詳細な説明
細菌感染およびバイオフィルムの処置は、酢酸および次亜塩素酸の相乗的組成物を使用して実現される。酢酸成分は組織中に浸透するのに特に有効である一方、次亜塩素酸は組織の外部表面上のバイオフィルムを処置するのに特に有効である。酢酸は、創傷の表面の最大2mmまたはそれより下に浸透して、そうでなければ到達するのは困難であるバイオフィルムを処置することができる。
本発明の組成物は、酢酸と相乗的に組み合わせて次亜塩素酸を含む。生物致死量(biocidal amount)の酢酸(または同等の有機酸)が次亜塩素酸と共に最適化されているバランスのとれた組成物は、表面に適用されても、または皮膚に浸透するように設計された方式で適用されても、最大の治療的利益を実現することが発見された。例えば、表面適用の場合、次亜塩素酸に対する酢酸の相対的な量は、浸透適用の場合よりも少ない。本発明によれば、表面の細菌汚染またはバイオフィルムは、より少ない量の酢酸を含む次亜塩素酸により十分に処置される;しかし深い浸透を必要とする適用(例えば、創傷)では、酢酸の量を増加させなければならない。その場合、次亜塩素酸が、酢酸の周辺組織に対する毒性を緩和するのに使用される一方、酢酸がバイオフィルムを攻撃するのを可能にする。さらに、酢酸および次亜塩素酸の相乗的組合せは、有益なバイオフィルムを保存しながら有害なバイオフィルムを選択的に殺傷することが発見された。本発明の組成物は、有害なバイオフィルムを選択的に殺傷するために、バランスのとれた濃度の酢酸および次亜塩素酸を含む。濃度はまた、それらが対象とする適用(例えば、歯または皮膚の表面処置、対創傷または歯根の深部組織処置)を考慮してバランスがとられている。本出願は、酢酸および次亜塩素酸の様々な組合せの相乗効果に関するガイダンスを提供する。当業者は、本明細書に提供される情報に基づき、あらゆる細菌感染またはバイオフィルム形成の処置に必要な酢酸および次亜塩素酸の相対的な量を決定することができる。
表面レベルの感染および皮下感染の両方を処置することは、創傷ケアに特に必要とされる二重作用処置を提供する。慢性創傷および湿疹では、創傷の表面下の部分に影響を及ぼすバイオフィルムが悩みの種である。これらの創傷は、表面上またはその近傍に一般的に存在し、創傷が閉鎖し治癒するのを妨げるS.aureus感染を有する頻度が高い。またP.aeruginosa感染が存在することが多く、これは一般的に、より深い創傷の表面下に存在する。深部感染が存在する場合、より深部の感染が治癒する前に創傷が閉鎖するのを防止するために、内側から外側に治癒する間、創傷が開いており、湿潤した状態に保つことが重要である。表面レベルの感染だけを処置すると、創傷が閉鎖してしまい、組織内側のより深部にあるバイオフィルムが閉じ込められる原因となることから、敗血症およびその他の合併症の原因となる可能性がある。
例えば、糖尿病の足部潰瘍に伴う高頻度の問題は、潰瘍が表面において閉鎖し、その下にオープンキャビティーが形成されることである。キャビティーは、免疫系応答の一環として、デブリ、細菌、および白血球からなる膿を含有する。特に足部潰瘍において、閉鎖したコンパートメントに閉じ込められた膿は感染の拡散を助長し、潜在的に敗血症を引き起こすおそれがある。しかし、開いた創傷を適切に手当てしても、膿は創傷床および被覆材に放出される。閉鎖した創傷内側の膿環境に生き残る細菌は感染を拡散するおそれがある。したがって、P.aeruginosa感染を最初または同時に除去せずにS.aureus感染を除去しても、バイオフィルム感染を完全に根絶することはできず、早期閉鎖およびおそらくは敗血症に至る。
抗菌溶液、例えば本明細書に提示する組成物は、創傷床の深部エリア内の感染を低下させ、内側から外側への創傷治癒を可能にし、表面が内部の創傷よりも速く治癒しないようにする。酢酸は創傷床の下にあるバイオフィルムを殺菌するのに十分な量で存在し、次亜塩素酸は創傷の表面を殺菌するのに十分な量で存在する。組成物は、したがって創傷の完全殺菌を可能にし、早期閉鎖および閉鎖した創傷の表面下におけるバイオフィルムのトラッピングを防止する。
次亜塩素酸および酢酸の濃度のバランスをとることで、表面レベルのバイオフィルムの処置および表面下のバイオフィルムの処置も可能になるので、開示される組成物は特に有効である。正確なバランスは、処置部位および望ましい表面浸透量に依存する。次亜塩素酸は、約10ppm、最大約500ppmまたはそれを超える濃度で存在することができる。異なる用途および組織の種類は、より高いまたはより低い濃度を必要とし得る。酢酸は、約0.25%、最大約2.0%またはそれを超える、好ましくは約1.0%で存在し得る。2つの成分のバランスをとることにより、組成物は、組織または創傷の表面および表面下において二重処置効果を有し得る。
本開示と整合する組成物は、様々な用途について考案され得る。例えば、比較的低い酢酸(約0.05%くらい低い)、および約5~60ppmの次亜塩素酸の組成物は、歯系組織内の感染を退治するためのうがい薬として有用な組成物である。微生物感染は、組織内の深部に浸透する傾向がないので、低濃度の酢酸はうがい薬組成物に十分である。
一方、創傷処置の場合、組成物は、組織の内側深くにあるバイオフィルムをより有効に処置するために、より高い濃度の酢酸(約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、または約5.0%)を含み得る。
その他の用途は、それぞれより多いまたはより少ない成分を必要とし得る。例えば、次亜塩素酸濃度が約80~250ppmの組成物は、感染または閉塞を予防するために、多くの場合尿カテーテルを装着した患者に必要とされる処置である膀胱のフラッシングに有用である。約15~60ppmの次亜塩素酸濃度を有する組成物は感染した肺の処置に十分である。
ある特定の実施形態では、組成物は、創傷とのより長い接触を可能にするゲルの形態である。溶液によるリンスは、防腐剤との接触時間が非常に短いので十分でない可能性がある。多くの場合、バイオフィルムを十分に除去するには、組成物は、数秒から、数分、1時間またはそれを超える時間に及ぶ長期間、バイオフィルムと接触すべきである。組成物は速やかな蒸発または分散に抗するゲルまたはクリームで提供され得る。局所投与用のゲル、クリーム、軟膏、油、およびその他の類似した担体が当技術分野において公知である。
さらに、創傷処置では、ゲル形態の組成物は、創傷の部位において水分を維持するという利益を有する。本発明の組成物による処置中および処置後において、創傷を湿潤した状態に保つことが重要である。開示される組成物は主に水であり(一般的に95%またはそれを超える)、組成物の防腐成分が創傷内の感染に対抗し、新たな感染が定着するのを阻止している間、創傷が湿潤したままであることを可能にする。湿潤を維持することは、創傷の早期閉鎖および組織内側でのバイオフィルムのトラッピングも防止する。酢酸は過度の反応性を有さないので、酢酸はゲル中に容易に処方される。その他の有機酸も使用可能であり、それほど反応性ではない有機酸が望ましい。
徐放性組成物も使用され得る。一部の組成物では、酢酸は脂溶性ナノ粒子中にカプセル化され得、酢酸が創傷の表面下に搬送された後にナノ粒子から放出されることが可能となる。異なる特性のナノ粒子を用いた投与は、酢酸が経時的にゆっくりと放出されることを可能とし、分散を防止し、投与に対してその他の利益を提供する。酢酸は自由拡散性で水溶性であり、高い蒸気圧を有する。これらの特性は、酢酸が拡散する場所での制御をさらに難しくする。酢酸をナノ粒子でカプセル化すれば、組成物のより精密な制御が可能となる。ナノ粒子は下記により詳細に記載されており、図13および図14に示されている。
一部の実施形態では、組成物は、ナノ粒子を含まない若干の酢酸およびナノ粒子内にカプセル化された若干の酢酸を含む。あるいは、徐放性処方物が、それ自体でまたはその他の速効性処方物と組み合わせて使用され得る。例えば、創傷は、酢酸および次亜塩素酸の組成物を用いて処置され、次に初期の処置後に、創傷深部への酢酸の継続的な放出を実現するために、ナノ粒子内にカプセル化された主に酢酸の組成物で処置され得る。
次亜塩素酸組成物の製造
本発明の組成物および方法の基本は、次亜塩素酸イオン(OCl-)のプロトン化である。例としてHClまたは酢酸(HAc)およびNaOClを使用して、溶液に酸(例えば、HCl)を導入することによりプロトン化は実現し、その結果下記の反応が生じる:
HCl(aq)+NaOCl(aq)⇔HOCl(aq)+NaCl(aq)。
または
HAc(aq)+NaOCl(aq)⇔HOCl(aq)+NaA(aq)。
水溶液中の次亜塩素酸は、アニオンの次亜塩素酸イオン(OCl-)に部分的に解離し、したがって水溶液中では、次亜塩素酸とアニオン(OCl-)の間で平衡関係が常に存在する。この平衡関係はpH依存性であり、より高いpHではアニオンが支配する。水溶液中では、次亜塩素酸は、その他の塩素種、特に塩素ガスCl2、および様々な酸化塩素とも平衡関係にある。酸性のpHにおいては、塩素ガスは益々優勢となる一方、中性のpHにおいては、異なる平衡関係により、次亜塩素酸により支配される溶液がもたらされる。したがって、次亜塩素酸の製造において、空気への曝露およびpHを制御することが重要である。
さらに、プロトン(H+)の濃度が生成物の安定性に影響を及ぼす。本発明は、プロトン濃度は、所与のpHにおいてプロトンを供与する能力がより低い酸を使用することにより制御可能である(すなわち、酸は緩衝能を提供し得る)ことを認識する。例えば、最終溶液の所望のpHが、およそ酢酸のpKaであるとき、塩酸の代わりに酢酸を用いてプロセスを実施することが最適である。これは、水250部に対して100%の濃度のプロトンドナー(例えば、HClまたは酢酸)1部を意味する250×またはそれより大きい水中での混合比により達成され得る。
