JP7219476B2 - 腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬 - Google Patents

腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬 Download PDF

Info

Publication number
JP7219476B2
JP7219476B2 JP2019563964A JP2019563964A JP7219476B2 JP 7219476 B2 JP7219476 B2 JP 7219476B2 JP 2019563964 A JP2019563964 A JP 2019563964A JP 2019563964 A JP2019563964 A JP 2019563964A JP 7219476 B2 JP7219476 B2 JP 7219476B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tranilast
tenosynovitis
tendonitis
therapeutic agent
tenosynovial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019563964A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019135363A1 (ja
Inventor
仁 平田
祐也 川本
克之 岩月
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Original Assignee
Tokai National Higher Education and Research System NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokai National Higher Education and Research System NUC filed Critical Tokai National Higher Education and Research System NUC
Publication of JPWO2019135363A1 publication Critical patent/JPWO2019135363A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7219476B2 publication Critical patent/JP7219476B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/185Acids; Anhydrides, halides or salts thereof, e.g. sulfur acids, imidic, hydrazonic or hydroximic acids
    • A61K31/19Carboxylic acids, e.g. valproic acid
    • A61K31/195Carboxylic acids, e.g. valproic acid having an amino group
    • A61K31/196Carboxylic acids, e.g. valproic acid having an amino group the amino group being directly attached to a ring, e.g. anthranilic acid, mefenamic acid, diclofenac, chlorambucil
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P21/00Drugs for disorders of the muscular or neuromuscular system

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Orthopedic Medicine & Surgery (AREA)
  • Physical Education & Sports Medicine (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Description

