以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、硬化剤とを含み、上記硬化剤が、活性エステル化合物を含む。本発明に係る樹脂材料では、上記樹脂材料中の上記エポキシ化合物のエポキシ基の合計数の、上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数に対する比が1.2以上1.8以下であり、上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数100%中、上記樹脂材料中の上記活性エステル化合物の活性エステル基の合計数が70%以上である。
上記反応性基とは、エポキシ基と反応可能な官能基を意味する。
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電正接を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる。本発明に係る樹脂材料は、多層化、大型化及び微細配線化したプリント配線板の絶縁層の材料として好適に用いることができる。
本発明に係る樹脂材料では、上記樹脂材料中の上記エポキシ化合物のエポキシ基の合計数の、上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数に対する比(エポキシ化合物のエポキシ基の合計数/硬化剤の反応性基の合計数)(以下、比(X)と記載することがある)が1.2以上1.8以下である。このため、本発明に係る樹脂材料では、エポキシ化合物と硬化剤との共重合反応に加えて、エポキシ化合物の自己重合反応が効果的に進行する。エポキシ化合物の自己重合反応時において水酸基は発生しないため、得られる硬化物の誘電正接を低くすることができる。また、エポキシ化合物の自己重合物を含む硬化物では、エッチングを良好に行うことができ、その結果、メッキピール強度を高めることができる。なお、上記比(X)が1.2未満であると、メッキピール強度が低下することがある。また、上記比(X)が1.8を超えると、誘電正接を十分に低くすることができないことがある。
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記比(X)は、好ましくは1.25以上、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.6以下である。
本発明に係る樹脂材料では、上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数100%中、上記樹脂材料中の上記活性エステル化合物の活性エステル基の合計数(以下、合計数(Y)と記載することがある)が70%以上である。本発明に係る樹脂材料では、上記樹脂組成物中の上記活性エステル化合物の活性エステル基の合計数が比較的多い。このため、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、かつメッキピール強度をより一層高めることができる。上記合計数(Y)が70%未満であると、誘電正接を十分に低くし、かつメッキピール強度をより一層高めることは困難である。例えば、硬化剤として、フェノール化合物及びシアネート化合物等の硬化剤(第2の硬化剤)を含み、かつ上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数100%中、上記樹脂材料中の上記第2の硬化剤の反応性基の合計数が30%を超える樹脂材料では、第2の硬化剤とエポキシ化合物との共重合反応が早く進行する。このため、エポキシ化合物の自己重合反応が進行しにくく、誘電正接が高くなったり、メッキピール強度が低くなったりすることがある。
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記合計数(Y)は、好ましくは73%以上、より好ましくは75%以上である。上記合計数(Y)の上限は特に限定されない。上記合計数(Y)は、100%(全個数)であってもよく、90%以下であってもよい。
上記比(エポキシ化合物のエポキシ基の合計数/硬化剤の反応性基の合計数)(比(X))は、以下のようにして求めることができる。
例えば、上記樹脂材料が、上記樹脂材料100重量%中、エポキシ当量がAg/eqであるエポキシ化合物をB重量%含み、かつ、反応性基の当量がCg/eqである硬化剤をD重量%含む場合には、下記式(11)により、上記比(X)(エポキシ化合物のエポキシ基の合計数/硬化剤の反応性基の合計数)が求められる。
比(X)=[(B/100)/A]/[(D/100)/C] ・・・(11)
また、上記樹脂材料が、2種類のエポキシ化合物を含む場合がある。1種類目のエポキシ化合物のエポキシ当量をA1g/eqとし、樹脂材料100重量%中の1種類目のエポキシ化合物の含有量をB1重量%とする。2種類目のエポキシ化合物のエポキシ当量をA2g/eqとし、樹脂材料100重量%中の2種類目のエポキシ化合物の含有量をB2重量%とする。この場合に、上記式(11)における「(B/100)/A」は、「(B1/100)/A1+(B2/100)/A2」になる。
上記樹脂材料が、3種類のエポキシ化合物を含む場合がある。1種類目のエポキシ化合物のエポキシ当量をA1g/eqとし、樹脂材料100重量%中の1種類目のエポキシ化合物の含有量をB1重量%とする。2種類目のエポキシ化合物のエポキシ当量をA2g/eqとし、樹脂材料100重量%中の2種類目のエポキシ化合物の含有量をB2重量%とする。3種類目のエポキシ化合物のエポキシ当量をA3g/eqとし、樹脂材料100重量%中の3種類目のエポキシ化合物の含有量をB3重量%とする。この場合に、上記式(11)における「(B/100)/A」は、「(B1/100)/A1+(B2/100)/A2+(B3/100)/A3」になる。
上記樹脂材料が、4種類以上のエポキシ化合物を含む場合にも同様に各エポキシ化合物のエポキシ当量と含有量とから、「(B/100)/A」の値が求められる。
また、上記樹脂材料が、2種類の硬化剤を含む場合がある。1種類目の硬化剤の反応性基の当量をC1g/eqとし、樹脂材料100重量%中の1種類目の硬化剤の含有量をD1重量%とする。2種類目の硬化剤の反応性基の当量をC2g/eqとし、樹脂材料100重量%中の2種類目の硬化剤の含有量をD2重量%とする。この場合に、上記式(11)における「(D/100)/C」は、「(D1/100)/C1+(D2/100)/C2」になる。1種類目の硬化剤が活性エステル化合物であり、かつ2種類目の硬化剤が活性エステル化合物であってもよい。1種類目の硬化剤が活性エステル化合物であり、かつ2種類目の硬化剤が活性エステル化合物以外の硬化剤であってもよい。
上記樹脂材料が、3種類の硬化剤を含む場合がある。1種類目の硬化剤の反応性基の当量をC1g/eqとし、樹脂材料100重量%中の1種類目の硬化剤の含有量をD1重量%とする。2種類目の硬化剤の反応性基の当量をC2g/eqとし、樹脂材料100重量%中の2種類目の硬化剤の含有量をD2重量%とする。3種類目の硬化剤の反応性基の当量をC3g/eqとし、樹脂材料100重量%中の3種類目の硬化剤の含有量をD3重量%とする。この場合に、上記式(11)における「(D/100)/C」は、「(D1/100)/C1+(D2/100)/C2+(D3/100)/C3」になる。
