本発明に係る空間浄化装置は、除菌成分を含む水溶液を貯留する貯留部と、除菌成分を含む水溶液に浸漬して設けられ、外部から取り込んだ空気を気泡として除菌成分を含む水溶液中に放出する空気供給部と、を備える。空気供給部は、貯留部から内部に取り込んだ除菌成分を含む水溶液と、外部から取り込んだ空気とを混合しながら、貯留部が貯留する除菌成分を含む水溶液中に気泡を放出する。
こうした構成によれば、空気供給部の内部において除菌成分を含む水溶液と空気とを混合する過程で、空気内に一定程度の除菌成分ガスを含ませることができる。これにより、気泡には、空気供給部の内部で取り込まれる除菌成分ガスと、気泡が除菌成分を含む水溶液中を浮上する過程で気泡内に取り込まれる除菌成分ガスとを含ませることができる。この結果、気泡が液面に達した際に、気泡から放出される除菌成分ガスの濃度を増加させることができる。つまり、空間浄化装置は、気泡に含ませる除菌成分ガス濃度を向上させることができ、より高濃度の除菌成分ガスを外部に供給することができる。
また、本発明に係る空間浄化装置では、空気供給部は、貯留部から内部に除菌成分を含む水溶液を取り込む溶液吸込口と、外部から内部に空気を取り込む空気吸込口と、溶液吸込口から取り込んだ除菌成分を含む水溶液と空気吸込口から取り込んだ空気とを混合した状態で吐出する吐出部と、を備え、吐出部は、気泡を鉛直方向下方に向けて放出することが好ましい。これにより、吐出部から放出された気泡は、除菌成分を含む水溶液中を少なくとも鉛直方向下方に向けて下降し、その後液面に向けて浮上していくので、気泡が除菌成分を含む水溶液中を流通する時間が長くなり、気泡に取り込まれる除菌成分ガスがさらに増加する。この結果、気泡が液面に達した際に、気泡から放出される除菌成分ガスの濃度をさらに増加させることができる。
また、本発明に係る空間浄化装置では、貯留部は、貯留部の底部から鉛直方向上方に延伸して設けられた仕切板を有し、仕切板は、溶液吸込口が配置され、溶液吸込口から除菌成分を含む水溶液を取り込む第一領域と、吐出部が配置され、吐出部から放出された気泡が流通する第二領域とに、貯留部を区分することが好ましい。これにより、第二領域において吐出部から放出された気泡が、仕切板によって、第一領域の溶液吸込口に吸い込まれるのを抑制することができる。この結果、気泡を含む除菌成分を含む水溶液が溶液吸込口から取り込まれることに起因する異音の発生が抑制される。つまり、空間浄化装置は、騒音を抑制しつつ、より高濃度の除菌成分ガスを外部に供給することができる。
また、本発明に係る空間浄化装置では、仕切板は、第二領域側が順テーパ形状を有して構成され、吐出部は、順テーパ形状部分に吹き付けるように気泡を放出することが好ましい。これにより、吐出部から鉛直方向下方に放出された気泡は、順テーパ形状部分に沿って向きを変えて略水平方向に流通するようになるので、気泡が除菌成分を含む水溶液中を流通する時間がさらに長くなり、気泡に取り込まれる除菌成分ガスをさらに増加させることができる。
また、本発明に係る空間浄化装置では、空気供給部は、吐出部の先端に設けられ、吐出部から鉛直方向下方に向けて放出された気泡の流通方向を調整する流向調整板をさらに備える。流向調整板は、溶液吸込口が配置された領域とは流向調整板を挟んで反対側の領域の方向に気泡の流通方向を変化させることが好ましい。これにより、吐出部から放出された気泡は、流向調整板によって溶液吸込口が配置された領域と反対側の領域の方向に流通するので、気泡が溶液吸込口に吸込まれるのを抑制することができる。この結果、気泡を含む除菌成分を含む水溶液が溶液吸込口から取り込まれることに起因する異音の発生が抑制される。つまり、空間浄化装置は、騒音を抑制しつつ、より高濃度の除菌成分ガスを外部に供給することができる。
また、本発明に係る空間浄化装置では、除菌成分を含む水溶液を所定濃度に調整する除菌水生成部を備えてもよい。このようにすることで、除菌成分を含む水溶液の濃度コントロールが容易となるので、除菌成分を含む水溶液の濃度を安定化させることができる。つまり、空間浄化装置は、より高濃度の除菌成分ガスを安定して外部に放出することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(実施の形態1)
まず、図1~図3を参照して、本実施の形態1に係る空間浄化装置2の概略について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空間浄化装置2の個室空間1への設置例を示す概略側面図である。図2は、空間浄化装置2の構成を示す概略側面図である。図3は、空間浄化装置2の構成を示す概略透過正面図である。
図1に示す通り、空間浄化装置2は、個室空間1の壁面の所定の高さの位置に設置される。空間浄化装置2は、個室空間1の空気3を取り込み、取り込んだ空気3(図2に示す空気3a)に次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)を付加して、同じく取り込んだ空気3(図2に示す空気3b)と混合して次亜塩素酸を含む空気4として個室空間1に放出する。その結果、放出された空気4(次亜塩素酸を含む空気4)により個室空間1が除菌される。つまり、空間浄化装置2は、個室空間1に次亜塩素酸を放出して除菌する装置と言える。なお、空間浄化装置2は、外部電源との接続ができるのであれば、個室空間1での設置場所に制約を受けない。
個室空間1は、利用者が日常生活で使用する空間であり、壁及び扉などの構造体によって構成される。個室空間1内には、テーブルあるいは椅子が設置されていてもよい。また、個室空間1内の空調(冷房、暖房)を行う空調機などが設置されていてもよい。
空気3は、個室空間1から空間浄化装置2に取り込まれる空気である。図1の矢印は、空気3の主な流れを示す。図2に示す通り、空気3は、空間浄化装置2に導入された後、空気3aと空気3bとに分離される。詳細は後述するが、空気3aは、空気供給部7に吸い込まれ、次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)が付加される空気であり、空気3bは、空気供給部7に吸い込まれずに内部風路24を通過し、混合部21において次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)が付加された空気3cに混合される空気である。
空気4は、空間浄化装置2から個室空間1に吹き出される空気である。図1の矢印は、空気4の主な流れを示す。詳細は後述するが、空気4には、空間浄化装置2の内部において発生させる次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)が含まれている。
