JP7281986B2 - 飲食品の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、飲食品の香り、特に、飲食中に喉から鼻に抜けて感じる香りである、レトロネーザルアロマの評価方法に関する。
ヒトが感知する飲食品の香りには、外部から鼻を通して感じる「オルソネーザルアロマ(鼻腔香気、たち香)」と、口やのどを経て感じる「レトロネーザルアロマ(口腔香気、口中香、後香)」とがあり、飲食品のおいしさには、レトロネーザルアロマの寄与が大きいと言われている。
そこで、飲食品の香りを分析、評価する際に、例えば、飲食中に鼻から排出される香気を捕集し、捕集された香気成分をガスクロマトグラフィーを用いて分析することが特許文献1に開示されている。
また、飲食品の香りを評価する方法としては、例えば、匂いセンサを利用した匂い識別装置を用いて、クラスタ分析等が行われることが特許文献2に開示されている。
特開2009-031138号公報 特許第3901137号
しかしながら、特許文献1に開示されたガスクロマトグラフィーを用いた分析では、匂いを発する気体の組成分析を行うことができるものの、匂いの要因となる物質が非常に多く存在するため、解析に多くの時間を要することが課題の一つとして挙げられる。
また、特許文献2では、複数の匂いの類似性等を判定することができる。しかし、飲食品から発せられるにおいは、ヒトが感じる飲食品の匂いとは異なる。このため、特許文献2ではヒトが感じる飲食品の風味に相応した風味評価を行うことができないことが課題の一例として挙げられる。
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、ヒトが感じる飲食品の風味に相応した風味評価を、客観的、且つ、簡便に行うことが可能な飲食品の評価方法を提供することを課題の1つとする。
上記目的を達成するため、本発明の飲食品の評価方法は、成分Bを含有する飲食品Aのレトロネーザルアロマを試料ガスaとし、前記飲食品Aと同種の飲食品であり、かつ前記成分Bを含有する飲食品Cのオルソネーザルアロマ、前記成分Bのオルソネーザルアロマ、又は前記飲食品Aのオルソネーザルアロマを基準ガスbとし、互いに異なる匂い成分の応答特性を有する複数の匂いセンサを備えた匂い分析装置を用いて、前記試料ガスa及び前記基準ガスbの複数の前記匂い成分に関する分析を行う工程と、前記匂い分析装置による前記試料ガスaの分析結果及び前記基準ガスbの分析結果に基づいて、前記試料ガスaの前記基準ガスbに対する匂いの類似度及び前記試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求める工程と、を含むことを特徴とする。
ここで本発明においては、便宜上、レトロネーザルアロマとは、ヒトが飲食品を口に入れたときに当該飲食品の香り成分が揮発して、そのヒトが飲み込むときに、喉の奥から鼻腔に抜けて感じる香りをいう。香りは、嗅覚を刺激する物質である。本発明において、飲食品をヒトが摂取した後、当該ヒトの鼻腔から排出されたガスをレトロネーザルアロマとする。
また、オルソネーザルアロマとは、飲食品もしくは当該飲食品の成分から発せられる香りをいう。本発明において、口腔や鼻腔等のヒトの器官を介さずに飲食品もしくは当該飲食品が含有する成分から直接採取されるガスをオルソネーザルアロマとする。
飲食品の風味は、食したときに鼻腔から抜け出る気体が嗅覚器に作用して感じられる匂い、すなわちレトネーザルアロマの要因に大きく影響を受ける。本発明の飲食品の評価方法によれば、当該気体を、異なる応答特性を有する複数の匂いセンサを備えた匂い分析装置にかけて、試料ガスaの基準ガスbに対する匂いの類似度及び試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求めることにより、ヒトが感じる風味に相応した風味評価を、客観的、且つ、簡便に行うことができる。
また、飲食品Aに含まれる成分Bから採取した気体を基準ガスbとすることにより、飲食品Aにおける成分Bの匂いの寄与の程度を客観的に評価できる。さらに、成分Bを含有する飲食品Cから採取した気体を基準ガスbとすることにより、飲食品Aの匂いに対する成分Bの寄与を飲食品Cの匂いに対する成分Bの寄与と比較して客観的に評価することが可能となる。さらにまた、飲食品Aから直接採取した気体を基準ガスbとすることにより、食したときに鼻腔から抜け出る気体の臭いがどのように変化しているかを評価することができる。
また、飲食品Aを食したときに鼻腔から抜け出る気体から採取された試料ガスaの匂いを、成分Bに由来する本来の匂いと比較することができる。
本発明の飲食品の評価方法において、成分Bを含有する飲食品Aのレトロネーザルアロマを試料ガスaとし、前記飲食品Aと同種の飲食品であり、かつ前記成分Bを含有する飲食品Cのレトロネーザルアロマ、又は前記成分Bのレトロネーザルアロマを基準ガスbとし、互いに異なる匂い成分の応答特性を有する複数の匂いセンサを備えた匂い分析装置によって、前記試料ガスa及び前記基準ガスbの複数の前記匂い成分に関する分析を行う工程と、前記匂い分析装置による前記試料ガスaの分析結果及び前記基準ガスbの分析結果に基づいて、前記試料ガスaの前記基準ガスbに対する匂いの類似度及び前記試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求める工程と、を含むことを特徴とする。
このような態様によれば、飲食品Aと、成分B又は飲食品Cとのレトロネーザルアロマを比較して評価することができる。
