<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1、図2は第1実施形態の電動自動車1の側面図及び上面図を示している。電動自動車1は車輪2を駆動する動力源として駆動モータ3を備えている。電動自動車1の車体のフロア下には駆動モータ3に電力を供給する駆動源として蓄電デバイスパック5(蓄電デバイス集合体)が設置される。
図3は蓄電デバイスパック5の斜視図を示している。蓄電デバイスパック5は複数の蓄電デバイス10を並設し、外装容器6により覆われる。複数の蓄電デバイス10を包装した蓄電デバイスモジュールを複数並設して蓄電デバイスパック5を構成してもよい。
各蓄電デバイス10には金属から成る正極の電極端子12及び負極の電極端子13(図4参照)が設けられる。電極端子12及び電極端子13は所定の順に電気接続され、一対の接続端子(不図示)が外装容器6から突出する。
外装容器6は熱融着性樹脂層、金属箔及び基材層を積層した積層体により形成される。各蓄電デバイス10と外装容器6との間の空間に充填材(不図示)を充填し、熱融着性樹脂層を熱融着して外装容器6が密封される。尚、外装容器6を射出成形品により形成してもよい。
図4、図5は蓄電デバイス10の分解斜視図及び側面断面図を示している。蓄電デバイス10は外装部材20に蓄電素子11を封入した二次電池から成っている。蓄電デバイス10として例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムイオン全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル鉄蓄電池、ニッケル亜鉛蓄電池、酸化銀亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池等が用いられる。
蓄電素子11は正極板と負極板(いずれも不図示)とを絶縁体のセパレータ(不図示)を介して対向配置して形成される。正極板及び負極板にはそれぞれ電極端子12、13が接続される。長尺状のセパレータ、正極板及び負極板を巻回して蓄電素子11を形成することができる。シート状の正極板、セパレータ、負極板、セパレータの順に複数段に積層して蓄電素子11を形成してもよい。また、長尺状のセパレータ、正極板及び負極板を折り畳みにより積層して蓄電素子11を形成してもよい。
正極板と負極板との間には電解質が配される。本実施形態では電解質が電解液から成り、外装部材20の内部に充填される。電解質として固体電解質またはゲル電解質を用いてもよい。
外装部材20は内面に熱融着性樹脂層38(図6参照)を有した積層体から成る包装材15(第1包装材)及び包装材25(第2包装材)を備えている。
図6は包装材15の積層構造を示す断面図である。包装材25は包装材15と同じ積層構造になっている。包装材15及び包装材25は少なくとも、基材層34、バリア層36、熱融着性樹脂層38をこの順に有する積層体から構成されている。基材層34が最外層になり、熱融着性樹脂層38は最内層になる。即ち、蓄電素子11の周縁に位置する熱融着性樹脂層38同士を熱融着して蓄電デバイス10が密封される。
バリア層36の少なくとも一方側の表面には、耐食性皮膜36aが設けられる。耐食性皮膜36aは、セリウムを含んでいる。図6に示す包装材15は、バリア層36の熱融着性樹脂層38側の表面に耐食性皮膜36aが配される。
尚、包装材15、25を他の積層構成にしてもよい。例えば、図7に示す包装材15、25はバリア層36の両面にそれぞれ耐食性皮膜36a、36bを備えている。この時、図8に示すように、基材層34とバリア層36との間に接着性を高める目的で必要に応じて接着剤層35を備えていてもよい。また、図9に示すように、バリア層36と熱融着性樹脂層38との間に接着性を高める目的で必要に応じて接着層37を備えていてもよい。
また、図10に示すように、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上等を目的として、基材層34のバリア層36とは反対側に必要に応じて表面被覆層32を備えていてもよい。この時、表面被覆層32が最外層となる。
図7~図10において、耐食性皮膜36aを省いてバリア層36の基材層34側の表面のみに耐食性皮膜36bを備えていてもよい。
包装材15、25を構成する積層体の厚みは特に制限されないが、強度を考慮して60μm以上が好ましく、蓄電デバイス10の軽量化を考慮して400μm以下が好ましい。包装材15、25の厚みを約180μm以下にするとより好ましく、約150μm以下にすると更に好ましい。これにより、包装材15、25の厚みを薄くして蓄電デバイス10のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れた包装材15、25を得ることができる。
尚、蓄電デバイス用外装材において、詳細を後述するバリア層36を基準として、通常その製造過程における縦方向(MD)と横方向(TD)を判別することができる。例えば、バリア層36がアルミニウム箔により構成されている場合に、アルミニウム箔の表面にいわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕はアルミニウム箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)に沿って延びているため、アルミニウム箔の表面を観察することによって圧延方向を把握することができる。
また、積層体の製造過程においては通常積層体のMDとアルミニウム箔のRDとが一致する。このため、積層体のアルミニウム箔の表面を観察して圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDはMDと垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
(基材層34)
包装材15、25の基材層34は最外層側に位置する層である。基材層34を形成する素材については、絶縁性を備えるものであれば特に制限されるものではない。基材層34を形成する素材として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。
これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂として、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6,10、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等が挙げられる。
基材層34は1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造、ナイロンフィルムを複数積層させた多層構造、ポリエステルフィルムを複数積層させた多層構造等が挙げられる。
基材層34が多層構造である場合、2軸延伸ナイロンフィルムと2軸延伸ポリエステルフィルムの積層体、2軸延伸ナイロンフィルムを複数積層させた積層体、2軸延伸ポリエステルフィルムを複数積層させた積層体が好ましい。
例えば、基材層34を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂とを積層する構成、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂とを積層する構成、またはポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを積層する構成にすることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとを積層する構成、ナイロンとナイロンとを積層する構成、またはポリエチレンテレフタレートとナイロンとを積層する構成にするとより好ましい。
また、ポリエステル樹脂は例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いこと等により、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂が最外層に位置するように基材層34を積層することが好ましい。基材層34を多層構造とする場合、各層の厚みとして、好ましくは2~25μm程度が挙げられる。
基材層34を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤または接着性樹脂等の接着成分を介して積層させればよい。積層に使用される接着成分の種類、量等については、後述する接着剤層35の場合と同様である。尚、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法は特に制限されず、公知方法を採用できる。例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押し出しラミネート法等が挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとして、例えば2~5μm程度が挙げられる。
包装材15、25の成形性を高める観点からは、基材層34の表面には滑剤が付着していることが好ましい。滑剤は特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例は後述の熱融着性樹脂層38で例示するものと同じものが挙げられる。
基材層34の表面に滑剤が存在する場合にその存在量は特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において約3mg/m2以上にすると好ましい。滑剤の存在量を4~15mg/m2程度にするとより好ましく、5~14mg/m2程度にすると更に好ましい。
基材層34の中に滑剤が含まれていてもよい。また、基材層34の表面に存在する滑剤は基材層34を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよく、基材層34の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
