以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
図1は、本実施例の動作装置100、受電回路200及び送電回路300を含む装置の全体構成を示すブロック図である。受電回路200及び送電回路300は、信号伝送装置400を構成している。
動作装置100は、高電圧回路10、トランス11、整流回路12、低電圧回路13及び計測回路14を含む。
高電圧回路10は、例えば電動機、加熱装置、電気炉、化学反応層等の、高電圧の交流電圧に基づいて動作する高電圧動作回路である。高電圧回路10は、交流電源ACSから供給された交流電圧に基づいて動作を行う。交流電源ACSは、例えばAC100Vの商用電源交流を送出する電源である。
トランス11は、交流電源ACSと高電圧回路10とを接続する電圧供給ラインに並列に設けられており、交流電源ACSから送出された交流電圧の電圧レベルを、例えば100Vから5Vに変換する。
整流回路12は、例えば4つの整流用のダイオードが接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタを含む。整流回路12は、トランス11により電圧レベルが変換された交流電圧(例えば、AC5V)を全波整流及び平滑化して、直流電圧(例えば、DC5V)を生成する。整流回路12は、生成した直流電圧を低電圧回路13に供給する。
低電圧回路13は、例えばデジタル回路やCPUから構成されており、制御信号CSを供給することにより、高電圧回路10や装置全体の制御を行う。また、低電圧回路13は、送電回路300に所定の電力V1を供給する。低電圧回路13は、整流回路12から供給された直流電圧に基づいてこれらの動作を行う。
計測回路14は、交流電源ACSの電圧を抵抗R1(例えば、100kΩ)により分圧して測定する。また、計測回路14は、交流電源ACSに接続された抵抗R2(例えば1Ω)の両端電圧により交流電流を測定する。計測回路14は、測定した電圧値及び電流値をAD変換してデータとして抽出し、計測データMdとして受電側回路20に供給する。
受電回路200は、受電コイルRC及び受電側回路20から構成されている。送電回路300は、送電コイルTC及び送電側回路30から構成されている。
図2は、受電回路200の構成を示すブロック図である。
受電コイルRCは、共振キャパシタC1とともに共振回路21を構成している。受電コイルRC及び共振キャパシタC1は、送電回路300の送電コイルTCが発生する高周波(例えば、13.56MHz)の交流磁界に磁気結合し、当該交流磁界に対応した交流電圧(高周波信号)を生成して、これをラインL1及びL2に印加する。なお、共振回路21は受電コイルRC及び共振キャパシタC1が並列に接続された並列共振回路として構成されているが、直列共振回路であっても良く、両者の組み合わせであっても良い。
整流回路22は、4つの整流用のダイオードD1~D4が接続されたダイオードブリッジ及び平滑用のキャパシタSCを含む。整流回路22は、ラインL1及びL2の交流電圧(高周波電力)を全波整流及び平滑化して直流電圧に変換し、ラインL5及びL6に印加して電源及びバイアス回路23に供給する。
電源及びバイアス回路23は、通信回路26及び制御回路27に電源電圧を供給する電源回路24と、通信回路26及び制御回路27にバイアス電圧及びバイアス電流を供給するバイアス回路25と、から構成されている。
通信回路26は、電源回路24からの電源電圧、バイアス回路25からのバイアス電圧及びバイアス電流に基づいて動作し、受電コイルRCからの高周波信号をクロックとして、ASK(Amplitude Shift Keying)変調による双方向通信を行う。通信回路26は、受電コイルRCを介して送電側回路30との間で双方向通信を行う。
制御回路27は、電源回路24からの電源電圧、バイアス回路25からのバイアス電圧及びバイアス電流に基づいて動作し、通信回路26とデータ及びクロックをやり取りすることにより受電側回路20全体の動作を制御する。
図3は、送電回路300の構成を示すブロック図である。
交流信号源31は、水晶発振回路等により構成されており、13.56MHzの交流信号を生成して、駆動回路32に供給する。
駆動回路32は、交流信号源31から供給された交流信号の電力を増幅して駆動電流を生成し、ラインL3及びL4に送出する。これにより、送電コイルTCには高周波電流が流れる。
制御回路33は、通信回路34との間でデータ及びクロックのやり取りを行い、送電側回路31全体の動作を制御する。
通信回路34は、送電コイルTCを介して、ASK変調による双方向通信を行う。なお、通信回路34は、NFC(Near Field Communication)通信方式等を用いて通信を行っても良い。
送電コイルTCは、共振キャパシタC2とともに共振回路35を構成している。送電コイルTC及び共振キャパシタC2は、駆動回路32から供給された駆動電流に基づいて、交流磁界を発生させる。なお、共振回路35は送電コイルTC及び共振キャパシタC2が並列に接続された並列共振回路として構成されているが、直列共振回路であっても良く、両者の組み合わせであっても良い。
送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による通信では、例えば変調指数10%程度のASK変調を用いる。これにより、電力供給を行いつつ通信を行うことが出来る。
次に、再び図1を参照しつつ、本実施例の信号伝送装置400の動作について説明する。
まず、動作装置100が起動されると、交流電源ACSからの交流電圧AC100Vをトランス11及び整流回路12で変換することにより得られた直流電圧DC5Vに基づいて、低電圧回路13が動作を開始する。低電圧回路13は、制御信号CSを供給して、高電圧回路10を動作させる。これにより、動作装置100が動作を開始する。また、低電圧回路13は、送電回路300の送電側回路30に電力V1を供給する。
送電側回路30は、低電圧回路13から電力V1の供給を受け、13.56MHzの高周波電力を送電コイルTCに印加して、高周波の交流磁界(以下、高周波磁界と称する)を発生させる。送電コイルTC及び受電コイルRCは、発生した高周波磁界により磁界結合し、電磁誘導により高周波電力を発生させる。受電側回路20には、受電コイルRCを介して、高周波電力及び13.56MHzのクロックが供給される。
