以下、本発明に係る水電解・発電システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る水電解・発電システム10は、再生可能エネルギー等の電力(余剰電力)を用いて水素ガスを製造し、電力が必要な場合に水素ガスを用いて発電するシステムである。水電解・発電システム10は、図1に示すように、例えば、水素ステーション400に対して低圧水素パイプライン402を介して接続されている。
水素ステーション400は、水電解システム404、水素昇圧システム406及び水素タンク408を備える。水電解システム404は、再生可能エネルギー等の電力を用いて水を電気分解することにより水素ガスを製造する。水素昇圧システム406は、水電解システム404で製造された水素ガスを昇圧して水素タンク408に貯蔵する。水素タンク408には、他の工場等で製造されて輸送された水素ガス(副生水素ガスを含む)が貯蔵されてもよい。
低圧水素パイプライン402は、水素ステーション400の水素タンク408に貯蔵されている水素ガス又は水電解システム404で製造された水素ガスを水電解・発電システム10に供給する。また、低圧水素パイプライン402は、水電解・発電システム10で製造された水素ガス(蓄圧していない水素ガス)を水素タンク408に貯蔵するために水素昇圧システム406に供給する。低圧水素パイプライン402は、水素ガスを貯蔵するタンクとしても機能する。つまり、本実施形態において、水素タンク408及び低圧水素パイプライン402は、水素貯蔵部410を形成する。
図2において、水電解・発電システム10は、セル部材12、第1装置14、第2装置16、冷却装置18を備える。
図3に示すように、セル部材12は、複数のセル20が積層されたスタックとして形成されている。各セル20は、MEA22(電解質膜・電極構造体)を第1セパレータ24と第2セパレータ26とで挟持して形成される。MEA22は、電解質膜28と、電解質膜28の一方の面28aに配設された第1電極30と、電解質膜28の他方の面28bに配設された第2電極32とを有する。電解質膜28は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。
第1電極30は、電解質膜28の一方の面28aに接合された第1電極触媒層34と、第1電極触媒層34に積層された第1ガス拡散層36とを有する。第2電極32は、電解質膜28の他方の面28bに接合された第2電極触媒層38と、第2電極触媒層38に積層された第2ガス拡散層40とを有する。
第1電極触媒層34は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第1ガス拡散層36の表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層38は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が、イオン導電性高分子バインダとともに第2ガス拡散層40の表面に一様に塗布されて形成される。第1ガス拡散層36及び第2ガス拡散層40は、カーボンペーパ又はカーボンクロス等から形成される。
第1セパレータ24及び第2セパレータ26は、金属薄板、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、或いはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して形成される。第1セパレータ24と第2セパレータ26とは、図示しない複数の接合ラインにより互いに接合されて接合セパレータ42を形成する。
第1セパレータ24のMEA22に向かう面24aには、第1流体流路44が形成されている。第2セパレータ26のMEA22に向かう面26aには、第2流体流路46が形成されている。互いに接合される第1セパレータ24の面24bと第2セパレータ26の面26bとの間には、冷却媒体が流通する冷媒流路48が形成されている。冷媒流路48は、第1流体流路44が形成された第1セパレータ24の裏面形状と第2流体流路46が形成された第2セパレータ26の裏面形状とが重なり合って形成される。
図2において、セル部材12には、直流電源である電解電源50が電気的に接続されている。このようなセル部材12を備えた水電解・発電システム10は、第1電極30に供給された水を電気分解して第2電極32に生成水素ガスを発生させる水電解モードと、第1電極30に供給された酸化剤ガスと第2電極32に供給された水素ガスとの電気化学反応により発電する発電モード(燃料電池モード)とに切り換え可能に形成されている。詳細な図示は省略するが、セル部材12で発電された電力は、例えば、図示しないバッテリ等に充電される。なお、セル部材12で発電された電力は、交流変換して系統電源網へ供給されてもよい。
セル部材12には、インピーダンス計測部52とセル電圧計測部54とが設けられている。インピーダンス計測部52は、図示しない交流電源により第1電極30と第2電極32とを通電させてセル電圧からセル部材12の直流抵抗成分を計測する。セル電圧計測部54は、発電時の各セル20のセル電圧を計測する。
セル部材12には、第1入口ポート部56a、第1出口ポート部56b、第2入口ポート部58a、第2出口ポート部58b、冷媒入口ポート部60a及び冷媒出口ポート部60bが設けられている。第1入口ポート部56a及び第1出口ポート部56bは、セル部材12の第1流体流路44(図3参照)に連通するとともに第1装置14が接続している。第1入口ポート部56aには、水電解モードの際に第1装置14から水が供給され、発電モードの際に第1装置14から酸化剤ガスが供給される。第1出口ポート部56bには、水電解モードの際に第1流体流路44から生成水素ガス及び副生酸素を含むガス含有水が導出され、発電モードの際に第1流体流路44から生成水を含む酸化剤排ガスが導出される。
第2入口ポート部58a及び第2出口ポート部58bは、セル部材12の第2流体流路46(図3参照)に連通するとともに第2装置16が接続している。第2入口ポート部58aには、水電解モードの際に第2装置16から何も供給されず、発電モードの際に第2装置16から水素ガスが供給される。第2出口ポート部58bには、水電解モードの際に第2流体流路46から水分を含んだ生成水素ガスが導出され、発電モードの際に第2流体流路46から水分を含んだ水素排ガスが導出される。
冷媒入口ポート部60a及び冷媒出口ポート部60bは、セル部材12の冷媒流路48(図3参照)に連通するとともに冷却装置18が接続している。
第1装置14は、純水供給部62、水循環部64、酸化剤ガス装置66及び熱交換装置68を備える。純水供給部62は、水循環部64に水(純水)を供給するための水供給流路70を有する。水供給流路70には、上流側から水循環部64に向かって、市水供給弁72、純水製造部74、純水調整弁76及び逆止弁78がこの順序で設けられている。
市水供給弁72は、水供給流路70を開放及び閉塞する開閉弁であって、純水製造部74に供給される市水の量を調整する。図示は省略するが、純水製造部74は、例えば、市水を活性炭フィルタ、イオン交換樹脂(イオン交換樹脂塔)及び中空糸フィルタに流通させることにより純水を製造する。純水調整弁76は、水供給流路70を開放及び閉塞する開閉弁であって、純水製造部74によって製造された純水の水循環部64への供給量を調整する。逆止弁78は、純水製造部74から水循環部64への純水の流通を許可し、水循環部64から純水製造部74への流体の流通を阻止する。
水循環部64は、第1気液分離器80、第1気液分離器80に接続された水導入流路81と、水導入流路81と第1入口ポート部56aとを結ぶ第1供給流路82と、第1出口ポート部56bと第1気液分離器80とを結ぶ第1導出流路84とを備える。
第1気液分離器80は、セル部材12から導出された流体を気液分離する。具体的に、第1気液分離器80は、水電解モードの際にセル部材12の第1出口ポート部56bから導出されるガス含有水を気液分離する。また、第1気液分離器80は、発電モードの際にセル部材12の第1出口ポート部56bから導出される酸化剤排ガスを気液分離する。さらに、第1気液分離器80は、発電モードの際に第2出口ポート部58bから第2装置16を介して導かれる水素排ガスを気液分離する。
第1気液分離器80は、水を貯留可能な第1貯留部86を有する。第1貯留部86には、純水供給部62から純水が供給される。また、第1貯留部86には、セル部材12から導出された流体から分離された水が貯留される。そのため、第1貯留部86には、純水供給部62から導かれた純水と、セル部材12から導出された流体から分離された水との混合水が貯留される。
第1貯留部86には、第1貯留部86内の水面よりも上側を第1室86aと第2室86bとに仕切る仕切壁88が設けられている。仕切壁88は、第1貯留部86の底面から離間している。仕切壁88の一部は、第1貯留部86内の水に漬かっている。第1貯留部86の第1室86a側には、水供給流路70が接続されている。第1貯留部86の第2室86b側には、セル部材12から導出された流体が導入される。
第1気液分離器80では、第2室86bに導かれた流体のガス成分は、水中(仕切壁88と第1貯留部86の底面との間)を通り第1室86aに導かれる。第1室86aに導かれたガス成分は、第1貯留部86の第1室86a側の上部に設けられた排気流路90を介して外部に排出される。排気流路90には、ガス成分中の水素ガス濃度を検出するための水素センサ91が設けられている。排気流路90は、地上から5m以上の位置でガス成分(水素ガス)を拡散するための図示しない拡散管を含む。
第1貯留部86内の水量は、仕切壁88の一部が常に水に漬かるように管理されている。そのため、第1貯留部86は、逆火を防止するための水封器としても機能する。すなわち、第1貯留部86は、例えば、排気流路90が被雷した場合に排気流路90から第2室86bへの火炎伝搬を防止する。また、第1貯留部86は、例えば、セル部材12の第1出口ポート部56bが着火した場合に第1出口ポート部56bから排気流路90への火炎伝搬を防止する。
仕切壁88は、気液分離の際に第2室86b側の水面の波が第1室86a側の水面に伝わることを抑える消波板としても機能する。これにより、第1室86a側の水位の安定化を図ることができる。第1貯留部86の第1室86a側には、第1貯留部86内の水量を取得するための第1水位センサLS1(第1水位取得部)が設けられている。
水導入流路81の一端は、第1貯留部86に接続されている。水導入流路81には、第1気液分離器80から第1供給流路82に向かって、ストレーナ92、水ポンプ94、第1熱交換器96、純水処理部98、純水供給弁100がこの順序で設けられている。
ストレーナ92は、第1貯留部86から導かれた水から異物(粒子浮遊物)を除去する。水ポンプ94は、第1貯留部86内の水を水導入流路81、第1供給流路82、セル部材12(第1流体流路44)及び第1導出流路84を流通して第1貯留部86に戻すための水電解用の電動水ポンプである。第1熱交換器96は、水ポンプ94から移送された水を所望の温度に調節するためのものである。第1熱交換器96は、例えば、水冷インタークーラとして構成されている。
純水処理部98は、第1熱交換器96から導かれた水を純水処理する。これにより、第1気液分離器80でセル部材12から導出された流体から分離された水を再利用することができるため、水電解モードの際の生成水素ガスの単位量当たりの市水の使用量を少なくすることができる。また、市水を純水にするための純水製造部74の部品(活性炭フィルタ、イオン交換樹脂、中空糸フィルタ等)の交換サイクルを長期化できるため、水電解・発電システム10の運用コスト及びメンテナンスコストの削減を図ることができる。また、セル部材12に供給される水を常時純水にすることができるため、水電解に必要な液絡抵抗と地絡抵抗を確実に管理することができる。