基材層34の厚みについては基材層34としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば3~50μm程度、好ましくは10~35μm程度が挙げられる。
(接着剤層35)
接着剤層35は基材層34とバリア層36を強固に接着させるために、必要に応じてこれらの間に設けられる層である。接着剤層35は基材層34とバリア層36とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層35の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、該接着剤は化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層35の形成に使用できる接着成分として、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系接着剤、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂として、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂として、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等が挙げられる。
アミノ樹脂として、尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。ゴムとして、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。
これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。該硬化剤は接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物等から適切なものを選択する。
これらの接着成分と硬化剤として、好ましくは各種ポリオール(接着成分で水酸基を有するもの)とポリイソシアネートからなるポリウレタン系接着剤が挙げられる。更に好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールを主剤として、芳香族系または脂肪族系のポリイソシアネートを硬化剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。
接着剤層35には顔料等の着色剤が含まれていてもよい。接着剤層35の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、1~10μm程度、好ましくは2~5μm程度が挙げられる。
(バリア層36)
バリア層36は強度向上の他、蓄電デバイス10の内部に水蒸気、酸素、光等が侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層36は金属層、即ち金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層36を構成する金属として具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ステンレス鋼、チタン等が挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。
バリア層36は例えば金属箔、金属蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルム等により形成することができる。バリア層36を金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することが更に好ましい。
バリア層36は例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)等の軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。これにより、包装材15、25の製造時にバリア層36に皺やピンホールが発生することを防止できる。
バリア層36の厚みは水蒸気等のバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、包装材15、25厚みを薄くする観点から好ましくは約100μm以下、より好ましくは10~100μm程度、更に好ましくは10~80μm程度が挙げられる。
(耐食性皮膜36a、36b)
包装材15、25はバリア層36の少なくとも一方側の表面に耐食性皮膜を備えている。バリア層36の熱融着性樹脂層38側の表面のみに耐食性皮膜36aを備えていてもよい。バリア層36の基材層34側の表面のみに耐食性皮膜36bを備えていてもよい。バリア層36の両面にそれぞれ耐食性皮膜36a、36bを備えていてもよい。
蓄電デバイス10の内部に水分が侵入すると、水分と電解質等とが反応して酸性物質を生成する場合がある。例えば蓄電デバイス10がリチウムイオン電池等の場合に、電解液には電解質となるフッ素化合物(LiPF6、LiBF4等)が含まれている。この時、蓄電デバイス10の内部に水分が侵入すると、フッ素化合物が水と反応してフッ化水素を発生する。
金属箔等により形成されるバリア層36に酸が接触すると腐食しやすい。このため、化成処理によってバリア層36の表面に耐食性皮膜36aを形成し、包装材15、25の耐食性を高めることができる。
また、耐食性皮膜36bを備えていることにより、バリア層36表面の耐食性皮膜36bと、基材層34または接着剤層35との密着性を高めることができる。これにより、高温高湿条件下に曝された際の基材層34とバリア層36のデラミネーションを防止することができる。
耐食性皮膜36a、36bを形成する化成処理として、酸化クロム等のクロム化合物を用いたクロメート処理、リン酸化合物を用いたリン酸処理等の方法が知られている。
耐食性皮膜を備えた従来のバリア層は、耐食性皮膜を設けた側に隣接する層との密着性(即ち、耐食性皮膜と、これに接する層との界面における密着性)が不十分になる場合がある。より具体的には、包装材15、25に電解液が付着することによって、当該密着性が不十分になる場合がある。
このため、耐食性皮膜36a、36bについて、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4
-に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3
-に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4を、80~120の範囲内、または、ピーク強度PCePO4に対するPO2
-に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4を、90~150の範囲内にしている。
これにより、包装材15、25に電解液が付着した場合であっても、バリア層36と耐食性皮膜36a、36bを設けた側に隣接する層との密着性の低下を防止できる。即ち、上記比PPO3/CePO4を80~120の範囲内または比PPO2/CePO4を90~150の範囲内にすることで、バリア層36と耐食性皮膜36a、36bを設けた側に隣接する層との密着性に優れた包装材15、25を得られる。
尚、バリア層36の両面に耐食性皮膜36a、36bを備えている場合は、いずれか一方の面の耐食性皮膜における上記ピーク強度の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4が上記の範囲内にあればよい。しかし、耐食性皮膜36a、36bの両方のピーク強度の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4が上記の範囲内にあるとより好ましい。
特に、バリア層36の熱融着性樹脂層38側に位置している耐食性皮膜36aと、これに隣接する層(接着層37または熱融着性樹脂層38)とは、電解液の浸透によって密着性が低下しやすい。このため、バリア層36の少なくとも熱融着性樹脂層38側の表面に、耐食性皮膜36aを備えていることが好ましい。そして、耐食性皮膜36aについての上記ピーク強度の比PPO2/CePO4または比PPO3/CePO4が上記の範囲内にあることが好ましい。これらの点については、以下に示す各ピーク強度の比についても同様である。
ピーク強度の比PPO3/CePO4は80~120の範囲にあればよいが、耐食性皮膜を備えたバリア層36の密着性をより高める観点から、下限を約85にすると好ましく約92にするとより好ましい。比PPO3/CePO4の上限は約110にすると好ましく、約105にするとより好ましく、約98にすると更に好ましい。即ち、比PPO3/CePO4の好ましい範囲として、80~110程度、80~105程度、80~98程度、85~120程度、85~110程度、85~105程度、85~98程度、92~120程度、92~110程度、92~105程度、92~98程度が挙げられる。
また、ピーク強度の比PPO2/CePO4は90~150の範囲にあればよいが、耐食性皮膜を備えたバリア層36の密着性をより高める観点から、下限を約110にすると好ましく、上限を約130にすると好ましい。比PPO2/CePO4の上限を約116にするとより好ましい。即ち、比PPO2/CePO4の好ましい範囲として、90~130程度、90~116程度、110~150程度、110~130程度、110~116程度が挙げられる。
飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた分析は、具体的には飛行時間型2次イオン質量分析装置を用いて次の測定条件で行うことができる。
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3
++)
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0~1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
