住宅が太陽光発電装置等を備える場合において、太陽光発電装置等で発電した電力を電力網に逆潮流できる要件として、住宅における自家消費率が所定値以上であることが課されることがある。また、住宅がネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)として認められるために、住宅における自家消費率の増大が求められる。
上述した理由等から、太陽光発電装置等を備える集合住宅1(図1参照)において自家消費率を増大させることが求められる。
(集合住宅1の構成例)
図1及び図2に示されるように、一実施形態に係る集合住宅1は、第1住戸部31と、第2住戸部32と、電力供給装置10とを備える。
第1住戸部31は、N1戸の住戸31-1~N1を含む。第2住戸部32は、N2戸の住戸32-1~N2を含む。N1及びN2は、2以上の自然数である。N1とN2とは、同一の値であってもよいし異なる値であってもよい。図2に例示される集合住宅1は、2階建てである。1階の住戸数と2階の住戸数とが同じであるとする。各住戸は、住戸負荷を有する。住戸負荷は、例えば、住戸の居住者が使用する照明器具、冷蔵庫、テレビ、又はエアコンディショナ等の種々の電気機器を含んでよい。本実施形態において、集合住宅1の住戸は、第1住戸部31及び第2住戸部32の2つのグループに分けられているが、3つ以上のグループに分けられてもよい。第1住戸部31及び第2住戸部32は、単に住戸部とも称される。
電力供給装置10は、第1取引メータ21と、第2取引メータ22とを備える。第1取引メータ21は、電力網80と第1住戸部31との間に接続される。第2取引メータ22は、電力網80と第2住戸部32との間に接続される。本実施形態において、集合住宅1は、住戸のグループの数に合わせて、第1取引メータ21及び第2取引メータ22の2つの取引メータを備える。取引メータの数は、住戸のグループの数に合わせて定められ、2つ以上とされてよい。取引メータの数は、1つの共用部取引メータ28を更に含めて、3つ以上とされてもよい。取引メータは、電力網80から集合住宅1に配電する電力会社によって所有されるメータ(契約メータ)であって、電力会社によって封印される必要がある。第1取引メータ21及び第2取引メータ22は、検定付きのメータであるとする。検定付きのメータは、検定メータとも称される。
集合住宅1は、引込盤500を更に備えてよい。電力供給装置10は、引込盤500を含んでもよい。図1の例において、電力供給装置10は、引込盤500を含む。電力供給装置10は、引込盤500に含まれてもよい。図2に例示される集合住宅1において、引込盤500は、電力供給装置10の少なくとも一部を含み、集合住宅1の外壁に取り付けられている。引込盤500は、集合住宅1の他の場所に取り付けられてもよい。
集合住宅1は、電力網80と、第1取引メータ21及び第2取引メータ22との間に接続される主幹ブレーカ81を更に備えてよい。主幹ブレーカ81は、引込盤500に含まれてよい。主幹ブレーカ81がオンの状態となっている場合、集合住宅1は、電力網80に電気的に接続され、電力網80から受電できる。主幹ブレーカ81がオフの状態となっている場合、集合住宅1は、電力網80から電気的に切り離され、電力網80から受電できない。主幹ブレーカ81は、引込盤500の最も一次側に取り付けられているブレーカであって、端子台の代わりにもなり、電力網80から集合住宅1全体に流れる電流を制限する。主幹ブレーカ81がオフの状態になると取引メータが止まる。主幹ブレーカ81は、電力会社によって所有されるブレーカ(契約ブレーカ)ではなく、電力会社によって封印される必要がない。主幹ブレーカ81は、仮に電力網80から第1取引メータ21又は第2取引メータ22までの配線で短絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合に、オフの状態になることによって、配線を安全にオフの状態にさせ得る。
第1取引メータ21から第1住戸部31に向かう配線は、仮想的に設けられている節点212で分岐し、住戸31-1~N1それぞれに接続される。第1取引メータ21は、電力網80から第1住戸部31の全ての住戸に供給される電力量の総和を測定する。第2取引メータ22から第2住戸部32に向かう配線は、仮想的に設けられている節点222で分岐し、住戸32-1~N2それぞれに接続される。第2取引メータ22は、電力網80から第2住戸部32の全ての住戸に供給される電力量の総和を測定する。節点212及び222は、例えば、引込盤500に実装される端子台として実現されてもよい。
集合住宅1は、第1取引メータ21と節点212との間に、第1分岐ブレーカ211を更に備えてよい。集合住宅1は、第2取引メータ22と節点222との間に、第2分岐ブレーカ221を更に備えてよい。第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221は、引込盤500に含まれてよい。集合住宅1は、第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221を備えることによって、第1住戸部31及び第2住戸部32のうち一方だけが電力網80から遮断され得る。例えば、第1住戸部31における停電を伴う電気工事は、第2住戸部32に通電したままで実施され得る。本実施形態において、集合住宅1は、取引メータの数に合わせて、第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221の2つの分岐ブレーカを備える。分岐ブレーカの数は、取引メータの数に合わせて定められ、2つ以上とされてよい。分岐ブレーカの数は、共用部取引メータ28と共用部負荷38との間に接続される1つの共用部ブレーカ281を更に含めて、3つ以上とされてもよい。分岐ブレーカは、電力網80から住戸メータまでの配線で仮に短絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合にオフの状態になることによって、配線を安全にオフの状態にさせ得る。また、分岐ブレーカは、電力網80から後述する分散型電源40までの配線で仮に短絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合にオフの状態になることによって、配線を安全にオフの状態にさせ得る。