上記樹脂材料が4種類以上の硬化剤を含む場合には、上記樹脂材料が2種類又は3種類の硬化剤を含む場合と同様に、各硬化剤の反応性基の当量と含有量とから、「(D/100)/C」の値が求められる。
上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数100%中の上記樹脂材料中の上記活性エステル化合物の活性エステル基の合計数(合計数(Y))は、以下のようにして求めることができる。
上記樹脂材料中の上記硬化剤の全てが活性エステル化合物である場合に、上記樹脂材料中の上記硬化剤の反応性基の合計数100%中、上記樹脂材料中の上記活性エステル化合物の活性エステル基の合計数は100%(全個数)になる。
上記樹脂材料が、活性エステル化合物と、活性エステル化合物以外の硬化剤とを含む場合がある。上記樹脂材料100重量%中、活性エステル基当量がEg/eqである活性エステル化合物をF重量%含み、かつ、反応性基の当量がGg/eqである活性エステル化合物以外の他の硬化剤をH重量%含む場合には、下記式(12)により、上記合計数(Y)が求められる。
合計数(Y)=[(F/100)/E]/[(F/100)/E+(H/100)/G]*100 ・・・(12)
上記樹脂材料が、2種類以上の活性エステル化合物を含む場合は、上記した「(D/100)/C」の説明と同様に、各活性エステル化合物の活性エステル基の当量と含有量とから、「(F/100)/E」及び「(F/100)/E+(H/100)/G」の値が求められる。
上記樹脂材料が、2種類以上の活性エステル化合物以外の硬化剤を含む場合は、上記した「(D/100)/C」の説明と同様に、各活性エステル化合物以外の硬化剤の反応性基の当量と含有量とから、「(F/100)/E+(H/100)/G」の値が求められる。
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
[エポキシ化合物]
上記樹脂材料は、エポキシ化合物を含む。上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、芳香族骨格を有するエポキシ化合物であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは120g/eq以上、より好ましくは130g/eq以上、好ましくは900g/eq以下、より好ましくは800g/eq以下である。上記エポキシ当量が上記下限以上及び上記上限以下であると、誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で固形のエポキシ化合物を含むことが好ましく、25℃で液状のエポキシ化合物と25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことがより好ましい。
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
上記エポキシ化合物の粘度は、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR-100」)等を用いて測定することができる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
上記エポキシ化合物は、エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。この場合には、エポキシ化合物の自己重合反応を効率的に進行させることができ、その結果、誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
上記エポキシ化合物がエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を含む場合には、上記エポキシ化合物100重量%中、上記エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
[硬化剤]
上記樹脂材料は、硬化剤を含む。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
<活性エステル化合物>
上記樹脂材料は、硬化剤として、活性エステル化合物を含む。上記活性エステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記活性エステル化合物は、エステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物である。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステル化合物は、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、活性エステル化合物の主鎖骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」及び「EXB8100-65T」等が挙げられる。
上記活性エステル化合物の活性エステル基当量は、好ましくは120g/eq以上、より好ましくは130g/eq以上、好ましくは900g/eq以下、より好ましくは800g/eq以下である。上記活性エステル基当量が上記下限以上及び上記上限以下であると、誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
<第2の硬化剤>
上記樹脂材料は、上記活性エステル化合物以外の硬化剤(第2の硬化剤)を含んでいてもよい。上記樹脂材料は、上記第2の硬化剤を含んでいなくてもよい。上記第2の硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記第2の硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基(反応性基)を有することが好ましい。上記反応性基としては、ビニル基等の炭素-炭素不飽和結合を有する基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基及び酸無水物基等が挙げられる。上記樹脂材料が上記第2の硬化剤を含む場合には、上記硬化剤における反応性基の合計数100%中、上記第2の硬化剤における反応性基の合計数は30%未満である。
上記第2の硬化剤としては、シアネート化合物(シアネート硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、酸無水物、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、及びベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)等が挙げられる。