また、耐食性皮膜36a、36bにセリウムが含まれていることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、バリア層36に積層されている層(接着剤層35、熱融着性樹脂層38、接着層37等)を物理的に剥離する。次に、バリア層36を電気炉に入れ、約300℃、約30分間でバリア層36の表面に存在している有機成分を除去する。その後、バリア層36の表面のX線光電子分光を用いて、セリウムが含まれることを確認する。
耐食性皮膜36a、36bはバリア層36の表面を酸化セリウム等のセリウム化合物を含む処理液で化成処理して形成することができる。例えばリン酸及び/またはその塩中に酸化セリウム等のセリウム化合物を分散したものを溶媒に溶解した処理液をバリア層36の表面に塗布し、焼付け処理を行う。これにより、化成処理によってバリア層36の表面に耐食性皮膜36a、36bが形成される。
セリウム化合物を含む処理液をバリア層36の表面に塗布する方法として、例えばバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等が挙げられる。
耐食性皮膜36a、36bのピーク強度の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4は、例えば耐食性皮膜36a、36bを形成する処理液の組成、焼付け処理の条件(温度、時間等)等によって調整することができる。
セリウム化合物を含む処理液におけるセリウム化合物と、リン酸及び/またはその塩との割合は特に制限されないが、上記の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4をそれぞれ上記の範囲内に設定するように調整される。例えば、セリウム化合物100質量部に対して、リン酸及び/またはその塩は12~28質量部程度が好ましく、15~25質量部程度がより好ましい。処理液に含まれるリン酸またはその塩として、例えば縮合リン酸またはその塩を用いることができる。
また、セリウム化合物を含む処理液には、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を更に含んでいてもよい。アニオン性ポリマーとして、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体等が挙げられる。また、架橋剤として、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物や、シランカップリング剤等が挙げられる。アニオン性ポリマー及び架橋剤はそれぞれ1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
また、優れた耐食性を発揮しつつバリア層36の密着性を高める観点から、セリウム化合物を含む処理液には、アミノ化フェノール重合体が含まれることが好ましい。セリウム化合物を含む処理液において、セリウム化合物100質量部に対して、アミノ化フェノール重合体100~400質量部程度が好ましく、200~300質量部程度がより好ましい。
また、アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量は5000~20000程度が好ましい。アミノ化フェノール重合体の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件でゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
セリウム化合物を含む処理液の溶媒は、処理液に含まれる成分を分散させ、その後の加熱により蒸発させられるものであれば特に制限されないが、好ましくは水が挙げられる。
セリウム化合物を含む処理液の固形分濃度は特に制限されないが、例えば8~30質量%程度にすることができる。処理液の固形分濃度を溶媒(水等)100質量部に対して、9.0~10.0質量部程度にするとより好ましく、9.1~9.5質量部程度にすると更に好ましい。これにより、上記ピーク強度の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4をそれぞれ上記所定の範囲に設定し、優れた耐食性を発揮しつつバリア層36の密着性を高めることができる。
また、焼付け処理時のバリア層36の表面温度は170~250℃程度が好ましく、より好ましくは180~230℃程度、更に好ましくは190~220℃程度が挙げられる。焼付け処理時のバリア層36の加熱時間として、好ましくは2~10秒程度、より好ましくは3~6秒程度が挙げられる。このような温度及び加熱時間を採用することにより、溶媒を適切に蒸発させて耐食性皮膜36a、36bを好適に形成することができる。これにより、上記ピーク強度の比PPO3/CrPO4または比PPO2/CrPO4をそれぞれ上記所定の範囲に設定し、優れた耐食性を発揮しつつバリア層36の長期的密着性を高めることができる。
また、バリア層36の表面の化成処理をより効率的に行う観点から、バリア層36の表面に耐食性皮膜36a、36bを設ける前には、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の公知の処理方法で脱脂処理を行うことが好ましい。
耐食性皮膜36a、36bの厚みは特に制限されないが、優れた耐食性を発揮しつつバリア層36の密着性を高める観点から1nm~10μm程度が好ましい。耐食性皮膜36a、36bの厚みを1~100nm程度にするとより好ましく、1~50nm程度にすると更に好ましい。尚、耐食性皮膜36a、36bの厚みは透過電子顕微鏡による観察によって測定することができる。或いは、耐食性皮膜36a、36bの厚みは透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、バリア層36の表面1m2当たりの耐食性皮膜36a、36bの量は2~100mg程度が好ましく、2~70mg程度がより好ましく、2~40mg程度が更に好ましい。
(熱融着性樹脂層38)
熱融着性樹脂層38は包装材15、25の最内層に該当し、熱融着性樹脂層38同士が熱融着して蓄電デバイス10を密封する層である。
熱融着性樹脂層38に使用される樹脂成分については熱融着可能であれば特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂を使用できる。ポリオレフィン系樹脂として、例えばポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。即ち、熱融着性樹脂層38を構成する樹脂はポリオレフィン骨格を含んでいなくてもよいが、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。
熱融着性樹脂層38を構成する樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等により分析可能である。分析方法はこれらに限られない。例えば、赤外分光法により無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。但し、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。ポリエチレンとして低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしてホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
環状ポリオレフィンはオレフィンと環状モノマーとの共重合体である。環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとして、例えばエチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとして、例えば環状アルケン、環状ジエン等が挙げられる。環状アルケンとして、例えばノルボルネンが挙げられる。環状ジエンとして、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの環状モノマーの中でも環状アルケンが好ましく、ノルボルネンが更に好ましい。
酸変性ポリオレフィンはポリオレフィンをカルボン酸等の酸成分でブロック共重合またはグラフト共重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分として、例えばマレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性環状ポリオレフィンは環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸またはその無水物に代えて共重合して得られるポリマーである。或いは、酸変性環状ポリオレフィンは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸またはその無水物をブロック重合またはグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、上記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸は酸変性ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
熱融着性樹脂層38を構成する樹脂として上記の中で特に好ましくはポリプロピレン等のポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。更に好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層38は1種の樹脂成分単独で形成してもよく、2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、熱融着性樹脂層38は1層のみで形成されていてもよいが、同一または異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層38の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。これにより、包装材15の成形性を高めることができる。滑剤は特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤として、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。滑剤は1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