集合住宅1は、節点212と、第1住戸部31の住戸31-1~N1のそれぞれとの間に接続される第1住戸メータ23を更に備えてよい。第1住戸メータ23は、引込盤500に含まれてよい。第1住戸メータ23は、住戸31-1~N1のそれぞれが有する住戸負荷において消費される電力量を測定する。集合住宅1は、節点222と、第2住戸部32の住戸32-1~N2のそれぞれとの間に接続される第2住戸メータ24を更に備えてよい。第2住戸メータ24は、引込盤500に含まれてよい。第2住戸メータ24は、住戸32-1~N2のそれぞれが有する住戸負荷において消費される電力量を測定する。住戸メータは、電力会社によって所有されるメータ(契約メータ)ではなく、電力会社によって封印される必要がない。住戸メータが検定メータである必要はない。住戸メータは、検定メータであってもよい。
集合住宅1は、第1住戸メータ23と、第1住戸部31の住戸31-1~N1のそれぞれとの間に接続される第1住戸ブレーカ231を更に備えてよい。第1住戸ブレーカ231は、引込盤500に含まれてよい。集合住宅1は、第2住戸メータ24と、第2住戸部32の住戸32-1~N2のそれぞれとの間に接続される第2住戸ブレーカ241を更に備えてよい。第2住戸ブレーカ241は、引込盤500に含まれてよい。集合住宅1は、第1住戸ブレーカ231及び第2住戸ブレーカ241を備えることによって、住戸毎に電力網80から遮断できる。例えば、ある1つの住戸における停電を伴う電気工事は、他の住戸に通電したままで実施され得る。住戸ブレーカは、分岐ブレーカで分岐した先に流れる電流を制限する。住戸ブレーカは、住戸負荷までの配線で仮に短絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合にオフの状態になることによって、配線を安全にオフの状態にさせ得る。
集合住宅1及び電力供給装置10は、第1分散型電源40aと、第2分散型電源40bとを更に備えてよい。第1分散型電源40a及び第2分散型電源40bは、分散型電源40と総称される。本実施形態において、集合住宅1は、住戸のグループの数に合わせて、第1分散型電源40a及び第2分散型電源40bの2つの分散型電源40を備える。分散型電源40の数は、住戸のグループの数に合わせて定められ、2つ以上とされてよく、少なくとも2つ以上であれば住戸のグループの数より少なくてもよい。なお、分散型電源40の数は、住戸のグループの数より多い場合又は少ない場合があってもよい。分散型電源40の数は、共用部ブレーカ281と共用部負荷38との間に接続される1つの分散型電源40を更に含めて、3つ以上とされてもよい。
第1分散型電源40aは、太陽電池(PV)41aと、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning System)42aとを備える。第2分散型電源40bは、PV41bと、PCS42bとを備える。第1分散型電源40aのPCS42aは、節点212に接続される。第2分散型電源40bのPCS42bは、節点222に接続される。第1分散型電源40aのPCS42aが節点212に接続される場合、第1取引メータ21は、電力網80から第1住戸部31の全ての住戸に供給される電力量の総和と、電力網80から第1分散型電源40aに供給される電力量とを合わせた電力量を測定する。第2分散型電源40bのPCS42bが節点222に接続される場合、第2取引メータ22は、電力網80から第2住戸部32の全ての住戸に供給される電力量の総和と、電力網80から第2分散型電源40bに供給される電力量とを合わせた電力量を測定する。
1つの住戸部に接続される分散型電源40は、PV41及びPCS42のセットを1組だけ備えてもよいし、2組以上備えてもよい。1組のPV41及びPCS42のセットに含まれるPV41及びPCS42それぞれの数は、同じであってもよいし異なってもよい。1組のPV41及びPCS42のセットに含まれるPV41及びPCS42それぞれの数は、1つであってもよいし2つ以上であってもよい。
PV41a及びPV41bは、PV41と総称される。PV41は、太陽光発電パネルであるとする。PV41a及び41bはそれぞれ、第1太陽光発電パネル及び第2太陽光発電パネルとも称される。図2に例示される集合住宅1において、PV41は、集合住宅1の屋根に取り付けられている。PV41は、集合住宅1の屋根に限られず、集合住宅1の敷地内等の他の場所に設置されてよい。PV41は、太陽光のエネルギーを電力に変換する。PV41は、再生可能エネルギー源に含まれる。PV41は、風力発電等の他の再生可能エネルギー源に置き換えられてもよい。電力を生成する再生可能エネルギー源は、再生可能エネルギー発電装置とも称される。PV41は、燃料電池等の他の非再生可能エネルギー電源に置き換えられてもよい。
