JP7228399B2 - 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体 - Google Patents

皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体 Download PDF

Info

Publication number
JP7228399B2
JP7228399B2 JP2019021324A JP2019021324A JP7228399B2 JP 7228399 B2 JP7228399 B2 JP 7228399B2 JP 2019021324 A JP2019021324 A JP 2019021324A JP 2019021324 A JP2019021324 A JP 2019021324A JP 7228399 B2 JP7228399 B2 JP 7228399B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
region
fastened
countersunk
elastic body
fastener
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019021324A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020128774A (ja
Inventor
拓史 杉山
邦宏 森下
良輔 橋爪
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority to JP2019021324A priority Critical patent/JP7228399B2/ja
Publication of JP2020128774A publication Critical patent/JP2020128774A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7228399B2 publication Critical patent/JP7228399B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Connection Of Plates (AREA)
  • Bolts, Nuts, And Washers (AREA)

Description

本発明は、皿頭を有するボルトやリベット等の皿ファスナ、および被締結部材を含む皿ファスナ継手構造と、皿ファスナ継手構造に用いられる弾性体とに関する。
逆円錐台状の皿頭を有する皿ボルトが種々の部材を締結するために用いられている。例えば、航空機の機体表面の空気抵抗を低減するため、機体の外皮(skin)に皿ボルトが用いられている。皿ボルトの皿頭のテーパ状の座面は、被締結部材に皿取り加工によりテーパ状に形成された受け面の内側に収められる。
特許文献1は、鋳造によるエクステリア部材を締結するための皿ボルト用テーパワッシャを開示する。特許文献1では、被締結部材の孔心のずれに対応するため、皿ボルトの軸部が挿入される孔よりも径が大きい孔に皿ボルトの皿頭を配置し、皿頭には、鍔部を有する円錐形のテーパワッシャを装着している。
この特許文献1では、被締結部材の円筒形の孔に皿頭の全体が配置されるため、皿頭はフリーの状態にある。テーパワッシャの鍔部は、鍔部よりも大きい被締結部材の凹部内に余裕をもって配置される。被締結部材に係合する鍔部と、他の被締結部材に係合するボルトの軸部とにより、被締結部材に締結力が作用する。
特許文献1の記載によれば、被締結部材の熱膨張が起こっても、皿ボルトに、被締結部材の貫通孔内で相対的な位置を変えるだけの余裕が与えられているから、皿ボルトは、無理な拘束に強いられて応力を集中させることなく、応力の負荷する方向へテーパワッシャの摺動と共に傾動する。
特開平9-170617号公報
航空機等の輸送機をはじめ、種々の装置の部材に用いられているアルミニウム合金、あるいは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂は、鉄や鋼等と比べると一般に強度が低い。
そのため、アルミニウム合金または繊維強化樹脂が用いられた被締結部材を皿ボルトにより締結する場合は、鉄や鋼等が用いられた被締結部材を皿ボルトにより締結する場合と同等の大きさの締結力を被締結部材に与えることが難しい。
そうすると、皿ボルトの軸方向の締結力に対して直交する方向の荷重により、皿ボルトの軸部と被締結部材の挿入孔の内周部との間に設定されているクリアランスの分だけ被締結部材が互いに滑る。孔心位置の公差に対応するため、また、皿ボルトの挿入や取り外しの作業を容易に行うために、皿ボルトの軸部と挿入孔の内周部との間にはクリアランスを設定することができる。
被締結部材の滑りに伴い、皿ボルトが挿入孔に対して傾き、軸部にせん断応力を発生させながら被締結部材に荷重を伝達する。さらに、ボルト皿頭の座面が突き当てられる被締結部材の受け面からの反力によって、皿頭に曲げ応力が生じる。
皿ボルトの皿頭の強度が被締結部材の強度よりも低い場合がある。その場合も、上記のように被締結部材にアルミニウム合金や繊維強化樹脂が用いられる場合と同様に、十分な締結力を被締結部材に与えることが難しい。そのため、軸部に対して直交する方向の荷重により被締結部材が互いに滑り、皿ボルトが挿入孔に対して傾き、受け面からの反力によりボルト皿頭に曲げ応力が生じる。
特許文献1の皿ボルト継手構造とは異なり、テーパ状の座面が被締結部の受け面により拘束される皿ボルトに特有の事象として、図9に、皿ボルト8および被締結部材91,92の変形を誇張して示している。図9は応力解析例に基づく模式図である。
図9に示すように、被締結部材91,92の滑りおよび皿ボルト8の傾きに伴う受け面91Aからの反力により、皿頭81に曲げ応力が生じる。図9に示す湾曲した矢印は、皿ボルト8の傾きによって皿頭81が二点鎖線で示す形状から実線で示す形状に曲げ変形したことで生じる曲げ応力に関する曲げモーメントMを示している。図9に示す例では、特に皿頭81の首部81Aの曲げ応力が大きい。
特許文献1の構成によれば、被締結部材の滑りにより皿ボルトが傾く際に、皿頭が拘束されていないため皿頭の曲げ応力の増大を回避できる反面、軸部と直交する方向の荷重に対する接合強度には劣る。
以上より、本発明は、皿頭を有する皿ファスナにより締結された締結部材に滑りが生じるとしても、滑りに伴い発生する応力を低減して皿ファスナ継手構造の破損を防止することを目的とする。
本発明の皿ファスナ継手構造は、軸部、および軸部から頂面に向かうにつれて径が拡大した逆円錐台状の皿頭を含む皿ファスナと、皿ファスナにより締結される複数の被締結部材と、皿頭の座面、および一の被締結部材に形成されて座面を受ける受け面の間に配置される弾性体と、を備える。
そして、本発明は、弾性体が、径方向内側の第1領域と、径方向外側の第2領域と、を含み、第1領域および第2領域のいずれも、皿ファスナ、および受け面が形成される被締結部材と比べて弾性体の肉厚方向の剛性が低く、第1領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量と比べて、第2領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量が大きいことを特徴とする。
「ファスナ」は、ボルトやリベット等、複数の部材間の締結に用いられる部材を包含する。「皿ファスナ」は、逆円錐台状の皿頭を含むファスナを意味するものとする。
本発明の皿ファスナの継手構造において、皿ファスナは、被締結部材に対する着脱が可能なボルトであることが好ましい。
