以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
<実施の形態1>
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1にかかる電磁アクチュエータの基本構成を示す概観斜視図である。実施の形態1にかかる電磁アクチュエータ10は、埋込磁石型モータの一実施態様である。実施の形態1にかかる電磁アクチュエータ10は、コア部11およびステータ部12を有している。コア部11は、基準軸Aに対して回転対称の部材により構成された電磁アクチュエータの可動子である。ステータ部12は、コア部の周囲を所定の円筒面に沿って囲むように構成された電磁アクチュエータの固定子である。ステータ部12は、ヨーク部とも称される。
コア部11およびステータ部12は、基準軸Aに対して、相対的に直動自在および回転自在に設置される。したがって、例えば、ステータ部12は任意のケースに保持されてその姿勢を維持し、コア部11はステータ部12と接触せず、予め設定された間隔を維持しながら直動および回転するように軸受等により支持される。このような構成により電磁アクチュエータは直動方向と回転方向の二自由度を有する。
電磁アクチュエータ10は、コア部11を駆動するための制御回路に接続される。制御回路は、上流側(図の左下側)で、ステータ部12に接続して所定の電圧を印加する。ステータ部12は上流側から下流側(図の右上側)へ向かって所定の螺旋状に導線が配線されており、さらにこの導線は下流側から上流側へ配線されている。この導線は、上流側から下流側へ流れる電流と、下流側から上流側へ流れる電流とが平行して交互に流れることにより、ローレンツ力が生じるように配置される。なお、導線が螺旋状に配線された二自由度モータの技術は既に当業者に知られるところであり、ここでの詳述は省略する。制御回路からステータ部12に電圧が印加されると、コア部11に駆動力が生じる。制御回路については後述する。
構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、図1は、右手系の直交座標系および円筒座標系が重畳された状態で付されている。図2以降において、直交座標系又は円筒座標系が付されている場合、図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。また電磁アクチュエータの基準軸である回転軸の軸方向とZ軸方向とは一致しており、電磁アクチュエータの半径方向は矢印Rで示され、電磁アクチュエータの円周方向は矢印θで示されている。以降の説明において、「内周側」は、矢印Rに沿って「外周側」よりも基準軸Aに近い側をいう。また、円周方向におけるプラス方向は、図示の矢印のように、Y軸プラス側からX軸プラス側へ向かう方向をいう。また以降の説明において「上流側」とはZ軸マイナス側であり、「下流側」とはZ軸プラス側をいう。
図2および図3を参照しながら電磁アクチュエータの構成についてさらに説明する。図2は、基準軸Aに直交する面の平面図である。図3は、基準軸Aに平行な面の断面図である。図3は、図に示した断面IIIを示したものである。
ステータ部12は主な構成として、複数のヨーク単位121および複数のヨーク連結部125を有している。ヨーク単位121とヨーク連結部125とは、基準軸Aに沿って交互に連結している。
ヨーク単位121は、円筒状の磁性体の内周側に第1巻線体14の構成要素である第1導線が巻回された複数のコイル、第2巻線体15の構成要素である第2導線が巻回された複数のコイルおよびティース124を有している。第1巻線体14は基準軸Aの周囲に配置された複数のコイルにより構成されている。第2巻線体15は、基準軸Aの周囲であって、第1巻線体14の外周側に配置された複数のコイルにより構成されている。ティース124は、第1巻線体14の内周側に複数配置されており、ティース124の内周側の面は直径D1の第1円筒面を形成している。なお、ヨーク単位121の詳細な構成は後述する。
ヨーク連結部125は、円筒状の磁性体により形成されており、2つ有する平面部においてそれぞれ隣接するヨーク単位121に連結する。
コア部11は主な構成として、基準軸Aに沿って延伸する軸111と、軸111の周囲に固定された磁極部13とを有する。磁極部13は円筒形状であり、その外径は直径D2である。直径D2はティース124により形成される第1円筒面の直径D1より小さい。すなわち、磁極部13は直径D1より小さい直径D2の第2円筒面を有し、第2円筒面は、第1円筒面に離間して対向している。
次に、コア部のさらなる詳細について説明する。図4は、実施の形態1にかかるコア部の斜視図である。コア部11は、軸111の中央部に磁極部13が固定されている。磁極部13は、軸方向の両端部に係合部材112がそれぞれ係合されている。これにより磁極部13と軸111とは互いに固定されている。磁極部13は、第1磁極単位130Aおよび第1磁極単位130Aの下流側の軸方向に連結された第2磁極単位130Bを有している。なお第1磁極単位130Aおよび第2磁極単位130Bを総称して磁極単位130と称する。また同様に、以降の説明において構成要素の符号の数字が同じであって、末尾のアルファベットが異なるものについては、アルファベットを省略して符号の数字のみで構成要素を総称する場合がある。