次に、空間浄化装置2の具体的な構成について説明する。
図2に示す通り、空間浄化装置2は、風路部17、貯留部5、空気供給部7、空気放出部9、空気供給部保持部12、次亜塩素酸水溶液供給部13を有して構成される。
風路部17は、空気放出部9から供給される次亜塩素酸ガスを含む空気3cと、外気吸込部18から取り込んだ空気3のうち内部風路24を通過した空気3bとを混合して空気4として放出する部材である。風路部17は、空気放出部9の上面に設置される。風路部17の下面には、空気放出部9と連通接続する開口部が設けられる。これにより、空気放出部9からの空気3cが風路部17内に供給される。なお、風路部17は、空間浄化装置2の外枠を構成する筐体の一部とも言える。
より詳細には、風路部17は、外気吸込部18、吹出部19、混合部21、送風部22、及びフィルタ部23を有して構成される。
外気吸込部18は、風路部17が外部と連通する開口部であり、外部(個室空間1)の空気3を空間浄化装置2の内部に取り込むための取込口である。外気吸込部18は、風路部17の上面に形成される円形状の複数の孔または複数のスリットなどによって構成される。
吹出部19は、風路部17が外部と連通する開口部であり、次亜塩素酸ガスを含む空気4を空間浄化装置2から個室空間1に吹き出すための部材である。具体的には、吹出部19は、吹出口19a及び吹出方向フード19bを有して構成される。吹出口19aは、風路部17内から次亜塩素酸ガスを含む空気4が流出する開口であり、風路部17の上面に形成される円形状の複数の孔または複数のスリットなどによって構成される。吹出方向フード19bは、吹出口19a全体を覆うように設置された金属製のエアフードである。吹出方向フード19bは、吹出口19aから吹き出す空気4の吹出方向を、空間浄化装置2の一方向(外気吸込部18と逆側)へと向けるものである。これにより、吹出部19から吹き出す空気4が、外気吸込部18に吸い込まれる空気3と混合しないようにしている。
外気吸込部18と吹出部19とは、風路部17の内部風路24によって連通接続されている。そして、内部風路24には、空気放出部9が連通接続されている。
混合部21は、空気放出部9から供給される次亜塩素酸ガスを含む空気3cと、外気吸込部18から取り込んだ空気3のうち内部風路24を通過する空気3bとを混合する空間である。混合部21は、内部風路24の一部であり、内部風路24における空気3cと空気3bが合流する空間とも言える。混合部21にて混合された次亜塩素酸ガスを含む空気は、風路部17を通じて、空気4として吹出部19から個室空間1に吹き出される。
送風部22は、風路部17に空気を流通させるための送風ファンであり、風路部17の内部風路24に配置される。送風部22を動作することで、外気吸込部18から空気3を取り込み、混合部21にて外気吸込部18から取り込んだ空気3のうち内部風路24を通過した空気3bと空気放出部9から供給された空気3cとを混合し、吹出部19から空気4として吹き出すことができる。
フィルタ部23は、外気吸込部18から取り込んだ空気3の汚れあるいは異物を取り除くためのフィルタであり、内部風路24における外気吸込部18の近傍に配置される。
貯留部5は、内部に次亜塩素酸水溶液6を貯留する容器である。貯留部5は、四角柱状の形状を有しており、貯留部5の外形寸法は、例えば、幅200mm、奥行き100mm、高さ115mmである。なお、貯留部5は、空間浄化装置2の外枠を構成する筐体の一部とも言える。貯留部5の内部には、貯留する次亜塩素酸水溶液6に浸漬された状態で空気供給部7が設置されるとともに、水位センサ16(満水センサ16a及び渇水センサ16b)が設置される。貯留部5の上面には、空気放出部9と連通接続するための開口部(図示せず)が設けられ、開口部を覆うように空気放出部9が設置される。貯留部5の上部には、貯留する次亜塩素酸水溶液6の液面6aと空気放出部9の下面との間に内部空間11が形成される。貯留部5の側面には、次亜塩素酸水溶液供給部13が設置される。なお、特に図示しないが、貯留部5には、市水給水用の開口が設けられており、貯留部5が渇水となった際に、直接市水を給水できるように構成されている。
より詳細には、貯留部5は、貯留部5の底部5cから鉛直方向上方に延伸して設けられた仕切板25を有している。詳細は後述するが、仕切板25は、空気放出部9が次亜塩素酸水溶液6を取り込む第一領域5aと、空気放出部9から放出された気泡8が流通する第二領域5bとに、貯留部5を区分する部材である。
第一領域5aは、貯留部5内において空気供給部7が次亜塩素酸水溶液6を吸い込む領域である。より詳細には、第一領域5aは、後述する空気供給部7の溶液吸込口7aが配置され、溶液吸込口7aから次亜塩素酸水溶液6を取り込む領域であり、「吸込領域」とも呼ぶ。
第二領域5bは、貯留部5内において空気供給部7から放出された気泡8が流通する領域である。より詳細には、第二領域5bは、後述する空気供給部7の吐出部7dが配置され、吐出部7dから放出された気泡8が次亜塩素酸水溶液6の液面6aに向けて浮上する際に流通する領域であり、「吐出領域」とも呼ぶ。
底部5cは、貯留部5の底面を指し、仕切板25が設けられている。
仕切板25は、第一領域5aと第二領域5bとを区分するために、貯留部5の底部5cから鉛直方向上方に延伸して設けられた突起である。仕切板25は、溶液吸込口7aを設置する領域と、吐出部7dを設置する領域とを区分する突起とも言える。仕切板25は、図3に示すように、貯留部5の一方の側面から対向する他方の側面まで延伸されて設置される。なお、仕切板25は、2つの領域(第一領域5a及び第二領域5b)を完全に分離するものではなく、貯留部5の上方側において2つの領域間での次亜塩素酸水溶液6の移動は可能となっている。
仕切板25は、貯留部5の底部5c側から鉛直方向上方に向かって突起幅が細くなる順テーパ形状(第一テーパ部25a及び第二テーパ部25b)を有して構成される。第一テーパ部25aは、仕切板25の第一領域5a側のテーパ形状を指し、第二テーパ部25bは、仕切板25の第二領域5b側のテーパ形状を指す。
第一テーパ部25a及び第二テーパ部25bはいずれも、仕切板25の頂点から底部5cにかけて、底部5cの方向に湾曲している。詳細は後述するが、第二テーパ部25bでは、吐出部7dから吐出された気泡8を湾曲したテーパ形状に沿わせるようにして、気泡8を第一領域5aとは逆の方向に流通させている。