純水処理部98は、例えば、複数のイオン交換器102とメッシュフィルタ104とを有する。複数のイオン交換器102は、互いに並列に配置されている。これにより、複数のイオン交換器102を直列に配置する場合と比較して、水がイオン交換器102を流通する際の圧損を低減することができる。イオン交換器102は、例えば、交換可能なカートリッジ型のものが好ましい。メッシュフィルタ104は、イオン交換器102を流通した水から異物を除去する。純水供給弁100は、第1流体流路44を開放及び閉塞する開閉弁である。
第1供給流路82は、水導入流路81から導かれた水(純水)を第1入口ポート部56aに導入する。第1導出流路84は、第1貯留部86の第2室86b側に接続されている。
酸化剤ガス装置66は、酸化剤ガス流路106、酸化剤ガス導入流路108、希釈流路110及び酸化剤ガス導出流路112を有する。酸化剤ガス流路106には、上流側から下流側に向かって、エアフィルタ114、エアポンプ116、エアフローメータ118(酸化剤ガス流量取得部)、インタークーラ120、第2熱交換器122及び加湿器124がこの順序で設けられている。
エアフィルタ114は、空気(酸化剤ガス)中の異物を除去する。エアポンプ116は、エアフィルタ114を通過して清浄化された酸化剤ガスを過給(圧縮)する。エアポンプ116としては、例えば、容積型電動モータターボポンプが用いられる。酸化剤ガス流路106には、エアポンプ116が1つのみ設けられている。
エアフローメータ118は、エアポンプ116から導かれた酸化剤ガスの流量を取得する。インタークーラ120は、エアポンプ116で過給されることにより昇温された酸化剤ガスを冷却する。インタークーラ120は、例えば、空冷式のものが用いられる。すなわち、インタークーラ120は、図示しないファンの回転数を制御することにより酸化剤ガスの温度を調節する。
第2熱交換器122は、インタークーラ120で冷却された酸化剤ガスを所望の温度に調節するものである。第2熱交換器122は、例えば、水冷インタークーラとして構成されている。加湿器124は、第2熱交換器122から導かれた酸化剤ガスを加湿する。
酸化剤ガス流路106には、加湿器124を迂回する第1バイパス流路126が設けられている。第1バイパス流路126の一端(上流側の端)は、流量調節弁128を介して酸化剤ガス流路106における加湿器124と第2熱交換器122との間に連結している。第1バイパス流路126の他端(下流側の端)は、酸化剤ガス流路106における加湿器124よりも下流側に連結している。
流量調節弁128は、加湿器124に導かれる酸化剤ガスの流量と第1バイパス流路126に導かれる酸化剤ガスの流量との比率を調節する。流量調節弁128としては、例えば、電動可変三方弁が好適に用いられる。
酸化剤ガス流路106の下流側の端には、第1流路切換弁130を介して酸化剤ガス導入流路108と希釈流路110とが連結されている。第1流路切換弁130は、酸化剤ガス導入流路108の流通状態と希釈流路110の流通状態とに切り換え可能に形成されている。
第1流路切換弁130は、酸化剤ガス導入流路108の流通状態で、酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108への酸化剤ガスの流通を許可するとともに酸化剤ガス流路106から希釈流路110への酸化剤ガスの流通を阻止する。第1流路切換弁130は、希釈流路110の流通状態で、酸化剤ガス流路106から希釈流路110への酸化剤ガスの流通を許可するとともに酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108への酸化剤ガスの流通を阻止する。第1流路切換弁130としては、例えば、三方弁が好適に用いられる。
酸化剤ガス導入流路108は、酸化剤ガス流路106を流通した酸化剤ガスを第1供給流路82に導く。第1供給流路82は、酸化剤ガス導入流路108から導かれた酸化剤ガスを第1入口ポート部56aに導入する。つまり、第1供給流路82は、水電解モードの際に水導入流路81から導かれた水を第1入口ポート部56aに導入し、発電モードの際に酸化剤ガス導入流路108から導かれた酸化剤ガスを第1入口ポート部56aに導入する。換言すれば、水電解・発電システム10は、水電解モードと発電モードとで第1供給流路82を共有している。
酸化剤ガス導入流路108には、第1流路切換弁130側から第1供給流路82への酸化剤ガスの流通を許可し、第1供給流路82から第1流路切換弁130への流体(水)の流通を阻止する逆止弁132が設けられている。
希釈流路110は、酸化剤ガス流路106を流通した酸化剤ガス(希釈ガス)を第1貯留部86の第2室86bに導く。希釈流路110には、第1流路切換弁130から第1貯留部86への酸化剤ガスの流通を許可し、第1貯留部86から第1流路切換弁130への流体の流通を阻止する逆止弁134が設けられている。
酸化剤ガス導出流路112は、発電モードの際にセル部材12の第1出口ポート部56bから第1導出流路84に導出された酸化剤排ガスを第1貯留部86の第2室86bに導く。
酸化剤ガス導出流路112は、第2流路切換弁136を介して第1導出流路84に連結されている。つまり、第1導出流路84は、第2流路切換弁136よりも上流側の上流側導出流路84aと、第2流路切換弁136よりも下流側の下流側導出流路84bとを含む。第2流路切換弁136は、酸化剤ガス導出流路112の流通状態と下流側導出流路84bの流通状態とに切り換え可能に形成されている。
第2流路切換弁136は、酸化剤ガス導出流路112の流通状態で、上流側導出流路84aから酸化剤ガス導出流路112への流体(酸化剤排ガス)の流通を許可するとともに上流側導出流路84aから下流側導出流路84bへの流体(酸化剤排ガス)の流通を阻止する。第2流路切換弁136は、下流側導出流路84bの流通状態で、上流側導出流路84aから下流側導出流路84bへの流体(ガス含有水)の流通を許可するとともに上流側導出流路84aから酸化剤ガス導出流路112への流体(ガス含有水)の流通を阻止する。第2流路切換弁136としては、例えば、三方弁が好適に用いられる。
酸化剤ガス導出流路112には、第1導出流路84から第1貯留部86に向かって、加湿器124、第1背圧弁138及び逆止弁140がこの順序で設けられている。つまり、加湿器124は、酸化剤ガス導入流路108と酸化剤ガス導出流路112とに跨るように設けられている。加湿器124は、酸化剤ガス導出流路112を流通する酸化剤排ガス(生成水を含む)により酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを加湿する。第1背圧弁138は、酸化剤ガス導出流路112を流通する酸化剤排ガスの流量を調節する。第1背圧弁138としては、例えば、ダイヤフラム弁が好適に用いられる。逆止弁140は、第1背圧弁138から第1貯留部86への酸化剤排ガスの流通を許可し、第1貯留部86から第1背圧弁138への流体の流通を阻止する。
熱交換装置68は、熱媒体が流通する熱媒体循環流路142を備える。熱交換装置68では、熱媒体として不凍液を用いるのが好ましい。不凍液としては、比熱及び粘度を考慮して、例えば、エチレングリコール50%の希釈液(クーラント)が好適に用いられる。ただし、熱媒体は、適宜の流体を採用してよい。
熱媒体循環流路142には、熱媒体ポンプ144、熱媒体ラジエータ146、第1熱交換器96及び第2熱交換器122が設けられている。熱媒体ポンプ144は、熱媒体循環流路142に熱媒体を循環させる。熱媒体ラジエータ146は、熱媒体循環流路142における熱媒体ポンプ144の下流側に位置する。熱媒体ラジエータ146は、熱媒体と大気との間で熱交換を行う。熱媒体ラジエータ146は、図示しないファンの回転数を調節することにより熱媒体の温度を調節する。
第1熱交換器96は、熱媒体循環流路142における熱媒体ラジエータ146よりも下流側に設けられている。第1熱交換器96は、水導入流路81を流通する水と熱媒体との間で熱交換を行う。第2熱交換器122は、熱媒体循環流路142における熱媒体ラジエータ146と第1熱交換器96との間に設けられている。つまり、第2熱交換器122は、熱媒体循環流路142における第1熱交換器96よりも上流側に位置する。第2熱交換器122は、酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスと熱媒体との間で熱交換を行う。
図示は省略するが、熱交換装置68は、熱媒体循環流路142内の熱媒体の流量を調節するための熱媒体タンク及び調圧弁等をさらに有する。
第2装置16は、給排流路150、第2供給流路154及び水素導出部156を備える。給排流路150は、低圧水素パイプライン402に連通している。第2供給流路154は、低圧水素パイプライン402から給排流路150に導かれた水素ガスをセル部材12の第2入口ポート部58aに導く。
第2供給流路154には、給排流路150から第2入口ポート部58aに向かって、水素ガス供給弁158、逆止弁160及びエジェクタ162がこの順序で設けられている。水素ガス供給弁158は、第2供給流路154を開放及び閉塞する遮断弁である。逆止弁160は、給排流路150から第2入口ポート部58aへの水素ガスの流通を許可し、第2入口ポート部58aから給排流路150への流体の流通を阻止する。エジェクタ162には、発電モードの際にセル部材12の第2出口ポート部58bから導出された水素排ガスを第2供給流路154に戻すための水素排ガス循環流路176が連結されている。エジェクタ162は、給排流路150から導かれた水素ガスにより水素排ガス循環流路176の水素排ガスを吸い込み、水素ガスに混合して下流側に吐出する。
第2供給流路154には、エジェクタ162を迂回するように設けられた第2バイパス流路166が設けられている。第2バイパス流路166の一端(上流側の端)は、第2供給流路154における逆止弁160とエジェクタ162との間に連結している。第2バイパス流路166の他端は、第2供給流路154におけるエジェクタ162よりも下流側に連結している。
第2バイパス流路166には、インジェクタ168が設けられている。つまり、エジェクタ162とインジェクタ168とは、互いに並列に設けられている。インジェクタ168は、第2バイパス流路166を流通する水素ガスの流量を調節可能な電磁弁である。
水素導出部156は、第2導出流路170、第2気液分離器172、中間導出流路174、水素排ガス循環流路176、除湿流路178及び貯蔵流路180を有する。第2導出流路170は、第2出口ポート部58bと第2気液分離器172とを互いに接続する。第2導出流路170には、水電解モードの際に第2出口ポート部58bから生成水素ガスが導出され、発電モードの際に水素排ガスが導出される。
第2導出流路170には、発電モードの際に水素排ガスを第1貯留部86の第2室86bに導くためのパージ流路182が接続されている。パージ流路182には、第2導出流路170から第1貯留部86に向かって、パージ弁184及び逆止弁186がこの順序で設けられている。パージ弁184は、パージ流路182を開放及び閉塞する開閉弁である。逆止弁186は、第2導出流路170から第1貯留部86への水素排ガスの流通を許可し、第1貯留部86から第2導出流路170への流体の流通を阻止する。
第2気液分離器172は、第2導出流路170から導かれた生成水素ガス及び水素排ガスを気液分離するとともに分離された水を貯留する第2貯留部188を有する。第2貯留部188内には、第2貯留部188内に導入された生成水素ガス及び水素排ガスに渦状の流れを発生させるための図示しないスワールガイドが設けられている。これにより、第2貯留部188内に導入された生成水素ガス及び水素排ガスの気液分離が効率的に行われる。