ある特定の実施形態では、HOClを製造する方法は、空気を含まない環境において水中でプロトン(H+)を生成する化合物と水中で次亜塩素酸アニオン(OCl-)を生成する化合物とを共に水中で混合し、これにより空気を含まない次亜塩素酸を生成させることを含む。水は、水道水または精製水、例えばMillipore(Billerica、MA)等の水精製会社から購入される水であり得る。一般的に、水のpHは、方法の間、約4.5~約9に維持されるが、pHは、製造プロセス中にこの範囲よりも上および下に振れる可能性がある。空気を含まない環境内で本発明の方法を実施することで、製造プロセス中の塩素ガスの蓄積を防止する。さらに、空気を含まない環境内で本発明の方法を実施することで、生成したHOClをさらに安定化する。
水中で次亜塩素酸アニオン(OCl-)を生成する任意の化合物が使用され得る。例示的な化合物としてNaOClおよびCa(OCl)2が挙げられる。特定の実施形態では、化合物はNaOClである。水中でプロトン(H+)を生成する任意の化合物が本発明の方法で使用され得る。例示的な化合物は、酸、例えば酢酸、HCl、およびH2SO4である。特定の実施形態では、化合物はHClである。好ましい実施形態では、酢酸はHClよりも好ましいpKaを有するより弱い酸であるので、すなわち反応中に酢酸が供与するプロトンはHClよりも少なく、好ましいpHレベルをより良好に維持することができるという意味で、化合物は酢酸である。
混合は、任意の種類の容器またはチャンバーまたは流体システム内で実施され得る。ある特定の実施形態では、図1に示すような流体システム100が本発明の方法を実施するのに使用される。システム100は、複数のパイプ101a~cが並列になった複数の混合デバイス102および103と相互接続している一連のパイプ101a~cを含む。すべての空気がシステムからパージ可能であり、本発明の方法が空気を含まない環境内で実施可能となるように、パイプおよび混合デバイスはシールを使用して相互接続し得る。ある特定の実施形態では、本発明の方法は加圧下でも実施される。空気を含まない環境内および加圧下でHOClを作製すれば、生成したHOClを不安定化させるおそれのある空気中の気体(例えば、酸素)と相互作用しないHOClの製造が可能となる。
パイプ101a~cは、約5mm~約50mm、より好ましくは約17mm~約21mmの範囲の内径を一般的に有する。特定の実施形態では、パイプ101a~cは、約21mmの内径を有する。パイプ101a~cは、約10cm~約400cm、より好ましくは約15cm~約350cmの長さを一般的に有する。ある特定の実施形態では、パイプ101a~cは同一の長さを有する。他の実施形態では、パイプ101a~cは異なる長さを有する。特定の実施形態では、パイプ101aは約105cmの長さを有し、パイプ101bは約40cmの長さを有し、パイプ101cは約200cmの長さを有する。
パイプおよびミキサーは、パイプおよびミキサーに由来する材料が流体システム内で生じる反応と関係しないように、任意の不活性な材料から作製され得る。例示的な材料としてPVC-Uが挙げられる。パイプは、Georg Ficher ABから市販されている。パイプおよびミキサーが直列で配置されるように、パイプおよびミキサーは直線的配置を有するように構成され得る。あるいは、水がプロセス全体を通じて曲がりやカーブを流れなければならないように、パイプおよびミキサーは非直線的配置を有し得る。システム100は、パイプ101a~c、ならびにミキサー102および103の非直線的な構成を示す。
パイプ101aは、システムを流れる水を受け入れるインレットパイプである。一般的に、パイプ101a~c内の水は、少なくとも約0.1バール、例えば0.2バールもしくはそれより高い、0.3バールもしくはそれより高い、0.4バールもしくはそれより高い、0.5バールもしくはそれより高い、0.7バールもしくはそれより高い、0.9バールもしくはそれより高い、1.0バールもしくはそれより高い、1.2バールもしくはそれより高い、1.3バールもしくはそれより高い、または1.5バールもしくはそれより高い圧力下にある。そのような圧力では、乱水流が生成され、したがって試薬は高度の乱水流に導入され、混合デバイス102および103内でさらに混合される前の、試薬と水との初期の混合が容易となる。
製造プロセス中にpHを制御するために、導入される水は、pH3.5~9.0、より好ましくは6.0~8.0の範囲において緩衝能を有し、プロトンを生成する化合物および次亜塩素酸アニオンを生成する化合物の添加を容易にすべきである。ほとんどの水道水中に見出される溶解した塩およびその他の分子は、pH5.5~9.0の範囲において水道水に緩衝能を付与し、したがって水道水は本発明の方法で使用される好適な水である。
ある特定の実施形態では、pH3.5~9.0の範囲において緩衝能を有する水を生成するために公知の緩衝剤が添加された脱イオン水が使用される。この特定の範囲内の緩衝液の一例はリン酸緩衝液である。プロセスの制御および一貫性をより高めるために、水道水を使用するよりも処方された脱イオン水を使用することの方が、水道水は場所によってまた経時的にも変化し得るので好ましいことがある。さらに、公知の添加剤を含む脱イオン水を使用すれば、導入される水流の安定なpHも保証される。このプロセスは下記でより詳細に議論される。
特定の実施形態では、プロトンを生成する化合物、または次亜塩素酸アニオンを生成する化合物のいずれかを添加する前の水の初期pHは、8.1もしくはそれより高い、8.2もしくはそれより高い、8.3もしくはそれより高い、8.4もしくはそれより高い、8.5もしくはそれより高い、8.6もしくはそれより高い、8.7もしくはそれより高い、8.8もしくはそれより高い、8.9もしくはそれより高い、9.0もしくはそれより高い、9.5もしくはそれより高い、10.0もしくはそれより高い、10.5もしくはそれより高い、または10.8もしくはそれより高いpHを含む、少なくとも約8.0である。特定の実施形態では、プロトンを生成する化合物または次亜塩素酸アニオンを生成する化合物のいずれかを添加する前の水のpHは8.4である。
HOClを作製する方法は、プロトンを生成する化合物および次亜塩素酸アニオンを生成する化合物を、任意の順序(例えば、同時または連続で)および任意の方式(水性形態、固体形態等)で、水に導入することを含む。例えば、プロトンを生成する化合物および次亜塩素酸アニオンを生成する化合物は、それぞれ水溶液であり、水に連続して導入され、例えば、プロトンを生成する化合物が最初に水に導入されてもよく、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物が2番目に水に導入されてもよい。
システム100は、試薬を水流に連続的に導入するように構成され、プロトンを生成する化合物が最初に水に導入され、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物が2番目に水に導入されるプロセスが、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態では、プロトンを生成する化合物および次亜塩素酸アニオンを生成する化合物は、小分量、例えば、約0.1mL~約0.6mLで水に導入される。反復した少量滴定により、酸(プロトンを生成する化合物)およびアルカリ(次亜塩素酸アニオンを生成する化合物)の添加にもかかわらずpHを制御することが可能となる。ある特定の実施形態では、約0.6mL以下の量のプロトンを生成する化合物が、1時点において水に導入される。他の実施形態では、約0.6mL以下の量の次亜塩素酸アニオンを生成する化合物が、1時点において水に導入される。
試薬を水に導入するために、パイプ101aは注入ポート104を備え、パイプ101bは、注入ポート105を備える。注入ポート104および105は、試薬の水流への導入を可能にする。本実施形態では、プロトンを生成する水性化合物は、注入ポート104経由でパイプ101a内の水に導入される。プロトンを生成する化合物は、ポート104と密封可能に接続している輸液ポンプにより導入される。このように、ある時点において水に導入されるプロトンを生成する化合物の流速、したがって量が制御される。輸液ポンプは自動的にまたは手動により制御可能である。プロトンを生成する化合物の水への導入速度は、導入される水の質(導電率およびpHレベル)ならびに導入される水の圧力および流れに基づく。ある特定の実施形態では、ポンプは、1時間当たり約6.5リットルの塩酸を水に導入するように構成される。導入は連続輸液または間欠方式であり得る。水はパイプを乱流状態で流れているので、塩酸を水に導入した際に、プロトンを生成する化合物と水との初期の混合が認められる。
さらなる混合が、水が第1の混合デバイス102に進入する際に生じる。図2は、図1に示す混合デバイス102の拡大図を示す。例示された実施形態では、混合デバイスは、長さ約5.5cmおよび直径約5cmを備える。当業者は、これらは例示的な寸法であること、および本発明の方法は例示された寸法とは異なる寸法を有する混合デバイスを用いて実施され得ることを認識する。混合デバイス102は、パイプ101aに密封可能に繋がった流体インレット106、およびパイプ101bに密封可能に繋がった流体アウトレット107を備える。このように、水は、パイプ101aからデバイス102の混合チャンバー108に進入し、パイプ101bを通じてデバイス102のチャンバー108から排出させることができる。
混合デバイス102は、デバイス内に複数の渦流が生成するように構成される。そのように構成された例示的なデバイスを図3に示し、同図は、デバイス102のチャンバー108の内部ビューを提供する図である。チャンバー108は、複数の部材109を備え、複数のサブチャンバー110を形成するために、部材は一定の間隔を置いて分離しており、チャンバー108内でインレットおよびアウトレットに対して直角に固定されている。各部材109は、流体がそれを通じて流れるのを可能にする少なくとも1つのアパーチャー111を備える。図4は、部材109の正面図をアパーチャー111が視認可能なように示す。アパーチャーのサイズは、水の流れおよびシステム内の圧力に依存する。