PCS42a及びPCS42bは、PCS42と総称される。PCS42a及びPCS42bはそれぞれ、第1パワーコンディショナ及び第2パワーコンディショナとも称される。図2に例示される集合住宅1において、PCS42は、集合住宅1の外壁に取り付けられている。PCS42は、集合住宅1の他の場所に取り付けられてもよい。PCS42は、コンバータ又はインバータ等の電力変換装置を含んでよい。PCS42は、PV41が出力する直流電力を、交流電力に変換したり、異なる電圧の直流電力に変換したりする。PCS42は、変換した電力を出力する。PCS42は、出力する電力量を測定してよい。PCS42は、変換した電力を集合住宅1の各住戸の住戸負荷に供給する。PCS42は、第1取引メータ21又は第2取引メータ22を介して電力網80に接続されている。PCS42は、変換した電力のうち、各住戸の住戸負荷で消費しきれない余剰電力を電力網80に逆潮流してよい。余剰電力は、PCS42が出力する電力のうち、各住戸の住戸負荷の消費電力を超える電力に相当する。分散型電源40は、電力網80に直接接続されず取引メータを介して電力網80に接続される。よって、第1取引メータ21及び第2取引メータ22は、電力網80から各住戸の住戸負荷に供給される電力量を測定するとともに、分散型電源40から電力網80に逆潮流される電力量を測定できる。
集合住宅1は、PCS42aと節点212との間に接続される第1PVブレーカ411を更に備えてよい。別の見方をすると、第1PVブレーカ411は、第1取引メータ21と第1分散型電源40aとの間に接続される。第1PVブレーカ411は、引込盤500に含まれてよい。集合住宅1は、PCS42bと節点222との間に接続される第2PVブレーカ421を更に備えてよい。別の見方をすると、第2PVブレーカ421は、第2取引メータ22と第2分散型電源40bとの間に接続される。第2PVブレーカ421は、引込盤500に含まれてよい。集合住宅1は、第1PVブレーカ411及び第2PVブレーカ421を備えることによって、分散型電源40を住戸又は電力網80から遮断できる。例えば、分散型電源40の設置、交換又は修理等の停電を伴う工事は、電力網80から各住戸への通電を維持したままで実施され得る。PVブレーカは、分散型電源40までの配線で仮に短絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合にオフの状態になることによって、配線を取引メータ及び住戸メータから切り離すことができる。また、PVブレーカは、分散型電源40のPV41又はPCS42で仮に地絡事故が発生した場合又は過負荷が発生した場合にオフの状態になることによって、配線を取引メータ及び住戸メータから安全にオフの状態にさせ得る。
本実施形態に係る集合住宅1及び電力供給装置10は、集合住宅1の複数の住戸を含む第1住戸部31又は第2住戸部32を単位とする電力供給先に対して、各単位に対応する電力供給元からの出力電力を供給する。電力供給元となる分散型電源40は、電力供給先の単位毎に分けられる。言い換えれば、本実施形態において電力供給元となる分散型電源40は、複数の電力供給先に出力電力を分散させない。1つの電力供給先に対応する電力供給元は、1つの分散型電源40で構成されてもよいし、複数の分散型電源40で構成されてもよい。1つの電力供給先に対応する1つの電力供給元を構成する少なくとも1つの分散型電源40は、一群の分散型電源40とも称される。電力供給元と電力供給先とが1対1に対応づけられる場合、分散型電源40自身が測定した出力電力の値に基づいて、電力供給先における自家消費率が把握され得る。また、分散型電源40の出力電力を測定するメータ、又は、住戸メータが検定メータでなくても、電力供給先における自家消費率が把握され得る。
集合住宅1は、共用部負荷38を更に備えてよい。共用部負荷38は、共用部取引メータ28及び共用部ブレーカ281を介して電力網80に接続される。共用部負荷38は、集合住宅1の共用部に設けられている電力負荷である。共用部は、例えば、集合住宅1の廊下又は階段等であってよい。共用部負荷38は、共用部に設けられている機器、例えば、外灯等の照明器具、浄化槽ブロア電源、火災報知機等の非常用設備および空調機器等の他の機器を含んでよい。共用部負荷38は、分散型電源40に接続されていなくてもよいし、接続されていてもよい。本実施形態において、共用部負荷38は、分散型電源40に接続されていないとする。共用部負荷38における消費電力は小さいことが多い。また、共用部負荷38の消費電力のうち照明の消費電力が多くを占めている。よって、共用部負荷38における昼間の消費電力は更に小さくなることが多く、分散型電源40の出力電力の自家消費に寄与しにくい。共用部負荷38が分散型電源40に接続されていないことによって、分散型電源40の出力電力の自家消費率の低下が避けられ得る。集合住宅1は、共用部負荷38に接続される分散型電源40を更に備えてよい。共用部負荷38に接続される分散型電源40は、停電時の共有スペースの非常用電源として機能し得る。共用部負荷38に接続される分散型電源40は、小規模の太陽光発電設備を含んでよい。集合住宅1が共用部負荷38だけに接続される分散型電源40を備えない場合であっても、共用部負荷38は、第1住戸部31に接続されている第1分散型電源40a、又は、第2住戸部32に接続されている第2分散型電源40bに接続されていてもよい。
集合住宅1におけるZEHの判定は、各住戸の単位で実行されてもよいし、集合住宅1全体を単位として実行されてもよいが、住戸部の単位でも実行され得る。ZEHの判定が住戸部の単位で判定されるために、各住戸部は、固定的な隔壁で明確に区分され、かつ、共用する部分を有しないようにグループ化されることが求められる。ZEHの判定の単位となる条件を満たすグループは、例えば、集合住宅1の1つの階の住戸を1つの住戸部としてグループ化することで構成され得る。また、ZEHの判定の単位となる条件を満たすグループは、例えば、集合住宅1の複数の階をまたいで垂直方向に並ぶ住戸を1つの住戸部としてグループ化することでも構成され得る。
