルフェニルオキシ基、エチルプロピルフェニルオキシ基等が挙げられる。
式(1)で示されるポリマーにおいて、a及びbは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数であればよいが(但し、a+b≧2である。)、ここで、b/(a+b)の値は0.01~1.0であり、好ましくは0.05~1.0、さらに好ましくは0.1~1.0である。
ここで、X1を含む構造単位としては、次式(13):
次式(22):
さらに詳しくは、実施例に記載のポリマーを挙げることができる。
本発明の方法は、前記の通り、芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマーを塗布し、これに光照射することを特徴とする。
塗布工程においては、前記炭化水素系ポリマーを主要成分として含む溶液を用いて行えばよい。本発明において使用可能な溶媒としては、炭化水素系ポリマーを溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えばエタノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
上記工程により、芳香族ポリエーテルケトン基材に塗布されたポリマーは、基材の表面を被覆して、芳香族ポリエーテルケトン基材の表面の特徴を改変する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
表面処理には下記のポリマーを用いた。
1. 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とn-ブチルメタクリレート(BMA)の共重合体 (MPC/BMA=3/7)(PMB30)
日油(株)製品
ガラス製のアンプルに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)およびn-ステアリルメタクリレート(SMA)をモル比90:10で秤量した。これに開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、溶媒としてエタノールを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて65℃にて5.5時間行なった。反応終了後、エーテル:クロロホルム=9:1の溶媒を用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥後、得られた粉末を蒸留水に再溶解し、48時間透析を行った後、凍結乾燥により白色粉末のPMSを得た。得られたPMSのモル分率は1H-NMR測定の結果、MPC: 91 mol%, SMA: 9 mol%であった。収率は67%であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により分子量を求めた結果、数平均分子量(Mn)は1.8 x 104、重量平均分子量(Mw)は6.1 x 104、多分散度は3.4であった。
実施例1のSMAの代わりに、ドデシルメタクリレート(DMA)を用いて、MPCと共重合反応を行い、PMDを得た。ガラス製のアンプルにMPCおよびDMAをモル比80:20で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてエタノールを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて9.0時間行なった。反応終了後、エーテル:クロロホルム=9:1の溶媒を用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥後、得られた粉末を蒸留水に再溶解し、60時間透析を行った後、凍結乾燥により白色粉末のPMDを得た。得られたPMDのモル分率は1H-NMR測定の結果、MPC: 88 mol%, DMA: 12 mol%であった。収率は64%であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により分子量を求めた結果、数平均分子量(Mn)は2.7 x 104、重量平均分子量(Mw)は8.6 x 104、多分散度は3.1であった
実施例1のSMAの代わりに、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)を用いて、MPCと共重合反応を行い、PMEHを得た。ガラス製のアンプルにMPCおよびEHMAをモル比30:70で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてエタノールを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は1.0 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて12時間行なった。反応終了後、エーテル:クロロホルム=8:2の溶媒を用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。得られたPMEHのモル分率は1H-NMR測定の結果、MPC: 33 mol%, EHMA: 67 mol%であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により分子量を求めた結果、数平均分子量(Mn)は4.4 x 104、重量平均分子量(Mw)は1.2 x 105、多分散度は2.7であった。
実施例1のSMAの代わりに、2-(n-ブチルウレタン)エチルメタクリレート(MEBU)を用いて、MPCと共重合反応を行い、PMBUを得た。ガラス製のアンプルにMPCおよびMEBUをモル比30:70で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてエタノールを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は1.0 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて12時間行なった。反応終了後、エーテル:クロロホルム=8:2の溶媒を用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。得られたPMEHのモル分率は1H-NMR測定の結果、MPC: 30 mol%, MEBU: 70 mol%であった。
実施例1のSMAの代わりに、n-ブチルメタクリレート(BMA)とp-ビニルフェニルボロン酸(VPBA)を用いて、MPCと共重合反応を行い、三元共重合体(PMBV)を得た。ガラス製のアンプルにMPC、BMAおよびVPBAをモル比60:20:20で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてエタノールを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.5 mol/L、開始剤濃度2.5 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて65℃にて6時間行なった。反応終了後、エーテル:クロロホルム=8:2の溶媒を用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥後、得られた粉末を蒸留水に再溶解し、48時間透析を行った後、凍結乾燥により白色粉末のPMBVを得た。得られたPMEHのモル分率は1H-NMR測定の結果、MPC: 72 mol%, BMA: 11 mol%, VPBA: 17 mol%であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により分子量を求めた結果、数平均分子量(Mn)は1.5 x 104、重量平均分子量(Mw)は9.1 x 105、多分散度は1.7であった。
PEEK基板を各種ポリマー溶液に10秒間浸漬し、風乾した。その後、サンプルにUV光(波長:300~450 nm, 最大輝度:365 nm, 強度:18 mW)を30 分間照射した。未反応のポリマーを基板から除去するため、各ポリマーの溶解に利用した溶媒に浸漬し、一晩振とうさせながら洗浄した。