ここで本発明においては、便宜上、レトロネーザルアロマとは、ヒトが飲食品を口に入れたときに当該飲食品の香り成分が揮発して、そのヒトが飲み込むときに、喉の奥から鼻腔に抜けて感じる香りをいう。香りは、嗅覚を刺激する物質である。本発明において、飲食品又は当該飲食品の成分をヒトが摂取した後、当該ヒトの鼻腔から排出されたガスをレトロネーザルアロマとする。
本発明の飲食品の評価方法において、前記基準ガスbは、前記飲食品Cのオルソネーザルアロマ又はレトロネーザルアロマであり、前記飲食品Aは、成分Dを含有し、前記飲食品Cは、前記成分Dを含有しないようにしてもよい。
上記態様によれば、飲食品Aのレトロネーザルアロマに対する成分Bの寄与について、成分Dが与える影響を客観的に評価することができる。
ここで、飲食品中に含有される成分には、それ自体が強い風味を感じさせない場合でも他の成分の風味に影響して風味を覆い隠す、いわゆる「マスキング」効果を有する成分が知られている。従来では、油脂、特にそれ自体風味の弱い精製油脂のマスキング効果に関しては、官能評価以外の有効な評価方法が見出されていなかった。
この態様によれば、例えば、成分Dが、飲食品Aのレトロネーザルアロマに対する成分Bの寄与を低くするマスキング物質であれば、成分Dのマスキング効果を客観的に評価できる。また、成分Bの匂いが飲食品にとって好ましい香りである場合、成分Dが成分Bの香りを引き立たせるか否かを客観的に評価することができる。
本発明の飲食品の評価方法において、前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、前記試料ガスaと前記基準ガスbの匂いの類似度は、前記n個のセンサの検出値をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記試料ガスaに対応する該ベクトルと、前記基準ガスbに対応する該ベクトルとがなす角度を求めることにより決定されるようにしてもよい。
このような態様によれば、試料ガスaと基準ガスbの匂いの類似度を客観的に評価できる。
本発明の飲食品の評価方法において、前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、前記試料ガスaにおける、前記基準ガスbに対応する匂いの強度は、前記n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記試料ガスaの該ベクトルの長さに、前記基準ガスbに対する試料ガスaの類似度を乗じることにより決定されるようにしてもよい。
このような態様によれば、試料ガスaの基準ガスbに対応する匂いの強さを客観的に評価できる。
本発明の飲食品の評価方法において、前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、前記試料ガスaにおける前記基準ガスbに対応する匂いの強度は、前記n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記基準ガスbに対する該ベクトルへの、前記試料ガスaの該ベクトルの正射影ベクトルの長さとして決定されるようにしてもよい。
このような態様によれば、試料ガスaの基準ガスbに対応する匂いの強さを客観的に評価できる。
本発明の飲食品の評価方法において、連続する複数の期間において、前記期間ごとに採取された前記飲食品Aのレトロネーザルアロマを試料ガスaとするようにしてもよい。ここで複数の期間とは、飲食品Aを食した後の経過時間を変えて採取したり、咀嚼時間や回数などを変えて採取することを意味する。
例えば、食した後の経過時間の異なる3つの期間において、当該期間ごとの飲食品Aのレトロネーザルアロマのそれぞれを試料ガスaとして分析する。その結果、飲食品Aを食したときのレトロネーザルアロマの経時変化を分析することが可能となる。例えば、飲食品を食した際に数十秒経ってから感じられる後香のみを分析することが可能となる。
本発明によれば、飲食品Aのレトロネーザルアロマである試料ガスaの基準ガスbに対する匂いの類似度及び試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求めることにより、ヒトが感じる飲食品Aの風味に相応した風味評価を、客観的、且つ、簡便に行うことが可能となる。
匂い分析装置の構成例を示すブロック図である。 図1のセンサ部の平面図である。 図1のデータ処理部によるデータ処理の一例を説明する説明図である。 飲食品の評価方法の手順を示すフローである。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る飲食品の評価方法の一実施形態について説明する。
本発明に係る飲食品の評価方法は、試料ガスa及び基準ガスbを匂い分析装置100を用いて、匂いの成分に関する分析を行い、試料ガスaの基準ガスbに対する匂いの類似度及び試料ガスaにおける基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、すくなくともいずれかを求める。
<試料ガスa及び基準ガスbの採取>
試料ガスaとしては、成分Bを含む飲食品Aをヒトが食したときに当該ヒトの鼻腔から抜け出る気体、いわゆるレトロネーザルアロマを採取したものが用いられる。
飲食品Aは、例えば、原材料を加工又は調理することによって得られる食品及び飲料を含む。食品としては、例えば、牛乳を加工して得られるチーズ、バター等の乳製品類、アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類のような冷菓、和菓子類、洋菓子類、ジャム類、キャンディー類、ゼリー類、ガム類、パン類、カレー、シチュー、和風スープ、洋風スープ及び中華スープのようなスープ類、風味調味料、インスタント食品類、スナック食品類、介護食品類などが挙げられる。