本発明は腱滑膜病変を主体とした疾患(腱鞘炎等)の治療薬及びその用途に関する。本出願は、2018年1月7日に出願された日本国特許出願第2018-000898号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
腱鞘炎は腱滑膜病変を主体とする疾患である。腱鞘炎の治療にはステロイド剤の投与や外科的処置(手術)が行われるが、十分な効果が得られない場合もあり、再発の確率も高い。また、糖尿病患者では血糖コントロールに影響することから、ステロイド剤の投与は慎重に行う必要がある。
一方、手根管症候群は手指のしびれや痛み、筋力低下などを来し、患者のQOL(生活の質)を著しく障害する疾患であるが、一般的な組織学的所見では、腱周囲結合組織の肥厚により手根管内圧が上昇することで正中神経障害が生じると言われている。手根管症候群に腱鞘炎を合併することも多く、その場合、特に治療が困難となる。尚、薬物療法による効果は限定的であるため、現在、手根管症候群に対しては一般的に手術療法が行われることが多く、患者への負担となっている。
特開2002-255805号公報 特開2011-6406号公報 特開平9-278653号公報 国際公開第97/29744号パンフレット
以上のように既存の治療法は十分なものとはいえず、腱鞘炎に代表される腱滑膜病変を主体とする疾患に対する、効果的且つ患者の負担の少ない治療法の開発が切望される。本発明の課題は当該ニーズに応え、腱滑膜病変を主体とする各種病態に有効な治療手段を提供することにある。
上記課題を解決すべく検討を進める中、本発明者らは既認可薬のトラニラストに着目した。トラニラストはアレルギー疾患の治療や肥厚性瘢痕・ケロイドの改善に用いられており、TGF-βや活性酸素の働きを抑えることでその薬効を発揮する。トラニラストについては、急性呼吸窮迫症候群(特許文献1)、網膜疾患(網膜血管閉塞症、糖尿病網膜症、滲出型加齢黄斑変性等)(特許文献2~4)などへの適用も検討されている。本発明者らは、トラニラストが腱滑膜病変にも有用であるとの期待の下、手根管症候群患者から採取した屈筋腱腱鞘滑膜内線維芽細胞に対するトラニラストの効果を検討した。その結果、トラニラストが細胞増殖抑制作用を示すとともに、TNF-α/IL-1β介在性のIL-6の産生を遺伝子レベル及びタンパク質レベルで抑制することが判明し、腱滑膜病変に対して有効であることが示された。また、トラニラストには細胞毒性がなく、副作用の点において治療薬として好ましい特性を有していた。一方、手根管症候群に腱鞘炎を合併した症例由来の細胞では有意にIL-6分泌量が高いことが分かり、手根管症候群の患者が腱鞘炎を発症(合併)するのを防止すること、或いは手根管症候群に腱鞘炎を合併した病態を治療することにトラニラストが有効であることが示唆された。
以下の発明は主として以上の成果に基づく。
[1]トラニラスト又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬。
[2]前記疾患が腱鞘炎である、[1]に記載の治療薬。
[3]前記疾患がばね指、ドケルバン腱鞘炎、インターセクション症候群、前・後脛骨筋腱鞘炎又は足趾腱鞘炎である、[1]に記載の治療薬。
[4]手根管症候群に腱鞘炎を合併した患者に投与されることを特徴とする、[1]に記載の治療薬。
[5]前記疾患を罹患した糖尿病患者に投与されることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載の治療薬。
[6]腱滑膜病変を主体とした疾患を罹患した患者に対して、治療上有効量のトラニラスト又はその薬学的に許容される塩を投与する治療法。
MTSアッセイの結果。12時間後(右上)、24時間後(左下)、及び48時間後(右下)の測定結果を示す。** p < 0.01, * p < 0.05 対 トラニラスト 0μM, TNF-α 0ng/ml) LDHアッセイ(細胞毒性試験)の結果。 トラニラストによるIL-6産生抑制。様々な濃度のトラニラスト存在下で1時間培養した線維芽細胞に対して、トラニラストとTNF-α(10ng/ml)又はIL-1β(10ng/ml)を同時に投与し、IL-6の産生量を調べた。**p < 0.01, * p < 0.05 対 トラニラスト 0μM, TNF-α又はIL-1β 10ng/ml トラニラストによるIL-6発現抑制。様々な濃度のトラニラスト存在下で1時間培養した線維芽細胞に対して、トラニラストとTNF-α(10ng/ml)又はIL-1β(10ng/ml)を同時に投与し、IL-6 mRNA量を調べた。**p < 0.01, * p < 0.05 対 トラニラスト 0μM IL-6濃度と患者データとの相関関係。手根管症候群患者由来線維芽細胞の培養上清中のIL-6濃度と患者データ(年齢、BMI、症状持続期間、NCV(Neurophysiological grading scale)のグレード)の間に相関関係は認められなかった。 IL-6濃度と患者データとの相関関係。手根管症候群患者由来線維芽細胞の培養上清中のIL-6濃度とばね指の合併との間に相関関係が認められた。**p < 0.01, * p < 0.05 対 コントロール。
本発明は腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬及びその用途に関する。本発明はアレルギー疾患や皮膚疾患の治療に用いられるトラニラストがIL-6の産生(分泌)を抑制し、整形外科領域においても有用であるという、驚くべき知見に基づく。理論に拘泥するわけではないが、本発明の治療薬は患部におけるIL-6の産生/分泌を抑制することによってその薬効を発揮する。