飽和脂肪酸アミドの具体例として、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例として、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
置換アミドの具体例として、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。メチロールアミドの具体例として、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。
飽和脂肪酸ビスアミドの具体例として、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例として、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
脂肪酸エステルアミドの具体例として、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。芳香族系ビスアミドの具体例として、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
熱融着性樹脂層38の表面に滑剤が存在する場合の存在量は特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において、約3mg/m2以上が好ましい。滑剤の存在量が温度24℃、相対湿度60%の環境において、4~15mg/m2程度であるとより好ましく、5~14mg/m2程度であると更に好ましい。
また、滑剤は熱融着性樹脂層38の中に含まれていてもよい。熱融着性樹脂層38の表面に存在する滑剤は塗布したものであってもよく、熱融着性樹脂層38を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよい。
熱融着性樹脂層38の厚みは熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは約60μm以下、より好ましくは15~60μm程度、更に好ましくは15~40μm程度が挙げられる。
(接着層37)
接着層37は、バリア層36と熱融着性樹脂層38との密着性を高めるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。接着層37は単層により構成されていてもよく、同一または異なる複数層により構成されていてもよい。
一般に、バリア層36と熱融着性樹脂層38との密着性を高める観点からは、これらの間に接着層37を有していることが好ましい。しかし、バリア層36の熱融着性樹脂層38側の表面に耐食性皮膜36aを備えている場合には、耐食性皮膜36aと接着層37との間で密着性が低下しやすいという問題がある。
これに対して本実施形態は耐食性皮膜36aが前述の特定のピーク強度の比PPO3/CePO4または比PPO2/CePO4を有しているため密着性に優れている。このため、耐食性皮膜36aと接着層37との間の密着性も効果的に高められている。即ち、バリア層36の表面の耐食性皮膜36aと熱融着性樹脂層38とが接着層37を介して積層されている包装材15、25において、バリア層36の密着性に優れる効果を奏する。
接着層37はバリア層36(更には、耐食性皮膜36a)と熱融着性樹脂層38とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層37の形成に使用される樹脂として、前述の接着剤層35で例示される接着剤または熱融着性樹脂層38で例示されるポリオレフィン系樹脂を使用できる。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィン等が挙げられる。即ち、接着層37を構成している樹脂はポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。バリア層36と熱融着性樹脂層38との密着性に優れる観点から、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
接着層37を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等により分析可能である。分析方法はこれらに限られない。例えば、赤外分光法により無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。但し、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
更に、厚みを薄くしつつ成形後の形状安定性に優れた包装材15、25とする観点から、接着層37は酸変性ポリオレフィンから成る主剤と硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。酸変性ポリオレフィンとして、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが好ましい。
また、硬化剤は酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤として、例えばエポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤等が挙げられる。
エポキシ系硬化剤は少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂が挙げられる。
多官能イソシアネート系硬化剤は2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤はカルボジイミド基(-N=C=N-)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤の具体例として、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
オキサゾリン系硬化剤はオキサゾリン骨格(オキサゾリン基)を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物として、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するもの等が挙げられる。具体的には(株)日本触媒製のエポクロス(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
接着層37によるバリア層36と熱融着性樹脂層38との密着性を高める観点から、硬化剤は2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層37を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1~50質量%程度の範囲にあることが好ましい。また、硬化剤の含有量が0.1~30質量%程度の範囲にあるとより好ましく、0.1~10質量%程度の範囲にあると更に好ましい。
即ち、接着層37は酸変性ポリオレフィンから成る主剤と硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物であり、硬化剤が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むと好ましい。更に、硬化剤が、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むとより好ましい。
尚、接着層37にイソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂等の硬化剤の未反応物が残存している場合がある。硬化剤の未反応物の存在は例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)等の方法で確認することができる。
また、接着層37は、ウレタン樹脂、エステル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂により形成されてもよい。接着層37はこれらの樹脂のうち少なくとも1種と、酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。更に接着層37はウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含むとより好ましい。
エステル樹脂として、例えばアミドエステル樹脂が好ましい。アミドエステル樹脂は、一般的にカルボキシル基とオキサゾリン基の反応で生成する。
また、耐食性皮膜36aと接着層37との密着性をより高める観点から、接着層37は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
接着層37がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)等の方法で確認することができる。
複素環を有する硬化剤として、例えばオキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤等が挙げられる。C=N結合を有する硬化剤として、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤等が挙げられる。C-O-C結合を有する硬化剤として、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤、ウレタン樹脂等が挙げられる。
オキサゾリン基を有する硬化剤はオキサゾリン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物として、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するもの等が挙げられる。具体的には前述のエポクロスシリーズ等を用いることができる。
