JP7205022B2 - 樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および殺菌方法 - Google Patents

樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および殺菌方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形体、樹脂成形体の製造方法、および殺菌方法に関する。
樹脂組成物の成形体の表面を加工して、当該表面に抗菌性を付与する方法が知られている。
たとえば、特許文献1~特許文献3には、樹脂組成物の表面に複数のナノサイズの突起を形成して、当該表面に抗菌性を付与する方法が記載されている。これらの文献に記載の方法によれば、おそらくは当該突起に接触した細菌が、突起に突き刺さって死滅することにより、抗菌性が発揮されると考えられる。
具体的には、特許文献1には、上記突起間の間隔を細菌の大きさに比べて十分に小さくして細胞と接触しやすくし、かつ、上記突起をアスペクト比が大きく細菌が突き刺さり得る針状の形状にすることにより、抗菌性能を発揮された、抗菌性物品が記載されている。なお、特許文献1には、上記抗菌性物品の表面における純水の静的接触角が30°以下であると、当該表面が親水性となり、細菌が微小突起に突き刺さりやすくなることから、抗菌性が向上すると記載されている。特許文献1によれば、上記抗菌性物品は、所望の凹凸形状を有する原板を液体状の樹脂組成物の表面に押圧しながら、当該液体状の樹脂組成物を硬化させる方法で、作製することができる。
また、特許文献2には、ブラックシリコンなどの表面に、約100nm~約600nmの高さを有するナノスパイクのアレイを形成した、合成殺菌表面が記載されている。特許文献2によれば、当該ナノスパイクは、細胞膜を穿孔するため、細胞にとって致死的であるとされている。特許文献2によれば、上記ナノスパイクのアレイは、反応性イオンビームエッチングなどの方法で作製することができる。
また、特許文献3には、複数の凸部を有する合成高分子膜であって、当該合成高分子膜の法線方向から見たとき、当該複数の凸部の2次元的な大きさが20nm超500nm未満の範囲にある、合成高分子膜が記載されている。なお、特許文献3には、上記合成高分子膜の表面のヘキサデカンへの接触角が51°以下であると殺菌性が良好であるが、水の接触角(親水性)は殺菌作用に直接には関係していないと記載されている。特許文献3によれば、上記合成高分子膜は、陽極酸化ポーラスアルミナ層を型として紫外線硬化樹脂の表面に押圧しながら、当該紫外線硬化樹脂を硬化させる方法で、作製することができる。
なお、特許文献4には、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)の表面に、レーザーデトネーション法により得られる原子状酸素ビームを照射(照射量は最大で6.0×1019atoms/cm)することで、高さ10nm程度の凹凸構造が形成されるなどして、これにより上記表面に細胞接着性が付与されると記載されている。特許文献4には、同じ条件で低密度ポリエチレン(LDPE)の表面に原子状酸素ビームを照射しても、同様の凹凸構造は形成されず、細胞接着性の変化はみられなかったと記載されている。なお、特許文献4の発明者は、レーザーデトネーション法におけるレーザーのエネルギーを5J/Pulse~7J/Pulseとし、上記レーザーの1秒間あたりの繰り返し数(パルスレート)を1Hz程度として、実験を行っていたことが知られている(非特許文献1および非特許文献2)。
特開2016-093939号公報 特表2017-503554号公報 特開2016-120478号公報 特開2005-036106号公報
Tagawa et al., "Synchrotron Radiation Photoelectron Emission Study of SiO2 Film Formed by Hyperthermal O-Atom Beam at Room Temperature," Japanese Journal of Applied Physics, 2005, Vol. 44, No. 12, pp.8300-8304 Tagawa et al., "Atomic Beam-Induced Fluorination of Polyimide and its Application to Site-Selective Cu Metallization," Langmuir, 2007, Vol. 23, pp.11351-11354
特許文献1~特許文献3に記載のように樹脂組成物の成形体の表面に複数のナノサイズの突起を形成してなる樹脂成形体は、抗菌剤を成形体の表面に付与してなる樹脂成形体と比較して、抗菌剤の剥離および脱落などによる抗菌性の低下が生じにくいことから、より長い期間にわたって抗菌性能を維持できると期待される。しかし、特許文献1および特許文献3に記載の方法は、硬化型の樹脂にしか抗菌性を有する突起を形成できないため、適用可能な材料に制限があり、かつ、抗菌性を付与することができる成形体の形状はフィルム状にほぼ限定されていた。また、特許文献2には、反応性イオンビームエッチングにより作製されるブラックシリコン以外には上記ナノスパイクのアレイを作製する方法が記載されておらず、一方で、上記ナノスパイクのアレイの作製が確かめられているブラックシリコンは、硬く脆く、かつ、形状加工性が低いために用途が限定され、様々な状況における殺菌処理への応用は困難である。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、材料および成形体の形状の選択可能性を広げることができる、表面に抗菌性を付与された樹脂成形体、当該樹脂成形体を製造する方法、および当該樹脂成形体を用いた殺菌方法を提供することを、その目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一態様に関する樹脂組成物の成形体は、その表面に、原子状酸素ビームの照射により抗菌性を付与された領域を有する。