受電側回路20は、受電コイルRCを介して得た高周波電力の一部を、電力V2として計測回路14に供給する。計測回路14は、交流電源ACSの電圧及び電流を測定し、AD変換して計測データMdを生成する。計測回路14は、計測データMdを受電側回路20に供給する。
受電側回路20は、計測データMdを受電コイルRCを介して送電回路300に送信する。送電回路300の送電側回路30は、送電コイルTCを介して計測データMdを受信する。
送電側回路30は、計測データMdを低電圧回路13に供給する。低電圧回路13は、計測データMdに基づいて各種判断を行い、高電圧回路10を制御する。
以上のように、本実施例の信号伝送装置400では、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による13.56MHzの高周波磁界を用いて、計測データMdのやり取り及び計測回路14への電力供給を行う。
本実施例の信号伝送装置400によれば、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により信号伝送を行うことが出来るため、電気的絶縁を容易に実現することが出来る。従って、フォトカプラやトランスといった高価で大型の部品が不要である。
また、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により計測回路14に電力供給を行うことが出来るため、センサ回路、信号処理のためのオペアンプ回路、ADコンバータ回路、さらには演算処理を行うデジタル回路を計測回路14として配置することが出来る。従って、高度な計測及びデータ処理や、通信データの圧縮等、高機能且つ高性能な装置を実現することができる。
また、送電コイルTC、受電コイルRCはそれぞれ磁性シート等によって外界から遮断することが可能であり、外部からの干渉や情報漏洩を容易に防止することができる。
また、送電コイルTCと受電コイルRCとは着脱可能であり、互いに回転したり位置変化したりしながら動作させることも可能であるため、電気的接点を無くして安価で信頼度の高い信号接続点を作成することができる。
また、送電コイルTC及び受電コイルRCが水中に浸された状態でも動作可能であるため、海中や水中での計測データの授受にも用いることができる。
なお、磁界による計測回路14等への電力供給は、磁界結合による通信動作と並行して同時に行っても良いし、通信を行わない無変調の高周波磁界で行っても良い。
次に、送電コイルTC及び受電コイルRCの構成について、図4(a)及び(b)を参照して説明する。
送電コイルTC及び受電コイルRCは、絶縁材質の基板(例えば、基板材料FR-4、厚さ1.6mm)の両面に設けられた第1配線層及び第2配線層のうち、第1配線層に送電コイルの導体パターンを形成し、第2配線層に受電コイルの導体パターンを形成し、さらに第1配線層と第2配線層との間を接続するビアに配線を設けることにより形成されている。
図4(a)は、送電コイルTCの導体パターンを基板の第1配線層側から上面視した場合の平面図、及び受電コイルRCの導体パターンを基板の第2配線層側から上面視した場合の平面図である。図4(b)は、図4(a)の破線部分における送電コイルTC及び受電コイルRCの断面の斜視図である。
送電コイルTC及び受電コイルRCは、例えば35μm厚の銅箔からなる導線が、2ターン以上(1巻きを超える巻き数)の渦巻形状に形成された導体パターンを有する。送電コイルTCの導体パターンの端部は、送電側回路30に接続されている。受電コイルRCの導体パターンの端部は、受電側回路20に接続されている。
送電コイルTCは、図4(a)に示すように、共振回路を構成する共振キャパシタC2(図示せず)に一端が接続された連続した導線からなる配線部WP1と、共振キャパシタC2に第1の端部が接続された渦巻形状の連続する導線からなる渦状部SP1と、を有する。渦状部SP1は、渦状部SP1の第2の端部及び配線部WP1の他端(図中、×印で示す)の間を横切る導線部分を有する。
また、送電コイルTCは、渦状部SP1の第2の端部と配線部WP1の他端とを接続する接続部を有する。当該接続部は、第2配線層に設けられた連続する導線部分CP1と、第1配線層と第2配線層との間に設けられた一対のビアを通るビア配線部VPと、から構成されている。すなわち、導線部分CP1及びビア配線部VPにより、送電コイルTCの布線の交差が実現されている。
受電コイルRCは、共振回路を構成する共振キャパシタC1(図示せず)に一端が接続された連続した導線からなる配線部WP2と、共振キャパシタC1に第1の端部が接続された渦巻形状の連続する導線からなる渦状部SP2と、を有する。渦状部SP2は、渦状部SP2の第2の端部及び配線部WP2の他端(図中、×印で示す)の間を横切る導線部分を有する。
また、受電コイルRCは、渦状部SP2の第2の端部と配線部WP2の他端とを接続する接続部を有する。当該接続部は、図4(a)に示すように第1配線層に設けられた連続する導線部分CP2と、図4(b)に示すように第1配線層と第2配線層との間に設けられた一対のビアを通るビア配線部VPと、から構成されている。すなわち、導線部分CP2及びビア配線部VPにより、受電コイルRCの布線の交差が実現されている。
送電コイルTCの接続部の導線部分CP1は、第2配線層において受電コイルRCの渦状部SP2とは離間した位置(すなわち、絶縁された位置)に設けられている。同様に、受電コイルRCの接続部の導線部分CP2は、第1配線層において送電コイルTCの渦状部SP1とは離間した位置(すなわち、絶縁された位置)に設けられている。
また、送電コイルTCの接続部の導線部分CP1は、第2配線層において受電コイルRCの渦状部SP2の内径より内側に配置されている。受電コイルRCの接続部の導線部分CP2は、第1配線層において送電コイルTCの渦状部SP1の内径より内側に配置されている。
送電コイルTCの渦状部SP1及び受電コイルRCの渦状部SP2は、導線部分CP1及び導線部分CP2が位置する部分を除いて、第1配線層、基板及び第2配線層を介して重なり合うように配置されている。
