JP7260430B2 - コンクリート柱の補強方法およびコンクリート柱 - Google Patents
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Description
上記補強方法においては、柱の一側面から対面に沿って埋設されている主鉄筋列近傍にまで達する真っ直ぐな長孔を複数本平行もしくは交差するように穿ち、それぞれの長孔に剪断補強材を挿入して周囲を硬化材で固化させるというものであり、複数本の補強材は互いに結合されておらずバラバラである。そのため、補強材によるコアコンクリートの拘束力が充分なものでなかった。
一方、既設のコンクリート柱に対する補強方法は、特許文献1に記載されているような、柱の一側面から真っ直ぐな長孔を穿ち剪断補強材を挿入して固化させるものであり、後からコンクリートを拘束することができる補強材を設けたコンクリート柱はなかった。
本発明の他の目的は、既設のコンクリート柱の一面からコンクリートを拘束可能な剪断補強材を挿入して耐震強度を高めることができるコンクリート柱の補強方法を提供することにある。
少なくとも柱の下端から柱の幅分だけ高い位置までの第1の範囲および柱の上端から柱の幅分だけ低い位置までの第2の範囲に、一面から内部に向かってU字状をなす剪断補強材が配設され、前記剪断補強材の周囲には流動性硬化材が充填、固化されているようにしたものである。
これにより、地震等の揺れが発生した際に相対的に大きな応力が生じ易い床に近い柱の下端部および梁に近い柱の上端部は比較的小さなピッチで配設され、中間部は比較的大きなピッチで配設されるので、柱全体に亘って耐震強度を高めつつ過剰なコストアップを招くのを回避することができる。
これにより、U字状の剪断補強材および補強用プレートで内側のコアコンクリートをしっかりと拘束するため、剪断耐力の向上と合わせて大幅な変形性能の向上を図ることができる。
これにより、補強用プレートをより強固に柱に固定することができ、コアコンクリートの拘束力を高めることができる。
これにより、U字状の剪断補強材をコンクリート柱に形成したU字状の長孔内に配設し易くすることができる。
既設のコンクリート柱の一面よりU字状もしくはコの字状をなす連続した孔を形成する削孔工程と、
前記孔内に剪断補強材を、両端が前記一面より突出した状態に挿入する工程と、
前記剪断補強材の周囲に流動性硬化材を充填する工程と、
前記剪断補強材の両端に係止部をそれぞれ設ける工程と、
を含むようにしたものである。
上記のような手順に従った補強方法によれば、U字状の剪断補強材をコンクリート柱に形成したU字状の長孔内に配設して、コンクリート柱の耐震強度を高めることができる。
前記一面より当該面と直交する方向へ真っ直ぐな一対の縦孔を形成する第1工程と、
前記一対の縦孔の奥部より手前の部位より斜め内側へ向かう方向へ一対の斜孔を形成する第2工程と、
前記縦孔の奥部より内側横方向へ向かい前記一対の縦孔の奥部間を連通する横孔を形成する第3工程と、を含むようにする。
これにより、コンクリート柱の一面より剪断補強材を通すためのU字状をなす連続した長孔を効率良く削孔することができる。
図1(A),(B)は本発明に係るコンクリート柱の一実施形態を示すもので、このうち、図1(A)はコンクリート柱の正面図、図1(B)は図1(A)のコンクリート柱の要部断面平面図である。なお、図1のコンクリート柱10は、既設の鉄筋コンクリート柱に後から剪断補強材を挿入して耐震強度を高めたもので、既設の鉄筋コンクリート柱には所定の間隔をおいて配設された鉛直方向の複数本の主鉄筋11が予め埋設されている。なお、図1(B)に破線で示されているように、主鉄筋11を囲むように配設された帯鉄筋12が設けられていることもある。
ここで、剪断補強材14は、例えば一方の端部に係止部15Aを固着した後、他方の端部を引っ張った状態で係止部15Bが固着することによって、張力が付与された状態で配設されていても良い。また、係止部15A,15Bと補強用プレート13との間にクサビを打ち込んで剪断補強材14に張力を付与するようにしても良い。
係止部15A,15Bは、例えば剪断補強材14の両端部にそれぞれ金属スリーブを嵌合してかしめ器具を用いてかしめることで固着したものでも良いし、剪断補強材14の両端部をこぶ状に塑性変形させたものであっても良い。
また、固定用の直筋16A,16Bは、特に限定されるものでないが、柱の下端部および柱の上端部にのみ剪断補強材14の配設ピッチと同じピッチで配設されている。なお、固定用の直筋16A,16Bは、柱の中間部にも配設して良いし、2本1組でなく1本ずつ配設するようしても良い。さらに、U字状の剪断補強材14と異なる高さ位置に配設しても良い。