また、上記課題を解決するための本発明の別の態様に関する抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体の製造方法は、樹脂組成物の成形体を用意する工程と、原子状酸素ビームの照射により、前記成形体の表面に抗菌性を付与する工程と、を有する。
また、上記課題を解決するための本発明の別の態様に関する殺菌方法は、上記樹脂成形体を用意する工程と、上記樹脂成形体を、細菌を含む液体、固体または気体に接触させる工程と、を含む。
本発明により、材料および成形体の形状の選択可能性を広げることができる、表面に抗菌性を付与された樹脂成形体、当該樹脂成形体を製造する方法、および当該樹脂成形体を用いた殺菌方法が提供される。
図1Aは、本発明の一実施形態に関する樹脂組成物の成形体が有する、その内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する突起を示す模式的な側面図であり、図1Bは、その外側に向けて凸の形状の斜面を有する突起を示す模式的な側面図である。 図2Aは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、純水との接触角を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図2Bは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、ジヨードメタンとの接触角を縦軸に、プロットして得たグラフであり、実施例における図2Cは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、n-ヘキサデカンとの接触角を縦軸に、プロットして得たグラフである。 図3Aは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値および水素結合成分(B)の値の合計値(A+B)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図3Bは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値に対する水素結合成分(B)の値の割合(B/A)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図3Cは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、合計値に対する水素結合成分(B)の値の割合(B/(A+B))を縦軸に、プロットして得たグラフである。 図4Aは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値および極性成分(C)の値の合計値(A+C)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図4Bは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値に対する極性成分(C)の値の割合(C/A)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図4Cは、実施例におけるそれぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、合計値に対する極性成分(C)の値の割合(C/(A+C))を縦軸に、プロットして得たグラフである。
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、樹脂組成物の成形体の表面に原子状酸素ビームを照射することによって、当該表面に抗菌性を付与する方法を開発した。当該方法によれば、幅広い種類の樹脂を含む樹脂組成物の成形体に抗菌性を付与することができる。また、当該方法によれば、所望の形状を有する成形体を作製した後に、当該成形体の表面に原子状酸素ビームを照射すればよいため、様々な形状を有する成形体へ適用可能である。
[抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体]
上記本発明の一の実施形態は、樹脂組成物の成形体であって、その表面に、原子状酸素ビームの照射により抗菌性を付与された領域を有する、樹脂成形体に関する。
上記抗菌性を付与された領域は、原子状酸素ビームの照射により形成された、複数のナノサイズの突起を有する。上記複数の突起は、上記表面に対して略垂直な方向へ突出しており、上記領域に接触した細菌を上記突起が突き刺すことにより、上記細菌を死滅させると考えられる。