第2貯留部188には、第2貯留部188内の水量を取得するための第2水位センサLS2(第2水位取得部)が設けられている。第2貯留部188の底面には、第2貯留部188内の水を排出するためのドレン流路190が接続されている。ドレン流路190は、パージ流路182におけるパージ弁184と逆止弁186との間に接続されている。ドレン流路190には、ドレン流路190を開放及び閉塞するドレン弁192が設けられている。
第2貯留部188の上部には、第2貯留部188内で水分が分離された生成水素ガス及び水素排ガスが導出される中間導出流路174が接続されている。中間導出流路174には、第3流路切換弁194を介して水素排ガス循環流路176と除湿流路178とが接続されている。第3流路切換弁194は、水素排ガス循環流路176の流通状態と除湿流路178の流通状態とに切り換え可能に形成されている。
第3流路切換弁194は、水素排ガス循環流路176の流通状態で、中間導出流路174から水素排ガス循環流路176への水素排ガスの流通を許可するとともに中間導出流路174から除湿流路178への水素排ガスの流通を阻止する。第3流路切換弁194は、除湿流路178の流通状態で、中間導出流路174から除湿流路178への生成水素ガスの流通を許可するとともに中間導出流路174から水素排ガス循環流路176への生成水素ガスの流通を阻止する。第3流路切換弁194としては、例えば、三方弁が好適に用いられる。
水素排ガス循環流路176は、第3流路切換弁194とエジェクタ162とを互いに接続する。水素排ガス循環流路176には、第3流路切換弁194からエジェクタ162への水素排ガスの流通を許可するとともにエジェクタ162から第3流路切換弁194への水素ガスの流通を阻止する逆止弁196が設けられている。
除湿流路178は、第3流路切換弁194と貯蔵流路180とを互いに接続する。除湿流路178には、除湿冷却部198、第1除湿吸着部200a、第2除湿吸着部200b及び除湿切換部202が設けられている。
除湿冷却部198は、生成水素ガスの冷却により除湿する。第1除湿吸着部200aは、除湿流路178における除湿冷却部198よりも下流に設けられている。第2除湿吸着部200bは、除湿流路178における第1除湿吸着部200aよりも下流に設けられている。第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bは、ゼオライト等の吸着剤を有する除湿吸着塔であって、吸着剤の吸着機能を回復させるための図示しないヒータを有する。すなわち、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bは、生成水素ガスを除湿するとともに除湿機能を回復可能に形成されている。
除湿切換部202は、第1除湿吸着部200aと第2除湿吸着部200bの生成水素ガスを流す順番が変更されるように生成水素ガスの流通方向を変更する。除湿切換部202は、第4流路切換弁204、第1切換流路206、第1開閉弁208、第2切換流路210、第2開閉弁212を含む。
第4流路切換弁204は、除湿流路178における除湿冷却部198と第1除湿吸着部200aとの間に設けられている。除湿流路178は、第4流路切換弁204よりも上流側の除湿上流流路178aと、第4流路切換弁204よりも下流側の除湿下流流路178bとを含む。第4流路切換弁204には、第1切換流路206が接続されている。
第4流路切換弁204は、除湿下流流路178bの流通状態と第1切換流路206の流通状態とに切り換え可能に形成されている。第4流路切換弁204は、除湿下流流路178bの流通状態で、除湿上流流路178aから除湿下流流路178bへの生成水素ガスの流通を許可するとともに除湿上流流路178aから第1切換流路206への生成水素ガスの流通を阻止する。第4流路切換弁204は、第1切換流路206の流通状態で、除湿上流流路178aから第1切換流路206への生成水素ガスの流通を許可するとともに除湿上流流路178aから除湿下流流路178bへの生成水素ガスの流通を阻止する。第4流路切換弁204としては、例えば、三方弁が好適に用いられる。
第1切換流路206は、除湿下流流路178bにおける第2除湿吸着部200bよりも下流側に接続している。第1開閉弁208は、除湿下流流路178bにおける第1切換流路206との接続部よりも下流側に設けられている。第1開閉弁208は、除湿下流流路178bを開放及び閉塞する。第2切換流路210の一端は、除湿下流流路178bにおける第1除湿吸着部200aよりも上流側に接続している。第2切換流路210の他端は、除湿下流流路178bにおける第1開閉弁208よりも下流側に接続している。第2開閉弁212は、第2切換流路210を開放及び閉塞する。
貯蔵流路180は、除湿流路178から導かれた除湿された生成水素ガスを給排流路150に導く。貯蔵流路180には、除湿流路178から給排流路150に向かって、メッシュフィルタ214及び第2背圧弁216がこの順序で設けられている。メッシュフィルタ214は、生成水素ガス中の異物を除去する。第2背圧弁216は、貯蔵流路180を流通する生成水素ガスの流量を調節する。第2背圧弁216としては、例えば、ダイヤフラム弁が好適に用いられる。
貯蔵流路180のうちメッシュフィルタ214及び第2背圧弁216よりも上流側には、除湿流路178から導かれた生成水素ガスを排気流路90に排出するためのベント流路218が接続されている。ベント流路218には、貯蔵流路180から排気流路90に向かって、ベント弁220と逆止弁222とがこの順序で設けられている。ベント弁220は、ベント流路218を開放及び閉塞する。逆止弁222は、貯蔵流路180から排気流路90への生成水素ガスの流通を許可するとともに排気流路90から貯蔵流路180への流体の流通を阻止する。
冷却装置18は、発電モードの際にセル部材12の冷媒流路48(図3参照)に冷媒を流通させてセル部材12を冷却するためのものである。冷媒としては、例えば、エチレングリコール水溶液が好適に用いられる。
冷却装置18は、冷媒供給流路224、冷媒導出流路226及び冷媒ラジエータ228を有する。冷媒供給流路224は、冷媒ラジエータ228と冷媒入口ポート部60aとを互いに接続する。冷媒供給流路224には、冷媒ポンプ230が設けられている。冷媒ポンプ230は、冷媒供給流路224の冷媒を冷媒入口ポート部60aに向かって吐出する。冷媒導出流路226は、冷媒出口ポート部60bと冷媒ラジエータ228とを互いに接続する。
冷媒導出流路226には、冷媒導出流路226を流通する冷媒の流量を調節する第3背圧弁232が設けられている。第3背圧弁232としては、例えば、ダイヤフラム弁が好適に用いられる。冷媒ラジエータ228は、冷媒と大気との間で熱交換を行う。冷媒ラジエータ228は、図示しないファンの回転数を調節することにより冷媒の温度を調節する。
図示は省略するが、冷却装置18は、冷媒供給流路224、冷媒導出流路226及び冷媒流路48内の冷媒の流量を調節するための冷媒タンク及び調圧弁等をさらに有する。
水電解・発電システム10は、ガスメータ234(流量取得部)及びシステムECU236をさらに備える。ガスメータ234は、給排流路150に設けられている。ガスメータ234は、給排流路150から低圧水素パイプライン402への生成水素ガスの流通量(水素ガスの販売量)と低圧水素パイプライン402から給排流路150への水素ガスの流通量(水素ガスの購入量)を取得する。
図4に示すように、ガスメータ234が取得した情報は、ゲートウェイサーバ238に送信される。ゲートウェイサーバ238は、タイムスタンプを付与した取引情報(水素ガスの販売量及び水素ガスの購入量)をVPPサーバ240(バーチャルパワープラントサーバ)に送信する。システムECU236は、ゲートウェイサーバ238を介してVPPサーバ240と通信可能である。VPPサーバ240は、ゲートウェイサーバ238を介してシステムECU236に対して、水電解モードの運転要求、発電モードの運転要求、モード切換の要求、運転停止の要求等を送信する。
システムECU236は、第1水位センサLS1、第2水位センサLS2、インピーダンス計測部52、セル電圧計測部54、水素センサ91及びエアフローメータ118の取得情報を受信する。また、システムECU236には、セル部材12、第1装置14、第2装置16及び冷却装置18に設けられた圧力センサ、温度センサ、比抵抗計、水素センサ、流量計等の各種センサの取得情報を受信する。
システムECU236は、演算部242(処理部)と記憶部246とを備える。演算部242は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、すなわち、処理回路によって構成され得る。演算部242は、弁制御部248、ポンプ制御部250、インジェクタ制御部252、判定部254、カウンタ256を有する。演算部242の各要素(弁制御部248等)は、記憶部246に記憶されているプログラムが演算部242によって実行されることによって実現され得る。
演算部242の各要素(弁制御部248等)の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されるようにしてもよい。また、演算部242の各要素(弁制御部248等)の少なくとも一部は、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
記憶部246は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。揮発性メモリとしては、例えば、RAM(Random Acces Memory)等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。記憶部246の少なくとも一部は、上述したようなプロセッサ、集積回路等に設けられてもよい。
弁制御部248は、各種弁の動作を制御する。ポンプ制御部250は、各種ポンプ(水ポンプ94、エアポンプ116、熱媒体ポンプ144、冷媒ポンプ230)の動作を制御する。インジェクタ制御部252は、インジェクタ168の開弁及び閉弁の制御を行う。カウンタ256は、時間を計測する。
次に、水電解・発電システム10の運転方法について説明する。
まず、水電解・発電システム10の水電解モードの運転について説明する。水電解・発電システム10は、VPPサーバ240からゲートウェイサーバ238を介してシステムECU236に水電解モードの運転要求があった場合、水電解モードの運転を行う。
具体的に、図5に示すように、水電解モードの運転では、市水から純水を製造する(ステップS1)。つまり、弁制御部248は、市水供給弁72を開く。そうすると、図6に示すように、市水は、水供給流路70を通り純水製造部74に導入される。純水製造部74では、図示しない、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂及び中空糸フィルタを流通して純水が製造される。純水製造部74で製造された純水は、純水調整弁76を介して第1貯留部86内に導入される。第1貯留部86内に供給された純水は、第1貯留部86内においてセル部材12の水電解時に使用された水と混合される。
また、弁制御部248は、水電解モードの際に、第1貯留部86内の水位が所定範囲内に維持されるように第1水位センサLS1により取得された水位に基づいて純水調整弁76を開閉する。具体的に、弁制御部248は、第1水位センサLS1により取得された水位が下限レベルまで低下した場合に純水調整弁76を開いて純水製造部74から第1貯留部86内に純水を供給する。そして、弁制御部248は、第1水位センサLS1により取得された水位が基準レベルまで上昇した場合に純水調整弁76を閉じて純水製造部74から第1貯留部86内への純水の供給を停止する。さらに、弁制御部248は、第1水位センサLS1により取得された水位が上限レベルまで上昇した場合に第1貯留部86の底面に接続された図示しないドレン流路に設けられたドレン弁を開いて第1貯留部86内の水を外部に排出する。
