JP7274837B2 - 拡散接合品およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.6~1.5%、
Cr:15.0~20.0%、
Ni:6.0~9.0%、
Mo:0.1~0.5%、
Cu:0.1~0.5%および
N:0.030~0.150%
を含有し、さらに
Nb:0.500%以下、
V:0.500%以下および
Ti:0.500%以下のうち1種または2種以上を含有し、
残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であり、
前記鋼板同士の接合部に拡散接合界面が形成され、
前記拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量との比であるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)が5.0以下であり、
前記拡散接合界面の接合率が60.0%以上であり、
前記拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、オーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下である。
陽極電解処理された前記鋼板の複数枚を直接積層させて、拡散接合温度:850~1050℃、面圧:0.03~30.00MPaで拡散接合を施す第2の工程と、
を順次行う。
Σσk≦25.0(C/dm2)・・・(1)
[拡散接合前のオーステナイト粒径の平均値:5.0μm以下]
拡散接合前の鋼板におけるオーステナイト粒径の平均値(以下、オーステナイトの平均結晶粒径と記載する場合がある)を5.0μm以下と小さくすることにより、拡散接合前に行われるエッチング加工面が平滑になる。さらに、結晶粒微細化によって面積の増えた結晶粒界を介して拡散が活発に起こり、鋼板の拡散接合性が向上する。従って、本実施形態では、拡散接合前の鋼板におけるオーステナイト粒径の平均値の上限を5.0μmとする。
拡散接合後のオーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下であれば、拡散接合後の硬度低下が抑制されるので好ましい。拡散接合前の鋼板のオーステナイトの平均結晶粒径を5.0μm以下とすることで、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を15.0μm以下とすることができる。そのため、本実施形態では、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径の上限を15.0μmとしてもよく、6.0μmとしてもよい。ただし、拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を15.0μm以下とすることは必須ではなく、15.0μmを超えたとしても本実施形態に係る拡散接合品を得ることができる。
(2-1)拡散接合界面付近の元素分布
[拡散接合界面付近のSi濃化度:5.0以下]
鋼板同士の接合部には、拡散接合界面が形成される。拡散接合界面付近にSiが濃化してしまうと、Si濃化部が起点となり拡散接合界面の剥離が顕著になる。従って、拡散接合界面付近におけるSi量を少なくすることにより、剥離し難い拡散接合界面が形成される。拡散接合界面付近に分布するSi量は均一とは限らず、通常はSi量が最も多く存在する領域から剥離が起こる可能性が大きい。よって、拡散接合界面付近における複数の領域を分析して、最大Si量を確認することが重要である。
本実施形態では、拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量(鋼板のSi量)との比で表されるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)を適正に制御することで、拡散接合界面の剥離を抑制する。本実施形態では、Si濃化度の上限を5.0とし、好ましくは4.5、より好ましくは3.0とする。Si濃化度はできるだけ小さいことが望ましいが、鋼板であるオーステナイト系ステンレス鋼板はSiを0.20mass%以上含有しており、拡散接合前に陽極電解処理でオーステナイト系ステンレス鋼板の表面に存在するSiを優先的に除去したとしても、拡散接合界面付近における最大Si量を0.14mass%より少なくすることは技術的に困難である。従って、拡散接合後の拡散接合界面付近におけるSi濃化度の下限は0.7としてもよい。