ZEHの判定において、建築物省エネルギー性能表示制度(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System:BELS)に準拠した評価に用いられる指標が計算されることがある。BELSは、一次エネルギー消費量の基準値からの削減率若しくは基準への適合可否、又は、性能(BEI)に応じた5段階の星マーク等で表示される。BELSの評価に用いられる指標及び手法は、外皮性能及び一次エネルギー消費量によることを基本とする。また、その評価方法は省エネ基準による。ZEHの判定対象となる住戸部等の単位におけるBELSの指標は、ZEHの判定対象の単位に接続される太陽電池システムアレイ容量に基づいて算定され得る。つまり、ZEHの判定対象の単位が細かくなると、太陽電池システムアレイ容量の入力数が増大する。ここで、太陽電池システムアレイ容量をZEHの判定対象の単位の住棟面積で按分し算定することによって、BELSの指標を算定するために必要な太陽電池システムアレイ容量の入力数が削減され得る。
<自家消費率>
分散型電源40が出力する電力のうち電力供給先となる住戸負荷で消費される電力は、自家消費電力とも称される。分散型電源40が出力する電力のうち電力供給先となる住戸負荷で消費される電力、つまり自家消費される電力の割合は、自家消費率とも称される。自家消費率は、所定期間における分散型電源40の出力電力量に対する住戸負荷の自家消費電力量の比として算出されるとする。本実施形態において、所定期間は1日に設定されるとする。所定期間は、1日に限られず、他の長さに設定されてよい。
1日の自家消費率は、分散型電源40の出力電力の大きさの1日の時間変化パターンと、住戸負荷の消費電力の大きさの1日の時間変化パターンとが近いほど高くなる。例えば、分散型電源40の出力電力が太陽光発電による電力である場合、昼間の出力電力が大きい。したがって、住戸負荷の消費電力が昼間に大きくなる場合、その住戸負荷における自家消費率が高くなる。
しかし、各住戸の居住者の生活パターンによって各住戸の住戸負荷の消費電力の時間変化の傾向は異なる。例えば、仮に住戸31-1の居住者が昼間不在となるパターンで生活している場合、住戸31-1の住戸負荷の消費電力は、昼間に小さくなる。そうすると、住戸31-1における自家消費率が低くなる。一方で、仮に住戸31-2の居住者が昼間在宅となるパターンで生活している場合、住戸31-2の住戸負荷の消費電力は、昼間に大きくなる。そうすると、住戸31-2における自家消費率が高くなる。このように、各住戸の住戸負荷における自家消費率は、大きく異なることがある。
<各住戸を電力供給先とみなす場合との対比>
仮に、集合住宅1の各住戸が別々の電力供給先とみなされるとする。つまり、住戸31-1と住戸31-2とが別々の電力供給先として分けられているとする。また、住戸31-1に対する電力供給元となる分散型電源40の出力電力と、住戸31-2に対する電力供給元となる分散型電源40の出力電力とは、昼間に大きくなる同一の時間変化パターンを有するとする。この場合において、昼間の消費電力が小さい住戸31-1の自家消費率は、昼間の消費電力が大きい住戸31-2の自家消費率よりも低くなる。各住戸の居住者の生活パターンに合わせるために各住戸に対する電力供給元となる分散型電源40の出力電力の大きさの仕様を変更することは容易ではない。仕様の変更が容易ではない理由は、変更のためのコストがかかること、又は、居住者の入れ替わりに伴って変更する必要が生じ得ること等が挙げられる。
一方で、本実施形態に係る集合住宅1及び電力供給装置10は、N1戸の住戸31-1~N1を含む第1住戸部31に対して一群の分散型電源40から電力を供給できる。住戸31-1~N1それぞれの居住者の生活パターンは、異なる可能性が高い。したがって、第1住戸部31全体で見れば、住戸31-1~N1の住戸負荷の消費電力の総和が平準化される。消費電力の平準化によって、第1住戸部31全体における消費電力の時間変化パターンが変動しにくくなる。したがって、第1住戸部31の各戸の居住者の生活パターンが第1住戸部31全体における自家消費率に与える影響が低減され得る。また、第1住戸部31全体における消費電力の時間変化パターンのうち、昼間の消費電力の大きさにあわせて一群の分散型電源40の出力電力の仕様を定めることによって、第1住戸部31全体における自家消費率が高められ得る。
また、集合住宅1の各住戸が別々の電力供給先とみなされる場合、ZEHの判定は、各住戸を対象として実施される。そうすると、住戸の数だけZEHの判定を実施する必要がある。一方で、本実施形態に係る集合住宅1によれば、ZEHの判定が各住戸部を対象として実施され得る。したがって、ZEHの判定の回数が住戸の数から住戸部の数に削減され得る。
<住戸のグループ化の例>
図3及び図4に例示されるように、2階建ての集合住宅1が仮定される。集合住宅1は、1階に101号室、102号室及び1XX号室を有し、2階に201号室、202号室及び2XX号室を有する。
図3の例において、第1住戸部31は、1階の住戸を含む。第2住戸部32は、2階の住戸を含む。1階に位置する101号室、102号室及び1XX号室はそれぞれ、住戸31-1、住戸31-2及び住戸31-N1として表されている。2階に位置する201号室、202号室及び2XX号室はそれぞれ、住戸32-1、住戸32-2及び住戸32-N2として表されている。図3の例では、階毎に住戸がグループ化されているといえる。このように階毎に住戸がグループ化されることによって、電力供給元としての一群の分散型電源40から電力供給先としての各住戸までの配線が階毎に集約され得る。その結果、配線工事が容易になり得る。各階は、区別のために、第1の階又は第2の階等と称される。「第1の階」は、1階を意味してもよいし、2階よりも上の階を意味してもよい。「第2の階」は、2階を意味してもよいし、1階、又は、3階よりも上の階を意味してもよい。