本発明の皿ファスナの継手構造において、皿ファスナが挿入される被締結部材の挿入孔の軸線に対して座面がなす角度をθ1、軸線に対して受け面がなす角度をθ2、とすると、θ1<θ2であることが好ましい。
本発明の皿ファスナの継手構造において、無負荷の状態における第1領域の肉厚をt1、無負荷の状態における第2領域の肉厚をt2、とすると、t1<t2であることが好ましい。
本発明の皿ファスナ継手構造において、第1領域の剛性をk1、第2領域の剛性をk2、とすると、k1>k2であることが好ましい。
本発明の皿ファスナの継手構造において、弾性体は、肉厚方向の剛性が異なる第1弾性部および第2弾性部を備え、第1弾性部の剛性kaに対して、第2弾性部の剛性kbが小さく、第1弾性部および第2弾性部の体積比率に基づいて、k1>k2であることが好ましい。
本発明の皿ファスナ継手構造は、軸部と、軸部が挿入される被締結部材の挿入孔の内周部との間に配置され、軸部および被締結部材と比べて肉厚方向の剛性が低い第2の弾性体を備えることが好ましい。
本発明の皿ファスナの継手構造において、弾性体は、頂面を覆うカバー領域を含むことが好ましい。
本発明の皿ファスナの継手構造において、被締結部材は、航空機の機体を構成する部材であることが好ましい。
また、本発明は、皿ファスナの皿頭の座面、および皿ファスナにより締結される複数の被締結部材の一つに形成されて座面を受ける受け面の間に配置される弾性体であって、径方向内側の第1領域と、径方向外側の第2領域と、を含み、第1領域および第2領域のいずれも、皿ファスナ、および受け面が形成される被締結部材と比べて肉厚方向の剛性が低く、第1領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量と比べて、第2領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量が大きいことを特徴とする。
本発明の皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体によれば、被締結部材の滑りが生じたとしても、滑りに伴う皿頭の傾きの変位が弾性体の弾性変形により吸収されることで皿頭の曲げ変形が緩和されるため、皿頭の首部等に発生する応力を低減することができる。したがって、皿ファスナ継手構造の疲労破壊等の破損を未然に防ぐことができる。
(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る皿ファスナ継手構造を示す断面図である。(b)は、(a)の部分拡大模式図である。 (a)は、皿ファスナおよび弾性体の締結前の状態を示す断面図である。(b)は、被締結部材および弾性体の締結前の状態を示す断面図である。 被締結部材の滑りに伴い皿ファスナが傾いた状態を模式的に示す図である。 弾性体の変形例を示す断面図である。 第2実施形態に係る皿ファスナ継手構造を示す模式図である。 第3実施形態に係る皿ファスナ継手構造を示す模式図である。 第1実施形態および第2実施形態の組み合わせによる第4実施形態の皿ファスナ継手構造を示す模式図である。 (a)および(b)はいずれも、皿ファスナの軸部の周りに配置される第2の弾性体を備えた第5実施形態を示す図である。 従来の皿ファスナ継手構造を示す模式図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
以下に説明する皿ファスナ継手構造1~4のいずれも、後述するように、皿ボルト10の座面12Bと被締結部材21の受け面21Aとの間に配置される弾性体の構成要件に主要な特徴を有する。
〔共通の構成要素〕
まず、図1(a)および(b)に示す第1実施形態の皿ファスナ継手構造1を例に取り、本発明の全ての実施形態に共通する構成要素を説明する。
図1(a)および(b)に示すように、皿ファスナ継手構造1は、軸部11および逆円錐台状の皿頭12を有した皿ファスナとしての皿ボルト10と、皿ボルト10に設けられるナット18と、皿ボルト10およびナット18により締結される複数の被締結部材21,22と、弾性体30とを備えている。
本実施形態の皿ファスナ継手構造1は、航空機の機体を構成する部材に適用することができる。
その場合において、被締結部材21,22は、航空機の胴体や主翼等の部材である。こうした被締結部材21,22は、複数の皿ボルト10を用いて複数の箇所で締結されている。
例えば、被締結部材21は、主翼のスキンであり、被締結部材22は、スキンを裏側から支持するストリンガまたはリブである。あるいは、被締結部材21が胴体のスキンであり、被締結部材22がスキンを裏側から支持するフレームであってもよい。
同一の皿ボルト10により締結される被締結部材(21,22)の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
(被締結部材)
被締結部材21,22は、鉄や鋼等と比べて比強度の大きい材料、例えば、アルミニウム合金または繊維強化樹脂を用いて形成されることが好ましい。繊維強化樹脂は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維からなる繊維基材と、繊維基材に含侵したマトリクス樹脂とを含む。
被締結部材21,22のうち、機体の外表面に配置される一の被締結部材21には、皿ボルト10の皿頭12の座面12Bを受ける受け面21Aが形成されている。受け面21Aの内側の開口の径は、皿頭12の高さに応じた深さのテーパ状のザグリ加工(皿取り加工)により、ボルト挿入孔20に向かうにつれて次第に縮小している。
受け面21Aには、弾性体30を介して座面12Bが押圧される。
被締結部材21,22に亘り貫通したボルト挿入孔20に皿ボルト10の軸部11が挿入されると、皿ボルト10の皿頭12は、被締結部材21の表面21Bから窪んだ受け面21Aの内側に収められる。このとき、皿頭12は、被締結部材21の表面21Bから突出しない。そのため、機体の外表面に露出する部材の締結に皿ボルト10を使用することで、機体の空気抵抗を低減することができる。
ボルト挿入孔20は、被締結部材21に形成された挿入孔201と、被締結部材22に形成された挿入孔202とからなる。このボルト挿入孔20の断面中心を通る軸線をAと称する。
ボルト挿入孔20の内周部と軸部11の外周部との間には、所定の寸法のクリアランスCが設定されている。クリアランスCの寸法は、皿ボルト10をボルト挿入孔20に挿入したりボルト挿入孔20から皿ボルト10を取り外したりする作業の容易性と、寸法や組立の公差による挿入孔201,202の断面中心の位置の公差を考慮して設定されている。
クリアランスCが設定されているため、ボルト挿入孔20の内周部と軸部11の外周部との間には空隙24が存在する。被締結部材21,22は、外力の軸線Aに対して直交する方向に作用する成分である荷重F1(図3)により、被締結部材21,22間の摩擦力に抗して、空隙24の分だけ、滑りつつ相対的に変位する。
滑りを引き起こす荷重F1は、例えば機外と機内の圧力差により機体のスキンに作用する張力である。または、荷重F1は、例えば主翼に生じる空力的荷重により主翼が曲がり、主翼スキンに作用する張力である。
ボルト挿入孔20の内周部と軸部11の外周部との間は、空隙24であって、例えば鋼材から形成された筒体等、被締結部材21,22の滑りに抵抗する部材は配置されていない。
(皿ボルト)
さて、皿ボルト10は、雄ねじ11Aが形成された軸部11(shank)と、頂面12Aに向かうにつれて軸部11の径に対して径が次第に拡大した逆円錐台状の皿頭12(flush head)とを備えている。
皿ボルト10により被締結部材21,22が締結された状態において、皿ボルト10の軸線は、基本的にはボルト挿入孔20の軸線Aと一致している。
本実施形態の雄ねじ11Aは、軸部11における先端部11B側の所定範囲に亘り形成されているが、雄ねじ11Aが軸部11の全長に亘り形成されていてもよい。
