JP7274133B2 - 水中構造体の回収システム - Google Patents
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Description
また、海洋観測には観測ブイのように、水中ではなく水上で係留された状態で、又は水上を漂流した状態で観測を行う装置も知られている。
回収方法としては、回収船である支援母船と水上構造体とを接近させ、回収船に搭載したクレーンで水上構造体を水中から回収用船舶上に揚収するのが一般的である。
しかしながらこの方法では、回収船にクレーンを設置するスペースと、水上構造体を収容するスペースが必要となる。また、水上構造体を回収する際には、水上構造体にクレーンの吊具を接続する作業や、クレーンで水上構造体を船上に引き上げる作業を行う必要があり、その作業には乗組員が必要となる。そのため、この方法では、回収船が大型化し易いという問題がある。
そのため、回収フレームが水中構造体を保持及び曳航する必要がないので、回収フック単体を保持できる強度と大きさを回収フレームが備えていればよく、回収フレームを小型化できる。
まず、図1を参照して本実施形態に係る水中構造体の回収システム1の回収対象について、簡単に説明する。
本実施形態に係る回収システムの回収対象は、水上又は水中にある水中構造体であって、回収時にケーブルを水中に繰り出した状態にできる構造体である。具体的には図1の中段に示すように、先端に錘105を取り付けたケーブル103を水中に展開できるAUV101が挙げられる。ただしケーブル103を水中に展開できるのであれば、図1の下段に示すように、先端に浮体105aを取り付けたケーブル103を水中から展開するAUV101aでもよい。また、回収対象は航走するAUVに限られず、ブイのような航走しない構造体でもよい。さらに、ケーブル103の自重でケーブル103自身の水中における位置を保持できるのであれば、錘105や浮体105aは必須ではない。
図1に示すように、回収システム1は、回収フレーム5、回収フック7、保持部9を備えている。また、ここでは、回収フック曳航索15は、展開用曳航装置11に連結されている。
図1では回収フレーム5は回収船3に曳航されている。回収船3としてここでは洋上自律探査機(ASV)を例示するが、AUV101を回収できる程度の推力と航行時の安定性を備えるのであれば、ASVに限定されない。またAUV101を揚収する母船自体を回収船3の代わりに用いてもよい。
水平翼部12には回収フレーム5を曳航するための回収フレーム曳航索13が連結される連結部11cが設けられる。連結部11cは回収フレーム曳航索13を連結できる構造であれば特に限定されない。具体的な形状としてはリング状の金具を例示できるが、フック等でもよい。
図1では水平翼部12の長手方向両端で、かつ曳航方向前方である矢印A1の向きの前方に連結部11cが計2つ設けられている。ただし連結部11cが設けられる位置や数は、曳航時に回収フレーム5の姿勢が安定する位置であれば特に限定しない。
なお、回収フレーム5の曳航時のローリング(横揺)は、回収フレーム5の左右方向の重量バランスで調整し、曳航時のサージング(前後揺)は、回収フレーム5の移動時の特性(重量や抵抗の大きさ等)と回収フック曳航索15の特性(重さや弾性等)で調整する。
図3に示すようにアーム部15a、15bの先端には保持部9が設けられており、この保持部9を介して回収フック7を保持する。
そのため、水平翼部12の俯角を調整することで、回収フレーム5の潜航の程度を調整できる。また、水平翼部12の両端に設けられた垂直尾翼部13a、13bのそれぞれにアーム部15a、15bを取り付けることで、少なくとも2つの回収フック7を互いに干渉しない離れた位置に設けられる。
回収フレーム5は、曳航前あるいはAUV101の回収後に母船に揚収された状態では、曳航時と同じ形態を有している必要はない。
例えば水平翼部12と垂直尾翼部13a、13bの接続部や垂直尾翼部13a、13bとアーム部15a、15bの接続部をヒンジ等で結合して、垂直尾翼部13a、13b及びアーム部15a、15bを折り畳み可能にしてもよい。これにより、母船に揚収された状態では、保管に便利なコンパクトな形状とすることができる。
