図1から図9を参照して、調光装置の一実施形態を説明する。
調光装置を構成する調光シートは、例えば、車両および航空機などの移動体が備える窓に取り付けられる。調光シートは、例えば、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓、オフィスに設置されたパーティション、店舗に設置されたショーウインドウ、および、映像を投影するスクリーンなどに取り付けられる。
調光シートの形状は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。調光シートの型式は、駆動信号の入力によって不透明から透明に変わるノーマル型でもよいし、駆動信号の入力によって透明から不透明に変わるリバース型でもよい。調光装置は、1つ以上の調光シートを備える。調光装置の備える調光シートは、1つの調光シートから構成される単層体でもよいし、1つの調光シートが他の調光シートに重なる積層体でもよい。
以下、調光装置の備える調光シートが2つのリバース型の調光シートから構成される積層体である例を示す。
[調光装置]
図1および図2を参照して調光装置の一例を説明する。
図1が示すように、調光装置10は、調光部11と、駆動部12とを備える。調光部11は、2つのリバース型の調光シートを備える。1つの調光シートは、調光層21、第1配向層22、第2配向層23、第1透明電極層24、および第2透明電極層25を備える。調光層21の厚さ方向において、第1配向層22と第2配向層23とが調光層21を挟む。調光層21は、第1配向層22と第2配向層23との間に位置する。調光層21は、第1配向層22と第2配向層23とに接する。調光層21の厚さ方向において、第1透明電極層24と第2透明電極層25とが、一対の配向層22,23を挟む。調光層21は、透明電極層間24,25の間に位置する。第1透明電極層24は、第1配向層22に接する。第2透明電極層25は、第2配向層23に接する。調光シートは、第1透明電極層24を支持する第1透明基材26を備える。調光シートは、第2透明電極層25を支持する第2透明基材27を備える。
調光装置10は、第1透明電極層24の一部に取り付けられた第1電極24Aと、第2透明電極層25の一部に取り付けられた第2電極25Aと、を備える。調光装置10は、第1電極24Aに接続された第1配線24Bと、第2電極25Aに接続された第2配線25Bと、を備える。第1電極24Aは、第1配線24Bによって駆動部12に接続される。第2電極25Aは、第2配線25Bによって駆動部12に接続される。
調光装置10は、2つの調光ユニットを備える。2つの調光ユニットは、第1調光ユニット11UN1、および第2調光ユニット11UN2から構成される。1つの調光ユニットは、1つの調光シート、第1電極24A、第1配線24B、第2電極25A、および第2配線25Bを備える。1つの調光ユニットは、調光装置10のなかの調光シートの厚さ方向における繰り返しの単位である。
第1調光ユニット11UN1は、第2調光ユニット11UN2と同様の構造を有する。第2調光ユニット11UN2の第2透明基材27は、第1調光ユニット11UN1の第1透明基材26に重なっている。第2調光ユニット11UN2の第2透明基材27は、第1調光ユニット11UN1の第1透明基材26に光学用透明粘着剤を介して接着されている。複数の調光ユニットから構成される調光装置10は、1つの調光ユニットから構成される調光装置10と比べて、調光装置10に入る光の光路長を調光装置10において長くする。
調光装置10は、2つの駆動部12を備えてもよい。1つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1に駆動信号を入力する駆動部12と、第2調光ユニット11UN2に駆動信号を入力する。他の駆動部12は、第2調光ユニット11UN2に駆動信号を入力する。2つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを同時に不透明とする。2つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを同時に透明とする。2つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを別々に不透明としてもよい。調光装置10は、1つの駆動部12を備えてもよい。1つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1に駆動信号を入力し、かつ第2調光ユニット11UN2に駆動信号を入力する。1つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを同時に不透明とする。1つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを同時に透明とする。1つの駆動部12は、第1調光ユニット11UN1と第2調光ユニット11UN2とを別々に不透明としてもよい。
[調光シート]
図2が示すように、調光層21は、透明高分子層21Pと、液晶組成物21LCとを備える。
透明高分子層21Pは、可視光を透過する光透過性を有する。透明高分子層21Pは、多数の空隙21Dを備える。透明高分子層は、重合性組成物の硬化体である。透明高分子層は、光硬化性化合物の硬化体でもよいし、熱硬化性化合物の硬化体でもよい。液晶組成物21LCは、空隙21Dの内部を埋める。
透明高分子層21Pを形成する光化合物の一例は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール化合物、これら各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。アクリレート化合物は、モノアクリレート化合物、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物の一例は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物である。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
液晶組成物21LCは、液晶化合物LCMと、二色性色素と、を含有する。液晶組成物21LCは、液晶化合物LCM、および二色性色素の他に、透明高分子層21Pを形成するための重合性組成物、液晶組成物21LCの粘度を低下させる可塑剤などを含有してもよい。調光層21の全質量に対する液晶組成物21LCの質量の比率は、30質量%以上60質量%以下でもよい。液晶組成物21LCは、反応性メソゲン化合物をさらに含有する。液晶化合物LCMが垂直配向するとき、反応性メソゲン化合物もまた垂直配向する。垂直配向する反応性メソゲン化合物がネットワーク化することによって、液晶化合物LCMの垂直配向が促される。すなわち、ネットワーク化した反応性メソゲン化合物の配向規制力は、液晶化合物LCMの垂直配向を促す。