皿頭12は、機体の外表面に位置する頂面12Aと、頂面12Aから軸部11までテーパ状に形成された座面12Bとを備えている。本実施形態の頂面12Aは、軸線Aと直交する面に沿って平坦に形成されている。頂面12Aが周りの表面21Bと面一であることが好ましい。
皿頭12には、締結時に工具が挿入される溝12D(recess)が頂面12Aから窪んで形成されている。
図1(b)や、図2、図3等において溝12Dの図示を省略する。
皿ボルト10が、被締結部材21,22のボルト挿入孔20に挿入されると、受け面21Aに皿頭12の座面12Bが配置されて、軸部11の雄ねじ11Aが被締結部材22から機内側に突出する。軸部11の雄ねじ11Aに、ナット18の図示しない雌ねじを係合させると、図1(a)に白抜き矢印で示すように、皿ボルト10の軸線Aの方向に締結力F0が作用する。締結力F0により被締結部材21と被締結部材22とが締結される。
なお、ナット18の端面18Aと被締結部材22の機内側の面22Aとの間に、図示しないワッシャを挟むことができる。このワッシャは、金属材料、樹脂材料、あるいはゴム材料等から構成することができる。
また、ナット18および軸部11の先端部11Bを覆う図示しないキャップを被締結部材22の機内側に設けることができる。
皿ボルト10は、被締結部材21,22の締結に必要な剛性に加え、必要に応じて耐食性、耐熱性、耐候性等を備えた適宜な材料から形成することができる。典型的には、鉄、ニッケル、チタン、これらの合金等の金属材料を用いて皿ボルト10を構成することができる。アルミニウム合金や繊維強化樹脂が用いられた被締結部材21,22の剛性に対して、皿ボルト10の剛性は一般に高いが、これに限られない。皿ボルト10に樹脂材料を用いることも許容される。
ナット18も、皿ボルト10と同様の材料を用いて構成することができる。
被締結部材21,22の剛性、および皿ボルト10やナット18の剛性を考慮した所定の締め付けトルクが皿ボルト10に与えられる。継手として確実に接合可能なトルクを与えることにより、座面12Bが受け面21Aに対して押圧され、ナット18が被締結部材22の機内側の面22Aに対して押圧されることで締結による接合強度が確保される。皿頭12およびナット18からの押圧による被締結部材21,22の変形を弾性域に留めることが可能なトルクを限度として、皿ボルト10に適切な締め付けトルクを与えることができる。
アルミニウム合金や繊維強化樹脂が用いられた被締結部材21,22の強度(面圧強度)が鉄等と比べて低いため、皿ボルト10により締結された被締結部材21,22間に、鉄等を用いる場合と比べて低い締結力F0しか与えることができない。それゆえ、アルミニウム合金や繊維強化樹脂が用いられた被締結部材21,22間の摩擦力は、鉄等が被締結部材に用いられた場合よりも低くなる。しかも、軸部11の外周部とボルト挿入孔20の内周部との間にはクリアランスCに相当する空隙24が存在している。そのため、例えば、振動や、空力荷重等による外的な荷重F1により被締結部材21,22が互いに滑り易い。
(弾性体)
次に、弾性体30について説明する。弾性体30は、ゴム等の弾性材料から環状に形成されて座面12Bと受け面21Aとの間に配置される部材である。弾性体30の外径も内径も、軸部11から頂面12Aに向かうにつれて次第に拡大している。
弾性体30のほぼ無負荷の状態が図2(a)および(b)に示されている。
弾性体30は、後述するように皿頭12の曲げ変位を吸収して応力低減を図るため、皿ボルト10の皿頭12の座面12Bと被締結部材21の受け面21Aとの間のほぼ全域に亘り配置されることが好ましい。但し、これは必須ではなく、弾性体30が、皿頭12の首部12Cの近傍および頂面12Aの近傍の一方または両方において配置されないことも許容される。
弾性体30は、皿ボルト10および被締結部材21の両者に対して、少なくとも肉厚方向の剛性が低い。
弾性体30は、締結時に座面12Bと受け面21Aとの間に押圧されることで弾性変形する。加えて、弾性体30は、被締結部材21,22が互いに滑ることで皿ボルト10が傾くことによっても、座面12Bと受け面21Aとの間に押圧されて弾性変形する。
弾性体30により座面12Bと受け面21Aとの間が封止される。座面12Bと受け面21Aとの間が封止されることで、機体表面の隙間の存在による空気抵抗を低減することができる。
座面12Bと受け面21Aとの間がより十分に封止されるように、ポリサルファイド系合成ゴム等からなるシーラントを用いることができる。シーラントは、流動性を有する状態で座面12Bや受け面21Aに塗布、あるいは座面12Bと受け面21Aとの間に充填され、固化することで、座面12Bと受け面21Aとの間を封止する。
弾性体30は、径方向内側(軸部11側)の第1領域31と、径方向外側(頂面12A側)の第2領域32とを含む。
第1領域31の剛性と、第2領域32の剛性のいずれも、皿ボルト10および被締結部材21の両者に対して剛性が低い。ここでは、弾性体30の肉厚方向の剛性を比較している。
第1領域31および第2領域32は、想定される最大の締結力F0と、被締結部材21,22の滑りに伴い弾性体30を押圧する想定の最大荷重とが作用したとしても弾性域内で弾性変形し、弾性変形した状態から除荷により復元する。これを実現するための肉厚および剛性が第1領域31および第2領域32のそれぞれに確保されている。
第1領域31と第2領域32とのそれぞれには、肉厚および剛性に基づいて、弾性体30の肉厚方向の適切な弾性変形量が設定されている。
ここで、負荷が加えられていない無負荷時から、弾性限まで肉厚方向に最大限に弾性変形した時までの弾性変形量を「最大弾性変形量」と定義するものとする。
第1領域31の最大弾性変形量δ1と、第2領域32の最大弾性変形量δ2とは相違している。
荷重F1が入力されることで被締結部材21,22が滑った際に、弾性体30の第1領域31および第2領域32の弾性変形により皿頭12の曲げ応力が低減される。
弾性体30は、皿ファスナ継手構造1を備える機械や装置に対応した使用条件等に応じて、ゴム材料をはじめとする適宜な材料を用いて構成することができる。
例えば、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソブチエンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料から、弾性体30に使用する材料を選定することができる。
弾性体30は、必ずしもゴム材料には限定されない。ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド等の樹脂系材料を弾性体30に用いることもできる。
被締結部材21,22および皿ボルト10の剛性と比べて低い剛性が得られる限りにおいて、金属材料を弾性体30に用いることもできる。例えば、皿ボルト10がチタン合金から構成され、被締結部材21がアルミニウム合金から構成されている場合は、アルミニウム合金と比べて縦弾性係数等の弾性率が小さい金属材料、例えば、マグネシウム、りん、錫、これらの合金等から弾性体30を構成することができる。
あるいは、中実の構造で考えると被締結部材21のアルミニウム合金と比べて弾性率が大きい金属材料であるとしても、当該金属材料からなる金網状、メッシュ状の素材を用いて弾性体30の形状に成形することにより、弾性体30に皿ボルト10および被締結部材21,22の両者よりも低い剛性を与えるようにしてもよい。
適用対象が航空機である場合は、耐候性や剛性等の必要な特性を備えたゴム材料を弾性体30に用いるとよい。例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等が好適である。
以下に述べるように、本発明の各実施形態では、弾性体30の第1、第2領域31,32にそれぞれ適切な最大弾性変形量を実現する方法が異なる。
〔第1実施形態〕