接着層37におけるオキサゾリン基を有する化合物の割合は、接着層37を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜36aと接着層37との密着性を効果的に高めることができる。
イソシアネート基を有する硬化剤は特に制限されないが、耐食性皮膜36aと接着層37との密着性を効果的に高める観点から、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例として、前述の接着剤層35に例示したものが挙げられる。
接着層37におけるイソシアネート基を有する化合物の含有量は、接着層37を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜36aと接着層37との密着性を効果的に高めることができる。
エポキシ基を有する硬化剤は分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量として、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、更に好ましくは200~800程度が挙げられる。
尚、本実施形態において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例として、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層37におけるエポキシ樹脂の割合は接着層37を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、耐食性皮膜36aと接着層37との密着性を効果的に高めることができる。
接着層37の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層35で例示した接着剤を用いる場合であれば、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
また、熱融着性樹脂層38で例示した樹脂を接着層37に用いる場合であれば、接着層37の厚みとして好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。
また、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物を接着層37に用いる場合であれば、接着層37の厚みとして好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1~20μm程度、更に好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。尚、接着層37が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層37を形成することができる。
(表面被覆層32)
包装材15、25は意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上等を目的として、必要に応じて基材層34の外側(基材層34のバリア層36とは反対側)に表面被覆層32が設けられる。表面被覆層32を設ける場合に、表面被覆層32は包装材15、25の最外層となる。
表面被覆層32は例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等により形成することができる。これらの中で、表面被覆層32を2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層32を形成する2液硬化型樹脂として、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、表面被覆層32に添加剤を配合してもよい。
添加剤として、例えば粒径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の材質については特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、添加剤の形状についても特に制限されないが、例えば球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。
添加剤として、具体的には、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。
これらの添加剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
表面被覆層32中の添加剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは0.05~1.0質量%程度、より好ましくは0.1~0.5質量%程度が挙げられる。
表面被覆層32を形成する方法は特に制限されないが、例えば表面被覆層32を形成する2液硬化型樹脂を基材層34の外側の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後に塗布すればよい。
表面被覆層32の厚みは表面被覆層32としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
(包装材15、25の製造方法)
上記構成の包装材15、25の製造方法は所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。即ち、少なくとも基材層34とバリア層36と熱融着性樹脂層38とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えている。また、バリア層36を積層する際に、バリア層36の少なくとも一方側の表面に耐食性皮膜を備えている。耐食性皮膜36a、36bは飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4
-に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3
-に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が80~120の範囲内、またはピーク強度PCePO4に対するPO2
-に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が90~150の範囲内である。
包装材15、25の製造方法の一例を以下に示す。まず、基材層34、必要に応じて設けられる接着剤層35、バリア層36が順に積層された積層体(以下、「積層体A」という場合がある)を形成する。
具体的には積層体Aはドライラミネート法によって形成される。基材層34及びバリア層36(耐食性皮膜36bを備える場合は耐食性皮膜36b、以下省略)の一方に接着剤層35を形成する接着剤を塗布して乾燥させ、他方を積層して接着剤層35を硬化させる。接着剤の塗布はグラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で行われる。この時、バリア層36の少なくとも一方の表面には、予め前述の耐食性皮膜が形成されている。耐食性皮膜36a、36bの形成方法は前述した通りである。
次に、積層体Aのバリア層36上に熱融着性樹脂層38を積層する。バリア層36上に熱融着性樹脂層38を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層36上に、熱融着性樹脂層38を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。
また、バリア層36と熱融着性樹脂層38との間に接着層37を設ける場合には、共押出しラミネート法、サンドイッチラミネート法、サーマルラミネート法等により熱融着性樹脂層38が積層される。
共押出しラミネート法は、積層体Aのバリア層36上に接着層37及び熱融着性樹脂層38を共押出しすることにより積層する。サンドイッチラミネート法は、積層体Aのバリア層36と予めシート状に形成した熱融着性樹脂層38との間に溶融した接着層37を流し込み、積層体Aと熱融着性樹脂層38を貼り合せる。
サーマルラミネート法は、接着層37と熱融着性樹脂層38とを積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層36上に加熱状態で積層する。積層体Aのバリア層36上に接着層37を形成する接着剤を積層し、予めシート状に形成した熱融着性樹脂層38を加熱状態で積層してもよい。この時、接着層37は積層体A上に接着剤を押出し法や溶液コーティングにより塗布し、高温で乾燥して焼き付ける方法等により積層することができる。
表面被覆層32を設ける場合には、基材層34のバリア層36とは反対側の表面に表面被覆層32を積層する。表面被覆層32は例えば表面被覆層32を形成する樹脂を基材層34の表面に塗布することにより形成することができる。尚、基材層34の表面にバリア層36を積層する工程と、基材層34の表面に表面被覆層32を積層する工程の順序は特に制限されない。例えば、基材層34の表面に表面被覆層32を形成した後、基材層34の表面被覆層32とは反対側の表面にバリア層36を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層32/基材層34/必要に応じて設けられる接着剤層35/少なくとも一方の表面に耐食性皮膜を備えるバリア層36/必要に応じて設けられる接着層37/熱融着性樹脂層38から成る積層体が形成される。接着剤層35及び接着層37の接着性を強固にするために、更に熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式または遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。
積層体を構成する各層には必要に応じてコロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。これにより、各層の製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上または安定化することができる。