任意の数の部材109がチャンバー108内に固定可能であり、チャンバー108内に固定化される部材109の数は所望の混合量に依存する。図4は、4つのサブチャンバー110a~dを生成するためにチャンバー内に固定された4つの部材109a~dを示す。部材109は、チャンバー108内で一定の距離を置いて分離可能であり、均一なサイズのサブチャンバー110を生み出す。あるいは、部材109は、チャンバー108内で異なる距離を置いて分離可能であり、異なるサイズのサブチャンバー110を生み出す。部材109は、チャンバー108内で内壁に固定され得るようなサイズである。このように、水は部材の周りを流れることはできず、各部材109内のアパーチャー111を通過して、混合デバイス102経由で移動できるに過ぎない。一般的に、部材は、約1cm~約10cmの直径を有する。特定の実施形態では、部材は、約3.5cmの直径を有する。
渦流が各サブチャンバー110a~d内に生成される。渦は、各部材109内のアパーチャー111を通過する水の流れに起因する。本発明の方法は、各部材109についてアパーチャー111の任意の配置を許容する。図4は、部材109内のアパーチャー111の異なる配置の非限定的な例を示す。アパーチャーは任意の形状であり得る。図4は、円形のアパーチャー111を示す。ある特定の実施形態では、すべてのアパーチャー111は部材109の同一の場所に位置する。他の実施形態では、アパーチャー111は部材109の異なる場所に位置する。1つの部材109内において、すべてのアパーチャー111は同一の直径を有し得る。あるいは、1つの部材110内において、アパーチャー111の少なくとも2つは異なるサイズを有する。他の実施形態では、1つの部材110内のすべてのアパーチャー111は異なるサイズを有する。
ある特定の実施形態では、部材110内のアパーチャー111は第1のサイズを有し、異なる部材110内のアパーチャー111は異なる第2のサイズを有する。他の実施形態では、少なくとも2つの異なる部材110内のアパーチャー111は同一のサイズを有する。アパーチャーのサイズは、水の流れおよびシステム内の圧力に依存する。例示的なアパーチャー直径は、約1mm~約1cmである。特定の実施形態では、アパーチャーは約6mmの直径を有する。
溶液は、パイプ101aと密封可能に嵌合しているインレット106を通じて混合デバイス102に進入する。溶液はチャンバー108に進入し、溶液が各部材109a~d内のアパーチャー111経由で部材109a~dを通過すると、サブチャンバー110a~dのそれぞれにおいて乱流混合が生じる。最終のサブチャンバー110d内で混合後、水は、パイプ101bに密封可能に嵌合している流体アウトレット107経由でチャンバー108から排出される。
次亜塩素酸アニオンを生成する化合物は、次に注入ポート105経由でパイプ101bを通じて流れる溶液に導入される。次亜塩素酸アニオンを生成する化合物は、ポート105に密封可能に接続している輸液ポンプにより導入される。このように、ある時点において水に導入される次亜塩素酸アニオンを生成する化合物の流速、したがって量が制御される。輸液ポンプは自動的にまたは手動により制御可能である。次亜塩素酸アニオンを生成する化合物の水への導入速度は、溶液の特性(導電率およびpHレベル)ならびに溶液の圧力および流れに基づく。ある特定の実施形態では、ポンプは、1時間当たり約6.5リットルの次亜塩素酸アニオンを生成する化合物を溶液中に導入するように構成される。導入は連続輸液または間欠方式であり得る。溶液はパイプを乱流状態で流れているので、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物を溶液に導入した際に、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物と溶液との初期の混合が認められる。
溶液が第2の混合デバイス103に進入する際に、さらなる混合が生じる。混合デバイス103は、混合デバイス102に関して上記で議論したすべての特性を含む。混合デバイス103は、混合デバイス102と同一または異なるように、例えば、同一または異なる数のサブチャンバー、同一または異なる直径のアパーチャー、同一または異なるサイズのサブチャンバー等として構成され得る。ただし、混合デバイス102のように、混合デバイス103は各サブチャンバー内に渦流が生成するように構成される。
溶液は、パイプ101bと密封可能に嵌合しているデバイス内のインレットを通じて混合デバイス103に進入する。溶液は混合チャンバーに進入し、溶液が各部材内のアパーチャー経由でチャンバー内の部材を通過する際に、混合デバイスの各サブチャンバー内で乱流混合が生じる。最終のサブチャンバー内で混合後、水は、パイプ101cに密封可能に嵌合している混合デバイス内の流体アウトレット経由でチャンバーから排出される。
この時点で、反応は完了しており、HOClは形成されている。製造はpHおよび導電率を測定することにより並列で制御される。pHは、導電率と分光光度法により測定されたHOClの濃度の間の事前に校正された関係に基づき、導電率と組み合わせて使用される。測定された導電率は電流を伝える溶媒の能力の尺度である。同一のマトリックスを異なる既知の濃度のHOClおよびOCl-と比較し、滴定を調節しプロセスを制御するために、pHメーターと組み合わせて使用される校正曲線(図8)を確立した。
パイプ101cは、廃棄ライン113と生成物収集ライン114の間で切り替わるスイッチバルブ112に接続し得る。図5および図6に示す。バルブ112は、pHメーターおよび導電率測定デバイスを備える。これらのデバイスは、生成したHOClの濃度(ppm)、純度、およびpHを測定し、生成したHOClのそのよう特性を変化させるためのフィードバックを提供する。パイプ101c内で生成したHOClが、必要とされる濃度、純度、およびpHを満たせば、バルブ112は、廃棄ライン113から生成物収集ライン114に切り替わり、所望の生成物を収集する。
空気を含まない方式で生成したHOClは、空気を含まない方式で収集されボトルに詰められる。空気を含まない方式で液体をボトル内に配置することは、当技術分野において公知である。例示的な方法として、膨張可能な容器(例えばバルーン)をボトル中に配置することが挙げられる。膨張可能な容器は、収集ライン114に直接接続し、HOClは空気に曝露されることなくボトル内の膨張可能な容器中に直接ポンプ搬送される。別の方法は、真空下でボトルに充填することを含む。別の空気を含まない充填方法は、HOClと相互作用しない不活性気体の環境、例えばアルゴン環境の中でボトルに充填することを含む。
生成した次亜塩素酸は空気を含まず、約4.5~約7.5のpHを有する。ただし、生成したHOClのpHは、酸(例えば、HCl)またはアルカリ(例えば、NaOCl)を生成した次亜塩素酸に添加することにより、製造プロセス後に調整可能である。例えば、約4.5~約7の間のpHは、熱に敏感な医療機器を再処理する用途に特に適する。その他の用途、例えば非医療的環境におけるその使用、例えば家禽の肉および魚の処理における使用、ならびに総合的農業および石油化学での使用、細菌性バイオフィルムの分解および水処理は、異なるpHレベルを要求し得る。
プロセスは手動または自動により実施可能である。本明細書に記載される流体システムは、製造プロセスを制御するコンピューターに作動可能に接続し得る。コンピューターは、PCL-ロジックコントローラーシステムであり得る。コンピューターは、システム内のセンサーから受け取ったフィードバック(例えば、生成した生成物の導電率、pH、および濃度(ppm))に従って水のインレット、廃水のアウトレット、および生成物のアウトレットに対応するバルブを開閉する。コンピューターは、水圧および水量に関する値も記憶することができ、ならびに生成したHOClの特性に関してセンサーから受け取ったフィードバックに従って、これらを調整することができる。コンピューターは製造プロセス用の水に試薬を注入する輸液ポンプも制御可能である。
パイプ101cは第2の流体システムに連結可能であり、生成したHOClが、次に水ではなくHOClである開始溶液を用いて上記プロセスが繰り返される第2のシステムを通じて流れるという点において、プロセスは繰り返し実施可能である。このように、収率が増加したHOClが生成される。任意の数の流体システムが本発明の方法を用いて相互接続し得る。
図7は、本発明の方法に従って次亜塩素酸を生成するための別の例示的なシステム200を示す概略図である。システム200は、安定性のために、導入される水および注入される緩衝液のpHが調節されるように構成されている。システム200では、水はパイプ201aに導入される。パイプ201aは、それと接続しているpHメーター208を有する。pHメーター208は導入される水のpHを測定する。pHメーター208は注入ポート202に接続している。注入ポート202は少なくとも1つの緩衝剤を導入される水に導入することを可能にする。緩衝剤はポート202に密封可能に接続している輸液ポンプにより導入される。このように、ある時点において水に導入される緩衝剤の流速、したがって量が制御される。輸液ポンプは自動的にまたは手動により制御可能である。緩衝剤の水への導入速度は、導入される水の質(導電率およびpHレベル)、緩衝液組成、ならびに導入される水の圧力および流れに基づく。導入は連続輸液または間欠方式であり得る。水はパイプ201aを乱流状態で流れているので、緩衝剤を水に導入する際に、緩衝剤と水との初期の混合が認められる。この初期の混合は、導入される水の特性を適切に調整するのに十分であり得る。
ある特定の実施形態では、HOClを製造するプロセスを実施する前に、水と緩衝液のさらなる混合が実施される。それらの実施形態では、水が緩衝剤と共に第1の混合デバイス203に進入するときにさらなる混合が生じる。混合デバイス203は、混合デバイス102に関して上記で議論したすべての特性を含む。混合デバイス203は、混合デバイス102と同一または異なるように、例えば、同一または異なる数のサブチャンバー、同一または異なる直径のアパーチャー、同一または異なるサイズのサブチャンバー等として構成され得る。ただし、混合デバイス102のように、混合デバイス203は各サブチャンバー内に渦流が生成するように構成される。