次に図5を参照して磁極単位の構成について説明する。図5は、磁極単位130の分解斜視図である。第1磁極単位130Aは主な構成として第1磁石保持部131A、磁石133、第1磁束バリア部135A、第3磁束バリア部135C、第1磁束ガイド部136A及び第3磁束ガイド部136Cを有している。第2磁極単位130Bは主な構成として第2磁石保持部131B、磁石133、第2磁束バリア部135B、第4磁束バリア部135D、第2磁束ガイド部136B及び第4磁束ガイド部136Dを有している。また磁極単位130のこれらの構成は、いずれも位置決め部134を有しており、隣接する各構成と位置決め部134により位置ずれなく固定される。
第1磁石保持部131Aおよび第2磁石保持部131Bは、直径D2の第2円筒面131Sを有する磁性体により構成されており、内部に複数の磁石133により構成される磁石群を保持している。磁石保持部131を形成する磁性体とは例えば鉄、ステンレス、ケイ素鋼板等の強磁性体である。本実施の形態において、磁石保持部131は、4個の矩形板状の磁石133により構成される磁石群を有している。磁石群を構成する4個の磁石133は、基準軸Aの周囲に90度ずつ回転した位置であって、且つ、基準軸Aからの距離がそれぞれ等しい位置に埋設されている。またこのとき、4個の磁石133は、基準軸Aを中心軸として形成される四角柱の各面に沿って配置されていることになる。図に示す磁石保持部131は、磁石133のそれぞれの主面がXZ平面又はYZ平面に平行になるように磁石133を保持している。また、基準軸Aから磁石133までの最短距離は、いずれも同じになるように構成されている。また磁石133の軸方向の長さは、磁石保持部131の軸方向の長さと同じであって、同一の端面を形成するように構成されている。なお、ここで磁石が「埋設されている」とは、磁石の少なくとも一部が磁石保持部131内に埋め込まれていればよく、磁石の一部が磁石保持部131の表面に露呈していてもよい。また磁石133の軸方向の長さは、磁石保持部131の内部で所定の位置に固定されていれば、磁石保持部131より短くてもよい。
磁石保持部131は、磁石133の円周方向の両端部に、エアギャップ132をそれぞれ有している。エアギャップ132は、磁石133の円周方向の端面に接して形成されている。エアギャップ132をこのように構成することにより、エアギャップ132は、磁石133の端面で磁束が短絡することを防いでいる。なお、磁石133の極性については後述する。
磁束バリア部135は、磁石保持部131より透磁率の低い材質により形成された板状部材である。磁束バリア部135の外径は、磁石保持部131と同じ直径D2である。磁石保持部より透磁率の低い材質とは、磁石保持部に比較的透磁率の高い鉄などを用いた場合には、例えば代表的にはアルミニウム、銅、紙等の非磁性体である。なお、磁束バリア部135は、このような素材に代えて、あるいはこのような素材に加えて、空間を設けることにより構成されてもよい。
磁束バリア部135は、磁石保持部131の軸方向の端面に接触した状態で配置される。これにより磁束バリア部135は、磁石133の軸方向の端面に接触する。そのため、磁束バリア部135は、軸方向において磁石133を保持する。磁束バリア部135は、磁石保持部131と磁束ガイド部136との間に介在することにより、磁石保持部131と磁束ガイド部136との間に流れる磁束を抑制する。なお、磁石133の軸方向の長さが磁石保持部131より短い場合、磁石保持部131と磁束バリア部135とが接触する面と磁石133との間にはエアギャップが存在することになる。
磁束ガイド部136は、磁石保持部131と同等の材質により形成された円筒状の部材である。磁石保持部131と同等の材質とは、磁石保持部131と同じ材質である必要はなく、透磁率が磁石133や磁束バリア部135等より高い部材であればよい。磁束ガイド部136の外径は、磁石保持部131と同じ直径D2である。磁束ガイド部136は、磁石133と接触する面と反対側の面で磁束バリア部135に隣接する。また、磁束ガイド部136の内周側には、磁石保持部131に向かって突出する磁束連結部137が設けられている。磁束連結部137は、磁束バリア部135の内周側を延伸するように形成されており、磁石保持部131と接触するように構成される。換言すると、磁束連結部137は、径方向において、第1巻線体14又は第2巻線体15の少なくともいずれか一方との間に磁束バリア部135を挟むように配置されている。
図5に示すように、本実施の形態において、第1磁極単位130Aおよび第2磁極単位130Bは、それぞれ同じ構成を有している。第1磁極単位130Aは、上流側から順に、第3磁束ガイド部136C、第3磁束バリア部135C、第1磁石保持部131A、第1磁束バリア部135Aおよび第1磁束ガイド部136Aの順に連結している。第2磁極単位13Bは、上流側から順に、第2磁束ガイド部136B、第2磁束バリア部135B、第2磁石保持部131B、第4磁束バリア部135Dおよび第4磁束ガイド部136Dの順に連結している。そして、第1磁束ガイド部136Aと第2磁束ガイド部136Bとは互いに連結している。すなわち、磁極単位130は、直径D2の各要素を軸方向に連結して構成される。このように各構成が円柱状に形成されているため、磁極単位130の各構成は、旋盤加工等が行いやすい。なお、磁束連結部137は、磁束ガイド部136に代えて、磁石保持部131が有していてもよいし、別の部品として構成されてもよい。また、本実施の形態における第1磁束ガイド部136Aと第2磁束ガイド部136Bとは、別体に形成された中間部であるが、一体に形成された中間部であってもよい。
次に、図6を参照しながら磁石133の極性について説明する。図6は、磁極部の磁石の配置を示した斜視図である。図において、磁極部13の外径は点線により示され、磁石保持部131が有する磁石133が透過して示されている。以下の説明において、第1磁極単位130Aが有する4つの磁石群を第1磁石群と称し、第2磁極単位130Bが有する4つの磁石群を第2磁石群と称する場合がある。