内部空間11は、貯留部5内において、次亜塩素酸水溶液6の液面6aの上方に生じる空気領域であり、貯留部5の全面に亘って形成される。内部空間11は、貯留部5が次亜塩素酸水溶液6によって満水状態となっても、次亜塩素酸水溶液6の液面6aの上方に形成される。内部空間11では、次亜塩素酸水溶液6中を浮上してきた気泡8が弾けて次亜塩素酸ガスを放出し、次亜塩素酸ガスを含む空気3cとなる。
次亜塩素酸水溶液6は、後述する高濃度次亜塩素酸水溶液15を希釈して生成される次亜塩素酸を含んだ水溶液(次亜塩素酸水とも呼ぶ)である。次亜塩素酸水溶液6は、後述する空気供給部7から供給される気泡8が浮力により液中を流通する過程で、気泡8の内部に次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)を含ませる役割を有する。このため、次亜塩素酸水溶液6の濃度を増減させることで、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増減させることができる。また、次亜塩素酸水溶液6の水素イオン濃度(pH)を5~7程度にすることで、次亜塩素酸水溶液6から次亜塩素酸が気化しやすくなり、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増加させることができる。また、気泡8が浮力により上昇する距離(気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を流通する距離)を増加させ、次亜塩素酸水溶液6と気泡8の接触時間を増加させることで、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増加させることができる。これらのことから、本実施の形態では、次亜塩素酸水溶液6の濃度を100mg/L程度とし、次亜塩素酸水溶液6のpHを7程度とし、上述した貯留部5の外径寸法に基づいて内部に貯留する次亜塩素酸水溶液6の容量(満水時の容量)を2L程度としている。なお、次亜塩素酸水溶液6の濃度は、気化式の従来の空間浄化装置に用いられる次亜塩素酸水溶液の濃度よりも、数倍濃く調整されている。また、次亜塩素酸水溶液6は、請求項の「除菌成分を含む水溶液」に相当する。
空気供給部7は、個室空間1から内部に空気3aを吸い込み、吸い込んだ空気3aを次亜塩素酸水溶液6中に気泡8として放出する部材である。本実施の形態では、空気供給部7は、貯留部5から内部に取り込んだ次亜塩素酸水溶液6と、外部(個室空間1)から取り込んだ空気3aとを混合しながら、貯留部5が貯留する次亜塩素酸水溶液6中に気泡8を放出するポンプである。空気供給部7は、貯留部5内において、空気供給部保持部12によって貯留部5に固定されて設置される。空気供給部7は、仕切板25の鉛直方向上方において、空気供給部保持部12によって貯留部5の上部から吊り下げられて、部材の大部分が次亜塩素酸水溶液6中に浸漬される。
より詳細には、空気供給部7は、溶液吸込口7a、空気吸込口7b、気泡生成部7c、吐出部7d、及びモータ部7eを有して構成される。空気供給部7は、貯留部5の上部から吊り下げられた状態で、貯留部5の第一領域5aに溶液吸込口7a及び空気吸込口7bが位置し、貯留部5の第二領域5bに気泡生成部7c、吐出部7d、及びモータ部7eが位置するように設置されている。
溶液吸込口7aは、貯留部5の次亜塩素酸水溶液6を吸い込む円筒状の吸込口である。溶液吸込口7aは、貯留部5の第一領域5aに位置し、貯留部5の底部5cに対して略水平状態で、第二領域5b側とは反対側の方向にある貯留部5の側面を向いて設置される。溶液吸込口7aは、気泡生成部7cと連通接続される。溶液吸込口7aは、モータ部7eが動作することで、貯留部5から次亜塩素酸水溶液6を吸い込み、貯留部5から吸い込んだ次亜塩素酸水溶液6を気泡生成部7cに送り込む。
空気吸込口7bは、内部風路24内の空気3aを吸い込む円筒状の吸込口である。空気吸込口7bの一端は、溶液吸込口7aの側面に連通接続され、空気吸込口7bの他端は、鉛直方向上方の内部風路24にまで延設されている。空気吸込口7bは、例えば、樹脂製のチューブである。空気吸込口7bは、モータ部7eが動作することで、内部風路24から空気3aを吸い込み、吸い込んだ空気3aを、溶液吸込口7aから吸い込まれた次亜塩素酸水溶液6に送り込む。
ここで、空気吸込口7bの他端は、内部風路24におけるフィルタ部23の下流側、且つ、混合部21の上流側に配置される。これにより、空気吸込口7bは、フィルタ部23の通過後の汚れの少ない空気3aを取り込み、次亜塩素酸水溶液6に送り込むことができるため、汚れの蓄積による空気吸込口7bの詰まり及び次亜塩素酸水溶液6の汚染を防ぐことができる。
気泡生成部7cは、溶液吸込口7aから流入する空気3aを含む次亜塩素酸水溶液6を攪拌して混合する部材である。気泡生成部7cは、溶液吸込口7aと吐出部7dとの間を連通接続し、モータ部7eが動作することで、溶液吸込口7aから流入した次亜塩素酸水溶液6(空気3aを含む次亜塩素酸水溶液6)を吐出部7dに送出する。この際、気泡生成部7cは、内部で次亜塩素酸水溶液6と空気3aとを攪拌して混合し、空気3aを微細化して気泡8とし、気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6として吐出部7dに送出する。気泡生成部7cは、内部で次亜塩素酸水溶液6と空気3aとを混合しながら、空気3aを微細化して気泡8として生成しているとも言える。なお、気泡生成部7cの内部での攪拌&混合の過程で、空気3a(気泡8)には次亜塩素酸ガスを含ませている。
吐出部7dは、気泡生成部7cで生成した気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6を、貯留部5内の次亜塩素酸水溶液6中に放出する吐出部である。吐出部7dは、貯留部5の第二領域5bに位置し、鉛直方向下方の貯留部5の底部5cを向いて設置される。そして、吐出部7dは、貯留部5の底部5cに向けて気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6を放出する。具体的には、吐出部7dは、貯留部5の底部5cに設けられた仕切板25の第二テーパ部25bに向けて気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6を放出する。なお、吐出部7dは、「気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6を放出する」としているが、「気泡8を放出する」と読み替えてもよい。
