JP7279480B2 - 透湿防水布帛の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は透湿防水布帛の製造方法に関する。
含フッ素重合体を含む撥水撥油剤組成物によって表面が処理された繊維製品においては、身体からの発汗により水蒸気を放出する機能と雨の侵入を防ぐ機能を付与するため、裏面に透湿防水層が設けられることがある。
透湿防水層を有する布帛の製造方法として、コーティング法がよく知られている。コーティング法は、布帛の一方の側に透湿防水層形成用のコーティング液を塗布し、硬化して、微細な孔を有する透湿防水層を布帛上に形成する方法である。
布帛上に形成された透湿防水層は、布帛表面から容易に剥離しないことが要求される。このためには、コーティング液を布帛に塗布した際に、コーティング液がある程度、繊維内部に染み込み、透湿防水層を形成することが望ましい。
しかし、コーティング液が繊維内部に過度に浸透し、コーティング液を塗布した布帛の一方の側から他方の側に抜けると、布帛の両面に透湿防水層が形成されてしまい、布帛の表面が白化したり、意匠性及び風合いが損なわれたりする。
そのため、従来、撥水撥油剤組成物によって布帛表面を処理して、透湿防水層形成用のコーティング組成物の布帛への過度の浸透を抑制しようとしてきた。
特許文献1には、透湿防水層形成用のコーティング液の浸透及び透湿防水層の剥離を抑制できる撥水撥油剤組成物として、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基を有する単位、塩化ビニリデン又はフッ化ビニリデン単位、及び炭素数12以上の飽和炭化水素基を有するアクリレート又はメタクリレート単位を含有する共重合体と、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基を有する単位、塩化ビニリデン又はフッ化ビニリデン単位、炭素数12以上の飽和炭化水素基を有するアクリレート又はメタクリレート単位、及び塩化ビニル単位を含有する共重合体と、液状媒体とを含む撥水撥油剤組成物が記載されている。
特許文献2には、透湿防水層形成用のコーティング液の浸透が抑えられ、意匠性に優れる物品を提供できる撥水撥油剤組成物として、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基を有する単位及び塩化ビニル単位を含有し、質量平均分子量が60000以上の共重合体(X)と、水性媒体とを含む撥水撥油剤組成物が記載されている。
国際公開第2015/080060号 国際公開第2012/147700号
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載された撥水撥油剤組成物によって処理した布帛に透湿防水層形成用のコーティング液を適用して製造した透湿防水布帛は、透湿防水層の剥離強度及び撥水性の洗濯耐久性の両立が十分ではなかった。
そこで、本発明は、撥水撥油剤組成物で処理した布帛に透湿防水層を形成する際に透湿防水層形成用のコーティング組成物が裏抜けせず、剥離強度及び撥水撥油性に優れた透湿防水布帛を製造するための、透湿防水布帛の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題は以下の構成によって解決される。
[1] 含フッ素重合体、液状媒体及び界面活性剤を含む撥水撥油剤組成物を繊維基材の表面に接触させて、含フッ素重合体を含む層を前記繊維基材の少なくとも一方の表面に形成し、
前記含フッ素重合体を含む層の表面に、コーティング樹脂を含む液を接触させて、コーティング樹脂を含む透湿防水層を形成する、透湿防水布帛の製造方法であって、
前記含フッ素重合体は、式(1)で表される含フッ素化合物に基づく単位、ハロゲン化オレフィンに基づく単位及び式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位を含む重合体であって、
前記含フッ素重合体中の前記(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位の含有割合が30質量%以下であり、
式(3)で表される前記含フッ素重合体と前記コーティング樹脂とのハンセン溶解度パラメータ距離が3MPa0.5以上、15MPa0.5未満であり、
前記撥水撥油剤組成物における前記界面活性剤の合計質量に対するHydrophilic-Lipophilic Balance値が14未満であるノニオン界面活性剤の合計質量の割合が30質量%以上である、
透湿防水布帛の製造方法。
-Y-X 式(1)
式(1)中、Rは、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基であり、Yは、フッ素原子を含まない2価の有機基又は単結合であり、Xは、式(4)~(7)のいずれか1つで表される基である。
-CR=CH 式(4)
-C(O)OCR=CH 式(5)
-OC(O)CR=CH 式(6)
-OCH=CH 式(7)
ただし、式(4)~(7)中、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン原子である。
CH=C(CH)-C(O)O-R 式(2)
ただし、式(2)中、Rは炭素数1~26の脂肪族飽和炭化水素基である。
(4×(dDa-dDb)+(dPa-dPb)+(dHa-dHb)0.5 式(3)
ただし、式(3)中、dDa、dPa及びdHaは、それぞれ、含フッ素重合体のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表し、dDb、dPb及びdHbは、それぞれ、コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表す。
[2] 前記含フッ素重合体と前記コーティング樹脂とのハンセン溶解度パラメータ距離を、透湿防水布帛を製造する前に算出する、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記含フッ素重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項が15~20MPa0.5であり、極性項が5~10MPa0.5であり、水素結合項が0.5~5MPa0.5である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータの分散項が15~25MPa0.5であり、極性項が8~15MPa0.5であり、水素結合項が3~8MPa0.5である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5] 前記含フッ素重合体を含む層における前記含フッ素重合体の含有割合が50~100質量%である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6] 前記含フッ素重合体が、前記式(1)で表される含フッ素化合物に基づく単位の60~85質量%と、前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位の5~25質量%と、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位の20質量%以下とを含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7] 前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位が、塩化ビニルに基づく単位及び塩化ビニリデンに基づく単位を含み、前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位の総量に対する、前記塩化ビニルに基づく単位と前記塩化ビニリデンに基づく単位との合計の割合が80~100質量%であり、前記塩化ビニルに基づく単位と前記塩化ビニリデンに基づく単位の総量に対する、塩化ビニルに基づく単位の割合が50~100質量%である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8] 前記含フッ素重合体の数平均分子量が25,000~100,000である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9] 前記含フッ素重合体の質量平均分子量が70,000以上である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10] 前記撥水撥油剤組成物が、前記含フッ素重合体100質量部に対して、前記界面活性剤を7~9.5質量部含む、[1]~[9]のいずれか1つに記載の製造方法。
本発明によれば、撥水撥油剤組成物で処理した布帛に透湿防水層を形成する際に透湿防水層形成用のコーティング組成物が裏抜けせず、剥離強度及び撥水撥油性に優れた透湿防水布帛を製造するための、透湿防水布帛の製造方法を提供できる。
本明細書において使用される用語の意味は以下のとおりである。
「~」で表される数値範囲は、その両端の数値を含む範囲を意味する。
「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の総称であり、個別にはアクリル及びメタクリルを意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリロイルオキシ」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリルアミド」についても同様である。
数平均分子量(以下、「Mn」と記す。)及び質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量である。
具体的には、下記の方法で測定する。
後述の重合体(A)を、フッ素系溶媒(AK-225、AGC社製品名)/テトラヒドロフラン(THF)/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=6/3/14(体積比)の混合溶媒に溶解して、固形分濃度0.5質量%の溶液を調製する。
調製した溶液を0.2μmのフィルタに通し、分析サンプルとする。
分析サンプルのMn及びMwを下記条件にて測定する。
測定温度:37℃、
注入量:100μL、
流出速度:1mL/分、
溶離液:フッ素系溶媒(AK-225、AGC社製品名)/THF/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=6/3/14(体積比)の混合溶媒。