送電コイルTC及び受電コイルRCは、13.56MHzの高周波磁界を扱うコイルであり、0.5~1マイクロヘンリー程度のインダクタンスを有することが好ましい。その理由は、コイルのリアクタンスが42.6~85.2Ω程度で、電子機器でよく用いられる5V程度の電源電圧で扱うのに適しているからである。一方、コイルの外径サイズとしては、装置サイズの都合から20mm程度であることが好ましい。これらの条件を満たすためには、コイルは2ターン以上(1巻きを超える巻き数)の渦巻形状に形成されていることが好ましく、絶縁しながら交差することが必要となる。
本実施例の送電コイルTC及び受電コイルRCでは、渦状部(SP1、SP2)とは反対側の配線層に設けられた導線部分(CP1、CP2)と一対のビアに設けられたビア配線部(VP)により、絶縁しながらの交差が実現されている。この構成によれば、4層等の多層の基板を用いず、安価な2層のプリント基板で絶縁しながらの交差を実現することができる。
また、各々のコイルの交差する領域(以下、交差領域と称する)において若干の乱れが発生するが、それぞれの自己インダクタンスと2つのコイルの結合係数の若干の変動のみで、動作や特性への影響は十分に小さい。
また、送電コイルTCと受電コイルRCとの絶縁耐量は、表裏の導体間に挟まる絶縁基板の厚さと、第1配線層における送電コイルTCの導体パターン(渦状部SP1、配線部WP1)と受電コイルRCの導体パターン(導線部分CP2)との面方向の距離と、第2配線層における受電コイルRCの導体パターン(渦状部SP2、配線部WP2)と送電コイルTCの導体パターン(導線部分CP1)との面方向の距離と、をそれぞれ安全なサイズに設定することにより、確保することができる。この際、所望の絶縁距離に応じて、それぞれの層の送電コイルTCの導体パターンと受電コイルRCの導体パターンとの間隔を広くとることが可能である。
また、交差する領域(導線部分CP2、CP1)をそれぞれ渦状部(SP1、SP2)の内径よりも内側に設けているため、専有面積を増加させることなく、小型の装置を実現することができる。
図5は、送電コイルTC及び受電コイルRCの導体パターンと共振キャパシタC1及びC2との位置関係を示す平面図である。
配線部WP1及び渦状部SP1の共振キャパシタC2との接続ライン(図では、配線部WP1と渦状部SP1とが並走する直線部分)には、共振キャパシタC2をはんだ付け接続するためのランドパタンC2a及びC2bが設けられている。ランドパタンC2a及びC2bは、送電コイルTCのコイル部分の配線間隔の3倍以内の間隔に設けられている。
同様に、配線部WP2及び渦状部SP2の共振キャパシタC1との接続ライン(図では、配線部WP2と渦状部SP2とが並走する直線部分)には、共振キャパシタC1をはんだ付け接続するためのランドパタンC1a及びC1bが設けられている。ランドパタンC1a及びC1bは、受電コイルRCのコイル部分の配線間隔の3倍以内の間隔に設けられている。
送電コイルTC及び受電コイルRCの導体パターンが層間で添う長さが長いほど、相互に鎖交する磁力線が増えて結合係数を大きくすることができる。また、各コイルと各共振キャパシタとの経路には、共振時に大きな電流が流れる。キャパシタを直近に配置することにより、自己鎖交磁力線を減らして結合係数の低下を防ぐことができる。
なお、上記とは異なり、図6に示すように、交差領域の一方をコイルの内径の内側(すなわち、渦状部の内側)に配置し、他方をコイルの外径の外側(すなわち、渦状部の外側)に配置しても良い。例えば、プリント基板のいずれかの面において絶縁確保のための面方向の距離を大きくとる必要がある場合に、交差領域をコイルの外径の外側に配置することにより、内側に配置する場合よりも絶縁距離を大きくとりつつ、専有面積の増加を最低限に留めることが出来る。
また、図7(a)及び(b)に示すように、交差領域の双方をコイルの外径路の外側に配置しても良い。プリント基板の双方の面において絶縁確保のための面方向の距離を大きくとる必要がある場合には、交差領域をコイルの外径の外側に配置することにより、内側に配置する場合よりも絶縁距離を大きくとりつつ、専有面積の増加を最低限に留めることが出来る。
なお、第1配線層に受電コイルRCを形成し、第2配線層に送電コイルTCを形成しても良い。
また、図4(a)及び(b)、図5、図6、図7(a)及び(b)では送電コイルTC及び受電コイルRCが長方形の形状を有する例を示しているが、屈曲部を曲線としても良く、正方形、円形、楕円形、多角形等としても良い。
また、導体層を第1配線層及び第2配線層の2層としているが、2層以上の多層基板の複数の導体層を用いても良い。例えば、4層の導体層のうち中間の2つを配線層として用いることにより、各コイルの表面を絶縁することができる。
図8は、本実施例の信号伝送装置410の構成を示すブロック図である。信号伝送装置410は、受電回路210がクランプ回路28を有し、送電回路310が電流測定回路36を有する点で実施例1の信号伝送装置400と異なる。
クランプ回路28は、ラインL5とL6との間の整流回路22の出力側に設けられている。クランプ回路28は、ツェナーダイオード及び接続スイッチを含む。クランプ回路28は、制御回路27からの負荷切替信号の供給に応じて接続スイッチの状態をオン又はオフに切り替える。これにより、整流回路22の負荷状態が変化し、高周波磁界の状態が変化する。すなわち、クランプ回路28は、負荷切替信号に応じて負荷状態を切り替える負荷切替回路である。
電流測定回路36は、駆動回路32に設けられている。電流測定回路36は、ラインL3及びL4を流れる電流に基づいて、高周波磁界の変化を検出し、検出結果を制御回路33に通知する。
クランプ回路28及び電流測定回路36の動作により、受電回路210から送電回路310に通知を行うことができる。このタイミング通知の動作を含む送電回路及び受電回路の動作について、図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、送電回路310が起動し、送電コイルTCから高周波磁界を発生させる(ステップS101)。送電回路310は、受電回路210に電力供給及びクロック供給を行う。受電回路210は、電力供給及びクロック供給に応じて起動する(ステップS201)。