飲料としては、特に限定されないが、緑茶、抹茶又は紅茶などの茶飲料、コーヒー、ココア、炭酸飲料、果汁飲料、スポーツドリンク及びフレーバーウォーター(ニアウォーター)などの清涼飲料水、ジン、ウォッカ、ウィスキー、焼酎等の蒸留酒類、ワイン及び日本酒などの醸造酒類、ビール、発泡酒、低アルコールビールおよびノンアルコールビールなどのビール類といった飲料類が挙げられる。
飲食品Aは油脂を含有することが好ましく、より好ましくは精製工程を経た油脂を含有することが好ましい。これにより、油脂、特に精製工程を経た油脂が風味に与える影響を評価することができる。
精製工程とは、搾油された油脂が有する特有の風味を取り除くために通常適用される、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程を指し、この中でも、少なくとも脱臭工程を経た油脂を含有することが好ましい。
ここで脱臭工程は、通常食用油脂に適用されるように、減圧下、160~270℃に加熱された油脂を水蒸気に接触させる、いわゆる水蒸気蒸留を含む工程であることが好ましい。
成分Bとしては、飲食品Aの原料、特には風味付与に最も寄与している原料が挙げられる。例えば、飲食品Aがカレーである場合は、カレー粉、カレールー等が挙げられる。例えば、飲食品Aがバターを用いたバタークリームである場合には、バター等が挙げられる。尚、成分Bは、飲食品Aの原料に限られず、例えば、食品Aに含まれる、風味付与に寄与する成分であってもよい。風味付与に寄与する特定成分は、例えば、アルカン類、アルケン類、アルキン類、カルボニル化合物、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸無水物、エステル類、ヒドロペルオキシド類、エーテル類、エポキシド類、ラクトン類、アミド類、ラクタム類、イミド類、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素芳香族化合物、ハロゲン化物、アルコール類、フェノール類、エステル類、ヒドロペルオキシド類、エーテル類、エポキシド類、窒素化合物、アミン類、ニトロ化合物、ジアゾ化合物、アゾベンゼン類、アジド化合物、ニトリル類、イソニトリル類、シアナート類、イソシアナート類、チオシアナート類、イソチオシアナート類、硫黄化合物、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルホン酸類、スルホン酸エステル類、スルホン酸アミド類、チオカルボン酸S-エステル類、リン化合物等が挙げられる。風味付与に寄与する成分は、一の成分に限られず、複数の成分を併せた成分群でもよい。
基準ガスbとしては、飲食品A、成分B、又は成分Bを含有する飲食品Aと同種の飲食品Cから発せられるガスを直接採取した、いわゆるオルソネーザルアロマ、若しくは、成分B又は飲食品Cのレトロネーザルアロマが用いられる。同種の食品とは、例えば飲食品Aがカレーであればカレー、飲食品Aがチーズであればチーズなど、飲食品Aと同じ種類の食品を意味する。
<分析装置の構成>
図1は、匂い分析装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、匂い分析装置100は、試料を吸引するための吸入部10を有する。
吸入部10は、匂い分析装置100において分析対象となる気体、すなわち、試料ガスa又は基準ガスbを吸入する。試料ガスa又は基準ガスbは、例えば、差込口を有するサンプルバッグ(図示せず)ごとに封入されている。吸入部10は、サンプルバッグに設けられた差込口と嵌合する嵌合孔を有する。
前処理部20は、吸入部10から吸入された気体に対して前処理を施す。具体的には、前処理部20では、気体の濃縮又は希釈、気体に含まれている水分や妨害ガスの除去等が行われる。
センサ部30は、前処理部20で処理された気体に含有されている成分を検出する複数の匂いセンサ(図示せず)を有する。
ポンプ40は、吸入部10、前処理部20及びセンサ部30に対し負圧を発生させる。従って、ポンプ40が稼働することによって、吸入部10から吸入された気体は、前処理部20及びセンサ部30を通過する。
排出部50は、ポンプ40によって吸入部10から吸入された気体を匂い分析装置100の外部に排出する排出口(図示せず)を有する。
A/D変換部60は、センサ部30の複数の匂いセンサが検知した検知信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
制御部70は、匂い分析装置100の全体の動作を制御する。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータによって実現される。
制御部70は、ポンプ40の稼働の制御を行う。制御部70は、例えば、ポンプ40によって作用される負圧を制御することにより、吸入部10から吸入される気体の流速を制御する。
制御部70は、A/D変換部60で変換されたデジタル信号に対してデータ処理を行うデータ処理部71を含む。データ処理部71は、デジタル信号に対してデータ処理を行い、データ分析を行う。具体的には、データ処理部71は、試料ガスの基準ガスに対する類似度及び試料ガスにおける基準ガスに対応する強度のうち、少なくともいずれか一方を分析することが可能である。