トラニラスト(N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)アントラニル酸)はケミカルメディエーター遊離抑制薬であり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患に用いられている。トラニラストにはTGF-β1、活性酸素の産生又は遊離を抑制することでコラーゲン合成を抑制する作用もあり、皮膚疾患(ケロイド・肥厚性瘢痕)の治療にも用いられる。
トラニラストの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、オレイン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩、トリエチレンジアミン、2-アミノエタノール、2,2-イミノビス(エタノール)、1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-2-D-ソルビトール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、プロカイン、N,N-ビス(フェニルメチル)-1,2-エタンジアミンなどの有機アミンとの塩、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸との塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、を挙げることができる。
トラニラスト又はその薬学的に許容される塩は既報(例えば、特公昭56-40710号公報、特公昭57-36905号公報、特公昭58-17186号公報、特公昭58-48545号公報、特公昭58-55138号公報、特公昭58-55139号公報、特公平1-28013号公報、特公平1-50219号公報、特公平3-37539号公報などを参考にできる)の製法によって製造することができる。尚、リザベン(登録商標)の名称でトラニラストの製剤(カプセル、細粒、ドライシロップ)が市販されている。
「治療薬」とは、対象の疾病ないし病態に対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、対象疾患/病態に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、対象の疾患/病態に特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。尚、対象の疾患/病態に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、治療薬に該当する。
本発明の治療薬は、腱滑膜病変を主体とした疾患の治療又は予防に用いられる。換言すれば、腱滑膜病変を主体とした疾患に罹患した患者に対して本発明の治療薬は投与される。「腱滑膜病変を主体とした疾患」とは、腱骨膜病変が病態の中心ないし基盤となる疾患であり、該当する典型的な疾患は腱鞘炎である。腱鞘炎の具体例としてばね指、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)を例示することができるが、発症部位は特に限定されず、例えば手(指、掌)、手関節、前腕、肘、足、膝等に生じる腱鞘炎が治療対象となり得る。好ましい治療対象疾患としては、ばね指、ドケルバン腱鞘炎、インターセクション症候群、前・後脛骨筋腱鞘炎及び足趾腱鞘炎を挙げることができる。
本発明の治療薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、注射剤、及び外用剤である。本発明の治療薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。また、全身的な投与と局所的な投与も対象により適応される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。本発明の治療薬には、期待される治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の治療薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%~約99重量%の範囲内で設定する。
本発明の治療薬の投与量は、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が10mg~1000mg、好ましくは50mg~800mg、特に好ましくは200mg~500mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回~数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
本発明の治療薬による治療に並行して他の医薬(例えばステロイドなどの既存の治療薬)による治療を行ったり、既存の治療手技に対して本発明の治療薬による治療を組み合わせたりしてもよい。
ところで、腱鞘炎の治療にはステロイドの投与(典型的には髄鞘内注射)が一般的である。しかしながら、糖尿病患者へのステロイドの投与は血糖値の上昇を引き起こすことがあるため、糖尿病患者の腱鞘炎の治療は苦慮する場合が多い。本発明の治療薬によれば、このような現状を打開することが可能となる。そこで、好ましい一態様では、従来のステロイド治療に代わるものとして、糖尿病患者の腱鞘炎の治療に本発明の治療薬は利用される。但し、この場合においてもステロイドの併用を妨げるものではない(本発明の治療薬とステロイドを併用した場合、ステロイドの使用量を抑えることができる)。