送電回路310及び受電回路210は、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合を介して双方向通信により、通信メッセージの送受信を行う。送電回路310は、通信メッセージの送受信と並行して、電力供給及びクロック供給を継続する。そして、送電回路310及び受電回路210の各々は、通信メッセージの送受信により得た設定情報に基づいて、初期設定を行い、正常に動作を行える状態であるか否かを診断する正常性診断を行う(ステップS102、S202)。
受電回路210の制御回路27は、高周波磁界が定常状態であるか否かを判定する(ステップS203)。定常状態ではないと判定すると(ステップS203:No)、ステップS210に移行し、動作を停止する。
一方、定常状態であると判定すると(ステップS203:Yes)、制御回路27は、タイミング通知が必要であるか否かを判定する(ステップS204)。
タイミング通知が必要であると判定すると(ステップS204:Yes)、制御回路27は、クランプ回路28を制御してオン又はオフの状態を切り替える(ステップS205)。これにより、高周波磁界が変動する。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界が定常状態か否かを判定する(ステップS103)。定常状態ではないと判定すると(ステップS103:No)、ステップS109に移行し、高周波磁界及び装置の動作を停止する。
一方、定常状態であると判定すると(ステップS103:Yes)、電流測定回路36は、高周波磁界の変動による電流変動を検出し、検出結果を制御回路33に通知する(ステップS104)。
送電回路310の制御回路33は、受電回路210との間での情報授受(通信)が必要か否かを判定する(ステップS105)。同様に、受電回路210の制御回路27は、送電回路310との間での情報授受(通信)が必要か否かを判定する(ステップS206)。
受電回路210との間での情報授受が必要であると判定すると(ステップS105、S206:Yes)、送電回路310及び受電回路210は、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合により通信動作を行い、受電回路210との間での通信メッセージを含む情報の授受を行う(ステップS106、S207)。送電回路310は、通信動作と並行して受電回路210に電力供給及びクロック供給を行う。
受電回路210は、送電回路310との間での情報授受が必要でないと判定すると(ステップS206:No)、待機動作を行う(ステップS208)。送電回路310は、受電回路210との間での情報授受が必要でないと判定すると(ステップS105:No)、送電コイルTCによる高周波磁界の発生を継続する(ステップS107)。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続するか否かを判定する(ステップS108)。同様に、受電回路210の制御回路27は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続するか否かを判定する(ステップS209)。
送電回路310の制御回路33は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続すると判定すると(ステップS108:Yes)、ステップS103に戻って再び高周波磁界が定常状態か否かの判定を行う。同様に、受電回路210の制御回路27は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続すると判定すると(ステップS209:Yes)、ステップS203に戻って再び高周波磁界が定常状態か否かの判定を行う。
送電回路310は、高周波磁界による電力供給及びクロック供給の動作を継続しないと判定すると(ステップS108:No)、高周磁界を停止し、当該動作を停止する(ステップS109)。受電回路210は、電力供給及びクロック供給を受けるための待機動作を継続しないと判定すると(ステップS209:No)、当該動作を停止する(ステップS210)。
以上の動作により、受電回路210から送電回路310に、任意のタイミングで通知を行う。
本実施例の信号伝送装置410によれば、クランプ回路28及び電流測定回路36の動作により、送電コイルTC及び受電コイルRCの磁界結合による通信とは別に、任意のタイミングで受電回路210から送電回路310に通知を行うことができる。その際、クランプ回路28の電圧を電源及びバイアス回路23が動作可能な電圧(例えば、3V)に確保することにより、受電回路210から送電回路310への通知を行いつつ、送電コイルTC及び受電コイルRCを用いた通信動作を並行して行うことができる。
本実施例の信号伝送装置は、例えば高電圧回路10のトランジスタやサイリスタのゲート制御のタイミングに時刻の精度が必要な場合に特に有効である。
図10は、本実施例の電池監視装置500の構成を示すブロック図である。電池監視装置500は、例えば電気自動車等の電池を動力とする装置に設けられ、直列接続された4つの電池セル72a~72d(以下、これらを総称して電池セル群とも称する)の充電状態を監視する装置である。
電池セル72aには、受電側回路71aが接続されている。受電側回路71aには、受電コイルRC1が接続されている。受電コイルRC1、受電側回路71a及び電池セル72aは、受電回路700aを構成している。同様に、電池セル72b~72dの各々には、対応する受電側回路(71b~71d)及び受電コイル(RC2~RC4)が設けられ、受電回路700b~700dが構成されている。以下の説明では、受電回路700a~700dに共通の構成を説明する場合、これらを受電回路700とも称する。
図11は、受電側回路71aを含む受電回路700aの詳細を示すブロック図である。受電側回路71aと電池セル72aとの間には、電池セル72aの電圧値及び温度を測定する計測回路73が設けられている。なお、受電回路700b~700dも同様の構成を有する。
計測回路73は、電池セル72aの電圧を抵抗R3により分圧して測定する。また、計測回路73は、サーミスタT1により電池セル72aの温度を測定する。また、計測回路73は、電池セル72aを強制放電するためのスイッチSW0及び抵抗R4を有し、受電側回路71aの制御に応じてスイッチSW0をオンにすることにより放電を行う。
