JP7274304B2 - 金属部材 - Google Patents

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Description

本発明は、硬さと靭性に優れた肉盛層を備える金属部材に関する。
従来、金属部材の補修や表面改質などのために、粉末状溶接材料を用いた肉盛溶接法が用いられる。このような肉盛溶接法として、レーザークラッディング法や、プラズマ粉体肉盛溶接法などが知られている。レーザークラッディング法は、母材表面に粉末状溶接材料を供給し、レーザービームの走査によって母材と溶接材料とを一体化することにより、母材の表面に肉盛層を形成する方法である。プラズマ粉体肉盛溶接法は、電極と母材間に発生させたプラズマアーク中に粉末状溶接材料をキャリアガスにより送給し、溶融した溶接材料を母材表面に衝突させて堆積させることにより、母材の表面に肉盛層を形成する方法である。
特許文献1では、レーザークラッディング法により基材上に下部肉盛層を形成した後、下部肉盛層に直接に重ねて上部肉盛層をレーザークラッディング法により形成して、耐摩耗性を有する工具材を製造する方法が開示されている。ここで、基材としては、SKD(合金工具鋼)、SUJ(高炭素クロム軸受鋼)、SKH(高速度工具鋼)等から工具材の使用目的に応じたものが用いられる。また、下部肉盛層と上部肉盛層とを形成する金属粉末は同一組成であって、Fe系のSKHが用いられる。
特許文献2では、溶接材料を用いてTIG溶接により金型表面に肉盛部を形成することによって、金型を補修する方法が開示されている。ここで、金型はJIS規格のSKD61からなる。溶接材料は、C:0.15~0.30%、Si:0.20~1.00%、Mn:0.30~1.50%、Cr:3.6~6.0%、Mo:0.8~1.5%、V:0.10~0.80%、残部Fe及び不可避的元素から成る合金である。
特開2016-155155号公報 特開2011-245488号公報
特許文献2のように金属部材を肉盛部によって補修する場合、母材と溶接材料とは、同一又は類似の組成であることが好ましい。これにより、溶接時における母材に対する溶湯の濡れ性が良好となり、溶湯の流動性も良好となるので、母材と溶接材料との融合不良に起因する溶接不良を防ぐことができる。
特許文献1では、下部肉盛層と上部肉盛層とを形成する金属粉末は同一組成であるものの、この金属粉末と基材の組成は異なる。更に、この金属粉末は肉盛層の熱処理(即ち、焼入及び焼戻)が考慮されておらず、焼入及び焼戻により肉盛層が硬くなると、肉盛層の靭性を確保できない。
特許文献2では、母材と溶接材料とは同一又は類似の組成であるが、熱処理(即ち、焼入及び焼戻)が考慮されておらず、焼入及び焼戻により肉盛層が硬くなると、肉盛層の靭性を確保できない。
本発明は以上に鑑みてされたものであり、その目的は、母材と同一又は類似の組成であり、且つ、焼入及び焼戻後の硬さ及び靭性に優れた肉盛層を備える又は焼入及び焼戻後には硬さ及び靭性に優れた肉盛層を備え得る金属部材を提供することにある。
本発明に係る金属部材は、Feを主成分とする第1の高速度鋼合金である母材と、
前記母材上にFeを主成分とする第2の高速度鋼合金形成された肉盛層とを備え、
前記第1の高速度鋼合金及び前記第2の高速度鋼合金が、
C:1.0質量%以上2.6質量%以下、
Si:0.05質量%以上1.0質量%以下、
Mn:0.08質量%以上1.0質量%以下、
Cr:10.0質量%以下、
Mo:0.01質量%以上10.0質量%以下、
W:0.01質量%以上15.0質量%以下、
V:1.0質量%以上10.0質量%、
Co:15.0質量%以下を含有し、
残部はFeおよび不可避不純物からなり、
焼入及び焼戻が実施される前の状態の前記肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちγ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bとの和に対する前記積分面積Aの比A/(A+B)が、0.01以上0.20以下であることを特徴とする。
上記金属部材は、好ましくは、焼入及び焼戻が実施された状態の前記肉盛層について、X線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HW[度]と、エネルギー分散型分析装置で得られるマトリックス中のFe値X[原子%]とが、次の数式(I)の関係を満たす。
33≦X-26HW≦65 ・・・(I)
また、上記金属部材は、好ましくは、焼入及び焼戻が実施された状態の前記肉盛層について、X線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HW[度]と、炭化物面積率S[%]とが、次の式(II)を満たす。
12.5≦S+5HW≦18.0 ・・・(II)