モータ部7eは、空気供給部7の一連の動作を行う部材である。モータ部7eは、回転動作することによって、空気供給部7の内部に次亜塩素酸水溶液6の流れを生じさせる。具体的には、モータ部7eの回転動作によって、溶液吸込口7aから次亜塩素酸水溶液6が吸い込まれるとともに、溶液吸込口7a内が負圧となることで空気吸込口7bから空気3aが溶液吸込口7aに吸い込まれる。そして、気泡生成部7cでの攪拌&混合の過程で気泡8が生成され、生成された気泡8が吐出部7dから次亜塩素酸水溶液6中に放出される。
空気供給部7は、以上のように構成される。
そして、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6への空気3aの供給量、気泡生成部7cでの攪拌&混合時間、及び発生させる気泡8の大きさ(径)を制御することによって、後述する空気放出部9から個室空間1の放出される空気4に含ませる次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)の量を調整することができる。
具体的には、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6への空気3aの供給量が増加すれば、それに応じて気泡8の発生量(発生数)が多くなり、空気放出部9から放出する空気4に含ませる次亜塩素酸ガスを増加させることができる。また、空気供給部7では、気泡生成部7cでの攪拌&混合時間を長くすることで、次亜塩素酸水溶液6と空気3aとの間の接触時間が長くなり、最終的に生成される気泡8に含ませる次亜塩素酸ガスを増加させることができる。また、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6に放出する気泡8の大きさ(径)を小さくすることで、浮上する際の気泡8の上昇速度を低下させて次亜塩素酸水溶液6と気泡8との間の接触時間を増加させることができる。さらに、気泡8の大きさ(径)が大きい場合と比較して、次亜塩素酸水溶液6と液中を流通する気泡8との間の接触面積を増加させることができる。これらの結果、次亜塩素酸水溶液6を流通する気泡8が、浮上する過程で気泡8内に取り込む次亜塩素酸の量が増加し、空気放出部9から放出する空気4に含ませる次亜塩素酸を増加させることができる。
ここで、空気供給部7による次亜塩素酸水溶液6への空気3aの供給量は、空気吸込口7bの空気の吸入量によって制御することができる。また、気泡8の大きさ(径)は、空気吸込口7bの径の大きさ(及び空気吸込口7bの空気の吸込量)によって制御することができる。また、吐出部7dから放出される気泡8の到達深さは、空気供給部7が取り込む次亜塩素酸水溶液6の量によって制御することができる。これらを踏まえ、本実施の形態では、空気供給部7による次亜塩素酸水溶液6への空気3aの供給量を0.1m3/h程度とし、溶液吸込口7aにおいて発生させる気泡8の大きさ(径)を1mm~2mm程度とし、空気供給部7が取り込む次亜塩素酸水溶液6の量を5L/minとしている。
気泡8は、空気供給部7(空気吸込口7b)により個室空間1から吸い込まれた空気3aが泡状に微細化された空気であり、次亜塩素酸水溶液6によって空気が閉じ込められた状態となっている。空気供給部7から放出された気泡8は、次亜塩素酸水溶液6に含まれる次亜塩素酸(及び水分)を内部の空気に取り込みながら浮上する。その後、気泡8は、次亜塩素酸水溶液6の液面6aまで浮上すると弾けてなくなる。そして、気泡8内の空気は、空気内に含まれていた次亜塩素酸(及び水分)とともに、内部空間11内の空気と混合される。その後、内部空間11内の空気(次亜塩素酸を含む空気)は、空気放出部9から空気3cとして混合部21に供給される。
空気放出部9は、貯留部5と風路部17とを連通させる部材であり、貯留部5の上面と風路部17の下面との間に設置される。空気放出部9は、エリミネータ10を含む。空気放出部9は、貯留部5の開口部(図示せず)から導入される次亜塩素酸を含む空気(内部空間11内の空気)を、空気放出部9の供給口(図示せず)からエリミネータ10を介して風路部17の混合部21に空気3cとして導出する。
エリミネータ10は、貯留部5内において気泡8が液面6aで弾けることで生じる水滴などを取り除く多孔質の部材である。エリミネータ10は、空気放出部9の内部において、貯留部5内の次亜塩素酸水溶液6の液面6aの全面を覆うように設置される。エリミネータ10は、次亜塩素酸ガスを含む空気3cを流通させるものの、水滴などを取り除く。これにより、風路部17への水滴の飛散、しいては空間浄化装置2から個室空間1への水滴の噴霧を防ぐことができる。
空気供給部保持部12は、貯留部5内において空気供給部7を固定する平板状の部材である。空気供給部保持部12は、エリミネータ10の下方において空気供給部7を吊り下げるように固定している。
次亜塩素酸水溶液供給部13は、貯留部5に高濃度次亜塩素酸水溶液15を供給する部材である。次亜塩素酸水溶液供給部13は、貯留部5の側面に設置される。次亜塩素酸水溶液供給部13は、高濃度次亜塩素酸水溶液15を次亜塩素酸水溶液6に供給することで、次亜塩素酸水溶液6の濃度を調整する。より詳細には、次亜塩素酸水溶液供給部13は、次亜塩素酸水溶液タンク13a、次亜塩素酸水溶液ポンプ13b、及びチューブ13cを有して構成される。
次亜塩素酸水溶液タンク13aは、内部に予め指定された濃度の高濃度次亜塩素酸水溶液15を貯留する容器である。次亜塩素酸水溶液タンク13aには、例えば、内容物として高濃度次亜塩素酸水溶液15を密封して収容する袋状の変形可能なパウチパック容器が用いられる。次亜塩素酸水溶液タンク13aは、次亜塩素酸水溶液ポンプ13bの動作によりチューブ13cを介して貯留部5に高濃度次亜塩素酸水溶液15を供給可能になっている。
次亜塩素酸水溶液ポンプ13bは、制御部(図示せず)からの出力信号に応じて、次亜塩素酸水溶液タンク13aから貯留部5に高濃度次亜塩素酸水溶液15を送出させる部材である。
チューブ13cは、次亜塩素酸水溶液タンク13aと貯留部5を構成する容器の側壁に設けられた導入口(図示せず)とを、次亜塩素酸水溶液ポンプ13bを介して接続し、次亜塩素酸水溶液タンク13aから貯留部5にかけて高濃度次亜塩素酸水溶液15を流通させるための部材である。
高濃度次亜塩素酸水溶液15は、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定濃度以上となるように調整する薬液(次亜塩素酸水)である。高濃度次亜塩素酸水溶液15は、次亜塩素酸水原液とも言える。高濃度次亜塩素酸水溶液15は、貯留部5内で希釈して次亜塩素酸水溶液6を所定濃度に調整するため、次亜塩素酸水溶液6の濃度より数倍高いことが望ましい。これを踏まえ、本実施の形態では、高濃度次亜塩素酸水溶液15の濃度を1000ppm、次亜塩素酸水溶液ポンプ13bが供給する高濃度次亜塩素酸水溶液15の量を200mLとした。