一方、本発明者らの検討によって(後述の実施例を参照)、手根管症候群に腱鞘炎を合併した患者では患部でのIL-6レベルが有意に高いことが明らかとなった。従って、IL-6の産生/分泌の抑制を介して薬効を発揮する本発明の治療薬による治療に適する。即ち、当該患者も好ましい治療対象である。
以上の記述から明らかな通り本願は、腱滑膜病変を主体とした疾患を罹患した患者に対して、治療上有効量のトラニラスト又はその薬学的に許容される塩を投与する治療法も提供する。
既認可薬トラニラストの腱滑膜病変に対する有効性を検討した。詳細には、手根管症候群患者から採取した屈筋腱腱鞘滑膜内線維芽細胞に対するトラニラストの効果を検証した。
1.方法
(1)細胞
手根管開放術および腱滑膜切除を行った際に得られた腱滑膜組織から線維芽細胞を回収した。継代培養によって増殖・維持し、以下の実験には2継代~5継代の細胞を用いた。
(2)MTSアッセイ
トラニラストの細胞増殖に対する効果をMTSアッセイで調べた。MTSアッセイは、細胞数に比例して吸光度が変化することを利用したアッセイである。用意した線維芽細胞を96ウェルプレートに播種した後、様々な濃度のトラニラストを添加した。トラニラストの添加から所定時間後(12時間後、24時間後又は48時間後)にMTSを投与し、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
(3)細胞毒性試験
細胞毒性試験にはLDHアッセイを用いた。細胞死が生じるとLDHが放出されるため、LDH量を計測することで細胞毒性の有無が分かる。用意した線維芽細胞を96ウェルプレートに播種した後、様々な濃度のトラニラストを添加した。トラニラストの添加から24時間後に培養上清中のLDH量を計測した。
(4)IL-6の産生抑制
手根管症候群患者由来線維芽細胞をTNF-α又はIL-1βで活性化した状態でトラニラストを投与することでIL-6が抑制されるかどうかを検証した。様々な濃度のトラニラスト存在下で1時間培養した線維芽細胞に対して、トラニラストとTNF-α(10ng/ml)又はIL-1β(10ng/ml)を同時に投与した。12時間後又は24時間培養し、培養上清を回収した。回収した培養上清中のIL-6濃度をELISA法で計測した。
一方、トラニラストが遺伝子レベルでIL-6を抑制するか否かも調べた。上記と同様に、様々な濃度のトラニラスト存在下で1時間培養した線維芽細胞に対して、トラニラストとTNF-α(10ng/ml)又はIL-1β(10ng/ml)を同時に投与した。24時間後に細胞からRNAを抽出し、逆転写反応によって得たcDNAを用い、リアルタイムRT-PCRにてIL-6 mRNAの発現量を計測した。
次に、手根管症候群患者由来線維芽細胞の培養上清中のIL-6濃度と患者データ(年齢、BMI、症状持続期間、NCV(Neurophysiological grading scale)のグレード、ばね指の合併の有無など)との間に相関関係がないか調べた。
2.結果
MTSアッセイの結果、12時間後、24時間後、48時間後のいずれの測定時点においても、トラニラスト投与群(10~250μM)では、コントロール(0μM)と比べて、濃度依存性に細胞数が有意に減少した(図1)。
細胞毒性試験では、LDH量に有意差はなく、トラニラストに細胞毒性がないことが示された(図2)。
また、手根管症候群患者由来線維芽細胞が分泌するIL-6のタンパク量はTNF-α又はIL-1βの投与によって有意に増加し、トラニラストの投与は有意にIL-6の分泌を抑制した(図3)。トラニラストは遺伝子レベルでもIL-6に対して抑制効果を示した(図4)。
手根管症候群患者由来線維芽細胞の培養上清中のIL-6濃度と患者の年齢、BMI、症状持続期間及びNCVとの間には相関は認められなかった(図5)。その一方で、ばね指を合併している症例の方が、細胞が分泌するIL-6量が多い(培養上清中の濃度が高い)ことが示された(図6)。
3.考察
手根管症候群に腱鞘炎(ばね指)を合併している場合、有意にIL-6分泌量が高いことがわかった。手根管症候群患者は高頻度(30~60%)に腱鞘炎を合併するが、腱滑膜病変が原因となる点で手根管症候群と腱鞘炎は共通していることと、腱鞘炎は滑膜病変に直結することから、滑膜での炎症が高い症例(即ちIL-6分泌量が高い症例)の方がばね指の症状が出やすいと考えられる。
トラニラストは手根管症候群患者由来線維芽細胞に対して細胞毒性を示すことなく、細胞増殖抑制効果を発揮した。また、IL-6の分泌(タンパク質レベル)及び発現(遺伝子レベル)を抑制することが示された。
以上の結果は、腱滑膜病変を主体とする疾患に対する治療薬としてトラニラストが有望であることを示す。また、手根管症候群に腱鞘炎を合併している症例に対してトラニラストが優れた薬効を発揮することを期待できる。
本発明の治療薬は、既認可薬であるトラニラスト又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする。トラニラストは使用実績が豊富にあり、副作用や禁忌など、安全性が確立されている。この点は、本発明の治療薬を臨床応用する際の大きなメリットとなる。本発明の治療薬は、従来の治療で頻用されるステロイド剤の代替として使用することができる。従って、ステロイド剤の使用に慎重にならざるを得ず、治療に苦慮する場合が多かった糖尿病患者への福音となる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (4)