調光層21の型式は、高分子分散型である。高分子分散型の調光層21は、多数の空隙21Dを画定する透明高分子層21Pを備える。液晶組成物21LCは、透明高分子層21Pに分散した空隙21Dのなかに保持される。高分子分散型の調光層21は、ポリマーネットワーク型の調光層21でもよいし、カプセル型の調光層21でもよい。ポリマーネットワーク型の調光層21は、3次元の網目状を有した透明高分子層21Pを備えると共に、相互に連通した網目の空隙21Dのなかに液晶組成物21LCを保持する。カプセル型の調光層21は、透明高分子層21Pのなかに分散したカプセル状の空隙21Dのなかに液晶組成物21LCを保持する。
液晶化合物LCMの一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系から構成される群から選択される少なくとも1種である。
液晶化合物LCMのNI点は、液晶化合物LCMがネマチック相(N相)から等方性液体相(I相)に相転移する温度である。液晶化合物LCMのNI点は、環境温度において、液晶化合物LCMの異方性が消失する度合いを示す。液晶化合物LCMのNI点は、液晶化合物LCMにおける分子間相互作用の度合いを少なからず反映する。液晶化合物LCMが2種類以上の化合物の組み合わせである場合、液晶化合物LCMのNI点は、各化合物の配合比を加重とした各化合物におけるNI点の加重平均値である。液晶化合物LCMのNI点は、NI点が相互に異なる2種類以上の液晶化合物の組成によって上昇も降下も可能である。100℃のような高い環境温度において液晶化合物LCMの配向秩序を高めることが要求される場合、NI点が100℃以上であることが好ましい。透明高分子層21Pを形成するための重合性組成物と液晶化合物LCMと均一化を高めることが要求される場合、NI点が145℃以下であることが好ましい。
液晶化合物LCMのCN点は、液晶化合物LCMが結晶相(C相)からネマチック相(N相)に相転移する温度である。液晶化合物LCMのCN点は、環境温度において、液晶化合物LCMの流動性が消失する度合いを示す。液晶化合物LCMが2種類以上の化合物の組み合わせである場合、液晶化合物LCMのCN点は、各化合物の配合比を加重とした各化合物におけるCN点の加重平均値よりも低い。液晶化合物LCMのCN点は、NI点が相互に異なる2種類以上の化合物の組成によって上昇も降下も可能である。-20℃のような低い環境温度において液晶化合物LCMの流動性を高めることが要求される場合、CN点が25℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。
液晶化合物LCMの長軸方向と短軸方向との屈折率差Δn(Δn=異常光屈折率ne-常光屈折率no)は、液晶化合物LCMにおける引力や斥力などの度合いを示す。液晶化合物LCMの屈折率差Δnは、波長が650nmの可視光線における屈折率の差であり、駆動信号の供給時と停止時との間での可視光線の散乱度合いの差を示す。液晶化合物LCMが2種類以上の化合物の組み合わせである場合、液晶化合物LCMの屈折率差Δnの上限値は、全ての化合物の屈折率差Δnから得られる上限値である。液晶化合物LCMの屈折率差Δnの下限値は、全ての化合物の屈折率差Δnから得られる下限値である。
高い環境温度における液晶化合物LCMの配向制御性を高めることが要求される場合、屈折率差Δnの下限値が高いことが好ましい。透明と不透明との間のヘイズの差を高めることが要求される場合、屈折率差Δnの下限値が高いことが好ましい。100℃のような高い環境温度で液晶化合物LCMの配向制御性を高めることが要求される場合、液晶化合物LCMの屈折率差Δnの下限値が0.05であることが好ましく、0.1であることがより好ましい。ヘイズの差を高めることが要求される場合、液晶化合物LCMの屈折率差Δnの下限値が0.05であることが好ましく、0.1であることがより好ましい。
二色性色素は、分子長軸方向における可視光の吸光度を、分子短軸方向における可視光の吸光度よりも高める。液晶化合物LCMをホストとしたゲストホスト型式によって駆動される。二色性色素は、液晶化合物LCMの配向変化に合わせて、透明から有色に可逆的に変化する。液晶組成物21LCは、1種の二色性色素、あるいは2種以上の二色性色素の組み合わせを含有する。二色性色素の組み合わせは、二色性色素の組み合わせの呈する色が調光シートの不透明時に呈する色であるように、適宜調整される。
調光シートの不透明時に呈する色は、黒色でもよいし、有彩色を帯びた黒色でもよい。二色性色素の一例は、不透明の調光シートにおけるCIE1976(L*a*b*)表色系の色度a*を、-15以上15以下、色度b*が-15以上15以下にする。CIE1976(L*a*b*)表色系における色度a*、および色度b*は、JIS-Z-8781-4(ISO 11664-4)に規定されるCIE1976(L*a*b*)色空間の色座標の算出方法に準拠して特定される。調光層21の全質量に対する二色性色素の質量の比率は、二色性色素の配合比である。二色性色素の配合比の一例は、1質量%以上5質量%以下である。二色性色素の配合比を高めることは、調光装置10のコントラストを高める一方、液晶化合物LCMの応答性を低める。調光装置10のコントラストを高める観点から、二色性色素の配合比は、液晶化合物LCMの応答性を得られる範囲のなかで、上限値であることが好ましい。
二色性色素は、液晶化合物をホストとしたゲストホスト型式によって駆動され、これによって特定の色を呈する。二色性色素は、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも一種である。二色性色素は、一種の化合物、あるいは二種以上の化合物の組み合わせである。調光層21の全質量を100質量%に設定する場合に、二色性色素の質量は1質量%以上5質量%以下であってよく、1質量%以上3.5質量%以下であることが好ましい。耐光性を高めること、および、二色比を高めることが要求される場合、二色性色素は、アゾ化合物およびアントラキノン化合物からなる群から選択される少なくとも一種であり、よりが好ましくはアゾ化合物である。
調光層21は、スペーサーを含有してもよい。スペーサーは、調光層21の全体にわたり分散している。スペーサーは、スペーサーの周辺において調光層21の厚さを定め、かつ、調光層21の厚さを均一にする。スペーサーは、ビーズスペーサーでもよいし、フォトレジストの露光および現像によって形成されるフォトスペーサーでもよい。スペーサーは、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。調光シートの不透明時にスペーサーの視認性を抑えること、あるいは調光シートの不透明時に呈する色の明度を抑えることが要求される場合、スペーサーの呈する色は、調光シートの不透明時に呈する色と同色であることが好ましい。
調光層21の厚さの一例は、2μm以上30μm以下である。液晶化合物LCMに対する配向規制力の作用を強めることが求められる場合、調光層21の厚さは、5μm以上25μm以下であることが好ましい。透明高分子層21Pを相分離によって形成する場合、調光層21の厚さが5μm以上であることは、直径が1μm以下の空隙21Dの偏在を可能にする。また、調光層21の厚さ方向において、液晶組成物21LCの密度が異なる領域が調光層21に生成されることが可能である。調光層21の厚さが25μm以下であることによって、調光層21の製造時において、液晶化合物LCMと重合性組成物とを含む塗液を露光した場合に、液晶化合物LCMと透明高分子層21Pとの適切な相分離が可能である。