HLB値とは、界面活性剤の水と油への親和性の程度を示す、Hydrophilic-Lipophilic Balance値であり、本明細書においては、プロピレンオキシドに基づく繰り返し単位を含まないノニオン界面活性剤については、グリフィン法によって計算した値である。すなわち、(20×親水部の式量の総和/界面活性剤の分子量)により計算した値である。プロピレンオキシドに基づく繰り返し単位を有するノニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤については、デイビス法によって計算した値である。すなわち、(7+親水基の基数の総和-親油基の基数の総和)により計算した値である。HLB値は0~20の値を取る。HLB値が0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高い。2種以上の界面活性剤の混合物のHLB値は各界面活性剤の加重平均値である。
[透湿防水布帛の製造方法]
本発明の透湿防水布帛の製造方法は、撥水撥油剤組成物を繊維基材の表面に接触させて、含フッ素重合体を含む層を前記繊維基材の少なくとも一方の表面に形成し、前記含フッ素重合体を含む層の表面に、コーティング樹脂を含む液を接触させて、透湿防水層を形成する、透湿防水布帛の製造方法である。
<撥水撥油剤組成物>
撥水撥油剤組成物は、本発明の透湿防水布帛の製造方法において、含フッ素重合体(以下、「重合体(A)」と記す。)を含む層を形成するために用いられる液状組成物である。
前記撥水撥油剤組成物は、重合体(A)、液状媒体及び界面活性剤を含む。
(重合体(A))
前記重合体(A)は、含フッ素化合物(以下、「化合物(a)」と記す。)に基づく単位(以下、「単位(a)」と記す。)、ハロゲン化オレフィン(以下、「化合物(b)」と記す。)に基づく単位(以下、「単位(b)」と記す。)及び(メタ)アクリル酸エステル(以下、「化合物(c)」と記す。)に基づく単位(以下、「単位(c)」と記す。)を含む。
化合物(a)は式(1)で表される化合物である。単位(a)は、重合体(A)による撥水撥油性の発現に寄与する。
-Y-X (1)
式(1)中の記号の意味は以下のとおりである。
は、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基であり、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4~6のパーフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数4~6の直鎖状のパーフルオロアルキル基がさらに好ましい。炭素数4~6のパーフルオロアルキル基の例は、F(CF-、F(CF-、F(CF-、(CFCF(CF-であるが、これらに限定されない。Rとしては、重合体(A)の撥水撥油性がより優れる点で、F(CF-、F(CF-及びF(CF-が好ましく、F(CF-がより好ましい。
Yは、フッ素原子を含まない2価の有機基(以下、単に「2価の有機基」と記す。)又は単結合であり、2価の有機基は、炭素原子を含む2価の基である。ただし、2価の有機基と結合するXの末端原子がエーテル性酸素原子である場合には、Xと結合する2価の有機基の末端原子は炭素原子である。
2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、及び-O-、-NH-、-CO-、-S-、-SO-及び-CR11=CR12-から選択される1つ以上を末端又は炭素-炭素原子間に有するアルキレン基が好ましい。ただし、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。これらの基は直鎖状であっても、分岐状であってもよく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数2~4の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましい。
前記2価の有機基の具体例は、-CH-、-(CH-、-(CH-、-CHCHCH(CH)-、-CH=CH-CH-、-SO-CHCH-、-CHCHCH-S-CHCH-、-CHCHCH-SO-CHCH-、-L-、及び-L-OC(O)NH-L-NHC(O)O-(CH-であるが、これらに限定されない。
式中、iは2~30の整数であり、L及びLは後述する。
は、-SON(R13)-(CH-、-CONH-(CH-、及び-(CH-から選択されるいずれか1つである。ただし、R13は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、jは2-8の整数であり、kは1~20の整数である。
は非分岐のアルキレン基、非分岐かつ対称的なアリーレン基又は非分岐かつ対称的なアラルキレン基であり、-(CH-、-C-及び-C-CH-C-から選択されるいずれか1つが好ましい。-C-は1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基を表し、複数の-C-は同種のフェニレン基を表す。
Xは、式(4)~(7)のいずれか1つで表される基である。
-CR=CH (4)
-C(O)OCR=CH (5)
-OC(O)CR=CH (6)
-OCH=CH (7)
式(4)~(7)中、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、水素原子、メチル基、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、水素原子、メチル基又は塩素原子がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
Xとしては、基(6)が好ましく、-OC(O)CH=CH又は-OC(O)C(CH)=CHがより好ましい。
化合物(b)及び化合物(c)との重合性、重合体(A)を含む層の柔軟性、繊維基材に対する重合体(A)の接着性及び撥水性の発現の点から、化合物(a)としては、式(8)で表される化合物が好ましい。
-L-OC(O)-CR=CH (8)
式(8)中、Rは炭素数4~6のパーフルオロアルキル基であり、Lは単結合又は炭素数1~4の直鎖のアルキレン基であり、Rは水素原子、メチル基、フッ素原子又は塩素原子である。
重合体(A)中の単位(a)は、2種以上であってもよい。
化合物(a)の具体例は、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH、F(CF-CH-OC(O)-CH=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-C(Cl)=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-CH=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-C(Cl)=CH、F(CF-CH-OC(O)-C(CH)=CH、F(CF-CH-OC(O)-CH=CH、F(CF-CH-OC(O)-C(Cl)=CHであるが、これらに限定されない。
化合物(a)としては、撥水撥油性に優れるため、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-C(Cl)=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH、F(CF-CHCH-OC(O)-CH=CH及びF(CF-CHCH-OC(O)-C(Cl)=CHからなる群から選択される1種以上が好ましく、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH及びF(CF-CHCH-OC(O)-C(Cl)=CHからなる群から選択される1種以上がより好ましく、F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CHがさらに好ましい。
化合物(b)は、オレフィンの水素原子の1個以上をハロゲン原子に置換したものであれば特に限定されないが、炭素数2~10のオレフィンの水素原子を1個から最大で10個までハロゲン原子に置換したものが好ましい。
重合体(A)中の単位(b)は、2種以上であってもよい。
化合物(b)の具体例は、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニル、ヨウ化ビニリデンであるが、これらに限定されない。
化合物(b)としては、繊維基材に対する重合体(A)の親和性及び造膜性に優れるため、塩化ビニル又は塩化ビニリデンのいずれか一方又は両方が好ましく、塩化ビニルがより好ましい。
単位(b)が塩化ビニル単位又は塩化ビニリデン単位のいずれか一方又は両方を含む場合、単位(b)中、塩化ビニル単位及び塩化ビニリデン単位の合計の含有割合は80~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、60~100質量%がさらに好ましい。
このとき、塩化ビニル単位と塩化ビニリデン単位の総量に対する、塩化ビニル単位の質量の割合は、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。塩化ビニル単位と塩化ビニリデン単位の質量比がこの範囲内であると、重合体(A)を含む層と透湿防水層との密着性がより優れる。
化合物(c)は、式(2)で表される化合物である。単位(c)は、重合体(A)による撥水性の発現及び重合体(A)を含む層の柔軟性の発現に寄与する。
CH=C(CH)-C(O)O-R (2)
式(2)中、Rは炭素数1~26の脂肪族飽和炭化水素基である。前記脂肪族飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であってもよいし、単環式又は多環式のシクロアルキル基であってもよい。
の炭素数は、1~26であれば特に限定されないが、4~22が好ましく、6~22がより好ましい。Rの炭素数がこの範囲内であると、重合体(A)を含む層の撥水性がより優れる。
重合体(A)中の単位(c)は、2種以上であってもよい。
化合物(c)として、Rが炭素数1~10の脂肪族飽和炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルの1種以上と、Rが炭素数12~26の脂肪族飽和炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルの1種以上とを組み合わせて用いてもよい。化合物(c)としては、撥水性が良好となりやすく、剥離強度が高くなりやすい点で、Rが炭素数12~26の脂肪族飽和炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