表示部80は、データ処理部71によって分析された分析データを表示可能な液晶モニターである。尚、表示部80は、タッチパネルを搭載し、ユーザからの入力情報を受け付けるようにしてもよい。
図2は、センサ部30を模式的に表した上面を示している。図2に示すように、センサ部30は、基板上に搭載された9つの匂いセンサ31a~31iを有する。
9つの匂いセンサ31a~31iの各々は、例えば、検出対象の匂い成分に応じて抵抗値が変化する金属酸化物半導体センサである。匂いセンサ31a~31iの各々は、金属酸化物半導体センサ以外には、例えば、導電性高分子センサや、水晶振動子又はSAW(Surface Acoustic Wave)デバイスの表面にガス吸着膜を形成したセンサなど、他の検出メカニズムによるセンサを用いることができる。
9つの匂いセンサ31a~31iの各々は、気体に含有されている互いに異なる匂い成分を検出する。言い換えれば、気体に含有されている互いに異なる匂い成分の検出強度が異なる。例えば、匂いセンサ31aは、硫化水素を強く検出する。匂いセンサ31bは、硫化系を強く検出する。匂いセンサ31cは、アンモニアを強く検出する。匂いセンサ31dは、炭化水素系を強く検出する。匂いセンサ31eは、芳香族系を強く検出する。匂いセンサ31fは、アミン系を強く検出する。匂いセンサ31gは、エステル系を強く検出する。匂いセンサ31hは、アルデヒド系を強く検出する。匂いセンサ31iは、有機酸系を強く検出する。
<試料ガスの基準ガスに対する匂いの類似度及び試料ガスにおける基準ガスに対応する匂いの強度の分析>
1種類の匂いをn個(nは2以上の整数)の匂いセンサで測定すると、各々の匂いセンサからそれぞれ検出信号、すなわち、n個のデータが得られる。これらのn個のデータは数学的には、n次元数空間における1つの点で表される。例えば濃度のみが相違する同一の匂いガスをそれぞれ測定すると、n次元数空間内では濃度変化に伴って点がある一方向に移動する。したがって、これらの点を繋ぐと、1本の線(直線又は曲線)或いはベクトルとして考えることができる。
本実施形態においては、センサ部30は、9個の匂いセンサ31a~31iを有する。9個の匂いセンサ31a~31iの各々は、試料ガスa及び基準ガスbの匂いの強さを測定し、その測定結果を制御部70に出力する。
本実施形態においては、1回の測定につき、1の匂いセンサから1の測定データが得られる。このため、9個の測定データがセンサ部30から制御部70に送られる。
制御部70では、センサ部30から送られてきた9個のデータの各々が記憶装置(メモリ、HDD等)に格納される。これら9個のデータは、9個の匂いセンサの出力により形成される9次元数空間における1本のベクトルを構成すると考えることができる。
図3は、制御部70のデータ処理部71によるデータ処理の一例を示している。図3においては、説明の簡略化のため匂いセンサ31a及び匂いセンサ31bによって表される2次元数空間が示されている。
ベクトルB1は、匂いセンサ31a及び匂いセンサ31bの試料ガスaの検出値に基づいて表されている。
ベクトルB2は、匂いセンサ31a及び匂いセンサ31bの基準ガスbの検出値に基づいて表されている。
ベクトルB1がベクトルB2と成す角度θ1は、試料ガスaの基準ガスbに対する類似度を示している。すなわち、角度θ1が0度に近づくほど、両者の匂いは類似するといえる。また、角度θ1が180度に近づくほど、両者の匂いは類似しないといえる。
従って、制御部70のデータ処理部71は、n個のセンサの検出値をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、試料ガスaに対応するベクトルB1と、基準ガスbに対応するベクトルB2とがなす角度θ1を求めることにより、試料ガスaと前記基準ガスbの匂いの類似度を決定する。
また、制御部70のデータ処理部71は、n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、試料ガスaのベクトルB1の長さに、基準ガスbに対する試料ガスaの類似度を乗じることにより、試料ガスaにおける、基準ガスbに対応する匂いの強度を決定する。
ベクトルB3は、ベクトルB1のベクトルB2への正射影ベクトルを示している。正射影ベクトルB3の大きさは、試料ガスaにおける基準ガスbの匂いの寄与率と考えることができる。
制御部70のデータ処理部71は、試料ガスaにおける基準ガスbに対応する匂いの強度を、n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、試料ガスaのベクトルB1の、基準ガスbに対するベクトルB2への正射影ベクトルの長さとして決定するようにしてもよい。
<飲食品の評価方法>
図4は、飲食品Aの評価方法の手順を示している。図4に示すように、まず、基準ガスbの採取が行われる(ステップS01)。基準ガスbは、上述したように、飲食品A、成分B若しくは飲食品Aと同種の飲食品Cから直接ガスを採取又は、成分B若しくは飲食品Aと同種の飲食品Cをヒトが食したときにヒトの鼻腔から抜け出る気体を採取することによって行われる。
基準ガスbが、飲食品A自体、飲食品Aに含まれる成分B、又は該成分Bを含有する飲食品Cから直接採取したものであれば、飲食品Aを食したときに鼻腔から抜け出る気体から採取された試料ガスaの匂いを、成分Bに由来する本来の匂いと比較することができる。
また、基準ガスbとして、飲食品Aに含まれる成分B、又は該成分Bを含有する飲食品Cを食したときに鼻腔から抜け出る気体から採取したものを用いることにより、飲食品Aを食したときに感じる匂いと、飲食品Aに含まれる成分B、又は該成分Bを含有する飲食品Cを食したときに感じる匂いとを比較して評価することができる。