本実施形態において、上記複数の突起は、上記突起の内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する。図1Aは、その内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する突起を示す模式的な側面図であり、図1Bは、その外側に向けて凸の形状の斜面を有する突起を示す模式的な側面図である。このとき、任意に選択した10個の突起のうち8個以上の突起が、突起の幅が高さ方向に対して単調に減少するような形状を有することが好ましい。本発明者らの知見によれば、上記複数の突起がその内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する(図1A参照)と、上記複数の突起がその外側に向けて凸の形状の斜面を有する(図1B参照)ときに比べて、上記樹脂成形体の抗菌性が顕著に高まる。これは、上記複数の突起がより尖った針状となり、上記抗菌性を付与された領域に接触した細菌を上記突起がより突き刺しやすくなったことによると考えられる。
なお、原子状酸素ビームを樹脂組成物の成形体の表面に単に照射するのみでは、抗菌性が十分に付与されなかったり、むしろ特許文献4に記載のようにかえって細胞接着性を付与されてしまったりすることがある。そのため、上記樹脂組成物の成形体の表面に十分な抗菌性を付与するためには、原子状酸素ビームの照射条件を適切に設定することが必要であると考えられる。
上記突起の形状は、以下の方法で算出された突起曲率指標をもとに判断することができる。
(突起曲率指標の算出方法)
それぞれの評価用サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、得られたSEM画像から、任意に10個の突起形状を選択する。選択された突起形状を構成する2つの斜辺(合計20個)を、1ピクセルあたり0.0099μmとして換算した実寸法XY座標データに変換する。1つの斜辺について、変換したXY座標データのうち、X軸方向に5ピクセル分のデータを1つのまとまりとして抽出し、抽出されたXY座標データの2次元の多項式最少二乗近似式(ax+bx+cの式)を求め、式中のaの値を求める。この計算をX座標に対して1ピクセルずつずらし、斜面の全座標データに対してaの値を計算する。得られた全てのaの値の平均値を求め、斜辺平均値とする。同様に、20個の斜辺すべてについて斜辺平均値を算出し、算出された20個の斜辺平均値の平均値を当該評価用サンプルについての突起曲率指標とする。
突起曲率指標が正の値であるとき、当該評価用サンプルに含まれる突起は、当該突起の内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する(図1A参照)。突起曲率指標が負の値であるとき、当該評価用サンプルに含まれる突起は、当該突起の外側に向けて凸の形状の斜面を有する。突起曲率指標は、正の値であればよいが、2.00以上であることが好ましく、3.00以上であることがより好ましく、3.50以上であることがさらに好ましい。突起曲率指標が2.00以上であると、おそらくは突起が細菌をより突き刺しやすくなるため、抗菌性をより高めることができる。突起曲率指標の上限は特に限定されないが、一定の数値を超えると効果が頭打ちになると思われるため、たとえば6.00とすることができる。
上記複数の突起の平均高さは特に限定されないが、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることがさらに好ましい。上記平均高さが200nm以上であると、おそらくは上記抗菌性を付与された領域に接触した細菌を上記突起がより突き刺しやすくなるため、抗菌性がより高まると考えられる。上記突起の平均高さの上限は特に限定されないが、一定の数値を超えると効果が頭打ちになると思われるため、たとえば1700nmとすることができる。
上記複数の突起に含まれる突起の幅の平均値は特に限定されないが、80nm以上400nm以下であることが好ましく、130nm以上400nm以下であることがより好ましい。上記突起の幅の平均値が130nm以上400nm以下であると、おそらくは上記抗菌性を付与された領域に接触した細菌を上記突起がより突き刺しやすくなるため、抗菌性がより高まると考えられる。
上記複数の突起に含まれる突起間の間隔の平均値は特に限定されないが、220nm以上770nm以下であることが好ましく、350nm以上770nm以下であることがより好ましい。上記突起間の間隔の平均値が350nm以上770nm以下であると、おそらくは上記抗菌性を付与された領域に接触した細菌を上記突起がより突き刺しやすくなるため、抗菌性がより高まると考えられる。
上記突起の平均高さ、突起の幅の平均値および突起間の間隔の平均値は、評価用サンプルの断面をSEMで撮像して得られたSEM画像解析や、表面を共焦点レーザー顕微鏡で計測し得られた断面曲線の解析により測定された値とすることができる。具体的には、目視または何らかの自動化された手段によって突起の輪郭をなぞる開折れ線を描く。開折れ線の非閉鎖部側を突起の底部、底部に対する開折れ線側を突起部としたとき、ある突起の突起部における開折れ線上の任意の1頂点と底部側における開折れ線上の任意の2頂点を結んで形成される三角形のうち、底部側の2頂点を結ぶ辺(底辺と呼ぶ)からの高さが最も大きな三角形における高さをその突起の突起高さと定義し、上記三角形の底辺をその突起の突起幅と定義する。突起間隔は、隣りあう突起それぞれで上述のように形成した高さが最も大きな三角形において、突起部にある頂点間頂点間の距離を突起間隔と定義する。解析した全ての突起の突起高さの算術平均を突起の平均高さ、突起幅の算術平均を突起の幅の平均値、および突起間隔の算術平均を突起間の間隔の平均値とそれぞれ定義する。