第1配向層22は、調光層21のなかで第1配向層22と接する面から、液晶化合物LCMに配向規制力を作用させる。第2配向層23は、調光層21のなかで第2配向層23と接する面から、液晶化合物LCMに配向規制力を作用させる。配向層22,23は、可視光を透過する光透過性を有する。配向層22,23の一例は、垂直配向層である。垂直配向層が加える配向規制力は、配向層22,23のなかで調光層21に接する面に対して垂直であるように、液晶化合物LCMの長軸方向を配向させる。配向層22,23は、液晶化合物LCMの長軸が透明電極層24,25に対して実質的に垂直であると判断される範囲において、長軸が垂直に対して数度傾くように液晶化合物LCMを配向させてもよい。配向層22,23の厚さの一例は、0.02μm以上0.5μm以下である。
配向層22,23を構成する材料は、有機化合物でもよいし、無機化合物でもよいし、これらの有機無機複合材料でもよい。第1配向層22を構成する材料と、第2配向層23を構成する材料は、相互に等しくてもよいし、相互に異なってもよい。配向層22,23を構成する有機化合物の一例は、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。配向層22,23を構成する無機化合物の一例は、シリコン酸化物、あるいは酸化ジルコニウムである。配向層22,23を構成する有機無機複合材料は、無機構造と有機構造とを備えるシリコーンである。
第1透明電極層24、および第2透明電極層25は、駆動信号の入力によって、調光層21の厚さ方向に電場を形成する。透明電極層24,25は、可視光を透過する光透過性を有する。透明電極層24,25の厚さの一例は、0.005μm以上0.1μm以下である。
透明電極層24,25を構成する材料は、無機化合物でもよいし、有機化合物でもよいし、有機無機複合材料でもよい。透明電極層24,25を構成する無機化合物の一例、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である。透明電極層24,25を構成する有機化合物の一例は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。透明電極層24,25を構成する有機無機複合材料は、金属ナノワイヤを含有する有機化合物である。
第1透明基材26は、第1透明電極層24を支持する。第2透明基材27は、第2透明電極層25を支持する。透明基材26,27は、調光シートの貼り付けられる曲面に追従するような可撓性を有してもよいし、自重によって変形しない剛体でもよい。透明基材26,27の少なくとも一方は、調光装置10の適用される対象に貼り付けられる。透明基材26,27の厚さの一例は、15μm以上250μm以下である。透明基材26,27の厚さ15μm以上であることは、調光シートの機械的な耐久性、および調光層21の化学的な耐久性を高める。透明基材26,27の厚さが250μm以下であることは、ロールトゥロールによる調光シートの製造を可能にする。
透明基材26,27を構成する材料は、有機化合物でもよいし、無機化合物でもよい。透明基材26,27を構成する有機化合物の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種である。透明基材26,27を構成する無機化合物の一例は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である。透明基材26,27に適用される接着剤は、透明粘着性、および絶縁性を有する樹脂である。透明基材26,27の接着剤は、例えば光学用透明粘着剤(OCA : Optical Clear Adhesive)である。
電極24A,25Aは、フレキシブルプリント基板でもよいし、金属製のテープでもよい。電極24A,25Aは、導電性接着層によって透明電極層24,25に取り付けられてもよい。駆動部12は、透明電極層24,25を通じて調光層21に駆動信号を入力する。駆動信号は、交流電圧信号でもよいし、直流電圧信号でもよい。
調光層21は、2つの透明電極層24,25の間に形成される電場の変化によって、液晶化合物LCMの配向を変える。液晶化合物LCMにおける配向の変化は、調光層21に入る可視光の散乱度合い、吸光度合い、および透過度合いを変える。
各ユニット11UN1,11UN2は、調光層21に電場が形成されているとき、すなわち、2つの透明電極層24,25の間に電位差が生じているとき、配向層22,23などの配向規制力に抗して液晶化合物LCMを駆動し、相対的に高いヘイズを有する。各ユニット11UN1,11UN2は、調光層21に電圧が印加されているとき、透明高分子層21Pと液晶化合物LCMとの間での屈折率差による散乱によって、濁った状態、すなわち不透明になる。二色性色素は、液晶化合物LCMの駆動に追従し、吸光度を高めるように配向する。これによって、調光層21に電圧が印加されているとき、各ユニット11UN1,11UN2は、黒色不透明になる。
各ユニット11UN1,11UN2は、調光層21に電圧が印加されていないとき、すなわち、2つの透明電極層間24,25の間に電位差が生じていないとき、配向層22,23のなどの配向規制力に従い、電位差が生じているときよりも低いヘイズを有する。各ユニット11UN1,11UN2は、調光層21に電圧が印加されていないとき、透明高分子層21Pと液晶化合物LCMとの間での屈折率差を低めて、調光層21での光の散乱を抑える。二色性色素は、液晶化合物LCMの配向に追従し、吸光度を低めるように配向する。これによって、調光層21に電圧が印加されてないとき、各ユニット11UN1,11UN2は、無色透明になる。
各ユニット11UN1,11UN2が黒色不透明である状態は、調光装置10の暗状態である。各ユニット11UN1,11UN2が無色透明である状態は、調光装置10の明状態である。調光装置10の暗状態における全光線透過率は、調光装置10の明状態における全光線透過率よりも低い。調光装置10は、第1調光ユニット11UN1が黒色不透明であり、かつ第2調光ユニット11UN2が無色透明である半透明を有してもよい。調光装置10は、第2調光ユニット11UN2が黒色不透明であり、かつ第1調光ユニット11UN1が無色透明である半透明を有してもよい。
[調光シートの光学特性]
調光装置10の各調光シートは、下記条件1、および条件2の少なくとも一方を満たす。条件1、および条件2の少なくとも一方を満たすことは、条件1を満たすことでもよいし、条件2を満たすことでもよいし、条件1と条件2との両方を満たすことでもよい。さらに、調光装置のコントラストを高めることが要求される場合、調光装置10の各調光シートは、下記条件3から条件6の少なくとも1つを満たすことが好ましい。条件3から条件6の少なくとも1つを満たすことは、条件3から条件6のなかから選択される1つでもよいし、条件3から条件6のなかから選択される2つ以上の組合せでもよい。なお、調光装置10の各調光シートは、下記条件2に代えて、あるいは下記条件2と共に、下記条件8を満たしてもよい。