図1(b)は、拡散接合品10の鋼板3の板厚方向と平行な断面1の拡大図である。
本実施形態では、断面1において、EPMAを用いて、各拡散接合界面2が鋼板3の板厚方向の幅中央となるように、100μm×100μmの範囲を1視野毎に分析して、測定ステップを0.25μmとし、合計9視野以上分析する。これら観察視野のうち、各分析領域5(拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域)の中で最大のSi量を、最大Si量とする(図1(b)参照)。素材Si量は、拡散接合品から所定の大きさの試験片を切り出し、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光)分析法により分析することで得る。得られた最大Si量を素材Si量で除することにより、上記領域内におけるSi濃化度を得る。
[拡散接合界面の接合率:60.0%以上]
本実施形態に係る拡散接合品における拡散接合界面の接合率は、60.0%以上とする。鋼板同士が接している面積のうち、実際に接合されている面積が100%にならず、接合されていない箇所(今回は主として空隙)ができる場合がある。接合されていない箇所が多く、拡散接合界面の接合率が60.0%未満であると、Si濃化の有無にかかわらず拡散接合界面が剥離しやすくなる。
拡散接合界面の接合率は、超音波探傷により拡散接合界面の空隙を調査することで得る。具体的には、拡散接合界面に対して透過法による評価を行い、透過パルス高さが25%以上の位置を拡散接合界面、25%以下の位置を空隙として判断し、拡散接合界面の面積率を算出することで、拡散接合界面の接合率を得る。透過法は、送信用探触子から発信される超音波が測定対象物中を通過し受信用探触子に受信される過程において、測定対象物中の欠陥(今回は主として空隙)による散乱などの原因によって超音波が減衰する程度から測定対象物内部の欠陥の大きさや程度を把握する方法である。透過法では、発信した超音波のパルスに比べて測定対象物を経過して受信した透過パルス高さがどの程度であるかを測定する。受信した透過パルス高さが100%に近いほど測定対象物中の欠陥(今回は主として空隙)が少なく、良好な拡散接合界面が成されており、受信した透過パルス高さが小さいほど拡散接合が不良であると評価する。本実施形態では、測定対象(拡散接合品)の縦横それぞれに対して0.2mmピッチで透過パルスを測定し、測定対象の拡散接合界面面積に対して、透過パルス高さが25%以上となる位置の面積率を拡散接合界面の接合率として定義する。本実施形態では、拡散接合品において積層された鋼板の数によらず、上記の方法により求めた透過パルス高さが25%以上となる位置の面積率を、拡散接合界面の接合率と定義する。
上記の拡散接合界面付近へのSi濃化は、以下に記す陽極電解処理を施した後に、後述する第2の工程を施すことにより抑制することが出来る。その結果、拡散接合界面が剥離することを抑制出来る。
[電解液:pHが5.0以上12.0未満]
拡散接合界面付近のSi量を低減するためには、拡散接合前の鋼板表面におけるSi量を可能な限り低減する必要がある。拡散接合前の鋼板に陽極電解処理を施すことでSi量を効率的に低減するためには、pHが5.0以上12.0未満の電解液を用いることが望ましい。除去対象であるSiは、弱酸性~塩基性の領域で溶解度が増大するためである。また、上記pHの電解液に界面活性剤等を添加しても問題無い。電解液の温度は特に限定されず、室温以上であれば問題無い。
電解液は例えば、NaOH水溶液、Na2SO4水溶液、NaOHとNa2SO4との混合水溶液、H2SO4とNa2SO4との混合水溶液等を例示できる。
本実施形態に係る拡散接合品の製造方法では、上記の電解液中にて、n組(ただし、nは2以上の自然数)の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσk(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσkとしたとき、電気量の総和Σσkが、下記(1)式を満たす条件で陽極電解処理を行う。なお、nは陽極電解処理の回数である。nの上限は特に制限されないが、例えば、20以下、15以下、10以下、5以下のいずれでもよい。