図に示す磁石133は、外周側に有する極性により磁石133Nと磁石133Sとに区分して示されている。磁石133Nは、外周側の主面に極性を示す文字「N」と示されている。あるいは、磁石133Nは、外周側の主面が示されていない場合に、内周側の主面に極性を示す文字が括弧付で「(S)」と示されるとともに、外周側の主面に向かって矢印により「N」が示されている。磁石133Sは、上述の磁石133Nの場合とは反対の極性を示す文字がそれぞれ同様の態様により示されている。
図に示すように、磁極部13において、内部に含まれる磁石133Nおよび磁石133Sは、軸方向又は円周方向に隣り合う極性が互いに異なるように配置されている。すなわち、例えば本実施の形態において、第1磁石群および第2磁石群はそれぞれ周方向において異なる磁極が交互に配置され、かつ、2つの磁極単位130は、軸方向に連結される際に、相対的に回転方向に90度回転されることにより、軸方向においても異なる磁極が隣り合うように配置された状態となっている。
磁極単位130は、このように、軸方向に複数の要素を連結することにより構成される。また、図4に示した磁極部13は、複数の磁極単位130を軸方向に連結することにより構成される。さらに、図6に示すように、磁極部13が複数の磁極単位130を連結して構成される場合には、隣り合う磁石133の極性が異なるように配置される。すなわち本実施の形態によれば、異なる磁極を交互に配置した磁極部を構成することができる。このような構成により、本実施の形態は、内部に磁石133を有するIPM型の磁極部を組立容易な構成とすることができる。
次に、図7~図10を参照して、磁極部13に作用するq軸の磁束およびd軸の磁束の状態を説明する。一般的な三相モータの電流を制御する上で、dq変換という手法がある。このdq変換を用いることにより、U相、V相及びW相のコイルは、仮想的にd軸及びq軸のコイルに変換することができる。d軸の磁束及びq軸の磁束とは、この仮想的なコイルによって生じる磁束を示し、d軸電流及びq軸電流とは、これらの仮想的なコイルに流す電流を示す。なお、dq変換は既知の技術であり、本実施の形態における詳細な説明は省略する。
図7を参照して基準軸に直交する面(XY平面に平行な面)におけるq軸の磁束について説明する。図7は、磁極部における基準軸に直交する面のq軸の磁束を示した断面図である。図において、q軸の磁束Φqが点線の矢印により示されている。磁束Φqは、4か所の磁石133(磁石133Nおよび磁石133S)および磁石133に隣接するエアギャップ132の断面形状に沿うように、磁石の外周側と、磁石の内周側とをそれぞれ流れる。すなわち、基準軸Aに直交する面において、磁性体の内部に保持されている磁石133と磁石133の端部に隣接するエアギャップ132とは、磁束Φqの磁路を形成する。また磁石保持部131は、形成された磁路において磁束Φqを流すために相応な厚みの磁性体を有し、且つ、磁束Φqを妨げる要素を有していない。
次に、図8を参照して基準軸に直交する面におけるd軸の磁束について説明する。図8は、磁極部における基準軸に直交する面のd軸の磁束を示した断面図である。図において、d軸の磁束Φdが点線の矢印により示されている。磁束Φdは、例えば磁石133Nを通過して磁石133Sに向かって流れ、さらに磁石133Sを通過する。また、磁石133の端部において磁束Φdはエアギャップ132を通過するように流れる。図に示すように、磁束Φdは、磁石保持部131の磁性体よりも比較的に透磁率が低い磁石133やエアギャップ132を通過する。
以上のように、基準軸Aに直交する面において、磁束Φqは磁石133やエアギャップ132よりも透磁率の高い磁性体を流れる。一方で、磁束Φdは、磁石保持部131を形成する磁性体よりも透磁率の低い磁石133やエアギャップ132を通過する。そのため、磁束Φqは磁束Φdより大きくなる。したがって、磁束ΦqにかかるインダクタンスLqは、磁束ΦdにかかるインダクタンスLdより大きくなる。このように、磁束Φqと磁束Φdの流れやすさに差を設けることにより、本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10は、磁極部13において、回転方向のリラクタンストルク(回転力)が発生する。
次に、図9を参照して基準軸Aに平行な面におけるq軸の磁束について説明する。図9は、磁極部13における基準軸に平行な面のq軸の磁束を示した断面図である。図に示した断面は基準軸Aに平行な面の一例としてXZ平面に平行な断面を示している。図において、q軸の磁束Φqが点線の矢印により示されている。磁束Φqは、4か所の磁石133および磁石133に隣接する磁束バリア部135の断面形状に沿うように、磁石の外周側と、磁石の内周側とをそれぞれ流れる。すなわち、基準軸Aに直交する面において、磁性体の内部に保持されている磁石133と磁石133の端部に隣接する磁束バリア部135とは、磁束Φqの磁路を形成する。また磁石保持部131は、形成された磁路において磁束Φqを流すために相応な厚みの磁性体を有し、且つ、磁束Φqを妨げる要素を有していない。より具体的に一例を示すと、第1磁極単位130Aにおいて、一の磁束Φqは、第1磁束ガイド部136Aから、第1磁束連結部137A、第1磁石保持部131A、第3磁束連結部137Cそして第3磁束ガイド部136Cを流れる。さらに別の具体例を示すと、第2磁極単位130Bにおいて、一の磁束Φqは、第2磁束ガイド部136Bから、第2磁束連結部137B、第2磁石保持部131B、第4磁束連結部137Dそして第4磁束ガイド部136Dを流れる。