上記抗菌性を付与された領域は、多種多様な細菌に対する抗菌性を有する。たとえば、上記領域は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、乳酸菌、および緑膿菌のうち少なくともいずれかに対する抗菌性を有し、好ましくは、大腸菌、黄色ブドウ球菌、および緑膿菌のうち少なくともいずれかに対する抗菌性を有する。
なお、本明細書において、殺菌とは、その媒体に存在する細菌を死滅させること、および細菌を不活化して増殖を抑制させることの両方を意図している。また、本明細書において、抗菌性を有するとは、細菌を接種し、接種直後および接種から24時間後に、JIS Z 2801(2012年)に記載の方法に準じて生菌数を測定して求められる、Δlog菌数(原子状酸素ビームを照射しないサンプルの24時間後の生菌数の対数値-原子状酸素ビームを照射した評価用サンプルの24時間後の生菌数の対数値)が2.0以上であることを意味する。
上記樹脂組成物は、樹脂を含む組成物であればよい。たとえば上記樹脂組成物の樹脂の含有量は、全質量に対して20質量%以上である。上記樹脂組成物は、上記樹脂成形体の用途などに応じてその特性を調整するための添加剤を任意に含有してもよい。上記添加剤の例には、公知のフィラー(充填剤)、滑剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止材、抗酸化剤、着色剤(染料、顔料)などが含まれる。これらの添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で最適な組み合わせを選択して用いればよい。また、用途や所望によっては、他の添加剤として有機物質(他の重合体でもよい)および金属ナノ粒子などの無機物質を用いてもよい。
上記樹脂の種類は、上記樹脂成形体の用途などに応じて任意に選択することができる。上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。また、上記樹脂は、結晶性の樹脂であってもよいし、非結晶性の樹脂であってもよい。また、上記樹脂は、合成ゴムおよび天然ゴムなどのゴムであってもよい。なお、本発明者らの知見によれば、樹脂を構成する繰り返し単位に芳香環を有さない非芳香族系の樹脂を有する樹脂組成物の成形体は、樹脂を構成する繰り返し単位に芳香環を含む芳香族系の樹脂を含む樹脂組成物の成形体よりも、抗菌性を付与されやすい。ただし、芳香族系の樹脂を含む樹脂組成物の成形体であっても、原子状酸素ビームの照射条件などを適切に調整すれば、十分に抗菌性を付与することは可能である。
上記非芳香族系の樹脂の例には、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)などを含む。)、ポリプロピレン、その他のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、非芳香族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66およびナイロン12などを含む。)、非芳香族ポリイミド、ポリアセタール(POM)、ポリウレタン、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル系重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、およびポリグリコール酸(PGA)などが含まれる。
上記芳香族系の樹脂の例には、ポリスチレン(PS)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリブチレンナフタレート(PBN)などを含む。)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリイミド、全芳香族ポリイミド、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェノール系樹脂、芳香族エポキシ樹脂などが含まれる。
上記合成ゴムの例には、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、およびその他の熱可塑性エラストマー(SEBS、SBS、およびSEPSなどを含む)などが含まれる。
上記成形体は、上記樹脂組成物を二次元状または三次元状に成形して、形状を付与してなる物である。上記成形体の形状は特に限定されず、上記樹脂成形体の用途などに応じて任意に選択することができる。たとえば、上記成形体は、フィルム状、シート状、板状、袋状、管状、繊維状、網目状、所定の形状を有するかまたは無定形の中実体状などの形状を有することができる。
これらの成形体は、その表面のうち少なくとも一部に、原子状酸素ビームの照射によって抗菌性を付与されていればよいが、その表面の全部が原子状酸素ビームの照射によって抗菌性を付与されていてもよい。使用時に細菌と接触する可能性がある部分や、食品、医薬品または生体などと接触する部分などが予測できるときは、少なくとも当該部分に抗菌性を付与すればよい。これらの成形体は、その外表面に抗菌性を付与されていてもよいし、袋状および管状などの形状を有するときは、その内表面に抗菌性を付与されていてもよい。
上記樹脂成形体は、包装、建築物の設備、家電、電子機器およびその周辺機器、自動車用部品、各種コーティング、医療機器、農業用品、文房具ならびに身体装具などを含む、広汎な用途に使用可能である。
上記建築物の設備の例には、トイレおよび便座シート、洗面化粧台、上下水の配管、足拭きマット、内装材、ならびに扉などの把手、手すりおよびスイッチなどの日常的に人の手が触れる物品などが含まれる。
上記家電の例には、炊飯器、電子レンジ、冷蔵庫、アイロン、ヘアードライヤー、エアコンおよび空気清浄機などが含まれる。