溶液は、パイプ201aと密封可能に嵌合しているデバイス内のインレットを通じて混合デバイス203に進入する。溶液は混合チャンバーに進入し、溶液が各部材内のアパーチャー経由でチャンバー内の部材を通過する際に、乱流混合が混合デバイスの各サブチャンバー内で生じる。最終のサブチャンバー内で混合後、水は、パイプ202bに密封可能に嵌合している混合デバイス内の流体アウトレット経由でチャンバーから排出される。水は、少なくとも約8.0、好ましくは8.4のpH、およびpH5.5~9.0の緩衝能を有する。
プロセスは、ここでHOClを生成するために上記のように実施される。プロトンを生成する化合物が、次に注入ポート204経由でパイプ201bを通じて流れている水に導入される。プロトンを生成する化合物は、ポート204に密封可能に接続している輸液ポンプにより導入される。このように、ある時点において水に導入されるプロトンを生成する化合物の流速、したがって量が制御される。輸液ポンプは自動的にまたは手動により制御可能である。プロトンを生成する化合物の水への導入速度は、水の特性(導電率およびpHレベル)、緩衝液組成、ならびに水の圧力および流れに基づく。ある特定の実施形態では、ポンプは、1時間当たり約6.5リットル~1時間当たり約12リットルのプロトンを生成する化合物を水に導入するように構成される。導入は連続輸液または間欠方式であり得る。水はパイプを乱流状態で流れているので、塩酸を水に導入した際に、プロトンを生成する化合物と水との初期の混合が認められる。
溶液が第2の混合デバイス205に進入するときにさらなる混合が生じる。混合デバイス205は、混合デバイス102に関して上記で議論したすべての特性を含む。混合デバイス205は、混合デバイス203と同一または異なるように、例えば、同一または異なる数のサブチャンバー、同一または異なる直径のアパーチャー、同一または異なるサイズのサブチャンバー等として構成され得る。ただし、混合デバイス203のように、混合デバイス205は各サブチャンバー内に渦流が生成するように構成される。
溶液は、パイプ201bと密封可能に嵌合しているデバイス内のインレットを通じて混合デバイス205に進入する。溶液は混合チャンバーに進入し、溶液が各部材内のアパーチャー経由でチャンバー内の部材を通過する際に、混合デバイスの各サブチャンバー内で乱流混合が生じる。最終のサブチャンバー内で混合後、水は、パイプ201cに密封可能に嵌合している混合デバイス内の流体アウトレット経由でチャンバーから排出される。
次亜塩素酸アニオンを生成する化合物が、次に注入ポート206経由でパイプ201cを通じて流れている溶液に導入される。次亜塩素酸アニオンを生成する化合物は、ポート206に密封可能に接続している輸液ポンプにより導入される。このように、ある時点において水に導入される次亜塩素酸アニオンを生成する化合物の流速、したがって量が制御される。輸液ポンプは自動的にまたは手動により制御可能である。次亜塩素酸アニオンを生成する化合物の水への導入速度は、溶液の特性(導電率およびpHレベル)ならびに溶液の圧力および流れに基づく。ある特定の実施形態では、ポンプは、1時間当たり約6.5~12リットルの次亜塩素酸アニオンを生成する化合物を溶液中に導入するように構成される。導入される量は、所望のHOClの濃度(ppm)およびパイプを通じた水の流れに依存する。導入は連続輸液または間欠方式であり得る。溶液は乱流状態でパイプを流れているので、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物が溶液に導入される際に、次亜塩素酸アニオンを生成する化合物と溶液との初期の混合が認められる。
溶液が第2の混合デバイス207に進入するときにさらなる混合が生じる。混合デバイス207は、混合デバイス102に関して上記で議論したすべての特性を含む。混合デバイス207は、混合デバイス205または203と同一または異なるように、例えば、同一または異なる数のサブチャンバー、同一または異なる直径のアパーチャー、同一または異なるサイズのサブチャンバー等として構成され得る。ただし、混合デバイス205および203のように、混合デバイス207は、各サブチャンバー内に渦流が生成するように構成される。
溶液は、パイプ201cと密封可能に嵌合しているデバイス内のインレットを通じて混合デバイス207に進入する。溶液は混合チャンバーに進入し、溶液が各部材内のアパーチャー経由で、チャンバー内の部材を通過する際に、混合デバイスの各サブチャンバー内で乱流混合が生じる。最終のサブチャンバー内で混合後、水は、パイプ201dに密封可能に嵌合している混合デバイス内の流体アウトレット経由でチャンバーから排出される。
この時点において、反応は完了しており、HOClは形成されている。生成したHOClは、上記のように測定および収集可能である。パイプ201dは、廃棄ラインと生成物収集ラインの間で切り替わるスイッチバルブに接続し得る。バルブは、pHメーターおよび導電率測定デバイスを備える。これらのデバイスは、生成するHOClの濃度、純度、およびpHを測定し、ならびに生成したHOClのそのような特性を変化させるためのフィードバックを提供する。パイプ201d内で生成したHOClが必要とされる濃度、純度、およびpHを満たせば、バルブは廃棄ラインから生成物収集ラインに切り替わり、所望の生成物が収集される。
別の実施形態では、脱イオン装置が、導入される水と並列で配置される。脱イオン装置は水を脱イオン化し、次に緩衝剤が脱イオン化された水に添加される。次に、製造プロセスがシステム200の実施形態に関して記載されているように実施され、少なくとも約8、例えば8.4のpH、およびpH6~8の緩衝能を有する水が生成する。
上記プロセスにより製造されるHOClは、多数の様々な用途、例えば、医療、フードサービス、食品小売り、農業、創傷ケア、検査室、ホスピタリティー、歯科、脱リグニン、または花卉業界において使用可能である。
創傷ケア
ある特定の実施形態では、本発明の組成物が創傷ケアのために使用される。創傷ケアは、擦過傷、裂傷、ヘルニア、穿刺、または火傷を含む損傷または破壊された皮膚を処置することを含む。特定の創傷ケア処置は、バイオフィルムを処置することを含む。細菌および真菌等の浮遊性の微生物それ自体が表面に付着すると、バイオフィルムが形成され得る。バイオフィルムは、皮膚の創傷治癒を損ない、感染した創傷の治癒または処置において局所的抗菌効果を低下させることが公知である。バイオフィルムと関連するその他の一般的な健康状態として、***、中耳感染、慢性創傷、および歯垢の形成が挙げられる。嚢胞性線維症、自己弁の感染性心内膜炎、中耳炎、歯周炎、および慢性前立腺炎もまた、バイオフィルムを生成する微生物と関係する。バイオフィルムと一般的に関連する微生物として、Candida albicans、コアグラーゼ陰性staphylococci、Enterococcus、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus等が挙げられる。
バイオフィルムは、従来の抗菌剤処置に対して多くの場合耐性であり、したがって重大な健康リスクとなる。バイオフィルムの耐性は、従来の抗生物質および抗菌剤処置を無効にする。バイオフィルムは抗生物質および殺菌剤に対する感受性を大幅に低下させ得るので、バイオフィルムを分解する能力を有するが、しかし患者に対して過剰に毒性ではない処置法が必要とされる。
バイオフィルム関連感染について処置を必要とする個体に組成物を投与するための方法が提供される。本発明の方法は、バイオフィルム関連感染の予防、治療、または治癒を含む。方法は、個体において、既存のバイオフィルム関連感染を処置する、またはバイオフィルム関連感染の確立を予防するために、治療または予防有効量で、組成物の1つまたは複数の単位用量を投与することを含む。一部の実施形態では、バイオフィルム関連感染が個体内の別の部位に拡散することが阻害される。様々な実施形態では、組成物は、非経口により、経口により、局部的に(locally)、または局所的に(topically)投与され得る。組成物は、静脈内、筋肉内、または皮下注入により適用され得る。本発明の方法では、組成物が薬学的に許容される担体内に投与される場合があり、その例は以下で議論される。
処置は、バイオフィルムに生息する病原菌を殺傷すること、またはバイオフィルムを除去すること、バイオフィルム形成を阻害すること、および既存のバイオフィルムを破壊することを含む。本明細書に開示される組成物は、創傷内または上にある微生物バイオフィルムの処置に特に有効である。組成物は、次亜塩素酸および酢酸化合物を含む局所的に投与可能な創傷処置組成物の形態であり得る。組成物は追加の抗菌剤と組み合わせ可能である。
本発明の組成物は、例えば、対象の表皮または上皮組織上に組成物を直接塗布するまたは拡散させることにより、対象に局所的に投与可能である。組成物は、液体、粉末、ローション、クリーム、ゲル、油、軟膏、ゲル、固体、半固体処方物、またはエアゾールスプレーとして処方され得る。そのような処方物は、当業者に周知されている適切な担体を使用して、従来方式で製造され得る。
局所投与用の適する担体は、好ましくは連続的なフィルムとして皮膚上の所定位置にとどまり、発汗または水中への浸漬による除去に抵抗する。担体は、薬学的に許容される柔軟剤、乳化剤、増粘剤、溶媒等を含み得る。
組成物は、組成物が創傷被覆材内に、または創傷に接触するその表面上に提供される創傷被覆材の一部として提供され得る。創傷被覆材は、処置の対象となる創傷に適用されるように意図され得、本発明に従う組成物を含む基質を含む。そのような被覆材は、本発明の組成物を処置の対象となる創傷に送達すると同時に、創傷に対する被覆材を提供するので特に好都合である。創傷被覆材は、例えば、繊維性、フォーム、親水コロイド、コラーゲン、フィルム、シートヒドロゲル、またはその組合せであり得る。創傷被覆材は層状の被覆材の形態であってもよく、その被覆材の1つまたは複数の層は、天然繊維、アルギネート、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、カルボキシメチルセルロース、綿、レーヨン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタンフォーム、ヒドロゲル、親水コロイド、ポリビニルアルコール、スターチ、スターチフィルム、コラーゲン、ヒアルロン酸(hylaronic acid)およびその誘導体、生分解性の材料、ならびに当技術分野において公知のその他の材料で少なくとも部分的に形成されるか、またはそれらのうちの1つである。本発明の方法は、当技術分野において公知なように、陰圧創傷閉鎖療法をさらに含み得る。そのような療法は、真空被覆材を用いるなどにより創傷に陰圧を適用することを含む。