次亜塩素酸水溶液供給部13は、以上のように構成される。
そして、次亜塩素酸水溶液供給部13は、次亜塩素酸水溶液ポンプ13bを動作させることで、チューブ13cを通じて所定量の高濃度次亜塩素酸水溶液15を次亜塩素酸水溶液タンク13aから貯留部5に供給する。これにより、貯留部5に貯留されている次亜塩素酸水溶液6に対して高濃度次亜塩素酸水溶液15が混合されることになる。
次に、水位センサ16(満水センサ16a及び渇水センサ16b)について説明する。
水位センサ16は、貯留部5の内部に貯留する次亜塩素酸水溶液6の水位を検出する部材である。水位センサ16は、満水センサ16aと渇水センサ16bとを有する。水位センサ16のそれぞれは、貯留部5内の所定の高さの位置に設置される。
満水センサ16aは、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6の水位が満水状態(満水水位)であることを検出する。一方、渇水センサ16bは、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6の水位が渇水状態(渇水水位)であることを検出する。渇水センサ16bは、空気供給部7の溶液吸込口7aより高い位置に設けられており、次亜塩素酸水溶液6の水位の低下により溶液吸込口7aから空気が流れ込んで、空気供給部7に異音または異常が発生することを防止している。なお、本実施の形態では、渇水水位は、満水水位での次亜塩素酸水溶液6の容量(満水時の容量)2Lから25%減少した1.5Lとなる水位に設定している。
以上のように、空間浄化装置2は各部材によって構成される。
次に、次亜塩素酸水溶液6の濃度調整方法について説明する。
まず、ユーザーは、貯留部5に市水を給水し、空間浄化装置2の運転を開始させる。運転開始後、渇水センサ16bが渇水を検知しなければ、次亜塩素酸水溶液供給部13が貯留部5に高濃度次亜塩素酸水溶液15を所定量供給し、貯留部5内に所定濃度の次亜塩素酸水溶液6を生成する。そして、長時間運転する中で貯留部5内の次亜塩素酸水溶液6の水量が減少し、渇水センサ16bが渇水を検知したら、排水ランプ(図示せず)が点灯し、ユーザーに排水を通知する。貯留部5から残った次亜塩素酸水溶液6を排水した後、ユーザーは、再び貯留部5に市水を給水し、空間浄化装置2の運転を開始させる。これにより、貯留部5には、常に新しい所定濃度の次亜塩素酸水溶液6が貯留される。
次に、図2を参照して、空間浄化装置2における各空気(空気3、空気3a、空気3b、空気3c、気泡8、及び空気4)の流れについて説明する。
空間浄化装置2では、送風部22が動作すると、基本的な空気の流れとして、個室空間1の空気3は、外気吸込部18から内部(風路部17)に吸い込まれ、内部に吸い込まれた空気3は、内部風路24を流通して、空気4として吹出部19から個室空間1に放出される。
一方、空気供給部7のモータ部7eが動作を開始すると、内部風路24内の空気3の一部が空気3aとして分離される。つまり、空気3は、一部の空気3aと、残りの空気3bとに分離される。分離された空気3aは、空気吸込口7b(空気吸込口7bの他端)から吸い込まれ、溶液吸込口7aから吸い込まれた次亜塩素酸水溶液6に送り込まれる。次亜塩素酸水溶液6に送り込まれた空気3aは、次亜塩素酸水溶液6とともに気泡生成部7cに導入され、気泡生成部7c内で攪拌&混合される。気泡生成部7c内の空気3aは、次亜塩素酸水溶液6との攪拌&混合の過程で微細化される。そして、微細化された空気3aは、気泡8として次亜塩素酸水溶液6とともに、吐出部7dから貯留部5の次亜塩素酸水溶液6中に送出される。
吐出部7dから放出された気泡8は、鉛直方向下方にある貯留部5の底部5cに向かって放出されるので、そのまま次亜塩素酸水溶液6中を矢印F1の方向に下降する。下降した気泡8は、仕切板25の第二テーパ部25bに衝突する勢いで、そのまま第二テーパ部25bに沿うようにして流通方向を変え、貯留部5の底部5cに沿って略水平方向(矢印F2)に流通していく。この際、下降した気泡8は、仕切板25によって第一領域5aとは逆の方向に流通するので、溶液吸込口7aが位置する第一領域5aの方向には拡散しない。
そして、略水平方向に流通する気泡8は、矢印F3のように、浮力の影響を受けて液面6aに向けて浮上していく。浮上した気泡8は、液面6aに到達すると破裂して内部空間11の空気と混ざり合い、空気3cとして空気放出部9へと移動していく。上述した通り、空気3cには、次亜塩素酸ガスが含まれる。
空気放出部9に導入された空気3cは、エリミネータ10を通過して風路部17の混合部21に導出される。
混合部21に導出された空気3c(次亜塩素酸ガスを含む空気3c)は、内部風路24を流通する空気3bと混合され、次亜塩素酸ガスを含む空気4として吹出部19から個室空間1に放出される。
そして、放出された空気4(次亜塩素酸ガスを含む空気4)は、個室空間1内に拡散していく。その結果、次亜塩素酸ガスを含む空気4によって個室空間1の除菌がなされる。
本実施の形態では、気泡生成部7cでの空気3aと次亜塩素酸水溶液6との攪拌&混合、及び、気泡8が矢印F1の方向と矢印F2の方向に移動することに伴う、気泡8の次亜塩素酸水溶液6中を滞留する時間の長時間化によって、気泡8に含ませる次亜塩素酸ガスの濃度を高くすることができる。
以上、本実施の形態1に係る空間浄化装置2によれば、以下の効果を享受することができる。
(1)空間浄化装置2は、次亜塩素酸水溶液6を貯留する貯留部5と、次亜塩素酸水溶液6に浸漬して設けられ、外部(個室空間1)から取り込んだ空気3aを気泡8として次亜塩素酸水溶液6中に放出する空気供給部7と、を備える。空気供給部7は、貯留部5から内部に取り込んだ次亜塩素酸水溶液6と、外部(個室空間1)から取り込んだ空気3aとを混合しながら、貯留部5が貯留する次亜塩素酸水溶液6中に気泡を放出するようにした。
こうした構成によれば、空気供給部7の内部において次亜塩素酸水溶液6と空気3aとを混合する過程で、空気3a内に一定程度の次亜塩素酸ガスを含ませることができる。これにより、気泡8には、空気供給部7の内部で取り込まれる次亜塩素酸ガスと、気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を浮上する過程で気泡8内に取り込まれる次亜塩素酸ガスとを含ませることができる。この結果、気泡8が液面6aに達した際に、気泡8から放出される次亜塩素酸ガスの濃度を増加させることができる。つまり、空間浄化装置2は、気泡8に含ませる次亜塩素酸ガス濃度を向上させることができ、より高濃度の次亜塩素酸ガスを外部(個室空間1)に供給することができる。