上記電子機器およびその周辺機器の例には、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、デジタルカメラ、医療用電子機器、POSシステム、プリンター、テレビ、マウスおよびキーボードなどが含まれる。
上記自動車用部品の例には、ハンドル、シート、シフトレバーおよび各種配管が含まれる。
上記包装の例には、医薬品および食品などの包装が含まれる。
上記コーティングの例には、工場、手術室、保存庫および輸送用コンテナなどの、壁面、床面および天井へのコーティングなどが含まれる。
上記医療機器の例には、鉗子、シリンジ、ステント、人工血管、カテーテル、創傷被覆材、再生医療用足場材、および癒着防止材などが含まれる。
上記農業用品の例には、農業ハウス用の展張フィルムなどが含まれる。
上記身体装具の例には、上着および下着などを含む衣類、帽子、靴、手袋、おむつ、ならびにナプキンおよびその収納袋などが含まれる。
また、上記樹脂成形体は、建築物の設備、身体装具、食器、飲料および食料品などに接触させて、これらに含まれる細菌を殺菌するために使用することができる。
[抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体の製造方法]
上記抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体は、樹脂組成物の成形体への原子状酸素ビームの照射によって形成することができる。
具体的には、まず、表面に抗菌性を付与すべき樹脂組成物の成形体を用意する。上記樹脂組成物の種類および上記成形体の形状は、上述したとおりである。
原子状酸素ビームの照射は、上記成形体の表面のうち、抗菌性を付与すべき領域に対して行う。
原子状酸素ビームの生成は、気体力学膨張を利用する方法、イオン中性化法、電子刺激脱着(Electron Stimulated desorption:ESD)法およびレーザーデトネーション法などの公知の方法で行うことができる。これらのうち、運動エネルギーが高い原子状酸素ビームを効率よく生成することができることから、レーザーデトネーション法が好ましい。
レーザーデトネーション法では、酸素分子ガスおよびレーザー(特にはCOレーザー)をいずれもパルス状に射出し、酸素分子ガスへのレーザー照射によって酸素分子ガスをプラズマ化する。上記プラズマにさらに上記レーザーが照射されて爆撃波が発生する(デトネーション)と、プラズマの熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、同時にプラズマ中のイオンと電子とが再結合して、原子状酸素のビームが発生する。
上記導入されるレーザーのエネルギーは、8J/Pulse以上であることが好ましく、10J/Pulse以上であることがより好ましい。上記レーザーのエネルギーが8J/Pulse以上であると、幅広い種類の樹脂組成物の成形体に対して効率的に抗菌性を付与することができる。上記レーザーのエネルギーの上限は特に限定されないものの、20J/Pulse以下であることがより好ましい。
上記導入されるレーザーの1秒間あたりの繰り返し数(パルスレート)は、5Hz以上であることが好ましく、12Hz以上であることがより好ましい。上記レーザーのパルスレートが12Hz以上であると、幅広い種類の樹脂組成物の成形体に対して効率的に抗菌性を付与することができる。上記レーザーのパルスレートの上限は特に限定されないものの、20Hz以下であることがより好ましい。
上記原子状酸素ビームの並進エネルギーは、1eV以上20eV以下であることが好ましく、2eV以上15eV以下であることが好ましく、3eV以上10eV以下であることがさらに好ましい。
上記原子状酸素ビームの速度は、5km/s以上13km/s以下であることが好ましく、6km/s以上10km/s以下であることがより好ましい。
上記原子状酸素ビームの積算照射量は、1.0×1017atoms/cm以上であることが好ましく、1.0×1019atoms/cm以上であることがより好ましく、1.0×1020atoms/cm以上であることがさらに好ましい。特に、上記積算照射量が1.0×1020atoms/cm以上であると、幅広い種類の樹脂成形体に対して効率的に抗菌性を付与することができる。上記積算照射量の上限は特に限定されないものの、1.0×1022atoms/cm以下とすることができる。
上記原子状酸素ビームの照射時間は特に限定されないが、2時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがより好ましく、8時間以上であることがさらに好ましく、10時間以上であることが特に好しい。上記照射時間の上限は特に限定されないが、一定の時間を超えると効果が頭打ちになると思われるため、たとえば30時間とすることができる。
これらの原子状酸素ビームの照射条件は、樹脂組成物の種類および各種物性などに応じて、抗菌性が付与される条件に調整すればよい。たとえば、これらの原子状酸素ビームの照射条件は、予め測定されて定められた、樹脂組成物の種類と、原子状酸素ビームの照射条件と、の関係を示す対応表を参照するなどして、決定することができる。あるいは、これらの原子状酸素ビームの照射条件は、機械学習などを施した処理装置に、樹脂組成物の種類と、原子状酸素ビームの照射条件と、の関係を算出させたりして、決定することができる。
上記樹脂成形体は、原子状酸素ビームの照射によって抗菌性を付与された後、さらに成形されてもよい。たとえば、フィルム状またはシート状の成形体の表面に原子状酸素ビームを照射して当該表面に抗菌性を付与した後、袋状および管状などにさらに成形することで、その内表面に抗菌性を付与された袋状および管状などの成形体とすることができる。