本発明に係る金属部材では、肉盛層と母材とが同一又は類似の組成である。つまり、肉盛層の溶接材料も母材と同一又は類似する成分である。これにより、溶接時における母材に対する溶湯の濡れ性が良好となり、溶湯の流動性も良好となるので、母材と溶接材料との融合不良に起因する溶接不良を防ぐことができる。そのうえ、上記肉盛層は、熱処理後の硬さ及び靭性に優れる。
本発明によれば、母材と同一又は類似の組成であり、且つ、熱処理後の硬さ及び靭性に優れた肉盛層を備える金属部材を提供することができる。
図1(a)は、肉盛層のX線回折分析の測定データを示す図表、図1(b)はX線回折分析の測定データから得られたプロファイリングフィッティング結果を示す図表、図1(c)および図1(d)は回折ピークを結晶のピークごとに分離した結果とを示す図表である。
本発明に係る金属部材は、Feを主成分とする第1の高速度鋼合金である母材と、その母材上に、Feを主成分とする第2の高速度鋼合金の粉末で肉盛溶接されてなる肉盛層とを備える。ここで、主成分とは、合金を構成している成分のうちの主たるものを意味する。肉盛溶接の方法としては、レーザークラッディング法やプラズマ粉体肉盛溶接法などの粉体肉盛溶接法が用いられる。
第1の高速度鋼合金及び第2の高速度鋼合金は、Feをベースとして、C:1.0質量%以上2.6質量%以下、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、Cr:10.0質量%以下、Mo:10.0質量%以下、W:15.0質量%以下、V:1.0質量%以上10.0質量%以下、及び、Co:15.0質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。このように特定される第1の高速度鋼合金の組成と第2の高速度鋼合金の組成とは、類似又は一致している。以下、第1の高速度鋼合金及び第2の高速度鋼合金を単に「合金」と称することがある。
[鉄(Fe)]
この合金のベース元素は、Feである。換言すれば、この合金は、Fe基合金である。Fe基合金は、強度及び耐摩耗性に優れる。この合金からなる粉末は、特に金属部材の補修に適している。
[炭素(C)]
Cは、Feに固溶する。Cは、合金の硬度、強度及び耐摩耗性に寄与しうる。Cの含有率が1.0質量%以上である合金は、硬さに優れる。この観点から、Cの含有率は1.0質量%以上が好ましい。Cの含有率が2.6質量%以下である合金は、靱性に優れる。この観点から、Cの含有率は2.6質量%以下が好ましい。
[ケイ素(Si)]
Siは、Feに固溶する。Siは、合金の強度及び耐ヒートチェック性に寄与しうる。この観点から、Siの含有率は0.05質量%以上が好ましい。Siの含有率が1.0質量%以下である合金は、靱性に優れる。この観点から、Siの含有率は1.0質量%以下が好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、合金の硬度及び強度に寄与しうる。この観点から、Mnの含有率は0.08質量%以上が好ましい。Mnの含有率が1.0質量%以下である合金は、靱性に優れる。この観点から、Mnの含有率は1.0質量%以下が好ましい。
[クロム(Cr)]
Crは、Feへの他の元素の固溶に寄与する。Crは、合金の耐食性及び耐ヒートチェック性に寄与しうる。この観点から、Crの含有率は3.05質量%以上が好ましい。Crの含有率が10.0質量%以下である合金は、靱性に優れる。この観点から、Crの含有率は10.0質量%以下が好ましい。
[モリブデン(Mo),タングステン(W),バナジウム(V)]
モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及び、バナジウム(V)は、Cと微細な炭化物を形成し、合金の強度改善に寄与する。しかしながら、これらの元素の過剰の添加は延靭性の低下等を招く。このような観点から、Moの含有率は、0.01質量%以上が好ましく、10.0質量%以下が好ましい。Wの含有率は、0.01質量%以上が好ましく、15.0質量%以下が好ましい。Vの含有率は、1.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以下が好ましい。
[コバルト(Co)]
Coは、Feと共に合金のベースになりうる。CoはFeに固溶することで焼入性が増し、合金の強度向上に寄与する。このような観点から、Coの含有率は、0.01質量%以上が好ましく、15.0質量%以下が好ましい。
〔合金粉末の製造方法〕
合金粉末は、アトマイズ法、粉砕法等によって製造されうる。アトマイズ法として、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、及び、ディスクアトマイズ法が例示される。合金に不純物が混入しにくいとの観点から、ガスアトマイズ法及びディスクアトマイズ法が好ましい。合金に不純物が混入しにくいとの観点から、不活性ガス雰囲気でのアトマイズが好ましい。量産性の観点から、ガスアトマイズが好ましい。
〔金属部材の補修方法〕