(2)空間浄化装置2では、空気供給部7は、貯留部5から内部に次亜塩素酸水溶液6を取り込む溶液吸込口7aと、外部(風路部17)から内部に空気3aを取り込む空気吸込口7bと、溶液吸込口7aから取り込んだ次亜塩素酸水溶液6と空気吸込口7bから取り込んだ空気3aとを混合した状態で吐出する吐出部7dと、を備え、吐出部7dは、気泡を鉛直方向下方に向けて放出するようにした。これにより、吐出部7dから放出された気泡8は、次亜塩素酸水溶液6中を少なくとも鉛直方向下方に向けて下降し、その後液面6aに向けて浮上していくので、気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を流通する時間が長くなり、気泡8に取り込まれる次亜塩素酸ガスがさらに増加する。この結果、気泡8が液面6aに達した際に、気泡8から放出される次亜塩素酸ガスの濃度をさらに増加させることができる。
(3)空間浄化装置2では、貯留部5は、貯留部5の底部5cから鉛直方向上方に延伸して設けられた仕切板25を有し、仕切板25は、溶液吸込口7aが配置され、溶液吸込口7aから次亜塩素酸水溶液6を取り込む第一領域5aと、吐出部7dが配置され、吐出部7dから放出された気泡8が流通する第二領域5bとに、貯留部5を区分するようにした。これにより、第二領域5bにおいて吐出部7dから放出された気泡8が、仕切板25によって、第一領域5aの溶液吸込口7aに吸い込まれるのを抑制することができる。この結果、気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6が溶液吸込口7aから取り込まれることに起因する異音の発生が抑制される。つまり、空間浄化装置2は、騒音を抑制しつつ、より高濃度の次亜塩素酸ガスを外部(個室空間1)に供給することができる。
(4)空間浄化装置2では、仕切板25は、第二領域5b側が順テーパ形状(第二テーパ部25b)を有して構成され、吐出部7dは、順テーパ形状部分に吹き付けるように気泡8を放出するようにした。これにより、吐出部7dから鉛直方向下方に放出された気泡8は、順テーパ形状部分(第二テーパ部25b)に沿って向きを変えて略水平方向に流通するようになるので、気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を流通する時間がさらに長くなり、気泡8に取り込まれる次亜塩素酸ガスをさらに増加させることができる。
(実施の形態2)
図4を参照して、本実施の形態2に係る空間浄化装置2aについて説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る空間浄化装置2aの構成を示す概略側面図である。
本発明の実施の形態2に係る空間浄化装置2aは、次亜塩素酸水溶液供給部13に代えて、次亜塩素酸水生成部29を備えている点で実施の形態1と異なる。これ以外の空間浄化装置2aの構成は、実施の形態1に係る空間浄化装置2と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
図4に示す通り、空間浄化装置2aは、次亜塩素酸水溶液6の濃度調整手段として、次亜塩素酸水生成部29を備える。次亜塩素酸水生成部29は、塩化物供給部26及び電極27を有する。次亜塩素酸水生成部29は、塩化物供給部26から供給される塩化物水溶液28を、電極27によって電気分解して次亜塩素酸を生成し、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定濃度に調整する。なお、次亜塩素酸水生成部29は、請求項の「除菌水生成部」に相当する。
塩化物供給部26は、貯留部5が貯留する次亜塩素酸水溶液6に所定量の塩化物水溶液28を供給する部材である。塩化物供給部26は、貯留部5の外側に設置され、貯留部5を構成する容器の側壁に設けられた導入口(図示せず)を介して貯留部5内に塩化物水溶液28を導入するように構成される。より詳細には、塩化物供給部26は、塩化物水溶液タンク26a、塩化物ポンプ26b、及びチューブ26cを有して構成される。
塩化物水溶液タンク26aは、内部に予め指定された濃度の塩化物水溶液28を貯留する容器である。塩化物水溶液タンク26aには、例えば、内容物として塩化物水溶液28を密封して収容する袋状の変形可能なパウチパック容器が用いられる。塩化物水溶液タンク26aは、塩化物ポンプ26bの動作によりチューブ26cを介して貯留部5に塩化物水溶液28を供給可能になっている。
塩化物水溶液28は、電気分解によって次亜塩素酸水を生成可能な電解質であればよく、少量でも塩化物イオンを含んで入れば特に制限はなく、例えば、溶質として塩化ナトリウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムなどを溶解した水溶液が挙げられる。また、水溶液のpHを調整するためにリン酸カリウムなどを加えてもよい。本実施の形態では、塩化物水溶液28として、塩化ナトリウム水溶液(塩水)にリン酸カリウムを加えた水溶液を使用している。また、塩化物水溶液28は、塩化ナトリウムが高濃度であることが望ましい。高濃度の塩化物水溶液28を使用することで、次亜塩素酸水溶液6の水量を大きく変化させることなく、次亜塩素酸水溶液6に塩化物(塩化物水溶液)を供給することができる。
塩化物ポンプ26bは、制御部(図示せず)からの出力信号に応じて、塩化物水溶液タンク26aから貯留部5に塩化物水溶液28を送出させる部材である。
チューブ26cは、塩化物水溶液タンク26aと貯留部5を構成する容器の側壁に設けられた導入口とを、塩化物ポンプ26bを介して接続し、塩化物水溶液タンク26aから貯留部5にかけて塩化物水溶液28を流通させるための部材である。
塩化物供給部26は、以上のように構成される。
そして、塩化物供給部26は、塩化物ポンプ26bを動作させることで、チューブ26cを通じて所定量の塩化物水溶液28を塩化物水溶液タンク26aから貯留部5に供給する。これにより、貯留部5に貯留されている次亜塩素酸水溶液6に対して塩化物水溶液28が混合されることになる。
電極27は、塩化物イオンを含む水溶液である塩化物水溶液28を電気分解するための部材である。電極27は、例えば、貯留部5の底部5cにおいて次亜塩素酸水溶液6に沈んだ状態で設置される。電極27は、陽極と陰極との一対の電極からなり、導電性基体の表面に触媒被膜を有して構成される。導電性基体には、例えば、チタン、タンタル、ニッケル、又はステンレス等が使用できるが、次亜塩素酸に対する耐食性が大きいチタンが好ましい。また、触媒被膜に含まれる触媒には、例えば、イリジウム又は白金族金属等が使用される。これにより、電極27での電気分解反応を活性化させることができる。