図1~図3に示す第1実施形態では、後述する第2実施形態および第3実施形態とは異なり、皿ボルト10の座面12Bのテーパの角度と、被締結部材21の受け面21Aのテーパの角度とが相違している。
座面12Bおよび受け面21Aのいずれも、軸部11側から頂面12Aに向かうにつれて径が拡大しているように傾斜しているが、傾斜の角度(θ1,θ2)が相違している。
つまり、図1(b)に示すように、座面12Bが軸線Aに対してなす角度をθ1、受け面21Aが軸線Aに対してなす角度をθ2とすると、θ1<θ2である。
これに伴い、座面12Bと受け面21Aとの間の間隙の寸法が、径方向内側(軸部11側)と、径方向外側(頂面12A側)とでは相違することとなる。
そのため、第1実施形態では、弾性体30に負荷が加えられていない無負荷の状態において、径方向内側の第1領域31と径方向外側の第2領域32とに異なる肉厚を与えている。座面12Bと受け面21Aとの間に配置される弾性体30の肉厚は、径方向の内側から外側に向かうにつれて次第に増加している。このため、弾性体30の最大弾性変形量が、径方向の内側から外側に向かうにつれて増加している。
以上より、図1(b)に示すように、第1領域31の肉厚をt1、第2領域32の肉厚をt2とすると、t1<t2である。無負荷時の肉厚t1,t2も、同じくt1<t2である。無負荷時の弾性体30の状態は、図2(a)および(b)に示す状態とほぼ同様である。
第1実施形態の弾性体30によれば、肉厚方向における第1領域31の剛性と第2領域32の剛性とが同一であっても、肉厚t1,t2の違いにより、第2領域32に得られる最大弾性変形量δ2が第1領域31に得られる最大弾性変形量δ1よりも大きい。
第1実施形態では、第1領域31および第2領域32を含む弾性体30の全体を単一の材料から構成することができる。
無負荷の状態において(図2(a)および(b)参照)、弾性体30の外周部30Aは、軸線Aに対して受け面21Aの角度θ2(図1(b))とほぼ同じ角度をなしている。弾性体30の内周部30Bは、軸線Aに対して座面12Bの角度θ1(図1(b))とほぼ同じ角度をなしている。
角度θ2とは異なる傾斜角度を外周部30Aに与えたり、角度θ1とは異なる傾斜角度を内周部30Bに与えたりすることができる。内周部30Bの傾斜角度は、第1、第2領域31,32のうち特に第2領域32に与えたい肉厚に応じて適宜に定めることができる。
締結前において、弾性体30を図2(a)に示すように皿ボルト10の皿頭12に装着することができる。皿ボルト10の軸部11の径や皿頭12の径に対して弾性体30の内周部の径を小さく設定することで、弾性体30の弾性力により、弾性体30を皿ボルト10に保持することができる。そうすると、皿ボルト10および弾性体30を一体に取り扱えるため締結作業が容易である。
弾性体30は必ずしも皿ボルト10に装着される必要はない。図2(b)に示すように、締結時に弾性体30を受け面21Aに配置し、弾性体30の内端30Cの内側の孔に、皿ボルト10の軸部11を通してもよい。
図2(a)または(b)に示す例では、無負荷の状態において、弾性体30の頂部30Dが皿頭12の頂面12Aおよび被締結部材21の表面21Bに対して低く設定されている。その例では、締結時に頂部30Dが座面12Bと受け面21Aとの間から押し上げられることで、弾性体30の頂部30Dが、皿頭12の頂面12Aと同様に、被締結部材21の表面21Bと面一に配置される。
但し、弾性体30の頂部30Dが必ずしも表面21Bと面一に配置される必要はない。頂部30Dが表面21Bよりも下方に位置していたとしても、例えばシーラントを頂部30Dに塗布することで、機体表面の平滑化を図ることができる。
図2(a)および(b)のいずれの状態を経るにしても、皿ボルト10をボルト挿入孔20に挿入し、皿ボルト10およびナット18の一方を他方に対して軸回りに回転させて、雄ねじ11Aとナット18の雌ねじとが係合することで、図1(a)および(b)に示すように被締結部材21,22が締結される。
締結時には、被締結部材21,22に対して皿ボルト10が軸部11の軸方向に変位することで、弾性体30が受け面21Aと座面12Bとの間に押圧されて弾性変形する。このとき弾性体30は、径方向内側から外側までの全体に亘り、肉厚方向に一定の変形量により弾性変形するとみなすことができる。皿ボルト10の締結力F0により、弾性体30が弾性変形した状態に維持される。
締結により弾性変形しても、第1領域31,32のそれぞれの弾性変形量は、最大弾性変形量には至らない。つまり、第1領域31および第2領域32は、さらに荷重が加えられることで肉厚方向に弾性変形可能である。
なお、弾性体30によって座面12Bと受け面21Aとの間を封止することが必要ない場合は、締結完了時に弾性体30が無負荷の状態であっても許容される。
図3および図9を参照し、弾性体30による主な作用を説明する。以下に述べる作用は、第2実施形態以降の弾性体にも該当する。
図3に示すように、空力荷重等の外的な荷重F1により、軸部11の外周部とボルト挿入孔20の内周部との間の空隙24の分、被締結部材21,22が互いに滑る。それに伴い、皿ボルト10がボルト挿入孔20の軸線Aに対して傾く。
そうすると、軸部11にせん断応力を発生させながら荷重F1が軸部11から被締結部材21,22に伝達されるとともに、皿頭12の座面12Bが突き当てられる受け面21Aからの反力が生じる。このとき、受け面21Aからの反力によって皿頭12に生じる曲げ変形が、弾性体30の肉厚方向への弾性変形により緩和される。
図9に示すように、弾性体30が存在していない場合は、被締結部材91,92の滑りに伴い皿ボルト8が傾くことで、受け面91Aからの反力により皿頭81に曲げ変形が生じるとしても、本実施形態によれば、図3に示すように弾性体30により皿頭12の曲げ変形を緩和して応力を低減することができる。換言すれば、皿頭12が変形する代わりに弾性体30が弾性変形することで、皿頭12の曲げ応力が低減される。
図3に示す例では、軸線Aに対して皿頭12が図3の右側にシフトするように皿ボルト10が全体的に傾いており、曲げ変形していない皿頭12が弾性体30を介して受け面21Aに押し付けられている。そのため、図1(b)に示す状態から、図3の右側では弾性体30が圧縮され、図3の左側では弾性体30が伸長する。
図9に、曲げ変形していない皿頭81の二点鎖線で示す形状と実線で示す形状とから理解されるように、本実施形態の皿頭12が曲げ変形するとしたならば、皿頭12の変位は、首部12Cから皿頭12の径方向外側へ向かうほど大きい。弾性体30の第1領域31および第2領域32のそれぞれの最大弾性変形量は、皿頭12の曲げ変位量の分布に対応している。つまり、皿頭12の曲げ変位量が相対的に大きい径方向外側の第2領域32における最大弾性変形量δ2が、径方向内側の第1領域31の最大弾性変形量δ1と比べて大きい。
そのため、皿頭12において相対的に大きい径方向外側の曲げ変位が、第1領域31と比べてより大きい変形量を弾性域に残していた第2領域32の弾性変形により吸収されることとなる。そうすると、皿頭12の曲げ変形を弾性体30により第1領域31から第2領域32までの全体に亘り緩和することができる。その結果、皿頭12の曲げ応力を低減し、特に首部12Cへの応力の集中を避けることができる。
被締結部材21および皿ボルト10のそれぞれの剛性によっては、弾性体30が用いられていない場合で、被締結部材21,22の滑りに伴い皿ボルト10が傾いた際に、皿頭12が曲げ変形しないで、受け面21Aからの反力を上回る力で被締結部材21に押し付けられることがあり得る。そうした場合でも、弾性体30を受け面21Aと座面12Bとの間に介在させる。そうすることで、皿ボルト10が傾いた際に、受け面21Aに対して相対的に大きい皿頭12の径方向外側の変位が、弾性体30の第2領域32の弾性変形により吸収されるので、被締結部材21の応力を低減して受け面21Aの圧縮破壊を防ぐことができる。