続いて、基準ガスbの測定が行われる(ステップS02)。基準ガスbの測定は、匂い分析装置100を用いて行われる。匂い分析装置100においては、基準ガスbの臭い成分に関する分析が行われる。当該分析に基づいて、基準ガスbのベクトルB2が生成される。
また、試料ガスaの採取が行われる(ステップS03)。試料ガスaの採取は、上述したように、成分Bを含む飲食品Aをヒトが食したときにヒトの鼻腔から抜け出る気体を採取することによって行われる。
続いて、試料ガスaの測定が行われる(ステップS04)。試料ガスaの測定は、匂い分析装置100を用いて行われる。匂い分析装置100においては、試料ガスaの臭い成分に関する分析が行われる。当該分析に基づいて、試料ガスaのベクトルB1が生成される。
最後に、試料ガスaの基準ガスbに対する類似度及び/又は試料ガスaにおける基準ガスbに対応する匂いの強度が算出される(ステップS05)。試料ガスaの基準ガスbに対する類似度は、上述したようにベクトルB1がベクトルB2と成す角度に基づいて決定される。
なお、ステップS01、S02と、ステップS03、S04とは、順序を変えて、例えばS03→S04→S01→S02で行ってもよく、並行して行ってもよい。
また、試料ガスaにおける基準ガスbに対応する匂いの強度は、試料ガスaのベクトルB1の長さに、基準ガスbに対する試料ガスaの類似度を乗じる又は、ベクトルB1のベクトルB2への正射影ベクトルの長さとして決定される。
以上のように、本実施形態にかかる飲食品の評価方法によれば、飲食品Aのレトロネーザルアロマである試料ガスaの基準ガスbに対する匂いの類似度及び試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求めることにより、ヒトが感じる飲食品Aの風味に相応した風味評価を、客観的、且つ、簡便に行うことが可能となる。
また、上記結果を、飲食品Aに含まれる成分B、又は該成分Bを含有する飲食品Cから採取した基準ガスbを用いて得られた結果と比較することにより、飲食品Aによって成分Bの匂いがどのように変化しているかを客観的に評価することが可能となる。
また、飲食品Aから直接採取した気体を基準ガスbとすることにより、食したときに鼻腔から抜け出る気体の臭いがどのように変化しているかを評価することができる。
尚、飲食品Aは、成分Dを含有し、飲食品Cは、成分Dを含有しないようにしてもよい。このようにすることで、試料ガスaに含まれる成分Dによる成分Bの匂いの変化を客観的に評価することができる。例えば成分Dが成分Bのマスキング物質であれば、そのマスキング効果を客観的に評価できる。また、成分Bが食品にとって好ましい匂い(香り)を発する場合には、成分D添加することにより、成分Bに由来する好ましい匂いがどのように変化するかを評価することができる。この態様においては、飲食品Cは、成分Bを含有し、成分Dを含有しない以外は、風味に寄与する原料の有無が飲食品Aと同様であることが好ましい。
本実施形態において、飲食品Aは油脂を含有することが好ましく、より好ましくは前記油脂が上述の精製工程を経た油脂であること、さらに好ましくは前記油脂が少なくとも上述の脱臭工程を経た油脂であることが好ましい。また、好ましくは前記飲食品Aに含有される前記油脂は、成分Dである。
2種類のカレーソース1及びカレーソース2を作成し、カレーソース1及びカレーソース2の風味の比較評価を行った。カレーソース1及びカレーソース2の原材料を表1に示す。尚、表中の数値の単位は重量部である。
Figure 0007281986000001
カレーソース1及びカレーソース2は、以下に工程にて調製した。
工程1-1)カレー粉と水をボウルに入れて混合した。
工程1-2)200℃に熱した油脂(なたね油又はクリアエール)を工程1-1の混合物に投入した。
工程1-3)1時間静置後に上澄みを遠沈管に回収した。
工程1-4)5000rpmで5分遠心分離した後に、上澄み液を回収した。以後の表記でカレーソース1とは、工程1-4)で得られたカレーソース1の上澄み液のことをいう。カレーソース2とは、工程1-4)で得られたカレーソース2の上澄み液のことをいう。
<レトロネーザルアロマ分析1>
匂い分析装置100として、匂い識別装置(株式会社島津製作所:型式FF-2020)を使用した。また、測定は、当該装置の絶対値表現モードにて、匂い識別装置に設定されている9種の標準ガス(硫化水素、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、プロピオン酸、ブチルアルデヒド、酢酸ブチル、トルエン、n-ヘプタン)に対する9次元数空間上の合算ベクトルを求めることにより行った。後述する以後のレトロネーザルアロマ分析2及びレトロネーザルアロマ分析3についても上記の匂い識別装置を用い、上記の測定条件と同条件で測定した。
カレーソース1の試料ガス1は、次のようにして採取した。
一の試験者に常温のカレーソース1を口に含ませ、かつ飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップともいう)、30-60秒の鼻息(ミドルともいう)、60-90秒の鼻息(ラストともいう)をサンプルバッグにそれぞれ回収した。トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれを試料ガス1とした。トップ、ミドル及びラストの試料ガス1の各々を匂い識別装置に導入した。