図3~図5に示すように回収フック7は、フック部27、結索用リング部29、浮力体41、ロック部31、押圧部39、及びストッパ35を備える。
根本部23は、保持部9に連結される部分であり、図5(a)では直線状の線材である。湾曲部25は、ケーブル103を引っ掛けて保持する部分であり、図5(a)では一端が根本部23に接続されたU字状の線材である。
そのため、フック部27が引っ掛けた後のケーブル103がフック部27に対して動き難くなり、AUV101の曳航時にAUV101が回収船3に対して搖動しにくくなる。なお、先細りの形状とする場合、フック部27の内周の間にケーブル103が挟まれて保持されるためには、湾曲部25の対向する内周の間の距離が、ケーブル103の外径よりも小さいことが好ましい。
フック部27を構成する根本部23、湾曲部25、先端部32、及び鍔状部28は、AUV101を引っ掛けて曳航する際に各機能を維持できる程度の強度と、使用環境下で劣化しない程度の耐候性があれば特に材料は限定しない。例えば公知のオーステナイト系ステンレス鋼を使用できる。フック部27の寸法は、ケーブル103の寸法に合わせて適宜設定すればよい。
そのため、ケーブル103が外れ難くなり、回収船3の曳航力を、回収フック曳航索15を介してAUV101に効率よく伝達できる。
この構成にすると、ケーブル103がアーム部15a、15bの前側を伝って保持部9から根本部23に移動して湾曲部25に入る際に結索用リング部29が邪魔にならない。また、フック部27がケーブル103を引っ掛けた状態で回収フレーム5から離脱してフック部27が回収フック曳航索15のみに保持されると、結索用リング部29が回収フック曳航索15に引っ張られて曳航方向である矢印A1を向く。これにより、開放端36が矢印A1と逆の方向である矢印A2の向きを向くため、ケーブル103がフック部27から離脱し難くなる。
回収フック7が回収フレーム5から離脱した状態での浮力を中性浮力にすれば、回収フック7が回収フレーム5から離脱する前後で回収フレーム5の浮力が変わらなくなる。これにより、回収フック7の離脱で回収フレーム5の浮力が変わることで生じる、回収フレーム5の浮力バランスの崩れに起因する姿勢の変化や、急浮上、急降下等の不規則な運動が起こり難くなる。
ストッパ35には押圧部39の他端が当接する。
そのため、フック部27が引っ掛けた後のケーブル103が回収フック7から外れるのを防ぐことができる。
具体的には、保持部9は図5(a)に示すように回収フレーム側嵌合部17、フック側嵌合部19及び、弾性体21を備える。
本体20の外周は、アーム部15aの内周に対応した形状をしている。本実施形態ではアーム部15aが円筒状なので、本体20はアーム部15aの内径未満の外周を有する円筒である。
メスカプラ19aの外周の一部には、周方向に形成されたリング状の溝であるリング溝40が設けられる。
具体的には、弾性体21は本体20内に、解除スリーブ22の端部26と止め板24の間に挿入される。
フック部27に矢印C2の向きに張力が加えられると、フック部27に連結された解除スリーブ22も矢印C2の向きに張力が伝達される。この張力が弾性体21を変形させるのに必要な荷重以下の場合は、弾性体21は変形せず解除スリーブ22及びフック部27は弾性体21によって矢印C1の向きに押圧される。よって解除リング42はリング溝40内を移動せず、メスカプラ19aを回収フレーム側嵌合部17に押圧し続ける。この張力が弾性体21を変形させるのに必要な荷重を超えると、弾性体21は矢印C2の向きに収縮するように変形するため、フック部27及び解除スリーブ22が矢印C2の向きに移動し、根本部23がメスカプラ19aを矢印C1の向きに押圧しなくなる。
この状態では図5(b)に示すように解除リング42はリング溝40内をC2の向きに移動して、リング溝40の右端面をC2の向きに押圧する。これにより、メスカプラ19aがC2の向きに移動して回収フレーム側嵌合部17から外れ、図4に示すように回収フック7が回収フレーム5から離脱する。