(条件1)各調光シートの不透明時のヘイズが79%以上である。
(条件2)各調光シートにおける不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの平均吸光度を差し引いた値である吸光度差が0.4以上である。
(条件3)各調光シートにおける不透明時の全光線透過率が25%以下である。
(条件4)各調光シートにおける不透明時の拡散透過率が16%以下である。
(条件5)各調光シートにおける不透明時の平行線透過率が5%以下である。
(条件6)各調光シートにおける不透明時のクラリティが95%以下である。
(条件8)各調光シートにおける不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの水平吸光度を差し引いた値である吸光度差が0.1以上である。
ヘイズは、ASTM D 1003-00に準拠した測定方法によって得られる。ヘイズの測定器は、例えばBYK haze-gard i indtrument(BYK Gardner社製)である。ヘイズの測定において調光シートに入射する光束に含まれる光線は、直進光である。調光シートに入射する光束に含まれる光線と、光束の光軸との間の最大角は3°未満である。調光シートは、調光シートの表面と、当該表面に入射する光束とが±2°以内でほぼ直角となるように固定される。
調光シートを通過した透過光のうち、調光シートに入射する光束から±2.5°以上それた光は、広角散乱光である。ヘイズは、調光シートを通過した透過光のうち、前方散乱による広角散乱光の百分率である。拡散透過率は、調光シートに入射する入射光のうち、前方散乱による広角散乱光の百分率である。
調光シートを通過する透過光のうち、調光シートに入射する光束から±2.5°未満それた光は、平行線透過光である。平行線透過率は、調光シートに入射する入射光のうち、前方散乱による平行線透過光の百分率である。全光線透過率は、拡散透過率と平行線透過率との和である。
調光シートを通過する透過光のうち、調光シートに入射する光束からそれていない光は、直進透過光である。直進透過光から±2.5°未満それた光は、上述した平行線透過光である。クラリティは、直進透過光の光量LCと、平行線透過光の光量LRとから下記式(1)に基づいて算出される。
100×(LR-LC)/(LR+LC) … 式(1)
全光線透過率、拡散透過率、平行線透過率、およびクラリティは、ASTM D 1003-00に準拠した測定によって得られる。
吸光度は、JIS K 0115:2004に準拠した吸光光度計を用いる測定方法によって得られる。吸光光度計の光源部は、380nm以上780nm以下の可視光を照射する白色LEDである。吸光光度計の測光部は、380nm以上780nm以下の可視光全域にわたる光強度を検出する。
調光装置10のコントラストは、不透明時の全光線透過率に対する透明時の全光線透過率の比である。すなわち、調光装置10のコントラストは、暗状態の全光線透過率に対する明状態の全光線透過率の比である。調光装置10を構成する各調光シートの全透過光は、調光シートによって散乱されずに調光シートを通過する直進透過光と、調光シートに散乱された散乱光とを含む。調光シートの全光線透過率は、直進透過光の光量と散乱光の光量との和に依存する。調光シートのヘイズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比率である。すなわち、調光シートのヘイズは、直進透過光の光量と散乱光の光量との和に対する散乱光の光量に依存する。直進透過光の光量と散乱光の光量との和が一定であっても、直進透過光の光量と散乱光の光量との和に対する散乱光の光量が変わるように、全光線透過率とヘイズとは、各別に変わり得る光学特性である。
液晶組成物21LCのなかで二色性色素の配合比を高めることは、単純に散乱光の光量を低める。二色性色素の配合比を高めることは、散乱光の光量の低下分だけ全光線透過率を低めて、これによりコントラストの向上を可能にする。しかし、二色性色素の配合比は、実際のところ、液晶化合物LCMの応答性を得る範囲のなかで、およそ上限値に定められる。結局のところ、二色性色素の配合比を高めることは、調光装置10のコントラストを高める観点において、限りを有している。
一方、上述したように、二色性色素の吸光特性は、二色性比に基づいて、散乱光に対し高い吸光度を示し、かつ直進透過光に対し低い吸光度を示す。こうした二色性色素の吸光度は、光路長を変数として指数関数的に急峻に増大する。調光シートにおいて直進透過光の散乱を促すことは、不透明時の全光線透過率を低めて、これによりコントラストの向上を可能にする。ただし、二色性色素によって吸光を急峻に高めるためには、直進透過光の散乱を単に促すことのみならず、透明高分子層21Pと液晶組成物21LCとの界面で散乱された光が二色性色素に達する程度に、散乱を高めることを要求する。
本願発明者は、調光装置10のコントラストと、調光シートの光学特性と、の関係を鋭意研究するなかで、相互に重ねられた各調光シートのヘイズのなかに、コントラストを急峻に高める範囲を見出した。そして、上述した条件1を満たす調光装置10であれば、各調光シートの不透明時のヘイズが79%以上であるため、調光装置10におけるコントラストが大きく高まる。
また、調光シートにおける不透明時の吸光度は、透明高分子層21Pと液晶組成物21LCとの界面で散乱された光が二色性色素に吸収されたことを反映する。一方、不透明時と見なされる液晶組成物21LCそのものの吸光度は、散乱による光路長の延長、すなわち光路長の延長による吸収の増大を反映しない。これら、不透明時の吸光度から、不透明時と見なされる液晶組成物の吸光度を差し引いた値である吸光度差は、光路長の延長による吸収の増大分を示す。不透明時と見なされる液晶組成物21LCの吸光度は、不透明時における液晶組成物21LCの吸光度を擬似的に示し得る値であればよい。不透明時と見なされる液晶組成物21LCの吸光度は、例えば、液晶化合物LCMのランダム配向時の吸光度と見なされる、液晶組成物21LCにおける垂直吸光度と水平吸光度との平均値である。あるいは、不透明時の液晶化合物LCMがランダム配向と水平配向との中間を取り得るため、不透明時と見なされる液晶組成物21LCの吸光度は、例えば、液晶組成物21LCにおける水平吸光度でもよい。
本願発明者は、調光装置10のコントラストと、調光シートの光学特性と、の関係を鋭意研究するなかで、相互に重ねられた各調光シートの吸光度差のなかに、コントラストを急峻に高める範囲を見出した。そして、上述した条件2を満たす調光装置10であれば、各調光シートにおける平均吸光度差が0.4以上であるため、調光装置10におけるコントラストが大きく高まる。また、上述した条件8を満たす調光装置10であれば、各調光シートにおける水平吸光度差が0.1以上であるため、調光装置10におけるコントラストが大きく高まる。
[空隙21Dの分布]
調光層21は、第1高密度部21H1、第2高密度部21H2、および低密度部21Lを備えてもよい。