カレーソース1の基準ガス1は、次のようにして採取した。
常温のカレーソース1を1g、サンプルバッグに封入し、当該サンプルバッグ内の空気、すなわちオルソネーザルアロマを基準ガス1として用いた。
カレーソース2の試料ガス2は、常温のカレーソース2について、カレーソース1同様の方法で得た。
カレーソース2の基準ガス2は、常温のカレーソース2を1g、サンプルバッグに封入し、当該サンプルバッグ内の空気、すなわちオルソネーザルアロマを基準ガス2として用いた。
試料ガス1(トップ)、(ミドル)、(ラスト)の基準ガスとして基準ガス1、試料ガス2(トップ)、(ミドル)、(ラスト)の基準ガスとして基準ガス2を用いた。
試料ガス1の基準ガス1に対する類似度及び試料ガス2の基準ガス2に対する類似度を求めた。類似度は、匂い識別装置に設定されているユーザーモードのCoarseモードを用いて、基準ガスのベクトルと試料ガスのベクトル間の角度に基づき、類似度%として換算した。
<レトロネーザルアロマ分析2>
表1の配合に用いたカレー粉を、常温でサンプルバッグに封入し、バッグ内の空気を採取し、基準ガス3として用いた。
試料ガス1(トップ)、(ミドル)、(ラスト)の基準ガス及び試料ガス2(トップ)、(ミドル)、(ラスト)の基準ガスとして、基準ガス3を用いそれぞれ基準ガス3に対応する匂いの強度を求めた。
基準ガスに対応する匂いの強度は、匂い識別装置に設定されているスタンダードモードによる測定結果から、以下のように求めた。
まず、基準ガス3と各試料ガスの類似度を、レトロネーザルアロマ分析1と同様にして求めた。次に、基準ガス3の臭気指数(対数で表される)を、匂い識別装置に設定されている9種の標準ガス(硫化水素、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、プロピオン酸、ブチルアルデヒド、酢酸ブチル、トルエン、n-ヘプタン)に対する9次元数空間上の合算ベクトルの長さとして、スタンダードモードを用いて求めた。次に得られた基準ガス3の臭気指数を、臭気濃度(指数で表される)に変換した。
匂い識別装置における測定時に、基準ガス3および各試料ガスは、センサ総合出力がほぼ同一となるようにガス濃度を希釈または濃縮して測定する設定となっているため、求められた基準ガス3の臭気濃度に、基準ガス3と各試料ガスの間の希釈・濃縮倍率を乗除することで、基準ガス3に対応する臭気が試料ガスの臭気の全てであると仮定された場合の、試料ガスの臭気濃度を求めることができる。
こうして得られた各試料ガスの、全てが基準ガス3に対応する臭気であると仮定された臭気濃度を、臭気指数(対数で表される)に変換し、これに対して、基準ガス3に対する各試料ガスの類似度を乗じ、各試料ガスにおける基準ガス3に対応する匂いの強度(臭気指数相当値)とした。
<評価>
レトロネーザルアロマ分析1及び2の分析結果及び、官能評価を表2に示す。官能評価は、常温のカレーソース1およびカレーソース2をパネル10名に食してもらい、風味が強いと感じるカレーソース、スパイス感が強いと感じるカレーソースを選択してもらった。
Figure 0007281986000002
レトロネーザルアロマ分析1より、すなわち、表2に示すように、カレーソース2の方がカレーソース1よりも、トップ、ミドル及びラストのいずれにおいても摂食前の香りをレトロネーザルアロマとして、より感じやすいことが示唆された。この関係性は、トップ、ミドル及びラストのいずれにおいても同じ傾向を示した。また、官能評価で得られたように、カレーソース2の方がカレーソース1よりも風味が強いことと一致する結果であった。
レトロネーザルアロマ分析2より、カレーソース2の方が、カレーソース1よりもカレー粉の香りをレトロネーザルアロマとしてより感じやすいことが示唆された。この関係性は、トップ、ミドル及びラストのいずれにおいても同じ傾向を示した。また、官能評価で得られたように、カレーソース2の方がカレーソース1よりもスパイス感を感じやすいことと一致する結果であった。また、クリアエールよりも、なたね油の方が、カレー粉の風味をマスキングする効果が大きいことが示唆された。
3種類のガレット1、ガレット2及びガレット3を作成し、ガレット2及びガレット3の風味の比較評価を行った。ガレット1乃至ガレット3の原材料を表3に示す。尚、表中の数値の単位は重量部である。
Figure 0007281986000003
ガレット1乃至ガレット3は、以下の工程にて調製した。
工程2-1)油脂と粉糖、食塩を混合した。
工程2-2)卵黄を2回に分けて加え、混合した。
工程2-3)小麦粉とベーキングパウダーを併せて篩にかけ、工程2-2)の混合物に加えた。
工程2-4)工程2-3)後の混合物を冷蔵庫で1時間冷却した。
工程2-5)工程2-4)後の混合物を厚さ10mmに延ばし、φ50mmの丸型で抜いて成型した。
工程2-6)工程2-5)後の成型物をφ5.5cmのセルクル型にはめて150℃で焙焼した。
<レトロネーザルアロマ分析3>
ガレット2の試料ガス3は、次のようにして採取した。
一の試験者にガレット2を3g口に含ませ、飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップ)、30-60秒の鼻息(ミドル)、60-90秒の鼻息(ラスト)をサンプルバッグにそれぞれ回収し、トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれを試料ガス3として得た。トップ、ミドル及びラストの試料ガス3をそれぞれ分析装置に導入した。