前記化合物(c)の具体例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(別名:ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(別名:セチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(別名:ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンコイシル(メタ)アクリレート(別名:ベヘニル(メタ)アクリレート)、ドコシル(メタ)アクリレート、トリコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、ペンタコシル(メタ)アクリレート、ヘキサコシル(メタ)アクリレートであるが、これらに限定されない。
化合物(c)としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びベヘニル(メタ)アクリレートが好ましく、撥水性が良好となりやすい点で、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びベヘニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記重合体(A)は、単位(a)、単位(b)及び単位(c)の他に、さらに、その他の化合物(以下、「化合物(d)」という。)に基づく単位(以下、「単位(d)」と記す。)を含んでもよい。
重合体(A)中の単位(d)は、2種以上であってもよい。
化合物(d)は、フッ素原子を含まず、化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)と共重合可能な重合性官能基を有する。このような重合性官能基の具体例は、ビニル基及びアリル基等のエチレン性不飽和基であるが、これらに限定されない。
化合物(d)としては、化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、従来公知の単量体を用いることができる。例えば、国際公開第2015/080060号公報に記載される単量体(a5)のうち、上記化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)以外の化合物、国際公開第2012/147700号公報に記載される単量体(c)及び単量体(e)のうち、上記化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)以外の化合物を用いることができる。
化合物(d)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル(商品名「プラクセル」のFA、FMシリーズ ダイセル化学工業社製品名)、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2-ブタノンオキシム付加体、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5-ジメチルピラゾール付加体、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3-メチルピラゾール付加体、N-メチロールアクリルアミド及びネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましく、撥水性の耐久性が良好となりやすい点で、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5-ジメチルピラゾール付加体及びネオペンチルグリコールジアクリレートがより好ましい。
重合体(A)における単位(a)の含有割合は、60~85質量%が好ましく、撥水撥油性が良好となりやすい点から、65~80質量%がより好ましい。
重合体(A)における単位(b)の含有割合は、5~25質量%が好ましく、撥水撥油性が良好となりやすい点から、15~25質量%がより好ましい。
重合体(A)における単位(c)の含有割合は、30質量%以下であり、重合体(A)を含む層と透湿防水層との密着性の点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。重合体(A)における単位(c)の含有割合は、撥水性及び柔軟性の点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。重合体(A)を含む層と透湿防水層との密着性並びに透湿防水布帛の撥水性及び柔軟性の総合的バランスの点から、重合体(A)における単位(c)の含有割合は、3~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
重合体(A)における単位(a)、単位(b)及び単位(c)の含有割合(単位(a)/単位(b)/単位(c))は、60~85質量%/5~25質量%/0~20質量%が好ましく、重合体(A)を含む層と透湿防水層との密着性がより優れる点で、65~80質量%/15~25質量%/3~15質量%がより好ましい。
重合体(A)が単位(d)を含む場合の、重合体(A)に対する単位(d)の含有割合は、特に限定されないが、0.1~10質量%が好ましく、0.2~7質量%がより好ましく、0.3~5質量%がさらに好ましい。
重合体(A)のMnは、25,000~100,000が好ましく、30,000~100,000がより好ましく、35,000~100,000がさらに好ましい。
重合体(A)のMwは、70,000以上が好ましく、70,000~350,000がより好ましく、100,000~350,000がさらに好ましく、150,000~350,000がいっそう好ましい。
重合体(A)は、上述したMnの範囲及びMwの範囲の少なくとも一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
重合体(A)のMn及びMwのうち少なくとも一方が上記範囲内であると、重合体(A)を含む層の撥水撥油性がより優れるとともに、撥水撥油剤組成物の造膜性がより良好になり、透湿防水層を形成する際に、コーティング樹脂(C)を含む液が繊維基材に過度に浸透しにくくなる。
重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、重合開始剤の存在下、液状媒体中にて、上述した化合物を含む単量体成分を重合して、重合体(A)を含む溶液、分散液又はエマルションを得る方法によって製造できる。
単量体成分の重合法は、特に限定されず、溶液重合法、分散重合法、乳化重合法又は懸濁重合法が好ましく、乳化重合がより好ましい。また、前記重合法は、それぞれ、一括重合であってもよいし、多段重合であってもよい。
重合体(A)の乳化重合では、界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中にて、上述した化合物を含む単量体成分を乳化重合し、重合体(A)のエマルションを得る方法が好ましい。
重合体(A)の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体成分、界面活性剤及び水性媒体からなる混合物をあらかじめ乳化することが好ましい。例えば、単量体成分、界面活性剤及び水性媒体からなる混合物を、超音波撹拌装置、ホモミキサー又は高圧乳化機で混合分散する。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性又は油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水性媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は20~150℃が好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体成分の合計100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
単量体成分の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類又はメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。
分子量調整剤の添加量は、重合体(A)のMn及びMwが上述した範囲内となるように適宜調整すればよい。
前記液状媒体としては、例えば、水、アルコール、多価アルコールのモノアルキルエーテル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、多価アルコールのモノアルキルエーテル以外のエーテル、窒素化合物、硫黄化合物、無機溶媒、有機酸が挙げられる。
液状媒体としては、溶解性、取扱いの容易さの点から、水性媒体が好ましい。
前記水性媒体は、水溶性有機溶媒又は水溶性有機溶媒と水との混合物であってもよい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール、多価アルコールのモノアルキルエーテルが挙げられる。水溶性有機溶媒は2種以上を併用してもよい。
前記アルコールの具体例は、tert-ブチルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールであるが、これらに限定されない。
前記多価アルコールのモノアルキルエーテルの具体例は、3-メトキシメチルブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルであるが、これらに限定されない。
水溶性有機溶媒としては、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される1種以上が好ましい。
前記水性媒体が水溶性有機溶媒と水との混合物である場合、水100質量部に対する水溶性有機溶媒の含有量は、1~80質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。
前記界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤からなる群から選択される1種以上である。炭化水素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤は、いずれも、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤に分類できる。
重合体(A)を製造する際に使用した界面活性剤は、通常、撥水撥油剤組成物にも持ち込まれて、撥水撥油剤組成物の成分の一つとなる。
撥水撥油剤組成物に含んでもよい添加剤との相溶性の点から、前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤と両性界面活性剤との併用が好ましい。また、重合体(A)を含む層と透湿防水層との密着性の点から、前記界面活性剤は、ノニオン界面活性剤の単独使用又はノニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤との併用が好ましい。前記界面活性剤としてノニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤を併用する場合のノニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤との質量比は、特に限定されないが、ノニオン界面活性剤の合計質量/カチオン界面活性剤の合計質量=97/3~40/60が好ましく、95/5~50/50がより好ましく、93/7~60/40がさらに好ましい。