受電側回路71aは、電源回路74、通信回路75、メモリ76、ADC(Analog Digital Converter)77及び制御回路78を含む。
電源回路74は、送電コイルTC1及び受電コイルRC1の磁界結合により供給された電力に基づいて、受電側回路71aの各部に電源電圧を供給する。
通信回路75は、受電コイルRC1を介してASK変調による情報の送受信を行う。通信回路75は、例えば計測回路73により得られた監視データを受電コイルRC1を介して送電側回路61に向けて送信する。
メモリ76は、不揮発性メモリであり、通信のための制御情報(例えば、NFC通信のID)やアドレス情報の他、電池セル72aのシリアル番号や履歴情報等を保持する。
ADC77は、計測回路73が測定した電圧値及び温度をAD変換して監視データを生成する。
制御回路78は、受電側回路71aの各部の制御を行う。また、制御回路78は、抵抗R4及びスイッチSW0を介した電池セルの強制放電を制御する。
再び図10を参照すると、電池監視装置500は、送電回路600及びこれに接続される送電コイルTC1~TC4を有する。送電コイルTC1~TC4は、それぞれ受電コイルRC1~RC4に対応する位置(すなわち、磁界結合する位置)に設けられている。
送電回路600は、送電側回路61及びスイッチSW1~SW8を有する。
送電側回路61は、スイッチSW1~SW8のオンオフを制御して4つの送電コイルTC1~TC4のいずれか1つを選択し、13.56MHzの高周波信号を送出して、選択した送電コイルから高周波磁界を発生させる。選択された送電コイルに結合している受電コイル(RC1~RC4のいずれか)には電磁誘導により高周波起電力が発生する。
送電側回路61は、高周波起電力が発生した当該受電コイルに接続されている受電側回路(71a~71dのいずれか)に電力及びクロックを供給して動作させ、双方向通信機能により、制御情報及び監視データを送受信する。送電側回路61は、上位制御装置(図示せず)からデジタル信号の入出力(図中、デジタルI/Oとして示す)を受け、これらの動作を行う。
図12は、本実施例の電池監視装置の別の構成例を示すブロック図である。受電側回路71aの電源回路74からの電源供給ラインが、スイッチSW9を介して電池セル72aに接続されている。スイッチSW9は、制御回路78によりオン又はオフに切り替えがなされる。
制御回路78は、スイッチSW9をオンに制御するとともに、電源回路74の電圧及び電流を設定する。これにより、受電側回路71aは、高周波磁界から得た電力により電池セルの充電を行うことができる。
図10に示すように複数の電池セルが直列接続されている場合、それぞれの電池セルの充電状態を揃える必要がある。従来は、電圧測定により充電状態にばらつきがあると判定された場合には、電圧が高いセルを強制的に放電させて充電状態を揃えていた。このため、例えばひとつの電池セルのみ電圧が低い場合には、他の全ての電池セルを放電させなければならず、エネルギーの浪費を招くとともに係る対処のために余計な時間が必要になってしまう。
しかし、この構成によれば、電圧の低いセルに追加充電を行うことが可能である。従って、電圧ばらつきの状態に応じて、電圧が高いセルが少数である場合にはそれらを放電させ、電圧が低いセルが少数である場合にはそれらを充電させることにより、エネルギーや時間を浪費することなく、各電池セルの充電状態を揃えることができる。
かかる構成の電池監視装置において、送電側回路61は、スイッチSW1~SW8のオンオフを切り替えることにより、4つの送電コイルTC1~TC4を順次選択し、それぞれ対応する受電側回路71a~71dを順次起動・動作させて情報の授受を行うことにより、電池監視動作を行う。かかる電池監視動作について、図13のフローチャートを参照して説明する。
まず、電池監視装置500が起動し、装置の初期設定を行う(ステップS301)。
次に、送電側回路61は、スイッチSW1及びSW2をオンとし、他のスイッチSW3~SW8をオフとすることにより、送電コイルTC1を選択して接続し、送電コイルTC1から高周波磁界を発生させる。
送電側回路61は、送電コイルTC1及びこれに磁界結合した受電コイルRC1を介して、受電回路700aに電力及びクロックを供給する。受電回路700aでは、電池セル72aの電圧及び温度を測定し、監視データを取得する。受電側回路71aは、監視データをNFC通信のIDやその他の情報とともに送電側回路61に送信する。送電側回路61は、これらの監視データを含む情報を受信して取込み、メモリ(図示せず)等に記憶させる(ステップS302)。
送電側回路61は、スイッチSW3及びSW4をオンとし、他のスイッチSW1、SW2及びSW5~SW8をオフとすることにより、送電コイルTC2を選択して接続し、送電コイルTC2から高周波磁界を発生させる。送電側回路61は、ステップS302と同様、電力及びクロックを供給して受電回路700bを動作させ、電圧及び温度の情報を含む監視データと電池セル72bに関するその他の情報とを受信し、メモリ等に記憶させる(ステップS303)。
送電側回路61は、スイッチSW5及びSW6をオンとし、他のスイッチSW1~SW4、SW7及びSW8をオフとすることにより、送電コイルTC3を選択して接続し、送電コイルTC3から高周波磁界を発生させる。送電側回路61は、ステップS301及びS302と同様、電力及びクロックを供給して受電回路700cを動作させ、電圧及び温度の情報を含む監視データと電池セル72cに関するその他の情報とを受信し、メモリ等に記憶させる(ステップS304)。
送電側回路61は、スイッチSW7及びSW8をオンとし、他のスイッチSW1~SW6をオフとすることにより、送電コイルTC4を選択して接続し、送電コイルTC4から高周波磁界を発生させる。送電側回路61は、ステップS301、S302及びS303と同様、電力及びクロックを供給して受電回路700dを動作させ、電圧及び温度の情報を含む監視データと電池セル72dに関するその他の情報とを受信し、メモリ等に記憶させる(ステップS305)。