電極27では、一対の電極間に電流を流すことで塩化物(塩化物水溶液28)が電気分解し、次亜塩素酸が生成される。この結果、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6と塩化物水溶液28の混合水溶液は、所定濃度を有する次亜塩素酸水溶液6として調整される。ここで、電極27への通電時間は、例えば、貯留部5に供給された塩化物の量に基づいて予め実験的に求められた時間に設定される。
次に、次亜塩素酸水生成部29の動作の流れを説明する。
次亜塩素酸水生成部29では、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に調整するために、一定時間ごとに次亜塩素酸水溶液6に次亜塩素酸を供給する。つまり、詳細は後述するが、次亜塩素酸水生成部29では、塩化物供給部26による既定量の塩化物水溶液28の供給と、電極27による電気分解とを一定時間ごとに実行する。
次亜塩素酸水生成部29では、まず、一定時間が経過すると、塩化物ポンプ26bにより塩化物水溶液タンク26aから貯留部5に既定量の塩化物水溶液28を送り込み、次亜塩素酸水溶液6に対して塩化物水溶液28を供給して混合する。そして、次亜塩素酸水生成部29では、電極27に電流を流し、次亜塩素酸水溶液6に混合された塩化物、つまり塩化ナトリウムを電気分解し、塩化物水溶液28として供給された塩化ナトリウムの量に対応した次亜塩素酸を生成する。これにより、次亜塩素酸水溶液6に対して次亜塩素酸が供給されたのと同等の状態となる。つまり、次亜塩素酸水生成部29によって、次亜塩素酸水溶液6の濃度(次亜塩素酸の濃度)が調整されたことになる。この際、次亜塩素酸水生成部29の動作において、次亜塩素酸水溶液6に供給する塩化物水溶液28の量(供給量)を調整することで、次亜塩素酸水溶液6に供給する次亜塩素酸の量を制御できる。なお、塩化ナトリウムを電気分解することで、次亜塩素酸水溶液6のpHは上昇するが、塩化物水溶液28に含まれるリン酸カリウムによって中和され、所定のpHに調整されるようにしている。
以上のようにして、空間浄化装置2aは、次亜塩素酸水溶液6を所定濃度に調整している。
以上、本実施の形態2に係る空間浄化装置2aによれば、上記した効果(1)~(4)に加え、以下の効果を享受することができる。
(5)空間浄化装置2aでは、次亜塩素酸水溶液6を所定濃度に調整する次亜塩素酸水生成部29を備える構成とした。こうした構成によれば、次亜塩素酸水溶液6の濃度コントロールが容易となるので、次亜塩素酸水溶液6の濃度を安定化させることができる。つまり、空間浄化装置2aは、より高濃度の次亜塩素酸ガスを安定して外部(個室空間1)に放出することができる。
(実施の形態3)
図5及び図6を参照して、本実施の形態3に係る空間浄化装置2bについて説明する。図5は、本発明の実施の形態3に係る空間浄化装置2bの構成を示す概略側面図である。図6は、空間浄化装置2bの構成を示す概略透過正面図である。
本発明の実施の形態3に係る空間浄化装置2bは、仕切板25を設けることなく第四領域5e側(実施の形態1の第二領域5b側に相当する領域)に気泡8が選択的に流通するように、吐出部7dの先端に流向調整板7fを設けている点で実施の形態1と異なる。これ以外の空間浄化装置2bの構成は、実施の形態1に係る空間浄化装置2と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
図5に示す通り、空間浄化装置2bでは、空気供給部7は、吐出部7dの先端から鉛直方向下方に延伸して設けられ、気泡8の流通方向を変化させる流向調整板7fを備える。詳細は後述するが、流向調整板7fは、吐出部7dから鉛直方向下方に放出された気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を流通する際の流通方向を、溶液吸込口7aが配置された領域(第三領域5d)とは流向調整板7fを挟んで反対側の領域(第四領域5e)に変化させる部材である。なお、流向調整板7fは、空間浄化装置2の仕切板25と同様の役割を有しており、溶液吸込口7aが次亜塩素酸水溶液6を取り込む第三領域5dと、吐出部7dから放出された気泡8が主として流通する第四領域5eとに、貯留部5を区分しているとも言える。
第三領域5dは、貯留部5内において空気供給部7が次亜塩素酸水溶液6を吸い込む領域である。より詳細には、第三領域5dは、空気供給部7の溶液吸込口7aが配置され、溶液吸込口7aから次亜塩素酸水溶液6を取り込む領域であり、空間浄化装置2における第一領域5aに相当する。
第四領域5eは、貯留部5内において空気供給部7から放出された気泡8が主として流通する領域である。より詳細には、第四領域5eは、空気供給部7の吐出部7dが配置され、吐出部7dから放出された気泡8が次亜塩素酸水溶液6の液面6aに向けて浮上する際に流通する領域であり、空間浄化装置2における第二領域5bに相当する。
流向調整板7fは、吐出部7dの先端(下端)に設けられ、吐出部7dから鉛直方向下方に放出された気泡8の次亜塩素酸水溶液6内での流通方向を、第四領域5e側における貯留部5の底部5cに沿った方向(流向調整板7fから離れていく方向)に変化させる部材である。
具体的には、流向調整板7fは、気泡生成部7cの下端から吐出部7dの溶液吸込口7a側の側面に沿って鉛直方向下方に延伸して取り付けられている。流向調整板7fは、吐出部7dの先端(下端)から鉛直方向下方にさらに真っ直ぐ延伸され、流向調整板7fの先端部分が、貯留部5の底部5c近傍において、第三領域5dとは反対側の第四領域5eの方向に弧を描いて湾曲している。つまり、流向調整板7fの先端部分には、所定の湾曲面(内側湾曲面とも言う)が形成されている。また、流向調整板7fは、図6に示すように、吐出部7dの一方の側面から対向する他方の側面まで延伸されて設置される。つまり、流向調整板7fは、吐出部7dの開口幅に対応して構成されている。そして、流向調整板7fの湾曲面には、吐出部7dから鉛直方向下方に放出された気泡8(気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6)が吹き付けられる。
次に、図5を参照して、空間浄化装置2bにおける気泡8の流れについて説明する。