界面活性剤のHLB値が20に近いと、界面活性剤の親水性が高く、撥水撥油剤組成物によって繊維基材上に形成する重合体(A)を含む層の撥水性が低下しやすい。
HLB値が14未満である界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤のHLB値は、撥水性の洗濯耐久性がより優れるため、3以上が好ましく、6以上がより好ましい。
撥水性の点から、前記界面活性剤に対するHLB値が14未満であるノニオン界面活性剤の含有割合は、前記界面活性剤の合計質量の30質量%以上であり、30~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。HLB値が14未満であるノニオン界面活性剤の含有割合がこの範囲内であると、重合体(A)を含む層の撥水性の洗濯耐久性がより優れる。
前記ノニオン界面活性剤としては、国際公開第2010/080060号又は国際公開第2010/123042号に記載された界面活性剤s1~s6からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
前記界面活性剤がカチオン界面活性剤を含む場合、そのカチオン界面活性剤としては、上記文献に記載された界面活性剤s7が好ましい。
前記界面活性剤が両性界面活性剤を含む場合、その両性界面活性剤としては、上記文献に記載された界面活性剤s8が好ましい。
また、前記界面活性剤として、上記文献に記載された界面活性剤s9(高分子界面活性剤)を用いてもよい。
前記界面活性剤の好ましい態様は、上記文献に記載された好ましい態様と同様である。
前記ノニオン界面活性剤としては、下記式で表される界面活性剤からなる群から選択される1種以上が好ましい。
1021O-(CHCHO)-(CO)-H
1225O-(CHCHO)-(CO)-H
1631O-(CHCHO)-(CO)-H
1633O-(CHCHO)-(CO)-H
1835O-(CHCHO)-(CO)-H
1837O-(CHCHO)-(CO)-H
1225O-(CHCHO)-(CO)-C1225
1631O-(CHCHO)-(CO)-C1631
1633O-(CHCHO)-(CO)-C1225
iso-C1327O-(CHCHO)-(CO)-H
1021C(O)O-(CHCHO)-(CO)-H
1633C(O)O-(CHCHO)-(CO)-C1225
上記式中、pは3以上の整数であり、qは2以上の整数である。pは、例えば、5~200が好ましく、qは、例えば、5~200が好ましい。
前記カチオン界面活性剤としては、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド及びジメチルモノココナッツアミン酢酸塩からなる群から選択される1種以上が好ましい。
前記両性界面活性剤としては、ドデシルベタイン、ステアリルベタイン、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン及び脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインからなる群から選択される1種以上が好ましい。
重合体(A)を製造する際の単量体成分中の各化合物のモル比は、各化合物がほぼ100%重合するので、重合体(A)中の各化合物に基づく単位のモル比と同様であり、好ましい態様も同様である。
前記エマルション中の固形分濃度は、重合体(A)の製造直後は、20~40質量%が好ましい。固形分は、エマルションが含む成分から液状媒体を除いた成分をいい、通常、重合体(A)の他に、界面活性剤も含む。重合体(A)の製造後には、通常、重合開始剤は残存していない。エマルション中の重合体(A)の含有割合は、重合体(A)の製造直後は、18~40質量%が好ましい。
エマルションの固形分濃度は、エマルションを120℃の対流式乾燥機にて4時間加熱乾燥した後の質量を固形分の質量として、固形分質量を加熱乾燥前のエマルションの質量で除して、100倍して算出する(単位:質量%)。
乳化重合により得られた重合体(A)のエマルションは、上述したとおり、液状媒体及び界面活性剤を含む。
本発明の透湿防水布帛の製造方法において、重合体(A)を含む層を形成するために使用する撥水撥油剤組成物は、重合体(A)のエマルションそのものであってもよいが、必要に応じて、上述した液状媒体の1種以上を加えて希釈してもよいし、上述した界面活性剤の1種以上を加えて浸透性及び安定性を向上させてもよい。
前記撥水撥油剤組成物は、重合体(A)、液状媒体及び界面活性剤の他に、添加剤を含んでもよい。
前記添加剤としては、浸透剤、消泡剤、吸水剤、帯電防止剤、制電性重合体、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子、熱硬化剤、エポキシ硬化剤、熱硬化触媒、架橋触媒、合成樹脂、繊維安定剤、PH調整剤及び無機微粒子等が挙げられる。これらの添加剤は、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。
前記撥水撥油剤組成物は、さらに、重合体(A)以外のフッ素原子を含まない重合体(以下「重合体(B)」と記す。)を含んでもよい。
前記重合体(B)は、前記撥水撥油剤組成物の撥水性及び撥油性のうち少なくとも一方を向上させるものが好ましい。このような重合体(B)は、例えば、撥水剤、撥油剤、撥水撥油剤及び防汚剤から選択できる。
前記撥水撥油剤としては、例えば、パラフィン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、アルキルエチレン尿素化合物及びシリコーン系化合物が挙げられる。
撥水撥油剤組成物の固形分における重合体(A)の含有割合は、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。撥水撥油剤組成物の固形分は、撥水撥油剤組成物を繊維基材に接触させて形成する重合体(A)を含む層の成分である。重合体(A)を含む層における重合体(A)の含有割合は、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。撥水撥油剤組成物の固形分における重合体(A)の含有割合及び重合体(A)を含む層における重合体(A)の含有割合がこの範囲内であると、繊維基材により優れた撥水撥油性を付与できる。
前記撥水撥油剤組成物における界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、重合体(A)の合計100質量部に対して、界面活性剤の合計1~12質量部が好ましく、3~11質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましく、7~9.5質量部がいっそう好ましい。界面活性剤の含有量がこの範囲内であると、透湿防水層の剥離強度がより高く、透湿防水層が重合体(A)を含む層を有する繊維基材からより剥離しにくい。
前記撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、繊維基材の処理時において、0.2~5質量%が好ましい。撥水撥油剤組成物の固形分濃度がこの範囲内であると、撥水撥油性能を良好に発現でき、コーティング樹脂(C)を含む液の浸透を良好に防止できる。
撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、上述したエマルションの固形分濃度の算出方法と同様である。
<コーティング樹脂(C)を含む液>
コーティング樹脂(C)を含む液は、本発明の透湿防水布帛の製造方法において、透湿防水層を形成するために用いられる液状組成物である。
前記コーティング樹脂(C)を含む液により形成される透湿防水層は、コーティング樹脂(C)を含む。
コーティング樹脂(C)は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られるポリウレタン樹脂、ポリカーボネート共重合系のポリウレタン樹脂、シリコーン、フッ素、アミノ酸等を共重合したポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル共重合系、合成ゴム、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂が挙げられる。
コーティング樹脂(C)は、1種に限定されず、2種以上であってもよい。
コーティング樹脂(C)としては、重合体(A)を含む層及び透湿防水層を形成した透湿防水布帛の加工が容易であることから、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる従来公知のポリウレタン樹脂が好ましい。
前記ポリイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート等が用いられる。
前記芳香族ジイソシアネートの具体例は、m-キシリレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートであるが、これらに限定されない。
前記脂肪族ジイソシアネートの具体例は、ヘキサメチレンジイソシアネートであるが、これに限定されない。
前記脂環式ジイソシアネートの具体例は、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートであるが、これらに限定されない。
前記イソシアネート成分は、前記ジイソシアネートを主成分として用い、必要に応じて3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
前記イソシアネート成分としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを用いることもできる。
前記ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等が用いられる。
前記ポリエーテルポリオールの具体例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールであるが、これらに限定されない。