以上より、弾性体30を備えた皿ファスナ継手構造1によれば、弾性体30の径方向外側の第2領域32に、径方向内側の第1領域31の最大弾性変形量δ1と比べて大きな最大弾性変形量δ2設定されているため、被締結部材21,22の滑りと、それに伴う皿ボルト10の傾きが生じるとしても、皿ファスナ継手構造1に生じる応力を低減することができる。
仮に、本実施形態とは逆に、皿頭12の曲げ変位が小さい径方向内側の第1領域31に、第2領域32の最大弾性変形量よりも大きな最大弾性変形量が設定されていたとすれば、応力低減の効果は本実施形態と比べて小さい。
以上で説明したように、本実施形態の皿ファスナ継手構造1によれば、弾性体30の作用により、皿ファスナ継手構造1に発生する応力を低減することができる。そのため、曲げ応力による皿ボルト10の破損や、皿頭12が突き当てられる被締結部材21の圧縮破壊を防いで、皿ファスナ継手構造1を健全な状態に維持することができる。
被締結部材21,22の滑りは、皿ファスナ継手構造1を備える装置等の振動や、航空機の場合で言えば飛行時の圧力変動に伴う繰り返しの荷重F1により生じうる。弾性体30の作用により、皿ファスナ継手構造1の疲労破壊を防ぐことができる。
弾性体30の第1領域31および第2領域32のそれぞれの肉厚t1,t2は、必ずしもt1<t2の関係にある必要はない。
但し、t1<t2の場合と同様に、第1領域31に設定された最大弾性変形量δ1と比べて第2領域32に設定された最大弾性変形量δ2が大きく、かつ、締結後に第1、第2領域31,32においてさらなる弾性変形が可能であることが要件である。
〔弾性体の変形例〕
図4に示す弾性体35は、第1領域31および第2領域32に加え、皿頭12の頂面12Aを覆うカバー領域33を備えている。カバー領域33により頂面12Aが全域に亘り覆われている。この弾性体35の内端30Cの内側に皿頭12を挿入することで、弾性体35が皿頭12の周りに装着されている。弾性体35の装着された皿ボルト10に対してナット18を回転させることで、被締結部材21,22を締結することができる。カバー領域33の周りにはシーラントSを充填している。
なお、図1(a)に示すように工具挿入用の溝12Dが皿頭12に形成されている場合は、カバー領域33における溝12Dに対応する箇所を欠損させることにより、締結前に弾性体35を皿頭12に装着しつつ、溝12Dへの工具の挿入により締結作業を行うことができる。溝12Dに対応する欠損箇所にシーラント等を充填すると、頂面12Aが全域に亘り覆われる。
弾性体35は、典型的には絶縁性のゴム材料や樹脂材料を用いて構成される。絶縁性の弾性体35により皿頭12を覆うことで、導電性の皿頭12が被締結部材21の表面に露出するのを避けて、被雷時に皿ボルト10に過大な電流が流れることを防止することができる。特に、被締結部材21が、金属材料と比べると導電率が小さい繊維強化樹脂から形成されており、皿ボルト10に雷の電流が集中し易い場合に弾性体35を採用すると、シーラント等を用いる場合と比べ、皿ボルト10に安定して絶縁性を与えることができる。
弾性体35は、第1実施形態の弾性体30と同様に、第1領域31よりも第2領域32が厚肉に構成されているが、これに限られない。
第2実施形態以降における弾性体にカバー領域33を与えることもできる。
〔第2実施形態〕
次に、図5を参照し、第2実施形態に係る皿ファスナ継手構造2を説明する。
以下、第1実施形態とは異なる事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付している。
皿ファスナ継手構造2は、受け面21Aと座面12Bとの間に配置される弾性体40を備えている。第2実施形態では、軸線Aに対する座面12Bの角度θ1と、軸線Aに対する受け面21Aの角度θ2とが同一である。なお、座面12Bや受け面21Aの寸法形状や組み付けの公差により角度θ1と角度θ2とが若干異なっていてもよい。
角度θ1と角度θ2とが同一であることにより、皿ボルト10により被締結部材21,22が締結された状態において受け面21Aと座面12Bとの間に挟まれる弾性体40の肉厚は一定である。そのため、図5に示される弾性体40の径方向内側の第1領域41の肉厚t1と径方向外側の第2領域42の肉厚t2とは同一である。無負荷時における第1領域41および第2領域42のそれぞれの肉厚t1,t2も、第1領域41および第2領域42に亘り一定であってよい。なお、弾性体40の寸法公差により、第1領域41の肉厚t1と第2領域42の肉厚t2とが若干異なっていてもよい。
第2実施形態の皿ファスナ継手構造2は、弾性体40の肉厚方向における第1領域41の剛性をk1、第2領域42の剛性をk2とすると、k1>k2であることを特徴とする。剛性k1,k2は、弾性体40の肉厚方向における皿ボルト10の剛性および被締結部材21の剛性のいずれと比較しても低い。
第2実施形態では、弾性体40の肉厚が一定であっても、第1領域41の剛性k1に対して第2領域42の剛性k2が低いため、第1実施形態の弾性体30の第1、第2領域31,32と同様に、第1領域41の最大弾性変形量δ1に対して第2領域42の最大弾性変形量δ2が大きい。
第1領域41および第2領域42はそれぞれ、上述したゴム材料や樹脂材料等から適宜に選定された材料を用いて成形することができる。弾性率が異なる材料のうち、相対的に弾性率が大きい一の材料を第1領域41に使用し、相対的に弾性率が小さい他の材料を第2領域42に使用することができる。
あるいは、第1領域41および第2領域42に同一の材料を使用しつつ、例えば、第1領域41を中実に形成し、第2領域42を中空やメッシュ状に形成することにより、k1>k2の要件を満足することができる。
第1領域41および第2領域42は、別々に成形されて接合されることで一体化されていてもよいし、2つの材料を用いる射出成形である二色成形や、積層造形等により一体に成形されていてもよい。積層造形によれば、第1、第2領域41,42として、剛性の異なる構造(中実、メッシュ等)を容易に成形することができる。
なお、第1領域41と第2領域42とが必ずしも一体化されている必要はない。弾性体40は、分離した第1領域41と第2領域42とからなるものであってもよい。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、弾性体40を受け面21Aと座面12Bとの間に介在させた状態で皿ボルト10およびナット18を係合させて被締結部材21,22を締結する。
そして、被締結部材21,22が締結された状態で弾性体40が第1実施形態の弾性体30と同様に機能することにより、皿ファスナ継手構造2に生じる応力を低減することができる。
なお、弾性体40が、第1領域41と、第2領域42と、これら第1、第2領域41,42の間の中間の領域とを備えていてもよい。この場合、中間領域の肉厚方向における剛性がk3であるとすると、k1>k3>k2、つまり各領域の剛性が径方向内側から外側に向けて段階的に低くなるように設定すればよい。
〔第3実施形態〕
次に、図6を参照し、第3実施形態に係る皿ファスナ継手構造3を説明する。
以下、第2実施形態と相違する事項を中心に説明する。第2実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
皿ファスナ継手構造3に備わる弾性体50は、第1弾性部50Aと、第2弾性部50Bとを含んでいる。第1弾性部50Aを灰色で示し、第2弾性部50Bを格子状のパターンで示している。
第1弾性部50Aの剛性kaおよび第2弾性部50Bの剛性kbは、皿ボルト10および被締結部材21のいずれに対しても小さい。
そして、弾性体50の肉厚方向に関し、第2弾性部50Bの剛性kbが、第1弾性部50Aの剛性kaと比べて小さい(ka>kb)。