ガレット3の試料ガス4は、次のようにして採取した。
一の試験者にガレット3を3g口に含ませ、飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップ)、30-60秒の鼻息(ミドル)、60-90秒の鼻息(ラスト)をサンプルバッグにそれぞれ回収し、トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれを試料ガス4として得た。トップ、ミドル及びラストの試料ガス4をそれぞれ分析装置に導入した。
ガレット1の基準ガス4は、次のようにして採取した。
ガレット1を10g、サンプルバッグに封入し、当該サンプルバッグ内の空気、すなわちオルソネーザルアロマを基準ガス4として匂い識別装置に導入した。
ガレット2及びガレット3から得られたレトロネーザルアロマ、すなわち試料ガス3及び試料ガス4について、基準ガス4に対する類似度及び基準ガス4に対応する匂いの強度を匂い識別装置を用いて求めた。類似度および基準ガスに対応する匂いの強度(臭気指数相当値)は実施例1と同様の方法で求めた。
<評価>
レトロネーザルアロマ分析3の分析結果及びその官能評価を表4に示す。官能評価は、ガレット1乃至ガレット3をパネル10名に食してもらい、ガレット2及びガレット3の風味を比較し、ガレット1に風味が近いもの、及びバター感(バターの風味)を強く感じるものを選択してもらった。
Figure 0007281986000004
レトロネーザルアロマ分析3より、すなわち、表4に示すように、ガレット3の方がガレット2よりも、油脂としてバターのみを用いたガレット1の風味に類似していることが示唆された。また、官能評価で得られたように、ガレット3の方がガレット2よりもバター感を強く感じることと一致する結果であった。特に、基準ガスに対応する匂いの強度がこの関係をより顕著に表した。また、このことから、マーガレットV(ショートニング)の方がカノーアショート(ショートニング)よりもバターの風味に対してマスキング効果が大きいことが示唆された。
3種類のクリーム1、クリーム2及びクリーム3を作成し、クリーム2及びクリーム3の風味の比較評価を行った。クリーム1乃至クリーム3の原材料を表5に示す。尚、表中の数値の単位は重量部である。
Figure 0007281986000005
クリーム1乃至クリーム3は、以下の工程にて調製した。
工程3-1)クリーム1についてはバターを、クリーム2及びクリーム3についてはバター及びショートニング(マーガレットV又はカノ―アショート)を、それぞれ室温に調温した。
工程3-2)工程3-1の原材料をホバートミキサーで撹拌して混合した。当該攪拌工程は、原材料がクリーム状になるまで行った。
<レトロネーザルアロマ分析4>
クリーム2の試料ガス5は、次のようにして採取した。
一の試験者にクリーム2を5g口に含ませ、飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップ)、30-60秒の鼻息(ミドル)、60-90秒の鼻息(ラスト)をサンプルバッグにそれぞれ回収し、トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれを試料ガス5として得た。トップ、ミドル及びラストの試料ガス5をそれぞれ分析装置に導入した。
クリーム3の試料ガス6は、次のようにして採取した。
一の試験者にクリーム3を5g口に含ませ、飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップ)、30-60秒の鼻息(ミドル)、60-90秒の鼻息(ラスト)をサンプルバッグにそれぞれ回収し、トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれを試料ガス6として得た。トップ、ミドル及びラストの試料ガス6をそれぞれ分析装置に導入した。
クリーム1の基準ガス5は、次のようにして採取した。
10gのクリーム1をサンプルバッグに封入し、当該サンプルバッグ内の空気、すなわちオルソネーザルアロマを基準ガス5として匂い識別装置に導入した。
クリーム2及びクリーム3から得られたレトロネーザルアロマ、すなわち試料ガス5及び試料ガス6について、基準ガス5に対する類似度及び基準ガス5に対応する匂いの強度(臭気指数相当値)を匂い識別装置を用いて求めた。類似度および基準ガスに対応する匂いの強度は実施例1と同様の方法で求めた。
<レトロネーザルアロマ分析5>
試料ガス5及び試料ガス6は、レトロネーザルアロマ分析4に記載の方法で採取した。
クリーム1の基準ガス6は、次のようにして採取した。
一の試験者にクリーム1を5g口に含ませ、飲み込ませた後、0-30秒の鼻息(トップ)、30-60秒の鼻息(ミドル)、60-90秒の鼻息(ラスト)をサンプルバッグにそれぞれ回収し、トップ、ミドル及びラストの鼻息のそれぞれ、すなわちレトロネーザルアロマを基準ガス6として得た。トップ、ミドル及びラストの基準ガス6をそれぞれ分析装置に導入した。
クリーム2及びクリーム3から得られたレトロネーザルアロマ、すなわち試料ガス5及び試料ガス6について、基準ガス6に対する類似度及び基準ガス6に対応する匂いの強度を匂い識別装置を用いて求めた。類似度および基準ガス6に対応する匂いの強度は実施例1と同様の方法で求めた。
<評価>
レトロネーザルアロマ分析4及び5の分析結果並びにその官能評価を表6に示す。官能評価は、クリーム2及びクリーム3をパネル35名に食してもらい、クリーム及びクリーム3の風味を比較し、どちらがバター感(バターの風味)を強く感じるか選択してもらった。