組成物は、1日1回用量、または多数回用量、例えば、1日当たり2、3、4回、もしくはそれを超える用量で投与され得る。組成物の総1日量は、約0.01mg、0.1mg、1mg、2mg等、最大約1000mgであり得る。一部の実施形態では、投与される総1日量は、約0.01mg~約1mg、約1mg~約10mg、約10mg~約100mg、約100mg~約500mg、または約500mg~約1000mgである。実際の投与量は、投与される具体的な組成物、投与様式、処置の対象となるバイオフィルムの型または場所、および当技術分野において公知のその他の因子に依存して変化し得る。一部の実施形態では、投与量は、患者体重1キログラムにつき事前に決定された量の組成物を提供するためにも選択され得る。
別の公知の抗菌処置と連携して化合物を使用すれば、抗菌剤の有効性を増加させることができる。一部の実施形態では、本発明の方法は、シプロフラキシン、アンピシリン、アジスロマイシン、セファロスポリン、ドキシサイクリン、フシジン酸、ゲンタマイシン、リネゾリド、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、リファンピン、テトラサイクリン、トブラマイシン、バンコマイシン、アミカシン、デフタジジム、セフェピム、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、ピペラシリン/タゾバクタム、アズトレアナム、メロペネム、コリスチン、またはクロラムフェニコールを含むが、これらに限定されない抗生物質の1つまたは複数の用量を投与すること(本発明の組成物と同時にまたは連続して)をさらに含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、アミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、第1世代セファロスポリン、第2世代セファロスポリン、第3世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、リンコサミド、およびオキサゾリジノンを含むが、これらに限定されない抗生物質クラスに由来する抗生物質の1つまたは複数の用量の投与をさらに含む。一部の実施形態では、本発明の方法は、セルトラリン、ラセミ形態および立体異性形態のチオリダジン、過酸化ベンゾイル、タウロリジン、ならびにヘキセチジンを含むが、これらに限定されない抗生物質ではない抗菌性物質の投与を含む。
その他の組織上のバイオフィルムの処置
本発明の組成物は、身体の様々な部分に影響を及ぼす、または様々な表面に付着したバイオフィルムを処置するのに使用可能である。一部の実施形態では、本発明の方法は、膀胱、腎臓、心臓、中耳、洞、皮膚、肺、関節、皮下組織、軟組織、血管組織、および/または眼内のバイオフィルム関連感染を処置するために、それを必要とする個体に対する治療上有効な組成物の投与を含む。他の実施形態では、治療有効量の組成物は、下記のバイオフィルムと関連した状態:***;慢性細菌性腟炎;前立腺炎;糖尿病に由来する細菌感染、例えば糖尿病性皮膚潰瘍;褥瘡;静脈カテーテル関連潰瘍;または手術創傷(例えば、手術部位の感染)のうちの1つまたは複数を処置するために、それを必要とする個体に投与される。一部の実施形態では、バイオフィルムは個体の皮膚上にある。一部の実施形態では、バイオフィルムは、擦過傷、裂傷、ヘルニア、穿刺、火傷、および慢性創傷を含む創傷と関連する。一部の実施形態では、バイオフィルムは、皮膚の表面下、皮下組織内、例えば深部組織創傷または手術部位の感染にある。
非組織表面上のバイオフィルムの処置
バイオフィルムの処置に関するその他の用途も想定される。例えば、本発明の組成物は、表面、例えば病院(手術室または患者介護室)内の表面、およびその他の表面(例えば、家事労働表面)上の微生物バイオフィルムの処置に適用される。本発明は、移植された医療機器および装具上に形成されるバイオフィルムを処置することも包含する。
当技術分野において公知なように、移植された医療機器は、真菌バイオフィルムおよび細菌バイオフィルムを含むバイオフィルムが形成されやすい。本発明の方法および組成物は、移植された医療機器、例えばカテーテルおよび装具の表面上に形成されるバイオフィルムを処置するのにも使用可能である。本発明の組成物は、移植前に医療機器に適用可能である。あるいは、医療機器は、組成物が移植後に制御された方式で放出され得るように、組成物を含有するリザーバーを含み得る。移植された医療機器を処理する方法は、米国特許第5,902,283号および同第6,589,591号、ならびに米国特許公開第2005/0267543号に見出すことができ、そのそれぞれは参照により本明細書にそのまま組み込まれている。
歯科処置
本発明の別の実施形態では、歯垢等の口腔関連のバイオフィルムを処置する方法が提供される。本発明は、口腔プラーク予防、口腔プラーク感染の処置、歯の過敏症の処置、根管の滅菌、または歯科疾患の処置のための方法を提供する。
本発明の方法は、口腔の表面、例えば歯、歯肉、歯齦、または舌を、治療有効量の組成物と接触させることを含む。本発明のいくつかの方法は、予防有効量の組成物を個体に投与することによる口腔関連のバイオフィルムの予防を含む。組成物は、歯垢の処置または予防用のデントリフィス、例えば練り歯磨きとして処方され得る。他の実施形態では、バイオフィルムは、舌、口腔粘膜、または歯肉に位置し得る。一部の実施形態では、組成物はうがい薬として処方される。一部の実施形態では、組成物は、ペイント、フォーム、ゲル、またはワニスとして、例えば、フッ化物含有組成物内で処方される。一実施形態では、組成物は、患者がフッ化物処置のために数分間着用するマウスガード内のゲルまたはフォームの形態である。他の実施形態では、組成物は、歯またはその他の口腔表面に適用可能な接着性ストリップに接触している。組成物は、液体ポリマー処方物を含み得、同処方物は、歯等の表面、皮膚、粘膜に好ましくは局所的に適用され、歯や口腔粘膜に適用される場合、食事またはブラッシングなどの日常的な条件下で、または皮膚に適用される場合、日常的な洗浄や摩擦の条件下での除去に耐えられるように、その表面に接着するフィルムとして乾固する組成物である。あるいは、組成物は、包帯、被覆材、ガーゼ、ブラシ、インプラント等に適用可能であり、それを患者に投与する前にフィルムに乾固させることが可能である。
乳腺炎処置
本発明の別の実施形態では、組成物および方法は、乳腺炎を処置するために提供される。乳腺炎は、哺乳動物の胸部または***内の炎症組織である。乳腺炎は、多くの場合、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Streptococcus agalactiae、Streptococus uberis等の細菌感染と関連する。乳腺炎を引き起こすことが知られている細菌の一部もまたバイオフィルムを形成するが、すべての乳腺炎がバイオフィルム形成に起因するわけではない。
乳腺炎は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ(乳牛)、およびその他の動物において生じ得る。乳腺炎は乳牛にとって特に問題である。ウシでは、多くの場合乳頭管内の細菌に対する応答として白血球が乳腺中に放出されると、その状態が生じる。繰り返し感染したウシは、群内で感染が伝播するのを防止するために、多くの場合淘汰されなければならない。感染したウシに由来するミルクの喪失、ならびに感染に起因するウシおよび群全体の喪失は、世界中の乳製品業界に対して大きな経済上の喪失を引き起こす。米国内では、例えば、乳腺炎は、乳製品業界にとって、毎年最大20億ドルのコストとなると推定されている。
方法は、組成物を乳腺炎の処置を必要とする哺乳動物に投与するために提供される。本発明の方法は、乳腺炎の予防、治療、または治癒を含む。一部の実施形態では、乳腺炎が別の地区または別の動物に拡散するのが阻止される。
上記で議論した処方物、投与量、および投与経路は、本発明のこれらの実施形態に適用可能である。例えば、様々な実施形態では、組成物は、非経口により、経口により、局部的に、または局所的に投与され得る。組成物は、静脈内、筋肉内、または皮下注入により適用され得る。組成物は、当技術分野において公知なように、乳頭管経由で輸液により適用され得る。本発明の方法では、組成物は、柔軟剤、乳化剤、増粘剤、溶媒等を含み得る、薬学的に許容される担体中に投与され得る。
組成物は、1日1回用量または多数回用量で、例えば、1日当たり2、3、4回、もしくはそれを超える用量で投与され得る。組成物の総1日量は、約0.01mg、0.1mg、1mg、2mg等、最大約1000mgであり得る。一部の実施形態では、投与される総1日量は、約0.01mg~約1mg、約1mg~約10mg、約10mg~約100mg、約100mg~約500mg、または約500mg~約1000mgである。実際の投与量は、投与される具体的な組成物、投与様式、および当技術分野において公知のその他の因子に依存して変化し得る。組成物は、別の公知の抗菌処置、例えば抗生物質と連携して投与され得る。
組成物は、組成物を***または乳首上に直接適用するまたは拡散させることにより、ウシの***に局所的に投与可能である。組成物は、液体、粉末、ローション、クリーム、ゲル、油、軟膏、ゲル、固体、半固体処方物、またはエアゾールスプレーとして処方され得る。本発明の方法は、乳首を組成物中にディッピングすることをさらに含み得る。乳首のディッピングは、すでに感染している***を処置する、または乳腺炎の発症を予防的に防止するのに使用可能である。組成物は、搾乳直前、搾乳直後、または両方において適用され得る。乳首をディッピングする方法は当技術分野において公知であり、米国特許第4,113,854号、ならびに米国特許公開第2003/0235560号および同第2003/0113384号においてより詳細に記載されており、そのそれぞれは参照により本明細書にそのまま組み込まれている。方法は、組成物の投与後に、乳頭口に対して物理的バリアを設ける乳首シーラントの使用をさらに含み得る。