よって、ケーブル103を回収フック7で引っ掛けるまでは回収フレーム5が回収フック7を保持し、回収フック7がケーブル103を引っ掛けると回収フック7が回収フレーム5から離脱して回収フック曳航索15によって回収船3に曳航される。
そのため回収フレーム5は、AUV101を保持及び曳航する必要がないので、回収フック7単体を保持できる強度と大きさがあればよく、回収フレーム5を小型化できる。
そのため、回収フック7が回収フレーム5から離脱する基準となる引っ張り力を弾性体21の種類や弾性係数や形状やサイズで調整できるので、回収するAUV101の質量に応じて離脱する基準となる引っ張り力を容易に調整できる。
また、回収フック7が回収フレーム5から離脱する基準となる引っ張り力未満の引っ張り力が回収フック7に加えられても回収フック7は回収フレーム5から離脱しない。そのため、曳航中にケーブル103以外のゴミ等の水中浮遊物を回収フック7が引っ掛けても、回収フック7が回収フレーム5から離脱する可能性を極めて低くできる。
そのため、コイルばねの付勢力を調整すれば、回収するAUV101の質量に応じて引っ張り力を容易に調整できる。ただし、弾性体21はコイルばねには限定されない。回収フック7がケーブル103を引っ掛ける際の引っ張り力で回収フック7が回収フレーム5から離脱する構成にできるのであれば、コイルばね以外のバネでもよく、バネ以外の弾性体でもよい。
この構造では、複数のフック部27の根本部23が止め板24に設けられた複数の図示しない挿通孔を挿通し、解除スリーブ22に固定される。
図1では展開用曳航装置11は枠状の浮体であり、上面に図示しない展開装置を載置可能である。展開用曳航装置11は、曳航フレーム曳航索16を介して回収船3に連結されており、曳航フレーム曳航索16を介して回収船3に曳航される。
また、図1では回収フック曳航索15の一端が展開用曳航装置11に連結されている。そのため回収フック7が回収フレーム5から離脱した状態で回収船3は曳航フレーム曳航索16、展開用曳航装置11、回収フック曳航索15を介して回収フック7を曳航し、回収フック7に引っ掛けたケーブル103を曳航することでAUV101を曳航する。
ただし、展開用曳航装置11は必須ではない。回収システム1とは別に展開装置を用意する場合のように、回収システム1がAUV101を展開する機能を備える必要がない場合は、展開用曳航装置11は不要である。回収システム1が展開用曳航装置11を備えない場合は、回収フック曳航索15の一端を回収船3に直結して、回収船3が直接回収フック7を曳航すればよい。
以上が本実施形態に係る水中構造体の回収システム1の構成の説明である。
次に、図7(a)に示すように、回収フレーム5に回収フック7を装着し、回収船3を用いて回収フレーム5をAUV101の後方まで曳航する。さらに、曳航方向である矢印A1から見たアーム部15a又はアーム部15bの位置が、ケーブル103と重なる位置にする。
その後は図示しない母船まで回収船3がAUV101を曳航し、母船の甲板あるいは格納庫等にAUV101を収容する。回収船3自体にAUV101を収容してもよい。
以上が回収システム1を用いた水中構造体の回収方法の手順の説明である。
そのため回収フレーム5は、AUV101を保持及び曳航する必要がないので、回収フック7単体を保持できる強度と大きさがあればよく、回収フレーム5を小型化できる。
例えば上記した実施形態では、解除リング42がメスカプラ19aのリング溝40を図5(a)のC1の向きに押圧することでメスカプラ19aを回収フレーム側嵌合部17に向けて押圧する構成を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。
例えば根本部23がメスカプラ19aの右端面を図5(a)の矢印C1の向きに直接押圧することで、メスカプラ19aを回収フレーム側嵌合部17に向けて押圧する構成でもよい。
また、上記した実施形態では、解除リング42がメスカプラ19aのリング溝40を図5(a)のC2の向きに押圧することでメスカプラ19aが回収フレーム側嵌合部17から離脱する構成を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。