図4の例において、第1住戸部31は、101号室と201号室とを含む。101号室及び201号室はそれぞれ、住戸31-1及び住戸31-2として表されている。第2住戸部32は、1XX号室と2XX号室とを含む。1XX号室及び2XX号室はそれぞれ、住戸32-1及び住戸32-2として表されている。つまり、第1住戸部31及び第2住戸部32はそれぞれ、垂直方向に並ぶ住戸を含む。垂直方向に並ぶ住戸の窓の向きは、例えば南向きでそろったり、西向きでそろったりし得る。住戸負荷の消費電力の大きさ又は時間変化パターンは、住戸の窓の向きに相関し得る。垂直方向に並ぶ住戸がグループ化されることによって、それぞれのグループの窓の向きに対応して定まる消費電力に基づいて、一群の分散型電源40の仕様が決定され得る。
また、集合住宅1において、垂直方向に並ぶ住戸は、同一の間取りで構成されることがある。住戸負荷の消費電力の大きさ又は時間変化パターンは、住戸の間取りに相関し得る。垂直方向に並ぶ住戸がグループ化されることによって、それぞれの間取りに対応して定まる消費電力に基づいて、一群の分散型電源40の仕様が決定され得る。
また、集合住宅1において、垂直方向に並ぶ住戸は、角住戸であったり、他の住戸に挟まれた中住戸であったりし得る。垂直方向に並ぶ住戸がグループ化されることによって、角住戸だけ、又は、中住戸だけで住戸がグループ化され得る。角住戸か中住戸であるかに対応して定まる消費電力に基づいて、一群の分散型電源40の仕様が決定され得る。なお、以下において窓の向き若しくは間取りに起因する住戸負荷の消費電力の大きさ又は時間変化パターンは、住戸の特性とも称される。
集合住宅1の住戸は、上述の例に限られず、他の種々のパターンでグループ化されてよい。例えば、グループ化された住戸の床面積の総和の差が小さくなるように、集合住宅1の住戸がグループ化されてよい。具体的には、グループ化された住戸の床面積の総和の差が所定値未満になるように、集合住宅1の住戸がグループ化されてよい。床面積の総和の差が小さくされることによって、住戸のグループを対象としたZEHの判定が容易になる。所定値は、例えば、住戸1戸分の床面積であってよい。所定値は、集合住宅1の中で床面積が最小の住戸1戸分の床面積であってよい。所定値は、集合住宅1の中で床面積が最大の住戸1戸分の床面積であってよい。所定値として、床面積が最小の住戸1戸分の床面積である第1面積と、床面積が最大の住戸と床面積が最小の住戸との間の床面積の差である第2面積とのうち、小さい方の面積が適用されてよい。
<全住戸を1つの電力供給先とみなす場合との対比>
仮に、集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされるとする。この場合、集合住宅1の全住戸に対して一群の分散型電源40が電力を供給することになる。そうすると、集合住宅1の各住戸の特性にかかわらず、集合住宅1の全住戸の平均的な特性に合わせて分散型電源40の仕様が決定されることになる。
一方で、本実施形態に係る集合住宅1及び電力供給装置10は、集合住宅1の一部の住戸をグループ化して電力供給先とする。これによって、住戸の特性に合わせたグループ化が可能になる。そして、各グループに電力を供給する分散型電源40の仕様が、各グループに含まれる住戸の特性に合うように決定され得る。このようにすることで、各グループにおける分散型電源40の出力電力の自家消費率が高められ得る。その結果、集合住宅1全体として自家消費率が高められ得る。また、各住戸部における自家消費率が高められることによって、各住戸部を対象としたZEHの判定において、各住戸部がZEHに該当すると判定されやすくなる。
また、集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされる場合、集合住宅1の全住戸に対して一群の分散型電源40が電力を供給することになる。したがって、一群の分散型電源40の出力電力の容量が大きくされる。しかし、出力電力の容量が大きい分散型電源40は、設置又は運用に割高なコストがかかる。
また、分散型電源40の出力電力は、電力網80に逆潮流されることがある。ここで、電力網80全体として逆潮流される電力が増大して電力網80に供給される電力が需要電力を上回る可能性が生じた場合、電力会社から分散型電源40に対して出力電力を制限する出力制御が指示されることがある。出力制御の指示は、分散型電源40の出力電力の容量が大きいほど受けやすい。よって、出力電力の容量が大きい分散型電源40は、出力制御の対象となりやすい。また、出力電力の容量が所定値未満である分散型電源40は、出力制御の対象から除外される。例えば、出力電力の容量が10kW未満である分散型電源40は、出力制御の対象から除外されることがある。
また、集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされる場合、集合住宅1の全住戸で電力網80から一括して受電することになる。集合住宅1の住戸数によっては、電力網80からの受電契約が高圧契約になることがある。高圧契約になった場合、高圧設備の設置及び管理者の選任等の追加のコストが発生する。
また、集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされる場合、取引メータの容量が大きくされる必要がある。また、分散型電源40の出力電力を測定するメータが設けられる場合、そのメータの容量が大きくされる必要がある。例えば、メータの容量が120Aを超えた場合、そのメータのサイズは、容量が120A以下である場合と比較して急激に大きくされる必要がある。メータのサイズの増大は、コストを増大させる。