前記ポリエステルポリオールは、ジオールと二塩基酸との縮重合体、ラクトンの開環重合体、ヒドロキシ酸の縮重合体等である。前記ジオールの具体例は、エチレングリコール、プロピレングリコールであるが、これらに限定されない。前記二塩基酸の具体例は、アジピン酸、セバチン酸であるが、これらに限定されない。前記ラクトンの具体例は、ε-カプロラクトンであるが、これに限定されない。前記ヒドロキシ酸の具体例は、乳酸、ヒドロキシ酪酸であるが、これらに限定されない。
前記ポリオール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する水酸基末端ウレタンプレポリマーを用いることもできる。
前記コーティング樹脂(C)を含む液に含む、透湿防水層中のコーティング樹脂(C)となる成分としては、市販の1液型ポリウレタン樹脂又は2液型ポリウレタン樹脂を使用してもよい。
市販の1液型ポリウレタン樹脂としては、例えば、レザミンCU-4700(大日精化工業社製品名)、クリスボン8006HV(DIC社製品名)が挙げられる。
前記コーティング樹脂(C)を含む液に含む、透湿防水層中のコーティング樹脂(C)となる成分の含有割合は、特に限定されないが、0.1~15質量%が好ましく、0.2~15質量%がより好ましく、0.4~13質量%がさらに好ましい。
前記コーティング樹脂(C)を含む液は、さらに、溶媒を含んでもよい。
前記溶媒は、特に限定されないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記す。)、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチレンホスホンアミドが挙げられる。前記溶媒としては、極性有機溶媒が好ましい。
前記コーティング樹脂(C)を含む液中の前記溶媒の含有割合は、特に限定されないが、40~99.9質量%が好ましく、50~99.9質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。
前記コーティング樹脂(C)を含む液は、さらに、助剤を含んでもよい。
前記助剤は、特に限定されないが、例えば、フッ素系撥水剤、架橋剤が挙げられる。
前記コーティング樹脂(C)を含む液中の前記助剤の含有割合は、特に限定されないが、0.1~10質量%が好ましく、0.2~8質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。
<重合体(A)とコーティング樹脂(C)との関係>
式(3)で表される重合体(A)とコーティング樹脂(C)とのハンセン溶解度パラメータ距離は、3MPa0.5以上、15MPa0.5未満である。
(4×(dDa-dDb)+(dPa-dPb)+(dHa-dHb)0.5 (3)
式(3)中、dDa、dPa及びdHaは、それぞれ、重合体(A)のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表し、dDb、dPb及びdHbは、それぞれ、コーティング樹脂(C)のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表す。
ハンセン溶解度パラメータ(以下「HSP」と記す。)は、物質同士の相溶性を示す指標であり、3次元空間における2つの物質の座標が近ければ、より相溶性が高いことを意味する。HSPの定義及び計算方法は、下記の文献に記載されている。
Charles M. Hansen著、「Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook」、CRCプレス、2007年。
また、文献値が知られていない溶媒のHSPは、コンピュータソフトウエア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP))を用いることによって、その化学構造から簡便に推算できる。
本発明においてはHSPiPバージョン5を用い、データベースに登録されている溶媒についてはその値を、登録されていない溶媒については推算値を用いる。
特定の物質のHSPは、通常、HSPが確定している溶媒に対するその物質の溶解性を確認する溶解性試験によって決定される。具体的には、HSPを求めたい物質について、HSPが確定している種々の溶媒を用いて溶解性試験を行い、用いたすべての溶媒のHSPの座標を3次元空間に示し、当該物質を溶解した溶媒の座標がすべて球の内側に内包され、かつ溶解しない溶媒の座標が球の外側になるような球(溶解度球)を探し出し、当該溶解度球の中心座標を当該物質のHSPとする。本発明の溶解性試験においては、物質を溶媒に混合して30±3℃で約15時間静置した後の状態を確認して、溶解性を判定した。
HSPは分散項、極性項及び水素結合項を成分とする3次元ベクトル(分散項,極性項,水素結合項)で表される。第1の物質のHSPを(dD,dP,dH)、第2の物質のHSPを(dD,dP,dH)で表すと、第1の物質と第2の物質とのHSP距離は、{4×(dD-dD+(dP-dP+(dH-dH0.5である。HSPを表すベクトルの各成分はL-1MT-2(L:長さ、M:質量、T:時間)の次元を持ち、単位は、通常、MPa0.5を用いる。
本発明においては、重合体(A)とコーティング樹脂(C)とのHSP距離が3MPa0.5以上、15MPa0.5未満であると、重合体(A)とコーティング樹脂(C)の相溶性が高く、透湿防水層を形成した際に透湿防水層が重合体(A)を含む層を有する繊維基材から剥離しにくくなる。また、コーティング樹脂(C)を含む液の重合体(A)を含む層への過度の浸透が抑制され、コーティング樹脂(C)を含む液の裏抜けがなくなる。
前記HSP距離は、3~14MPa0.5が好ましく、3~12.5MPa0.5がより好ましい。重合体(A)とコーティング樹脂(C)とのHSP距離がこの範囲内であると、コーティング樹脂が繊維基材の繊維構造の細部にまで過度に浸透せず、適度に浸透する。そのため、コーティング樹脂を含む透湿防水層が繊維基材に適度なアンカー効果を示し、繊維基材から剥離しにくくなる。
重合体(A)のHSPは、コーティング樹脂との相溶性がより優れる点で、分散項が15~20MPa0.5であり、極性項が5~10MPa0.5であり、水素結合項が0.5~5MPa0.5であることが好ましく、分散項が16~20MPa0.5であり、極性項が6~10MPa0.5であり、水素結合項が0.6~5MPa0.5であることがより好ましい。
コーティング樹脂(C)のHSPは、コーティング時に使用する溶剤により溶解しやすい点で、分散項が15~25MPa0.5であり、極性項が8~15MPa0.5であり、水素結合項が3~8MPa0.5であることが好ましく、分散項が16~24MPa0.5であり、極性項が9~14MPa0.5であり、水素結合項が4~8MPa0.5であることがより好ましい。
<繊維基材>
本発明の透湿防水布帛の製造方法において重合体(A)を含む層及び透湿防水層が形成される繊維基材の形態は、特に限定されないが、例えば、織物、編物、不織布又は起毛布のような布帛である。前記繊維基材の繊維は、特に限定されないが、例えば、綿、羊毛、絹又はセルロース等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル又はアラミド等の合成繊維、レーヨン、ビスコースレーヨン又はリヨセル等の化学繊維、天然繊維と合成繊維との混紡繊維、天然繊維と化学繊維との混紡繊維である。繊維基材が不織布である場合の繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ガラス及びレーヨンが挙げられる。
前記繊維基材の厚みは、特に限定されないが、通常、0.01~5mmである。製造する透湿防水布帛の引き裂き強度がより優れる点から、前記繊維基材の厚みは、0.02~5mmが好ましく、0.05~5mmがより好ましく、0.10~5mmがさらに好ましい。また、製造する透湿防水布帛を軽量化しやすい点から、前記繊維基材の厚みは、0.01~1mmが好ましく、0.01~0.7mmがより好ましく、0.01~0.5mmがさらに好ましい。
<重合体(A)を含む層の形成>
本発明の透湿防水布帛の製造方法においては、上述した撥水撥油剤組成物を繊維基材の表面に接触させて、重合体(A)を含む層を前記繊維基材の少なくとも一方の表面に形成する。
重合体(A)を含む層は、前記繊維基材の一方の表面のみに形成してもよいし、両方の表面に形成してもよい。
繊維基材の厚みにもよるが、撥水撥油剤組成物を繊維基材の一方の表面のみに接触させた場合であっても、撥水撥油剤組成物を接触させた側の表面とは反対側の表面にまで撥水撥油剤組成物が到達して、繊維基材の両面に重合体(A)を含む層を形成することがある。
繊維基材の両方の表面に重合体(A)を含む層を形成するには、繊維基材の両方の表面に撥水撥油剤組成物を接触させるか、又は、繊維基材の一方の表面に撥水撥油剤組成物を繰り返し接触させて、撥水撥油剤組成物を適用した側の表面とは反対側の表面にまで撥水撥油剤組成物を到達させることが好ましい。
前記撥水撥油剤組成物を前記繊維基材の表面に接触させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、撥水撥油剤組成物を含む浴に繊維基材を浸漬する方法、希釈した撥水撥油剤組成物を繊維基材の少なくとも一方の表面にスプレー塗布する方法、公知の発泡剤と撥水撥油剤組成物とを混合して、繊維基材の少なくとも一方の表面に泡塗布する方法が挙げられる。これらの公知の方法によって、繊維基材の表面に撥水撥油剤組成物を付着させた後、加熱乾燥等の方法により、撥水撥油剤組成物を乾燥させて、重合体(A)を含む層を形成する。形成した重合体(A)を含む層は、重合体(A)を含む被膜であるため、優れた撥水撥油性を示す。
前記重合体(A)を含む層の厚みは、特に限定されないが、通常、0.1nm~1μmである。製造する透湿防水布帛の撥水性がより優れる点から、前記重合体(A)を含む層の厚みは、0.2~600nmが好ましく、10~300nmがより好ましく、20~60nmがさらに好ましい。
撥水撥油剤組成物を繊維基材に接触させて重合体(A)を含む層を形成した後、さらに、帯電防止加工、柔軟加工、抗菌加工、消臭加工又は防水加工等の加工を行ってもよい。これらの加工は、繊維基材の重合体(A)を含む層が形成された面及び重合体(A)を含む層が形成されていない面のいずれに対して行ってもよい。
<透湿防水層の形成>
本発明の透湿防水布帛の製造方法においては、前記重合体(A)を含む層の表面に、コーティング樹脂(C)を含む液を接触させて、コーティング樹脂(C)を含む透湿防水層を形成する。
前記重合体(A)を含む層を前記繊維基材の一方の表面に形成したときは、前記一方の表面に形成した重合体(A)を含む層の表面に、コーティング樹脂(C)を含む液を接触させる。
前記重合体(A)を含む層を前記繊維基材の両面に形成したときは、前記繊維基材の両面に形成した重合体(A)を含む層のうち一方の表面に、コーティング樹脂(C)を含む液を接触させる。