誘電正接をより一層低くする観点、熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記第2の硬化剤は、フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。すなわち、上記樹脂材料は、フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分を含む硬化剤を含むことが好ましい。
本明細書において、「フェノール化合物、シアネート化合物、酸無水物、カルボジイミド化合物、及びベンゾオキサジン化合物の内の少なくとも1種の成分」を「成分X」と記載することがある。
したがって、上記樹脂材料は、成分Xを含む硬化剤を含んでいてもよい。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA-1356」及び「LA-3018-50P」)等が挙げられる。
上記シアネート化合物は、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)であってもよい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」等が挙げられる。
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含むことが好ましい。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは78重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン化合物等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記過酸化物としてはジクミルペルオキシド、及びパーヘキシル25B等が挙げられる。
硬化温度をより一層低く抑え、エポキシ基の自己重合を促進し、かつ硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化温度を更により一層低く抑え、硬化物の反りを更により一層効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤は、上記イミダゾール化合物を含むことが好ましく、上記イミダゾール化合物であることがより好ましい。また、上記硬化促進剤が上記イミダゾール化合物である場合には、上記エポキシ化合物の自己重合反応を効率よく進行させることができる。
硬化温度をより一層低く抑え、エポキシ基の自己重合を促進し、かつ硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤100重量%中、上記アニオン性硬化促進剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤であることが最も好ましい。
樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.8重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料を効率的に硬化させることができる。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性を高めることができ、かつより一層良好な硬化物が得られる。なお、上記硬化促進剤の含有量は、樹脂材料中に含まれる全ての硬化促進剤の合計の含有量を意味する。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
上記樹脂材料に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
ハンドリング性、低粗度でのメッキピール強度及び絶縁層と金属層との密着性を高める観点から、上記熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(ポリイミド化合物)であることが好ましい。
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させる方法によって得られたポリイミド化合物であることが好ましい。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名、BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
なお、上記ポリイミド化合物は末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、シトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることができる。上記ポリイミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂である場合には、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を含んでいてもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。
上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂材料を加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層できる。金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層構造体を好適に得ることができる。上記樹脂フィルムと上記金属層を表面に有する積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、金属層を表面に有する積層対象部材に積層可能である。
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm~50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂材料により形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。本発明に係る樹脂材料では、誘電正接を低くし、かつ絶縁層と金属層との密着性及びエッチング性能を高めることによって絶縁信頼性を効果的に高めることができる。従って、本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料の硬化物である。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、CO2レーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60μm~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
(エポキシ化合物)