次に、図10を参照して基準軸に平行な面におけるd軸の磁束について説明する。図10は、磁極部13における基準軸に平行な面のd軸の磁束を示した断面図である。図10は、XZ平面に平行な断面のd軸の磁束を示した断面図である。図において、d軸の磁束Φdが点線の矢印により示されている。磁束Φdは、右側の磁極単位130から左側の磁極単位130に向かって、磁石133又は磁束バリア部135を通過して流れる。すなわち磁束Φdは、磁石保持部131の磁性体よりも比較的に透磁率が低い磁石133や磁束バリア部135を通過する。
以上のように、基準軸Aに平行な面において、磁束Φqは磁石133やエアギャップ132よりも透磁率の高い磁性体を流れる。一方で、磁束Φdは、磁石保持部131を形成する磁性体よりも透磁率の低い磁石133や磁束バリア部135を通過する。そのため、磁束Φqは磁束Φdより大きくなる。したがって、磁束ΦqにかかるインダクタンスLqは、磁束ΦdにかかるインダクタンスLdより大きくなる。換言すると、磁極部13は磁束Φqの流れやすさと磁束Φdの流れやすさとが異なるように設定されている。このように、磁束Φqと磁束Φdの流れやすさに差を設けることにより、本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10は、磁極部13において、直動方向のリラクタンス力(推力)が発生する。
一般的なIPMモータでは、d軸電流及びq軸電流の割合に係る電気角を適切に決定することにより、マグネットトルク(マグネット力)だけでなくリラクタンストルク(リラクタンス力)も利用可能となる。電気角βとは、以下の式のように定義される。
電磁アクチュエータ10は、第1巻線体と第2巻線体の2種類の三相コイルを有し、第1巻線体のd軸電流及びq軸電流と、第2巻線体のd軸電流及びq軸電流が設けられている。従って、電磁アクチュエータ10には、第1巻線体の電気角β1と第2巻線体の電気角β2とが設けられている。次に、電磁アクチュエータ10が発生する力について説明する。発明者らは、本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10の構造をコンピュータ上でシミュレーションし、コア部11とステータ部12との間に発生する回転方向の力(回転力)と直動方向の力(推力)を算出した。
次に、図11を参照して、電磁アクチュエータ10が発生する回転力と電気角βとの関係について説明する。図11は、発明者らが本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10の構造をコンピュータ上でシミュレーションし、コア部11とステータ部12との間に発生する回転方向の力(回転力)を算出した結果である。図に示すグラフは横軸が電気角βであり、縦軸がトルクを示している。なお、以降の説明において、電気角βは、第1巻線体の電気角β1及び第2巻線体の電気角β2を示す。例えば、電気角β=40度とは、第1巻線体の電気角β=40度かつ第2巻線体の電気角β2=40度を示す。
グラフにプロットされた3つの曲線は、下から回転方向のリラクタンストルク、マグネットトルクおよびこれらの合計である。すなわち、リラクタンストルクは、電気角0度で約0.15Nmであり、電気角が増えるとともに徐々に増加し、電気角45度付近で0.5Nmとなる。そして、そこから電気角が増えるとともに徐々に減少し、電気角90度で0Nmとなる。一方、マグネットトルクは、電気角0度から30度付近まで1Nmであり、そこから徐々に減少し、電気角90度で0Nmとなる。このリラクタンストルクとマグネットトルクとを合計すると、電磁アクチュエータ10の回転力は、電気角度40度付近で最大トルク約1.43Nmとなる曲線を描く。
次に、図12を参照して、電磁アクチュエータ10が発生する推力と電気角βとの関係について説明する。図12は、発明者らが本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10の構造をコンピュータ上でシミュレーションし、コア部11とステータ部12との間に発生する直動方向の力(推力)を算出した結果である。図に示すグラフは横軸が電気角βであり、縦軸が推力を示している。グラフにプロットされた3つの曲線は、下から直動方向のリラクタンス力、マグネット力およびこれらの合計である。すなわち、リラクタンス力は、電気角0度で約5Nであり、電気角が増えるとともに徐々に増加し、電気角50度付近で約28Nとなる。そして、そこから電気角が増えるとともに徐々に減少し、電気角90度で0Nmとなる。一方、マグネット力は、電気角0度から20度付近まで約59Nであり、そこから徐々に減少し、電気角90度で0Nmとなる。このリラクタンス力とマグネット力とを合計すると、電磁アクチュエータ10の推力は、電気角度40度付近で最大推力約80Nとなる曲線を描く。
このように、シミュレーションにより、電磁アクチュエータ10は、回転方向においてリラクタンストルクが発生しているだけでなく、直動方向においてもリラクタンス力が発生していることが示された。すなわち、このシミュレーションにより、電磁アクチュエータ10は、磁極部13において磁束バリア部135を設けることにより、直動方向のリラクタンス力が発生することが示された。
次に、ステータ部12の構成について詳細を説明する。図13は、実施の形態1にかかるステータ部の分解斜視図である。ステータ部12は、基準軸Aに沿って、ヨーク単位121とヨーク連結部125とが交互に連結されている。図においてZ軸マイナス側(上流側)の端部に配置されているヨーク単位121を、ヨーク単位121aと示している。また、ステータ部12は、Z軸マイナス側(上流側)からプラス側(下流側)に向かって、ヨーク単位121a、ヨーク連結部125、ヨーク単位121b、ヨーク連結部125、ヨーク単位121c、・・・と連結されている。