Figure 0007281986000006
レトロネーザルアロマ分析4より、すなわち、表6に示すように、クリーム3の方がクリーム2よりも、クリーム1の風味に類似していることが示唆された。また、官能評価で得られたように、クリーム3の方がクリーム2よりもバター感を強く感じることと一致する結果であった。また、このことから、マーガレットV(ショートニング)の方がカノーアショート(ショートニング)よりもバターの風味に対してマスキング効果が大きいことが示唆された。
レトロネーザルアロマ分析5より、すなわち、表6に示すように、クリーム3の方がクリーム2よりも、クリーム1の風味に類似していることが示唆された。また、基準ガス6にクリーム1のレトロネーザルアロマを用いることにより、クリーム2及びクリーム3のクリーム1に対する類似度および、基準ガスに対応する匂いの強度の差が広まった。従って、基準ガスにレトロネーザルアロマを用いたレトロネーザルアロマ分析5の方がレトロネーザルアロマ分析4よりも風味評価に適していると考えられる。特に、レトロネーザルアロマ分析5では、クリーム3においてラストの風味の類似度、基準ガスに対応する匂いの強度が上昇する傾向をとらえることができた。
尚、レトロネーザルアロマ分析5においても、官能評価で得られたように、クリーム3の方がクリーム2よりもバター感を強く感じることと一致する結果であった。また、このことから、マーガレットV(ショートニング)の方がカノーアショート(ショートニング)よりもバターの風味に対してマスキング効果が大きいことが示唆された。

Claims (7)

  1. 成分Bを含有する飲食品Aのレトロネーザルアロマを試料ガスaとし、
    前記飲食品Aと同種の飲食品であり、かつ前記成分Bを含有する飲食品Cのオルソネーザルアロマ、前記成分Bのオルソネーザルアロマ、又は前記飲食品Aのオルソネーザルアロマを基準ガスbとし、
    互いに異なる匂い成分の応答特性を有する複数の匂いセンサを備えた匂い分析装置によって、前記試料ガスa及び前記基準ガスbの複数の前記匂い成分に関する分析を行う工程と、
    前記匂い分析装置による前記試料ガスaの分析結果及び前記基準ガスbの分析結果に基づいて、前記試料ガスaの前記基準ガスbに対する匂いの類似度及び前記試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求める工程と、を含むことを特徴とする飲食品の評価方法。
  2. 成分Bを含有する飲食品Aのレトロネーザルアロマを試料ガスaとし、
    前記飲食品Aと同種の飲食品であり、かつ前記成分Bを含有する飲食品Cのレトロネーザルアロマ、又は前記成分Bのレトロネーザルアロマを基準ガスbとし、
    互いに異なる匂い成分の応答特性を有する複数の匂いセンサを備えた匂い分析装置によって、前記試料ガスa及び前記基準ガスbの複数の前記匂い成分に関する分析を行う工程と、
    前記匂い分析装置による前記試料ガスaの分析結果及び前記基準ガスbの分析結果に基づいて、前記試料ガスaの前記基準ガスbに対する匂いの類似度及び前記試料ガスaにおける該基準ガスbに対応する匂いの強度のうち、少なくとも一方を求める工程と、を含むことを特徴とする飲食品の評価方法。
  3. 前記基準ガスbは、前記飲食品Cのオルソネーザルアロマ又はレトロネーザルアロマであり、
    前記飲食品Aは、成分Dを含有し、
    前記飲食品Cは、前記成分Dを含有しない請求項1又は2に記載の飲食品の評価方法。
  4. 前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、
    前記試料ガスaと前記基準ガスbの匂いの類似度は、前n個のセンサの検出値をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記試料ガスaに対応する該ベクトルと、前記基準ガスbに対応する該ベクトルとがなす角度を求めることにより決定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の飲食品の評価方法。
  5. 前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、
    前記試料ガスaにおける、前記基準ガスbに対応する匂いの強度は、前記n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記試料ガスaの該ベクトルの長さに、前記基準ガスbに対する試料ガスaの類似度を乗じることにより決定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の飲食品の評価方法。
  6. 前記匂い分析装置は、前記複数の匂いセンサをn(nは、2以上の整数)個有し、
    前記試料ガスaにおける、前記基準ガスbに対応する匂いの強度は、前記n個のセンサの検出値の各々をn次元数空間上のベクトルとして表わしたときの、前記基準ガスbに対する該ベクトルへの、前記試料ガスaの該ベクトルの正射影ベクトルの長さとして決定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の飲食品の評価方法。
  7. 連続する複数の期間において、前記期間ごとに採取された前記飲食品Aのレトロネーザルアロマのいずれかを試料ガスaとする、請求項1~6のいずれかに記載の飲食品の評価方法。
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