[殺菌方法]
上記抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体は、各種殺菌方法に使用することができる。
具体的には、上記樹脂成形体を、細菌を含む液体、固体または気体に接触させることにより、接触した液体中、固体表面または気体中に含まれる細菌を死滅させ、上記液体、固体または気体を殺菌することができる。
上記接触は、公知の方法で行えばよい。たとえば、液体との接触は、流動または静止する当該液体への上記樹脂成形体の浸漬、当該液体の上記樹脂成形体への噴射または噴霧、および、当該液体の上記樹脂成形体への塗布または滴下などの方法により行うことができる。また、固体との接触は、静止またはスライドする当該固体の表面への、静止またはスライドする上記樹脂成形体の当接または押しつけなどの方法により行うことができる。また、気体との接触は、流動または静止する当該気体を含む雰囲気内への上記樹脂成形体の静置、および、当該気体の上記樹脂成形体への噴射などの方法により行うことができる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.樹脂組成物の成形体の表面処理
5種類の基材フィルムを用意し、それぞれの基材フィルムの表面に以下の条件で原子状酸素ビームを照射して、評価用サンプルを作製した。なお、それぞれの基材フィルムについて、原子状酸素ビームを照射しなかった比較用サンプルも用意した。
(装置)
原子状酸素照射装置: PSI社製、FAST-II(レーザーデトネーション法)
レーザー照射装置: 株式会社宇翔製、IR-SP
レーザー種: COレーザー
レーザー波長: 10.6μm
(原子状酸素ビームの照射条件)
平均酸素量: およそ120sccm/12Hz
レーザーのエネルギー: 10J/Pulse
レーザーのパルスレート: 12Hz
ビーム速度: 8.11km/s
照射時間: 6時間または12時間
照射量: 7.765×1019atoms/cm(6時間照射時)
1.553×1020atoms/cm(12時間照射時)
照射温度: 室温
使用した基材フィルムは、以下の通りである。いずれの基材フィルムも、50mm×50mm角形の形状を有していた。
ポリエチレン(LLDPE): 三井化学東セロ株式会社製、TUS-TCS#60、厚さ53μm
ポリプロピレン(CPP):東レフィルム加工株式会社製、トレファン ZK93FM、厚さ60μm
ポリエチレンテレフタレート(PET): 東洋紡株式会社製、E5000、厚さ75μm
ポリフッ化ビニリデン(PVDF): 株式会社クレハ製、厚さ16μm
ポリ塩化ビニリデン(PVDC): 株式会社クレハ製、厚さ45μm
2.評価
2-1.抗菌性
JIS Z 2801(2012年)に記載の方法に準じて、上記評価用サンプルおよび比較用サンプルの大腸菌または黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価した。また、乳酸菌または緑膿菌についても、大腸菌または黄色ブドウ球菌と同様にして評価した。具体的には、以下の大腸菌、黄色ブドウ球菌、乳酸菌または緑膿菌を接種し、以下の条件で24時間培養した。
(菌種)
大腸菌: Escherichia coli, NBRC No. 3972
黄色ブドウ球菌: Staphylococcus aureus, NBRC No. 12732
乳酸菌: Lactobacillus casei, NBRC No. 15883
緑膿菌: Pseudomonas aeruginosa, NBRC No. 12689
(培養条件)
温度: 大腸菌・黄色ブドウ球菌・乳酸菌35℃±1℃、緑膿菌30℃ ±1℃
(生菌数の測定)
使用培地:標準寒天培地
接種直後および接種から24時間後に、JIS Z 2801(2012年)に記載の方法に準じて生菌数を測定し、Δlog菌数(比較用サンプルの24時間後の生菌数の対数値-評価用サンプルの24時間後の生菌数の対数値)を求めた。Δlog菌数が2.0以上であるとき、その評価用サンプルには十分な抗菌性が認められると評価した。
表1に、それぞれの評価用サンプルについてのΔlogおよび抗菌性の評価結果(十分な抗菌性が認められるものを「○」、十分な抗菌性が認められなかったものを「×」とする。)を示す。
Figure 0007205022000001
表1に示されるように、原子状酸素ビームの照射により、基材フィルムの表面に抗菌性が付与されたことが確認された。
特に、原子状酸素ビームの照射時間が12時間(照射量:1.553×1020atoms/cm)であるときは、照射時間が6時間(照射量:7.765×1019atoms/cm)であるときよりも抗菌性を付与されやすかった。
また、芳香族系の樹脂(PET)よりも非芳香族系の樹脂(LLDPE、PVDCおよびPVDF)のほうが抗菌性を付与されやすく、LLDPEは特に抗菌性を付与されやすかった。
2-2.表面形状