送電側回路61は、取得した監視データに基づいて、電池セル72a~72dが正常かどうか(すなわち、異常がないか)を判定する(ステップS306)。正常でない(すなわち、異常がある)と判定すると(ステップS306:No)、送電側回路61は、異常がある電池セルの情報を上位制御装置(図示せず)に報告し(ステップS307)、ステップS314に移行する。
一方、正常である(すなわち、異常がない)と判定すると(ステップS306:Yes)、送電側回路61は、監視データに基づいて、電池セル72a~72dの電圧の平均値を算出する。送電側回路61は、電池セル72a~72dの各々の電圧と平均値とを比較し、平均値よりも所定の許容幅を超えて電圧が高いものの数(高電圧セル数)をM、平均値よりも所定の許容幅を超えて電圧が低いものの数(低電圧セル数)をNに設定する(ステップS308)。
送電側回路61は、M及びNがいずれもゼロであるか否か(すなわち、いずれの電池セルの電圧値も平均値との差が許容幅以内に収まっているか否か)を判定する(S309)。M及びNがいずれもゼロであると判定すると(ステップS309:Yes)、ステップS314に移行する。
一方、M及びNのいずれかがゼロではないと判定すると(ステップS309:No)、送電側回路61は、NがMよりも少ないか否か、すなわち平均値よりも所定の許容幅を超えて電圧が低いものの数が電圧の高いものの数よりも少ないか否かを判定する(ステップS310)。
NがM以上である(NがMよりも少なくはない)と判定すると(ステップS310:No)、送電側回路61は、平均値よりも所定の許容幅を超えて電圧が高いM個の電池セルの強制放電を指示する放電指示を、当該電池セルに対応する送電コイルを介して送信する。強制放電の対象である電池セルに接続された受電側回路は、スイッチSW0をオンさせることにより抵抗R4を電池セルに接続し、当該電池セルを強制放電する(ステップS311)。
一方、NがMよりも少ないと判定すると(ステップS310:Yes)、送電側回路61は、平均値よりも所定の許容幅を超えて電圧が低いN個の電池セルに対応する送電コイルから高周波磁界を発生させ、当該送電コイルに対応する受電コイルに電力を供給する。受電側回路は、供給された電力に基づいて電池セルを充電する(ステップS312)。
送電側回路61は、電池監視動作を継続するか否かを判定する(ステップS313)。継続すると判定すると(ステップS313:Yes)、ステップS302に戻り、ステップS302~S305の監視動作を再び実行する。
電池監視動作を継続しないと判定すると(ステップS313:No)、送電側回路61は高周波磁界の発生を停止させ、電池監視装置500の動作を停止させる。
以上の動作により、スイッチの切り替えにより対象となる電池セルを切り替えつつ、電池セル群の電池監視及び強制放電を行う。
本実施例の電池監視装置500によれば、互いに電位差のある複数の電池セルの情報を、当該複数の電池セルに接続された受電側回路と、これらとは別の電位(例えば電気自動車の場合、車両の車体電位)の送電側回路との間でやり取りすることができる。電池セルの電位は充放電により大きく変動するが、情報のやり取りを安定して行うことが出来る。
また、送電回路600と受電回路700とは電気的に絶縁されるため、各電池セルからのリーク電流はなく、エネルギーが浪費されない。
また、送電コイル及び受電コイルは近接配置されれば良く、多少のずれや汚れは許容できるため、電気的接点を設ける場合と比べて接続信頼性に優れ、安価である。
また、送電コイルと受電コイルとがはずれてしまっていることは、送電コイルの高周波電流を測定することで検知するころができるため、接続信頼性が高い。また、高周波磁界を用いるため、極性や向きの制約がない。
また、高周波磁界の範囲は近傍のみにとどまり、外部からの悪意の操作アクセスや情報漏洩を防止できる。また、磁性シートで遮蔽することにより、情報漏洩等の防止をさらに強化することができる。
また、受電側回路に対し高周波磁界により電力供給を行うため、電池セルが完全に放電していても動作が可能である。
受電回路700を送電回路600と切り離した状態で、受電コイルにNFCリーダーライターのアンテナコイルを結合させることにより、受電側回路を起動・動作させて不揮発性メモリの情報の読み書きや電池セルの観測、制御を行うことができる。これにより、受電回路700を含む電池パックを単体でNFCタグとして用いることができる。
また、送電側回路61においてスイッチSW1~SW8をすべてオフとすることにより、全ての送電コイル(TC1~TC4)を切り離すことが可能である。従って、送電コイルと受電コイルとが互いに結合可能な位置に配置されている場合でも、他のリーダーライターの送電コイルから電池セルにアクセスすることが可能である。
また、受電側回路には数十ミリワット程度の電力を供給できるため、電圧や電流を測定するOPAMP回路やADコンバータを配置し、高度なデジタル処理やプロセッサ処理を行わせることも可能である。また、やりとりする情報や記録するデータを暗号化することも可能である。また、電池セルの強制放電の制御やPWM動作も可能であり、LEDや液晶による表示も可能である。
受電側回路には、磁界が弱いときには電池セル側の接続を遮断する回路を設けることにより、予期せぬ磁界結合があった場合でも誤動作を防ぐことができる。
なお、通信動作と電力供給動作とでは、受電コイルを含む共振回路に接続される負荷抵抗が大きく変動するため、共振キャパシタを切り替える必要がある。また、起動時には負荷抵抗が大きいため、共振回路を並列共振回路として動作させるため並列キャパシタを大きくしておく必要がある。
図14は、受電側回路が、通信動作と電力供給動作との切り替えを行うための共振切替回路を有する場合の回路例を示す図である。
受電コイルRC及び共振キャパシタCaからなる共振回路81と整流回路82との間に、共振切替回路83が接続されている。共振切替回路83は、キャパシタCb、トランジスタQ1、トランジスタQ2、及び抵抗Raを有する。