例えば、根本部23の抜け止め23bが解除スリーブ22の止め板24を図5(a)のC2の向きに押圧することで、本体20がフック部27にC2の向きに引っ張られてメスカプラ19aが回収フレーム側嵌合部17から離脱する構成でもよい。
3 回収船
5 回収フレーム
7 回収フック
9 保持部
11 展開用曳航装置
11c 連結部
12 水平翼部
13 回収フレーム曳航索
13a、13b 垂直尾翼部
15 回収フック曳航索
15a、15b アーム部
16 曳航フレーム曳航索
17 回収フレーム側嵌合部
17a 基部
19 フック側嵌合部
19a メスカプラ
19b 端部
20 本体
21 弾性体
21a 挿通孔
21b キー溝
22 解除スリーブ
22a 穴部
23 根本部
23a キー
23b 抜け止め
24 止め板
25 湾曲部
25a 軸
26 端部
27 フック部
28 鍔状部
29 結索用リング部
31 ロック部
32 先端部
35 ストッパ
36 開放端
37 環状部
39 押圧部
40 リング溝
41 浮力体
42 解除リング
101、101a AUV
103 ケーブル
105 錘
105a 浮体
Claims (10)
- 水上又は水中にある水中構造体を回収する、水中構造体の回収システムであって、
回収船又は母船に回収フレーム曳航索で曳航される回収フレームと、
前記回収船又は母船に回収フック曳航索で曳航され、前記水中構造体から水中に繰り出されたケーブルを引っ掛けて前記水中構造体を回収する回収フックと、
前記回収フレームに設けられ、前記回収フックの開放端を曳航方向前方に向けて脱着可能に保持する保持部を備え、
前記回収フックが前記ケーブルを引っ掛ける際に、前記ケーブルによって前記回収フックに加えられる張力で前記回収フックが前記回収フレームから離脱するように前記保持部を構成したことを特徴とする水中構造体の回収システム。 - 前記保持部は、
前記回収フレームに設けられた回収フレーム側嵌合部と、
前記回収フックに設けられ、前記回収フレーム側嵌合部と嵌合するフック側嵌合部と、
前記フック側嵌合部を前記回収フレーム側嵌合部に向けて押圧する弾性体と、
を備える請求項1に記載の水中構造体の回収システム。 - 前記回収フックは、
前記ケーブルを引っ掛ける鉤型のフック部と、
前記フック部の根本に設けられ、前記回収フック曳航索が結索される環状の結索用リング部と、
を備える請求項1又は2に記載の水中構造体の回収システム。 - 前記フック部は、内周が曳航方向後方に向けて先細りの形状を有する請求項3に記載の水中構造体の回収システム。
- 前記回収フックは、
前記フック部に設けられ、浮力を調整する浮力体を備える請求項3又は4に記載の水中構造体の回収システム。 - 前記回収フックは、
前記フック部の開放端を連結して環状部を形成するように前記フック部にその内周側に回動可能に軸支され、先端が前記フック部の内周に当接する棒状のロック部と、
前記ロック部を前記フック部の外周側に回動する向きに押圧する押圧部と、
を備える請求項3~5のいずれか一項に記載の水中構造体の回収システム。 - 前記フック部は、1つの前記保持部に複数設けられる請求項3~6のいずれか一項に記載の水中構造体の回収システム。
- 前記回収フレームは、曳航時の形態で、
前記回収フレーム曳航索が連結される横長の水平翼部と、
前記水平翼部の長手方向両端に設けられた1対の垂直尾翼部と、
前記垂直尾翼部から斜め後方に突き出され、先端に前記保持部が設けられる少なくとも1対のアーム部と、
を備える請求項1~7のいずれか一項に記載の水中構造体の回収システム。 - 前記アーム部は先端が複数に枝分かれした構造を有し、枝分かれした個々の先端のそれぞれに前記保持部が設けられる請求項8に記載の水中構造体の回収システム。
- 前記回収船が、曳航フレーム曳航索で曳航され、かつ、前記水中構造体を展開目標水域に展開するための曳航体である展開用曳航装置を備える請求項1~9のいずれか一項に記載の水中構造体の回収システム。
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