第3実施形態では、第1弾性部50Aと第2弾性部50Bとの体積比率に基づいて、弾性体50の径方向内側の第1領域51と、弾性体50の径方向外側の第2領域52とのそれぞれの剛性k1,k2が相違している。
第1弾性部50Aと第2弾性部50Bとは、弾性体50の肉厚方向に対して交差した境界Bにより区分されており、弾性体50の径方向内側から外側に向かうにつれて第2弾性部50Bの占める体積比率が増加している。
したがって、相対的に高い剛性kaである第1弾性部50Aが占める比率が大きい第1領域51の剛性k1と比べ、相対的に低い剛性kbである第2弾性部50Bが占める比率が大きい第2領域52の剛性k2は小さい(k1>k2)。この点において、第3実施形態は上述の第2実施形態と同様である。
但し、第3実施形態では、弾性体50の剛性が径方向内側から外側に向かうにつれて、k1からk2へと次第に低くなっている。これに伴い、弾性体50の最大弾性変形量が、径方向の内側から外側に向かうにつれて増加しているから、この点では、第3実施形態は第1実施形態と同様である。
第3実施形態の弾性体50も、被締結部材21,22が締結された状態で第1実施形態の弾性体30と同様に機能することにより、皿ファスナ継手構造3に生じる応力を低減することができる。
また、第2実施形態のように弾性体40の肉厚方向に沿って設定される第1、第2領域の境界と比べ、第3実施形態の境界Bは弾性体50の径方向全体に亘り広く延在しているため、第1弾性部50Aと第2弾性部50Bとが接合される場合に、接合面積を広く確保して接合強度をより十分に確保することができる。
第1弾性部50Aと第2弾性部50Bとの境界Bは、図6に示す例には限らない。
第1弾性部50Aおよび第2弾性部50Bの体積比率に基づいて、第1領域51および第2領域52の剛性に関してk1>k2が成り立つ限りにおいて、第1弾性部50Aと第2弾性部50Bとの境界Bを適宜に定めることができる。
〔第4実施形態〕
図7に示す皿ファスナ継手構造4は、第1実施形態(図1)および第2実施形態(図5)のそれぞれの特徴を組み合わせることで構成されている。
すなわち、座面12Bおよび受け面21Aの角度θ1,θ2に関し、θ1<θ2であり、皿ファスナ継手構造4の弾性体60が備える第1領域61および第2領域62の肉厚方向の剛性k1,k2に関してはk1>k2である。
第1、第2実施形態の特徴の掛け合わせにより、第1領域61と第2領域62とのそれぞれの最大弾性変形量δ1,δ2の差を拡大することができるので、第2領域62に、上述した第2領域32,42に得られる最大弾性変形量よりも大きい最大弾性変形量を設定することが可能となる。
図示を省略するが、第1実施形態(図1)と第3実施形態(図6)とを組み合わせることによっても、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
複数の実施形態の特徴を組み合わせることにより、継手構造の応力に関する設計の自由度が拡大するため、種々の皿ボルトや荷重等の条件に対して最適な構成を実現することができる。
〔第5実施形態〕
図8(a)に示す皿ファスナ継手構造5Aは、座面12Bと受け面21Aとの間に配置される第1弾性体30に加えて、軸部11の外周部とボルト挿入孔20の内周部との間に配置される第2弾性体70を備えている。
第1弾性体30は、第1実施形態の弾性体30と同様である。
図8(b)に示す皿ファスナ継手構造5Bは、座面12Bと受け面21Aとの間に配置される第1弾性体40に加えて、軸部11の外周部とボルト挿入孔20の内周部との間に配置される第2弾性体70を備えている。
以下、図8(a)および(b)に共通する第2弾性体70の構成および作用効果を説明する。
第2弾性体70は、第1実施形態の弾性体30と同様に、ゴム材料、樹脂材料、あるいは金属材料を用いて構成することができる。第2弾性体70の肉厚方向(軸部11の径方向)の剛性は、同方向における軸部11の剛性および被締結部材21,22の剛性と比べて低い。
第2弾性体70は、筒状の形態に成形することができる。この場合は、成形体である第2弾性体70を軸部11の周りに弾性力により装着することができる。成形体の第2弾性体70は、雄ねじ11Aの領域を避けつつ、軸部11の外周部の広い範囲に亘り配置されることが好ましい。第2弾性体70が装着された軸部11をボルト挿入孔20に挿入し、軸部11の雄ねじ11A(図1(a))にナット18を係合させることで、皿ボルト10により被締結部材21,22を締結することができる。
なお、軸部11とボルト挿入孔20の内周部との間にはクリアランスCが設定されているため、第2弾性体70を径方向に弾性変形させながら、クリアランスCが設定されていない場合と比べて容易に軸部11をボルト挿入孔20に挿入することができる。
第2弾性体70は、締結前に必ずしも成形されていなくてもよい。例えば、第2弾性体70が、シーラントのように流動性を有した状態でボルト挿入孔20の内側に施工されて、ボルト挿入孔20の内側で固化したものであってもよい。流動性を有するシーラントがボルト挿入孔20の内周部に付着した状態で軸部11をボルト挿入孔20に挿入し、雄ねじ11Aとナット18を係合させることで、シーラントが軸部11の外周部とボルト挿入孔20の内周部との間に充填される。
図3に示すように荷重F1により被締結部材21,22が互いに滑ると、第2弾性体70が径方向に弾性変形することで皿ボルト10の軸部11が弾性的に支持されるため、皿ボルト10の傾きの変位が緩和される。このとき、第2弾性体70により間接的に被締結部材21,22の滑りが抑制されることとなる。
第5実施形態によれば、被締結部材21,22の滑りが生じたとしても、第2弾性体70の弾性変形により皿ボルト10の傾きの変位が緩和されるので、軸部11の傾きに伴い座面12Bと受け面21Aとが押し合うことで生じる皿頭12の強制的な曲げ変形が緩和される。そのため、皿ファスナ継手構造5A,5Bに生じる応力を第1~第4実施形態よりもさらに低減することができる。
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
皿ボルト10の皿頭12は、上記各実施形態のように平坦な頂面12Aを備えるものには限定されず、凸状に湾曲した頂面を備えるものであってもよい。
また、皿ボルト10は、被締結部材に形成された雌ねじに係合されるものであってもよい。この場合はナット18が必要ない。
本発明における皿ファスナは、被締結部材21,22に対する着脱が可能な皿ボルト10には限定されず、皿頭12を有する円柱状または円筒状のリベットであってもよい。
こうした皿リベットを用いており、皿リベットの軸部と挿入孔の内周部との間の隙間の存在により被締結部材21,22の滑りが生じ得る場合にも、皿頭12の座面12Bと受け面21Aとの間に介在する弾性体(30等)の作用により、継手構造に生じる応力を低減することができる。
1~4,5A,5B 皿ファスナ継手構造
8 皿ボルト
10 皿ボルト
11 軸部
11A 雄ねじ
11B 先端部
12 皿頭
12A 頂面
12B 座面
12C 首部
12D 溝
18 ナット
18A 端面
20 ボルト挿入孔(挿入孔)
21 被締結部材
21A 受け面
21B 表面
22 被締結部材
22A 面
24 空隙
30,35,40,50,60 弾性体
30A 外周部
30B 内周部
30C 内端
30D 頂部
31,41,51,61 第1領域
32,42,52,62 第2領域
33 カバー領域
50A 第1弾性部
50B 第2弾性部
70 第2弾性体
81 皿頭
81A 首部
81B 座面
91,92 被締結部材
91A 受け面
201,202 挿入孔
A 軸線
B 境界
C クリアランス
F0 締結力
F1 荷重
M モーメント
k1,k2 剛性
ka,kb 剛性
S シーラント
t1,t2 肉厚
δ1,δ2 最大弾性変形量
θ1,θ2 角度