図2の変形例は、補強用プレート13を使用する代わりに、各剪断補強材14の端部ごとに座金18を設けたものである。また、剪断補強材14を配設する範囲を例えば柱の下端から柱の幅と同一の高さ位置までの範囲と、柱の上端から柱の幅分だけ低い位置までの範囲に限定しているとともに、図1のものよりもピッチも大きくし、固定用の直筋16A,16Bも使用せず、省略している。なお、座金18を設ける代わりに、柱の下部に一点鎖線で示されているように、各対の係止部15A,15Bに跨る短冊状の鋼板製当て板19を設けるようにしても良い。
長孔の形成に当たっては、先ず、図3(A)に示すように、前方へ向かって高圧水を噴出可能なノズル21Aを有する高圧ランス20を使用して、一方(図では右方)の主鉄筋11の列の内側に真っ直ぐな縦孔31Aを、破線で示すような所定の深さ位置まで削孔する。続いて、図3(B)に示すように、対向する主鉄筋11の列の内側に真っ直ぐな縦孔31Bを所定の深さ位置まで削孔する。
その後、図5(A)に示すように、横方向へ高圧水を噴出可能なノズル21Cを有する高圧ランス20を使用して、一方の縦孔31Aの奥部の上記補助孔33A’へ高圧水を噴出して、他方の縦孔31Bへ向かう横孔33Aを中央付近まで延長させる。
続いて、図5(B)に示すように、他方の縦孔31Bに対しても、奥部から少し手前位置に上記と反対方向へ向かって補助孔33B’を削孔した後に、斜孔32Bを削孔し、補助孔を延長させて横孔33Bを中央付近まで削孔して貫通させる。これにより、ほぼU字状をなす通路を有する空隙が形成される。
また、補強用プレート13を柱の一面に固定するため固定手段は、柱に打設した直筋16A,16Bおよびナット17A,17Bに限定されず、例えば鋲やバンド等を用いて固定するようにしても良い。
また、前記実施形態においては、コンクリート柱の一面から剪断補強材14を挿入して柱を補強しているが、周囲に作業スペースがあればコンクリート柱の複数の面から剪断補強材14を挿入して柱を補強するようにしても良い。
さらに、前記実施形態においては、本発明を鉄筋コンクリート柱の補強に適用した場合を例にとって説明したが、本発明は鉄筋コンクリート柱以外のコンクリート構造物の補強にも利用することができる。
11 主鉄筋
12 帯鉄筋
13 補強用プレート
14 剪断補強材
15A,15B 係止部
16A,16B 固定用の直筋
17A,17B ナット
18 座金
20 高圧ランス
21A~21C ノズル
Claims (6)
- 少なくとも柱の下端から柱の幅分だけ高い位置までの第1の範囲および柱の上端から柱の幅分だけ低い位置までの第2の範囲に、一面から内部に向かってU字状をなす剪断補強材が配設され、前記剪断補強材の周囲には流動性硬化材が充填、固化され、
前記第1の範囲および前記第2の範囲には前記剪断補強材が所定のピッチで複数本配設されているとともに、前記第1の範囲および前記第2の範囲以外の範囲には、前記ピッチよりも大きいピッチで複数本のU字状をなす剪断補強材が配設されていることを特徴とするコンクリート柱。 - 柱の一面に接合された補強用プレートを備え、前記剪断補強材の両端は前記補強用プレートの表面より突出し、突出した前記剪断補強材の両端には係止部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート柱。
- 前記補強用プレートは複数の剪断補強材に対応する大きさを有し、前記補強用プレートを前記柱の一面に固定するため固定手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート柱。
- 前記剪断補強材は鋼線を撚り合わせてなるワイヤロープであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンクリート柱。
- 既設のコンクリート柱の一面よりU字状もしくはコの字状をなす連続した孔を形成する削孔工程と、
前記孔内に剪断補強材を、両端が前記一面より突出した状態に挿入する工程と、
前記剪断補強材の周囲に流動性硬化材を充填する工程と、
前記剪断補強材の両端に係止部をそれぞれ設ける工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート柱の補強方法。 - 前記削孔工程は、
前記一面より当該面と直交する方向へ真っ直ぐな一対の縦孔を形成する第1工程と、
前記一対の縦孔の奥部より手前の部位より斜め内側へ向かう方向へ一対の斜孔を形成する第2工程と、
前記縦孔の奥部より内側横方向へ向かい前記一対の縦孔の奥部間を連通する横孔を形成する第3工程と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート柱の補強方法。
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