JP7240589B2 - 車両用シート構造 - Google Patents
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Description
このS字状のカーブは生理的前湾と言われ、頚椎が約20度前湾し、胸椎が約20~40度後湾し、腰椎が約35~60度前湾することによって形成されている。
それ故、シートに着座している乗員(以下、単に乗員と略す。)の生理的前湾を歩行状態と同様に維持することにより、骨格における椎間板の負担等の違和感を最小化し、長時間の車両操作を可能にすることが可能である。
特許文献1の車両用シート装置は、前後方向軸に対して回動可能なシートバックと、前後方向軸に対して回動可能なシートクッションとを備え、車両の旋回走行時、シートクッションの旋回方向内側部分が旋回方向外側部分よりも相対的に高くなるように回動させている。
しかし、特許文献1の技術では、頻度の高いアクセルペダルの踏込操作時において、人体工学上、乗員の生理的前湾を確保することができない虞がある。
図10に示すように、大腿骨sfは、内転筋群を介して骨盤と連結されている。
骨盤は、腸骨s1、恥骨s2、坐骨s3、仙骨s4の4つの骨から構成され、背骨と骨盤とを連結する仙骨s4は、背骨の延長線上に位置している。
一方、内転筋群は、大内転筋m1、短内転筋m2、長内転筋m3、恥骨筋m4、薄筋m5等から構成され、それらの一端が骨盤の腸骨s1の下部に連結されている。
足が踵を中心として外転する場合、これに伴い下肢が回外され、大腿部が外転する。
そして、大腿部が外転すると、これに伴い股関節が外旋され、腸骨s1が内転筋群により前方に引っ張られるため、骨盤がシート上を前方滑りして骨盤の後傾を招く。
即ち、乗員がアクセルペダルを踏込操作した場合、骨盤が後傾し、腰椎が屈曲するため、脊椎が後湾し、最終的に、乗員の生理的前湾が崩れ、アクセルペダルの操作性が低下することになる。
そして、乗員がアクセルペダルを踏込操作した際、乗員の骨盤が内転筋群により引っ張られても、乗員の骨盤は前滑りすることなく坐骨を回転中心として後転し、骨盤の後端がシートバックに一層押し付けられる。
それ故、アクセルペダルが踏込操作されても、乗員の生理的前湾を維持することができ、アクセルペダルの操作性を確保している。
また、シートクッションの座面剛性は、複数のSばねを拘束する第1,第2拘束部材の拘束力を調節することで調節されるため、また、座面剛性最大位置の前方側の剛性は前方ほど剛性が低くなり、前記最大位置の後方側では後方ほど剛性が低くなるため、簡単な構成で、骨盤の後端がシートバックに押し付けられた状態で乗員の骨盤を確実にシートクッションに沈み込ませることができると共に、乗員の姿勢崩れに伴うアクセルペダルの操作性の低下を防止することができる。
この構成によれば、乗員の姿勢崩れに伴うアクセルペダルの操作性の低下を確実に防止することができる。
複数の連結部材により複数のSばねの車幅方向位置を一定にし、シートクッションの座面剛性を車幅方向に均質化することができる。
図1に示すように、本実施形態の車両は、シート1(車両用シート装置)と、着座した乗員(以下、単に乗員と略す。)Dが操作可能なステアリング2と、乗員Dが前方に踏込操作可能なアクセルペダル3等を備えている。
アクセルペダル3は、車両の駆動力を発生させるエンジン(図示略)を制御可能に構成されたオルガン式ペダルである。このアクセルペダル3は、乗員の右足によって踏み込まれる平板状の踏面部を備え、乗員によるアクセルペダル3の前方への踏込操作量(アクセル開度)に応じた指令信号を出力している。
シート1の剛性は、シート1の弾性特性に相当し、また、ばね定数は作用させた荷重を変位量で除することにより求められるため、シート1の剛性をばね定数によって表すことが可能である。それ故、このシート1は、同一の荷重を作用させた場合において、シート構成部材(弾性機構及びクッション部材)自体の変形量DS、フレーム構造体(フレーム)の変形量DFとしたとき、次式(1)の条件を満足するように構成されている。
20≦DS/DF …(1)
特に、フレーム構造体のばね定数を70N/mm以上に設定することで、乗り心地を一層向上させている。
具体的なばね定数の演算については、本出願人が既に出願している特許出願(例えば、特願2017-145340)を含め種々の手法が存在するため、詳細な説明を省略する。
図1,図2に示すように、脚機構5は、車両床面に直接固定され、脚機構5と床面との間に、実質的にクッション性を与える部材は配設されていない。