Claims (10)

  1. 軸部、および前記軸部から頂面に向かうにつれて径が拡大した逆円錐台状の皿頭を含む皿ファスナと、
    前記皿ファスナにより締結される複数の被締結部材と、
    前記皿頭の座面、および一の前記被締結部材に形成されて前記座面を受ける受け面の間に配置される環状の弾性体と、を備え、
    前記弾性体は、前記軸部から前記頂面に向かうにつれて内径および外径が拡大し、前記軸部の側の第1領域と、前記頂面の側の第2領域と、を含み、
    前記第1領域および前記第2領域のいずれも、前記皿ファスナ、および前記受け面が形成される前記被締結部材と比べて前記弾性体の肉厚方向の剛性が低く、
    前記第1領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量と比べて、
    前記第2領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量が大きい、ことを特徴とする皿ファスナ継手構造。
  2. 前記皿ファスナは、前記被締結部材に対する着脱が可能なボルトである、
    請求項1に記載の皿ファスナ継手構造。
  3. 前記皿ファスナが挿入される前記被締結部材の挿入孔の軸線に対して前記座面がなす角度をθ1、
    前記軸線に対して前記受け面がなす角度をθ2、とすると、
    θ1<θ2である、
    請求項1または2に記載の皿ファスナ継手構造。
  4. 無負荷の状態における前記第1領域の肉厚をt1、
    無負荷の状態における前記第2領域の肉厚をt2、とすると、
    t1<t2である、
    請求項3に記載の皿ファスナ継手構造。
  5. 前記第1領域の剛性をk1、
    前記第2領域の剛性をk2、とすると、
    k1>k2である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の皿ファスナ継手構造。
  6. 前記弾性体は、肉厚方向の剛性が異なる第1弾性部および第2弾性部を備え、
    前記第1弾性部の剛性kaに対して、前記第2弾性部の剛性kbが小さく、
    前記第1弾性部および前記第2弾性部の体積比率に基づいて、k1>k2である、
    請求項5に記載の皿ファスナ継手構造。
  7. 前記軸部と、前記軸部が挿入される前記被締結部材の挿入孔の内周部との間に配置され、前記軸部および前記被締結部材と比べて肉厚方向の剛性が低い第2の弾性体を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の皿ファスナ継手構造。
  8. 前記弾性体は、前記頂面を覆うカバー領域を含む、
    請求項1から7のいずれか一項に記載の皿ファスナ継手構造。
  9. 前記被締結部材は、航空機の機体を構成する部材である、
    請求項1から8のいずれか一項に記載の皿ファスナ継手構造。
  10. 皿ファスナの皿頭の座面、および前記皿ファスナにより締結される複数の被締結部材の一つに形成されて前記座面を受ける受け面の間に配置される環状の弾性体であって、
    前記弾性体は、その軸方向の一方から他方に向かうにつれて内径および外径が拡大し、
    前記軸方向の一方の側の第1領域と、前記軸方向の他方の側の第2領域と、を含み、
    前記第1領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量と比べて、
    前記第2領域に設定された肉厚方向への最大弾性変形量が大きい、ことを特徴とする皿ファスナ用弾性体。
JP2019021324A 2019-02-08 2019-02-08 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体 Active JP7228399B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019021324A JP7228399B2 (ja) 2019-02-08 2019-02-08 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019021324A JP7228399B2 (ja) 2019-02-08 2019-02-08 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020128774A JP2020128774A (ja) 2020-08-27
JP7228399B2 true JP7228399B2 (ja) 2023-02-24