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC-3000」、エポキシ当量275g/eq、25℃で固形、平均エポキシ基数2.2を超える(エポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物を含む))
ビスフェノールA型エポキシ化合物(日本化薬社製「RE-410S」、エポキシ当量185g/eq、25℃で固形、平均エポキシ基数2.2未満)
(硬化剤)
活性エステル化合物含有液(DIC社製「EXB-9416-70BK」、固形分70重量%)
フェノール化合物含有液(DIC社製「LA3018-50P」、固形分50重量%)
(硬化促進剤)
2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050-HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
(実施例1)
ビフェニル型エポキシ化合物11.3重量部と、活性エステル化合物含有液16.2重量部と、2-フェニル-4-メチルイミダゾール0.5重量部と、シリカ含有スラリー72.0重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂材料(樹脂組成物)を得た。
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
(実施例2~6,参考例7~9,実施例10~16及び比較例1~5)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1~3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物及び樹脂フィルムを作製した。
(評価)
(1)誘電正接
得られた樹脂フィルムを幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して5枚を重ね合わせて、厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体を190℃で90分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物について、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数1.0GHzにて誘電正接を測定した。
[誘電正接の判定基準]
○:誘電正接が0.0040未満
△:誘電正接が0.0040以上0.0045未満
×:誘電正接が0.0045以上
(2)メッキピール強度
ラミネート工程及び半硬化処理:
100mm角の両面銅張積層板(CCL基板)(日立化成社製「E679FG」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、粗化処理された銅張積層板の両面に、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートして、積層構造体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.7MPaでラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度100℃で60秒間プレスした。その後、PETフィルムを付けたまま、積層構造体における樹脂フィルムを100℃で30分間加熱した後、180℃で30分間さらに加熱し、樹脂フィルムを半硬化させた。その後、PETフィルムを剥離することで、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体を得た。
粗化処理:
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体を入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
(b)過マンガン酸塩処理(粗化処理及びデスミア処理):
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体を入れて、30分間揺動させた。次に、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄を行い、粗化処理した。
無電解めっき処理:
得られた粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
次に、上記硬化物を化学銅液(アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、及び「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理した。なお、無電解めっきの工程までの全ての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
電解めっき処理:
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm2の電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を200℃で60分間加熱し、硬化物を更に硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
メッキピール強度の測定:
得られた銅めっき層が上面に積層された硬化物の銅めっき層の表面に10mm幅の短冊状の切込みを、5mm間隔で合計6箇所入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE-3001」)に銅めっき層が上面に積層された硬化物をセットし、つかみ具で切込みの入った銅めっき層の端部をつまみあげ、銅めっき層を20mm剥離して剥離強度(メッキピール強度)を測定した。6箇所の切り込み箇所に対してそれぞれ剥離強度(メッキピール強度)を測定し、メッキピール強度の平均値を求めた。メッキピール強度を下記の基準で判定した。
[メッキピール強度の判定基準]
○:メッキピール強度の平均値が0.5kgf/cm以上
△:メッキピール強度の平均値が0.4kgf/cm以上0.5kgf/cm未満
×:メッキピール強度の平均値が0.4kgf/cm未満
(3)熱寸法安定性(平均線膨張係数(CTE))
得られた厚さ40μmの樹脂フィルム(Bステージフィルム)を190℃で90分間加熱して得られた硬化物を3mm×25mmの大きさに裁断した。熱機械的分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り荷重33mN及び昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の25℃~150℃までの平均線膨張係数(ppm/℃)を算出した。
[平均線膨張係数の判定基準]
○○:平均線膨張係数が25ppm/℃以下
○:平均線膨張係数が25ppm/℃を超え30ppm/℃以下
△:平均線膨張係数が30ppm/℃を超える
組成及び結果を下記の表1~3に示す。