ここで、本発明に係る金属部材の適用例として、肉盛層で補修された金属部材について説明する。この金属部材(即ち、母材)は、第1の高速度鋼合金の粉末が粉末冶金法を用いて成形されたものである。但し、母材は、粉末成形体に限定されない。この金属部材の補修箇所に、第2の高速度鋼合金の粉末を溶接材料として肉盛溶接が施されることによって、肉盛層が形成される。肉盛溶接方法としては、レーザークラッディング法やプラズマ粉体肉盛溶接法などの粉体肉盛溶接法が用いられる。具体的には、肉盛溶接は以下の手順で行われる。合金粉末の粒子に圧縮ガス等によって速度が与えられ、加速されて進行中の粒子が加熱手段にて加熱される。加熱手段として、ガスの燃焼炎、プラズマ、レーザー等が挙げられる。加熱により、粒子は溶融状態又は半溶融状態となる。この粒子が金属部材に衝突させられ、凝固することにより、粒子同士が結合する。粒子は、下地である金属部材とも結合し、この結合により金属部材の表面に肉盛層が形成される。粒子が金属部材に衝突した後に、加熱がなされてもよい。粒子が金属部材に接触した状態で、加熱がなされてもよい。
上記のように、肉盛層を形成するための溶接材料は金属部材(母材)と同一又は類似の組成であり、肉盛層も母材と同一又は類似の組成である。これにより、溶接時における母材に対する溶湯の濡れ性が良好となり、溶湯の流動性も良好となるので、母材と溶接材料との融合不良に起因する溶接不良を防ぐことができる。
上記のように金属部材(母材)上に形成された肉盛層に関し、第1指標「A/(A+B)」が所定の条件を満たす。Aは、焼入及び焼戻が実施されない状態(以下、「熱処理前状態」と称する)の肉盛層において、X線回折分析して得られる回折ピークのうちγ(111)の積分面積を表す。Bは、熱処理前状態の肉盛層において、X線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の積分面積Bを表す。
積分面積とは、X線回折分析して得られる回折ピークをプロファイルフィッティング法を用いて各結晶のピークごとに分離した結果から得られる面積である。例えば、図1(a)に示す肉盛層のX線回折分析の測定データについて図1(b)に示すプロファイルフィッティングを実施すると、測定データの回折ピークを、図1(c)に示すγ(111)ピークと図1(d)に示すα(110)ピークとに分離することができる。積分面積Aは、分離されたγ(111)ピークの積分面積(図1(c)中、横ストライプ塗り部分の面積)である。積分面積Bは、分離されたα(110)ピークの積分面積(図1(d)中、縦ストライプ塗り部分の面積)である。なお、縦軸の単位(a.u.)は任意単位を示す。
第1指標の値は、0.01以上0.20以下である。つまり、熱処理前状態の肉盛層において、焼入及び焼戻が実施されない状態の前記肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちγ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bとの和に対する前記積分面積Aの比A/(A+B)が、0.01以上0.20以下である。第1指標が所定の条件を満たすことは、熱処理前状態の肉盛層に、γ相(オーステナイト)が存在することを意味する。
γ相中へのCの固溶度は、α相(フェイライト)中へのCの固溶度よりも大きい。そのため、熱処理前状態の肉盛層においてγ相が存在すると、γ相が存在しない場合と比較して、マトリックス中へのCの固溶量が多くなる。熱処理前状態の肉盛層におけるマトリックス中へのCの固溶量は、第1指標の値が大きいほど多い。このような肉盛層に、焼入及び焼戻の熱処理を実施すると、マトリックスはα’相(マルテンサイト)に変態する。焼入及び焼戻が実施された状態(以下、「熱処理後状態」と称する)のマトリックス中のCの固溶量は、熱処理前状態においてγ相が存在しない場合と比較して多い。その結果、熱処理後の肉盛層は、優れた硬さを有する。
また、金属部材上に形成された肉盛層に関し、望ましくは、第2指標「X-26HW」が所定の条件を満たす。HWは、熱処理後状態の肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうち、α(110)の半価幅を表す。Xは、熱処理後状態の肉盛層をエネルギー分散型分析装置で分析して得られる、マトリックス中のFe値[原子%]を表す。第2指標の値は、33以上65以下である。つまり、熱処理後状態の肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HWと、エネルギー分散型分析装置で得られるマトリックス中のFe値X[原子%]とが、次の数式(I)の関係を満たす。
33≦X-26HW≦65 ・・・(I)
マトリックス中のCの固溶元素であるFe値[原子%]が高くなるに従って、マトリックス中のCの固溶量が増大する。マトリックス中のCの固溶量の増加は、硬さの上昇に寄与する。しかし、第2指標の値が過剰又は不足すると、靭性が低下する。そこで、第2指標の値を33以上65以下として、式(I)の関係を満足することによって、肉盛層に硬さを確保しつつ優れた靭性を備える。