ヨーク単位121aはコイルの一部を省略して表示している。図に示すように、ヨーク単位121は、円筒状のバックヨーク122と、バックヨーク122の内周面から内周側に向かって延伸するコイルヨーク123とを有している。バックヨーク122およびコイルヨーク123は、例えば磁性体を素材とする板材をプレス加工するなどして一体的に成形することができる。本実施の形態において、コイルヨーク123は、6か所設けられている。連結されている複数のヨーク単位121は、それぞれ軸方向に投影した場合の形状が同一となっている。よって、例えば、複数のヨーク単位121は、磁性体を主成分とする板材をプレス加工することにより形成することができる。
ヨーク連結部125は、円筒状の磁性体により構成されている。ヨーク連結部125は、バックヨーク122およびコイルヨーク123と同様に、磁性体を素材とする板材をプレス加工することにより成形することができる。このように、ヨーク単位121の間にヨーク連結部125を設ける構成にすることにより、ステータ部12は、加工が容易となる。
次に、図14および図15を参照して、隣接するヨーク単位121の構成について説明する。図14は、実施の形態1にかかるヨーク単位の第1の平面図である。図14はヨーク単位121aの平面図であり、Z軸に沿って観察した状態である。また、図14は、一部が断面として示されている。
ヨーク単位121aは、回転方向に60度毎に設けられた6個のコイルヨーク123を有している。6個のコイルヨーク123の内、対向する2個のコイルヨーク123は、X軸に平行に設けられている。コイルヨーク123の内周側には、ティース124が設けられている。コイルヨーク123は、内周側に第1巻線体14の構成要素であるコイルが巻回されており、第1巻線体14よりも外周側に、第1巻線体14とは通電しないように、第2巻線体15の構成要素であるコイルが巻回されている。第1巻線体14を構成する導線と第2巻線体15を構成する導線との間は、通電しないように絶縁部材が設けられていてもよい。
ところで本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10は、3相交流モータである。そのため、第1巻線体14は、U相、V相およびW相のそれぞれに対応するコイルを有している。図において、コイル14UはU相に対応し、14VはV相に対応し、14WはW相に対応している。すなわち、第1巻線体14が有するコイル14Uと、コイル14Vとコイル14Wとは、それぞれ位相の異なる交流電流が印加される。図において、X軸に平行なコイルヨーク123にはコイル14Uがそれぞれ巻回されている。また、円周方向のマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にV相に対応するコイル14Vが巻回され、さらにマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にW相に対応するコイル14Wが巻回されている。
第1巻線体14と同様に、第2巻線体15も、U相、V相およびW相のそれぞれに対応するコイル15U、コイル15Vおよびコイル15Wを有している。図において、ヨーク単位121aは、X軸に平行な2つのコイルヨーク123にはコイル15Wがそれぞれ巻回されている。また、円周方向のマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にU相に対応するコイル15Uが巻回され、さらにマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にV相に対応するコイル15Vが巻回されている。
次に、ヨーク単位121bについて説明する。図15は、実施の形態1にかかるヨーク単位の第2の平面図である。図15はヨーク単位121bの平面図であり、Z軸に沿って観察した状態である。図15に示すヨーク単位121bが有しているコイルヨーク123は、図14に示したヨーク単位121aと比較すると円周方向に30度回転している状態である。このように、電磁アクチュエータ10のステータ部12は、隣接するヨーク単位のコイルヨーク123が30度回転した状態で連結されている。これにより、ステータ部12は、磁極部13に対して好適にq軸の磁束を発生させる。
図において、X軸に対してマイナスθ方向に30度傾いた2つのコイルヨーク123の内周側にはコイル14Uがそれぞれ巻回されている。また、円周方向のマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にV相に対応するコイル14Vが巻回され、さらにマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にW相に対応するコイル14Wが巻回されている。すなわちヨーク単位121aに隣接するヨーク単位121bの第1巻線体14は、相対的にマイナスθ方向に30度回転した位置に配置されていることになる。
また、図において、X軸に対してプラスθ方向に30度傾いた2つのコイルヨーク123の外周側にはコイル15Wがそれぞれ巻回されている。また、円周方向のマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にU相に対応するコイル15Uが巻回され、さらにマイナスθ方向に60度回転して隣接するコイルヨーク123にV相に対応するコイル15Vが巻回されている。すなわちヨーク単位121aに隣接するヨーク単位121bの第2巻線体15は、相対的にプラスθ方向に30度回転した位置に配置されていることになる。