吐出部7dから放出された気泡8は、鉛直方向下方にある貯留部5の底部5cに向かって放出されるので、そのまま次亜塩素酸水溶液6中を矢印F4の方向に下降する。下降した気泡8は、流向調整板7fの湾曲面に衝突する勢いで、そのまま流向調整板7fの湾曲面に沿うようにして流通方向を変え、貯留部5の底部5cに沿って略水平方向(矢印F5)に流通していく。この際、下降した気泡8は、流向調整板7fによって第三領域5dとは逆の方向に流通するので、溶液吸込口7aが位置する第三領域5dには拡散しない。
そして、略水平方向に流通する気泡8は、矢印F6のように、浮力の影響を受けて液面6aに向けて浮上していく。浮上した気泡8は、液面6aに到達すると破裂して内部空間11の空気と混ざり合い、空気3cとして空気放出部9へと移動していく。上述した通り、空気3cには、次亜塩素酸ガスが含まれる。
空気放出部9に導入された空気3cは、エリミネータ10を通過して風路部17の混合部21に導出される。
混合部21に導出された空気3c(次亜塩素酸ガスを含む空気3c)は、内部風路24を流通する空気3bと混合され、次亜塩素酸ガスを含む空気4として吹出部19から個室空間1に放出される。
そして、放出された空気4(次亜塩素酸ガスを含む空気4)は、個室空間1内に拡散していく。その結果、次亜塩素酸ガスを含む空気4によって個室空間1の除菌がなされる。
本実施の形態では、気泡生成部7cでの空気3aと次亜塩素酸水溶液6との攪拌&混合、及び、気泡8が矢印F4の方向と矢印F5の方向に移動することに伴う、気泡8の次亜塩素酸水溶液6中を滞留する時間の長時間化によって、気泡8に含ませる次亜塩素酸ガスの濃度を高くすることができる。
以上、本実施の形態3に係る空間浄化装置2bによれば、上記した効果(1)~(2)に加え、以下の効果を享受することができる。
(6)空間浄化装置2bでは、空気供給部7は、空気供給部7は、吐出部7dの先端に設けられ、吐出部7dから鉛直方向下方に向けて放出された気泡8の流通方向を調整する流向調整板7fを備える。流向調整板7fは、溶液吸込口7aが配置された領域(第三領域5d)とは流向調整板7fを挟んで反対側の領域(第四領域5e)の方向に気泡8の流通方向を変化させる構成とした。これにより、第四領域5eにおいて吐出部7dから放出された気泡8は、流向調整板7fによって溶液吸込口7aが配置された第三領域5dと反対側の第四領域5eの方向に流通するので、気泡8が第三領域5dの溶液吸込口7aに吸込まれるのを抑制することができる。この結果、気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6が溶液吸込口7aから取り込まれることに起因する異音の発生が抑制される。つまり、空間浄化装置2bは、騒音を抑制しつつ、より高濃度の次亜塩素酸ガスを外部に供給することができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
本実施の形態に係る空間浄化装置2、2aでは、貯留部5の底部5cに仕切板25を設け、空間浄化装置2bでは、吐出部7dの先端に流向調整板7fを設けた。しかしながら、これに限られず、例えば、仕切板25あるいは流向調整板7fを設ける代わりに、第二領域5b側または第四領域5e側に気泡8が選択的に流通するように、吐出部7d自体の吹出方向を変えてもよい。具体的には、吐出部7dから気泡8(気泡8を含む次亜塩素酸水溶液6)を吹き出す方向を、鉛直方向下方ではなく、鉛直方向に対して斜め45度(第一領域5aまたは第三領域5dとは反対側となる斜め45度)の方向にしてもよい。このようにしても、気泡8が溶液吸込口7aに吸込まれるのを抑制することができる。また、次亜塩素酸水溶液6中を流通する気泡8が次亜塩素酸水溶液6と接触する時間を長くすることができる。
また、本実施の形態に係る空間浄化装置2、2aでは、仕切板25に順テーパ形状を有して構成したが、これに限られない。例えば、仕切板25をテーパ形状のない矩形板で構成してもよい。このようにしても、貯留部5の底部5cに衝突する勢いの気泡8が第一領域5a側に拡散するのを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る空間浄化装置2bでは、流向調整板7fの先端部分を湾曲面で構成したが、これに限られない。例えば、流向調整板7fの先端部分を湾曲していない矩形板で構成してもよい。このようにしても、貯留部5の底部5cに衝突する勢い気泡8が第三領域5d側に拡散するのを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る空間浄化装置2bでは、吐出部7dの先端に流向調整板7fを固定して設けたが、これに限らない。例えば、流向調整板7fは、要求される次亜塩素酸ガス濃度に応じて吐出部7dに対する角度を調整可能な、可動式の調整板としてもよい。このようにすることで、より正確に吹き出される次亜塩素酸ガス濃度をコントロールすることができる。
また、本実施の形態に係る空間浄化装置2aは、次亜塩素酸水溶液6における次亜塩素酸の濃度を計測するセンサをさらに備えるように構成し、センサの出力に応じて次亜塩素酸水生成部29を制御し、次亜塩素酸水溶液6の濃度をコントロールするようにしてもよい。具体的には、センサの出力する次亜塩素酸水溶液6の濃度が規定値を下回ると、次亜塩素酸水生成部29を動作させ、センサの出力する次亜塩素酸水溶液6の濃度が規定値となったら次亜塩素酸水生成部29を停止するように制御する。これにより、次亜塩素酸水溶液6の濃度をより確実に一定の範囲内に制御することができる。
また、本実施の形態に係る空間浄化装置2,2bでは、次亜塩素酸水溶液6を、除菌成分を含む水溶液の例として説明したが、これに限られない。除菌成分を含む水溶液として、例えば、水道水を電気分解して得られるオゾン水溶液(オゾン水とも言う)を用いてもよい。この場合にも、空気供給部の内部においてオゾン水溶液と空気とを混合する過程で、空気内に一定程度のオゾンガスを含ませることができる。これにより、気泡8には、空気供給部7の内部で取り込まれるオゾンガスと、気泡8がオゾン水溶液中を浮上する過程で気泡8内に取り込まれるオゾンガスとを含ませることができる。この結果、気泡8が液面に達した際に、気泡8から放出されるオゾンガスの濃度を増加させることができる。他にも、例えば、高濃度二酸化塩素水溶液を希釈して得られる二酸化塩素水溶液を用いてもよい。この場合にも同様で、空気供給部7の内部において二酸化塩素水溶液と空気とを混合する過程で、空気内に一定程度の二酸化塩素ガスを含ませることができる。これにより、気泡8には、空気供給部7の内部で取り込まれる二酸化塩素ガスと、気泡8が二酸化塩素水溶液中を浮上する過程で気泡8内に取り込まれる二酸化塩素ガスとを含ませることができる。この結果、気泡8が液面に達した際に、気泡8から放出される二酸化塩素ガスの濃度を増加させることができる。