第1高密度部21H1における単位厚さあたりの液晶組成物21LCの密度は、低密度部21Lにおける単位厚さあたりの液晶組成物21LCの密度よりも高い。第1高密度部21H1における単位厚さあたりの空隙21Dの数量密度は、低密度部21Lにおける単位厚さあたりの空隙21Dの数量密度よりも高い。第1高密度部21H1は、第1配向層22に接する。
第2高密度部21H2における単位厚さあたりの液晶組成物21LCの密度は、低密度部21Lにおける単位厚さあたりの液晶組成物21LCの密度よりも高い。第2高密度部21H2における単位厚さあたりの空隙21Dの数量密度は、低密度部21Lにおける単位厚さあたりの空隙21Dの数量密度よりも高い。第2高密度部21H2は、第2配向層23に接する。
調光層21における液晶組成物21LCの密度は、調光層21の厚さ方向における中間で最も低い。調光層21の厚さ方向における中間は、調光層21の厚さ方向において対向する一対の面よりも調光層21の中央寄りの部分である。調光層21の各部における単位厚さ当たりの液晶組成物21LCの密度は、各部が含む液晶組成物21LCの体積を各部の厚さで除算することによって算出される。調光層21における液晶組成物21LCの密度は、調光層21の厚さ方向における中央を含む部分で最も低くてもよい。
透明高分子層21Pにおける空隙21Dの数量密度は、調光層21の厚さ方向における中間で最も低い。透明高分子層21Pの各部における単位厚さ当たりの空隙21Dの数量密度は、各部が含む空隙21Dの数量を各部の厚さで除算することによって算出される。透明高分子層21Pにおける空隙21Dの数量密度は、調光層21の厚さ方向における中央を含む部分で最も低くてもよい。
透明高分子層21Pのなかで液晶化合物LCMが配向層22,23の近傍に偏在することは、配向層22,23の配向規制力による作用を高める。こうした液晶化合物LCMの偏在は、調光装置10の透明時に光透過性を高める。
調光層21において、例えば、第1高密度部21H1の厚さTH1、第2高密度部21H2の厚さTH2、および、低密度部21Lの厚さTLは、互いにほぼ等しい。すなわち、第1高密度部21H1の厚さTH1、第2高密度部21H2の厚さTH2、および、低密度部21Lの厚さTLの一例は、調光層21の厚さT21の1/3である。なお、低密度部21Lの厚さTLは、各高密度部21H1,21H2の厚さTH1,TH2よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。また、第1高密度部21H1の厚さTH1は、第2高密度部21H2の厚さと互いに等しくてもよいし、互いに異なってもよい。
調光層21の厚さ方向に沿う断面において、低密度部21Lの面積に対する、低密度部21Lに含まれる各空隙21Dの面積の総和の百分率は、10%以下でもよい。これにより、低密度部21Lの空隙21Dによって保持される液晶組成物21LCの割合を小さくすることが可能であるから、透明電極層間24,25の間に電位差が生じていない状態において、低密度部21Lに含まれる液晶化合物LCMが調光シートの不透明さを高めることが抑えられる。
さらに、低密度部21Lは、空隙21Dを有しなくてもよい。言い換えれば、低密度部21Lには、液晶組成物21LCが含まれなくてもよい。これにより、調光層21に含まれる全ての液晶化合物LCMが、配向層22,23や反応性メソゲン化合物などの配向規制力に従って配向しやすくなるため、透明電極層間24,25の間に電圧差が生じていない状態での調光シートのヘイズをさらに低めることができる。
このように、低密度部21Lにおいて、低密度部21Lの面積SLに対する各空隙21Dの面積の総和SDは、10%以下でもよいし、5%以下でもよいし、0%でもよい。また、空隙21Dは、調光層21の厚さ方向に沿う断面において、第1配向層22から3.0μm以下の範囲に位置し、かつ、第2配向層23から3.0μm以下の範囲に位置してもよい。
液晶化合物LCMに作用する配向規制力を高めることが要求される場合、第1高密度部21H1に含まれる各空隙21Dは、第1配向層22に接していることが好ましい。また、第2高密度部21H2に含まれる各空隙21Dは、第2配向層23に接していることが好ましい。
調光シートにおいて、調光層21の厚さT21は、2μm以上30μm以下であり、かつ、空隙21Dの直径は、0.1μm以上2μm以下でもよい。空隙21Dの直径は、調光層21の厚さ方向を含む断面において、空隙21Dに外接する円の直径である。調光層21の厚さが2μm以上30μm以下であり、かつ、空隙21Dの直径が、0.1μm以上2μm以下である場合、配向層22,23から離れた位置に空隙21Dが形成されることが抑えられる。空隙21Dの大きさが0.1μm以上2μm以下である場合、配向層22,23の近傍に液晶組成物21LCが保持される。そのため、透明電極層間24,25の間に電圧差が生じていない状態での調光シートの透明さを高めることが可能である。空隙21Dによる散乱の度合いを高めることが要求される場合、空隙21Dの大きさは2μm以下であることが好ましい。空隙21Dによる狭角の散乱度合いを抑えることが要求される場合、空隙21Dの大きさが0.1μm以上に小さいことが好ましい。
[調光シートの製造方法]
調光シートの製造は、まず、透明電極層24,25を形成された透明基材26,27が準備される。次に、透明電極層24,25に配向層22,23が形成される。次に、配向層22,23に塗液が塗布される。塗液は、透明高分子層21Pを形成するための重合性組成物、液晶化合物LCM、および、二色性色素を含む。重合性組成物は、紫外線の照射によって重合可能なモノマー、またはオリゴマーである。次に、透明電極層24,25を通して塗液に紫外線が照射される。これによって、空隙21Dを有した透明高分子層21Pが形成され、かつ空隙21Dに液晶化合物LCM、および二色性色素が保持される。
塗液が紫外線の照射によって硬化する際、液晶化合物LCM、および二色性色素を含む液晶組成物21LCは、重合性組成物のなかにほぼ均一に分布する。次に、重合性組成物が配向層22,23の近傍で硬化しはじめて、重合性組成物の重合体から液晶組成物21LCが分離する。塗布膜のなかに存在する液晶組成物21LCの一部は、分離した液晶組成物21LCと一体になることによって安定しやすいため、配向層22,23に向けて移動する。そして、重合性組成物のほぼ全体が硬化することによって、液晶組成物21LCを取り囲む空隙21Dを有した透明高分子層21Pが形成される。
なお、透明高分子層21Pが形成されるまでの間は、互いに離間した液晶組成物21LCが集まることによってエネルギーを安定させる。重合性組成物の硬化する速度が高い場合、また液晶組成物21LCの移動する速度が高い場合、液晶組成物21LCの集まることが広い範囲で促されるため、空隙21Dの大きさが大きい。重合性組成物の硬化する速度を高めることは、塗液に照射する際の塗液の温度を高めることによって実現できる。他方、重合性組成物の同時期に硬化する範囲が広い場合、液晶組成物21LCの集まる前に、空隙21Dが他の空隙21Dから区切られる。重合性組成物の同時期に硬化する範囲を広めることは、塗液に照射する紫外線の照度を高めることによって実現できる。そして、空隙21Dの成長できる大きさに限りがあるため、重合性組成物の硬化する速度をさらに高めることによって、空隙21Dの形成される範囲は、低密度部21Lに及びやすい。