更に、金属部材上に形成された肉盛層に関し、望ましくは、第3指標「S+5HW」が所定の条件を満たす。Sは、熱処理後状態の肉盛層の炭化物面積率S[%]を表す。第3指標の値は、12.5以上18.0以下である。つまり、熱処理後状態の肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HWと、炭化物面積率S[%]とは、次の式(II)を満たす。
12.5≦S+5HW≦18.0 ・・・(II)
α(110)の半価幅HWは、マトリックスへのC及び他の合金元素の固溶量の指標となり得る。よって、半価幅HWの値が大きいほど、マトリックスへのCの固溶量が多くなり、肉盛層の硬さが増す。しかし、第3指標の値が過剰又は不足すると、靭性が低下する。そこで、第3指標の値を12.5以上18.0以下として、式(II)の関係を満足することによって、肉盛層に硬さを確保しつつ優れた靭性を備える。
溶接金属の凝固過程は、肉盛層の硬さ及び抗折強度に大きく影響する。このことから、合金粉末を肉盛溶接する際の加熱条件や冷却条件(例えば、レーザー出力条件や予熱条件)、及び/又は、肉盛層の焼入及び焼戻の条件を調えることにより、第1~3指標の値を変化させることができる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[1.試料の作製]
表1に示す合金1~3の所定の組成を有する原料を、準備した。この原料を、真空中にてアルミナ製坩堝で、高周波誘導加熱法にて加熱した。この加熱によって原料を溶融させ、溶湯を得た。坩堝下にある直径が5mmのノズルから、溶湯を落下させた。この溶湯に、高圧アルゴンガスを噴霧し、300kgの粉末を得た。
作製した合金粉末のうち150kgを用いて熱間等方圧加圧法(HIP)により成形体を作製し、それを鍛造して、縦横100mmで厚さが20mmの板材を作製し、これを母材とした。
作製した合金粉末のうち50kgを用い、レーザークラッディング法により、作製した母材の上に肉盛層を形成し、試料を得た。肉盛層は、縦横100mmであり、厚さは10mmであった。
Figure 0007274304000001
合金1の組成の合金粉末を用い、レーザークラッド及びその後の熱処理の条件を変えて、実施例1~17及び比較例1~5の試料を得た。合金2の組成の合金粉末を用い、レーザークラッド及びその後の熱処理の条件を変えて、実施例18~34及び比較例6~10の試料を得た。合金3の組成の合金粉末を用い、レーザークラッド及びその後の熱処理の条件を変えて、実施例35~51及び比較例11~15の試料を得た。
[2.測定方法]
実施例1~51及び比較例1~15の試料に対し、以下の測定を行った。
(γ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bの測定)
X線回折分析装置を用いて、熱処理前状態の各試料についてX線回折分析を行うことにより、各試料のγ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bとを測定し、積分面積Aと積分面積Bとの和に対する積分面積Aの比A/(A+B)を求めた。
(半価幅HWの測定)
X線回折分析装置を用いて、熱処理後状態の各試料についてX線回折分析を行うことにより、各試料のα(110)の半価幅HWを測定した。
(Fe値の測定)
エネルギー分散型分析装置を用いて、熱処理後状態の各試料についてエネルギー分散型分析を行うことにより、各試料のFe値[原子%]を測定した。
(硬さの測定)
「JIS Z 2244」の規定に準拠して、熱処理後状態の各試料について母材及び肉盛層のビッカース硬度を測定した。
(抗折強度の測定)
熱処理後状態の各試料について母材及び肉盛層から、幅が5mmであり、長さが50mmであり、厚さが3mmである試験片を切り出した。この試験片を用い、「JIS Z 2248」の規定に準拠して、抗折強度を測定した。表2~4に示す抗折強度は、5回の測定の平均値である。抗折強度に基づいて靭性を評価することができる。
(炭化物面積率Sの測定)
熱処理後状態の各試料について、光学顕微鏡で写真を撮影し、得られた組織写真を元に画像解析ソフトウェアを用いて炭化物面積率[%]を測定した。
[3.評価結果]
表2~4に、各測定結果、第1~3指標の値、及び、総合評価を示す。
Figure 0007274304000002
Figure 0007274304000003
Figure 0007274304000004
(実施例1~17及び比較例1~5)
表2に示す実施例1~17の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下である。実施例1~17の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、1600MPa以上の十分な抗折強度を有する。比較例1~5の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下の範囲を外れている。比較例1~5の試料は、硬さが54HRC未満であり、硬さが不十分である。