それぞれの評価用サンプルの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、得られたSEM画像から、任意に10個の突起形状を選択した。選択された突起形状を構成する2つの斜辺(合計20個)を、1ピクセルあたり0.0099μmとして換算した実寸法XY座標データに変換した。1つの斜辺について、変換した座標データのうち、X座標が0であるデータから開始してX軸方向に5ピクセルずつずらしていった位置のデータを抽出して、抽出されたデータを2次元の多項式最少二乗近似式にフィッティングし、上記抽出されたデータにフィッティングするような、ax+bx+cの式におけるaの値を求めた。X座標が1、2、3および4であるデータから開始して、X軸方向に5ピクセルずつずらしていった位置のデータもそれぞれ抽出して、それぞれの抽出されたデータを同様に多項式最少二乗近似式にフィッティングした。このようにして得られた5つの近似式におけるaの値の平均値を求め、当該斜辺についてのaの値とした。同様に、20個の斜辺すべてについてaの値を算出し、算出された20個のaの値の平均値を、当該評価用サンプルについての突起曲率指標とした。
突起曲率指標が正の値であるとき、当該評価用サンプルに含まれる突起は、当該突起の内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する(図1A参照)。突起曲率指標が負の値であるとき、当該評価用サンプルに含まれる突起は、当該突起の外側に向けて凸の形状の斜面を有する(図1B参照)。
表2に、それぞれの評価用サンプルの突起曲率指標、ならびに抗菌性の評価結果を示す。
Figure 0007205022000002
表2に示すように、突起曲率指標が正の値である評価用サンプルは抗菌性を有していたが、突起曲率指標が負の値である評価用サンプルは抗菌性が認められなかった。
2-3.接触角
協和界面科学株式会社製、CA-V型接触角計を使用し、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルと純水、ジヨードメタンおよびn-ヘキサデカンとの接触角を求めた。
具体的には、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの表面に、純水、ジヨードメタンおよびn-ヘキサデカンのいずれかの液体の液滴を1μl滴下し、滴下後1000msecから10000msecまでの接触角を1000msec間隔で測定し、滴下後1000msec時点での接触角を、当該評価用サンプルと当該液体との接触角とした。なお、滴下した液体のぬれ性が大きく、接触角が10°未満になるような場合には、滴下後100msecから1000msecまでの接触角を100msec間隔で測定し、滴下後1000msec時点での接触角を、当該評価用サンプルまたは比較用サンプルと当該液体との接触角とした。
表3に、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの接触角を示す。なお、「原子状酸素ビーム照射時間」が0となっているものは、原子状酸素ビームを照射しなかった比較用サンプルを示す。
Figure 0007205022000003
接触角と、抗菌性の評価結果と、の関係を図2A、図2Bおよび図2Cに示す。図2Aは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、純水との接触角を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図2Bは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、ジヨードメタンとの接触角を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図2Cは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、n-ヘキサデカンとの接触角を縦軸に、プロットして得たグラフである。また、図2A、図2Bおよび図2Cには、抗菌性があると評価する指標である、Δlog=2となる境界を、点線で示している。
図2A、図2Bおよび図2Cから明らかなように、評価用サンプルおよび比較用サンプルとそれぞれの液体との接触角と、抗菌性と、の間には明確な相関関係は認められなかった。
2-4.表面自由エネルギー
上記求めた接触角を用いて、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの表面自由エネルギーを算出した。
具体的には、純水との接触角およびジヨードメタンとの接触角の2つの接触角を用いて、Owen and Wendt 法により表面自由エネルギーを算出し、純水との接触角およびn-ヘキサデカンとの接触角の2つの接触角を用いて、Kaelble-Uy 法により表面自由エネルギーを算出した。
表4に、Owen and Wendt 法により算出した、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの表面自由エネルギー(分散成分(A)の値、水素結合成分(B)の値、(A)および(B)の合計値、分散成分(A)の値に対する水素結合成分(B)の値の割合、および、合計値に対する水素結合成分(B)の値の割合)を示す。なお、「原子状酸素ビーム照射時間」が0となっているものは、原子状酸素ビームを照射しなかった比較用サンプルを示す。
Figure 0007205022000004