[試験例]
調光シートの具体的な試験例を以下に示す。
なお、試験例1から試験例10の調光シートは、リバース型である。試験例1から試験例10の調光シートは、配向層22,23、透明電極層24,25、および透明基材26,27を備える。試験例1から試験例10の調光シートは、配向層22,23の間に、液晶化合物LCM、二色性色素、反応性メソゲン化合物、紫外線硬化性化合物、スペーサー21S、および重合開始剤を含む塗膜を形成し、塗膜のなかで紫外線硬化性化合物を重合させることによって得られた。
また、試験例21から試験例24の調光シートは、ノーマル型である。試験例21から試験例24は、配向層22,23、透明電極層24,25、および透明基材26,27を備える。試験例21から試験例24の調光シートは、配向層22,23の間に、液晶化合物LCM、二色性色素、反応性メソゲン化合物、紫外線硬化性化合物、スペーサー21S、および重合開始剤を含む塗膜を形成し、塗膜のなかで紫外線硬化性化合物を重合させることによって得られた。ノーマル型の配向層22,23は、二色性色素に配向規制力を作用させ、二色性色素の水平配向による吸光を高める。
また、試験例25から試験例37の調光シートは、配向層22,23を省略された構成であり、透明電極層24,25、および透明基材26,27を備える。試験例25から試験例37の調光シートは、透明電極層24,25の間に、液晶化合物LCM、二色性色素、反応性メソゲン化合物、紫外線硬化性化合物、スペーサー21S、および重合開始剤を含む塗膜を形成し、塗膜のなかで紫外線硬化性化合物を重合させることによって得られた。
試験例1から試験例10の調光シートに共通する材料(a)から材料(h)を以下に示す。なお、材料(c)から材料(h)は、試験例21から試験例37の調光シートに共通する。
(a)配向層22,23:垂直配向膜
(b)透明電極層24,25:酸化インジウムスズ
(c)透明基材26,27:ポリエチレンテレフタレートフィルム
(d)スペーサー21S:シリカ製の真球状粒子
(e)液晶化合物LCM:フッ素系液晶化合物
(f)重合開始剤:光重合開始剤(Irgacure Oxe04:BASF社製)
(g)重合性組成物:イソボニルアクリレートと、ペンタエリスリトールトリアクリレートと、ウレタンアクリレートとの混合物
(h)二色性色素:アゾ系化合物混合色素(製品名Irgaphor Black X12 DC、BASF社製)
[試験例1]
試験例1の調光シートを製造するための塗液に対する材料(e)から材料(h)の配合比を以下に示す。
(e)液晶化合物LCM:46質量%
(f)重合開始剤:1質量%
(g)重合性組成物:49質量%
(h)二色性色素:2質量%
第1配向層22の上に、粒径が7μmである黒色のスペーサー21Sを配置するように第1配向層22の上に試験例1の塗液を塗布して試験例1の塗膜を形成した。次に、試験例1の塗膜を第1配向層22と第2配向層23とによって挟んだ状態で、第1透明基材26に向けて365nmの紫外光線を照射し、調光層の厚さが7μmである試験例1の調光シートを形成した。この際、紫外線の積算光量を1380mJ/cm2に設定した。
[試験例2]
試験例1と同様の製造方法によって、試験例2の調光シートを得た。
[試験例3]
スペーサー21Sの粒径を8μmに変更し、かつ試験例1の塗液を用い、紫外線の積算光量を780mJ/cm2に変更したこと以外は、試験例1の製造方法と同様にして、調光層の厚さが8μmである試験例3の調光シートを得た。
[試験例4]
試験例3と同様の製造方法によって、試験例4の調光シートを得た。
[試験例5]
試験例5の調光シートを製造するための塗液に対する材料(e)から材料(h)の配合比を以下に示す。
(e)液晶化合物LCM:50質量%
(f)重合開始剤:1質量%
(g)重合性組成物:45質量%
(h)二色性色素:2質量%
第1配向層22の上に、粒径が8μmである黒色のスペーサー21Sを配置するように第1配向層22の上に試験例5の塗液を塗布して試験例5の塗膜を形成した。次に、試験例5の塗膜を第1配向層22と第2配向層23とによって挟んだ状態で、第1透明基材26に向けて365nmの紫外光線を照射して、調光層の厚さが8μmである試験例5の調光シートを形成した。この際、紫外線の積算光量を810mJ/cm2に設定した。
[試験例6]
試験例5と同様の製造方法によって、試験例6の調光シートを得た。
[試験例7]
スペーサー21Sの粒径を8μmに変更し、かつ試験例1の塗液を用い、紫外線の積算光量を920mJ/cm2に変更したこと以外は、試験例1の製造方法と同様にして、調光層の厚さが8μmである試験例7の調光シートを得た。
[試験例8]
スペーサー21Sの粒径を8μmに変更し、かつ試験例1の塗液を用い、紫外線の積算光量を1380mJ/cm2に変更したこと以外は、試験例1の製造方法と同様にして、調光層の厚さが8μmである試験例8の調光シートを得た。
[試験例9]
試験例5の塗液を用い、かつ紫外線の積算光量を840mJ/cm2に変更したこと以外は、試験例5の製造方法と同様にして、調光層の厚さが8μmである試験例9の調光シートを得た。
[試験例10]
試験例5の塗液を用い、かつ紫外線の積算光量を800mJ/cm2に変更したこと以外は、試験例5の製造方法と同様にして、調光層の厚さが8μmである試験例10の調光シートを得た。
[試験例11]
試験例1の調光シートに試験例2の調光シートを積み重ねて接合し、これによって試験例11の調光装置10を得た。この際、光学用透明粘着剤を用い、試験例1の調光シートに試験例2の調光シートを貼り付けた。
[試験例12]
試験例3の調光シートに試験例4の調光シートを積み重ねて接合し、これによって試験例12の調光装置10を得た。この際、光学用透明粘着剤を用い、試験例3の調光シートに試験例4の調光シートを貼り付けた。
[試験例13]
試験例5の調光シートに試験例6の調光シートを積み重ねて接合し、これによって試験例13の調光装置10を得た。この際、光学用透明粘着剤を用い、試験例5の調光シートに試験例6の調光シートを貼り付けた。
[試験例14]
試験例7の調光シートに試験例8の調光シートを積み重ねて接合し、これによって試験例14の調光装置10を得た。この際、光学用透明粘着剤を用い、試験例7の調光シートに試験例8の調光シートを貼り付けた。
[試験例15]
試験例9の調光シートに試験例10の調光シートを積み重ねて接合し、これによって試験例15の調光装置10を得た。この際、光学用透明粘着剤を用い、試験例9の調光シートに試験例10の調光シートを貼り付けた。
[試験例21]
試験例21の調光シートを製造するための塗液に対する材料(e)から材料(h)の配合比を以下に示す。
(e)液晶化合物LCM:55質量%
(f)重合開始剤:1質量%
(g)重合性組成物:40質量%
(h)二色性色素:2.2質量%