以上のことから、仮に集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされる場合、分散型電源40の出力電力の容量の制限、及び、電力網80からの受電容量の制限のために、集合住宅1の住戸数が制限される。
一方で、本実施形態に係る集合住宅1及び電力供給装置10は、集合住宅1の住戸の一部の住戸を電力供給先としてグループ化する。これによって、集合住宅1全体の住戸数にかかわらず、一群の分散型電源40の出力電力の容量を所定値以内に限定しつつ消費電力を平準化できるように、電力供給先となる第1住戸部31のような住戸のグループが構成され得る。その結果、消費電力の平準化を可能にする集合住宅1を設計する際に、集合住宅1全体の住戸数の自由度が増大する。
<PCS42等の設置位置>
図5に示されるように、第1分散型電源40aのPCS42aと、第2分散型電源40bのPCS42bとは、集合住宅1の1か所にまとめて設置されてよい。このようにすることで、PCS42の設置工事又はメンテナンス等が実施されやすくなる。
図6に示されるように、PCS42a及び42bはそれぞれ、第1住戸部31及び第2住戸部32に設置されてよい。このようにすることで、PCS42から電力供給先となる各住戸の住戸負荷までの配線が短くされ得る。また、PCS42と住戸負荷とを接続する配線が、他のグループのPCS42と住戸負荷とを接続する配線と混同されにくくなる。図6に例示されるPCS42の配置は、集合住宅1の全住戸が1つの電力供給先とみなされる場合に実現されにくいが、集合住宅1の住戸が住戸部にグループ化されることによって実現されやすい。また、引込盤500は、住戸部毎に設けられても構わない。例えば、第1住戸部31に設けられる引込盤500は、主幹ブレーカ81、第1取引メータ21、第1分岐ブレーカ211、第1PVブレーカ411、及び第1住戸メータ23及び第1住戸ブレーカ231を備えてもよい。第2住戸部32に設けられる引込盤500は、主幹ブレーカ81、第2取引メータ22、第2分岐ブレーカ221、第2PVブレーカ421、及び第2住戸メータ24及び第2住戸ブレーカ241を備えてもよい。また、主幹ブレーカ81、第1取引メータ21、第2取引メータ22及び共用部取引メータを備えた引込盤が第1住戸部31及び第2住戸部32に設けられる引込盤500と別に設けられてもよい。第1住戸部31に設けられる引込盤500は、第1分岐ブレーカ211、第1PVブレーカ411、及び第1住戸メータ23及び第1住戸ブレーカ231を備えてもよい。第2住戸部32に設けられる引込盤500は、第2分岐ブレーカ221、第2PVブレーカ421、及び第2住戸メータ24及び第2住戸ブレーカ241を備えてもよい。
<PV41の角度又は方位>
図7に示されるように、PV41は、その法線が太陽5に向かうように設置されてよい。PV41の法線が太陽5に向かう場合、PV41が受ける太陽光の日射強度が最大になる。つまり、PV41は、太陽5の高度に合わせて設置されることによって大きいパワー密度で太陽光を受け、出力電力を増加させることができる。
太陽5Sは、夏の太陽を表しており、一点鎖線で表される鉛直方向に対してθ1で表される角度を有する二点鎖線で表される方向に位置する。太陽5Wは、冬の太陽を表しており、一点鎖線で表される鉛直方向に対してθ2で表される角度を有する二点鎖線で表される方向に位置する。太陽5の位置は、夏において天頂に近づき、冬において地平線に近づく。つまり、θ1は、θ2よりも小さい。
集合住宅1の中の住戸は、その位置によって夏に暑くなりやすい住戸と、冬に寒くなりやすい住戸とを含み得る。夏に暑くなりやすい住戸は、夏に多くの電力を消費し得る。冬に寒くなりやすい住戸は、冬に多くの電力を消費し得る。例えば、高層階の住戸は、集合住宅1内部の熱の上昇、又は、集合住宅1の屋根若しくは屋上への日射によって、夏に暑くなりやすいことがある。低層階の住戸は、周囲の土地の放射冷却によって冬に寒くなりやすいことがある。角住戸は、壁面への日射によって、中住戸よりも夏の昼間に暑くなりやすいことがある。西向きの窓を多く有する住戸は、西日を受けることによって夏に暑くなりやすいことがある。
夏に暑くなりやすい住戸が住戸部としてグループ化されてよい。夏に暑くなりやすい住戸を含む住戸部における夏の消費電力は、冬の消費電力よりも多くなり得る。この場合、夏に暑くなりやすい住戸を含む住戸部に電力を供給する分散型電源40は、夏の出力電力が冬の出力電力よりも多くなるように構成され得る。夏に暑くなりやすい住戸を含む住戸部に電力を供給する分散型電源40のPV41は、PV41Sと表されるとする。PV41Sは、その法線が夏の太陽5Sに向くように設置されている。PV41は、夏の太陽5Sに向くように設置される場合、太陽5の平均的な高度に合わせて設置される場合と比べて、夏の出力電力を大きくできる。
冬に寒くなりやすい住戸が住戸部としてグループ化されてよい。冬に寒くなりやすい住戸を含む住戸部における冬の消費電力は、夏の消費電力よりも多くなり得る。この場合、冬に寒くなりやすい住戸を含む住戸部に電力を供給する分散型電源40は、冬の出力電力が夏の出力電力よりも多くなるように構成され得る。冬に寒くなりやすい住戸を含む住戸部に電力を供給する分散型電源40のPV41は、PV41Wと表されるとする。PV41Wは、その法線が冬の太陽5Wに向くように設置されている。PV41は、冬の太陽5Wに向くように設置される場合、太陽5の平均的な高度に合わせて設置される場合と比べて、冬の出力電力を大きくできる。