本実施形態に係る拡散接合品の製造方法は、上述の第1の工程を施した後に、特定の温度と面圧とを付与して拡散接合を施すことで、拡散接合界面付近のSi濃化度を5.0以下とすることができる。なお、本発明で規定する要件を満たすことができれば、積層する鋼板の枚数、拡散接合における雰囲気は限定されるものではないが、本発明者らは、以下に説明する条件を満たし、且つ、鋼板の積層枚数を10枚とし、非酸化雰囲気中にて拡散接合することにより、本実施形態に係る拡散接合品を製造できることを確認している。
[拡散接合温度:850~1050℃]
拡散接合温度が低すぎると、原子の拡散が充分ではなく鋼板同士が拡散接合されない。そのため、本実施形態では、拡散接合温度を850℃以上とする。一方、拡散接合温度が高すぎると高温強度が低下するため、拡散接合時に変形してしまい、拡散接合品の良好な寸法精度が得られない。そのため、本実施形態では、拡散接合温度を1050℃以下とする。なお、本実施形態において拡散接合温度とは、積層された鋼板を等温保持して面圧を付与する際(拡散接合時)の、最表面側の鋼板の表面温度のことを示す。
[面圧:0.03~30.00MPa]
拡散接合時の面圧が低すぎると、固相界面の面積が小さくなり、固相中の原子が十分に拡散しない。その結果、Siが十分に拡散せず、拡散接合界面付近の最大Si量が大きくなり、剥離しやすい拡散接合界面となる。そのため、本実施形態では、拡散接合時の面圧を0.03MPa以上とする。一方、拡散接合時の面圧が大きすぎると、拡散接合時に変形してしまい、拡散接合品の良好な寸法精度が得られない。そのため、本実施形態では、拡散接合時の面圧を30.00MPa以下とする。拡散接合時の面圧は、10.00MPa以下であることが好ましく、5.00MPa以下であることがより好ましい。
得られた拡散接合品について、拡散接合後の接合率、Si濃化度、及び拡散接合後のオーステナイトの平均結晶粒径を測定した。また、拡散接合界面の剥離の有無を確認するため曲げ試験を行った。陽極電解処理は、pHが5.0以上12.0未満の処理液(水酸化ナトリウム水溶液)で、表2及び表3に示す条件で行った。なお、拡散接合後の各オーステナイト系ステンレス鋼板のオーステナイトの平均結晶粒径は、拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、日本工業規格JIS G 0551:2013「鋼-結晶粒度の顕微鏡試験方法」に記載の切断法により測定した。
2 拡散接合界面
3 鋼板
4 観察視野
5 分析領域
10 拡散接合品
Claims (2)
- 積層された複数の鋼板同士が相互に接合されてなり、
前記鋼板は、質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.6~1.5%、
Cr:15.0~20.0%、
Ni:6.0~9.0%、
Mo:0.1~0.5%、
Cu:0.1~0.5%および
N:0.030~0.150%
を含有し、さらに
Nb:0.500%以下、
V:0.500%以下および
Ti:0.500%以下のうち1種または2種以上を含有し、
残部Feおよび不純物からなる化学組成を有する鋼板であり、
前記鋼板同士の接合部に拡散接合界面が形成され、
前記拡散接合界面の鋼板板厚方向の断面において、前記鋼板の板厚方向を幅方向とし、前記拡散接合界面を幅中央とした場合の全幅10μmの領域内における最大Si量と素材Si量との比であるSi濃化度(最大Si量/素材Si量)が5.0以下であり、
前記拡散接合界面の接合率が60.0%以上であり、
前記拡散接合界面から板厚方向に±100~200μm深さの領域において、オーステナイト粒径の平均値が15.0μm以下である拡散接合品。 - 請求項1に記載の前記化学組成を有し、且つオーステナイトの平均結晶粒径が5.0μm以下である金属組織を有する鋼板に、pHが5.0以上12.0未満の電解液中で、n組の電極を用いてn回の陽極電解処理を連続して行う際に、k回目の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量をσk(ただしk=1~n)とし、各回の陽極電解処理における単位面積あたりの電気量の総和をΣσkとしたとき、電気量の総和Σσkが、下記(1)式を満たす条件で陽極電解処理する第1の工程と、
陽極電解処理された前記鋼板の複数枚を直接積層させて、拡散接合温度:850~1050℃、面圧:0.03~30.00MPaで拡散接合を施す第2の工程と、
を順次行うことを特徴とする、請求項1に記載の拡散接合品の製造方法。
Σσk≦25.0(C/dm2)・・・(1)
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