第1配向層22の上に、粒径が15μmである黒色のスペーサー21Sを配置するように第1配向層22の上に試験例21の塗液を塗布して試験例21の塗膜を形成した。次に、試験例21の塗膜を第1配向層22と第2配向層23とによって挟んだ状態で、第1透明基材26に向けて365nmの紫外光線を照射し、調光層の厚さが15μmである試験例21の調光シートを形成した。この際、紫外線の積算光量を1200mJ/cm2に設定した。
[試験例22]
配向層22,23にラビング処理を施したこと以外は、試験例21の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例22の調光シートを得た。
[試験例23]
試験例21の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例23の調光シートを得た。
[試験例24]
試験例22の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例24の調光シートを得た。
[試験例25]
試験例25の調光シートを製造するための塗液に対する材料(e)から材料(h)の配合比を以下に示す。
(e)液晶化合物LCM:55質量%
(f)重合開始剤:1質量%
(g)重合性組成物:39質量%
(h)二色性色素:3.0質量%
第1透明電極層24の上に、粒径が15μmである黒色のスペーサー21Sを配置するように第1透明電極層24の上に試験例25の塗液を塗布して試験例25の塗膜を形成した。次に、試験例25の塗膜を第1透明電極層24と第2透明電極層25とによって挟んだ状態で、第1透明基材26に向けて365nmの紫外光線を照射し、調光層の厚さが15μmである試験例21の調光シートを形成した。この際、紫外線の積算光量を1500mJ/cm2に設定した。
[試験例26]~[試験例29]
試験例25の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例26から試験例29の調光シートを得た。
[試験例30]~[試験例31]
二色性色素の配合比を4.0質量%に変更し、重合性組成物を38質量%にしたこと以外は、試験例25の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例30から試験例31の調光シートを得た。
[試験例32]~[試験例37]
二色性色素の配合比を5.0質量%に変更し、重合性組成物を37質量%にしたこと以外は、試験例25の製造方法と同様にして、調光層の厚さが15μmである試験例32から試験例37の調光シートを得た。
[評価方法]
試験例1から試験例10、試験例21から試験例37の調光シートのそれぞれについて、ASTM D 1003-00に準拠した測定方法によって、全光線透過率、拡散透過率、平行線透過率、ヘイズ、およびクラリティを測定した。試験例11から試験例15の調光装置10のそれぞれについて、ASTM D 1003-00に準拠した測定方法によって、全光線透過率、拡散透過率、平行線透過率、ヘイズ、およびクラリティを測定した。なお、光学特性の測定時における調光シートの駆動信号として、周波数が50Hzである40Vの矩形波である交流電圧を用いた。また、光学特性の測定器として、ヘーズメーター(BYK haze-gard i indtrument:BYK Gardner社製)を用いた。
試験例1から試験例10、試験例21から試験例37の調光シートのそれぞれについて、JIS K 0115:2004に準拠した測定方法によって、380nm以上780nm以下の可視光に対する吸光度を測定した。試験例11から試験例15の調光装置10のそれぞれについて、JIS K 0115:2004に準拠した測定方法によって、380nm以上780nm以下の可視光に対する吸光度を測定した。
試験例1から試験例37の調光シートが備える液晶組成物21LCについて、JIS K 0115:2004に準拠した測定方法によって、380nm以上780nm以下の可視光に対する水平配向時の吸光度である水平吸光度、および平均吸光度を測定した。平均吸光度は、液晶組成物21LCの水平配向時における吸光度と、垂直配向時における吸光度との平均値である。なお、液晶組成物21LCの吸光度は、二色性色素を含有する液晶組成物21LCを、厚さが6μmの水平配向用のセル、および厚さが6μmの垂直配向用のセルにそれぞれ入れることによって得た。
試験例1から試験例10、試験例21から試験例37のそれぞれについて、不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの平均吸光度を差し引いた値を、平均吸光度差として算出した。試験例11から試験例15のそれぞれについて、調光装置10の不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの平均吸光度を差し引いた値を、平均吸光度差として算出した。
試験例1から試験例10、試験例21から試験例37のそれぞれについて、不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの水平吸光度を差し引いた値を、水平吸光度差として算出した。試験例11から試験例15のそれぞれについて、調光装置10の不透明時の吸光度から液晶組成物21LCの水平吸光度を差し引いた値を、水平吸光度差として算出した。
試験例1から試験例37のそれぞれについて、調光装置10における暗状態の全光線透過率に対する明状態の全光線透過率の比を、コントラストとして算出した。試験例11から試験例15のそれぞれについて、調光装置10を構成する2つの調光シートのコントラストの合計に対する調光装置10のコントラストの比を、上昇率として算出した。
[評価結果]
試験例1から試験例37の評価結果を各試験例の構成と共に図3、および図4に示す。
図5は、ヘイズとコントラストとの関係、およびクラリティとコントラストとの関係を、試験例1から試験例15について示すグラフである。図6は、ヘイズとコントラストとの関係を、試験例1から試験例37について示すグラフである。図7は、水平吸光度差とコントラストとの関係、および平均吸光度差とコントラストとの関係を、試験例1から試験例15について示すグラフである。
図8は、平均吸光度差とコントラストとの関係を、試験例1から試験例15、および試験例21から試験例37について示すグラフである。図9は、平行線透過率とコントラストとの関係、および拡散透過率とコントラストとの関係を、試験例1から試験例15について示すグラフである。
図3と図5とが示すように、試験例1から試験例10の評価結果において、1つの調光シートのヘイズが56%以上87%以下である場合、調光シートのコントラストが2.3以下に止まることが認められた。また、試験例11の評価結果において、1つの調光シートのヘイズが50%以上79%未満である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10においても、コントラストが2.3以下に止まることが認められた。