次に図16を参照して第1巻線体14が有するコイルの構成について説明する。図16は、実施の形態1にかかる第1巻線体の斜視図である。図16は、ステータ部12が有する第1巻線体14のコイルを抽出して表示したものである。図に示す濃い網掛けが施されたコイルは、コイル14Uである。コイル14Uからマイナスθ方向に60度回転して隣接する位置に示され、コイル14Uより薄い網掛けが施されたコイルは、コイル14Vである。またコイル14Vからマイナスθ方向に60度回転して隣接する位置に示され、網掛けが施されていない(白い)コイルは、コイル14Wである。図に示すように、コイル14U、コイル14Vおよびコイル14Wは、Z軸プラス方向に進むと、順次、マイナスθ方向に30度回転した配置となっている。そのため、第1巻線体14の周囲に示した矢印14Rのように、第1巻線体14のそれぞれのコイルは、基準軸Aの周りに右ネジの螺旋と同じ方向(右螺旋方向)の螺旋状に接続されている。すなわち、第1巻線体14は、右螺旋方向に沿って平行して伸びる複数の第1導線部材により構成されている。第1巻線体14は、U相、V相およびW相の少なくとも3相の互いに絶縁状態の第1導線部材を有している。
次に図17を参照して第2巻線体15が有するコイルの構成について説明する。図17は、実施の形態1にかかる第2巻線体の斜視図である。図17は、ステータ部12が有する第2巻線体15のコイルを抽出して表示したものである。図に示す濃い網掛けが施されたコイルは、コイル15Uである。コイル15Uからマイナスθ方向に60度回転して隣接する位置に示され、コイル15Uより薄い網掛けが施されたコイルは、コイル15Vである。またコイル15Vからマイナスθ方向に60度回転して隣接する位置に示され、網掛けが施されていない(白い)コイルは、コイル15Wである。図に示すように、コイル15U、コイル15Vおよびコイル15Wは、Z軸プラス方向に進むと、順次、プラスθ方向に30度回転した配置となっている。そのため、第2巻線体15の周囲に示した矢印15Lのように、第2巻線体15のそれぞれのコイルは、基準軸Aの周りに左ネジと同じ方向(左螺旋方向)の螺旋状に接続されている。すなわち第2巻線体15は、左螺旋方向に沿って平行して伸びる複数の第2導線部材により構成されている。第2巻線体15は、U相、V相およびW相の少なくとも3相の互いに絶縁状態の第2導線部材を有している。
第1巻線体14のコイルは、右螺旋方向の螺旋状に接続される。すなわち第1巻線体14は右螺旋方向に同相の電流が流れるように設定されている。よってコイル14Uが巻回されているコイルヨーク123はティース124の内周側に右螺旋方向に同相の磁界を発生させる。そのため第1巻線体14は磁極部13に対して右螺旋方向に直交する左螺旋方向の起磁力を与えることができる。同様に、第2巻線体15のコイルは、第1巻線体14の螺旋方向と交差する左螺旋方向の螺旋状に接続されている。そのため第1巻線体14は磁極部13に対して左螺旋方向に直交する右螺旋方向の起磁力を与えることができる。したがって電磁アクチュエータ10は、二自由度を有する電磁アクチュエータを構成することができる。
以上、実施の形態によれば、組立容易な埋込磁石型モータを提供することができる。また、上述のように複数のコイルを螺旋状に接続することにより、電磁アクチュエータは線占積率を向上させることが可能となる。なお、上述のような、異なる磁極を交互に配置した磁極部と、複数の導線を互いに電気的に絶縁した状態で交差させて配置してなる二組の巻線体とを有する二自由度の電磁アクチュエータの技術については既に公知であるため、駆動原理に関して、ここでの詳細な説明は省略する。
(位置推定機能)
次に電磁アクチュエータ10が有する位置推定機能について説明する。電磁アクチュエータ10はステータ部12に交流電圧を印加してコイルヨーク123に磁界を発生させることにより磁極部13を駆動する。このとき磁極部13が内蔵する磁石133が変位することによりU相~W相コイルのインダクタンスが変動するため、励磁コイルである第1巻線体14および第2巻線体15は、磁極部13が変位することによる磁界の変動を検出することができる。本実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10を駆動する制御回路は、この磁界の変動を検出することにより可動子の位置を推定する機能を有する。
図18を参照しながら位置推定機能を有する制御回路について説明する。図18は、制御回路のブロック図である。制御回路300は、電磁アクチュエータ10のステータ部12に接続し、コア部11を駆動する。制御回路300は、主な構成として、ドライバ回路310および位置推定回路320を有している。
ドライバ回路310は、可動子を駆動するための3相交流電源を含む電源回路であり、U相、V相およびW相の各層に位相の異なる交流電圧を印加するための駆動回路を含んでいる。またドライバ回路310は、可動子を駆動するための交流電圧に加えて、可動子の位置を推定するために、駆動用の交流電圧よりも高い周波数の交流電圧を発生させる機能を有している。なお、以降の説明において、可動子の位置を推定するための交流電圧を位置推定信号と称する。位置推定信号の周波数(位置推定用周波数)は、駆動用の交流電圧と明確に区別できる程度の周波数であることが好ましい。例えば、位置推定用周波数は、駆動用の交流電圧が有する周波数の、数十倍程度である。また位置推定信号の電圧は、駆動用の交流電圧と比較して、5パーセント~20パーセント程度の小さい値である。