西向きの窓を多く有する住戸は、西日を受ける夕方の時間帯において暑くなりやすいことがある。そこで、西向きの窓を多く有する住戸が住戸部としてグループ化されてよい。西向きの窓を多く有する住戸を含む住戸部の夕方における消費電力は、朝又は正午頃における消費電力よりも多くなり得る。この場合、西向きの窓を多く有する住戸を含む住戸部に電力を供給する分散型電源40は、夕方の出力電力が朝又は正午頃の出力電力よりも大きくなるように構成され得る。
PV41は、図8に破線でPV41Hとして示されるように、太陽の高度が最も高くなる方向に向けて設置されることが多い。太陽の高度が最も高くなる方向は、北半球では南であり、南半球では北である。図8は、北半球におけるPV41の設置方位の例を示している。図8において、南の方角は、紙面の手前側の向きである。西の方角は、紙面の左側の向きである。PV41が太陽の高度が最も高くなる方向に向けて設置されることによって、1日を通してPV41が発電できる電力量が高められ得る。一方で、PV41は、図8に実線でPV41Yとして示されるように、夕方になって西側に位置する太陽に向けて設置されてよい。このようにすることで、PV41Yは、PV41Hのように設置された場合と比べて、夕方の出力電力を大きくできる。
以上述べてきたように、電力供給装置10を備える集合住宅1の住戸は、種々の特性に基づいて複数の住戸部に分けられ得る。そして、本実施形態に係る集合住宅1は、各住戸部の特性に基づいて、その住戸部に電力を供給する分散型電源40のPV41の配置を変更できる。その結果、集合住宅1における分散型電源40の出力電力の自家消費率が高められ得る。
<蓄電池>
集合住宅1及び電力供給装置10は、蓄電池を更に備えてもよい。蓄電池は、分散型電源40に並列に接続される。蓄電池は、図1に示される第1分散型電源40aに並列に接続される場合、第1PVブレーカ411とPCS42aとの間に接続されるとする。蓄電池は、図1に示される第2分散型電源40bに並列に接続される場合、第2PVブレーカ421とPCS42bとの間に接続されるとする。蓄電池は、分散型電源40の出力電力のうち住戸の住戸負荷で消費されない余剰電力を充電してよい。蓄電池は、充電した電力を、分散型電源40の出力電力が減少したタイミングで放電し、住戸負荷に供給してもよい。集合住宅1が蓄電池を備えることによって、分散型電源40の出力電力の自家消費率が更に高められ得る。また、蓄電池によって自家消費率が更に高められることによって、余剰電力が小さくされ得る。余剰電力が小さくされることによって、本実施形態に係る集合住宅1の分散型電源40が仮に出力制御の対象になった場合に逆潮流できず無駄になる電力が小さくされ得る。
<引込盤500>
図9に示されるように、引込盤500は、第1区画510と、第2区画520と、第3区画530と、第4区画540と、第5区画550とを備える。第1区画510には、主幹ブレーカ81が実装される。第2区画520には、第1取引メータ21及び第2取引メータ22が実装される。第3区画530には、第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221並びに第1PVブレーカ411及び第2PVブレーカ421が実装される。第4区画540には、第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24が実装される。第5区画550には、第1住戸ブレーカ231及び第2住戸ブレーカ241が実装される。第1取引メータ21及び第2取引メータ22が実装される第2区画520は、取引メータ区画とも称される。第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24が実装される第4区画540は、住戸メータ区画とも称される。
第1区画510は、引込盤500の端部に位置する。これによって、電力網80と主幹ブレーカ81との間の配線が接続されやすくなる。第1区画510と第2区画520とは隣接している。これによって、主幹ブレーカ81から第1取引メータ21及び第2取引メータ22までの配線が短くされ得る。第2区画520と第3区画530とは隣接している。これによって、第1取引メータ21及び第2取引メータ22から第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221までの配線が短くされ得る。第3区画530と第4区画540とは隣接している。これによって、第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221並びに第1PVブレーカ411及び第2PVブレーカ421から第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24までの配線が短くされ得る。第4区画540と第5区画550とは隣接している。これによって、第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24から第1住戸ブレーカ231及び第2住戸ブレーカ241までの配線が短くされ得る。また、第3区画530は、第1区画510及び第2区画520に隣接してよい。これによって、配線が短くされたり省スペース化が実現されたりし得る。さらに、第4区画540は、第2区画520及び第3区画530に隣接してよい。これによって、配線が短くされたり省スペース化が実現されたりし得る。さらに、第1区画510と第3区画530とが並ぶ方向と、第2区画520と第4区画540とが並ぶ方向とが一致してよい。これによって、作業員が引込盤500における各部品の位置を理解しやすくなる。以上のように、引込盤500の内部における配線が全体として短くされ得る。これによって、引込盤500における配線作業が容易になり得る。また、引込盤500の内部の省スペース化が実現され得る。また、配線における電力損失の低減が実現され得る。図9に例示される引込盤500における配線は、マクロ的に見れば、電力網80につながる主幹ブレーカ81から住戸負荷につながる住戸ブレーカまでをつづら折り状に接続しているともいえる。