他の実施形態では、組成物は乳腺内輸液により提供可能である。乳腺内輸液は、乳頭管を通じて***内に抗生物質を強制的に注入することを含む。輸液は、キャノーラ油等の薬学的に許容される担体と組み合わせて本明細書に開示される組成物を含み得る。輸液前に、乳首は、例えばアルコールスワブを用いて洗浄される。抗生物質輸液デバイスは、乳頭管に当て嵌まるサイズおよび形状のカニューレを備え得る。カニューレは、線状管を通じて完全または部分的に挿入され得る。輸液方法は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,983,634号および同第5,797,872号に記載されており、そのそれぞれが参照により本明細書にそのまま組み込まれている。
本発明の方法は、本発明の組成物と共に、または組成物の投与前もしくは投与後の連続的な投与において抗生物質を投与することをさらに含み得る。
創傷および外科的使用
組成物は、その他の種類の生体組織上のバイオフィルムを防止および処置するのにも適用され得る。組織は、例えば、皮膚、粘膜、創傷、またはオストミーを含む。上記したように、組成物は創傷処置に有用である。創傷は、床ずれ、慢性創傷、火傷、褥瘡、糖尿病創傷、およびその他の形態の皮膚外傷を含む。創傷は、多くの場合、治癒を妨げ、慢性状態を引き起こすおそれのあるバイオフィルム形成を起こしやすい。次亜塩素酸および酢酸組成物は、創傷郭清および損傷を受けた組織の洗浄に使用可能である。
組成物は、手術前または手術後に皮膚を処置するために外科現場でも使用可能である。組成物はバイオフィルム形成を引き起こす感染を予防する。時には、手術を必要とするエリア、例えば外傷性創傷は、バイオフィルムを発症するリスクがすでにある可能性がある。次亜塩素酸組成物は、外科的切開前にエリアを殺菌するのに使用可能であり、バイオフィルムを処置するのに役立つだけでなく、手術中にバイオフィルムがその他の組織に拡散する可能性も低下させる。組成物は、外科手術野内の任意の表面を殺菌するために使用され得る。
その他の医学的用途
創傷ケアに加えて、本発明のHOCl組成物は非外傷性の組織処置にも使用可能である。HOCl組成物は、膀胱感染またはカテーテル関連***等を予防または処置するために、膀胱洗浄に使用され得る。同組成物は、気道消化管、例えば洞内の感染および肺感染、または口腔、咽頭、副鼻腔、鼻腔副鼻腔、喉頭、梨状洞、または食道内の感染を処置するのに同様に使用され得る。同組成物は、感染を引き起こす微生物の増殖に対抗し、有害な免疫応答を引き起こすアレルゲンを低下させるのに使用可能である。組成物は、胃腸炎、Clostridium difficile感染、および小腸細菌異常増殖(SIBO)等の微生物感染を退治するために、胃、腸、および結腸を含む胃腸管にも投与され得る。
様々な他の実施形態では、組成物は、眼感染に対抗するために点眼薬の形態で投与可能、またはコンタクトレンズを洗浄もしくは保管し、細菌増殖およびバイオフィルム形成を防止するのに使用可能である。他の実施形態では、組成物は、口腔内のバイオフィルム蓄積に対抗するために口腔リンスもしくはうがい薬として使用可能である、または総義歯を洗浄もしくは保管するのに使用可能である。
生体組織上のバイオフィルムを処置または予防するために防腐剤として使用することに加えて、組成物は、例えば、ヘルスケア設備、食品調理、料理用具等で使用されるその他表面上で殺菌剤として使用可能である。組成物は、カウンタートップ、病院ベッド、または食品調理表面を殺菌するのに使用可能である。
組成物は、例えば、医療機器および外科用器具を殺菌するのに使用可能である。医療機器は、多くの場合無菌状態で最初に供給されるが、追加のまたは後続する洗浄および殺菌または滅菌処理を必要とし得る。特に再利用可能な医療機器は、再利用前に滅菌処理または殺菌しなければならない。組成物は、任意の公知技術を使用して医療機器に適用することができる。例えば、組成物は、デバイスの表面上にそれをワイピングする、もしくはその上に拡散させることにより、エアゾールもしくはミスト形態の組成物をデバイス上にスプレーすることにより、デバイスをある容積の組成物を含有する容器中にディッピングすることにより、またはデバイスを蛇口等からの組成物の流れの中に配置することにより適用することができる。付加的に、または二者択一的に、医療機器および外科用器具は、組成物中に浸漬して保管され、使用時に取り出される場合もある。
本明細書に開示される次亜塩素酸組成物による処置は、その他の公知技術、例えばオートクレーブ処理に付加して行うことができる。あるいは、組成物は、オートクレーブ処理の代わりに適用することができる。加熱滅菌処理は、すべてのデバイスに有用であるわけではないので(例えば、一部のデバイスは、高温に耐えられない繊細な部品または電子機器を含む)、次亜塩素酸組成物は有用な代替品であり、そのようなデバイスを滅菌または殺菌する有効な方法を提供する。
組成物は、インプラントおよび人工器官を、それらを身体に導入する前に殺菌するのにも使用可能である。そのようなデバイスとして、整形外科用インプラント、ワイヤー、スクリュー、ロッド、人工椎間板、人工関節、軟組織充填剤、ペースメーカー、子宮内避妊具、冠動脈ステント、耳内チューブ、人工水晶体、歯科インプラント、および当技術分野において公知の多くのその他のものが挙げられる。
本明細書に記載される安定化した次亜塩素酸および酢酸組成物は、本明細書で議論されるすべての表面および組織上のバイオフィルム予防およびバイオフィルム除去の両方に有用である。バイオフィルムは、病原菌を従来型の抗菌剤に対してはるかにより高く耐性にするので、バイオフィルムを形成する病原菌は、その耐性遺伝子を共有および改変し、ならびに空気中および周囲に拡散する能力がより高い。バイオフィルム発現の結果として、単純な感染が慢性となり得、抗生物質および防腐剤は機能を停止し、新しい系統の感染が出現する。
しかし、酢酸(またはその他の有機酸)および次亜塩素酸の両方は、バイオフィルムを処置および予防するのに特に有用である。本明細書に開示されるHOCl組成物は、免疫系の天然の殺菌物質を模倣する。したがって、組成物は微生物耐性の影響を受けにくい。さらに、組成物は無毒性、無刺激性であり、掻痒を緩和する。
様々な実施形態および上記使用は、当技術分野において理解されるように、様々な投与方法を含む。
次亜塩素酸組成物は、HOCl分子のサイズが小さいことに起因して、経皮的処置に特に有効である。次亜塩素酸は、上皮および創傷表面に浸透することができ、したがって一般的により深い組織層に到達することができ、注入を必要としない。これは、皮膚の最上層の下に形成されるバイオフィルム感染に特に有用である。多くのその他の抗菌処置とは異なり、酢酸および類似した有機酸は、侵襲的な送達機構を必要とせずに皮膚のより深い層に浸透することができる。
しかし、一部の実施形態では、HOClが皮膚内に浸透するのを防止するのが望ましい場合があり、したがって組成物は、賦形剤、担体、乳化剤、ポリマー、またはその他の成分と組み合わせることができ、その例は、参照により本明細書にそのまま組み込まれている米国特許出願第2016/0271171号で議論されている。
組成物が皮膚上にスプレー、ワイプ、または擦りつけ可能である局所的使用に加えて、他の実施形態では、組成物は処置を必要とする特定の組織内に注入され得る。組成物は、胃腸管に投与するために、カプセル形態で摂取され得る。組成物は、徐放性または遅延放出性のカプセル内に供給され得る。組成物は、直腸または膣内に挿入するために坐剤として提供可能である。
他の実施形態では、組成物は、アレルギー反応、副鼻腔感染等の処置を含み得る気道消化管を処置するための鼻腔スプレーとして提供可能である。鼻腔スプレーは、小滴、エアゾール、ゲル、または粉末の形態であり得る。緩衝化された次亜塩素酸および酢酸組成物は、必要に応じて、鬱血除去薬または抗炎症剤または抗ヒスタミン剤のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。組成物は、当技術分野において公知なように、鼻腔スプレーディスペンサーを用いてエアゾール化可能である。
鼻腔スプレーは、鼻腔粘膜への送達を促進する薬学的に許容される担体、例えば希釈剤も含み得る。担体は水性担体、例えば生理食塩水であり得る。組成物は等張性であり得、血液および涙液と同じ浸透圧を有する。適する無毒性の薬学的に許容される担体は当業者に公知である。様々な担体が、例えば、組成物が液滴として使用されようが、またはスプレー、鼻腔懸濁物、鼻腔軟膏、鼻腔ゲル、もしくは別の鼻腔形態として使用されようが、組成物の異なる処方物に特に適し得る。その他の添加剤、賦形剤、乳化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、コンシステンシー補助剤、およびゲル化剤も含まれ得る。好ましくは、次亜塩素酸の安定性を低下させることなく、所望の特徴を付与する添加剤を選択すべきである。添加剤は、組成物を粘膜上に均等に投与する、または組成物の吸収速度を低下もしくは遅延させるのに役立ち得る。
組成物は、液滴、小滴、およびスプレーを投与するための当技術分野において公知の様々なデバイスにより送達可能である。鼻腔スプレー組成物は、点滴器、ピペット、または分注器により送達可能である。微細な小滴、スプレー、およびエアゾールは、鼻腔内ポンプディスペンサーまたはスクイズボトルにより送達可能である。組成物は、定量吸入器、例えば乾燥粉末吸入器またはネブライザーによっても吸入可能である。
ナノ粒子カプセル化による制御放出
次亜塩素酸および/または酢酸の安定な水溶液は、ナノ粒子からの酸の制御放出が可能となるナノ粒子内にカプセル化可能である。制御放出は持続的な抗菌保護を可能にする。