なお、システムECU236は、第1水位センサLS1により取得された水位が異常水位上限レベルまで上昇した場合にフェール停止処理を行う。また、システムECU236は、第1水位センサLS1により取得された水位が異常水位下限レベルまで低下した場合にフェール停止処理を行う。第1貯留部86内の水位の下限レベル、基準レベル、上限レベル、異常上限レベル及び異常下限レベルは、予め記憶部246に記憶されている。
続いて、弁制御部248は、各種弁を水電解モード状態に制御する(図5のステップS2)。具体的に、弁制御部248は、純水供給弁100、第1開閉弁208及び第2背圧弁216を開き、水素ガス供給弁158、パージ弁184、ドレン弁192、第2開閉弁212及びベント弁220を閉じる。なお、第1背圧弁138及び第3背圧弁232は、開いていても閉じていても構わない。
また、弁制御部248は、流量調節弁128を第1バイパス流路126に酸化剤ガスが流通するとともに加湿器124に酸化剤ガスが流通しない状態に制御する。さらに、弁制御部248は、第1流路切換弁130を希釈流路110の流通状態に制御し、第2流路切換弁136を下流側導出流路84bの流通状態に制御し、第3流路切換弁194を除湿流路178の流通状態に制御し、第4流路切換弁204を除湿下流流路178bの流通状態に制御する。
そして、ポンプ制御部250は、各種ポンプを水電解モード状態に制御する(図5のステップS3)。すなわち、ポンプ制御部250は、水ポンプ94、熱媒体ポンプ144及びエアポンプ116を駆動する。なお、ポンプ制御部250は、冷媒ポンプ230を駆動しないが、外気が高温環境である(例えば、45℃以上である)場合等には、冷媒ポンプ230を駆動してセル部材12を冷却してもよい。
そうすると、第1貯留部86内に貯留されている水は、水導入流路81を通りストレーナ92により異物を除去された後で水ポンプ94によって下流側に過給される。水ポンプ94によって過給された水は、第1熱交換器96で熱媒体と熱交換が行われることにより所望の温度に調節される。
第1熱交換器96を流通した水は、イオン交換器102を通り純水処理された後で、メッシュフィルタ104により異物が除去される。そして、メッシュフィルタ104を流通した水(純水)は、第1供給流路82を介してセル部材12の第1入口ポート部56aに供給される(図5のステップS4)。なお、システムECU236は、水導入流路81におけるメッシュフィルタ104よりも下流側で測定された水(純水)の比抵抗が下限レベルよりも低下した場合にフェール停止処理を行う。
第1入口ポート部56aに導入された純水は、セル部材12の第1流体流路44を流通して第1電極30に導かれる。なお、水電解モードの運転では、水素ガス供給弁158が閉じているため、セル部材12の第2入口ポート部58aに水素ガスが導入されることはない。
また、酸化剤ガス流路106に流入した酸化剤ガスは、エアフィルタ114で異物を除去された後で、エアポンプ116によって下流側に過給される。過給により昇温された酸化剤ガスは、エアフローメータ118を流通してインタークーラ120によって冷却された後で、第2熱交換器122によって所望の温度に調節される。
第2熱交換器122を流通した酸化剤ガスは、第1バイパス流路126を通り希釈流路110に導かれる。つまり、水電解モードにおいて、酸化剤ガスは、加湿器124を流通しない。そのため、水電解モードの際に、加湿器124が酸化剤ガスによってドライアップすることを防止できる。これにより、水電解モード運転から発電モード運転に切り替えた際に発電開始直後において、加湿器124による酸化剤ガスの加湿量の調整を効率的に行うことができる。希釈流路110に導かれた酸化剤ガスは、第1貯留部86の第2室86bに導入される。
その後、システムECU236は、水電解を開始する(図5のステップS5)。つまり、システムECU236は、電解電源50を駆動してセル部材12に電圧を付与する。そうすると、各セル20の第1電極30では、純水が電気分解され、水素イオン、電子及び酸素ガスが生成される。各セル20の第2電極32では、第1電極30から電解質膜28を透過した水素イオンと第1電極30から第2電極32に導かれた電子とが結合して生成水素ガスが製造される。この際、第2電極32で製造された生成水素ガスの一部は、電解質膜28を透過して第1流体流路44に導かれる。
そのため、第1出口ポート部56bには、反応により生成した酸素ガスと、電気分解されなかった未反応の水と、第2電極32から電解質膜28を介して第1電極30に透過した生成水素ガスとを含むガス含有水が導かれる。また、第2出口ポート部58bには、生成水素ガスが導かれる。なお、生成水素ガスは、第2入口ポート部58aにも導かれるが、第2供給流路154の逆止弁160、196により封止される。
セル部材12の第1出口ポート部56bに導かれたガス含有水は、第1導出流路84を介して第1気液分離器80に流入する。具体的に、ガス含有水は、第1貯留部86の第2室86b側に流入する。また、第1貯留部86の第2室86bには、希釈流路110から酸化剤ガスが導入される。そのため、第2室86bの酸化剤ガスは、第1貯留部86に貯留されている水の中を介して(仕切壁88と第1貯留部86の底面との間を介して)第1室86aに流動する。この際、ガス含有水に含まれているガス成分についても第1室86aに導かれる。つまり、ガス含有水から分離されたガス成分が第1室86aに流入し、ガス含有水から分離された水(液水)が第1貯留部86内に貯留される。そして、第1室86aに流入したガス成分は、酸化剤ガスによって希釈された状態で排気流路90を介して外部に排気される。
セル部材12の第2出口ポート部58bに導かれた生成水素ガスは、第2導出流路170を介して第2気液分離器172に流入する。この際、パージ弁184を閉じているため、第2導出流路170を流通する生成水素ガスがパージ流路182を介して第1気液分離器80に導かれることはない。
第2気液分離器172に導かれた生成水素ガスは、第2貯留部188内を渦状に流動して気液分離される。生成水素ガスから分離した水(液水)は、第2貯留部188内に貯留される。水が分離された生成水素ガスは、中間導出流路174に導かれる。
中間導出流路174に導かれた生成水素ガスは、第3流路切換弁194を介して除湿流路178に流入して除湿される。具体的に、第3流路切換弁194から除湿上流流路178aに流入した生成水素ガスは、除湿冷却部198により冷却除湿処理される。その後、生成水素ガスは、除湿上流流路178aから第4流路切換弁204を介して除湿下流流路178bに導かれ、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bをこの順序で流通して貯蔵流路180に流入する。この際、生成水素ガスは、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bによって吸着除湿処理される。この場合、例えば、生成水素ガスの残留水分量を所定値未満に管理しながら、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bの吸着機能の回復処理(自己再生)を実施することができる。
貯蔵流路180に流入した生成水素ガスは、メッシュフィルタ214で異物が除去された後で第2背圧弁216及び給排流路150を介して低圧水素パイプライン402に導出される。なお、弁制御部248は、第2背圧弁216の上流側の近傍での生成水素ガスの圧力が所定の輸送圧力以上になるように第2背圧弁216をフィードバック制御する。
この際、ガスメータ234は、給排流路150から低圧水素パイプライン402に導出された生成水素ガスの流通量(生成水素ガスの販売量)を取得してゲートウェイサーバ238を介してVPPサーバ240に送信する。これにより、水電解・発電システム10の水電解モードの説明の一連の動作フローが終了する。
上述した水電解モードの運転において、第1熱交換器96を流通する熱媒体(不凍液)は、熱媒体ラジエータ146で外気と直接熱交換される。換言すれば、第1熱交換器96において、水ポンプ94によって移送された水は、外気と直接熱交換されない。そのため、外気が氷点下であっても、第1供給流路82の水が凍結することを抑えることができる。また、本実施形態において、水循環部64は、セル部材12とともに防爆換気・保温機能を有する図示しない筐体内に設置されている。これにより、外気温が氷点下であっても過冷却による水の凍結抑制と温調特性の向上とを図ることができる。
ポンプ制御部250は、セル部材12の第1出口ポート部56bから導出されたガス含有水の温度が所定温度範囲になるように熱媒体ポンプ144の回転数(熱媒体の循環流量)をフィードバック制御する。これにより、経年劣化に伴いセル部材12の過電圧が上昇して発熱量が増加しても、セル部材12の温度を作動温度上限内にすることができる。なお、システムECU236は、熱媒体ラジエータ146の出口の熱媒体温度が予め設定された下限温度(例えば、-25℃)よりも低下した場合に、熱媒体ポンプ144を起動することなくフェール停止処理を行う。また、システムECU236は、第1熱交換器96の出口の水温度が凍結予見温度(例えば、1℃)よりも低下した場合にも同様に、フェール停止処理を行う。これは、外気温が低すぎると、熱媒体の流通量を減らしても第1熱交換器96内で水を凍結させてしまう可能性があるためである。
また、第2熱交換器122を流通する熱媒体は、エアポンプ116で過給された酸化剤ガスの排熱により温められた状態で下流側の第1熱交換器96に導かれるため、外気が氷点下である場合であっても、第1熱交換器96で第1供給流路82を流通する水が凍結することを効果的に抑えることができる。
ポンプ制御部250は、エアフローメータ118で取得された酸化剤ガスの供給流量が、第1貯留部86の排気流路90への出口近傍の水素ガス濃度が上限値を超えないような希釈流量になるようにエアポンプ116の回転数をフィードバック制御する。
エアポンプ116は、水電解モードにおいて希釈用のポンプとして機能する。また、後述するように、エアポンプ116は、発電モードにおいて酸化剤ガスの供給用のポンプとしても機能する。この場合、エアポンプ116は、最大定格発電時同等の希釈流量を確保できるため、水電解モードにおいて、第1気液分離器80からの排出水素ガス濃度を確実に上限値未満に制御することができる。なお、システムECU236は、第1気液分離器80からの排出水素ガス濃度が上限値以上になった場合に水電解モードの運転を停止する。
弁制御部248は、第2水位センサLS2により取得された水位が上限レベルまで上昇した場合にドレン弁192を開いて第2貯留部188内の水を第1貯留部86の第2室86b側に排出する。そして、弁制御部248は、第2水位センサLS2により取得された水位が下限レベルまで低下した場合にドレン弁192を閉じて第2貯留部188の排水処理を停止する。
また、システムECU236は、第2水位センサLS2により取得された水位が異常水位上限レベルまで上昇した場合にフェール停止処理を行う。さらに、システムECU236は、第2水位センサLS2により取得された水位が異常水位下限レベルまで低下した場合にフェール停止制御を行う。なお、万一第2貯留部188内の生成水素ガスの一部が第1貯留部86の第2室86bに吹き抜けた場合であっても、第1貯留部86内に流入した生成水素ガスは、酸化剤ガスによって充分に希釈された状態で大気に放出される。第2貯留部188内の水位の下限レベル、上限レベル、異常上限レベル及び異常下限レベルは、予め記憶部246に記憶されている。