尚、前述のピーク強度等は、蓄電デバイス10から包装材15、25を切り出して分析することができる。包装材15、25を切り出す場合には熱融着性樹脂層38同士が熱融着されていない部分からサンプルを取得して分析に供することができる。
図4、図5において、包装材25は矩形のシート状に形成される。包装材15は収納部16及びフランジ部17を有している。収納部16は一面に略矩形の開口部16aを開口し、蓄電素子11を収納する。フランジ部17は開口部16aの周縁から外周側に突出した環状に形成される。
フランジ部17及び包装材25の対向する熱融着性樹脂層38(図6参照)を熱融着することにより、収納部16の周囲に沿う環状の周縁シール部21(図5参照)が形成される。これにより、収納部16が周縁シール部21の内縁から所定の深さに形成され、周縁シール部21によって封止される。
包装材15はシート成形によってフランジ部17に対して収納部16を所定の深さに凹設して形成される。この時、収納部16は深さ方向に垂直な面内で一方向に延びた略矩形に形成される。
収納部16の深さは成形時のクラック等が発生しないように包装材15のバリア層36の厚みに応じて決められる。本実施形態では40μmの厚みのバリア層36に対して収納部16の深さを5mm~10mmに形成している。この時、収納部16の深さ方向に垂直な面内の各コーナーRは例えば約3mm、深さ方向に平行な面内の各コーナーRは例えば約1.5mmに形成される。尚、バリア層36の厚みを大きくすることにより、収納部16の深さを例えば、5mm~30mmに形成することができる。
蓄電デバイス10は収納部16の深さ方向(Y方向)を電動自動車1の前後方向に配置される。また、収納部16の深さ方向に垂直な面内の長手方向(X方向、第1方向)を電動自動車1の左右方向に配置され、短手方向(Z方向、第2方向)を電動自動車1の高さ方向に配置される。即ち、収納部16の深さ方向に直交するX方向を電動自動車1の左右方向に配置され、収納部16の深さ方向及びX方向に直交するZ方向を電動自動車1の高さ方向に配置される。
収納部16はシート成形により形成されるため深さを大きくすることが困難である。これに対して、収納部16は深さ方向に垂直な面内で直交する2方向の長さAx、Azを深さ方向の長さAyよりも容易に大きくすることができる。このため、収納部16の深さ方向(Y方向)を電動自動車1の前後方向に配置することにより、複数の蓄電デバイス10を積み重ねずに電動自動車1に設置して所望の電力を供給することができる。従って、積み重ねた際の加重による外装部材20の破損を防止することができ、蓄電デバイス10の信頼性を向上することができる。
加えて、電解質が電解液からなる場合は、蓄電デバイス10を収納部16の深さ方向(Y方向)に積み重ねると包装材25が加重により撓むため電解液が周部に押し出される。このため、中央部の正極板と負極板との間の電解液が不足し、蓄電デバイス10のエネルギー密度が低下する。従って、収納部16の深さ方向(Y方向)を前後方向に配置し、電解液を含む蓄電デバイス10のエネルギー密度の低下を防止することができる。
また、収納部16の深さ方向に垂直な面内の短手方向(Z方向)を高さ方向に配置するため、蓄電デバイス10の高さを小さくして電動自動車1の居住性を向上することができる。この時、収納部16はX方向に長く延びてX方向の長さAxがZ方向の長さAzよりも大きいため、高さを抑制して容量の大きい蓄電デバイス10を得ることができる。
収納部16のX方向の長さAxはZ方向の長さAzの2倍~30倍に形成される。長さAxが長さAzの2倍よりも小さいと蓄電デバイス10の容量が小さくなる。このため、長さAxを長さAzの2倍以上に形成し、蓄電デバイス10の容量を大きくすることができる。また、長さAxが長さAzの30倍を超えると包装材15を容易に成形できないため歩留りが低下する。このため、長さAxを長さAzの30倍以下に形成し、包装材15の成形時の歩留りを向上することができる。
また、X方向に延びる周縁シール部21は一点鎖線21’で示すように熱融着時にZ方向に突出し、熱融着後に折曲して収納部16の周壁上に重ねられる。これにより、蓄電デバイス10の高さをより小さくすることができる。
この時、積層体から成る包装材15、25の流れ方向(MD)はZ方向(X方向に直交)に配される。積層体を流れ方向に平行に折曲すると金属箔のクラックや樹脂フィルムのピンホールが発生する可能性が高くなる。包装材15、25の流れ方向がX方向に直交するため、X方向に延びる周縁シール部21を折曲した際に外装部材20のクラック及びピンホールの発生を抑制することができる。
包装材15、25の流れ方向(MD)は、バリア層36の金属箔(アルミニウム合金箔等)の圧延方向(RD)に対応する。包装材15、25のTDは金属箔のTDに対応する。金属箔の圧延方向(RD)は圧延目により判別できる。
また、包装材15、25の熱融着性樹脂層38の複数の断面を電子顕微鏡で観察して海島構造を確認し、熱融着性樹脂層38の厚み方向に垂直な方向の島の径の平均が最大であった断面と平行な方向をMDと判断することができる。金属箔の圧延目により包装材15、25のMDを特定できない場合に、この方法によりMDを特定することができる。
具体的には、熱融着性樹脂層38の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面と垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面上の個々の島について、熱融着性樹脂層38の厚み方向に垂直な方向の両端を結ぶ直線距離によって島の径dを計測する。次に、各断面毎に、大きい方から上位20個の島の径dの平均を算出する。そして、島の径dの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。
電極端子12及び電極端子13はZ方向に延びてX方向に対向する周縁シール部21からそれぞれ突出する。このため、蓄電デバイス10の高さをより低くすることができる。また、電極端子12及び電極端子13が接近すると電極端子12及び電極端子13の近傍の温度上昇が大きくなるため蓄電デバイス10が経年劣化し易い。このため、電極端子12及び電極端子13をX方向に離れて配置することにより、蓄電デバイス10の経年劣化を抑制することができる。
蓄電デバイス10は、成形加工された外装部材20を準備する工程後、蓄電素子11を外装部材20により包装する包装工程を行って製造される。また、必要に応じて包装工程後に折曲工程が設けられる。
外装部材20を成形加工する成形工程はロール状の積層体を所定長さで裁断し、冷間成形によりフランジ部17に対して収納部16を凹設して包装材15を形成する。この時、包装材15、25はロール状の積層体の流れ方向(MD)をZ方向に配して形成される。成形工程により外装部材20を準備してもよく、成形加工された外装部材20を入手して外装部材20を準備してもよい。
包装工程は電極端子12、13をフランジ部17上に配して蓄電素子11を収納部16に収納し、収納部16内に電解液を充填する。次に、包装材15のフランジ部17に包装材25を熱融着して収納部16の周囲に沿う周縁シール部21を形成し、収納部16を封止する。これにより、蓄電素子11が外装部材20により包装される。
折曲工程は積層体の流れ方向に垂直なX方向に延びた周縁シール部21を折曲して収納部16の周壁上に重ねる。
前述の図3において、蓄電デバイスパック5は複数の蓄電デバイス10をY方向に並設して形成され、高さ方向に1段で電動自動車1に設置される。尚、複数の蓄電デバイスパック5をX方向またはY方向に並べて電動自動車1に設置してもよい。
蓄電デバイスパック5のZ方向の長さBzは蓄電デバイス10の収納部16のZ方向の長さAzと略同じ長さに形成される。蓄電デバイスパック5のX方向の長さBxは蓄電デバイス10のX方向の長さと略同じ長さに形成される。また、蓄電デバイス10をY方向に並設するため、蓄電デバイスパック5のY方向の長さByはZ方向の長さBzよりも大きくなっている。
電動自動車1がセダンタイプまたはコンパクトカータイプの場合には、蓄電デバイスパック5の高さ(Z方向の長さBz)は例えば100mm以下に形成される。電動自動車1がSUVタイプまたはワンボックスタイプの場合には、蓄電デバイスパック5の高さ(Z方向の長さBz)は例えば150mm以下に形成される。
本実施形態によると、蓄電デバイス10は外装部材20の収納部16の深さ方向(Y方向)が電動自動車1の前後方向に配置される。また、収納部16の深さ方向に直交するX方向(第1方向)が電動自動車1の左右方向に配置される。収納部16の深さ方向及びX方向に直交するZ方向(第2方向)が電動自動車1の高さ方向に配置される。即ち、収納部16の深さ方向に垂直な面内で直交するX方向(第1方向)及びZ方向(第2方向)がそれぞれ電動自動車1の左右方向及び高さ方向に配置される。
これにより、複数の蓄電デバイス10を積み重ねずに電動自動車1に設置して所望の電力を供給することができる。従って、積み重ねた際の加重による外装部材20の破損を防止することができ、蓄電デバイス10の信頼性を向上することができる。また、蓄電デバイス10が電解液を含む場合に、収納部16の深さ方向(Y方向)を前後方向に配置して蓄電デバイス10のエネルギー密度の低下を防止することができる。
また、収納部16の深さ方向に垂直な面内の短手方向(Z方向)を高さ方向に配置するため、収納部16のX方向の長さAxがZ方向の長さAzよりも大きい。これにより、蓄電デバイス10の高さを低くして電動自動車1の居住性を向上できるとともに、容量の大きい蓄電デバイス10を得ることができる。
また、収納部16のX方向の長さAxがZ方向の長さAzの2倍~30倍であるので、容量の大きい蓄電デバイス10を得られるとともに外装部材20の歩留りを向上することができる。
また、X方向に延びる周縁シール部21が折曲により収納部16の周壁上に重ねられるので、蓄電デバイス10の高さをより低くすることができる。
また、包装材15、25の流れ方向がX方向に直交するので、X方向に延びる周縁シール部21を折曲した際に外装部材20のクラック及びピンホールの発生を抑制することができる。
また、電極端子12及び電極端子13がZ方向に延びる周縁シール部21から突出するので、蓄電デバイス10の高さをより低くすることができる。