これに対し、試験例12から試験例15の評価結果において、1つの調光シートのヘイズが79%以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが急峻に高まることが認められた。また、試験例11から試験例15の評価結果において、2つの調光シートのヘイズが共に79%以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストの上昇率が1以上であることも認められた。
試験例1から試験例10の評価結果において、1つの調光シートのクラリティが86%以上99%以下の範囲である場合、調光シートのコントラストが2.3以下に止まることが認められた。また、試験例11から試験例15の評価結果において、1つの調光シートのクラリティが95%±3%のなかで、2つの調光シートが重ねられた調光装置10のコントラストが大きく異なることが認められた。すなわち、1つの調光シートのクラリティと、高いコントラストを有する調光装置10との関わり合いは、認められなかった。
図3、4および図6が示すように、試験例21から試験例37の評価結果において、調光シートのヘイズが79%未満である場合、1つのリバース型の調光シートと同じく、コントラストが3程度であることが認められた。これに対し、試験例21から試験例37の評価結果において、調光シートのヘイズが79%以上である場合、コントラストが急峻に高まり、2つのリバース型の調光シートを重ねたように、4程度以上の高いコントラストを得られることが認められた。
図3と図7とが示すように、試験例1から試験例10の評価結果において、1つの調光シートの平均吸光度差が0.28以上0.54以下である場合、調光シートのコントラストが2.3以下に止まることが認められた。試験例1から試験例10の評価結果において、1つの調光シートの水平吸光度差が0.04以上0.25以下である場合、調光シートのコントラストが2.3以下に止まることが認められた。
また、試験例11の評価結果において、1つの調光シートの平均吸光度差が0.4未満である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10においても、コントラストが2.3以下に止まることが認められた。また、試験例11の評価結果において、1つの調光シートの平均吸光度差が0.1未満である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10においても、コントラストが2.3以下に止まることが認められた。
これに対し、試験例12から試験例15の評価結果において、1つの調光シートの平均吸光度差が0.4以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが急峻に高まることが認められた。試験例12から試験例15の評価結果において、1つの調光シートの水平吸光度差が0.1以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが急峻に高まることが認められた。
また、試験例11から試験例15の評価結果において、2つの調光シートの平均吸光度が共に0.4以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストの上昇率が1以上であることも認められた。また、試験例11から試験例15の評価結果において、2つの調光シートの水平吸光度が共に0.1以上である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストの上昇率が1以上であることも認められた。
また、図3、4と図8とが示すように、試験例1から試験例37の評価結果において、調光装置10における平均吸光度差が0.8未満である場合、コントラストが3程度に止まることが認められた。一方、調光装置10における平均吸光度差が0.8以上である場合、コントラストがさらに急峻に高まることも認められた。
図3、4と図9とが示すように、試験例1から試験例15の評価結果において、拡散透過率に対するコントラストの依存は、平行線透過率に対するコントラストの依存よりも十分に大きいことが認められた。すなわち、調光シートにおいて直進透過光の散乱を促すことは、二色性色素による吸光を高めて、コントラストの向上を加速させることが認められた。
なお、図3が示すように、1つの調光シートのヘイズが79%以上、かつ全光線透過率が25%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることも認められた。1つの調光シートの平均吸光度差が0.4以上、かつ全光線透過率が25%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることも認められた。
また、1つの調光シートのヘイズが79%以上、かつ拡散透過率が16%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。1つの調光シートの平均吸光度差が0.4以上、かつ拡散透過率が16%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。
また、1つの調光シートのヘイズが79%以上、かつ平行線透過率が5%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。1つの調光シートの平均吸光度差が0.4以上、かつ平行線透過率が5%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。
また、1つの調光シートのヘイズが79%以上、かつクラリティが95%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。1つの調光シートの平均吸光度差が0.4以上、かつクラリティが95%以下である場合、2つの調光シートが重ねられた調光装置10において、コントラストが4以上に高められることの確度が高められることも認められた。
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)調光装置10を構成する各調光シートにおける不透明のヘイズが79%以上であるため、調光装置10におけるコントラストを大きく高めることが可能となる。
(2)調光装置10を構成する各調光シートにおける平均吸光度差が0.4以上であるため、調光装置10におけるコントラストを大きく高めることが可能となる。
(3)条件1を満たすこと、あるいは条件2を満たすことに加え、条件2から条件6の少なくとも1つを満たす構成であれば、上記(1)、(2)に準じた効果を得ることの実行性が高まる。
(4)条件1、あるいは条件2を満たすリバース型の調光シートを重ねた調光装置10であれば、配向層22,23や反応性メソゲン化合物による配向規制力のみで暗状態を形成する調光装置10であっても、高いコントラストを得ることが可能ともなる。
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・調光層21において、透明高分子層21Pの空隙21Dは、透明高分子層21Pの厚さ方向における全体に分散してもよいし、透明高分子層21Pの厚さ方向に全体にわたり均一に分散してもよい。