本実施形態では、第1除湿吸着部200aと第2除湿吸着部200bの生成水素ガスを流す順番が変更されるように生成水素ガスの流通を切り換える。具体的に、図7に示すように、水電解モードの運転の途中で、弁制御部248は、第4流路切換弁204を第1切換流路206の流通状態に制御し、第1開閉弁208を閉じるとともに第2開閉弁212を開く。そうすると、除湿上流流路178aから第4流路切換弁204に導かれた生成水素ガスは、第1切換流路206に導かれ、第2除湿吸着部200b及び第1除湿吸着部200aをこの順序で流通した後、第2切換流路210を介して貯蔵流路180に流入する。この際、生成水素ガスは、第2除湿吸着部200b及び第1除湿吸着部200aによって吸着除湿処理される。このように第1除湿吸着部200aと第2除湿吸着部200bの生成水素ガスを流す順番を入れ替えることにより、除湿吸着部の交換インターバルの延命が図れる。
続いて、水電解・発電システム10の発電モードについて説明する。水電解・発電システム10は、VPPサーバ240からゲートウェイサーバ238を介してシステムECU236に発電モードの運転要求があった場合、発電モードの運転を行う。
具体的に、図8に示すように、弁制御部248は、各種弁を発電モード状態に制御する(ステップS6)。具体的に、図9に示すように、弁制御部248は、第1背圧弁138、水素ガス供給弁158、パージ弁184、ドレン弁192、第3背圧弁232を開き、純水供給弁100及び第2背圧弁216を閉じる。なお、第1開閉弁208、第2開閉弁212及びベント弁220は、開いていても閉じていても構わない。
また、弁制御部248は、流量調節弁128を加湿器124と第1バイパス流路126とに酸化剤ガスが流通する状態に制御する。さらに、弁制御部248は、第1流路切換弁130を酸化剤ガス導入流路108の流通状態に制御し、第2流路切換弁136を酸化剤ガス導出流路112の流通状態に制御し、第3流路切換弁194を水素排ガス循環流路176の流通状態に制御する。なお、第4流路切換弁204は、どのような状態であっても構わない。
そして、ポンプ制御部250は、各種ポンプを発電モード状態に制御する(図8のステップS7)。すなわち、ポンプ制御部250は、エアポンプ116、熱媒体ポンプ144及び冷媒ポンプ230を駆動する。なお、ポンプ制御部250は、水ポンプ94を駆動しない。また、インジェクタ制御部252は、予め設定した負荷条件に合わせた開弁時間及び閉弁時間でインジェクタ168を駆動する。
そうすると、酸化剤ガス流路106に流入した酸化剤ガスは、エアフィルタ114で異物を除去された後で、エアポンプ116によって下流側に過給される。過給により昇温された酸化剤ガスは、エアフローメータ118を流通してインタークーラ120によって冷却された後で、第2熱交換器122によって所望の温度に調節される。
第2熱交換器122を流通した酸化剤ガスは、流量調節弁128で加湿器124側と第1バイパス流路126とに分かれて流通し、加湿器124よりも下流側で合流した後、第1流路切換弁130、酸化剤ガス導入流路108及び第1供給流路82を介してセル部材12の第1入口ポート部56aに導入される(図8のステップS8)。
また、水素ステーション400から低圧水素パイプライン402を介して給排流路150に供給された水素ガスは、水素ガス供給弁158及び第2供給流路154に導入される。そして、第2供給流路154が低圧水素パイプライン402の輸送圧相当になるまで保圧され、これにより逆止弁160が開放される。この際、ガスメータ234は、低圧水素パイプライン402から給排流路150に供給された水素ガスの流通量(水素ガスの購入量)を取得してゲートウェイサーバ238を介してVPPサーバ240に送信する。
第2供給流路154の逆止弁160よりも下流側に導かれた水素ガスは、エジェクタ162とインジェクタ168とに導かれ、インジェクタ168から吐出された水素ガスとエジェクタ162から導出された水素ガスとは、互いに混合されて第2入口ポート部58aに導入される(図8のステップS9)。
セル部材12では、第1入口ポート部56aに導入された酸化剤ガスが第1流体流路44に供給され、第2入口ポート部58aに導入された水素ガスが第2流体流路46に供給される。そして、各MEA22では、第1電極30に供給された酸化剤ガスと第2電極32に供給された水素ガスとが、第1電極触媒層34及び第2電極触媒層38内で電気化学反応により消費されて発電が開始される(図8のステップS10)。この際、第1電極30には、生成水が発生する。また、生成水の一部は、第1電極30からMEA22を介して第2電極32に拡散する。
第1電極30側の酸化剤排ガス(生成水を含む)は、第1出口ポート部56bに導出される。第1出口ポート部56bに導出された酸化剤排ガスは、上流側導出流路84a及び第2流路切換弁136を介して酸化剤ガス導出流路112に導かれる。酸化剤ガス導出流路112に導かれた酸化剤排ガスは、加湿器124を流通する際に酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを加湿した後、第1背圧弁138を流通して第1貯留部86の第2室86bに流入する。
第2電極32側の水素排ガス(未反応の水素ガスと生成水を含む)は、第2出口ポート部58bに導出される。第2出口ポート部58bに導出された水素排ガスは、第2導出流路170を流通してパージ流路182と第2気液分離器172とに導かれる。パージ流路182に導かれた水素排ガスは、逆止弁186を通り第1貯留部86の第2室86bに流入する。第2室86bに流入した水素排ガスは、酸化剤ガス導出流路112から第2室86bに流入した酸化剤排ガスに希釈されるとともに仕切壁88と第1貯留部86の底面との間(水の中)を介して第1室86aに導かれて排気流路90から外部に排出される。これにより、発電モードの運転時に水電解・発電システム10から排出される水素ガス濃度を所定値以下に管理することができる。
第2気液分離器172の第2貯留部188に流入した水素排ガスは、渦状に流動することで気液分離される。第2貯留部188内で水分が分離された水素排ガスは、中間導出流路174、第3流路切換弁194及び水素排ガス循環流路176を介してエジェクタ162に吸引されることにより、セル部材12の発電に再利用される。これにより、水素排ガス中の生成水による水素ガスの自己加湿が行われる。また、発電モードの運転において、セル部材12の単位発電量に対する水素ガスの使用量を少なくすることができる。
冷媒ポンプ230により移送された冷媒は、冷媒供給流路224からセル部材12の冷媒入口ポート部60aに導入される。冷媒入口ポート部60aに導入された冷媒は、冷媒流路48を流通してセル部材12を冷却した後で冷媒出口ポート部60bに導出される。冷媒出口ポート部60bに導出された冷媒は、冷媒導出流路226を介して冷媒ラジエータ228に導かれて大気との間で熱交換(冷却)された後で冷媒供給流路224に戻される。これにより、水電解・発電システム10の発電モードの説明の一連の動作フローが終了する。
上述した発電モードの運転において、システムECU236は、インタークーラ120の出口の酸化剤ガスの温度が所定温度範囲になるようにインタークーラ120の図示しないファンの回転数をフィードバック制御する。また、第2熱交換器122を流通する熱媒体(不凍液)は、熱媒体ラジエータ146で外気と直接熱交換される。換言すれば、第2熱交換器122において、エアポンプ116によって過給された酸化剤ガスは、外気と直接熱交換されない。そのため、外気が氷点下であっても、熱媒体循環流路142を流通する熱媒体の流量を減らすことで、酸化剤ガスの過冷却と温調特性の向上とを図ることができる。また、ポンプ制御部250は、第2熱交換器122の出口から導出された酸化剤ガスの温度が所定範囲になるように熱媒体ポンプ144の回転数(熱媒体の循環流量)をフィードバック制御する。
また、システムECU236は、水素センサ91が取得した水素濃度、セル部材12の出力要求値、インピーダンス計測部52が取得したセル部材12の直流抵抗値からセル部材12内の含水量を算出する。そして、ポンプ制御部250は、算出されたセル部材12内の含水量が所定範囲になり且つエアフローメータ118で取得された酸化剤ガスの流量が目標負荷の設定ストイキ以上の流量となるようにエアポンプ116の回転数をフィードバック制御する。
さらに、弁制御部248は、セル部材12がドライアップ(電解質膜28の乾燥による抵抗上昇)しないように、流量調節弁128の開度(加湿器124を流通する酸化剤ガスと第1バイパス流路126を流通する酸化剤ガスの流量比)を制御する。
また、弁制御部248は、セル部材12の第1入口ポート部56aの手前の酸化剤ガスの圧力が所定範囲になるように第1背圧弁138をフィードバック制御する。
さらに、インジェクタ制御部252は、セル部材12の目標負荷と、第2供給流路154における第2入口ポート部58aの手前の水素ガスの圧力と、第2供給流路154における第2入口ポート部58aの手前の水素ガスの温度とから所望のストイキ設定値になるような開弁時間及び閉弁時間(開弁間隔)でインジェクタ168を制御する。インジェクタ168は、水素ガスをパルス流でセル部材12の第2入口ポート部58aに導入させる。そのため、セル部材12の第2流体流路46内の排水に必要な差圧を定常流よりも少ないガス流量で確保することができる。ただし、水素排ガス循環流路176に水素排ガスを循環させるためのポンプを設けておき、このポンプによって第2流体流路46の排水をアシストしてもよい。
また、弁制御部248は、第2水位センサLS2により取得された水位が上限レベルまで上昇した場合にドレン弁192を開いて第2貯留部188内の水を第1貯留部86の第2室86b側に排出する。そして、弁制御部248は、第2水位センサLS2により取得された水位が下限レベルまで低下した場合にドレン弁192を閉じて第2貯留部188の排水処理を停止する。また、システムECU236は、第2水位センサLS2により取得された水位が異常水位上限レベルまで上昇した場合にフェール停止処理を行う。さらに、システムECU236は、第2水位センサLS2により取得された水位が異常水位下限レベルまで低下した場合にフェール停止制御を行う。
発電モードの運転において、セル部材12の特定のセル電圧バラツキの偏差が閾値を超えた場合には、第2流体流路46内での滞留水閉塞と第1流体流路44から電解質膜28を透過した空気由来の窒素ガスによる第2電極32の水素欠乏の可能性がある。なお、セル電圧バラツキの偏差とは、全てのセル20の平均セル電圧から最も低いセル電圧を減算したものである。この場合、弁制御部248は、パージ弁184を間欠的に開いて、第2流体流路46のパージを行う。これにより、発電安定性の回復を図ることができる。この際、インジェクタ制御部252及び弁制御部248は、第2供給流路154の第2入口ポート部58aの手前の水素ガスの圧力が予め設定した負荷条件の第2入口ポート部58aの作動圧の変動許容偏差幅に収まるような開弁時間及び閉弁時間(開弁間隔)でインジェクタ168及びパージ弁184をフィードバック制御する。
次に、水電解・発電システム10の運転方法において、水電解モードから発電モードへの切り換え処理について説明する。
図10に示すように、VPPサーバ240からゲートウェイサーバ238を介してシステムECU236に水電解モードから発電モードへの切り換え要求があると、水電解停止工程が行われる(ステップS11)。水電解停止工程では、システムECU236は、電解電源50によるセル部材12への電圧の付与を停止する。
その後、第1供給流路82及びセル部材12の第1流体流路44の滞留水を除去するパージ工程が行われる(ステップS12)。