図13は、ナノ粒子1305内にカプセル化された次亜塩素酸の水溶液1303を含む抗菌組成物1301を示す。次亜塩素酸の水溶液1303は、酸が安定である溶液を生成する本明細書に記載される方法により作製される。安定な次亜塩素酸溶液1303は、次にナノ粒子1305内にカプセル化される。ナノ粒子は、次亜塩素酸の徐放を可能にする。描かれていないが、酢酸も制御放出のためにナノ粒子内にカプセル化され得る。
ナノ粒子は、ナノ粒子からの酸の制御放出を実現する任意の種類のナノ粒子であり得る。ナノ粒子は、ポリマー、例えば有機ポリマーを含み得る。制御放出型ナノ粒子に適するポリマーの例として、アクリル酸、カラゲナン、セルロース性ポリマー(例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)、キトサン、シクロデキストリン、ゼラチン、グアーガム、ハイアミラーゼスターチ(high amylase starch)、ヒアルロン酸、ローカストビーンガム、ペクチン、ポリアクリルアミド、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド酸(glycolide acid))、ポリ(乳酸)、ポリ(キシリトールアジペートサリチレート)、ポリアンヒドリド、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンイミン)、脂肪酸のポリグリセロールエステル、多糖類、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、およびキサンタンガムが挙げられる。制御放出型ナノ粒子を形成するためのポリマーの使用に関する詳細については、Binneboseら、PLOS Negl Trop Dis、9巻:e0004713頁(2015年);Camposら、Scientific Reports、5巻:13809頁(2015年);Dasguptaら、Mol. Pharmaceutics、12巻:3479~3489頁;Gaoら、The Journal of Antibiotics、64巻:625~634頁、(2011年);Leeら、International Journal of Nanomedicine、11巻:285~297頁(2016年);および米国特許第8,449,916号(参照により組み込まれている)を参照。ナノ粒子は、アルミノケイ酸塩(例えばゼオライト、例えば、方沸石、チャバサイト、クリノプチロライト、ヒューランダイト、リューサイト、モンモリロナイト、ナトロライト、フィリプサイト、またはスティルバイト)、硝酸アンモニウムカルシウム、ヒドロキシアパタイト(例えば、尿素変性ヒドロキシアパタイト)、金属水酸化物、金属酸化物、ポリホスフェート、またはシリコン化合物(例えば、二酸化ケイ素)を含有し得る。ナノ粒子は、脂質を含有し得る、すなわち脂質ナノ粒子であり得る。ナノ粒子はリポソームを含み得る。制御放出型ナノ粒子を形成するためのリポソームの使用に関する詳細については、Weinigerら、Anaesthesia、67巻:906~916頁(2012年)を参照。リポソームは多層状であり得る。ナノ粒子は、ゲル、ゾル-ゲル、エマルジョン、コロイド、またはヒドロゲルを含有し得る。制御放出型ナノ粒子を形成するためのヒドロゲルの使用に関する詳細については、Grijalvoら、Biomater. Sci.、4巻:555頁(2016年)を参照。ナノ粒子は、フォーマットの組合せ、例えばリポソーム内にカプセル化されたヒドロゲルを含有し得る。ナノ粒子はコアシェル構造を有し得る。ナノ粒子は生分解性であり得る。本発明の組成物は代謝拮抗剤を含み得る。代謝拮抗剤は金属イオンであり得る。例えば、代謝拮抗剤は、亜鉛、銅、または銀であり得る。
次亜塩素酸または酢酸の制御放出を可能にするナノ粒子は、ナノ粒子内にカプセル化されない酸の同容積の同一の水溶液から酸が拡散する場合よりも酸の拡散がゆっくりと生じることを可能にする。次亜塩素酸または酢酸の制御放出は、ナノ粒子の透過性の特徴、例えば、酸に対して部分的にまたは不十分に透過性であるナノ粒子に起因し得る。制御放出型ナノ粒子は、時間依存的なナノ粒子の分解またはその構造的完全性の障害に起因して酸を放出するナノ粒子であり得る。ナノ粒子からの酸の放出は、環境条件、例えばpH、温度、光、圧力、酸化還元条件、または特定の化学物質の存在が引き金となって生じ得る。
図14は、ナノ粒子1405内にカプセル化された次亜塩素酸の水溶液1403を含む抗菌組成物を作製する方法1401の図解である。方法は、空気がパージされているチャンバー1413内の水中における、水中でプロトン(H+)を生成する化合物1415と、水中で次亜塩素酸アニオン(OCl-)を生成する化合物1417との混合1411を必要とする。混合1411は、空気を含まない次亜塩素酸の水溶液1403を生成する。溶液1403は、次にナノ粒子1405内にカプセル化1421される。カプセル化は空気を含まない環境内で実施されてもよく、実質的に空気を含まない組成物が生成する。
気道消化管処置用組成物
本発明は、次亜塩素酸を含む組成物を用いて気道消化管を処置および/または調節する組成物および方法を提供する。本発明によれば、本明細書に記載するように作製される次亜塩素酸組成物は、気道消化管感染の処置および/または腸内バイオームの調節にとって安全かつ有効である。
次亜塩素酸および酢酸を含む組成物は、気道消化管を処置するための鼻腔スプレーとして提供可能である。鼻腔スプレーは、小滴、エアゾール、ゲル、または粉末の形態であり得る。緩衝化された次亜塩素酸および酢酸組成物は、必要に応じて、鬱血除去薬または抗炎症剤または抗ヒスタミン剤のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。組成物は、当技術分野において公知なように鼻腔スプレーディスペンサーを用いてエアゾール化可能である。
鼻腔スプレーは、鼻腔粘膜への送達を促進するために、薬学的に許容される担体、例えば希釈剤も含み得る。担体は水性担体、例えば生理食塩水であり得る。組成物は等張性であり得、血液および涙液と同一の浸透圧を有する。適する無毒性の薬学的に許容される担体は当業者に公知である。様々な担体は、例えば、組成物が液滴として使用されるべきであろうが、またはスプレー、鼻腔懸濁物、鼻腔軟膏、鼻腔ゲル、もしくは別の鼻腔形態として使用されるべきであろうが、組成物の異なる処方物に特に適し得る。その他の添加剤、賦形剤、乳化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、コンシステンシー補助剤、およびゲル化剤も含まれ得る。好ましくは、次亜塩素酸の安定性を低下させることなく所望の特徴を付与する添加剤を選択すべきである。添加剤は、組成物を粘膜上に均等に投与する、または組成物の吸収速度を低下もしくは遅延させるのに役立ち得る。
本発明に従って使用される組成物は、本明細書に記載されるように製造され、気道消化管の全部または一部への送達用に処方される。例えば、次亜塩素酸は、本明細書に記載されるように、鼻腔内送達用にエアゾールで処方可能である。鼻腔内送達は、気道消化管全体に対処するための媒体であり得るが、鼻、洞、肺、および上部GI管内の感染を処置するのに主に使用される。その他の例では、次亜塩素酸は経口送達用に処方される。本発明の組成物は、ふさわしい希釈剤またはアジュバント内に薬学的送達(deliver)(例えば、経口投与)用に調製される、または飲料として送達される流体の一部として処方される。本発明によれば、次亜塩素酸組成物は、水分補給飲料(例えば、スポーツドリンク)、ミルクシェーク、電解質バランス飲料、スムージー等として処方可能である。本発明の組成物は、食品、例えばヨーグルトにも組込み可能である。さらに、本発明の組成物は、例えば、坐剤、浣腸を通じて気道消化管に直接送達するために、または手術中に直接適用するために処方され得る。
本発明の組成物はその他の成分と共に処方され得る。例えば、次亜塩素酸組成物は、抗生物質、抗ウイルス薬、プロバイオティック、およびその他の医薬または栄養補助食品と組み合わせることができる。したがって、本発明の組成物は、気道消化管の調節および気道消化管内の感染処置の両方に有用である。
組成物は、液滴、小滴、およびスプレーを投与するための当技術分野において公知の様々なデバイスにより送達可能である。鼻腔スプレー組成物は、点滴器、ピペット、または分注器により送達可能である。微細な小滴、スプレー、およびエアゾールは、鼻腔内ポンプディスペンサーまたはスクイズボトルにより送達可能である。組成物は、定量吸入器、例えば乾燥粉末吸入器またはネブライザーにより吸入することも可能である。
バイオフィルム処置用の酢酸および次亜塩素酸の組成物
開示される酢酸および次亜塩素酸の処方物は、皮膚またはその他の組織を含む表面上のバイオフィルムを処置するのに優れている。組成物は、酢酸および次亜塩素酸(hypocholorous acid)の組合せが、いずれかの物質単独よりも高い殺菌品質を実現するバランスのとれた処方を使用する。実際、本発明は、開示される特定の組合せは、酢酸および次亜塩素酸を添加することにより期待される殺菌力よりも高い殺菌力を実現することを認識する。換言すれば、組成物はそれらの部分の合計より高いことが判明した。これらの利益は、図15~図21の付随的なデータに示されており、酢酸および次亜塩素酸のバランスのとれた組成物が、いかにバイオフィルムに対する殺菌能力の強化を実現し、市販されているその他のすべての製品より性能がすぐれているかを実証する。性能上の差異は、広範囲の濃度にわたって示されている。
さらに、酢酸は高濃度において毒性を示すので、先行技術は、皮膚またはその他の組織上での酢酸の使用を、微量を除き避けるように教示している。開示される組成物の一部は、2%またはそれより高い酢酸を含有し、HOClと組み合わせたときに、皮膚およびその他の組織を処置するのに安全かつ有効であることを証明している。これらの組成物内のHOClは、酢酸について調節効果を有することが判明している。これは、組織に対して危害をもたらさずに、酢酸の抗菌特性を組成物が利用することを可能にする。さらに、HOClは鎮痛機能を有し、したがって、患者に対して過度の疼痛または不快感をもたらさずに、より高濃度のHAcを皮膚またはその他の組織上で使用することも可能にする。