上記Owen and Wendt 法により算出した表面自由エネルギーと、抗菌性の評価結果と、の関係を図3A、図3Bおよび図3Cに示す。図3Aは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値および水素結合成分(B)の値の合計値(A+B)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図3Bは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値に対する水素結合成分(B)の値の割合(B/A)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図3Cは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、合計値に対する水素結合成分(B)の値の割合(B/(A+B))を縦軸に、プロットして得たグラフである。また、図3A、図3Bおよび図3Cには、抗菌性があると評価する指標である、Δlog=2となる境界を、点線で示している。
表5に、Kaelble-Uy 法により算出した、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの表面自由エネルギー(分散成分(A)の値、極性成分(C)の値、(A)および(C)の合計値、分散成分(A)の値に対する極性成分(C)の値の割合、および、合計値に対する極性成分(C)の値の割合)を示す。なお、「原子状酸素ビーム照射時間」が0となっているものは、原子状酸素ビームを照射しなかった比較用サンプルを示す。
Figure 0007205022000005
上記Kaelble-Uy 法により算出した表面自由エネルギーと、抗菌性の評価結果と、の関係を図4A、図4Bおよび図4Cに示す。図4Aは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値および極性成分(C)の値の合計値(A+C)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図4Bは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、分散成分(A)の値に対する極性成分(C)の値の割合(C/A)を縦軸に、プロットして得たグラフであり、図4Cは、それぞれの評価用サンプルおよび比較用サンプルの、各菌種に対するΔlogを横軸に、合計値に対する極性成分(C)の値の割合(C/(A+C))を縦軸に、プロットして得たグラフである。また、図4A、図4Bおよび図4Cには、抗菌性があると評価する指標である、Δlog=2となる境界を、点線で示している。
図3A、図3B、図3C、図4A、図4Bおよび図4Cから明らかなように、評価用サンプルおよび比較用サンプルの表面自由エネルギーと、抗菌性と、の間には明確な相関関係が認められなかった。
本出願は、2018年8月8日出願の日本国出願番号2018-149404号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の特許請求の範囲、明細書および図面に記載された内容は本出願に援用される。
本発明の樹脂成形体は、各種殺菌・抗菌用途に使用することができる。

Claims (9)

  1. 樹脂組成物の成形体であって、その表面に、原子状酸素ビームの照射により抗菌性を付与された領域を有し、
    前記抗菌性を付与された領域への、前記原子状酸素ビームの積算照射量は、1.0×1020atoms/cm以上1.0×10 22 atoms/cm 以下である、樹脂成形体。
  2. 前記抗菌性を付与された領域は、前記表面から突出した複数のナノサイズの突起を有し、
    前記複数のナノサイズの突起は、前記突起の内側に向けて凹んだ形状の斜面を有する、
    請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記樹脂組成物は、非芳香族系の樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記抗菌性を付与された領域は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、乳酸菌および緑膿菌からなる群から選択される少なくとも1種の細菌に対する抗菌性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  5. 前記成形体は、フィルム状の成形体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  6. 樹脂組成物の成形体を用意する工程と、
    原子状酸素ビームの照射により、前記成形体の表面に抗菌性を付与する工程と、
    を有し、
    前記抗菌性を付与する工程における、前記原子状酸素ビームの積算照射量は、1.0×1020atoms/cm以上1.0×10 22 atoms/cm 以下である、抗菌性を付与された表面を有する樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記原子状酸素ビームは、酸素分子ガスおよびレーザーをいずれもパルス状に射出するレーザーデトネーション法により生成され、前記レーザーのエネルギーは、8J/Pulse以上である、請求項6に記載の樹脂成形体の製造方法。
  8. 前記原子状酸素ビームは、酸素分子ガスおよびレーザーをいずれもパルス状に射出するレーザーデトネーション法により生成され、前記レーザーの1秒間あたりの繰り返し数(パルスレート)は、5Hz以上である、請求項6または7に記載の樹脂成形体の製造方法。
  9. 請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形体を用意する工程と、
    前記樹脂成形体を、細菌を含む液体、固体または気体に接触させる工程と、
    を含む、殺菌方法。
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