具体的に、パージ工程では、弁制御部248は、各種弁を第1切換モードに制御する(図11のステップS13)。すなわち、図12に示すように、弁制御部248は、純水供給弁100及び水素ガス供給弁158を閉じ、第1背圧弁138を全開し、第2背圧弁216を全閉する。また、弁制御部248は、流量調節弁128を第1バイパス流路126に酸化剤ガスが流通するとともに加湿器124に酸化剤ガスが流通しない状態に制御する。さらに、弁制御部248は、第1流路切換弁130を酸化剤ガス導入流路108の流通状態に制御し、第2流路切換弁136を酸化剤ガス導出流路112の流通状態に制御する。
そして、ポンプ制御部250は、各種ポンプを第1切換モードに制御する(図11のステップS14)。つまり、ポンプ制御部250は、エアポンプ116を最大定格流量で駆動する。なお、ポンプ制御部250は、水ポンプ94及び冷媒ポンプ230を起動しない。
そうすると、酸化剤ガス流路106に流入した酸化剤ガスは、エアフィルタ114で異物が除去された後で、エアポンプ116によって下流側に過給される。過給により昇温された酸化剤ガスは、エアフローメータ118を流通してインタークーラ120によって冷却された後で、第2熱交換器122によって所望の温度に調節される。
第2熱交換器122を流通した酸化剤ガスは、流量調節弁128から加湿器124を迂回するように第1バイパス流路126を通り、第1流路切換弁130、酸化剤ガス導入流路108及び第1供給流路82を介してセル部材12の第1入口ポート部56aに導入される。この際、酸化剤ガス導入流路108の一部と第1供給流路82の一部に残留している水(滞留水)を下流側に押し流すことができる。
第1入口ポート部56aに導入された酸化剤ガスは、第1流体流路44の滞留水を押し流しながら第1出口ポート部56bに流れる。この際、酸化剤ガスは、水電解モードの際に水没していた第1ガス拡散層36(図3参照)を乾燥させる。これにより、第1ガス拡散層36の揮発性を回復させることができる。第1出口ポート部56bから上流側導出流路84aに導出された滞留水を含む酸化剤ガスは、第2流路切換弁136、酸化剤ガス流路106を介して第1貯留部86に導かれる。
また、図11において、エアポンプ116を最大定格運転で起動時に、システムECU236は、カウンタ256を起動する(ステップS15)。そして、判定部254は、エアフローメータ118が取得した酸化剤ガスの流量(酸化剤ガス流量の測定値)が所望の定格流量範囲に達したか否かを判定する(ステップS16)。酸化剤ガス流量の測定値が所望の定格流量範囲に達していない場合(ステップS16:NO)、ポンプ制御部250は、エアポンプ116の回転数を増加させる(ステップS17)。その後、再び、ステップS16の処理を行う。
酸化剤ガス流量の測定値が所望の定格流量範囲に達した場合(ステップS17:YES)、判定部254は、カウンタ256の計測時間tが所定時間t1に達したか否かを判定する(ステップS18)。カウンタ256の計測時間tが所定時間t1に達していない場合は、ステップS18の処理を再度行う。なお、所定時間t1とは、例えば、10秒程度の時間を設定するのが好ましい。
カウンタ256の計測時間tが所定時間t1に達すると(ステップS18:YES)、インピーダンス計測部52によるセル部材12の直流抵抗成分の計測を開始する(ステップS19)。そして、判定部254は、インピーダンス計測部52によって計測された直流抵抗成分(直流抵抗成分の計測値、セル部材12の含水量)が所定の範囲になったか否かを判定する(ステップS20)。換言すれば、判定部254は、直流抵抗成分の計測値を用いてセル部材12の含水量が所定の範囲になったか否かを判定する。直流抵抗成分の計測値が所定の範囲になっていない場合には、ステップS20の処理を繰り返し行う。
直流抵抗成分の測定値が所定の範囲になると(ステップS20:YES)、パージ工程を終了し、発電準備工程が行われる(ステップS21)。
発電準備工程では、図13に示すように、ポンプ制御部250は、低負荷条件(発電モードの際の負荷要求値よりも低い負荷条件)でエアポンプ116を駆動する(ステップS22)。換言すれば、ポンプ制御部250は、エアポンプ116の回転数を低下させる。
続いて、弁制御部248は、流量調節弁128を加湿器124と第1バイパス流路126とに酸化剤ガスが流通する状態に制御する。これにより、加湿器124を流通した酸化剤ガスがセル部材12に導かれる(ステップS23)。また、弁制御部248は、水素ガス供給弁158を開く(ステップS24)。これにより、低圧水素パイプライン402から給排流路150に流入した水素ガスがセル部材12に導かれる。さらに、インジェクタ制御部252は、低負荷条件でインジェクタ168を駆動する(ステップS25)。これにより、セル部材12の各セル20は、低負荷条件で発電する。
その後、判定部254は、発電開始条件を満たしたか否かを判定する(ステップS26)。具体的に、判定部254は、セル電圧計測部54が計測した各セル20のセル電圧(セル電圧測定値)が所定値以上に到達し、且つセル電圧バラツキの偏差が所定の偏差内になっているか否かを判定する。セル電圧測定値が所定値以上に到達し、且つセル電圧バラツキの偏差が所定の偏差内になっていない場合(ステップS26:NO)には、ステップS26の処理を繰り返し行う。
セル電圧測定値が所定値以上に到達し、且つセル電圧バラツキの偏差が所定の偏差内になった場合(ステップS26:YES)、システムECU236は、所定の負荷要求値に基づいてセル部材12を発電させる発電開始工程を行う(図10のステップS27)。この際、システムECU236は、セル部材12への負荷電流の印加を所定の発電条件になるように傾斜制御(一定の割合で増量)する。また、システムECU236は、セル部材12への水素ガスの供給量及び負荷電流を、系統電力の補填に必要な負荷要求値に基づいて決定する。
水電解モードから発電モードへの切り換え時のパージ工程において、インピーダンスの計測は、1kHz~10kHzの間で設定し、ACインピーダンスの正弦波の重畳電流は±2A程度で行われる。これにより、セル部材12の含水量を所定の範囲に管理できるため、確実にドライアップ(電解質膜28の乾燥による抵抗上昇)を防止することができる。特に、第1入口ポート部56aの近傍の電解質膜28が局所乾燥すると、発電開始時にセル電極面内の反応分布が発生して発電が不安定になり易く、乾燥部分の発熱により電解質膜28の劣化が加速する可能性がある。しかしながら、セル部材12の含水量を管理することにより、電解質膜28の局所乾燥による電解質膜28の劣化を防止することができるとともに発電の安定化を図ることができる。
次に、水電解・発電システム10の運転方法において、発電モードから水電解モードへの切り換え処理について説明する。
図14Aに示すように、VPPサーバ240からゲートウェイサーバ238を介してシステムECU236に発電モードから水電解モードへの切り換え要求があると、発電停止工程が行われる(ステップS30)。具体的に、図14Bにおいて、発電停止工程では、システムECU236は、OCV条件に切り換える(ステップS31)。具体的に、システムECU236は、セル部材12に供給する水素ガス及び酸化剤ガスの流量と負荷電流をOCV条件になるように傾斜制御(一定の割合で減少)させる。
そして、OCV条件になったら、インジェクタ制御部252は、インジェクタ168の駆動を停止し(ステップS32)、ポンプ制御部250は、エアポンプ116の駆動を停止する(ステップS33)。これにより、セル部材12への水素ガス及び酸化剤ガスの供給が停止される。
その後、水電解準備工程が行われる(図14AのステップS34)。水電解準備工程では、弁制御部248は、各種弁を第2切換モードに制御する(ステップS35)。具体的に、図6に示すように、弁制御部248は、純水供給弁100を開き、水素ガス供給弁158及びパージ弁184を閉じる。また、弁制御部248は、流量調節弁128を第1バイパス流路126の流通状態に制御し、第1流路切換弁130を希釈流路110の流通状態に制御し、第2流路切換弁136を下流側導出流路84bの流通状態に制御し、第3流路切換弁194を除湿流路178の流通状態に制御する。
そして、図15において、ポンプ制御部250は、水ポンプ94を定格流量で駆動する(ステップS36)。そうすると、第1貯留部86内の水は、第1供給流路82を介してセル部材12に供給される。セル部材12から導出された水は、第1導出流路84を流通して第1貯留部86に戻される。
水ポンプ94を駆動すると、第1供給流路82、セル部材12の第1流体流路44及び第1導出流路84にエア噛み(空気の混入)が無いか否かを判定する。すなわち、システムECU236は、純水調整弁76の閉時間t2(開弁間隔)を計測する(ステップS37)。そして、判定部254は、純水調整弁76の閉時間t2が所定時間t0以上であるか否かを判定する(ステップS38)。純水調整弁76の閉時間t2が所定時間t0に達していない場合(ステップS38:NO)には、ステップS37の処理を再び行う。すなわち、第1水位センサLS1で取得された水位が下限レベルよりも低い場合には、純水調整弁76が開くため、ステップS37の処理を再び行う。
純水調整弁76の閉時間t2が所定時間t0以上になった場合(ステップS38:YES)、システムECU236は、第1水位センサLS1が取得した第1貯留部86内の水位に基づいて第1貯留部86内の単位時間当たりの水位変動量ΔMを算出する(ステップS39)。換言すれば、第1水位センサLS1で取得された水位が基準レベルに到達して純水調整弁76が閉じてから所定時間t0が経過した場合にステップS39が行われる。続いて、判定部254は、算出された水位変動量ΔMが所定の水位変動量ΔM0以内であるか否かを判定する(ステップS40)。算出された水位変動量ΔMが所定の水位変動量ΔM0よりも大きい場合、ステップS39以降の処理を再び行う。
算出された水位変動量ΔMが所定の水位変動量ΔM0以内である場合、システムECU236は、第1供給流路82、セル部材12の第1流体流路44及び第1導出流路84が水(純水)で置換されたと判定し、水電解開始工程を行う(図14AのステップS41)。つまり、システムECU236は、電解電源50を駆動してセル部材12に電圧を付与する。
本実施形態は、以下の効果を奏する。
水電解・発電システム10は、第1流体流路44に連通する第1入口ポート部56aに接続された第1供給流路82と、第1流体流路44に連通する第1出口ポート部56bに接続されて水電解モードの際に生成水素ガスを含むガス含有水が導出される第1導出流路84と、水を第1供給流路82に導入する水導入流路81と、酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路106と、酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを第1供給流路82に導入する酸化剤ガス導入流路108と、第1導出流路84から導かれたガス含有水を気液分離する第1気液分離器80と、酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを希釈ガスとして第1気液分離器80に導く希釈流路110と、を備える。
このような構成によれば、水電解モードの際に、水導入流路81から第1供給流路82を介して第1入口ポート部56aに水を供給し、発電モードの際に、酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108及び第1供給流路82を介して第1入口ポート部56aに酸化剤ガスを供給することができる。すなわち、第1供給流路82は、水供給用の流路と酸化剤ガス供給用の流路との両方を兼ねている。これにより、水供給用の流路と酸化剤ガス供給用の流路とのそれぞれをセル部材12に接続する場合と比較して、コンパクトな構成になる。