脚機構5は、床面に対してシートバック10及びシートクッション20を前後にスライド可能にするスライド機構を備えている。このスライド機構は、左右1対のスライドレール7に沿ってスライド可能な1対のスライダ6を乗員Dが所望する位置で係止可能に形成されている。以下、図において、矢印F方向を、前方とし、矢印L方向を、左方とし、矢印U方向を、上方として説明する。
弾性機構13は、網状に張り渡された複数の金属ワイヤから構成されたばねであり、その周囲が縦フレーム11に固定されている。この金属ワイヤの弾性変形によって乗員Dの背部を支持している。
本実施例のクッション部材14には、他の領域よりも剛性が高く設定された寛骨支持部と胸郭支持部とが設けられている(何れも図示略)。
寛骨支持部は、寛骨の後端部相当の領域を後方から支持することにより骨盤を保持している。胸郭支持部は、乗員Dの第7胸椎に相当する領域を後方から支持することにより胸郭を保持している。これにより、車両の静的状態において乗員Dがシートバック10に凭れたとき、乗員Dの背骨はS字状の生理的前湾(脊柱湾曲)の状態で保持される。
図2に示すように、シートクッション20は、構造的強度を付与する左右1対の金属製サイドフレーム21と、サイドフレーム21の前端部分に左右に亙って掛け渡された金属製フロントフレーム22と、弾性機構23と、ウレタン製のクッション部材24と、これらを覆う表皮(図示略)等を備えている。
1対のサイドフレーム21は、前後に延びる板材をプレス加工することにより夫々形成され、材質、板厚、寸法等同一仕様で構成されている。
クッション部材24は、サイドフレーム21及び弾性機構23に支持され、これらを覆うように配設されている。
これにより、シートクッション20の着座方向(上下方向)の剛性(座面剛性)は、前後方向位置が同じ場合、左右方向位置に拘らず同じ剛性に設定されている。
Sばね23aの2番目から4番目の右張出部は、Sばね23b及びSばね23cの2番目から4番目の左張出部に各々連結部材23dによって連結されている。
以下、各Sばねの張出部については、前端の張出部から後側に向かって順に1番目の張出部、2番目の張出部、…と表している。
前側領域Aは、シートクッション20の前端近傍に相当するC300地点(乗員の尾骨に対応したC0地点から300mm前方地点)からC100地点(C0地点から100mm前方地点)までの領域である。中間領域B(第1領域)は、C100地点からC0地点までの領域であり、後側領域Cは、C0地点からシートクッション20の後端近傍に相当するC-100地点(C0地点から100mm後方地点)までの領域である。
ここで、C0地点は、標準体格乗員、具体的には、3次元座位人体模型(3DM-JM50)の仙骨の下側先端の尾骨に対向した地点に設定され、C100地点は、シートクッション20の中央近傍部位(中央よりも僅かに後側部位)に設定されている。
また、変位量等の具体的測定値については、3次元座位人体模型に基づく値である。
具体的には、Sばね23aの2番目の左張出部とSばね23cの2番目の右張出部が、板状の拘束ばね23xを介して左右のサイドフレーム21に夫々連結されている。これにより、乗員Dが着座したとき、前側領域Aの後側部分の変位量(撓み量)が前側部分の変位量よりも小さくされている。
具体的には、Sばね23aの3番目の左張出部とSばね23cの3番目の右張出部が、拘束ばね23xよりも拘束度合いが高い板状の拘束ばね23yを介して左右のサイドフレーム21に夫々連結されている。これにより、乗員Dが着座したとき、中間領域Bの前側部分の変位量が後側部分の変位量よりも小さくされている。
本実施例では、中間領域Bの前端部の変位量と後端部の変位量との差が少なくとも5mm以上であり、より好ましくは、10mm以上である。
具体的には、後側領域Cに対応した部分のSばね23a及びSばね23cに拘束ばねを設けない。これにより、後側領域Cの剛性を中間領域Bの剛性に連続させる(両領域の剛性特性を略一致させる)と共に、乗員Dが着座したとき、後側領域Cの前側部分の変位量が後側部分の変位量よりも小さくされている。
作用、効果の説明に当り、検証実験を行った。
この検証実験では、実施例1と同仕様のシート1と比較例のシートを準備し、アクセルペダル3の踏込操作時におけるシートクッションの圧力分布とシートバックの圧力分布とを測定した。
尚、図5に示すように、比較例シートは、シートクッションの剛性(座面剛性)がC-100地点からC100地点までの領域について一定(シートクッション20の最大剛性と同じ)に設定されている点を除き実施例1のシート1と同じ仕様である。
実施例1のシートでは、図6(a)に示すように、左右の坐骨周辺に夫々均等な荷重が作用し、図6(b)に示すように、乗員Dの骨盤対応部位の荷重が高いことを確認した。