位置推定回路320は、可動子の位置を推定するための構成を有している。位置推定回路320は主な構成として、ハイパスフィルタ321、電流計322および演算回路323を有している。
ハイパスフィルタ321は、ステータ部12に流れる電流から位置推定信号を抽出するためのフィルタ回路である。なおハイパスフィルタ321はハイパスフィルタに代えてバンドバスフィルタでもよい。電流計322は、ハイパスフィルタ321により抽出された位置推定信号の電流値を測定する。演算回路323は、電流計322が測定した電流値から、可動子の位置すなわち第1巻線体14又は第2巻線体15と磁極部13との相対的な位置関係を推定するための演算を行う。なお、電流計322は、位置推定だけでなく、電磁アクチュエータ10の駆動制御にも用いられる。すなわち、電流計322は、電磁アクチュエータ10を駆動する際の電流のフィードバック制御に用いられるものである。したがって、ここで示す位置推定機能のために別個に電流計322を用意する必要はない。
次に、可動子の位置を推定するための原理について説明する。図19は、実施の形態1にかかる電磁アクチュエータの基本回路図である。図19は電磁アクチュエータ10の動作回路を模式的に示したものである。電磁アクチュエータ10は、制御回路300を有している。制御回路300は、第1巻線体14に接続する回路と第2巻線体15に接続する回路とをそれぞれ有している。
図19に示すように、電磁アクチュエータ10の第1巻線体14はU相のコイル14U、V相のコイル14VおよびW相のコイル14Wを有している。これらのコイルに対して制御回路300は交流電圧を印加するための交流電源を有している。
例えばコイル14Uには電圧Ein_Uが印加される。このときにコイル14Uに流れる電流はIin_Uである。またコイル14UのインダクタンスはLin_U(αin)である。ここでαinは、磁極部13の左螺旋方向の機械角である。同様に、コイル14Vには電圧Ein_Vが印加される。このときにコイル14Vに流れる電流はIin_Vである。またコイル14VのインダクタンスはLin_V(αin)である。コイル14Wには電圧Ein_Wが印加される。このときにコイル14Wに流れる電流はIin_Wである。またコイル14WのインダクタンスはLin_W(αin)である。
第2巻線体15が有するコイル15U、コイル15Vおよびコイル15Wについても上述の第1巻線体14と同様に、電圧、電流およびインダクタンスが示されている。コイル15Uには電圧Eout_Uが印加される。このときにコイル15Uに流れる電流はIout_Uである。またコイル15UのインダクタンスはLout_U(αout)である。ここでαoutは、磁極部13の右螺旋方向の機械角である。同様に、コイル15Vには電圧Eout_Vが印加される。このときにコイル15Vに流れる電流はIout_Vである。またコイル15VのインダクタンスはLout_V(αout)である。コイル15Wには電圧Eout_Wが印加される。このときにコイル15Wに流れる電流はIout_Wである。またコイル15WのインダクタンスはLout_W(αout)である。
図19に示した上述の電圧、電流および機械角は、以下の関係が成立している。
ここで、f
inは第1巻線体14に印加する位置を推定するための交流電圧の周波数(位置推定用周波数)であり、tは時間であり、f
outは第2巻線体15に印加する位置を推定するための交流電圧の周波数である。また、zは直動方向の位置であり、l
mはz方向における磁石の極性1周期分の長さであり、θは回転方向の角度を示す。
式(1)~(6)における右辺第1項は、回転力又は推力を発生させるための電圧であり、可動子の位置すなわち機械角αin又はαoutに依存する。式(1)~(6)における右辺第2項は、位置推定信号を発生させるための電圧であり、時間に依存する。これにより、各コイルには、駆動用の電流と共に、位置推定用の高周波の電流が流れる。
ところでIPM型の電磁アクチュエータ10は、可動子の位置に応じて各コイルのインダクタンスが変動する。そこで、位置推定回路320は、ハイパスフィルタ321により位置推定信号を抽出し、抽出した位置推定信号の電流値(位置推定用電流)を測定する。これにより位置推定回路320は、可動子の位置を推定する。
より具体的には、位置推定回路320は、第1巻線体14を利用して第1巻線体14の駆動方向である左螺旋方向の可動子の位置を推定する。同様に位置推定回路320は、第2巻線体15を利用して第2巻線体15の駆動方向である右螺旋方向の可動子の位置を推定する。位置推定回路320は、このように第1巻線体14および第2巻線体15を利用して推定した位置を組み合わせることにより可動子の動きを推定する。
以下に、電磁アクチュエータ10における電圧と電流の関係を示す。
上式において、第3項である近似式は、機械角α
inおよびα
outの変動に対して位置推定信号の周波数f
inおよびf
outが充分に大きい場合を示している。
上式から例えば第1巻線体14のU相であるコイル14Uにおける電流値I
in_Uは以下となる。
さらに、式(12)から位置推定信号の成分を抽出すると、抽出された位置推定用電流の値である電流値I´
in_Uは以下となる。
このように、コイル14Uにおける位置推定信号の電流値I´in_Uの振幅は機械角αinに依存する。同様に、コイル14Vおよびコイル14Wにおける位置推定信号の電流値も機械角αinに依存する。一方、コイル15U、15Vおよびコイル15Wにおける位置推定信号の電流値は機械角αoutに依存する。そこで、位置推定回路320は、上述のように各コイルの位置推定信号の電流値の振幅を算出する。これにより、位置推定回路320は、可動子の位置を推定する。