また、水電解モードの際に酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを第1気液分離器80の希釈ガスとしても利用することができる。これにより、セル部材12に酸化剤ガスを供給するためのデバイスと第1気液分離器80に希釈ガスを供給するためのデバイスとを別々に設けた場合と比較して、コンパクトな構成になる。よって、簡単な構成で小型化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
水電解・発電システム10は、酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108への酸化剤ガスへの流通を許可するとともに酸化剤ガス流路106から希釈流路110への酸化剤ガスの流通を阻止する状態(酸化剤ガス導入流路108の流通状態)と、酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108への酸化剤ガスの流通を阻止するとともに酸化剤ガス流路106から希釈流路110への酸化剤ガスの流通を許可する状態(希釈流路110の流通状態)とに切り換え可能な第1流路切換弁130を備える。
このような構成によれば、水電解モードの際に第1流路切換弁130を希釈流路110の流通状態にすることにより、酸化剤ガスを第1気液分離器80に導入し、発電モードの際に第1流路切換弁130を酸化剤ガス導入流路108の流通状態にすることにより、酸化剤ガスをセル部材12に導入することができる。
酸化剤ガス流路106には、エアポンプ116が1つのみ設けられ、エアポンプ116から吐出された酸化剤ガスは、水電解モードの際に希釈流路110を介して第1気液分離器80に導かれ、発電モードの際に酸化剤ガス導入流路108及び第1供給流路82を介してセル部材12の第1流体流路44に導かれる。
このような構成によれば、発電に用いられる酸化剤ガスと希釈に用いられる酸化剤ガスとを1つのエアポンプ116により供給することができるため、デバイスの共有化によるコスト削減を図ることができる。
水電解・発電システム10は、熱媒体が流通する熱媒体循環流路142と、熱媒体循環流路142に熱媒体を循環させるための熱媒体ポンプ144と、を備える。熱媒体循環流路142には、水導入流路81を流通する水と熱媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器96と、酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスと熱媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器122と、が設けられている。
このような構成によれば、第1熱交換器96で水導入流路81を流通する水と熱媒体とが熱交換される(第1熱交換器96で水導入流路81を流通する水が外気と直接熱交換されない)ため、外気が氷点下である場合でも水導入流路81の水の凍結を抑えることができる。また、熱媒体循環流路142には、第2熱交換器122で酸化剤ガスから受熱する熱媒体が循環するため、水導入流路81の水の凍結を一層抑えることができる。
熱媒体循環流路142には、熱媒体を冷却するための熱媒体ラジエータ146が設けられ、熱媒体ラジエータ146から導出された熱媒体は、第2熱交換器122及び第1熱交換器96をこの順序で流通した後で熱媒体ラジエータ146に戻される。
このような構成によれば、酸化剤ガス流路106を流通する酸化剤ガスを第2熱交換器122で効率的に冷却することができる。また、外気が氷点下である場合には、第2熱交換器122で酸化剤ガスから受熱した熱媒体が熱媒体ラジエータ146に導かれる前に第1熱交換器96に流通するため、水導入流路81の水の凍結をより一層抑えることができる。
酸化剤ガス流路106における第2熱交換器122よりも下流側には、酸化剤ガスを加湿するための加湿器124が設けられ、加湿器124では、発電モードの際に、第1出口ポート部56bから導出された酸化剤排ガスにより酸化剤ガスが加湿される。
このような構成によれば、第2熱交換器122で温度調節された(冷却された)酸化剤ガスが加湿器124に導かれる。そのため、発電モードの際にセル部材12によって昇温された酸化剤排ガスが加湿器124を流通しても、セル部材12に導入される酸化剤ガスの温度及び湿度が過度に上昇することを抑えることができる。
酸化剤ガス流路106には、加湿器124の上流側と加湿器124の下流側とに連結して加湿器124を迂回する第1バイパス流路126と、加湿器124に導かれる酸化剤ガスの流量と第1バイパス流路126に導かれる酸化剤ガスの流量との比率を調節可能な流量調節弁128と、が設けられている。
このような構成によれば、水電解モードから発電モードに切り換える際に、第1バイパス流路126を流通した、乾燥した酸化剤ガスをセル部材12に導入することができるため、セル部材12の第1流体流路44の滞留水の排水処理(パージ処理)を効率的に行うことができる。
水電解・発電システム10は、第2流体流路46に水素ガスを供給する第2供給流路154と、水電解モードの際に第2流体流路46から生成水素ガスが導出され且つ発電モードの際に第2流体流路46から水素排ガスが導出される第2導出流路170と、第2導出流路170から導かれた生成水素ガス及び水素排ガスを気液分離する第2気液分離器172と、第2気液分離器172で気液分離された水素排ガスを第2供給流路154に導く水素排ガス循環流路176と、第2気液分離器172で気液分離された生成水素ガスを水素貯蔵部410に導くための貯蔵流路180と、を備える。水電解・発電システム10は、水電解モードと発電モードとで、第2導出流路170と第2気液分離器172とを共有する。
このような構成によれば、水電解モードと発電モードとで第2導出流路170と第2気液分離器172とを共有するため、水電解モード用の導出流路及び気液分離器と電解モード用の導出流路及び気液分離器を別々に設ける必要がない。そのため、簡単な構成で小型化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
水電解・発電システム10は、第2気液分離器172を流通した生成水素ガス及び水素排ガスが導出される中間導出流路174と、中間導出流路174を流通する生成水素ガスを除湿して貯蔵流路180に導く除湿流路178と、水電解モードの際に中間導出流路174から水素排ガス循環流路176への水素排ガスの流通を許可するとともに中間導出流路174から除湿流路178への水素排ガスの流通を阻止する状態(除湿流路178の流通状態)と、発電モードの際に中間導出流路174から除湿流路178への生成水素ガスの流通を許可するとともに中間導出流路174から水素排ガス循環流路176への生成水素ガスの流通を阻止する状態(水素排ガス循環流路176の流通状態)と、に切り換え可能な第2流路切換弁136と、を備える。
このような構成によれば、水電解モードの際に第2流路切換弁136を除湿流路178の流通状態にすることにより、第2気液分離器172から中間導出流路174に導出された生成水素ガスを、除湿流路178及び貯蔵流路180を介して水素貯蔵部410に導くことができる。また、発電モードの際に第2流路切換弁136を水素排ガス循環流路176の流通状態にすることにより、第2気液分離器172から中間導出流路174に導出された水素排ガスを、水素排ガス循環流路176及び第2供給流路154を介してセル部材12に導入することができる。
除湿流路178には、生成水素ガスを除湿するとともに除湿機能を回復可能に形成された第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bと、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bの生成水素ガスを流す順番が変更されるように生成水素ガスの流通方向を切り換える除湿切換部202と、が設けられている。
このような構成によれば、水電解モードの際に第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bを自己再生することができるため、第1除湿吸着部200a及び第2除湿吸着部200bの交換インターバルを長くすることができる。
水電解・発電システム10は、貯蔵流路180の生成水素ガスを水素貯蔵部410に導出し、水素貯蔵部410の水素ガスを第2供給流路154に導入するための給排流路150を備え、給排流路150には、水素貯蔵部410から給排流路150への水素ガスの流通量と給排流路150から水素貯蔵部410への生成水素ガスの流通量とを取得するガスメータ234が設けられている。
このような構成によれば、ガスメータ234の取得した情報により、水素ガスの導入量及び生成水素ガスの導出量を簡単に管理することができる。
水電解・発電システム10の運転方法は、水電解モードから発電モードに切り換える際に、セル部材12による水電解を停止する水電解停止工程と、水電解停止工程の後で、酸化剤ガス流路106から酸化剤ガス導入流路108、第1供給流路82及び第1入口ポート部56aを介して第1流体流路44に酸化剤ガスを供給するパージ工程と、パージ工程の後で、所定の負荷要求値に基づいてセル部材12を発電させる発電開始工程と、を含む。
このような方法によれば、パージ工程により、水電解モードの際に第1供給流路82とセル部材12の第1流体流路44に存在していた水(滞留水)を酸化剤ガスによって第1気液分離器80に排水することができる。これにより、水電解モードから発電モードへの切り換えを円滑及び確実に行うことができる。また、第1供給流路82の一部を水供給用の流路とパージ用の流路として利用しているため、水電解・発電システム10の小型化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
パージ工程では、第1流体流路44を流通する酸化剤ガスによって第1電極30を乾燥させる。
このような方法によれば、発電開始工程でセル部材12による発電を円滑に開始することができる。
酸化剤ガス流路106には、酸化剤ガスを加湿するための加湿器124と、加湿器124を迂回するように酸化剤ガス流路106における加湿器124の上流側と下流側とに接続された第1バイパス流路126と、が設けられている。パージ工程では、酸化剤ガスを加湿器124に流通させることなく第1バイパス流路126に流通させる。
このような方法によれば、パージ工程の際に第1電極30を効率的に乾燥させることができる。
セル部材12は、セル20を複数有し、パージ工程と発電開始工程の間に設けられて、負荷要求値よりも低い低負荷条件でセル部材12を発電させるとともに各セル20のセル電圧を取得する発電準備工程を含み、発電開始工程は、発電準備工程で取得した各セル電圧が所定値以上に到達した場合に実施される。
このような方法によれば、発電開始工程で各セル20を確実に発電させることができる。
発電準備工程では、複数のセル20のセル電圧の偏差が所定範囲内であるか否かを判定し、発電開始工程は、発電準備工程でセル電圧の偏差が所定範囲内である場合に実施される。
このような方法によれば、発電開始工程で各セル20をバランスよく発電させることができる。
水電解・発電システム10の運転方法は、発電モードから水電解モードに切り換える際に、セル部材12の発電を停止する発電停止工程と、第1気液分離器80内の水位が下限レベル以上である場合にセル部材12の水電解を開始する水電解開始工程と、を含む。
このような方法によれば、第1気液分離器80内の水位が下限レベル以上である場合に水電解を開始するため、水電解開始工程の際にセル部材12に供給される水に空気が混入することを抑えることができる。これにより、発電モードから水電解モードへの切り換えを円滑に行うことができる。
水電解開始工程では、第1気液分離器80内の単位時間当たりの水位変動量ΔMが所定の水位変動量ΔM0以下である場合にセル部材12の水電解を開始する。