また、電極端子12及び電極端子13がX方向に対向する周縁シール部21からそれぞれ突出するので、蓄電デバイス10の経年劣化を抑制することができる。
また、蓄電デバイスパック5(蓄電デバイス集合体)が蓄電デバイス10を収納部16の深さ方向(Y方向)に並設して形成され、蓄電デバイスパック5のY方向の長さByがZ方向の長さBzよりも大きい。これにより、蓄電デバイスパック5の高さを低くして所望の電力を供給することができる。
また、電動自動車1の高さ方向に蓄電デバイスパック5が1段で設置されるため、電動自動車1の居住性を向上することができる。
<第2実施形態>
次に、図11、図12は第2実施形態の蓄電デバイス10の分解斜視図及び側面断面図を示している。説明の便宜上、前述の図1~図6に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は包装材25の形状が第1実施形態と異なっており、その他の部分は第1実施形態と同様である。
包装材25は包装材15と同様に収納部26及びフランジ部27を有している。収納部26は一面に略矩形の開口部26aを開口する。包装材15の収納部16及び包装材25の収納部26に蓄電素子11が収納される。フランジ部27は開口部26aの周縁から外周側に突出した環状に形成される。
フランジ部17及びフランジ部27の熱融着性樹脂層38(図6参照)を熱融着することにより、収納部16及び収納部26の周囲に沿う環状の周縁シール部21が形成される。これにより、周縁シール部21の内縁から所定の深さに形成される収納部16及び収納部26が周縁シール部21によって封止される。
また、X方向に延びる周縁シール部21は熱融着時に一点鎖線21’で示すようにZ方向に突出し、熱融着後に折曲して収納部16または収納部26の周壁上に重ねられる。
蓄電デバイス10は収納部16、26の深さ方向(Y方向)を電動自動車1の前後方向に配置される。また、収納部16、26の深さ方向に垂直な面内の長手方向(X方向)を電動自動車1の左右方向に配置され、短手方向(Z方向)を電動自動車1の高さ方向に配置される。
これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、包装材15及び包装材25がそれぞれ収納部16及び収納部26を備えるので、蓄電素子11の体積を大きくして蓄電デバイス10の容量を大きくすることができる。従って、蓄電デバイスパック5(図3参照)を形成する蓄電デバイス10の数量を削減し、蓄電デバイスパック5の製造工数を削減することができる。
図13に示すように、蓄電デバイス10は保護カバー8、9により覆われていてもよい。保護カバー8、9は射出成形により一面に開口を有した断面矩形の有底筒状に形成される。また、保護カバー9の外形が保護カバー8の開口よりも小さく形成される。
外装部材20の周部に突出する周縁シール部21は保護カバー9は周壁に沿って折曲され、保護カバー8が周縁シール部21に沿って保護カバー9に被嵌される。これにより、周縁シール部21は収納部16、26の開口部16a、26a(図11参照)の周縁から離れた位置で折曲される。このため、周縁シール部21の折曲によるクラックやピンホールの発生を低減することができる。
図14は、図13と異なる形状の保護カバー8、9により覆われた蓄電デバイス10を示している。保護カバー8、9は射出成形により略同一形状に形成され、一面に開口を有した有底筒状に形成される。蓄電デバイス10は折曲工程を省かれ、外装部材20の周部に突出する周縁シール部21を保護カバー8、9の周壁により挟んだ状態で保護カバー8、9が固定される。これにより、周縁シール部21が保護される。折曲工程が省かれるため、周縁シール部21の折曲によるクラックやピンホールの発生を低減することができる。
尚、第1実施形態の蓄電デバイス10についても同様の保護カバー8、9により外装部材20を覆ってもよい。
<第3実施形態>
次に、図15は第3実施形態の蓄電デバイス10の分解斜視図を示している。説明の便宜上、前述の図11、図12に示す第2実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は包装材15及び包装材25が単一部材により形成される。その他の部分は第2実施形態と同様である。
外装部材20は収納部16を有する包装材15と、収納部26を有する包装材25とがZ方向に連続して一体に形成される。包装材15のフランジ部17と包装材25のフランジ部27とは折り線20aを介して面一に形成される。
収納部16または収納部26内に蓄電素子11を配した後、外装部材20はX方向に延びる折り線20a上で折曲される。そして、対向するフランジ部17、27を熱融着して周縁シール部21が形成される。
本実施形態によると、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、包装材15及び包装材25が単一部材により形成されるので、蓄電デバイス10の部品点数を削減することができる。
本実施形態において、開口部16a、26aを近接し、折り線20aを開口部16a、26aの周縁に沿って設けてもよい。これにより、蓄電デバイス10の下面を平坦に形成することができる。このため、蓄電デバイス10が設置される設置面と蓄電デバイス10との密着性が高くなり、蓄電デバイス10の放熱性を向上することができる。
尚、第1、第2実施形態の包装材15と包装材25とを下端の折り線を介して連設される単一部材により形成してもよい。
<第4実施形態>
次に、図16は第4実施形態の電動自動車1の上面図を示している。説明の便宜上、前述の図1~図6に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態に対して蓄電デバイスパック5の配置が異なっている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
蓄電デバイスパック5は電動自動車1の車体のフロア下に設置され、蓄電デバイス10の並設方向を電動自動車1の左右方向に配置される。これにより、蓄電デバイス10は収納部16(図4参照)の深さ方向(Y方向)を電動自動車1の左右方向に配置される。また、収納部16の深さ方向に垂直な面内の長手方向(X方向、第1方向)を電動自動車1の左右方向に配置され、短手方向(Z方向、第2方向)を電動自動車1の高さ方向に配置される。即ち、収納部16の深さ方向に直交するX方向を電動自動車1の前後方向に配置され、収納部16の深さ方向及びX方向に直交するZ方向を電動自動車1の高さ方向に配置される。
これにより、複数の蓄電デバイス10を積み重ねずに電動自動車1に設置して所望の電力を供給することができる。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、電動自動車1の走行時に前面のフロントグリルを介して内部に取り込まれた空気が後方に流通し、蓄電デバイスパック5の各蓄電デバイス10に接触する。このため、蓄電デバイス10を冷却することができる。
尚、第2実施形態または第3実施形態の蓄電デバイス10を電動自動車1に設置し、蓄電デバイス10の並設方向を電動自動車1の左右方向に配置してもよい。
第1~第4実施形態において、収納部16、26のY方向に垂直な断面形状を略矩形に形成しているが、長円、楕円、多角形等の他の形状でもよい。
また、駆動モータ3に電力を供給する蓄電デバイス10が二次電池から成るが、キャパシタ(電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等)であってもよい。
以下に蓄電デバイス10の外装容器6を形成する包装材15、25の特性評価を行うために形成した実施例及び比較例について説明する。
実施例1の包装材15は前述の図9に示す積層構成により形成される。基材層34は厚み5μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚み20μmの2軸延伸ナイロンフィルムを積層した。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムとの間は、不飽和カルボン酸誘導体成分でグラフト変性した変性熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いた接着剤(厚み1μm)により接着されている。
バリア層36は厚み40μmのアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O)により形成し、両面に厚み20nmの耐食性皮膜36a、36bを設けた。熱融着性樹脂層38は厚み40μmの未延伸のポリプロピレンフィルムにより形成した。該ポリプロピレンフィルムは、ランダムポリプロピレン(厚み5μm)、ブロックポリプロピレン(厚み30μm)、ランダムポリプロピレン(厚み5μm)を積層して形成される。
基材層34とバリア層36との間の接着剤層35は2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物及び芳香族イソシアネート系化合物)により厚み3μmで形成した。バリア層36と熱融着性樹脂層38との間の接着層37は、カルボキシル基を有する酸変性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚みが3μm)により形成した。
包装材15の形成方法は次の通りである。まず、バリア層36を形成するアルミニウム箔の両面に処理液を塗布して乾燥させ、耐食性皮膜36a、36bを形成した。処理液は酸化セリウム100質量部に対して無機リン化合物(リン酸ナトリウム塩)が20質量部配合され、溶媒として水が含まれている。処理液の固形分濃度は10質量%程度である。処理液の乾燥はバリア層36の表面温度が190~230℃程度となる温度で3~6秒間程度加熱して行った。
次に、基材層34の2軸延伸ナイロンフィルム側とバリア層36とをドライラミネート法により接着剤層35を介して積層し、エージング処理により硬化して積層体Aを形成した。次に、バリア層36上に接着層37を形成する接着剤を塗布して乾燥させ、熱融着性樹脂層38を形成する積層フィルムを重ねて加熱した2つのロール間を通過させて接着した。次に、得られた積層体にエージング処理を施して包装材15を得た。