前記重合体(A)を含む層の表面に前記コーティング樹脂(C)を含む液を接触させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ヘラ又は刷毛を用いて重合体(A)を含む層の表面にコーティング樹脂(C)を含む液を塗布する方法、ナイフコーター、ナイフオーバーロールコーター、ブレードコーター、リバースロールコーター、スピンコーター又はキスロールを用いて、重合体(A)を含む層の表面にコーティング樹脂(C)を含む液を均一に塗布する方法が挙げられる。これらの公知の方法によって、重合体(A)を含む層の表面にコーティング樹脂(C)を含む液を塗布した後、所定の時間静置し、加熱乾燥させる方法又は水に浸漬させる方法により、透湿防水層を形成する。
コーティング樹脂(C)を含む液の溶媒として、トルエン又はメチルエチルケトン等の揮発性が高く、水溶性が低い溶媒を用いた場合には、加熱乾燥させる方法が好ましい。コーティング樹脂(C)を含む液中のコーティング樹脂(C)は、加熱乾燥により、コーティング樹脂(C)を含む液中の溶媒が揮発し、被膜を形成するとともに、被膜に微小な孔が多数形成された多孔質な透湿防水層となり、透湿防水機能を発現できるようになる。
コーティング樹脂(C)を含む液の溶媒として、DMF、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はヘキサメチレンホスホンアミド等の極性有機溶媒を用いた場合には、水に浸漬させる方法が好ましい。水に浸漬することにより、コーティング樹脂(C)を含む液中のコーティング樹脂が被膜を形成するとともに、コーティング樹脂(C)を含む液中の極性有機溶媒が水相に移行するため、被膜には微小な孔が多数形成され、多孔質な透湿防水層となり、透湿防水機能を発現できるようになる。
透湿防水層における孔の大きさは、特に限定されないが、透湿防水機能がより良好となるため、0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmがさらに好ましい。透湿防水層における孔の大きさは、走査型電子顕微鏡により測定できる。
なお、下限値の0.1μmについては、走査型電子顕微鏡で確認できる孔の大きさが0.1μm以上という意味であり、より小さな孔が存在していると考えられる。
前記透湿防水層の厚みは、特に限定されないが、通常、5~100μmである。防水性がより優れる点から、前記透湿防水層の厚みは、10~100μmが好ましく、透湿性がより優れる点から、10~80μmがより好ましい。
[透湿防水布帛]
本発明の透湿防水布帛の製造方法によって製造した透湿防水布帛(以下「本発明の透湿防水布帛」と記す。)は、繊維基材の少なくとも一方の表面に重合体(A)を含む層を有する。
前記繊維基材が前記重合体(A)を含む層を一方の表面にのみ有するときは、前記繊維基材は、前記重合体(A)を含む層の表面に透湿防水層を有する。
前記繊維基材が前記重合体(A)を含む層を両方の表面に有するときは、前記繊維基材は、前記重合体(A)を含む層のうち一方の表面に透湿防水層を有する。
透湿防水層は、コーティング樹脂(C)を含む被膜であり、防水性と透湿性を両立しやすい点で、微小な孔を多数有する多孔質構造であることが好ましい。透湿防水層としては、例えば、ガーレ透気度が10~2000sec/100ccであり、JIS Z-0208:1976 A-1法における透湿度が5000~100000g/(m・d)であるものが挙げられる。
透湿防水層は重合体(A)を含む層を有する繊維基材から剥離しにくく、優れた剥離強度を有する。
本発明の透湿防水布帛の製造方法における重合体(A)とコーティング樹脂(C)との組合せでは、透湿防水層を形成するためのコーティング樹脂(C)を含む液が重合体(A)を含む層を通過できず、コーティング樹脂(C)を含む液の裏抜けが抑制される。そのため、本発明の透湿防水布帛では、透湿防水層が一方の表面にのみ形成されている。これにより、透湿防水布帛の表面の白化を抑制できる。
本発明の透湿防水布帛は、透湿防水層のある側を裏面に、透湿防水層のない側を表面にして用いることが好ましい。透湿防水層のない側を表面にすると、表面の白化を抑制し、意匠性及び風合いを損なわない。
本発明の透湿防水布帛は、特に、防水性及び透湿性を必要とする繊維製品に好適である。このような繊維製品としては、スキーウェア、レインウェア、コート、ブルゾン、ウィンドブレーカー、ダウンジャケット、スポーツウェア、作業衣、ユニフォーム、リュック、バックパック、カバン、テント、ツェルト等が挙げられる。
<作用効果>
本発明の透湿防水布帛の製造方法は、撥水撥油剤組成物における重合体(A)とコーティング樹脂(C)を含む液中のコーティング樹脂(C)とのHSP距離を3MPa0.5以上、15MPa0.5未満としたことによって、撥水撥油剤組成物で処理した布帛に透湿防水層を形成する際に透湿防水層形成用のコーティング組成物が裏抜けせず、優れた剥離強度を有する透湿防水層を形成できる。
HSP距離が上記所定範囲内である重合体(A)とコーティング樹脂(C)とは、適度に相溶するため、コーティング樹脂(C)が重合体(A)を含む層を有する繊維基材の内部まで適度に入り込み、重合体(A)を含む層を有する繊維基材とコーティング樹脂(C)のアンカー効果により、コーティング樹脂(C)により形成される透湿防水層が重合体(A)を含む層を有する繊維基材から剥離しにくくなったと考えられる。
以下では実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されず、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
[測定方法及び試験方法]
<含フッ素重合体の平均分子量の測定方法>
(含フッ素重合体の分離)
含フッ素重合体を含むエマルションの6gを、ヘキサン6gと2-ブタノール54gとの混合液に計60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を分離した。分離した固体にイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と記す。)変性アルコール30gと、イオン交換水30gとを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して含フッ素重合体を得た。
(数平均分子量及び質量平均分子量の測定)
得られた含フッ素重合体をフッ素系溶媒(AK-225、AGC社製品名)/THF/
ヘキサフルオロ-2-プロパノール=6/3/1(体積比)の混合溶媒に溶解させて、固形分濃度0.1質量%の溶液を調製した。
調製した溶液を、0.2μmのフィルタに通し、分析サンプルとした。
分析サンプルに含まれる含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記測定条件により、測定した。
・測定条件
装置:高速GPC装置(HLC-8320GPC、東ソー社製品名)
カラム:有機GPCカラム(PLgel 5μm MIXED-C,300mm×7.5mm、Polymer Laboratories社製品名)と、有機GPCカラム(PLgel 3μm 100Å,300mm×7.5mm、Polymer Laboratories社製品名)とを直列につないだ。
測定温度:37℃
注入量:100μL
流出速度:1mL/分
標準試料:ポリスチレン(調整済みポリスチレンキット、Agilent EasiCal PS-2 、アジレント・テクノロジー社製品名)
溶離液:フッ素系溶媒(AK-225、AGC社製品名)/THF/ヘキサフルオロ-2-プロパノール=6/3/1(体積比)の混合溶媒
<撥水性(初期)の評価方法>
JIS L 1092:1998のスプレー試験方法に従って、試験布の撥水性を評価した。
撥水性は、1~5の5段階の等級で表した。等級が高いほど撥水性が良好であることを示す。等級が3以上であるものを、撥水性が発現していると評価した。等級に+を付記したものは、その等級の標準的な水準よりも撥水性が僅かに良いことを示す。等級に-を付記したものは、その等級の標準的な水準よりも撥水性が僅かに悪いことを示す。
<撥水性(20回洗濯後)の評価方法>
試験布について、JIS L 0217:1995の別表103の水洗い法に従って、試験布の洗濯を20回繰り返した。洗濯後、室温25℃、湿度60%の部屋で一晩風乾させた。その後、撥水性(初期)と同様にして、20回洗濯後の試験布の撥水性を評価した。
<撥油性(初期)の評価方法>
AATCC TM118-1966に従って、試験布の撥油性を評価した。撥油性は、表1示す等級で表した。等級に+を付記したものは、その等級の標準的な水準よりも撥油性が僅かに良いことを示す。等級に-を付記したものは、その等級の標準的な水準よりも撥油性が僅かに悪いことを示す。
Figure 0007279480000001
<剥離強度の評価方法>
試験布の透湿防水層上に熱融着テープ(幅2.5cm、長さ15cm)を熱プレスにて貼り付けた。テンシロン万能試験機(AGS-X、島津製作所社製品名)を用いて、熱融着テープが剥がれる時にかかる力(剥離強度、単位:N/2.5cm)を測定した。測定を3回行い、剥離強度の算術平均値(以下「剥離強度の平均値」と記す。)を求めた。剥離強度の平均値が大きいほど、透湿防水層が剥がれにくいことを示す。剥離強度の平均値が6N/2.5cm以上を剥離強度が優れると評価した。
<耐裏抜け性の評価方法>
透湿防水層付き試験布の、コーティング樹脂を含む液を塗布していない側の表面を目視で観察し、コーティング樹脂の浸み出しの有無を判断した。
浸み出しがある場合を「×」、浸み出しがない場合を「○」と評価した。
<耐DMF性の評価方法>
透湿防水層を形成する前の試験布の上に、DMFの液滴(12μL)を静置し、液滴が試験布に完全に染み込むまでの時間(単位:秒)を測定した。時間の測定は、DMFの液滴を静置してから600秒で終了とした。測定開始から600秒経過の時点で液滴が試験布に完全に染み込んでいなかった場合の時間は「>600」とした。
透湿防水層を形成するために用いたコーティング樹脂を含む液には、溶媒としてDMFが含まれている。そのため、DMFの液滴の浸透性は、コーティング樹脂を含む液の浸透性の目安となる。DMFの液滴が完全に染み込むまでの時間が長いほど、コーティング樹脂を含む液の浸透抑制性能に優れると評価できる。
<ハンセン溶解度パラメータ(HSP)及びハンセン溶解度パラメータ距離(HSP距離)の算出方法>
(含フッ素重合体のHSP)
含フッ素重合体を含むエマルションの6gを、ヘキサン6gと2-ブタノール54gとの混合液の計60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を分離した。分離した固体にIPA変性アルコール30gと、イオン交換水30gとを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して含フッ素重合体を得た。