このような方法によれば、水電解開始工程の際にセル部材12に供給される水に空気が混入することを一層抑えることができる。
水電解・発電システム10の除湿吸着部の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
上記実施形態は、電解質膜(28)を第1電極(30)と第2電極(32)とで挟持したMEA(22)と、前記第1電極に水及び酸化剤ガスを供給するための第1流体流路(44)と、前記第2電極に水素ガスを供給するための第2流体流路(46)とを有するセル部材(12)を備え、前記第1電極に供給された前記水を電気分解して前記第2電極に生成水素ガスを発生させる水電解モードと、前記第1電極に供給された前記酸化剤ガスと前記第2電極に供給された前記水素ガスとの電気化学反応により発電する発電モードとに切り換え可能な水電解・発電システム(10)であって、前記第1流体流路に連通する入口ポート部(56a)に接続された供給流路(82)と、前記第1流体流路に連通する出口ポート部(56b)に接続されて前記水電解モードの際に前記生成水素ガスを含むガス含有水が導出される導出流路(84)と、前記水を前記供給流路に導入する水導入流路(81)と、前記酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路(106)と、前記酸化剤ガス流路を流通する前記酸化剤ガスを前記供給流路に導入する酸化剤ガス導入流路(108)と、前記導出流路から導かれた前記ガス含有水を気液分離する気液分離器(80)と、前記酸化剤ガス流路を流通する前記酸化剤ガスを希釈ガスとして前記気液分離器に導く希釈流路(110)と、を備える、水電解・発電システムを開示している。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記酸化剤ガス流路から前記酸化剤ガス導入流路への前記酸化剤ガスへの流通を許可するとともに前記酸化剤ガス流路から前記希釈流路への前記酸化剤ガスの流通を阻止する状態と、前記酸化剤ガス流路から前記酸化剤ガス導入流路への前記酸化剤ガスの流通を阻止するとともに前記酸化剤ガス流路から前記希釈流路への前記酸化剤ガスの流通を許可する状態とに切り換え可能な流路切換弁(130)を備えてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記酸化剤ガス流路には、エアポンプ(116)が1つのみ設けられ、前記エアポンプから吐出された前記酸化剤ガスは、前記水電解モードの際に前記希釈流路を介して前記気液分離器に導かれ、前記発電モードの際に前記酸化剤ガス導入流路及び前記供給流路を介して前記セル部材の前記第1流体流路に導かれてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、熱媒体が流通する熱媒体循環流路(142)と、前記熱媒体循環流路に前記熱媒体を循環させるための熱媒体ポンプ(144)と、を備え、前記熱媒体循環流路には、前記水導入流路を流通する前記水と前記熱媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器(96)と、前記酸化剤ガス流路を流通する前記酸化剤ガスと前記熱媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器(122)と、が設けられてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記熱媒体循環流路には、前記熱媒体を冷却するための熱媒体ラジエータ(146)が設けられ、前記熱媒体ラジエータから導出された前記熱媒体は、前記第2熱交換器及び前記第1熱交換器をこの順序で流通した後で前記熱媒体ラジエータに戻されてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記酸化剤ガス流路における前記第2熱交換器よりも下流側には、前記酸化剤ガスを加湿するための加湿器(124)が設けられ、前記加湿器では、前記発電モードの際に、前記出口ポート部から導出された酸化剤排ガスにより前記酸化剤ガスが加湿されてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記酸化剤ガス流路には、前記加湿器の上流側と前記加湿器の下流側とに連結して前記加湿器を迂回するバイパス流路(126)と、前記加湿器に導かれる前記酸化剤ガスの流量と前記バイパス流路に導かれる酸化剤ガスの流量との比率を調節可能な流量調節弁(128)と、が設けられてもよい。
上記実施形態は、電解質膜を第1電極と第2電極とで挟持したMEAと、前記第1電極に水及び酸化剤ガスを供給するための第1流体流路と、前記第2電極に水素ガスを供給するための第2流体流路とを有するセル部材を備え、前記第1電極に供給された前記水を電気分解して前記第2電極に生成水素ガスを発生させる水電解モードと、前記第1電極に供給された前記酸化剤ガスと前記第2電極に供給された前記水素ガスとの電気化学反応により発電する発電モードとに切り換え可能な水電解・発電システムであって、前記第2流体流路に前記水素ガスを供給する供給流路(154)と、前記水電解モードの際に前記第2流体流路から前記生成水素ガスが導出され且つ前記発電モードの際に前記第2流体流路から水素排ガスが導出される導出流路(170)と、前記導出流路から導かれた前記生成水素ガス及び前記水素排ガスを気液分離する気液分離器(172)と、前記気液分離器で気液分離された前記水素排ガスを前記供給流路に導く循環流路(176)と、前記気液分離器で気液分離された前記生成水素ガスを水素貯蔵部(410)に導くための貯蔵流路(180)と、を備え、前記水電解モードと前記発電モードとで、前記導出流路及び前記気液分離器を共有する、水電解・発電システムを開示している。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記気液分離器を流通した前記生成水素ガス及び前記水素排ガスが導出される中間導出流路(174)と、前記中間導出流路を流通する前記生成水素ガスを除湿して前記貯蔵流路に導く除湿流路(178)と、前記水電解モードの際に前記中間導出流路から前記循環流路への前記水素排ガスの流通を許可するとともに前記中間導出流路から前記除湿流路への前記水素排ガスの流通を阻止する状態と、前記発電モードの際に前記中間導出流路から前記除湿流路への前記生成水素ガスの流通を許可するとともに前記中間導出流路から前記循環流路への前記生成水素ガスの流通を阻止する状態と、に切り換え可能な流路切換弁(194)と、を備えてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記除湿流路には、前記生成水素ガスを除湿するとともに除湿機能を回復可能に形成された複数の除湿吸着部(200a、200b)と、前記複数の除湿吸着部の前記生成水素ガスを流す順番が変更されるように前記生成水素ガスの流通方向を切り換える除湿切換部(202)と、が設けられてもよい。
上記の水電解・発電システムにおいて、前記貯蔵流路の前記生成水素ガスを前記水素貯蔵部に導出し、前記水素貯蔵部の前記水素ガスを前記供給流路に導入するための給排流路(150)を備え、前記給排流路には、前記水素貯蔵部から前記給排流路への前記水素ガスの流通量と前記給排流路から前記水素貯蔵部への前記生成水素ガスの流通量とを取得する流量取得部(234)が設けられてもよい。
上記実施形態は、電解質膜を第1電極と第2電極とで挟持したMEAと、前記第1電極に水及び酸化剤ガスを供給するための第1流体流路と、前記第2電極に水素ガスを供給するための第2流体流路とを有するセルを含むセル部材を備え、前記第1電極に供給された水を電気分解して前記第2電極に生成水素ガスを発生させる水電解モードと、前記第1電極に供給された酸化剤ガスと前記第2電極に供給された水素ガスとの電気化学反応により発電する発電モードとに切り換え可能な水電解・発電システムの運転方法であって、前記水電解・発電システムは、前記第1流体流路に連通する入口ポート部に接続された供給流路と、前記第1流体流路に連通する出口ポート部に接続されて前記水電解モードの際に前記生成水素ガスを含むガス含有水が導出される導出流路と、前記水を前記供給流路に導入する水導入流路と、前記酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路と、前記酸化剤ガス流路を流通する前記酸化剤ガスを前記供給流路に導入する酸化剤ガス導入流路と、前記導出流路から導かれた前記ガス含有水を気液分離する気液分離器と、を備え、前記水電解・発電システムの運転方法は、前記水電解モードから前記発電モードに切り換える際に、前記セル部材による水電解を停止する水電解停止工程と、前記水電解停止工程の後で、前記酸化剤ガス流路から前記酸化剤ガス導入流路、前記供給流路、前記入口ポート部、前記第1流体流路、前記出口ポート部及び前記導出流路を介して前記気液分離器に前記酸化剤ガスを流通させるパージ工程と、前記パージ工程の後で、所定の負荷要求値に基づいて前記セル部材を発電させる発電開始工程と、を含む、水電解・発電システムの運転方法を開示している。
上記の水電解・発電システムの運転方法において、前記パージ工程では、前記第1流体流路を流通する前記酸化剤ガスによって前記第1電極を乾燥させてもよい。
上記の水電解・発電システムの運転方法において、前記酸化剤ガス流路には、前記酸化剤ガスを加湿するための加湿器と、前記加湿器を迂回するように前記酸化剤ガス流路における前記加湿器の上流側と下流側とに接続されたバイパス流路と、が設けられ、前記パージ工程では、前記酸化剤ガスを前記加湿器に流通させることなく前記バイパス流路に流通させてもよい。
上記の水電解・発電システムの運転方法において、前記セル部材は、前記セルを複数有し、前記パージ工程と前記発電開始工程の間に設けられて、前記負荷要求値よりも低い低負荷条件で前記セル部材を発電させるとともに各前記セルのセル電圧を取得する発電準備工程を含み、前記発電開始工程は、前記発電準備工程で取得した各前記セル電圧が所定値以上に到達した場合に実施されてもよい。
上記の水電解・発電システムの運転方法において、前記発電準備工程では、複数の前記セルの前記セル電圧の偏差が所定範囲内であるか否かを判定し、前記発電開始工程は、前記発電準備工程で前記セル電圧の偏差が前記所定範囲内である場合に実施されてもよい。
上記実施形態は、電解質膜を第1電極と第2電極とで挟持したMEAと、前記第1電極に水及び酸化剤ガスを供給するための第1流体流路と、前記第2電極に水素ガスを供給するための第2流体流路とを有するセル部材を備え、前記第1電極に供給された水を電気分解して前記第2電極に生成水素ガスを発生させる水電解モードと、前記第1電極に供給された酸化剤ガスと前記第2電極に供給された水素ガスとの電気化学反応により発電する発電モードとに切り換え可能な水電解・発電システムの運転方法であって、前記水電解・発電システムは、前記第1流体流路に連通する入口ポート部に前記水を供給するための水導入流路と、前記第1流体流路に連通する出口ポート部に接続されて前記水電解モードの際に前記生成水素ガスを含むガス含有水が導出される導出流路と、前記水を貯留可能に形成されるとともに前記水導入流路が接続されて前記導出流路から導かれた前記ガス含有水を気液分離する気液分離器と、を備え、前記水電解・発電システムの運転方法は、前記発電モードから前記水電解モードに切り換える際に、前記セル部材の発電を停止する発電停止工程と、前記気液分離器内の水位が下限レベル以上である場合に前記セル部材による水電解を開始する水電解開始工程と、を含む、水電解・発電システムの運転方法を開示している。
上記の水電解・発電システムの運転方法において、前記水電解開始工程は、前記気液分離器内の単位時間当たりの水位変動量が所定の水位変動量以下である場合に前記セル部材の水電解を開始してもよい。