キャパシタCbは、共振回路81と整流回路82とを接続する接続ラインの一方であるラインL11に一端が接続されている。トランジスタQ1は、例えばNチャネル型のMOSトランジスタであり、ベースが接地され、ドレインがキャパシタCbの他端に接続されている。トランジスタQ2は、例えばNチャネル型のMOSトランジスタであり、ベースが接地され且つドレインがトランジスタQ1のゲートに接続されている。抵抗Raは、一端がキャパシタCbの一端に接続され、他端がトランジスタQ1のゲート及びトランジスタQ2のドレインの接続端に接続されている。なお、トランジスタQ1及びQ2の両方あるいはいずれかは、NPN型バイポーラトランジスタでも良い。
共振切替回路83による共振キャパシタの切り替えは、制御回路78から共振切替信号RSがトランジスタQ2のゲートに供給されることにより行われる。
起動時には、共振切替信号RSはLレベル(グランドレベル)であり、トランジスタQ2はオフである。磁界が印加されると抵抗Raを通して電荷が供給され、トランジスタQ1のゲート電位が上昇し、トランジスタQ1はオンとなる。これにより、キャパシタCbが共振回路81に接続され、並列キャパシタンスが大きくなる。
共振切替信号RSをHレベルとすることにより、トランジスタQ2がオンとなり、トランジスタQ1のゲート電位がグランド電位に引き下ろされるため、トランジスタQ1がオフとなる。これにより、共振回路81からキャパシタCbが切り離されて共振キャパシタンスが減少し、電力伝送に適した状態となる。なお、抵抗Raは整流回路82の出力とトランジスタQ1のゲートとの間に接続しても良く、磁界印加により同様に電荷供給して各トランジスタをオンにすることができる。
図15は、本実施例の電池監視装置の別の構成例である電池監視装置510の構成を示すブロック図である。送電側回路61は、スイッチSW11~SW14を介して送電コイルTC11及びTC12に接続されている。送電コイルTC11は、受電コイルRC1及びRC2と磁界結合可能な位置に配されている。送電コイルTC12は、受電コイルRC3及びRC4と磁界結合可能な位置に配されている。
送電側回路61は、スイッチSW11~SW14のオンオフを制御して2つの送電コイルTC11又はTC12のいずれかを選択し、13.56MHzの高周波信号を送出して、選択した送電コイルから高周波磁界を発生させる。
送電コイルTC11が選択された場合、受電コイルRC1又はRC2のいずれか一方と磁界結合する。送電コイルTC12が選択された場合、受電コイルRC3又はRC4のいずれか一方と磁界結合する。これにより、受電コイルRC1~RC4のいずれかに、電磁誘導により高周波起電力が発生する。
この構成によれば、図10に示した電池監視装置と比較して、送電コイルの個数及び配線数を減らすことができる。
次に、図10で示した電池監視装置500におけるアンテナ構造(コイル構造)について、図16(a)及び(b)を参照して説明する。以下の説明では、送電コイルを送電アンテナ、受電コイルを受電アンテナとも称する。
図16(a)に示すように、受電アンテナは、電池パックBPの側面に配置されている。電池パックBPは電池セル72a~72dを格納しており、例えば直方体の形状を有する。各受電アンテナには、集積回路として構成された受電側回路が接続されている。
送電アンテナは、帯状、テープ状、ひも状、板状などの扁平な絶縁物媒体IMの内部あるいは表面に渦巻き状の導体パターンにより構成され、線状の導体パターンにより送電側回路の選択スイッチに接続されている。各送電アンテナは、それぞれ独立して送電側回路に接続されていても良く、途中から枝分かれする形で送電側回路に接続されていても良い。
図16(b)に示すように、それぞれの送電アンテナは、対応する受電アンテナに重なるように配置される。送電アンテナ及び受電アンテナは、ねじ止め、枠構造への組み込み、粘着テープ、永久磁石による吸着などの各種手段により固定される。
この構成によれば、電池パックに配置する受電コイルが突起物とならない。受電コイル周辺は非磁性体、絶縁体であることが望ましいが、若干の磁性や導電性があっても動作することができる。
また、着脱が容易であり、電気的接点を設ける場合と比べて接続信頼性に優れている。また、送電コイルと受電コイルとの間に多少の空隙や汚れ、濡れがあっても動作することができる。
また、接続外れや接続組み合わせの誤りがあっても、NFC通信のID確認により異常を検出することができる。
また、自動製造ラインに適しており、高周波信号であるため、コイルの巻き方向がいずれの方向であっても動作することが可能である。
次に、図15で示した電池監視装置におけるアンテナ構造(コイル構造)について、図17を参照して説明する。
2つの受電コイルが、隣接する2つの電池パック(BP1とBP2、BP3とBP4)の隣接する面(例えば、底面及び上面)上に設けられ、互いに向かい合うように配置されている。2つの受電コイルの間(すなわち、2つの電池パックの隣接する面の間)には、1つの送電コイルが挟まれるように配されている。
この構成によれば、面積や体積を増大させることなく送電コイル及び布線を削減し、安価で小型且つ軽量の装置を実現することができる。
また、送電コイルの構成としては、図18(a)に示すように、2つの送電コイルTC1及びTC2を直列に接続して構成であっても良く、図18(b)に示すように、2つの送電コイルTC1及びTC2を並列に接続した構成であっても良い。
なお、送電側回路61と各送電コイルとの間の接続ライン(信号経路)に、送電コイルに直列にキャパシタを接続した構成としても良い。図19は、かかる構成を有する電池監視装置520の構成を示すブロック図である。
送電コイルTC1の一端とスイッチSW1との間にはキャパシタC11aが接続され、送電コイルTC1の他端とスイッチSW2との間にはキャパシタC11bが接続されている。送電コイルTC2の一端とスイッチSW3との間にはキャパシタC12aが接続され、送電コイルTC2の他端とスイッチSW4との間にはキャパシタC12bが接続されている。送電コイルTC3の一端とスイッチSW5との間にはキャパシタC13aが接続され、送電コイルTC3の他端とスイッチSW6との間にはキャパシタC13bが接続されている。送電コイルTC4の一端とスイッチSW7との間にはキャパシタC14aが接続され、送電コイルTC4の他端とスイッチSW8との間にはキャパシタC14bが接続されている。
また、各受電コイルと受電側回路との間の接続ライン(信号経路)に、受電コイルに直列にキャパシタを接続した構成としても良い。図20は、かかる構成を有する電池監視装置530の構成を示すブロック図である。