例えば図15は、その他の市販抗菌組成物に対する様々な濃度のHOClおよび酢酸の比較を示す。x軸に沿って列挙するように、8つの異なる処置法を試験した。各組成物を、24時間フィルター増殖S.aureusバイオフィルムに曝露し、バイオフィルムの減少を、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(cfu/ml)で測定し、y軸に沿った対数スケールに基づき報告した。バイオフィルムの減少の測定を3時間および6時間において記録した。各カラムは、したがって2つのバーを有し、経時的なバイオフィルムに対する各組成物の効果を示す。
最初の3つのカラムは、3つの異なる濃度の酢酸(それぞれ0.25%、1.0%、および2.0%)を用いた200ppmのHOClの結果を示す。4番目のカラムは1%酢酸単独を示す。次の4つのカラムは次亜塩素酸組成物である市販の抗菌製品:Prontosan;Octenilin;Pyrisept;およびMicrodacynを示す。
結果は、酢酸および次亜塩素酸の3つの組合せすべてが、その他の組成物のいずれよりもバイオフィルムに対して効果的であったことを示している。3時間において、試験組成物A(200ppmのHOClおよび0.25%HAc)は、バイオフィルム処置における現在のマーケットリーダーであるProntosanとほぼ同等に良好な性能を有した。試験組成物Aは、1%HAcまたはその他の市販製品よりもはるかに性能がすぐれた。しかし、6時間後、組成物Aは、Prontosanさえも凌ぐきわめて高い有効性を示した。
一方、試験組成物B(200ppmのHOClおよび1.0%HAc)は、バイオフィルムの処置においてよりいっそう有効であった。組成物Bを1%HAcと比較すると(4番目のカラム内)、HOClの添加の予期せぬ利益を示す。同一濃度の酢酸を有するにもかかわらず、組成物Bは、3時間および6時間の両方において1%HAc単独よりもはるかに性能がすぐれている。
組成物C(200ppmのHOClおよび2.0%HAc)は、試験した組成物のなかでも群を抜く最大のバイオフィルムの減少を示した。3時間および6時間の両方において、組成物Cは、市販製品よりも桁違いに有効であった。
これらデータは、バイオフィルムの減少において、市販製品のいずれよりも有効であることに加えて、酢酸および次亜塩素酸の両方を含有する組成物は、酢酸単独(1%HAc)または次亜塩素酸単独(microdacyn)よりも有効であり、それらの優れた結果は、2つの成分の相加効果により単純には説明され得ないことを示している。いかなる特定の機構にも拘泥するものではないが、データは、酢酸および次亜塩素酸の組合せが、組成物を、各成分単独の有効性に基づきそうでない場合に予測されるよりも有効にする相乗効果をもたらすことを示している。
図16~図19は、P.aeruginosaバイオフィルムに対するHOClおよびHAcの様々な組成物の効果を示す。図16は、1%酢酸および種々の濃度のHOClを有する組成物の比較を示す。5つの異なる処置法を、0ppm、50ppm、100ppm、150ppm、および200ppmの濃度のHOClを用いて試験した。各組成物を、24時間フィルター増殖P.aeruginosaバイオフィルムに曝露し、バイオフィルムの減少を、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(cfu/ml)で測定し、y軸に沿った対数スケールに基づき報告した。2時間および4時間においてバイオフィルムの減少の測定を記録した。
グラフに示すように、2時間における減少は、HOClの濃度が高いほど大きく、150ppmにおいて特に有意なスパイクが認められる。4時間においては、HOClの濃度が低くてもスパイクが生じる。
図17は、HOClの濃度が100ppmに維持され、酢酸のパーセンテージが0.25%から2%まで変化する異なる組成物について、P.aeruginosaに対する効果を示す。図18は、HOClとHAcを両方増加させたときの効果を示す。
図19~図21は、様々な条件下でのS.aureusおよびP.aeruginosaに対する、HOClおよびHAcの異なる組成物を示す。図は、次亜塩素酸および酢酸の組合せにより取得される優れた結果を示し、これらの結果はこれら2つの化合物の相乗効果を実証する。
開示される様々な処方物は、異なる種類の組織内のバイオフィルム感染を処置するのに有効であり得る。例えば、200ppmのHOClおよび0.25%HAc組成物は、局所適用、例えば手の殺菌またはうがい薬に有用である。図15に示すように、この組成物は、表面レベルのバイオフィルムの処置において、その他の市販製品よりも有効である。より深く組織内に浸透して処置する場合、または特に悪性のバイオフィルム感染もしくは表面下に浸透した侵襲的なバイオフィルムを除去する場合、より高いパーセンテージのHAc、例えば2%HAcを含む200ppmのHOClの処方物が使用され得る。この組成物は、感染した創傷を処置し、創傷内のバイオフィルムを予防し、湿疹を処置する、またはその他の感染を処置するのに有用である。この処方物は、歯の根内に形成されたバイオフィルムを退治するのに有効であることが判明した。
図20~図21は、特に先行技術および市販組成物と比較した際の、様々なバイオフィルムに対する酢酸および次亜塩素酸組成物の予期せぬ有効性を裏付ける追加のデータを示す。図から明らかなように、異なるやり方でHOClおよびHAcの濃度のバランスをとっている様々な組成物は、異なる種類の組織上の異なる種類のバイオフィルムを標的とすることができる殺菌組成物の類別を提供する。
開示されるHOClおよびHAc組成物の別の利益は、組成物は、病原性バイオフィルムの減少において特に有効である一方、組織上および内に共生的に生息する「善良な」バイオフィルムおよびその他の病原菌の増殖を阻害しないことが判明したことである。いくつかのトライアルでは、善良なバイオフィルムは減少するものの、その程度は病原性バイオフィルムよりも小さく、標的バイオフィルムよりも迅速に再増殖した。特にアルコールに基づく殺菌剤と比較して、開示される組成物は、善良な病原菌にダメージを与えることなく病原性バイオフィルム感染を標的とすることにおいてより有効であった。開示される組成物は、したがって、身体の天然の細菌叢に危害を加えることなく、バイオフィルム感染を退治する標的化された処置である。
参照による組み込み
本開示全体を通じてなされた、その他の文書、例えば特許、特許出願、特許公開、ジャーナル、書籍、文献、ウェブコンテンツに対するありとあらゆる参照および引用は、これによりあらゆる目的のために参照により本明細書にそのまま組み込まれている。
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱せずにその他の特定の形態で具体化され得る。上記実施形態は、したがってあらゆる点で本明細書に記載される本発明に対する制限ではなく、むしろ例示とみなされるべきである。
(実施例1)
生成物分析
分光光度法が可視範囲もカバーするように拡張されれば、色を検出することができる。HOClの製造中に一般的に生成する気体は、ClO2、Cl2O、およびCl2であり、そのすべては黄色または黄色~赤色として可視範囲内で検出可能である。Tzanavarasら、(Central European J. of Chemistry、2007年、5巻(1号)、1~12頁)。図9のデータは、本発明に基づく方法により製造されるHOClは、有色物質を欠くことにより示されるように、有色気体に由来する吸収を示さないことを例証する。HOClは292nmにピークを生成することが公知である(Fengら、2007年、J. Environ. Eng. Sci.、6巻、277~284頁)。
(実施例2)
上記プロセスにより製造したHOClを、4つの異なる種類の水溶液:(1)試薬グレードの水(脱イオン水);(2)水道水;(3)リン酸緩衝液を含む試薬グレードの水;および(4)リン酸緩衝液を含む水道水を使用して、分解を促進するために40℃のヒートストレス下で保管した。初期反応(T=0);4週間(T=4);8週間(T=8);および12週間(T=12)後に、HOCl生成物の特徴をモニタリングした。
図10は、最初(T=0)に生成したHOClの量(百万分率(ppm))およびその経時的安定性を示すグラフである。データは、リン酸緩衝液を含まない試薬グレードの水(脱イオン水)が12週間にわたり最も安定であることを示しており、生成した初期量からの生成物分解量が最も少ないことを示す。脱イオン水は、水道水を使用して生成される生成物よりもはるかに安定な生成物を生成する。さらに、驚くべきことに、データは、リン酸緩衝液は、生成したHOCl生成物の量に悪影響を及ぼす可能性があることを示している。
図11は、HOCl生成物のpHが経時的にどのように変化するかを示すグラフである。いずれのケースでもpHは経時的に低下したが、すべてのケースにおいて、pHは、12週間にわたり、pH=4~pH=7の範囲内に留まった。
図12は、HOCl生成物の酸化能力を経時的に示すグラフである。データは、生成物は、開始水にかかわらず12週間にわたり酸化能力を保持したことを示している。
(実施例3)
酢酸と塩酸の比較
上記プロセスを使用して、HOClを塩酸(HCl)および酢酸を使用して製造し、その後40℃のヒートストレス下で保管した。最初に生成したHOClの量を記録し(T=0)、次に12日間後に残存するHOCl生成物の量を記録した。各3バッチ製造した。HClから生成したHOClに関するデータを表1に示す。酢酸から生成したHOClに関するデータを表2に示す。
データは、酢酸を使用すれば、pHの安定性がより高いことにほぼ確実に起因して、より高い生成物安定性を実現することを示している。あらゆる特定の理論または作用機序により制限されることなく、塩酸と比較して酢酸のプロトン化能力は異なること、すなわち、酢酸が液体に対して供与するプロトンは塩酸よりも少ないことが、経時的により高いHOCl安定性をもたらすと考えられる。