これにより、実施例1の包装材15の積層構成は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/接着剤(1μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸のポリプロピレンフィルム(40μm)になっている。
実施例2の包装材15は前述の図9に示す積層構成により形成される。熱融着性樹脂層38は厚み80μmの未延伸のポリプロピレンフィルムにより形成した。該ポリプロピレンフィルムは、ランダムポリプロピレン(厚み10μm)、ブロックポリプロピレン(厚み60μm)、ランダムポリプロピレン(厚み10μm)を積層して形成される。その他の層構成及び積層方法は実施例1と同様である。
これにより、実施例2の包装材15の積層構成は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(5μm)/接着剤(1μm)/2軸延伸ナイロンフィルム(20μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐酸性皮膜(厚さ20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸のポリプロピレンフィルム(80μm)になっている。
[比較例1]
比較例1の包装材15は前述の図9に示す積層構成により形成される。基材層34は厚み25μmの2軸延伸ナイロンフィルムにより形成した。バリア層36は厚み40μmのアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O)により形成し、両面に厚み20nmのクロムを含む耐食性皮膜36a、36bを設けた。
熱融着性樹脂層38は厚み30μmの未延伸のポリプロピレンフィルム及び厚み50μmのランダムポリプロピレンフィルムにより形成した。該ポリプロピレンフィルムは、ランダムポリプロピレン(厚み4μm)、ブロックポリプロピレン(厚み22μm)、ランダムポリプロピレン(厚み4μm)を積層して形成される。
基材層34とバリア層36との間の接着剤層35は2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物及び芳香族イソシアネート系化合物)により厚み3μmで形成した。バリア層36と熱融着性樹脂層38との間の接着層37はカルボキシル基を有する非結晶性ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネート化合物からなる接着剤(硬化後の厚さが3μm)により形成される。
包装材15の形成方法は次の通りである。まず、バリア層36を形成するアルミニウム箔の両面に処理液を塗布して乾燥させ、耐食性皮膜36a、36bを形成した。処理液は水100質量部に対して、アミノ化フェノール重合体43質量部、フッ化クロム16質量部、リン酸13質量部を含んでいる。処理液の乾燥はバリア層36の表面温度が190~230℃程度となる温度で3~6秒間程度加熱して行った。
次に、基材層34を形成する2軸延伸ナイロンフィルムとバリア層36とをドライラミネート法により接着剤層35を介して積層し、エージング処理を施して積層体Aを形成した。次に、バリア層36上に接着層37を形成する接着剤を塗布して乾燥させ、未延伸のポリプロピレンフィルムを重ねて加熱した2つのロール間を通過させて接着した。更にその上からランダムポリプロピレンを押出し、エージング処理を施して包装材15を得た。
これにより、比較例1の包装材15の積層構成は、2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐食性皮膜(厚み20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸のポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(50μm)になっている。
[比較例2]
比較例2の包装材15は熱融着性樹脂層38を形成するランダムポリプロピレンの厚みが比較例1と異なり、20μmに形成される。その他の層構成及び積層方法は比較例1と同一である。
これにより、比較例2の包装材15の積層構成は、2軸延伸ナイロンフィルム(25μm)/接着剤層(3μm)/両面に耐食性皮膜(厚み20nm)を備えたバリア層(40μm)/接着層(3μm)/未延伸のポリプロピレンフィルム(30μm)/ランダムポリプロピレン(20μm)になっている。
[比較例3]
比較例3の包装材15は実施例1と同様に形成され、耐食性皮膜36a、36b形成時に処理液のリン酸の濃度を実施例1の1/2倍(質量比)程度にしている。その他の積層構成及び形成方法は実施例1と同一である。
[比較例4]
比較例4の包装材15は実施例1と同様に形成され、耐食性皮膜36a、36b形成時に処理液のリン酸の濃度を実施例1の1.5倍(質量比)程度にしている。その他の積層構成及び形成方法は実施例1と同一である。
上記各実施例及び各比較例について、耐食性皮膜36aの分析及びバリア層36の密着性の評価試験を行った。表1は分析結果及び評価試験結果を示している。
<飛行時間型2次イオン質量分析>
耐食性皮膜36aの分析は飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行った。分析の試験片はバリア層36と接着層37との間を引き剥がしてバリア層36を露出させた。この際、水、有機溶剤、酸の水溶液、アルカリの水溶液等を利用せずに物理的に剥離させた。引き剥がしたバリア層36の表面に残存する接着層37はAr-GCIBによるエッチングにより除去した。
これにより、バリア層36上の耐食性皮膜36aについて飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析を行った。飛行時間型2次イオン質量分析法の測定装置及び測定条件の詳細は次の通りである。
測定装置:ION-TOF社製 飛行時間型2次イオン質量分析装置TOF.SIMS5
(測定条件)
1次イオン:ビスマスクラスターのダブルチャージイオン(Bi3
++)
1次イオン加速電圧:30 kV
質量範囲(m/z):0~1500
測定範囲:100μm×100μm
スキャン数:16 scan/cycle
ピクセル数(1辺):256 pixel
エッチングイオン:Arガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)
エッチングイオン加速電圧:5.0 kV
表1は飛行時間型2次イオン質量分析法により得られたCePO4
-、PO2
-、PO3
-に由来するピーク強度PCePO4、PPO2、PPO3を示している。また、ピーク強度PCePO4に対するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4、ピーク強度PCePO4に対するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4を示している。
尚、比較例1、2は化成処理の処理液にクロムを使用してセリウムは使用されていないため、表1にはCePO4
-のピーク強度PCePO4に関する項目について「-」で示した。
<密着性の評価>
バリア層36と熱融着性樹脂層38との間の密着性の評価は剥離強度(単位:N/15mm)を測定して行った。試験片は包装材15をTD(Transverse Direction、横方向)に15mm、MD(Machine Direction、縦方向)に100mmのサイズに裁断して形成した。
初期密着性は作成した試験片の剥離強度を引張試験により測定した。電解液浸漬後の密着性は下記のように電解液に浸漬した後の試験片の剥離強度を引張試験により測定した。
電解液の浸漬はガラス瓶に試験片を及び電解液を入れて試験片の全体を電解液に浸漬し、ガラス瓶に蓋をして密封した。電解液は、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3)を添加した。
そして、密封したガラス瓶を85℃に設定されたオーブン内に入れ、24時間静置した。次に、ガラス瓶をオーブンから取り出してガラス瓶から取り出した試験片を水洗し、表面の水分をタオルで拭き取った。その後、試験片の表面の水分をタオルで拭き取ってから10分以内に剥離強度を測定した。
引張試験は引張試験機((株)島津製作所製AGS-XPlus)を用いて行った。試験片のバリア層36と熱融着性樹脂層38との間を長さ方向に20mm程度剥離して試験機に標線間距離50mmで取り付け、試験機により50mm/分の速度で180°の方向に試験片を引っ張った。そして、標線間距離が57mmに達した際の強度を試験片の剥離強度とした。バリア層36と熱融着性樹脂層38との間を剥離した際に、接着層37はバリア層36及び熱融着性樹脂層38のいずれか一方または両方に付着した状態となる。
表1には初期密着性を示す剥離強度(N/15mm)、電解液浸漬後の密着性を示す剥離強度(N/15mm)、初期に対する電解液浸漬後の剥離強度の保持率(%)を示している。剥離強度の保持率は初期の剥離強度を100%として、電解液浸漬後の剥離強度の比を導出している。
表1から明らかなように、実施例1、2の包装材15は、バリア層36の表面に設けた耐食性皮膜36aについて、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4
-に由来するピーク強度PCePO4に対するPO3
-に由来するピーク強度PPO3の比PPO3/CePO4が、80~120の範囲内にある。
この時、実施例1、2の包装材15は、バリア層36の表面に耐食性皮膜36aを備えているにも拘わらず、電解液浸漬後においてバリア層36と熱融着性樹脂層38との間の密着性に優れることが分かる。
また、実施例1、2の包装材15は、バリア層36の表面に設けた耐食性皮膜36aについて、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて分析した場合に、CePO4
-に由来するピーク強度PCePO4に対するPO2
-に由来するピーク強度PPO2の比PPO2/CePO4が、90~150の範囲内にある。この時、電解液浸漬後においてバリア層36と熱融着性樹脂層38との間の密着性に優れることが分かる。