図1に示すcaptive bubble法を用いて、水中における表面の濡れ性を評価した。水中における気泡の接触角(θ)を180°から引いた値を図2に示す。PEEK基板が80°程度であるのに対し、親水性のポリマーで処理した基板(No.1, 2, 5, 7, 8, 10)では0~40°の値を示した。
各種ポリマーで表面処理した後のPEEK基板表面をX線光電子分光(XPS)測定により分析した。XPSのチャートを図3~15に示す。その結果、各種ポリマーに特有の元素ピークが確認された。
PMBV622 (No.12)の5.0 wt%エタノール溶液を調製し、PEEK基板にスピンコートした。乾燥後、サンプルの特定領域にのみUV光を15分間照射し、エタノール中で超音波洗浄を1分間行った。表面処理後のPEEK基板を直径35mmのディッシュにいれ、L929細胞(播種密度:105 cells/cm2)を37°Cで24時間培養した。
表面処理には下記のポリマーを用いた。
ガラス製のアンプルにn-ブチルメタクリレート(BMA)およびメタクリル酸(MA)をモル比70:30で秤量した。これに開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて24時間行なった。反応終了後、n-ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により白色粉末のPBMAを得た。得られたPMBAのモル分率は1H-NMR測定の結果、BMA: 81 mol%, MA: 19 mol%であった。
実施例5のMAの代わりに、グリシジルメタクリレート(GMA)を用いて、BMAと共重合反応を行い、PBGMAを得た。ガラス製のアンプルにBMAおよびGMAをモル比70:30で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて24時間行なった。反応終了後、メタノールを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により白色粉末のPBGMAを得た。得られたPBGMAのモル分率は1H-NMR測定の結果、BMA: 71 mol%, GMA: 29 mol%であった。
実施例5のMAの代わりに、2-ヒドロキシメタクリレート(HEMA)を用いて、BMAと共重合反応を行い、PBHEMAを得た。ガラス製のアンプルにBMAおよびHEMAをモル比70:30で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて24時間行なった。反応終了後、ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により白色粉末のPBHEMAを得た。得られたPBGMAのモル分率は1H-NMR測定の結果、BMA: 70 mol%, HEMA: 30 mol%であった。
実施例5のMAの代わりに、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(TMSPMA)を用いて、BMAと共重合反応を行い、PBTMSPMAを得た。ガラス製のアンプルにBMAおよびTMSPMAをモル比70:30で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて24時間行なった。反応終了後、ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により白色粉末のPBTMSPMAを得た。得られたPBTMSPMAのモル分率は1H-NMR測定の結果、BMA: 70 mol%, TMSPMA: 30 mol%であった。
実施例5のMAの代わりに、N-スクシンイミジルメタクリレート(NHS-MA)を用いて、BMAと共重合反応を行い、PBNHS-MAを得た。ガラス製のアンプルにBMAおよびNHS-MAをモル比70:30で秤量した。これに開始剤としてAIBNを加え、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて所定濃度に希釈した。この際、モノマー濃度は0.50 mol/L、開始剤濃度5.0 mmol/Lとした。十分に溶液中の酸素をアルゴンで除去後、アンプルを封管した。反応はシリコーンオイルバスを用いて60℃にて24時間行なった。反応終了後、メタノールを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により白色粉末のPBNHS-MAを得た。得られたPBNHS-MAのモル分率は1H-NMR測定の結果、BMA: 68 mol%, TMSPMA: 32 mol%であった。
PEEK基板を各種ポリマー溶液に10秒間浸漬し、風乾した。その後、サンプルにUV光(波長:300~450 nm, 最大輝度:365 nm, 強度:18 mW)を30 分間照射した。未反応のポリマーを基板から除去するため、各ポリマーの溶解に利用した溶媒に浸漬し、一晩振とうさせながら洗浄した。
各種ポリマーの構造をFT-IR測定により分析した。図17にIRスペクトルを示す。全てのポリマーについて、メタクリル酸エステルのC=Oに由来するIR吸収が1720-1730 cm-1に確認できた。また、各種ポリマーに特徴的な官能基に由来するIR吸収が確認できた。これらのことは、この表面処理法によりPEEK基板にBMA系ポリマーが被覆されたことを示す。
Captive bubble法を用いて水中における表面の濡れ性を評価した。水中における気泡の接触角(θ)を180°から引いた値を図18に示す。
表面の液滴の接触角は、界面に関わる様々な現象や機能を考える上で簡便で効果的なパラメーターとなる。これは、表面自由エネルギーと大きく関わり、表張力の異なる液滴の接触角を測定することで、液滴の表面張力との関連から臨界表面張力を得ることが可能であることを意味する。未処理PEEK表面の水接触角は85°となり、これは非常に疎水的な表面であることを示している。親水的な2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)ユニットを持つポリマー(PB-HEMA)では、表面の水接触角が72°へと低下することが認められた。
各種ポリマーで表面処理した後のPEEK基板表面をX線光電子分光(XPS)測定により分析した。XPSのチャートを図19~23に示す。各種ポリマーに特有の元素ピークが確認された。
Claims (11)
- 芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマーを塗布し、これに250nm~480nmの波長で光照射することを特徴とする芳香族ポリエーテルケトン基材の表面改質方法であって、
炭化水素系ポリマーが、次式(1):
で示されるもの、
次式(2):
次式(3):
- 芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマーを塗布し、これに250nm~480nmの波長で光照射することを特徴とする、芳香族ポリエーテルケトン基材と炭化水素系ポリマーとのポリマー複合体の製造方法であって、
炭化水素系ポリマーが、次式(1):
で示されるもの、
次式(2):
次式(3):
- 芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンである請求項1又は2に記載の方法。
- 芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトンである請求項1又は2に記載の方法。
- 芳香族ポリエーテルケトン基材の表面に炭化水素系ポリマー薄膜が水素引き抜き反応に基づく共有結合で固定化されたポリマー複合体であって、
炭化水素系ポリマーが、次式(1):
で示されるもの、
次式(2):
次式(3):
- 芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトンエーテルケトンケトンである請求項7に記載の複合体。
- 芳香族ポリエーテルケトンが、ポリエーテルエーテルケトンである請求項7に記載の複合体。
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