以上、電磁アクチュエータ10が有する位置推定機能について説明した。本実施の形態よれば、電磁アクチュエータ10は、位置推定のためのホール素子やレゾルバに代えて、位置推定回路を有することでセンサレスの電磁アクチュエータを実現できる。
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態にかかる電磁アクチュエータ10は、上述の構成に限られない。例えば、電磁アクチュエータ10はバックヨーク122とヨーク連結部125とが別体ではなく、一個の部品であってもよい。また、上述の例ではステータ部12がコア部11を囲むような構成であったが、ステータ部12のヨーク単位121は、バックヨーク122の外周側にコイルヨーク123が突出した形態であって、コア部11は、ステータ部12の外周でステータ部を囲むように中空円筒型を呈していてもよい。また、上述の説明では固定子であったステータ部12を可動させ、可動子であったコア部11を固定してもよい。その場合、第1巻線体および第2巻線体を有している部材(上述のステータ部12)を可動子と称し、上述の第1磁石保持部および第2磁石保持部を有している部材(コア部11)を固定子と称してもよい。
以上、本実施の形態によれば、組立容易かつ高速回転可能な二自由度埋込磁石型モータを提供することができる。また本実施の形態によれば、組立容易であり、位置推定機能を有する二自由度埋込磁石型モータを提供することができる。またかかる位置推定機能は、新たに電流計を追加することなく実現可能である。
<実施の形態2>
次に、図20を参照して実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかる電磁アクチュエータは、第1巻線体と第2巻線体とがそれぞれ基準軸Aに連なって配列されている点が、実施の形態1と異なる。またこれに伴い、実施の形態2にかかる電磁アクチュエータは、第1巻線体に対応する第1磁極部と、第2巻線体に対応する第2磁極部とをそれぞれ有する点が、実施の形態1と異なる。
図20を参照しながら、実施の形態1と異なる主な点について説明する。図20は、実施の形態2にかかる第1巻線体、第2巻線体およびコア部の分解斜視図である。図20は、ステータ部のコイルを抽出して表示している。
図20に示す実施の形態2にかかる電磁アクチュエータは、第1巻線体24、第2巻線体25を有している。第1巻線体24は、実施の形態1にかかる第1巻線体14と同様の構成であり、右螺旋方向にコイルがそれぞれ連なって接続されている。第2巻線体25は、第1巻線体24と同様の円筒形状を形成し、第1巻線体24と同軸上に連なって配置されている。第2巻線体25は、左螺旋方向にコイルがそれぞれ連なって接続されている。なお図示しないが、第1巻線体24および第2巻線体25のヨーク板は実施の形態1にかかるヨーク単位121より直径を小さくすることが可能である。また、第1巻線体24に用いるヨーク板と、第2巻線体25に用いるヨーク板は同じものであってもよい。
図20に示す実施の形態2にかかる電磁アクチュエータは、コア部21を有している。コア部21は軸111、第1磁極部13Rおよび第2磁極部13Lを有している。第1磁極部13Rは、第1巻線体24に対応した磁極部であり、第2磁極部13Lは、第2巻線体25に対応した磁極部である。第1磁極部13Rおよび第2磁極部13Lは軸111にそれぞれ固定されている。第1磁極部13Rおよび第2磁極部13Lは、それぞれ、実施の形態1にかかる磁極部13と同様の構成を有している。
以上のように、実施の形態2によれば、組立容易であり、かつ効率の高い二自由度電磁アクチュエータであって、径方向を小型化した電磁アクチュエータを提供することができる。
<実施の形態3>
次に、図21~24を参照しながら実施の形態3について説明する。実施の形態3は、ステータ部の形態は実施の形態1と異なる。
図21は、実施の形態3にかかるコア部およびステータ部の分解斜視図である。ステータ部32は、第1巻線体34および第2巻線体35を有している。
図22は、実施の形態3にかかる第1巻線体の斜視図である。実施の形態3にかかる第1巻線体34は、複数コイルに代えて螺旋状の導線を有している点が実施の形態1と異なる。図に示すように、第1巻線体34は、断面が矩形の導線を、基準軸Aを中心軸とした円筒面に対応して右螺旋状に加工したものである。第1巻線体34は、U相に対応する導線34U、V相に対応する導線34VおよびW相に対応する導線34Wが互いに通電しないように隣接して配置されている。
図23は、実施の形態3にかかる第2巻線体の斜視図である。実施の形態3にかかる第2巻線体35は、第1巻線体34と同様に、断面が矩形の導線を円筒状に加工したものであり、基準軸Aを中心軸とした円筒面に対応して左螺旋状に加工したものである。第2巻線体35は、U相に対応する導線35U、V相に対応する導線35VおよびW相に対応する導線35Wが互いに通電しないように隣接して配置されている。
図24は、実施の形態3にかかる第1巻線体および第2巻線体の斜視図である。図に示すように、実施の形態3にかかる電磁アクチュエータは、第1巻線体34の外周側に第2巻線体35が配置される。これにより、第1巻線体34は磁極部13に対して右螺旋方向に直交する左螺旋方向の起磁力を与えることができる。同様に、第2巻線体35は、右螺旋方向の起磁力を与えることができる。したがって本実施の形態にかかる電磁アクチュエータは、二自由度を有する電磁アクチュエータを構成することができる。以上、実施の形態によれば、組立容易なIPM型の磁極部を有する電磁アクチュエータを提供することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。