Family

ID=72174328

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019021324A Active JP7228399B2 (ja) 2019-02-08 2019-02-08 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7228399B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009227166A (ja) 2008-03-24 2009-10-08 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 航空機組立品
JP2014500444A (ja) 2010-10-08 2014-01-09 ウァイス,ウォルフガング 位置誤差を補正する形状ロック接続
JP2018069903A (ja) 2016-10-28 2018-05-10 本田技研工業株式会社 車両用ホイール

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH087136Y2 (ja) * 1991-09-10 1996-03-04 オーパック株式会社 ボルト、リベット等の締結部品

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009227166A (ja) 2008-03-24 2009-10-08 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 航空機組立品
JP2014500444A (ja) 2010-10-08 2014-01-09 ウァイス,ウォルフガング 位置誤差を補正する形状ロック接続
JP2018069903A (ja) 2016-10-28 2018-05-10 本田技研工業株式会社 車両用ホイール

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020128774A (ja) 2020-08-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220169365A1 (en) Assembly with captive nut
EP2436600B1 (en) Seat track and monument attach fastener
US8961086B2 (en) Fastener and method of installing same
JP5713980B2 (ja) 耐雷ファスナおよび航空機
EP2787221B1 (en) Pierce nut for high-strength steel sheet
US9475576B2 (en) Flexbeam rotor attachment to rotor blade
US10981441B2 (en) Torque rod
CN108016207B (zh) 车辆用车轮
US10871198B2 (en) Isolation mount
JP7228399B2 (ja) 皿ファスナ継手構造および皿ファスナ用弾性体
US20140356581A1 (en) Composite Hat Stiffener
JP6765344B2 (ja) 複合材料翼及び複合材料翼の製造方法
US10100859B2 (en) Riveted assembly and associated production method
US10954991B2 (en) Electromagnetic effect protective fastener with swageable termination body
US20220074446A1 (en) Aircraft component coupling assembly and coupler for aircraft components
US12038035B2 (en) Threaded fastener
JP2012241761A (ja) 車体部品の締結構造
JPH03140613A (ja) 軸直角の応力を受けるねじ締結構造
US20150369271A1 (en) Fastener
US11821450B2 (en) Rivet
JP6791738B2 (ja) ボルト植設構造とそれを用いたアッパサポート、ボルト植設構造の製造方法
US20230082125A1 (en) Scored spacer element serving to obtain a spacer washer positioned between parts of an assembly, and method for assembling at least two parts using at least one such scored spacer element
EP3693275A1 (en) Outflow valve assemblies including non-metallic frames and enhanced attachment features
US20220068762A1 (en) Semiconductor device and semiconductor device with cooling member
GB2580048A (en) Elastic washer and screw-nut connection therefore

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211210

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221024

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221222

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230207

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230213

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7228399

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150