  1. トラニラスト又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、ばね指、ドケルバン腱鞘炎、インターセクション症候群、前・後脛骨筋腱鞘炎及び足趾腱鞘炎からなる群より選択される腱鞘炎の治療薬。
  2. 手根管症候群にばね指、ドケルバン腱鞘炎又はインターセクション症候群を合併した患者に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の治療薬。
  3. 前記腱鞘炎を罹患した糖尿病患者に投与されることを特徴とする、請求項1又はに記載の治療薬。
  4. ばね指、ドケルバン腱鞘炎、インターセクション症候群、前・後脛骨筋腱鞘炎及び足趾腱鞘炎からなる群より選択される腱鞘炎を罹患した患者に対して、治療上有効量のトラニラスト又はその薬学的に許容される塩を投与するように用いられる、請求項1に記載の治療
JP2019563964A 2018-01-07 2018-12-21 腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬 Active JP7219476B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018000898 2018-01-07
JP2018000898 2018-01-07
PCT/JP2018/047135 WO2019135363A1 (ja) 2018-01-07 2018-12-21 腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019135363A1 JPWO2019135363A1 (ja) 2021-01-21
JP7219476B2 true JP7219476B2 (ja) 2023-02-08

Family

ID=67143644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019563964A Active JP7219476B2 (ja) 2018-01-07 2018-12-21 腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7219476B2 (ja)
WO (1) WO2019135363A1 (ja)

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
SHIOTA, N. et al.,The anti-allergic compound tranilast attenuates inflammation and inhibits bone destruction in collag,British Journal of Pharmacology,2010年,Vol.159,p.626-635,ISSN 0007-1188
加藤善之ら,手指に発生したサルコイドーシス性腱鞘炎の1例,中四整会誌,1999年,Vol.11, No.1,p.137-140,ISSN 0915-2695
水関隆也ら,リウマチ屈筋腱滑膜炎に対する滑膜切除術の成績,日整会誌,2001年,Vol.75, No.2,S314,ISSN 0021-5325
貝原信孝ら,関節リウマチの腱鞘滑膜炎と関節滑膜炎の比較検討,Connective Tissue,2004年,Vol.36, No.2,p.98,B8, ISSN 0916-572X

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019135363A1 (ja) 2019-07-11
JPWO2019135363A1 (ja) 2021-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2019008393A1 (en) COMPOSITIONS AND METHODS FOR TREATING PERIPHERAL NEUROPATHY
WO2013173317A1 (en) TREATMENT OF OBSTRUCTIVE SLEEP APNEA WITH α2-ADRENERGIC RECEPTOR AGONISTS
CN106714819A (zh) 治疗普拉德‑威利综合征的方法
AU2014249530A1 (en) Use of levocetirizine and montelukast in the treatment of anaphylaxis
TW202130360A (zh) 包括透明質酸和蛋白聚醣連接蛋白1的用於預防或治療肺部疾病的組合物
JP7219476B2 (ja) 腱滑膜病変を主体とした疾患の治療薬
TW201204360A (en) Treatment of multiple sclerosis with MASITINIB
JP6514420B2 (ja) 睡眠時無呼吸の処置のためのスルチアム
CN114588164B (zh) 瑞马***在预防围术期低体温和寒战中的应用
EP2801373B1 (en) Local administration-type pharmaceutical for improving dysphagia
ES2447829T3 (es) Combinación para el tratamiento de la osteoartritis
JP2013503908A5 (ja)
KR101086040B1 (ko) 간섬유화 및 간경화 치료 효과를 갖는 아시아트산 유도체
RU2564907C1 (ru) Способ лечения больных красным плоским лишаем
RU2742116C1 (ru) Противокоронавирусное средство для комбинированной терапии COVID-19 (SARS-CoV-2).
RU2810732C1 (ru) Композиция для профилактики или лечения заболеваний легких, содержащая гиалуронан/протеогликан-связывающий белок 1
Nakaki Drugs that affect autonomic functions or the extrapyramidal system
JP6388791B2 (ja) Vpac1受容体活性化剤及びドライマウスの予防薬又は治療薬
CN114762688A (zh) 一种含有西洛他唑的组合物在脑血管病中的应用
JP2023504876A (ja) 薬物組成物、キット及びその応用
US20230210890A1 (en) Compositions and methods of treating covid-19 with heparin or other negatively charged molecules
CN112023027A (zh) 胸腺素或其衍生物的应用和治疗快感缺乏型抑郁症的药物
EP3727366A1 (en) Method of treatment of diabetic foot ulcers
WO2021242751A1 (en) Compositions and methods for treating sars-cov-2
WO2017205610A1 (en) Use of angiotensin ii receptor agonists in the treatment and prevention of stroke

Legal Events

Date Code Title Description
A529 Written submission of copy of amendment under article 34 pct

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A5211

Effective date: 20191225

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20200916

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20201106

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211011

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221011

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221212

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20221215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230117

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230120

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7219476

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150