以上のことから、アクセルペダル3の踏込操作前において、図8(a)の白矢印に示すように、乗員Dの大腿部の前側に後側よりも大きな上向きの反力(荷重)が作用するため、骨盤の後端部がシートバック10に押し付けられ、坐骨が楔効果で固定される。
アクセルペダル3の踏込操作後において、図8(b)の黒矢印に示すように、踏込操作に伴って前方に向かう内転筋群の引張力が骨盤の下部に作用するが、骨盤下部が前滑りしないため、骨盤に破線で示す坐骨を回転中心とした後方回転モーメントが発生し、更に骨盤の前滑りが阻止されている。
以上のことから、アクセルペダル3の踏込操作前において、図9(a)の白矢印に示すように、乗員Dの大腿部に前側から後側に亙って一様な上向きの反力(荷重)が作用するため、シートバック10に対する骨盤後端部の押付力が低い。
アクセルペダル3の踏込操作後において、図9(b)の黒矢印に示すように、踏込操作に伴って前方に向かう内転筋群の引張力が骨盤の下部に作用すると、骨盤下部が前滑りするため、骨盤に破線で示す前方移動の発生と同時に後方回転モーメントが発生することから、骨盤が後傾する。
作用する荷重に対する変位量を与える中間領域Bの座面剛性が、前側程増加するように形成されたため、アクセルペダル3が踏込操作される前段階において、骨盤の後端をシートバック10に押し付けて乗員Dの骨盤を位置決め支持することができる。
そして、乗員Dがアクセルペダル3を踏込操作した際、乗員Dの骨盤が内転筋群により引っ張られても、乗員Dの骨盤は前滑りすることなく坐骨を回転中心として後転し、骨盤の後端がシートバック10に一層押し付けられる。
それ故、アクセルペダル3が踏込操作されても、乗員Dの生理的前湾を維持することができ、アクセルペダル3の操作性を確保している。
1〕前記実施例においては、Sばねを3つ、拘束ばねを2つ備えた弾性機構の例を説明したが、Sばね及び拘束ばねの個数を仕様に合わせて任意に設定しても良い。
Sばねは2つでも良く、また、4つ以上でも良い。また、拘束ばねは、1つでも良く、3つ以上でも良い。
この場合、弾性機構をシートパンとこれに載置されるクッション部材とにより構成し、クッション部材を構成するウレタンの発泡率を調節して前側領域、中間領域、後側領域の剛性特性を夫々設定することで同様の効果を奏することができる。
また、クッション部材の内部に各領域に対応したエアバッグを設け、これらエアバッグのエア充填量を調節して各領域の剛性特性を夫々設定しても良い。
10 シートバック
20 シートクッション
23 弾性機構
23a,23b,23c Sばね
23x,23y 拘束ばね
B 中間領域
Claims (3)
- シートクッションとシートバックとを有する車両用シート構造において、
前記シートクッションは、左右1対のサイドフレームと、1対のサイドフレームの前端部分に架着されたフロントフレームと、フロントフレームに一端部が固定された複数のSばねを有し、
前記シートクッションが、着座乗員の尾骨に対応した尾骨対応部位から前記シートクッションの中央近傍部位までに設定された第1領域を有すると共に、前記第1領域の座面剛性が前側程増加するように設定され、
前記シートクッションの中央近傍部位よりも前方の前側領域の座面剛性が、前側程減少するように設定されると共に、前記第1領域とこの第1領域よりも後方の後側領域の座面剛性が、後側程減少するように設定され、
前記前側領域におけるサイドフレームに隣接するSばねは第1拘束部材を介してサイドフレームに連結され、
前記第1領域におけるサイドフレームに隣接するSばねは、第1拘束部材よりも拘束度合いが強い第2拘束部材を介してサイドフレームに連結され、
前記シートクッションの座面剛性は、複数のSばねを拘束する第1,第2拘束部材の拘束力を調節することにより調節され、
前記シートクッションの座面剛性は、第1領域における第2拘束部材に対応する位置で最大となり、この最大位置の前方側では前方ほど剛性が低くなり、前記最大位置の後方側では後方ほど剛性が低くなることを特徴とする車両用シート構造。 - 3次元座位人体模型を前記車両用シートに着座させたとき、前記第1領域の前端部と後端部との変位量の差が5mm以上になるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート構造。
- 車幅方向に複数設けられるSばね同士を連結する車幅方向に延びる複数の連結部材が設けられ、複数の連結部材は、車体前後方向において、少なくとも、前記第1,第2拘束部材の間の位置と、前記第2拘束部材よりも後方の位置に配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート構造。
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