含フッ素重合体が10質量%となるように、溶解度の異なる23種の溶媒(DMF、アクリロニトリル、メタノール、N-メチルピロリドン、ジメチルポリシロキサン、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ドデカン、ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン、ヘキサフルオロイソプロパノール、シクロペンタノン、ブチルアセテート、ヘキサン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、シクロペンチルメチルエーテル、2-メトキシ-2-プロパノール、IPA、1-ヘキセン)のそれぞれと混合した。30℃の環境下、15時間静置した後の溶解状態を確認し、含フッ素重合体が液化して溶媒と二層分離した状態から完全に混合し単層となった状態までを「溶解した」と判断した。こうして得られた各溶媒への溶解度の情報をもとに、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP) ver.5によってハンセン溶解度パラメータを算出した。含フッ素重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項、水素結合項を、それぞれ、dDa、dPa、dHaとした。
(コーティング樹脂のHSP)
ウレタンプレポリマー(レザミンCU-4700、大日精化工業社製品名:ポリエチレンアジペート/MDI プレポリマー)の50gと、架橋剤(コロネートHL、東ソー社製品名)の0.5gと、DMFの25gとを混合して、コーティング樹脂を含む液を調製した。
前記コーティング樹脂を含む液6gを、イオン交換水60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を分離し、35℃で一晩真空乾燥して、コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータ測定用サンプルを得た。
コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータを含フッ素重合体と同様にして算出した。コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータの分散項、極性項、水素結合項を、それぞれ、dDb、dPb、dHbとした。
(含フッ素重合体とコーティング樹脂のHSP距離)
含フッ素重合体とコーティング樹脂のHSP距離(単位:MPa0.5)を、以下の式によって算出した。
{4×(dDa-dDb)+(dPa-dPb)+(dHa-dHb)0.5
dDa、dPa、dHa、dDb、dPb及びdHbは、それぞれ上記と同じである。
[含フッ素重合体の製造]
<製造例1>
含フッ素重合体を製造するために用いた含フッ素化合物(単量体(a))、ハロゲン化オレフィン(単量体(b))、(メタ)アクリレート(単量体(c))、重合性化合物(単量体(d))、界面活性剤、分子量調整剤、開始剤、及び液状媒体の種類及び仕込み量(単位:質量部)を表1の該当欄に示す。
ガラス容器に、FMA60質量部、StA19質量部、NMAMの10質量%水溶液10質量部(NMAMとして1質量部)、PES-50の10質量%水溶液30質量部(PES-50として3質量部)、AGE-10の1質量部、STMACの63質量%溶液2.4質量部(STMACとして1.5質量部)、P204の1質量部、StSH0.5質量部、DPG30質量部、及び水160質量部を入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサー(バイオミキサー、日本精機製作所社製品名)を用いて混合して混合液を得た。
得られた混合液を60℃に保ちながら、高圧乳化機(ミニラボ、APVラニエ社製品名)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液をステンレス鋼製反応器に入れ、30℃以下となるまで冷却した。
冷却した乳化液にVA061Aの0.15質量部を加えて、気相を窒素置換した後、VCMの15質量部及びVDCの5質量部を導入し、撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、含フッ素重合体を含むエマルションを得た。製造例1で製造した含フッ素重合体及びエマルションを、それぞれ、含フッ素重合体1及びエマルション1という場合がある。
得られた含フッ素重合体中の各単量体単位の質量比は、含フッ素重合体の製造の際に用いた各単量体の仕込み比と一致する。
含フッ素重合体中の単位(c)の含有割合(単位:質量%)及びエマルションの固形分濃度(単位:質量%)を表2の該当欄に示す。
上述した方法によって測定した含フッ素重合体のMn及びMwを、表2の該当欄に示す。
<製造例2~19>
各原料仕込み量を表2~4に示した通りとして、製造例1と同様にして、製造例2~19の含フッ素重合体を製造した。
含フッ素重合体中の単位(c)の含有割合(単位:質量%)及びエマルションの固形分濃度(単位:質量%)を表2~4の該当欄に示す。
上述した「含フッ素重合体の平均分子量の測定方法」に記載した方法によって測定した含フッ素重合体のMn及びMwを、表2~4の当該欄に示す。
Figure 0007279480000002
Figure 0007279480000003
Figure 0007279480000004
表2~4中の略号の意味は以下のとおりである。
・単量体(a)
FMA:F(CF-CHCH-OC(O)-C(CH)=CH
・単量体(b)
VCM:塩化ビニル
VDC:塩化ビニリデン
・単量体(c)
StA:ステアリルアクリレート
BeA:ベヘニルアクリレート
BeMA:べへニルメタクリレート
・単量体(d)
NMAM:N-メチロールアクリルアミド
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
NP-A:ネオペンチルグリコールジアクリレート
D-BI:2-イソシアナトエチルメタクリレートの3,5-ジメチルピラゾール付加体
・界面活性剤
PES-50:ポリオキシエチレンステアリルエーテル(エチレンオキシド約50モル付加物)(HLB値=17.8、エマルゲンE350、花王社製品名)
PEO-13:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド約12.8モル付加物)(HLB値=13.6、エマルゲンE420、花王社製品名)
PEO-30:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド約30モル付加物)(HLB値=16.6、エマルゲンE430、花王社製品名)
AGE-10:アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド約10モル付加物)(HLB値=13、サーフィノール465、日信化学工業社製品名)
AGE-30:アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド約30モル付加物)(HLB値=17、サーフィノール485、日信化学工業社製品名)
STMAC:塩化アルキル(炭素数:16~18)トリメチルアンモニウムクロリドの63質量%水及びイソプロピルアルコール溶液(HLB値=6.4、リポカード 18-63、ライオン社製品名)
CTMAC:塩化アルキル(炭素数:8~18)トリメチルアンモニウムクロリドの50質量%水及びイソプロピルアルコール溶液(HLB値=8.3、リポカード C-50ライオン社製品名)
P204:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(エチレンオキシド40質量%含有)(HLB値=13.7、プロノン204、日油社製品名)
・分子量調整剤
StSH:ステアリルメルカプタン
DoSH:ドデシルメルカプタン
・重合開始剤
VA061A:2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-061、和光純薬社製品名)酢酸塩の10質量%水溶液
V-50:2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)・2塩酸塩(V-50、和光純薬社製品名)
V-601:ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、和光純薬社製品名)
・液状媒体
DPG:ジプロピレングリコール
DPGMME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
tetragyme:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
水:イオン交換水
[例1~19]
<含フッ素重合体を含む層の形成>
製造例1~19で得られた含フッ素重合体を含むエマルションに、イオン交換水を加えて、固形分濃度を30質量%に調節した。
この固形分濃度30質量%のエマルションを水道水で希釈して、固形分濃度が1.2質量%、イソシアネート系架橋剤(メイカネートFM-1、明成化学工業社製品名)の濃度が1質量%となるように混合して、撥水撥油剤組成物を調製した。
調製した撥水撥油剤組成物に、パディング法によって基布(ナイロン高密度タフタ)を浸漬した後、ウェットピックアップが45~50質量%となるように絞った。これを170℃で60秒間加熱乾燥して、23℃、湿度50%の部屋で一晩静置して、基布の両面に含フッ素重合体を含む層を形成して、含フッ素重合体を含む層付き試験布を製造した。
製造した含フッ素重合体を含む層付き試験布を用いて、上述した評価方法によって、耐DMF性を評価した。評価結果を表5及び表6の該当欄に示した。
<透湿防水層の形成>
ウレタンプレポリマー(レザミンCU-4700、大日精化工業社製品名、ポリエチレンアジペート/MDI プレポリマー)の50gと、架橋剤(コロネートHL、東ソー社製品名)の0.5gと、着色剤(セイカセブンALT#8000、大日精化工業社製品名)の1.0gと、DMFの25gとを混合し、透湿防水層を形成するためのコーティング樹脂を含む液を調製した。
アプリケータ(RK Print Coat Instruments Ltd.)を用いて、乾燥後の厚さが40μmとなるように、コーティング速度:0.1m/秒、コーティング樹脂を含む液の温度:35℃の条件にて、含フッ素重合体を含む層を両面に形成した基布の一方の含フッ素重合体を含む層の上にコーティング樹脂を含む液を塗布した。コーティング樹脂を含む液を塗布した後の含フッ素重合体を含む層付き試験布を1分間静置した後、20℃の水に2分間浸漬し、ついで40℃の水に2分間浸漬し、120℃で60秒間乾燥して、透湿防水層付き試験布を製造した。