第1取引メータ21及び第2取引メータ22が実装される第2区画520と、第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24が実装される第4区画540とが分けられる。取引メータは、電力会社によって管理され、電力会社の作業員以外が自由に触れないように電力会社によって封印される。一方で、住戸メータは、集合住宅1の管理主体によって管理され、適宜メンテナンス作業等が実施される。住戸メータが実装される区画と取引メータが実装される区画とが分けられていることによって、取引メータが封印されている場合でも、住戸メータに対する作業が容易に実施され得る。
第1住戸部31に接続される第1取引メータ21と第1住戸メータ23とは、垂直方向に並んで実装される。第2住戸部32に接続される第2取引メータ22と第2住戸メータ24とは、垂直方向に並んで実装される。このように、同じ住戸負荷に接続される取引メータと住戸メータとが同じ方向に並んで実装されることによって、配線間違いの発生の可能性が減少され得る。また、第1分岐ブレーカ211と複数の第1住戸メータ23それぞれとを接続する複数本の配線は、結束バンド等によって束ねられてよい。第2分岐ブレーカ221と複数の第2住戸メータ24それぞれとを接続する複数本の配線は、結束バンド又は結束チューブ等の結束具によって束ねられてよい。このようにすることでも、配線間違いの発生の可能性が減少され得る。
図9の例において、電力網80に接続する第1区画510と、分散型電源40に接続する第3区画530と、住戸に接続する第5区画550とは、右側に位置する。つまり、引込盤500において、外部の構成と接続する配線を引き出す部分が全て右側に位置する。このようにすることで、引込盤500から配線を引き出す作業が容易になり得る。また、配線が引き出された引込盤500の外観が美しくなり得る。
第1区画510から第5区画550までのそれぞれの区画の配置は、左右で逆にされてもよいし、上下で逆にされてもよいし、対角線で逆にされてもよいし、90度回転してもよい。
引込盤500は、第1取引メータ21及び第2取引メータ22と、第1分岐ブレーカ211及び第2分岐ブレーカ221とが接続される部分に、図10に例示される端子台560を備えてもよい。端子台560は、取引端子台とも称される。端子台560は、第2区画520に位置してもよいし、第3区画530に位置してもよい。
端子台560は、第1取引メータ21と第1分岐ブレーカ211とを互いに接続することを明確にするために、例えば「第1」と記載された標識561を備える。端子台560は、第2取引メータ22と第2分岐ブレーカ221とを互いに接続することを明確にするために、例えば「第2」と記載された標識562を備える。このようにすることで、第1取引メータ21に第2分岐ブレーカ221が接続されるような配線間違いの発生の可能性が低減され得る。
引込盤500は、第1分岐ブレーカ211から第1住戸メータ23に接続される配線と、第2分岐ブレーカ221から第2住戸メータ24に接続される配線とが分岐する部分に、図11に例示される端子台570を備えてもよい。端子台570は、分岐端子台とも称される。端子台570は、第3区画530に位置してもよいし、第4区画540に位置してもよい。
端子台570は、第1住戸メータ23からの配線を接続する第1端子575と、第2住戸メータ24からの配線を接続する第2端子576とを有する。また、第1取引メータ21からの配線は端子台560及び第1分岐ブレーカ211を介して第1端子575に接続されてよい。第2取引メータ22からの配線は、端子台560及び第2分岐ブレーカ221を介して第2端子576に接続されてよい。換言すると端子台570は、第1取引メータ21と第1住戸メータ23とを接続する第1端子575と、第2取引メータ22と第2住戸メータ24とを接続する第2端子576とを有してよい。端子台570は、第1分岐ブレーカ211と第1住戸メータ23とを互いに接続することを明確にするために、例えば「第1」と記載された標識571を備える。端子台570は、第2分岐ブレーカ221と第2住戸メータ24とを互いに接続することを明確にするために、例えば「第2」と記載された標識572を備える。標識571及び572は、第1端子575と第2端子576とを識別可能にする。このようにすることで、配線作業者が第1端子575に第1住戸メータ23からの配線を接続し、第2端子576に第2住戸メータ24からの配線を接続することを容易に理解できる。その結果、第1分岐ブレーカ211に第2住戸メータ24が接続されるような配線間違いの発生の可能性が低減され得る。
端子台570から第1住戸メータ23に接続される複数の配線は、例えば結束具573で束ねられてよい。端子台570から第2住戸メータ24に接続される複数の配線は、例えば結束具574で束ねられてよい。これらの配線は、第1住戸メータ23及び第2住戸メータ24に接続される部分にできるだけ近い部分まで束ねられてよい。各住戸部に接続される配線が束ねられることによって、複数の配線のうち一部の配線が間違った住戸部に接続されるような配線間違いの発生の可能性が低減され得る。
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1住戸部は、第2住戸部と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。