実施例6~15の試料は、第2指標の値が33以上65以下である。つまり、実施例6~15の試料は、式(I)の関係を満たす。実施例6~15の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2000MPa以上の優れた抗折強度を有する。
実施例11~17の試料は、第3指標の値が12.5以上18.0以下である。つまり、実施例11~17の試料は、式(II)の関係を満たす。実施例11~17の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2400MPa以上の更に優れた抗折強度を有する。
表2に示す各試料の総合評価は、次の評価基準(I)に基づく。
A:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2400MPa以上
B:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2000MPa以上2400MPa未満
C:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が1500MPa以上2000MPa未満
F:硬さが54HRC未満
第1~3指標の全てが所定の条件を満たす実施例11~15の試料の総合評価はAとなった。第1,2指標のみが所定の条件を満たす実施例6~10の試料の総合評価はBとなった。第1,3指標のみが所定の条件を満たす実施例16,17の試料の総合評価はAとなった。第1指標のみが所定の条件を満たす実施例1~5の試料の総合評価はCとなった。第1指標が所定の条件を満たさない比較例1~5の試料の総合評価はFとなった。
(実施例18~34及び比較例6~10)
表3に示す実施例18~34の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下である。実施例18~34の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、1600MPa以上の十分な抗折強度を有する。比較例6~10の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下の範囲を外れている。比較例6~10の試料は、硬さが54HRC未満であり、硬さが不十分である。
実施例23~32の試料は、第2指標の値が33以上65以下である。つまり、実施例21~30の試料は、式(I)の関係を満たす。実施例23~32の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2100MPa以上の優れた抗折強度を有する。
実施例28~34の試料は、第3指標の値が12.5以上18.0以下である。つまり、実施例28~34の試料は、式(II)の関係を満たす。実施例28~34の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2500MPa以上の更に優れた抗折強度を有する。
表3に示す各試料の総合評価は、次の評価基準(II)に基づく。
A:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2500MPa以上
B:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2100MPa以上2500MPa未満
C:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が1600MPa以上2100MPa未満
F:硬さが54HRC未満
第1~3指標の全てが所定の条件を満たす実施例28~32の試料の総合評価はAとなった。第1,2指標のみが所定の条件を満たす実施例23~27の試料の総合評価はBとなった。第1,3指標のみが所定の条件を満たす実施例33,34の試料の総合評価はAとなった。第1指標のみが所定の条件を満たす実施例18~22の試料の総合評価はCとなった。第1指標が所定の条件を満たさない比較例6~10の試料の総合評価はFとなった。
(実施例35~51及び比較例11~15)
表4に示す実施例35~51の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下である。実施例35~51の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、1700MPa以上の十分な抗折強度を有する。比較例11~15の試料は、第1指標の値が0.01以上0.20以下の範囲を外れている。比較例11~15の試料は、硬さが54HRC未満であり、硬さが不十分である。