受電コイルRC1と受電側回路71aとの間には、キャパシタC21a及びC21bが接続されている。受電コイルRC2と受電側回路71bとの間には、キャパシタC22a及びC22bが接続されている。受電コイルRC3と受電側回路71cとの間には、キャパシタC23a及びC23bが接続されている。受電コイルRC4と受電側回路71dとの間には、キャパシタC24a及びC24bが接続されている。
送電コイル及び受電コイルには13.56MHzの高周波電流が流れているが、キャパシタを直列接続しても高周波電流は導通するため、キャパシタが直列接続されていない場合と同様に動作することが可能である。
このように、送電コイル又は受電コイルの信号経路にキャパシタを直列接続することにより、直流電流を阻止することができる。送電コイルと受電コイルとは本来絶縁されているが、媒体破壊やひび割れへの水分侵入等により絶縁破壊が起こった場合でも、キャパシタによる直流電流素子により、漏電や短絡による火災や感電事故を防ぐことができる。
本実施例の電池監視装置は、送電回路が二重化されている点で、実施例3の電池監視装置と異なる。
図21は、本実施例の電池監視装置800の構成を示すブロック図である。電池監視装置800は、第1の送電回路600aと、第2の送電回路600bと、を有する。
第1の送電回路600aは、送電側回路61a及びスイッチSW1a~SW8aを有する。送電側回路61aは、スイッチSW1a~SW8aのオンオフに応じて、送電コイルTC1a、TC2a、TC3a、及びTC4aのいずれかに接続される。
第2の送電回路600bは、送電側回路61b及びスイッチSW1b~SW8bを有する。送電側回路61bは、スイッチSW1b~SW8bのオンオフに応じて、送電コイルTC1b、TC2b、TC3b、及びTC4bのいずれかに接続される。
図22は、電池監視装置800のアンテナ構造(コイル構造)を示す図である。受電アンテナは、電池セルを格納する例えば直方体形状を有する電池パックBPの側面に配置され、集積回路として構成された受電側回路が接続されている。第1の送電回路600a及び第2の送電回路600bのいずれにおいても、送電アンテナは絶縁物媒体IM1及びIM2の内部あるいは表面に渦巻き状の導体パターンにより構成され、線状の導体パターンにより送電側回路の選択スイッチに接続されている。
図23に示すように、第1の送電回路600a及び第2の送電回路600bの送電アンテナは、いずれもコイルの中心軸を対応する受電コイルの中心軸に合わせて重ねるように配置される。
再び図21を参照すると、電池監視装置800の動作において、第1の送電回路600aの送電側回路61a及び第2の送電回路600bの送電側回路61bは、一方が動作状態(動作系)、他方が待機状態(待機系)となるように制御される。
例えば、送電側回路61aが動作系、送電側回路61bが待機系である場合、上位制御回路(図示せず)によりスイッチSW1a~SW8aがオン又はオフに制御され、送電側回路61aが送電コイルTC1a、TC2a、TC3a、及びTC4aのいずれか1つと接続される。送電側回路61aは、接続された送電コイルと結合する受電コイル(RC1~RC4のいずれか)に対応する受電側回路(71a~71dのいずれか)と情報のやり取りを行う。この際、第2の送電回路600bにおけるスイッチSW1b~SW8bはいずれもオフに制御される。
動作状態及び待機状態を切り替えた場合、第1の送電回路600aにおけるスイッチSW1a~SW8aをいずれもオフ状態とする。第2の送電回路600bでは、送電回路61bがいずれかの送電コイルTC1b、TC2b、TC3b、及びTC4bのいずれか1つと接続されるようにスイッチSW1b~SW8bのオン又はオフを制御する。これにより、送電側回路61bは、接続された送電コイルと結合する受電コイル(RC1~RC4のいずれか)に対応する受電側回路(71a~71dのいずれか)と情報のやり取りを行う。
図21の電池監視装置によれば、情報伝送の経路が二重化されるため、一方の回路に不具合が生じた場合であっても他方の回路で動作を行うことができる。これにより、信頼性の高い装置を実現することができる。
また、待機系の送電側回路の選択スイッチをすべてオフに制御するため、待機系の送電側回路には何も接続されない。これにより、待機系の送電側回路が動作系の送電側回路の送信動作に及ぼす影響を軽減することができ、より信頼性の高い情報のやり取りを実現することができる。
また、磁界結合部分で二重化しているため、動作系と待機系との干渉が少ない。
また、動作系の送電側回路及び待機系の送電側回路は、NFC通信のID等により識別することができるため、接続外れや接続誤り等の異常を確実に検出することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、13.56MHzの高周波磁界を用いる例について説明したが、例えば100kHzや6.78MHzといった異なる周波数帯の周波数の磁界を用いても良い。また、数百MHzの電磁界を用いても良い。それぞれの周波数に適した送電アンテナ(送電コイル)及び受電アンテナ(受電コイル)を設計することにより、これらの周波数の磁界又は電磁界を用いて同様の動作を行う装置を構成することができる。
また、本発明の信号伝送装置及び電池監視装置の構成は、電池監視や電力線監視以外の他の高電圧装置にも用いることができる。
また、送信側の位置と受信側の位置とを変動させるように用いても良く、送電コイル及び受電コイルが互いに回転するような構成であっても良い。また、送電側及び受電側を着脱可能に構成しても良い。
また、本発明の信号伝送装置及び電池監視装置を、水中、油中、宇宙空間等の環境下で動作させても良い。
また、送電コイル及び受電コイルに防水処理や気密処理を施しても良い。また、磁性シートを用いて送電コイル及び受電コイルと外部との間を磁気的に遮蔽しても良い。また、高調波を抑制するフィルタを用いても良い。
また、上記実施例3及び実施例4では、4個の電池セルを監視する電池監視装置の例について説明した。しかし、電池セルの数はこれに限られず、n個(nは2以上の整数)の電池セルを監視する電池監視装置として構成されていれば良い。その場合、送電コイル、受電コイル及び受電側回路の数をそれぞれn個とすれば良い。