製造した透湿防水層付き試験布を用いて、上述した評価方法によって、剥離強度、耐裏抜け性、撥水性(初期)、撥水性(洗濯20回後)及び撥油性(初期)を評価した。評価結果を表5及び表6の該当欄に示した。
<HSP、HSP距離>
上述したHSP及びHSP距離の算出方法によって、含フッ素重合体のHSP及び含フッ素重合体とコーティング樹脂のハンセン溶解度HSP距離(単位:MPa0.5)を求め、表5及び表6の該当欄に示した。
Figure 0007279480000005
Figure 0007279480000006
表5及び表6中に記載した用語の意味は以下のとおりである。
・エマルション:撥水撥油剤組成物を製造するために使用したエマルションを示す。「製造例」は、製造例1~19のいずれの製造例で製造したエマルションであるかを示す。「固形分濃度」は、エマルションの固形分濃度を質量百分率で示す。固形分はエマルションから液状媒体を除いた成分である。
・界面活性剤含有量:撥水撥油剤組成物に含まれる含フッ素重合体の合計質量を100質量部としたときの、撥水撥油剤組成物に含まれる界面活性剤の含有量を質量部で表す。
・ノニオン界面活性剤の割合:撥水撥油剤組成物に含まれる界面活性剤の合計質量に対するHLB値が14未満であるノニオン界面活性剤の合計質量の割合を質量百分率[単位:質量%]で表す。
[例20~31]
<含フッ素重合体を含む層の形成>
製造例6、15~18で得られた含フッ素重合体を含むエマルションに、界面活性剤及びイオン交換水を加えて、固形分濃度を30質量%に調節した。
この固形分濃度30質量%のエマルションを用いて、例1~19と同様にして、撥水撥油剤組成物を調製して、含フッ素重合体を含む層付き試験布を製造した。
製造した含フッ素重合体を含む層付き試験布を用いて、上述した評価方法によって、耐DMF性を評価した。評価結果を表7及び表8の該当欄に示した。
<透湿防水層の形成>
例1~19と同様にして、透湿防水層付き試験布を製造して、上述した評価方法によって、剥離強度、耐裏抜け性、撥水性(初期)、撥水性(洗濯20回後)及び撥油性(初期)を評価した。評価結果を表7及び表8の該当欄に示した。
Figure 0007279480000007
Figure 0007279480000008
表7及び表8中の略号のうち、表2~4に記載がないものの意味は以下のとおりである。
・界面活性剤
AGE-4:アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド約4モル付加物)(サーフィノール440、日信化学工業社製品名)
表7及び表8中の用語のうち、表5及び表6に記載がないものの意味は以下のとおりである。
・エマルション固形分濃度: 撥水撥油剤組成物の製造に用いたエマルションがどの製造例で製造したものであるか、及び、固形分濃度を表す。
・界面活性剤固形分濃度: 撥水撥油剤組成物の製造に用いた追加の界面活性剤の固形分濃度を表す。
[結果の説明]
例1~9及び例20~26は、本発明の実施例に相当する。例10~19及び例27~31は、本発明の比較例に相当する。
例1~9及び例20~26は、含フッ素重合体とコーティング樹脂のHSP距離が3MPa0.5以上、15MPa0.5未満の範囲内にあり、かつ、撥水撥油剤組成物における界面活性剤の合計質量に対するHLB値が14未満であるノニオン界面活性剤の合計質量の割合が30質量%以上である例である。透湿防水層の剥離強度が6N/2.5cm以上であり、透湿防水層が優れた剥離強度を有することを示した。また、撥水性及び撥油性の等級が3以上であり、優れた撥水撥油性を有することを示した。
例10~19及び例27~31は、含フッ素重合体とコーティング樹脂のHSP距離が3MPa0.5以上、15MPa0.5未満の範囲内にあり、及び、撥水撥油剤組成物における界面活性剤の合計質量に対するHLB値が14未満であるノニオン界面活性剤の合計質量の割合が30質量%以上であることの少なくとも一方を満たしていない例である。透湿防水層の剥離強度、撥水性及び撥油性のうち、1つ以上が劣っていた。
例13、例14は、含フッ素重合体中の単位(c)の含有割合が30質量%を超える例であり、透湿防水層の剥離強度が劣っていた。
例20~26は製造例6の含フッ素重合体エマルションに界面活性剤を混合した撥水撥油剤を調製した例である。
例20~26は、例6よりも界面活性剤含有量が多い例である。例6と同様に撥水撥油性が良好であり、透湿防水層の剥離強度が同等以上となった。
例27~29は、HLB値が14未満である界面活性剤量が、界面活性剤総量に対して30質量%未満であることから、例6に比べて撥水性が劣っていた。
例30、例31は2種の含フッ素重合体を混合した撥水撥油剤組成物を調製した例である。例30は、HSP距離が15以上であり、透湿防水層の剥離強度が劣っていた。例30、例31は、HLB値が14未満である界面活性剤量が、界面活性剤総量に対して30質量%未満であることから、撥水性が劣っていた。
本発明の透湿防水布帛の製造方法によって製造した透湿防水布帛は、優れた撥水撥油性を有し、透湿防水層が剥がれにくく、表面の意匠性が損なわれないので、スキーウェア、レインウェア、コート、ブルゾン、ウィンドブレーカー、ダウンジャケット、スポーツウェア、作業衣、ユニフォーム、リュック、バックパック、カバン、テント、ツェルト等の用途に適している。

Claims (10)

  1. 含フッ素重合体、液状媒体及び界面活性剤を含む撥水撥油剤組成物を繊維基材の表面に接触させて、含フッ素重合体を含む層を前記繊維基材の少なくとも一方の表面に形成し、
    前記含フッ素重合体を含む層の表面に、コーティング樹脂を含む液を接触させて、コーティング樹脂を含む透湿防水層を形成する、透湿防水布帛の製造方法であって、
    前記含フッ素重合体は、式(1)で表される含フッ素化合物に基づく単位、及びハロゲン化オレフィンに基づく単位を含み、式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位を含んでもよい重合体であって、
    前記含フッ素重合体中の前記(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位の含有割合が30質量%以下であり、
    式(3)で表される前記含フッ素重合体と前記コーティング樹脂とのハンセン溶解度パラメータ距離が3MPa0.5以上、15MPa0.5未満であり、
    前記撥水撥油剤組成物が、前記含フッ素重合体100質量部に対して、前記界面活性剤を1~12質量部含み、
    前記撥水撥油剤組成物における前記界面活性剤の合計質量に対するHydrophilic-Lipophilic Balance値が14未満であるノニオン界面活性剤の合計質量の割合が30質量%以上である、
    透湿防水布帛の製造方法。
    -Y-X 式(1)
    式(1)中、Rは、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基であり、Yは、フッ素原子を含まない2価の有機基又は単結合であり、Xは、式(4)~(7)のいずれか1つで表される基である。
    -CR=CH 式(4)
    -C(O)OCR=CH 式(5)
    -OC(O)CR=CH 式(6)
    -OCH=CH 式(7)
    ただし、式(4)~(7)中、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン原子である。
    CH=C(CH)-C(O)O-R 式(2)
    ただし、式(2)中、Rは炭素数1~26の脂肪族飽和炭化水素基である。
    (4×(dDa-dDb)+(dPa-dPb)+(dHa-dHb)0.5 式(3)
    ただし、式(3)中、dDa、dPa及びdHaは、それぞれ、含フッ素重合体のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表し、dDb、dPb及びdHbは、それぞれ、コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータにおける分散項、極性項及び水素結合項を表す。
  2. 前記含フッ素重合体と前記コーティング樹脂とのハンセン溶解度パラメータ距離を、透湿防水布帛を製造する前に算出する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記含フッ素重合体のハンセン溶解度パラメータの分散項が15~20MPa0.5であり、極性項が5~10MPa0.5であり、水素結合項が0.5~5MPa0.5である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記コーティング樹脂のハンセン溶解度パラメータの分散項が15~25MPa0.5であり、極性項が8~15MPa0.5であり、水素結合項が3~8MPa0.5である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記含フッ素重合体を含む層における前記含フッ素重合体の含有割合が50~100質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記含フッ素重合体が、前記式(1)で表される含フッ素化合物に基づく単位の60~85質量%と、前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位の5~25質量%と、前記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位の20質量%以下とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位が、塩化ビニルに基づく単位及び塩化ビニリデンに基づく単位を含み、前記ハロゲン化オレフィンに基づく単位の総量に対する、前記塩化ビニルに基づく単位と前記塩化ビニリデンに基づく単位との合計の割合が80~100質量%であり、前記塩化ビニルに基づく単位と前記塩化ビニリデンに基づく単位の総量に対する、塩化ビニルに基づく単位の割合が50~100質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記含フッ素重合体の数平均分子量が25,000~100,000である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記含フッ素重合体の質量平均分子量が70,000以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記撥水撥油剤組成物が、前記含フッ素重合体100質量部に対して、前記界面活性剤を7~9.5質量部含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
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