実施例40~49の試料は、第2指標の値が33以上65以下である。つまり、実施例40~49の試料は、式(I)の関係を満たす。実施例40~49の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2200MPa以上の優れた抗折強度を有する。
実施例45~51の試料は、第3指標の値が12.5以上18.0以下である。つまり、実施例45~51の試料は、式(II)の関係を満たす。実施例45~51の試料は、70~54HRCの十分な硬さを有し、且つ、2600MPa以上の更に優れた抗折強度を有する。
表4に示す各試料の総合評価は、次の評価基準(III)に基づく。
A:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2600MPa以上
B:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が2200MPa以上2600MPa未満
C:硬さが70~54HRC、且つ、抗折強度が1700MPa以上2200MPa未満
F:硬さが54HRC未満
第1~3指標の全てが所定の条件を満たす実施例45~49の試料の総合評価はAとなった。第1,2指標のみが所定の条件を満たす実施例40~44の試料の総合評価はBとなった。第1,3指標のみが所定の条件を満たす実施例50,51の試料の総合評価はAとなった。第1指標のみが所定の条件を満たす実施例35~39の試料の総合評価はCとなった。第1指標が所定の条件を満たさない比較例11~15の試料の総合評価はFとなった。
以上から、本発明に係る金属部材は、肉盛層と母材とが同一又は類似の組成でありながら、肉盛層は焼入及び焼戻後の硬さ及び靭性に優れることが明らかとなった。

Claims (4)

  1. Feを主成分とする第1の高速度鋼合金である母材と、
    前記母材上にFeを主成分とする第2の高速度鋼合金で形成された肉盛層とを備え、
    前記第1の高速度鋼合金及び前記第2の高速度鋼合金が、
    C:1.0質量%以上2.6質量%以下、
    Si:0.05質量%以上1.0質量%以下、
    Mn:0.08質量%以上1.0質量%以下、
    Cr:10.0質量%以下、
    Mo:0.01質量%以上10.0質量%以下、
    W:0.01質量%以上15.0質量%以下、
    V:1.0質量%以上10.0質量%以下、
    Co:15.0質量%以下を含有し、
    残部はFe及び不可避不純物からなり、
    焼入及び焼戻が実施される前の状態の前記肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちγ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bとの和に対する前記積分面積Aの比A/(A+B)が、0.01以上0.20以下である、
    金属部材。
  2. 焼入及び焼戻が実施された状態の前記肉盛層について、X線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HW[度]と、エネルギー分散型分析装置で得られるマトリックス中のFe値X[原子%]とが、次の数式(I)の関係を満たす、
    請求項1に記載の金属部材。
    33≦X-26HW≦65 ・・・(I)
  3. 焼入及び焼戻が実施された状態の前記肉盛層について、X線回折分析して得られる回折ピークのうちα(110)の半価幅HW[度]と、炭化物面積率S[%]とが、次の式(II)を満たす、
    請求項1又は2に記載の金属部材。
    12.5≦S+5HW≦18.0 ・・・(II)
  4. Feを主成分とする第1の高速度鋼合金である母材と、Feを主成分とする第2の高速度鋼合金の粉末とを用意すること、
    前記母材上に前記粉末を肉盛溶接して肉盛層を形成すること、及び、
    前記肉盛層が形成された前記母材に焼入及び焼戻を含む熱処理を実施すること、を含み、
    前記第1の高速度鋼合金及び前記第2の高速度鋼合金が、
    C:1.0質量%以上2.6質量%以下、
    Si:0.05質量%以上1.0質量%以下、
    Mn:0.08質量%以上1.0質量%以下、
    Cr:10.0質量%以下、
    Mo:0.01質量%以上10.0質量%以下、
    W:0.01質量%以上15.0質量%以下、
    V:1.0質量%以上10.0質量%以下、
    Co:15.0質量%以下を含有し、
    残部はFe及び不可避不純物からなり、
    焼入及び焼戻が実施される前の状態の前記肉盛層をX線回折分析して得られる回折ピークのうちγ(111)の積分面積Aとα(110)の積分面積Bとの和に対する前記積分面積Aの比A/(A+B)が、0.01以上0.20以下である、
    金属部材の製造方法。
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